説明

車両用ドア駆動装置

【課題】全体として車両幅方向により小型化して車両ドア内での配置自由度を向上しつつ、モータの回転を十分に減速することができる車両用ドア駆動装置を提供する。
【解決手段】駆動部材21は、駆動モータ22の外形がなす車両幅方向の距離Lの空間に少なくとも一部が重合するようドラム23が配置されてなり、駆動モータ22の回転軸22bに連結された第1小径ギヤ部41と、該第1小径ギヤ部41とともに交差軸歯車G1を構成する第1大径ギヤ部42d及び該第1大径ギヤ部42dの回転軸22bから離隔する軸線方向一側に配置された第2小径ギヤ部42eを有する伝達ギヤ42と、第2大径ギヤ部48b及び該第2大径ギヤ部48bの回転軸22bに近付く軸線方向他側に配置されたサンギヤ部48aを有するサンギヤ48と、固定軸をなすリングギヤ46と、遊星歯車54を有しドラム23に一体回転するように連結されたキャリア47とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体に形成されたドア開口を開閉する車両ドアを駆動する車両用ドア駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用ドア駆動装置として種々のものが提案されている。例えば特許文献1に記載された車両用ドア駆動装置では、車両ボディ側に固定されたガイドレール(3)により、車両ドアが移動可能に支持されている。そして、車両ドア側に固定される駆動部材(6)及び該駆動部材により選択的に巻取り・繰出しされるケーブル(7)を備えており、該ケーブルの両端末は、ガイドレールの前端及び後端において車両ボディ側にそれぞれ連結されている。従って、駆動部材によりケーブルが選択的に巻取り・繰出しされると、車両ドアが開閉作動する。
【0003】
ところで、こうした車両用ドア駆動装置に適用可能な駆動部材として、例えば特許文献2に記載されたものが知られている。この駆動部材は、減速機構として遊星歯車機構を採用しており、モータの回転軸に直結されたサンギヤを駆動軸とし、ドラムに一体回転するように連結されたリングギヤを従動軸とし、キャリアを固定軸とした減速比でモータの回転をドラムに伝達している。この場合、モータの回転軸と同一中心線上の減速機構を採用することで、全体として軸方向における投影面積の縮小が図られている。
【0004】
また、こうした車両用ドア駆動装置に適用可能な別の駆動部材として、例えば特許文献3に記載されたものが知られている。この駆動部材は、減速機構として減速比の高いウォームギヤを採用しており、減速機構を介したモータの回転のドラムへの伝達を接続・遮断する電磁クラッチを設けることも併せて提案されている。なお、ドラムの外径は、モータの出力特性に対するその巻き取り速度や必要トルク等の関係から設定されるもので、電磁クラッチの外径は、ドラムの外径よりも小さく設定されている。この場合、電磁クラッチは、外径を縮小したことで軸方向に大型化されているものの、ドラムの占有空間を有効利用すべくその内部に格納したことでその大型化が抑制されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−82927号公報
【特許文献2】特表2009−523983号公報
【特許文献3】特開2008−63762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献2の駆動部材では、軸方向にモータ及び減速機構を積み重ねる構造であるため、全体として軸方向の大型化を余儀なくされており、特に配置スペースの制約された車両ドアへの搭載は困難と推定される。
【0007】
一方、特許文献3の駆動部材では、減速機構としてモータの中心軸部で減速するウォームギヤを採用したことで、モータの回転軸周りの占有空間を有効利用することができず、ウォームギヤの出力軸(ウォームホイール)並びにドラム及び電磁クラッチがそれらの軸方向に積み重ねられて、全体として当該方向の大型化を余儀なくされている。また、減速機構として伝達効率の低いウォームギヤを採用したことで、その分、必要なトルクを得るためにモータの大型化を余儀なくされている。
【0008】
本発明の目的は、全体として車両幅方向により小型化して車両ドア内での配置自由度を向上しつつ、モータの回転を十分に減速することができる車両用ドア駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、車両ボディに形成されたドア開口を開閉する車両ドアの内部に固定され、モータ及び該モータにより回転駆動されるドラムを有する駆動部材と、前記ドラムに巻き掛けられ、前記車両ボディに連結されたロープ部材とを備え、前記ドラムの回転を前記ロープ部材を介して前記車両ボディ側に伝達することで前記車両ドアを開閉作動させる車両用ドア駆動装置において、前記駆動部材は、前記車両ドアの内部において、前記モータの外形がなす車両幅方向の距離の空間に少なくとも一部が重合するよう前記ドラムが配置されてなり、前記モータの回転軸に一体回転するように連結された第1小径ギヤ部と、車両幅方向に延びる軸線を有して回転自在に支持され、前記第1小径ギヤ部と噛合して該第1小径ギヤ部とともに交差軸歯車又はハイポイドギヤを構成する第1大径ギヤ部及び該第1大径ギヤ部の前記回転軸から離隔する軸線方向一側に配置された第2小径ギヤ部を有する伝達ギヤと、車両幅方向に延びる軸線を有して回転自在に支持され、前記第2小径ギヤ部と噛合する第2大径ギヤ部及び該第2大径ギヤ部の前記回転軸に近付く軸線方向他側に配置されたサンギヤ部を有するサンギヤと、前記サンギヤと同軸に配置に支持され、前記サンギヤ部の外周側に配置された固定軸をなすリングギヤと、前記サンギヤ部及び前記リングギヤと噛合する遊星歯車を有し、前記ドラムに一体回転するように連結されたキャリアとを備えたことを要旨とする。
【0010】
同構成によれば、前記モータの回転は、前記第1小径ギヤ部及び前記第1大径ギヤ部(交差軸歯車又はハイポイドギヤ)を介して減速されて前記伝達ギヤに伝達される。そして、前記伝達ギヤの回転は、前記第2小径ギヤ部及び前記第2大径ギヤ部を介して更に減速されて前記サンギヤに伝達される。一方、前記サンギヤ(サンギヤ部)、前記キャリア(遊星歯車)及び前記リングギヤは遊星歯車機構を構成しており、前記サンギヤ(第2大径ギヤ部)の回転は、該サンギヤ(サンギヤ部)を駆動軸とし、前記ドラムに一体回転するように連結された前記キャリアを従動軸とし、前記リングギヤを固定軸とした減速比で減速されて前記ドラムに伝達される。従って、前記モータの回転は、交差軸歯車又はハイポイドギヤ、遊星歯車機構等を介して十分に減速されて前記ドラムに伝達される。この場合、減速に係る交差軸歯車又はハイポイドギヤ、遊星歯車機構等の回転方向への伝達効率は、例えばウォームギヤにおける回転方向への伝達効率に比べて大きいことから、より小型のモータで必要なトルクを得ることができる。
【0011】
また、前記車両ドアを手動で開閉操作する場合、前記ドラムの回転は遊星歯車機構、交差軸歯車又はハイポイドギヤ等において効率よく回転伝達が行われることになり、ある程度の操作力で前記モータ(回転軸)等を回転しつつ前記車両ドアを開閉操作することができる。従って、手動及び電動による前記車両ドアの開閉操作を選択的に許容するために、例えば電磁クラッチを前記モータ及び前記ドラム間に設ける必要がなくなる。これにより、部品点数を削減することができ、ひいては全体としてより小型化することができる。
【0012】
さらに、前記第1小径ギヤ部及び前記第1大径ギヤ部間(交差軸歯車又はハイポイドギヤ)の減速が前記モータの前記回転軸に対して前記伝達ギヤの軸線方向にずれた位置で行われ、且つ、減速に係る前記第2小径ギヤ部及び前記第2大径ギヤ部に対して前記第1大径ギヤ部(交差軸歯車又はハイポイドギヤ)及び前記サンギヤ部(遊星歯車機構)が前記回転軸に近付く軸線方向他側、即ち前記モータの外形がなす車両幅方向の距離の前記空間側に集約して配置されることで、前記伝達ギヤ及び前記サンギヤの軸線方向への大型化、即ち車両幅方向(ドア厚さ方向)への大型化を抑制することができる。特に、前記伝達ギヤ(第2小径ギヤ部)と噛合する前記第2大径ギヤ部を除いて前記サンギヤ等の軸線周りに集約される遊星歯車機構を採用したことで、当該軸線周りの大型化を抑制しつつ、所要の減速比を確保することができる。従って、前記モータがより小型化可能であり、且つ、前記ドラムが前記空間に少なくとも一部が重合するよう効率的に配置されていることもあって、全体として前記車両ドア内での配置自由度を向上することができる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両用ドア駆動装置において、前記ドラムは、前記リングギヤと同軸に配置されており、少なくとも一部が前記リングギヤの軸線方向の範囲で重合するように該リングギヤを内周側に収容することを要旨とする。
【0014】
同構成によれば、前記ドラムは、少なくとも一部が前記リングギヤの軸線方向の範囲で重合するように該リングギヤを内周側に収容することで、例えばこれらドラム及びリングギヤを軸線方向に積み重ねて配置する場合に比べて当該方向への大型化、即ち車両幅方向への大型化を抑制することができる。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の車両用ドア駆動装置において、前記モータの外形がなす車両幅方向の距離の前記空間に少なくとも一部が重合するよう配置され、前記リングギヤの回転の規制状態及び許容状態を切り替える切替手段と、前記切替手段により前記リングギヤが回転の規制状態に切り替えられているとき、前記車両ドアの開閉操作に伴い前記ドラム及び前記キャリアを介して前記リングギヤに伝達される所定レベルを超える負荷によって、前記切替手段による前記リングギヤの回転の規制状態を解除するキャンセル機構を備えたことを要旨とする。
【0016】
同構成によれば、前記車両ドアを手動で開閉操作する場合、前記切替手段により前記リングギヤが回転の許容状態に切り替えられていれば、該リングギヤを空転させつつ前記ドラム(キャリア)の回転が許容される。このように、前記切替手段により前記ドラム側からの回転トルクと前記モータの前記回転軸側からの駆動トルクとを切り離すことで、軽微な操作力で前記車両ドアを開閉操作することができる。特に、前記切替手段は、前記空間に少なくとも一部が重合するよう効率的に配置されていることで、車両幅方向(ドア厚さ方向)への大型化を抑制することができる。一方、前記切替手段により前記リングギヤが回転の規制状態に切り替えられている状態であったとしても、前記車両ドアの開閉操作に伴い前記ドラム及び前記キャリアを介して前記リングギヤに前記所定レベルを超える負荷(トルク)が伝達されれば、前記キャンセル機構によって前記切替手段による前記リングギヤの回転の規制状態を解除することができる。従って、前記リングギヤ又は前記切替手段に過大な負荷(トルク)が加わることを回避することができる。
【0017】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の車両用ドア駆動装置において、前記ドラムから巻取り・繰出しされる前記ロープ部材がそれぞれ巻き掛けられて前記車両ボディ側に連結される前記ロープ部材を案内するプーリ機構を備え、前記駆動部材は、前記ドラム、前記伝達ギヤ、前記サンギヤ、前記リングギヤ、前記キャリア、前記切替手段、前記キャンセル機構及び前記プーリ機構を一体的に収容するケースを備えたことを要旨とする。
【0018】
同構成によれば、前記駆動部材は、前記ドラム、前記伝達ギヤ、前記サンギヤ、前記リングギヤ、前記キャリア、前記切替手段、前記キャンセル機構及び前記プーリ機構を前記ケースに一体的に収容してユニット化されることで、前記駆動部材の前記車両ドア側への組付性を向上することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、全体として車両幅方向により小型化して車両ドア内での配置自由度を向上しつつ、モータの回転を十分に減速することができる車両用ドア駆動装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態を示す模式図。
【図2】図1のA−A線に沿った断面図。
【図3】同実施形態を示す正面図。
【図4】図3のB−B線に沿った断面図。
【図5】同実施形態を示す分解斜視図。
【図6】(a)(b)は、同実施形態の動作を示す説明図。
【図7】(a)(b)は、同実施形態の動作を示す説明図。
【図8】同実施形態の動作を示す説明図。
【図9】同実施形態の電気的構成を示すブロック図。
【図10】本発明の変形形態を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1は、本実施形態に係る車両用ドア駆動装置を示す模式図である。同図に示すように、車両ボディ10には、その側部に形成されたドア開口10aの上縁及び下縁に沿ってアッパレール11及びロアレール12が設置されるとともに、ドア開口10aの後方のクォータパネル10bにおいて前後方向に延在するセンターレール13が設置されている。そして、これらアッパレール11、ロアレール12及びセンターレール13には、ガイドローラユニット14を介して車両ドアとしてのスライドドア20が前後方向に移動可能に支持されている。このスライドドア20は、前後方向への移動に伴ってドア開口10aを開閉する。なお、センターレール13は、ドアベルトライン付近の車両高さに配置されている。そして、クォータパネル10bには、センターレール13の下縁に沿ってその全長に亘りケーブルガイド15が設置されている。
【0022】
スライドドア20の内部後部には、ドアベルトライン付近の車両高さにおいて、例えばボルト−ナットによる締結で駆動部材21が固定されている。すなわち、図2に図1のA−A線に沿った断面図を示したように、駆動部材21は、ドア厚さ方向(車両幅方向)において、スライドドア20のドア内張りを構成するドアトリム16及びドア内板を構成するドアインナパネル17間に挟まれる態様で該ドアインナパネル17に固定されている。なお、駆動部材21の搭載位置では、スライドドア20の内部を昇降するドアウインドガラスDWはドアインナパネル17よりも外側(車両幅方向外側)に配置されている。つまり、駆動部材21は、車両高さにおいてドアウインドガラスDWと重合するように配置されるものの、該ドアウインドガラスDWの昇降動作を妨げることはない。
【0023】
図1に示すように、この駆動部材21は、ブラシモータからなる駆動モータ22及び該駆動モータ22により回転駆動されるドラム23を有しており、該ドラム23にはロープ部材としての第1ケーブル24及び第2ケーブル25が巻回されている。すなわち、これら第1及び第2ケーブル24,25は、一方の端末がドラム23にそれぞれ係止された状態で該ドラム23に巻回されている。第1及び第2ケーブル24,25は、駆動部材21により選択的に巻取り・繰出しされる。また、駆動部材21は、プーリ機構としての中間プーリ26を更に有しており、第1及び第2ケーブル24,25の各々は、中間プーリ26及びセンターレール13を移動するガイドローラユニット14に連結された案内プーリ27を経てスライドドア20側から車両ボディ10側へと渡され、ケーブルガイド15に沿って前後方向に配索されている。なお、中間プーリ26及び案内プーリ27は、ドアベルトライン付近となるドラム23の後方位置及び更にその後方位置にそれぞれ配置されている。そして、第1ケーブル24は、ケーブルガイド15に案内されて前側に配索され、他方の端末に連結されたテンショナー28を介して、ケーブルガイド15の前端側で車両ボディ10側に、例えばボルト−ナットによる締結で連結されている。また、第2ケーブル25は、ケーブルガイド15に案内されて後側に配索され、他方の端末に連結されたテンショナー29を介して、ケーブルガイド15の後端側で車両ボディ10側に、例えばボルト−ナットによる締結で連結されている。
【0024】
このような構成にあって、例えば駆動部材21により第1ケーブル24を繰り出しつつ第2ケーブル25を巻き取ると、スライドドア20はドア開口10aを開放すべく後方に移動する。一方、駆動部材21により第1ケーブル24を巻き取りつつ第2ケーブル25を繰り出すと、スライドドア20はドア開口10aを閉鎖すべく前方に移動する。
【0025】
次に、駆動部材21の構造について更に説明する。図3は、スライドドア20に臨んで車両幅方向内側から見た駆動部材21の正面図であり、図4は、図3のB−B線に沿った断面図である。また、図5は、駆動部材21の分解斜視図である。図3及び図4に示されるように、駆動部材21は、その外形をなすとともに各種構成部品を収容・支持する箱状のケース30を備える。このケース30は、各種構成部品の収容空間を形成するハウジング31と、該ハウジング31の互いに相反する方向に開口する開口部をそれぞれ閉塞する第1カバー32及び第2カバー33(図5参照)とを備えており、駆動部材21は、ハウジング31がドアインナパネル17に締結されることで該ドアインナパネル17に固定・支持される。なお、ハウジング31、第1カバー32及び第2カバー33は、例えば樹脂材にて成形されている。
【0026】
ハウジング31は、車両前側上縁部に配置されたモータホルダ部31aと、該モータホルダ部31aの下側に隣接配置された有底略円筒状の第1ギヤ収容部31bと、該第1ギヤ収容部31bの車両後側に隣接配置された有底略円筒状の第2ギヤ収容部31cと、該第2ギヤ収容部31cの車両後側に隣接配置された有底略扇形筒状のレバー収容部31dと、第1ギヤ収容部31b及びレバー収容部31d間に延在する態様で第2ギヤ収容部31cの下側に隣接配置された有蓋筒状の基板収容部31eと、レバー収容部31dの上側であって第2ギヤ収容部31cの車両後側に上下に並設される態様で配設された対のプーリ収容部31f,31gとを一体的に有する。なお、第1ギヤ収容部31b、第2ギヤ収容部31c、レバー収容部31d及びプーリ収容部31f,31gは、車両幅方向内側に開口しており、基板収容部31eは、逆向きとなる車両幅方向外側に開口している。また、第1ギヤ収容部31b、第2ギヤ収容部31c及びレバー収容部31dは、円形の筒部の一部が重なる態様で順次連通しており、該円形の筒部の中心が一直線上に並ぶように並設されている(図3参照)。そして、第1及び第2ギヤ収容部31b,31cの底壁と、レバー収容部31dの底壁との間には、段差D(図4参照)を介して高低差が設定されている。さらに、プーリ収容部31f,31gは、第2ギヤ収容部31cにそれぞれ連通している。
【0027】
図5に示されるように、モータホルダ部31aは、前記駆動モータ22の固定子22aがビスB1によって締結されるホルダ本体31hを有するとともに、該ホルダ本体31hの中央部を第1ギヤ収容部31bの円形の筒部の中心に向かって貫通して該第1ギヤ収容部31b内に連通する略円筒状の軸挿通部31iを有する。つまり、軸挿通部31iは、第1ギヤ収容部31b等の開口方向に対して略直交する車両高さ方向に略沿って開口している。そして、この軸挿通部31iには、該軸挿通部31iに沿って軸線の延びる前記駆動モータ22の回転軸22bが挿通されるとともに、該回転軸22bに固着された第1小径ギヤ部41が回転自在に収容されている。従って、ハウジング31(ケース30)は、スライドドア20の内部において、駆動モータ22(固定子22a)の外形がなす車両幅方向の距離Lの空間に少なくとも一部が重合するよう配置されている(図4参照)。なお、第1小径ギヤ部41は、例えば傘歯車で構成されている。
【0028】
第1ギヤ収容部31bは、その底壁中央から突設された略円柱状の支持部31jを有する。そして、この支持部31jには、伝達ギヤ42が回転自在に支持されている。すなわち、伝達ギヤ42は、支持部31jと同心の略円柱状の軸部42aを有するとともに、該軸部42aの支持部31jに対向する先端面に凹設され該支持部31jにスリーブ43を介して回転自在に装着される円形の軸受部42bを有する。また、軸部42aの外周面には、自身の回転を許容しつつ前記駆動モータ22の回転軸22bを回転自在に、且つ、軸線方向に移動不能に支持する周溝42cが形成されている。そして、伝達ギヤ42は、その軸線方向に前記回転軸22bよりも支持部31jから離隔する位置で軸部42aから延出する円盤状の第1大径ギヤ部42dを有する。この第1大径ギヤ部42dは、前記第1小径ギヤ部41の外径よりも大きい外径を有してこれと噛合する、例えば傘歯車で構成されており、該第1小径ギヤ部41とともに交差軸歯車(いわゆるフェースギヤ)G1を構成する。従って、駆動モータ22の回転軸22bが回転すると、その回転が交差軸歯車G1において減速されて伝達ギヤ42に伝達され、該伝達ギヤ42が一体回転する。なお、伝達ギヤ42は、第1大径ギヤ部42dの前記回転軸22bから離隔する軸線方向一側(図4の上側)に隣接配置された第2小径ギヤ部42eを有する。この第2小径ギヤ部42eは、第1大径ギヤ部42dの外径よりも小さい外径を有している。また、伝達ギヤ42は、第2小径ギヤ部42e(軸部42a)の支持部31jから離隔する先端面に凹設された円形の軸受部42fを有する。
【0029】
第2ギヤ収容部31cは、第1ギヤ収容部31bの内径よりも更に大きい内径を有しており、その底壁中央から突設された略円柱状の支持部31kを有する。そして、この支持部31kには、該支持部31kと同心の段付き略円柱状の支持軸44が回転自在に支持されている。すなわち、この支持軸44は、支持部31kに対向する先端面に凹設され該支持部31kにスリーブ45を介して回転自在に装着される円形の軸受部44aを有するとともに、該軸受部44aに対応する軸線方向の位置の外周部に形成されたセレーション44bを有する。また、支持軸44は、セレーション44bの前記支持部31kから離隔する軸線方向一側(図4の上側)に隣接配置された拡径部44cを有するとともに、該拡径部44cの軸線方向一側に隣接配置された略小判形の嵌合部44dを有し、更に該嵌合部44dの前記支持部31kから離隔する軸線方向一側に隣接配置された略円柱状の軸部44eを有する。
【0030】
支持軸44には、前記ドラム23が一体回転するように連結されている。すなわち、ドラム23は、前記第1カバー32側に開口する有底略円筒状に形成されており、その底壁中央部を貫通するセレーション23aにおいて前記セレーション44bと係合する。また、ドラム23は、前記拡径部44cの外径と同等の内径を有してその底壁中央部に突設された略円筒状のボス部23bを有する。なお、ドラム23は、その内周側に円形の収容空間Sを形成する。
【0031】
ドラム23には、該ドラム23と同心の有底略円筒状のリングギヤ46が回転自在に支持されている。すなわち、リングギヤ46は、その底壁中央部に前記ボス部23bの外径と同等の内径を有して該ボス部23bを軸支する円形の軸受孔46aを有しており、ドラム23の内径よりも小さい外径を有する円形の筒部が前記収容空間Sに収容されている。このリングギヤ46は、円形の筒部の内周部に形成された内歯46bを有するとともに、該円形の筒部の収容空間Sから突出する先端から径方向外側に延出してドラム23の開口端面を覆う円環状の係合部としての大輪ギヤ46cを有する。そして、大輪ギヤ46cの外周部には、複数の略直角三角形の係止歯46dが等角度間隔に配設されている。なお、内歯46bの内径は、前記伝達ギヤ42の第1大径ギヤ部42dの外径よりも大きく設定されている。
【0032】
リングギヤ46等の組み付けられた支持軸44には、キャリア47が一体回転するように連結されている。すなわち、図5に示されるように、キャリア47は、支持軸44の軸線方向に並設された対のプレート51,52を有するとともに、これらプレート51,52の各端部間に挟まれて軸53周りに回転自在に支持された対の遊星ギヤ54を有する。そして、一方のプレート51の中央部には、支持軸44の嵌合部44dに嵌合される略小判形の嵌合孔51aが形成されており、他方のプレート52の中央部には、軸部44eが遊挿される円形の挿通孔52aが形成されている。また、両遊星ギヤ54は、リングギヤ46の内歯46bに噛合する態様でリングギヤ46内に収容されており、自転しつつ、リングギヤ46内を公転可能となっている。これにより、キャリア47(プレート51,52)は、ドラム23ともども支持軸44と一体でリングギヤ46に対し回転可能となっている。
【0033】
キャリア47等の組み付けられた支持軸44には、更にサンギヤ48が回転自在に支持されている。すなわち、サンギヤ48は、前記挿通孔52aに遊挿されて前記軸部44eを軸支するとともに前記両遊星ギヤ54と噛合するサンギヤ部48aと、該サンギヤ部48aの挿通孔52aから突出する先端から径方向外側に延出してリングギヤ46の開口端面を覆う第2大径ギヤ部48bとを一体的に有する。このサンギヤ48(サンギヤ部48a)は、リングギヤ46及びキャリア47とともに遊星歯車機構G2を構成する。なお、第2大径ギヤ部48bは、その外径がリングギヤ46の内歯46bの内径よりも大きく設定されており、前記伝達ギヤ42の第1大径ギヤ部42dを覆う態様で前記第2小径ギヤ部42eと噛合する。
【0034】
従って、伝達ギヤ42が回転すると、その回転が第2小径ギヤ部42e及び第2大径ギヤ部48bの歯数比に応じて減速されてサンギヤ48に伝達され、該サンギヤ48が一体回転する。そして、例えばリングギヤ46の回転が係止されている状態でサンギヤ48が回転すると、その回転は、該サンギヤ48(サンギヤ部48a)を駆動軸とし、キャリア47を従動軸とし、リングギヤ46を固定軸とした減速比で減速されてドラム23に伝達される。つまり、駆動モータ22(回転軸22b)の回転は、交差軸歯車G1、遊星歯車機構G2等を介して十分に減速されてドラム23に伝達される。ドラム23の回転に伴い、その回転方向に応じてスライドドア20が開閉作動することは既述のとおりである。
【0035】
レバー収容部31dは、その底壁の扇形状の中央を貫通する円形の軸受孔31lを有するとともに、該軸受孔31l及び前記支持部31kを結ぶ直線上に延在して第2ギヤ収容部31c側に連通する略四角溝状のガイド溝31mを有し、更に軸受孔31lに対しガイド溝31mの反対側で開口側に台状に隆起する台座部31nを有する。そして、軸受孔31lには、切替レバー56が回転自在に支持されている。すなわち、切替レバー56は、軸受孔31lと同心の段付き略円柱状の軸部56aを有しており、該軸部56aの先端部がスリーブ57を介して軸受孔31lに軸支されている。
【0036】
また、切替レバー56は、前記大輪ギヤ46cに対応する軸線方向の位置で軸部56aから大輪ギヤ46c側に延出する扇形状のレバー部56bを有する。そして、レバー部56bの先端部には、長孔状のカム孔56cが形成されている。このカム孔56cは、周方向一側(図3の時計回転方向の側)に対し他側(図3の反時計回転方向の側)が軸部56a側に配置されるように曲成されている。また、切替レバー56には、レバー収容部31dに一端の係止された付勢手段としての復帰スプリング63(図5参照)の他端が係止されており、周方向他側(図3の反時計回転方向の側)寄りの所定回動位置(以下、電動切替位置Paともいう)に配置されるように常時付勢されている。
【0037】
前記ガイド溝31mには、その延在方向に移動可能な係脱部材としての板状の係脱ブロック58が装着されている。この係脱ブロック58は、一側(図3において紙面に直交する手前側)に突出して前記カム孔56cに挿通される係合ピン58aを有するとともに、前記第2ギヤ収容部31c側の先端部から前記大輪ギヤ46cに対応する軸線方向の位置まで隆起して前記ガイド溝31mに臨む複数の係止歯46d(大輪ギヤ46c)と噛合可能な複数のギヤ側係止歯58bを有する。係止歯46dと噛合するギヤ側係止歯58bが、略直角三角形に成形されていることはいうまでもない。切替レバー56が前記電動切替位置Paに配置されている状態では(図6(a)参照)、係脱ブロック58は、係合ピン58aが前記カム孔56cの周方向一側(図3の時計回転方向の側)寄りの終端に配置されており、該カム孔56cの内壁面に押圧されることで第2ギヤ収容部31c側に押し出され、そのギヤ側係止歯58bと前記リングギヤ46の係止歯46dとが噛み合う。このとき、リングギヤ46は、回転不能に係止される。一方、切替レバー56が周方向側(図6の時計回転方向の側)寄りの所定回動位置(以下、手動切替位置Pmともいう)に配置されている状態では(図6(b)参照)、係脱ブロック58は、係合ピン58aが前記カム孔56cの周方向他側(図3の反時計回転方向の側)寄りの終端に配置されており、該カム孔56cの内壁面に押圧されることで軸部56a側に引き戻され、そのギヤ側係止歯58bと前記リングギヤ46の係止歯46dとの噛合が解除される。このとき、リングギヤ46は、回転可能とされる。
【0038】
前記プーリ収容部31f,31gには、互いに異なる外径を有するプーリ65,66が回転自在に支持されている。これらプーリ65,66は、前記中間プーリ26を構成するもので、ドラム23から巻取り・繰出しされるケーブル24,25がそれぞれ案内される態様で掛けられて、該ケーブル24,25を防塵用のケーブルグロメット67を介して前記案内プーリ27に渡す。
【0039】
図4に示されるように、前記第1カバー32は、伝達ギヤ42等の収容されたハウジング31に取着されてその第1ギヤ収容部31b、第2ギヤ収容部31c、レバー収容部31d及び両プーリ収容部31f,31gを閉塞しており、伝達ギヤ42、支持軸44及び切替レバー56等をそれぞれ回転自在に支持する。すなわち、第1カバー32は、前記軸受部42fと同心でその蓋壁から突設された略円柱状の支持部32aを有しており、該支持部32aがスリーブ68を介して軸受部42fに軸支されている。また、第1カバー32は、前記軸部44eと同心でその蓋壁から突設された略円筒状の軸受部32bを有しており、該軸受部32bがスリーブ69を介して軸部44eを軸支している。さらに、第1カバー32は、前記軸部56aと同心でその蓋壁から突設された略円筒状の軸受部32cを有しており、該軸受部32cにおいて蓋壁を貫通する軸部56aを軸支している。
【0040】
なお、第1カバー32の蓋壁を貫通する軸部56aの先端部には、略ボタン形状の切替ノブ70が一体回転するように固着されている。この切替ノブ70は、スライドドア20の閉状態において、その先端面が前記ドアトリム16から露出するように配置されており、該先端面には略+形状のキー溝70aが形成されている。従って、前記切替レバー56は、スライドドア20の車室内側から切替ノブ70を通じて操作力を伝達することで、電動切替位置Pa及び手動切替位置Pm間で切替可能となっている。切替ノブ70は、切替レバー56、係脱ブロック58及び復帰スプリング63等とともに係脱手段を構成する。
【0041】
ハウジング31(ケース30)に収容される伝達ギヤ42等が、スライドドア20の内部において、駆動モータ22(固定子22a)の外形がなす前述した車両幅方向の距離Lの空間に少なくとも一部が重合するよう配置されていることはいうまでもない。
【0042】
次に、本実施形態の動作について総括して説明する。
まず、切替ノブ70の操作により切替レバー56が電動切替位置Paに配置され、図6(a)に示されるように、係脱ブロック58によりリングギヤ46が回転不能に係止されているものとする。このとき、駆動モータ22の回転は、第1小径ギヤ部41及び第1大径ギヤ部42d(交差軸歯車G1)を介して第1段の減速がなされて伝達ギヤ42に伝達される。そして、伝達ギヤ42の回転は、第2小径ギヤ部42e及び第2大径ギヤ部48bを介して更に減速されてサンギヤ48に伝達される。一方、サンギヤ48(第2大径ギヤ部48b)の回転は、遊星歯車機構G2において、サンギヤ48(サンギヤ部48a)を駆動軸とし、キャリア47を従動軸とし、リングギヤ46を固定軸とした減速比で第2段の減速がなされてドラム23に伝達される。従って、駆動モータ22の回転は、交差軸歯車G1、遊星歯車機構G2等を介して十分に減速されてドラム23に伝達される。
【0043】
また、この状態でスライドドア20を手動で開閉操作する場合、仮に係脱ブロック58によるリングギヤ46の係止状態が維持されたとしても、スライドドア20の開閉作動に伴うドラム23の回転は遊星歯車機構G2、交差軸歯車G1等において効率よく回転伝達が行われることになる。これにより、ある程度の操作力で駆動モータ22(回転軸22b)等を回転しつつスライドドア20の開閉操作が可能となる。
【0044】
一方、切替ノブ70の操作により切替レバー56を手動切替位置Pmに変位させると、図6(b)に示されるように、係脱ブロック58によるリングギヤ46の係止状態が解除される。このとき、スライドドア20を手動で開閉操作する場合、これに伴うドラム23(キャリア47)の回転はリングギヤ46を空転させつつ許容される。このように、係脱ブロック58等によりドラム23側からの回転トルクと駆動モータ22の回転軸22b側からの駆動トルクとを切り離すことで、軽微な操作力によるスライドドア20の開閉操作が可能となる。
【0045】
なお、本実施形態では、切替レバー56を電動切替位置Pa又は手動切替位置Pmに保持し、且つ、切替操作時におけるクリック感(ノッチ感)を演出するための凹凸形状が設定されている。すなわち、図5及び図7に示すように、ハウジング31の前記台座部31nは、切替レバー56の前記軸部56aに対向する段差71の中央部が軸部56aからその径方向に離隔される態様で、その両側に軸部56aの径方向内側に湾出する電動切替用係合面71a及び手動切替用係合面71bを形成する。一方、切替レバー56は、段差71に対向して軸部56aの径方向外側に突出する尖鋭な突起部72を有する。図7(a)に示すように、この突起部72は、切替レバー56が電動切替位置Paに配置されるときに電動切替用係合面71aの手動切替用係合面71bから離隔する側の谷部に嵌入している。また、図7(b)に示すように、突起部72は、切替レバー56が手動切替位置Pmに配置されるときに手動切替用係合面71bの電動切替用係合面71aから離隔する側の谷部に嵌入している。
【0046】
従って、例えば切替レバー56を手動切替位置Pmから電動切替位置Paに切り替える際には、その回動に伴い手動切替用係合面71bの山部を乗り越える突起部72が更に電動切替用係合面71aの山部を乗り越えることで、当該切替操作に節度が付与される。同様に、切替レバー56を電動切替位置Paから手動切替位置Pmに切り替える際には、その回動に伴い電動切替用係合面71aの山部を乗り越える突起部72が更に手動切替用係合面71bの山部を乗り越えることで、当該切替操作に節度が付与される。なお、切替レバー56を電動切替位置Paに保持する保持力は、前記復帰スプリング63の付勢力と、突起部72が電動切替用係合面71aの山部を乗り越える力との合力に設定されており、切替レバー56を手動切替位置Pmに保持する保持力は、突起部72が手動切替用係合面71bの山部を乗り越える力に設定されている。また、突起部72が手動切替用係合面71bの山部を乗り越える力は、復帰スプリング63の付勢力よりも大きく設定されており、該復帰スプリング63の付勢力のみによって電動切替位置Paに切り替えられることはない。
【0047】
ここで、図8に示すように、切替レバー56が電動切替位置Paに配置されて係脱ブロック58によりリングギヤ46が係止されているとき、該リングギヤ46側から係脱ブロック58に所定レベルを超える負荷(トルク)が加わることで、係脱ブロック58によるリングギヤ46の係止が解除されるように設定されている(キャンセル機構)。すなわち、図8に誇張して併せ示したように、切替レバー56の前記カム孔56cの終端部は、電動切替位置Paに配置されているときに前記係合ピン58aに対しその周方向両側に配置されるように設定された、軸部56aを中心とする円弧状の溝形状73を有する。そして、略直角三角形に成形されたリングギヤ46の前記係止歯46dに、同じく略直角三角形に成形されてこれに噛合する係脱ブロック58の前記ギヤ側係止歯58bがリングギヤ46の周方向に押圧されると、係脱ブロック58に係止歯46d及びギヤ側係止歯58bの噛合状態を乗り越えようとする方向の力が発生する。これにより、係脱ブロック58は、左右いずれかの方向に揺動した上で、切替レバー56を回動させつつ軸部56a側に変位して係止歯46dから切り離される。具体的には、切替レバー56を電動切替位置Paに保持する前述の保持力(切替レバー56のノッチ感を出す力や復帰スプリング63の付勢力)によりカム孔56cにおいて係脱ブロック58をリングギヤ46に押し付ける力よりも、リングギヤ46側から押し戻す力の方が勝ると、自動的に係脱ブロック58によるリングギヤ46の係止が解除される。そして、リングギヤ46は、ギヤ側係止歯58bの歯先と干渉しつつ、その回転(空回り)が許容される。以上により、係脱ブロック58によりリングギヤ46が係止されている状態であっても、リングギヤ46及び係脱ブロック58間に所定レベルを超える負荷が伝達されることで、係脱ブロック58によるリングギヤ46の係止が解除されて該リングギヤ46が回転可能となる。従って、例えば電動によるスライドドア20の閉作動中に手動による過早な開操作を行うなど、緊急逆入力時にドラム23及びキャリア47を介してリングギヤ46に所定レベルを超える負荷(トルク)が伝達されたとしても、該リングギヤ46及び係脱ブロック58間(係止歯46d及びギヤ側係止歯58b)に過大な負荷が加わることが回避される。なお、キャンセル機構が作動した状態では、突起部72が未だ電動切替用係合面71aの山部を乗り越える状態ではないことから、リングギヤ46側から押し戻す力が減少すると、前述の力関係が逆転することで、自動的に係脱ブロック58がリングギヤ46に係止(再係止)される。
【0048】
図5に示されるように、前記基板収容部31eには、その蓋壁の外形に合わせて成形された板状のECU(electronic control units)基板80が収容されている。このECU基板80には、マイクロコンピュータを主体に構成されたECU81(図9参照)が実装されるとともに、例えばホール素子を備えた磁気検出センサからなる回転センサ82が実装されている。回転センサ82は、前記ドラム23の回転位置及び回転速度等を検出するためのもので、該ドラム23に一体回転するように固定された輪状のマグネットロータ83に対して所定の間隔を有して対向配置される。なお、前記ハウジング31には、モータホルダ部31aに保持された駆動モータ22の給電部とECU基板80とを電気的に接続するためのバスバー(図示略)が埋設されており、駆動モータ22及びECU基板80(ECU81)は、基本的にワイヤーハーネスを介することなく電気的に接続されている。
【0049】
ハウジング31(ケース30)に収容されるECU基板80(ECU81等)が、スライドドア20の内部において、駆動モータ22(固定子22a)の外形がなす前述した車両幅方向の距離Lの空間に少なくとも一部が重合するよう配置されていることはいうまでもない。
【0050】
次に、本実施形態の電気的構成について更に説明する。
図9に示されるように、ECU81は、前記回転センサ82と電気的に接続されており、該回転センサ82の検出信号に基づいて前記ドラム23の回転位置及び回転速度等(即ちスライドドア20の開閉位置及び開閉速度等)を検出する。また、ECU81は、スライドドア20の開閉意思情報を取得するハンドルスイッチ84と電気的に接続されている。さらに、ECU81は、前記切替レバー56の回動位置(電動切替位置Pa又は手動切替位置Pm)を検出するための切替検出スイッチ85と電気的に接続されており、該切替検出スイッチ85の検出信号に基づいて切替レバー56の回動位置を検出する。一方、ECU81は、前記駆動モータ22と電気的に接続されるとともに、スライドドア20を全閉状態又は全開状態で保持するラッチ機構(図示略)を解放又は係合させるためのリリース・クローズアクチュエータ86と電気的に接続されている。そして、ECU81は、ラッチ機構の作動に係るスライドドア20の保持情報を取得するラッチ・ポールスイッチ87と電気的に接続されている。なお、ラッチ機構は、スライドドア20に設置されたドアハンドル(図示略)とケーブル等の機械的連結部材(図示略)により機械的に連係されており、該ドアハンドルの操作によっても係合状態から解放可能となっている。ECU81は、これら回転センサ82等の検出結果に基づいて、駆動モータ22等を駆動制御する。
【0051】
すなわち、切替検出スイッチ85により切替レバー56が電動切替位置Paにあることが検出されているとき、スライドドア20の全閉状態において、利用者によるハンドルスイッチ84の操作に伴い、スライドドア20を開放する旨の情報が検出されると、ECU81は、スライドドア20を開放可能にすべく、リリース・クローズアクチュエータ86を駆動してラッチ機構による全閉状態の保持を解放する。続いて、ECU81は、スライドドア20を開作動すべく、前述の態様で駆動モータ22を駆動する。これにより、スライドドア20が電動で開作動して全開位置へと移動する。これに伴い、スライドドア20が全開位置近傍に達した後、ラッチ機構により保持されると、回転センサ82より得たドア位置情報の規定範囲内でのモータ22の低回転を検知(ドア全開位置を規定しその範囲内でスライドドア20がこれ以上動かないことを検知)して、ECU81はモータ22の作動を停止する。
【0052】
また、スライドドア20の全開状態において、利用者によるハンドルスイッチ84の操作に伴い、スライドドア20を閉鎖する旨の情報が検出されると、ECU81は、スライドドア20を閉鎖可能にすべく、リリース・クローズアクチュエータ86を駆動してラッチ機構による全開状態の保持を解放する。続いて、ECU81は、スライドドア20を閉作動すべく、前述の態様で駆動モータ22を駆動する。これにより、スライドドア20が電動で閉作動して全閉位置へと移動する。これに伴い、スライドドア20が全閉位置近傍に達してラッチ・ポールスイッチ87によりスライドドア20の閉側での保持情報が取得されると、ECU81は、モータ22の作動を停止するとともにリリース・クローズアクチュエータ86を駆動してラッチ機構によりスライドドア20を全閉状態で保持する。
【0053】
なお、電動によるスライドドア20の開閉作動に際し、該スライドドア20を途中の開閉位置で停止させたとする。あるいは、電力不足などにより、スライドドア20が途中の開閉位置で停止したとする。この場合、駆動モータ22及びドラム23が一体回転するように連結されていることで、例えば坂道での停車時など、スライドドア20が自重で開閉作動しようとすると、駆動モータ22を回転させつつ当該作動が許容されてしまう。従って、ECU81は、駆動モータ22の駆動停止中に回転センサ82によりドラム23の回転が検出されると、スライドドア20を停止させるべく、モータ通電回路を閉鎖し電気的ブレーキを掛けるように設定されている。
【0054】
一方、切替検出スイッチ85により切替レバー56が手動切替位置Pmにあることが検出されているとき、スライドドア20の全閉状態において、利用者によるハンドルスイッチ84の操作に伴い、スライドドア20を開放する旨の情報が検出されると、ECU81は、スライドドア20を開放可能にすべく、リリース・クローズアクチュエータ86を駆動してラッチ機構による全閉状態の保持を解放する。しかしながら、ECU81は、スライドドア20を開作動すべく、駆動モータ22を駆動しない。
【0055】
また、スライドドア20の全開状態において、利用者によるハンドルスイッチ84の操作に伴い、スライドドア20を閉鎖する旨の情報が検出されると、ECU81は、スライドドア20を閉鎖可能にすべく、リリース・クローズアクチュエータ86を駆動してラッチ機構による全開状態の保持を解放する。しかしながら、ECU81は、スライドドア20を閉作動すべく、駆動モータ22を駆動しない。
【0056】
なお、電動又は手動によるスライドドア20の開閉作動途中で、利用者によるハンドルスイッチ84の操作に伴い、スライドドア20を開放する旨の情報が検出されたとしても、ラッチ・ポールスイッチ87によりスライドドア20の保持情報、回転センサ82より得たドア位置情報及びモータ22への通電状態により、ECU81は、ハンドルスイッチ84の操作に関わらず、リリース・クローズアクチュエータ86の不要な作動(リリース作動又はクローズ作動)を行わない。
【0057】
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)本実施形態では、駆動モータ22の回転は、交差軸歯車G1、遊星歯車機構G2等を介して十分に減速されてドラム23に伝達される。この場合、減速に係る交差軸歯車G1、遊星歯車機構G2等の回転方向への伝達効率は、例えばウォームギヤにおける回転方向への伝達効率に比べて大きいことから、より小型のモータで必要なトルクを得ることができる。
【0058】
また、スライドドア20を手動で開閉操作する場合、仮にリングギヤ46が回転の規制状態に切り替えられていたとしても、ドラム23の回転は遊星歯車機構G2、交差軸歯車G1等において効率よく回転伝達が行われることになり、ある程度の操作力で駆動モータ22(回転軸22b)等を回転しつつスライドドア20を開閉操作することができる。従って、手動及び電動によるスライドドア20の開閉操作を選択的に許容するために、例えば電磁クラッチを駆動モータ22及びドラム23間に設ける必要がなくなり、そのオン・オフ切替用のスイッチも自ずと不要になる。これにより、部品点数及びコストを削減することができ、ひいては全体としてより小型化することができる。
【0059】
さらに、第1小径ギヤ部41及び第1大径ギヤ部42d間(交差軸歯車G1)の減速が駆動モータ22の回転軸22bに対して伝達ギヤ42の軸線方向にずれた位置で行われ、且つ、減速に係る第2小径ギヤ部42e及び第2大径ギヤ部48bに対して第1大径ギヤ部42d(交差軸歯車G1)及びサンギヤ部48a(遊星歯車機構G2)が回転軸22bに近付く軸線方向他側、即ち駆動モータ22の外形がなす車両幅方向の距離Lの空間側に集約して配置されることで、伝達ギヤ42及びサンギヤ48の軸線方向への大型化、即ち車両幅方向(ドア厚さ方向)への大型化を抑制することができる。特に、伝達ギヤ42(第2小径ギヤ部42e)と噛合する第2大径ギヤ部48bを除いてサンギヤ48等の軸線周りに集約される遊星歯車機構G2を採用したことで、当該軸線周りの大型化を抑制しつつ、所要の減速比を確保することができる。従って、駆動モータ22がより小型化可能であり、且つ、ドラム23が前記距離Lの空間に少なくとも一部が重合するよう効率的に配置されていることもあって、全体としてスライドドア20内での配置自由度を向上することができる。
【0060】
(2)本実施形態では、ドラム23は、少なくとも一部がリングギヤ46の軸線方向の範囲で重合するように該リングギヤ46を内周側に収容することで、例えばこれらドラム23及びリングギヤ46を軸線方向に積み重ねて配置する場合に比べて当該方向への大型化、即ち車両幅方向への大型化を抑制することができる。
【0061】
(3)本実施形態では、スライドドア20を手動で開閉操作する場合、係脱ブロック58等によりリングギヤ46が回転の許容状態に切り替えられていれば、該リングギヤ46を空転させつつドラム23(キャリア47)の回転が許容される。このように、係脱ブロック58等によりドラム23側からの回転トルクと駆動モータ22の回転軸22b側からの駆動トルクとを切り離すことで、軽微な操作力でスライドドア20を開閉操作することができる。特に、係脱ブロック58等は、前記距離Lの空間に少なくとも一部が重合するよう効率的に配置されていることで、車両幅方向(ドア厚さ方向)への大型化を抑制することができる。
【0062】
一方、係脱ブロック58等によりリングギヤ46が回転の規制状態に切り替えられている状態であったとしても、スライドドア20の開閉操作に伴いドラム23及びキャリア47を介してリングギヤ46に所定レベルを超える負荷(トルク)が伝達されれば、係脱ブロック58等によるリングギヤ46の回転の規制状態を解除することができる。従って、リングギヤ46又は係脱ブロック58に過大な負荷(トルク)が加わることを回避することができる。特に、係止歯46d及びギヤ側係止歯58bを左右対称の略直角三角形状にしたことで、リングギヤ46で伝達される負荷(トルク)の方向、即ちスライドドア20の開閉方向及び開閉位置に関係なく、該リングギヤ46又は係脱ブロック58に過大な負荷(トルク)が加わることを回避することができる。
【0063】
(4)本実施形態では、駆動部材21は、ドラム23、伝達ギヤ42、リングギヤ46、キャリア47、サンギヤ48、キャンセル機構を構成する切替レバー56及び係脱ブロック58、中間プーリ26及びECU基板80等をケース30に一体的に収容してユニット化されることで、駆動部材21のスライドドア20側への組付性を向上することができる。また、これらドラム23等がケース30内に集約的に配置されることで、駆動部材21全体としての小型化を図ることができる。
【0064】
(5)本実施形態では、リングギヤ46の大輪ギヤ46cとの係合・解除に係る係脱ブロック58の直線運動(リングギヤ46の径方向への移動)を、該係脱ブロック58に連係される切替レバー56(及び切替ノブ70)の回転運動の変換によって極めて簡易な構造で実現することができる。また、切替ノブ70が解放されると、復帰スプリング63により付勢されて切替レバー56が係脱ブロック58及び大輪ギヤ46cが係合状態となる回転位置に復帰・保持される。
【0065】
(6)本実施形態では、駆動モータ22及びドラム23が一体回転するように連結されている状態において、例えば坂道での停車時など、スライドドア20が自重で開閉作動しようとすると、該スライドドア20を停止させるべく、モータ通電回路が閉鎖されて電気的ブレーキが掛けられる。従って、該当のブレーキ(摩擦ブレーキ)として機能する電磁クラッチを設けることなく、このようなスライドドア20の開閉作動を抑制することができる。
【0066】
(7)本実施形態では、切替レバー56の電動切替位置Pa又は手動切替位置Pmの切り替えは、切替ノブ70のキー溝70aと係合可能な適宜のキー(コインなど)でのみ可能であるため、例えば子供などによる安易な切り替えを防止することができる。
【0067】
(8)本実施形態では、電動又は手動によるスライドドア20の開閉作動途中で、利用者によるハンドルスイッチ84の操作に伴い、スライドドア20を開放する旨の情報が検出されたとしても、ラッチ・ポールスイッチ87によりスライドドア20の保持情報、回転センサ82より得たドア位置情報及びモータ22への通電状態により、ECU81は、ハンドルスイッチ84の操作に関わらず、リリース・クローズアクチュエータ86の不要な作動(リリース作動又はクローズ作動)を行わない。このように、リリース・クローズアクチュエータ86の不要な電動作動を防止することができ、例えばその作動音に起因する違和感を解消することができる。
【0068】
(9)本実施形態では、電動又は手動の切り替えは、スライドドア20に搭載した駆動部材21(切替ノブ70等)で行うことで、例えば車両幅方向両側に配設されたスライドドア20の各々に駆動部材21が搭載される場合、スライドドア20ごとに個別に電動又は手動を選択することができる。従って、例えば運転席側に設けられた1つのメインスイッチの操作によって両スライドドア20の電動又は手動の選択を一律に行う場合に比べて、使用形態の自由度を向上することができる。また、このようなメインスイッチを割愛したことで、電気的構成を簡易化することができ、ひいてはコストを削減することができる。
【0069】
(10)本実施形態では、駆動モータ22を除けば、ハウジング31の一側の開口部に伝達ギヤ42等を順次組み付けて第1カバー32で閉塞し、同じく他側の開口部にECU基板80を順次組み付けて第2カバー33で閉塞することで駆動部材21を組み立てることができるため、一方向に沿う組付けにより製造工程を簡素化することができる。
【0070】
(11)本実施形態では、切替レバー56は、スライドドア20の車室内側から切替ノブ70のキー溝70aを通じて操作力を伝達可能であるため、例えば子供のいたずらなどで操作されることを防止できる。特に、スライドドア20の閉鎖中のみ車室内の乗員が操作可能なように、例えばスライドドア20の全開時には切替ノブ70が隠蔽されるように配置しておくことで、スライドドア20の開操作直前における切替状態を、基本的にスライドドア20が閉鎖されるまで継続することができる。そして、スライドドア20を電動で開放したときは電動で閉鎖し、手動で開放したときは手動で閉鎖するようにその使用形態が整合することで、利便性を向上することができる。また、車両幅方向両側にスライドドア20を搭載する場合、スライドドア20ごとに電動・手動を選択できるため、その使用形態の自由度を向上することができる。さらに、切替ノブ70の操作は、基本的に当該スライドドア20を操作する乗員によって操作されるため、例えば運転者など当該スライドドア20を操作する乗員以外に操作されて、その使用形態に混乱を来すことも回避できる。
【0071】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・図10に示されるように、係脱ブロック58によりリングギヤ46が係止されているとき、係合ピン58aが周方向中央部に配置される左右対称のカム孔91aを有する切替レバー91を採用してもよい。この場合、切替レバー91を付勢する復帰スプリング(63)は、係合ピン58aが周方向中央部に配置されるように切替レバー91を保持することが好ましい。また、この状態では、切替レバー91がいずれの方向に回転しても係脱ブロック58によるリングギヤ46の係止が解除可能であり、切替レバー91の手動切替位置Pmとして2位置を設定してもよい。
【0072】
・前記実施形態において、第1小径ギヤ部41は、平歯車であってもよい。また、交差軸歯車としては、すぐば傘歯車、まがりば傘歯車あるいはゼロール傘歯車などを採用してもよい。
【0073】
・前記実施形態において、伝達ギヤ42(第1大径ギヤ部42d)の軸線は、第1小径ギヤ部41の軸線と交差しなくてもよい。つまり、第1小径ギヤ部41及び第1大径ギヤ部42dは、食い違い軸となるハイポイドギヤ(フェイスギヤ)を構成してもよい。
【0074】
・前記実施形態において、ドラム23から巻取り・繰り出しされるケーブル24,25の延在方向が案内プーリ27に渡される方向に一致する場合には、中間プーリ26を割愛してもよい。
【0075】
・駆動モータ22及びドラム23が一体回転するように連結されている状態において、例えば坂道での停車時など、スライドドア20の自重による開閉作動を抑制するために、回転軸に機械的クラッチを備えた駆動モータを採用してもよい。この場合、逆入力回転は減速前の小さなトルクで規制することができるため、当該クラッチは小型で十分となる。
【0076】
・切替手段(切替レバー56等)の作動を電動で行うようにしてもよい。
・切替手段(切替レバー56等)を割愛して、基本的に電動のみでスライドドア20を開閉作動させるようにしてもよい。この場合、固定軸としてのリングギヤ46をハウジング31に回転不能に取着すればよい。また、スライドドア20の開閉位置は、駆動モータ22の回転軸22bの回転位置と相関するため、前記回転センサ82により回転軸22bの回転位置を検出するようにしてもよい。
【0077】
・駆動部材21を車両ボディ10側に固定してもよい。例えばクォータパネル10bに駆動部材21を搭載する場合には、該駆動部材21側にテンショナー28,29を繋ぐことがより好ましい。また、ドア開口10aの踏み台となるステップに駆動部材21を搭載する場合には、ドラムとしてのベルトプーリ及びロープ部材としてのベルトを採用することがより好ましい。
【0078】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
・請求項3又は4に記載の車両用ドア駆動装置において、
前記切替手段は、
前記リングギヤの外周面に形成された係合部と、
前記係合部に臨む前記リングギヤの径方向に移動可能に設けられ、前記係合部と係合することで前記リングギヤの回転を規制する係脱部材と、
前記係脱部材に連係され、回転に伴い該係脱部材及び前記係合部の係合状態及び係合解除状態を切り替える入力部材と、
前記係脱部材及び前記係合部が係合状態となる回転位置に前記入力部材を付勢する付勢手段とを備えることを特徴とする車両用ドア駆動装置。同構成によれば、前記係合部との係合・解除に係る前記係脱部材の直線運動(前記リングギヤの径方向への移動)を、前記係脱部材に連係される前記入力部材の回転運動の変換によって極めて簡易な構造で実現することができる。また、前記入力部材が解放されると、前記付勢手段により付勢されて前記入力部材が前記係脱部材及び前記係合部が係合状態となる回転位置に復帰・保持される。
【符号の説明】
【0079】
G1…交差軸歯車、G2…遊星歯車機構、10…車両ボディ、10a…ドア開口、20…スライドドア(車両ドア)、21…駆動部材、22…駆動モータ(モータ)、22a…固定子、22b…回転軸、23…ドラム、24…第1ケーブル(ロープ部材)、25…第2ケーブル(ロープ部材)、26…中間プーリ(プーリ機構)、30…ケース、31…ハウジング、32…第1カバー、33…第2カバー、41…第1小径ギヤ部、42…伝達ギヤ、42d…第1大径ギヤ部、42e…第2小径ギヤ部、46…リングギヤ、46c…大輪ギヤ(係合部、切替手段)、46d…係止歯(キャンセル機構)、47…キャリア、48…サンギヤ、48a…サンギヤ部、48b…第2大径ギヤ部、54…遊星ギヤ、56,91…切替レバー(入力部材、切替手段)、56c,91a…カム孔、58…係脱ブロック(係脱部材、切替手段)、58b…ギヤ側係止歯(キャンセル機構)、63…復帰スプリング(付勢手段、切替手段)、70…切替ノブ、73…溝形状(キャンセル機構)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両ボディに形成されたドア開口を開閉する車両ドアの内部に固定され、モータ及び該モータにより回転駆動されるドラムを有する駆動部材と、
前記ドラムに巻き掛けられ、前記車両ボディに連結されたロープ部材とを備え、
前記ドラムの回転を前記ロープ部材を介して前記車両ボディ側に伝達することで前記車両ドアを開閉作動させる車両用ドア駆動装置において、
前記駆動部材は、
前記車両ドアの内部において、前記モータの外形がなす車両幅方向の距離の空間に少なくとも一部が重合するよう前記ドラムが配置されてなり、
前記モータの回転軸に一体回転するように連結された第1小径ギヤ部と、
車両幅方向に延びる軸線を有して回転自在に支持され、前記第1小径ギヤ部と噛合して該第1小径ギヤ部とともに交差軸歯車又はハイポイドギヤを構成する第1大径ギヤ部及び該第1大径ギヤ部の前記回転軸から離隔する軸線方向一側に配置された第2小径ギヤ部を有する伝達ギヤと、
車両幅方向に延びる軸線を有して回転自在に支持され、前記第2小径ギヤ部と噛合する第2大径ギヤ部及び該第2大径ギヤ部の前記回転軸に近付く軸線方向他側に配置されたサンギヤ部を有するサンギヤと、
前記サンギヤと同軸に配置に支持され、前記サンギヤ部の外周側に配置された固定軸をなすリングギヤと、
前記サンギヤ部及び前記リングギヤと噛合する遊星歯車を有し、前記ドラムに一体回転するように連結されたキャリアとを備えたことを特徴とする車両用ドア駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用ドア駆動装置において、
前記ドラムは、前記リングギヤと同軸に配置されており、少なくとも一部が前記リングギヤの軸線方向の範囲で重合するように該リングギヤを内周側に収容することを特徴とする車両用ドア駆動装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両用ドア駆動装置において、
前記モータの外形がなす車両幅方向の距離の前記空間に少なくとも一部が重合するよう配置され、前記リングギヤの回転の規制状態及び許容状態を切り替える切替手段と、 前記切替手段により前記リングギヤが回転の規制状態に切り替えられているとき、前記車両ドアの開閉操作に伴い前記ドラム及び前記キャリアを介して前記リングギヤに伝達される所定レベルを超える負荷によって、前記切替手段による前記リングギヤの回転の規制状態を解除するキャンセル機構を備えたことを特徴とする車両用ドア駆動装置。
【請求項4】
請求項3に記載の車両用ドア駆動装置において、
前記ドラムから巻取り・繰出しされる前記ロープ部材がそれぞれ巻き掛けられて前記車両ボディ側に連結される前記ロープ部材を案内するプーリ機構を備え、
前記駆動部材は、前記ドラム、前記伝達ギヤ、前記サンギヤ、前記リングギヤ、前記キャリア、前記切替手段、前記キャンセル機構及び前記プーリ機構を一体的に収容するケースを備えたことを特徴とする車両用ドア駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−106167(P2011−106167A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−262291(P2009−262291)
【出願日】平成21年11月17日(2009.11.17)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】