車両用後側方警報装置
【課題】 ガードレールや壁等の路側の静止物に対しては警報せず、後方から接近する車両や自車両の死角領域に留まる車両に対しては確実に警報する車両用後側方警報装置を提供する。
【解決手段】 警報対象判定手段は、ピーク検出手段により求められたピークタイミングをもとに着目するサンプリングタイミングを設定する着目サンプリングタイミング設定手段と、着目されたサンプリングタイミングのFFT演算結果について、周波数閾値設定手段により設定された周波数閾値以上の周波数成分が存在するか否かを判定する周波数判定手段とを備え、前方接近物認識手段により、物体が自車両の前方方向から接近していると判定された場合において、周波数判定手段により周波数閾値以上の周波数成分が存在すると判定されたときに、この物体は静止物であるとして警報対象でないと判定する。
【解決手段】 警報対象判定手段は、ピーク検出手段により求められたピークタイミングをもとに着目するサンプリングタイミングを設定する着目サンプリングタイミング設定手段と、着目されたサンプリングタイミングのFFT演算結果について、周波数閾値設定手段により設定された周波数閾値以上の周波数成分が存在するか否かを判定する周波数判定手段とを備え、前方接近物認識手段により、物体が自車両の前方方向から接近していると判定された場合において、周波数判定手段により周波数閾値以上の周波数成分が存在すると判定されたときに、この物体は静止物であるとして警報対象でないと判定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行中の自車両の側方及び斜め後方(ドライバーにとっての死角またはブラインドスポット)に存在する物体を検知し、警報を発する車両用後側方警報装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両走行中の事故を防止するために車両に測距センサなどを装備し、車両周囲の障害物を検出して運転者に報知する警報装置が知られている。
例えば、従来の警報装置は、特開昭54-118036号公報に開示されている無謀追い越し警報装置が知られている。この装置は、車両の車線変更を行なう方向の斜め後方を監視して、その方向における後続車両を検出するものである。この装置においては、車線変更の指示操作が検出され、この指示操作があったときに後続車両が所定領域に入っているか否かを判定し、この判定結果に応じて追い越し危険の警報が発せられる。
また、特開2000-233699号公報に開示されている警報装置は、操舵角及びヨーレートセンサ、ナビゲーション等の情報に基づいて、車両走行状況を識別し、走行状況に適した方向の物体を検出することによって、車両周囲に障害物が検出されたときに警報を発する制御をしていた。
【0003】
【特許文献1】特開昭54-118036号公報
【特許文献2】特開2000-233699号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来における警報装置では、特定の距離範囲に存在する全ての物体に対して警報を発してしまうので、例えば、高速道路の出口等でガードレールや壁に対しても警報が発せられ、ドライバーに煩わしさを感じさせてしまうという問題があった。
【0005】
本発明は、このような課題を解決すべく考案されたものであり、ガードレールや壁等の路側の静止物に対しては警報せず、後方から接近する車両や自車両の死角領域に留まる車両に対しては確実に警報する車両用後側方警報装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による車両用後側方警報装置は、自車両の車線変更側の斜め後方に向けてパルス状の電波を送信する送信手段と、この送信手段から送信した電波が複数の物体で反射した反射波を受信し、ビート信号を出力する受信手段と、送信開始時からの所定の時間間隔でビート信号をサンプリングするサンプリング手段と、このサンプリング手段により求められたサンプリングタイミング毎のサンプリング時系列データに対してFFT演算を行うFFT演算手段と、上記各サンプリングタイミングのFFT演算結果について最大振幅値およびその周波数成分を求める最大振幅成分抽出手段と、この最大振幅成分抽出手段により求められた各サンプリングタイミングにおける最大振幅値をもとに検出閾値を設定する検出閾値設定手段と、上記最大振幅成分抽出手段により求められた各サンプリングタイミングにおける最大振幅値をもとに、上記検出閾値を超えるピークを検出するピーク検出手段と、このピーク検出手段により求められたピークタイミングから距離を算出し、そのピークタイミングにおける周波数成分から相対速度を算出する距離・相対速度演算手段と、ドライバーの車線変更意思を検出する車線変更意思検出手段と、上記ピーク検出手段により検出された物体が、ドライバーにとっての警報対象かどうかを判定する警報対象判定手段と、少なくとも、自車両の側方及び斜め後方の所定距離内に物体が存在することが検出され、かつ上記車線変更意思検出手段によってドライバーの車線変更意思が検出され、かつ上記警報対象判定手段によりこの物体がドライバーにとっての警報対象であると判定された時、ドライバーに対して警報を行う警報判定手段とを備えた車両用後側方警報装置において、上記警報対象判定手段は、距離の時間的な履歴から自車両の前方方向から接近する物体を認識する前方接近物認識手段と、自車速に応じてドップラー周波数に対する閾値を設定する周波数閾値設定手段と、上記ピーク検出手段により求められたピークタイミングをもとに着目するサンプリングタイミングを設定する着目サンプリングタイミング設定手段と、上記着目されたサンプリングタイミングのFFT演算結果について、上記周波数閾値設定手段により設定された周波数閾値以上の周波数成分が存在するか否かを判定する周波数判定手段とを備え、上記前方接近物認識手段により、物体が自車両の前方方向から接近していると判定された場合において、上記周波数判定手段により上記周波数閾値以上の周波数成分が存在すると判定されたときに、この物体は静止物であるとして警報対象でないと判定するようにしたものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の車両用後側方警報装置によれば、路側のガードレールや壁等の静止物と、後方から接近する車両や死角領域に留まる車両を区別して、後者の場合にのみ警報することができるので、ドライバーにとって不要な警報を除去して必要な警報のみを発生させることができるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
本発明の実施の形態1について説明する。
本実施の形態1における車両用後側方警報装置の構成を図1に示す。図1の各ブロックは次の通りである。
201:所定幅のパルス状の電磁波を送信する送信手段
202:電磁波の周辺対象物による反射波を受信する受信手段
203:受信波を2値化するためのコンパレータ手段
204:送信パルスや受信タイミング信号を発生するタイミング制御手段
205:2値化された受信信号をサンプリングタイミング毎に積算する受信信号積算手 段
206:サンプリングタイミング毎に積算受信信号に対してFFT
(Fast Fourier Transf orm)演算を行うFFT演算手段
207:サンプリングタイミング毎のFFT演算結果から最大振幅値およびその周波数 成分を求める最大振幅成分抽出手段
208:サンプリングタイミング毎のFFT演算結果の最大振幅値をもとに検出閾値を 設定する検出閾値設定手段
209:サンプリングタイミング毎のFFT演算結果の最大振幅値をもとに、検出閾値 を超えるピークを検出するピーク検出手段
210:距離、相対速度を演算する距離・相対速度演算手段
211:ドライバーにとっての警報対象かどうかを、判定する警報対象判定手段
212:方向指示器214のON/OFF状態および警報対象判定手段の判定結果に基 づき、警報ブザー213を駆動させるべきかどうか判定する警報判定手段
215:入力車速
【0009】
ここでは、受信信号を2値化し、積算する例を示すが、受信信号をA/D変換する構成にしてもよい。
【0010】
図2に送信手段201、受信手段202を含むRFモジュールの構成を示す。
発信器301によって発生された12GHzの電波は、分配器302によって分配され、変調器303により、パルス(ASK)変調される。その後、逓倍器304によって24GHzに逓倍され、バンドパスフィルタ305により、12GHzの電波を抑制して、送信アンテナ306を介して、24GHzの電波が放射される。
物体からの反射波は受信アンテナ307を介して受信され、RF増幅器308により増幅された後、ミキサ310に入力される。一方、分配器302により分配された12GHzの電波は逓倍器309により24GHzに逓倍され、ミキサ310に入力される。ミキサ310では、上記2つの入力電波が混合され、ベースバンド信号が出力される。その後、ローパスフィルタ311により、高周波成分がカットされ、ベースバンドアンプ312にて増幅された後、受信信号として出力される。
【0011】
次にタイミング制御手段204、受信信号積算手段205およびFFT演算手段206から構成されるFPGAの内手段構成を図3(a)に、タイミングチャートを図3(b)にそれぞれ示す。
このFPGAは、図3(a)に示すように、タイミング制御回路、シフトレジスタ、シフトレジスタの各ビットに対応した加算器、積算用レジスタ、オフセット回路、所定回数分の積算値を記憶するための積算値用メモリおよびFFT演算を行うFFTモジュールを構成している。
タイミング制御回路は、FPGA外手段に接続した発振器によるクロック信号(例えば125MHz=8ns周期)に基づき、送信手段が電磁波放射をOn/Offするための送信信号、後述のシフトレジスタに対してビットシフトするタイミングを伝えるシフト信号、加算器に対して加算タイミングを伝える加算信号、積算用レジスタに対して所定回数(例えば100回)の積算が完了したことを示す積算完了信号を生成する。この積算完了信号は、積算用レジスタの値を積算値用メモリに転送し、積算用レジスタの値をクリアする働きを有するものである。シフトレジスタは、タイミング制御回路のシフト信号に基づき1ビットずつシフトしながら、コンパレータ回路の出力する2値化データを記憶していく(ビット数=N)。加算器は、タイミング制御回路からの加算信号に従って各ビットの2値化データ(0又は1)と積算用レジスタの内容を加算する。積算用レジスタは、加算器による出力を積算データとして保持するものである。オフセット回路(例えば、オフセット値=50)は積算用レジスタの積算値に対して所定値を減算する回路であり、後のFFT演算に際し、積算値の直流成分をカットするためのものである。積算値用メモリは、各ビット(サンプリングタイミング)の所定個数(例えば128個)のオフセット後の積算結果を記憶するものである。FFTモジュールは、各ビット毎に所定個数の積算結果を入力データとして、FFT演算を行うものである。
【0012】
次にこのFPGAの動作を説明する。まず、図3(b)に示すように、外手段クロック信号に基づき、送信信号を立ち上げ1クロック後に立ち下げる。送信信号の立ち上げと同時にクロック信号に同期したシフト信号をシフトレジスタのビット数だけ出力する。このシフト信号に基づき、シフトレジスタはコンパレータ回路の出力する2値化データを各ビットに保持していく。続いて、シフトレジスタのビット数分のシフト信号を出力した後、加算信号を出力する。この信号に基づいて、加算器は加算処理を行う。そして、所定回数(例えば100回)この動作を繰り返した後、積算完了信号を出力し、各ビット毎にオフセット回路を介した後、オフセット後の積算値を積算値用メモリへ転送して、積算用レジスタの値をクリアする。
積算値用メモリに所定個数の積算結果が記憶されると、FFTモジュールにて、各ビット毎にFFT演算を行う。
全てのビットに対してFFT演算が終了すると、FFTモジュールからタイミング制御回路へFFT処理終了信号が送信され、その信号を受けて、CPUへ同信号を送信する。
CPUは、FFT処理終了信号を受信すると、各ビットのFFT演算結果を読み出す。
【0013】
次に最大振幅成分抽出手段207、検出閾値設定手段208、ピーク検出手段209、距離・相対速度演算手段210、警報対象判定手段211および警報判定手段212から構成されるCPUにおける処理を説明する。
【0014】
図4にCPUにおける処理のフローチャートを示す。
S501:各サンプリングタイミングのFFT演算結果について、最大振幅値およびそ
の周波数成分を求める。
S502:各サンプリングタイミングの最大振幅値をもとに検出閾値を設定する。
S503:各サンプリングタイミングの最大振幅値をもとに検出閾値を越えるピークを 検出する。
S504:ピークタイミングから距離を算出し、そのピークタイミングにおける周波数 成分から相対速度を算出する。
S505:検出された物体がドライバーにとっての警報対象かどうかを判定する。
S506:ドライバーに対して警報を行う。
【0015】
次に最大振幅成分抽出処理S501について詳細に説明する。
図5にあるサンプリングタイミングにおけるFFT演算結果(振幅算出後)の例を示す。図に示すように例えば、低周波数側から最大振幅値をサーチしていき、最大振幅値およびその周波数値を求める。
FFT演算結果の1周波数ビンに相当する周波数(周波数きざみ)は、FFT処理に入力する時系列データのサンプル間隔を100μs、FFT点数を128点とした場合には、観測時間が、100μs×128=12.8msとなるので、78.125Hzとなる。よって、例えば、第5周波数ビンが最大振幅となっている場合では、周波数値は、
5×78.125=390.625 [Hz]
となる。
【0016】
図6に最大振幅成分抽出処理S501のフローチャートを示す。
S701:最大振幅値をサーチするサンプリングタイミングNo.iを初期化。
S702:サンプリングタイミングNo. iのFFT演算結果に対して、最大振幅値をサ ーチする。
S703:最大振幅値を記憶する(例えばレジスタA[i]に格納)。
S704:最大振幅を持つ周波数値を記憶する(例えばレジスタ F[i]に記憶)。
S705:サンプリングタイミングNo.をインクリメント。
S706:全てのサンプリングタイミングについて、最大振幅値サーチの終了をチェッ クする。
以下、各サンプリングタイミングについて、記憶された最大振幅値(上記A[i])を、単 に“振幅値”と呼ぶことにする。
【0017】
次に検出閾値設定処理S502について詳細に説明する。
検出閾値は、各サンプリングタイミングについて、振幅値の時間的な移動平均値を求め、その移動平均値に予め設定した一定値を加えた値とする。
【0018】
図7に検出閾値設定処理S502のフローチャートを示す。
S801:サンプリングタイミングNo.iを初期化。
S802:サンプリングタイミングNo.iについて、過去の振幅値(N回分)の移動平均 値を算出する(Av[i])。
S803:移動平均値Av[i]に予め設定した一定値αを加え、検出閾値とする。
S804:サンプリングタイミングNo.をインクリメント。
S805:全てのサンプリングタイミングについて、検出閾値設定の終了をチェックす る。
【0019】
なお、ここでは各サンプリングタイミングについて、振幅値の移動平均値を求め、所定値を加えた値を検出閾値としたが、全サンプリングタイミングにおいて、予め設定した所定値を検出閾値としてもよい。
【0020】
次にピーク検出処理S503について詳細に説明する。
図8にピーク検出の様子を示す。図のように検出閾値を超える極大点をピークとして、そのサンプリングタイミングと振幅値(ピークタイミングおよびその前後のタイミング)を記憶する(j、k、A[j]、A[j-1]、A[j+1]、A[k]、A[k-1]、A[k+1])。さらに、最大振幅成分抽出処理S501で求めたピークタイミングにおける周波数値も記憶する(F[j]、F[k])。
【0021】
図9にピーク検出処理S503のフローチャートを示す。
S1001:サンプリングタイミングNo.iを初期化。
S1002:ピークタイミング(Pt[n])・ピークレベル(Pa[n])・ピーク周波数
(Pf[n])を初期化(=0)。ただし、n = 0〜M。
S1003:ピーク情報(ピークタイミング・ピークレベル・ピーク周波数)を格納す るレジスタの配列番号(以下、インデックス)の初期化(j = 0)
S1004:一つ前のサンプリングタイミングの振幅値および一つ後のサンプリングタ イミングの振幅値と比較し、サンプリングタイミングiにて極大になっているかどうか をチェックする。極大になっている場合にはS1005へ進み、なっていない場合には S1008へ進む。
S1005:サンプリングタイミングiでの振幅値と検出閾値とを比較し、検出閾値よ りも大きい場合にはS1006へ進み、それ以外の場合にはS1008へ進む。
S1006:サンプリングタイミングiの振幅値が極大かつ検出閾値より大きいので、 ピーク情報をレジスタに格納する(Pt[j] = i、Pa[j] = A[i]、Pf[j] = F[i]、ここで F[i]は、S501で求めた周波数値)。
S1007:ピークインデックス No.(j)をインクリメントする。
S1008:サンプリングタイミングNo.(i)をインクリメントする。
S1009:全てのサンプリングタイミング(ただし、i = 2〜N-2)について、処理 が終了したかどうかをチェックする。終了していない場合には、S1004に戻り、終 了した場合には本処理を終了する。
【0022】
次に距離・相対速度演算処理S504について詳細に説明する。
ピーク検出処理S503で求めたピーク情報から距離および相対速度を算出する。
【0023】
図10に距離・相対速度演算処理S504のフローチャートを示す。
S1101:ピークインデックスNo.を初期化(j = 0)。
S1102:ピークタイミング(Pt[j])が0か否かを判定、すなわち、ピークが存在 するか否かを判定する。ピークが存在する場合にはS1103へ進み、ピークが存在し ない場合にはS1108に進む。
S1103:ピークタイミング(Pt[j])の両隣のサンプリングタイミングの振幅値
(A[Pt[j]-1]、A[Pt[j]+1])を比較し、左隣のサンプリングタイミングにおける振幅値 の方が右隣のサンプリングタイミングにおける振幅値より大きい場合には、S1104 に進み、それ以外の場合には、S1105に進む。
S1104:Pt[j]の他、Pt[j]-2、Pt[j]-1、Pt[j]+1のサンプリングタイミングに お ける振幅値(A[Pt[j]]、A[Pt[j]-2]、A[Pt[j]-1]、A[Pt[j]+1])を使用し、加重平均 をとる。
S1105:Pt[j]の他、Pt[j]-1、Pt[j]+1、Pt[j]+2のサンプリングタイミングに お ける振幅値(A[Pt[j]]、A[Pt[j]-1]、A[Pt[j]+1]、A[Pt[j]+2])を使用し、加重平均 をとる。
S1106:1サンプリングに相当する距離DIST_UNITを乗じ、単位を[m/256]とする ために、256を乗ずる。
S1107:ピークタイミング(Pt[j])における周波数値(Pf[j])から相対速度を 算出する。相対速度の算出には(式1)を用いる。
(相対速度)=(光速)×(ドップラー周波数)/(2×キャリア周波数)
・・・(式1)
例えば、
光速 =3×108 [m/s]
ドップラー周波数=1340 [Hz]
キャリア周波数 =24.125 [GHz]
の場合、
相対速度 =8.3 [m/s] (=30 [km/h])
となる。
ここでは、単位を[m/s/256]とするために、256を乗ずる。
なお、周波数値Pf[j]は、最大振幅成分抽出処理S501でFFT演算結果から算出されたものである。
S1108:ピークが存在しない場合の処理であり、DIST_MAXを距離値(Dist[j])と する。
S1109:SPEED_MAXを相対速度値(Speed[j])とする。
S1110:ピークインデックスをインクリメントする。
S1111:全てのピークインデックスについて処理が終了したかどうかをチェックす る。終了していない場合には、S1102に戻る。
【0024】
なお、ここでは、ピーク前後の振幅値について加重平均を用いたが、それ以外の方法を用いて、距離の補間を行ってもよい。
【0025】
次に警報対象判定処理S505について詳細に説明する。
まず、自車両の前方方向から接近する物体の認識方法について説明する。
図11(a)及び(b)に示すように、測距センサ1201は車両のコーナーに設置され、測距センサ1201の最大放射方向(アンテナ利得が最大になる方向)が自車両1202の斜め45度後方になるように設置されている。また本実施の形態の説明のために使用する測距センサ1201の視野角は90度とする。
この場合、図11(a)のように自車両1202が隣車線の前方から接近する車両1203とすれ違う状況では、距離Rの時間的推移の形が図11(c)のようになる。一方、図11(b)のように、隣車線の後方から接近する車両1204が自車両を追い越す状況では、距離Rの時間的推移の形が図11(d)のようになる。
このように、距離Rの時間的な推移を追うことにより、自車両の前方方向から接近する物体を認識することができる。
【0026】
次に自車両の前方方向から接近する物体からの反射波に含まれるドップラー周波数について説明する。
図12に自車両の前方方向から接近する物体を検出する場合のモデル図を示す。ここでは、物体が自車両の進行方向前方から接近してきて、後方へ遠ざかっていく様子を示している。例えば、位置Aの場合には、センサ方向の速度ベクトル成分VraはVs*cosθAとなり、比較的小さいが、位置Bの場合には、センサ方向の速度ベクトル成分VrbはVs*cosθBとなり、Vraよりも大きい値となり、後方へ行くに従い、Vsに近づくことになる。いずれの場合においても、速度ベクトル成分に応じたドップラー周波数が反射波に含まれることになる。
【0027】
また、図13のようにガードレール等のような長さを持った路側の静止物の横を走行するような場合においては、距離R1で検出しているような場合でも、距離R1より遠方からの反射波が存在し、そのような遠方からの反射波には、ある程度大きなセンサ方向の速度ベクトル成分が存在し、それに応じたドップラー周波数が存在することになる。
【0028】
したがって、前方方向からの接近検出物について、その反射波に含まれるドップラー周波数に対して自車速に応じた周波数閾値を設け、その閾値を超える周波数成分が存在した時には、路側のガードレール等の長さを持った静止物からの反射として、警報対象としないことにより、煩わしい誤警報を抑制することができる。
一方、死角内に留まる車両を検出するような場合においては、その反射波に含まれるドップラー周波数は極めて小さくなるため、警報対象とすることができる。
【0029】
図14に警報対象判定手段211のブロック図を示す。図14において、警報対象判定手段211は、距離の時間的な履歴から自車両の前方方向から接近する物体を認識する前方接近物認識手段2111と、自車速に応じてドップラー周波数に対する閾値を設定する周波数閾値設定手段2112と、ピーク検出手段により求められたピークタイミングをもとに着目するサンプリングタイミングを設定する着目サンプリングタイミング設定手段2113と、着目されたサンプリングタイミングのFFT演算結果について、周波数閾値設定手段2112により設定された周波数閾値以上の周波数成分が存在するか否かを判定する周波数判定手段2114とを備え、前方接近物認識手段2111により、物体が自車両の前方方向から接近していると判定された場合において、周波数判定手段2114により周波数閾値以上の周波数成分が存在すると判定されたときに、この物体は静止物であるとして警報対象でないと判定する。
【0030】
図15に警報対象判定処理S505のフローチャートを示す。
S1501:ピークインデックスNo.(j)をクリアする。(j=0)
S1502:それぞれの検出ピークに対するターゲットフラグ(Ftarget[j]、j=0〜M 、警報対象とする時にこのフラグをセットする。)をクリアする。
S1503:ピークタイミング(Pt[j])が0か否かを判定、すなわち、ピークが存在 するか否かを判定する。Pt[j]が0より大きい場合、すなわち、ピークが存在する場合 には、S1504に進み、それ以外の場合は、S1508に進む。
S1504:前方接近物認識処理(後に詳細説明)。前方から接近する物体と認識した 場合には、ターゲットフラグをセットしない。
S1505:自車速に応じてドップラー周波数に対する閾値を設定する。例えば、自車 速が100km/hの場合に、自車速の60%、すなわち、60km/h相当のドップ ラー周波数を閾値とする。具体的には、この場合、(式1)からドップラー周波数を逆 算すると、2681Hzとなる。
S1506:着目するサンプリングタイミングを設定する。着目サンプリングタイミン グは、図18に示すように、ピークタイミングおよびそのタイミングより遠方側の隣り 合う複数のサンプリングタイミングとする(Att[k]、k=0〜N)。あるいは、ピークタイ ミングを除き、その遠方側の隣り合う複数のサンプリングタイミングとしてもよい。
S1507:周波数判定処理(後に詳細説明)。着目されたサンプリングタイミングの それぞれのFFT演算結果に対して、所定の振幅閾値を設定し、その閾値を超える最大 周波数と、自車速に応じて設定された周波数閾値とを比較し、最大周波数の方が大きい 場合には、路側の静止物と判断し、ターゲットフラグをセットしない。
S1508:全てのピークについて、処理が終了したかどうかをチェックする。終了し ていない場合には、S1503に戻る。
【0031】
図16に前方接近物認識処理S1504のフローチャートを示す。
S1601:初めて検出された物体かどうかが判定される。初めて検出した物体であれ ばS1602へ進み、そうでなければS1604に進む。
S1602:前方接近物判定距離Rstartを、今回、測距センサ1201が検出した距 離Rに設定する。
S1603:ターゲットフラグをクリアする(初期化)。
S1604:前方接近物判定距離Rstartと測距センサ1201が検出した距離Rとの 比較が行われる。R<Rstartの場合はS1605へ進み、それ以外の場合は処理を終 了する。
S1605:後方から接近する物体と判断し、ターゲットフラグをセットする。
すなわち、この前方接近物認識処理S1504においては、物体が初めて検出された時の距離を基準距離とし、この基準距離よりも短い距離で検出した履歴がある場合に、この物体を後方から接近する物体であると認識し、それ以外の場合は、物体を前方から接近する物体であると認識する。
【0032】
図17に周波数判定処理(S1507)のフローチャートを示す。
S1701:着目サンプリングタイミングのインデックスをクリアする(k = 0)。
S1702:着目サンプリングタイミング(Att[k])におけるFFT演算結果に対して 、所定の振幅閾値を設定する。
S1703:図19に示すように、振幅閾値を超える最大周波数(Fm)を検出する。
S1704:FmとS1505で算出した周波数閾値とを比較し、Fmの方が大きい場合に は、S1706に進み、それ以外の場合には、S1705へ進む。
S1705:静止物ではないとして、ターゲットフラグ(Ftarget[j])をセットする。
S1706:全ての着目サンプリングタイミングについて処理が終了したかどうかをチ ェックする。終了していない場合には、S1702に戻る。
【0033】
次に警報判定処理S506について詳細に説明する。図20は本処理のフローチャート である。
S2001:方向指示器がONの状態かどうかが判定される。方向指示器ONの場合は ドライバーが警報を要求する状況であるとしてS2002に進み、それ以外の場合は警 報をOFFにするべくS2008へ進む。
S2002:ピークインデックスをクリアする(j = 0)
S2003:測距センサ1201が検出した距離Dist[j]と警報判定距離Rwarnとの比 較が行われる。Dist[j]<Rwarnの場合は、測距センサ1201が検出した物体が自車 両と衝突する可能性が高い領域に存在するものとしてS2004へ進む。それ以外の場 合は警報をOFFにするべくS2007へ進む。
S2004:ターゲットフラグ(Ftarget[j])の状態により警報対象かどうかを判定 する。ターゲットフラグがセット状態であれば、測距センサ1201が検出した物体が ドライバーにとっての警報対象であるとして、S2006へ進む。それ以外の場合は警 報をOFFにするべくS2005へ進む。
S2005:警報フラグ(Fwarn)をクリアし、S2009へ進む。
S2006:警報フラグ(Fwarn)をセットし、処理を終了する。
S2007:警報フラグ(Fwarn)をクリアし、S2009へ進む。
S2008:警報フラグ(Fwarn)をクリアし、処理を終了する。
S2009:全てのピークについて、処理が終了したかどうかをチェックする。終了し ていない場合には、S2003に戻る。
【0034】
以上より、本実施の形態によれば、路側のガードレールや壁等の静止物と、後方から接近する車両や死角領域に留まる車両を区別して、後者の場合にのみ警報することができるので、ドライバーにとって不要な警報を除去して必要な警報のみを発生させることができるという効果が得られる。
【0035】
尚、本実施の形態1においては、測距センサ1201を、その最大放射方向が自車両の斜め45度後方になるように設置し、また測距センサ1201の視野角を90度としたが、図21に示すように、視野角が車両の進行方向軸Yと軸Yと垂直をなす軸Xによって囲まれる図21の斜線の領域に含まれる範囲で、任意の設置方向と視野角が選択できる。
【0036】
実施の形態2.
本発明の実施の形態2について説明する。
本実施の形態2における車両用後側方警報装置の構成は図1と同じ構成をとる。また処理の流れも図4に従うが、S505の警報対象判定処理の方法が異なる。
【0037】
本実施の形態2にかかるS505の警報対象判定処理について詳細に説明する。以下、実施の形態1と異なる点についてのみ説明する。
【0038】
実施の形態1では、図15のS1506において、着目サンプリングタイミングを図18にも示すように、ピークタイミングおよびそのタイミングより遠方側の隣り合う複数のサンプリングタイミングとしたが、本実施の形態2では、ピークタイミングのみを着目サンプリングタイミングとする。例えば、図13にて距離R1のみから反射してくるような場合についても、高速道路走行時のような自車速が比較的大きい時には、センサ方向の速度ベクトル成分が大きくなり、適当な周波数閾値を設定することにより、路側の静止物として判定することができる。
【0039】
また、実施の形態1では、図15のS1507において、着目されたサンプリングタイミングのそれぞれのFFT演算結果に対して、所定の振幅閾値を設定し、その閾値を超える最大周波数と、自車速に応じて設定された周波数閾値とを比較した。しかしながら、図22に示すように、隣車線を走行する大型トラック1203を追い越すような状況において、反射波のレベルが非常に大きい場合には、FFT演算結果が図23(a)のように広がりを持ってしまい、所定の振幅閾値を超える最大周波数(Fm)が比較的大きな値になることがある。これはすなわち、追い越し車両をガードレール等の静止物と誤認識することを意味する。この課題を解決するために、本実施の形態2では、所定の周波数範囲での平均振幅値を算出し、その値をもとに振幅閾値を設定する(例えば、平均振幅値の4倍)。このようにすることで、最大周波数(Fm)を小さくすることができ、誤認識を抑制することができる。
【0040】
また、本実施の形態2では、図24の(a)及び(b)に示すように、測距センサ1201は車両のコーナーに設置され、測距センサ1201の最大放射方向(アンテナ利得が最大になる方向)が自車両の斜め45度後方になるように設置されている。また本実施の形態の説明のために使用する測距センサ1201の視野角は90以上となっており、ここでは120度とする。この場合、図24(a)のように自車両2401が前方車2402とすれ違う状況では、距離Rの時間的推移の形が図24(c)のようになる。これに対し、図24(b)のように後方接近物体2404が自車両2403を追い越す状況では、図24(d)のようになる。距離Rの時間的な推移を追うことにより、自車両の前方方向から接近する物体を認識することができる。ただし、実施の形態1(測距センサ1201の視野角が90度未満の場合)と比較して、本実施の形態では、図24(a)のように自車両2401が前方車2402とすれ違う状況であっても、物体までの距離Rの時間推移は、初めて検出した時の距離を若干下回ってから徐々に大きくなるという変化を示す。
【0041】
図25に前方接近物認識処理S1504のフローチャートを示す。
S2501:初めて検出された物体かどうかが判定される。初めて検出した物体であれ ばS2502へ進み、そうでなければS2504に進む。
S2502:前方接近物判定距離Rstartを、今回、測距センサ1201が検出した距 離Rからオフセット距離(Roffset)を減じた値に設定する。
S2503:ターゲットフラグをクリアする(初期化)。
S2504:前方接近物判定距離Rstartと測距センサ1201が検出した距離Rとの 比較が行われる。R<Rstartの場合はS2505へ進み、それ以外の場合は処理を終 了する。
S2505:後方から接近する物体と判断し、ターゲットフラグをセットする。
すなわち、この前方接近物認識処理S1504においては、物体が初めて検出された時の距離から所定距離だけ短い距離を基準距離とし、この基準距離よりも短い距離で検出した履歴がある場合に、この物体を後方から接近する物体であると認識し、それ以外の場合は、物体を前方から接近する物体であると認識する。
【0042】
以上より、本実施の形態2によれば、路側のガードレールや壁等の静止物と、後方から接近する車両や死角領域に留まる車両を区別して、後者の場合にのみ警報することができるので、ドライバーにとって不要な警報を除去して必要な警報のみを発生させることができるという効果が得られる。さらに、大型トラックのように大きな反射体を追い越すような状況においても、ガードレール等の路側の静止物と誤認識することなく、かつ、測距センサ1201の視野角を90度以上に拡大して、つまり後側方への監視領域を拡大しながら、上記の効果が得られるという効果がある。
【0043】
また、実施の形態1のように、測距センサ1201の視野角が90度未満であっても、距離Rにノイズが含まれる場合、具体的には、自車両が前方接近物とすれ違う状況における距離Rの時間的推移が、図26に示すような出力しか得られない場合においても、本実施の形態にかかる警報対象判定処理を実施することにより、前方接近物体を認識することができる。
【0044】
実施の形態3.
本発明の実施の形態3について説明する。
本実施の形態における後側方警報装置の構成は図1と同じ構成をとる。また処理の流れも図4に従うが、S505の警報対象判定処理の方法が異なる。
【0045】
本実施の形態3にかかるS505の警報対象判定処理について詳細に説明する。以下、実施の形態1と異なる点についてのみ説明する。
【0046】
図13にはガードレール等の長さを持った路側の静止物の横を走行する場合の検出の様子を示したが、路側の静止物の種類には様々なものがある。その種類によっては、図13のように比較的近い距離からより遠方の距離まで連続的に反射されず、図27に示すように、反射が単一部位からとなってしまう。図27(b)のような場合では比較的遠距離からの反射であるので、センサ方向の速度ベクトル成分は大きくなるが、図27(a)のようにセンサのほぼ真横からの反射の場合においては、センサ方向の速度ベクトルは非常に小さくなってしまう。ただし、そのような路側の静止物の場合において、現実的には自車両は走行しているので、センサからの相対位置が同一の状態が続くことはなく、センサが測定する毎にその反射ポイントが刻々と変化する現象となる。
【0047】
したがって、所定時間、周波数判定手段により、閾値以上の周波数成分が存在するかどうかを監視しておくことにより、路側の静止物の判定が可能となる。
【0048】
図28に周波数判定処理S1507のフローチャートを示す。
S2801:着目サンプリングタイミングのインデックスをクリアする(k = 0)。
S2802:着目サンプリングタイミング(Att[k])におけるFFT演算結果に対して 、所定の振幅閾値を設定する。
S2803:振幅閾値を超える最大周波数(Fm)を検出する。
S2804:Fmと周波数閾値とを比較し、Fmの方が大きい場合には、S2805に進み 、それ以外の場合には、S2806へ進む。
S2805:過去Q回分の静止物フラグ情報の最新情報として、静止物フラグをセット する。
S2806:過去Q回分の静止物フラグ情報の最新情報として、静止物フラグをクリア する。
S2807:過去Q回分の静止物フラグ情報中に静止物フラグがセットされた経緯があ るかどうかをチェックし、静止物フラグがセットされた経緯がある場合には、S280 9に進み、それ以外の場合には、S2808に進む。
S2808:静止物ではないとして、ターゲットフラグ(Ftarget[j])をセットする。
S2809:全ての着目サンプリングタイミングについて処理が終了したかどうかをチ ェックする。終了していない場合には、S2802に戻る。
【0049】
以上より、本実施の形態3によれば、路側の長さを持った静止物の種類によらず、静止物と判定できるので、ドライバーにとって不要な警報をより減らすことができ、かつ、後方から接近する車両や死角領域に留まる車両に対しては確実に警報できるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施の形態1のブロック構成を示す図である。
【図2】実施の形態1のRFモジュールの構成を示す図である。
【図3】実施の形態1のFPGA内の構成と動作を説明するための図である。
【図4】実施の形態1におけるCPU内の処理の概略を説明するためのフローチャートである。
【図5】実施の形態1の最大振幅成分抽出処理を説明するための図である。
【図6】実施の形態1の最大振幅成分抽出処理のフローチャートである。
【図7】実施の形態1の検出閾値設定処理のフローチャートである。
【図8】実施の形態1のピーク検出処理を説明するための図である。
【図9】実施の形態1のピーク検出処理のフローチャートである。
【図10】実施の形態1の距離・相対速度演算処理のフローチャートである。
【図11】実施の形態1の自車両の周辺状況に応じた測距センサの距離変化を示すタイムチャートである。
【図12】実施の形態1の自車両の周辺状況を説明するための図である。
【図13】実施の形態1の自車両の周辺状況を説明するための図である。
【図14】実施の形態1の警報対象判定処理部のブロック構成を示す図である。
【図15】実施の形態1の警報対象判定処理のフローチャートである。
【図16】実施の形態1の前方接近物認識処理のフローチャートである。
【図17】実施の形態1の周波数判定処理のフローチャートである。
【図18】実施の形態1の警報対象判定処理を説明するための図である。
【図19】実施の形態1の周波数判定処理を説明するための図である。
【図20】実施の形態1の警報判定処理のフローチャートである。
【図21】実施の形態1の測距センサの視野を説明するための図である。
【図22】実施の形態2の自車両の周辺状況を説明するための図である。
【図23】実施の形態2の周波数判定処理を説明するための図である。
【図24】実施の形態2の自車両の周辺状況に応じた測距センサの距離変化を示すタイムチャートである。
【図25】実施の形態2の前方接近物認識処理のフローチャートである。
【図26】実施の形態2の測距センサの距離変化を示すタイムチャートである。
【図27】実施の形態3の自車両の周辺状況を説明するための図である。
【図28】実施の形態3の周波数判定処理のフローチャートである。
【符号の説明】
【0051】
201:送信手段
202:受信手段
203:コンパレータ手段
204:タイミング制御手段
205:受信信号積算手段
206:FFT演算手段
207:最大振幅成分抽出手段
208:検出閾値設定手段
209:検出手段
210:距離・相対速度演算手段
211:警報対象判定手段
212:警報判定手段
215:入力車速
2111:前方接近物認識手段
2112:周波数閾値設定手段
2113:着目サンプリングタイミング設定手段
2114:周波数判定手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行中の自車両の側方及び斜め後方(ドライバーにとっての死角またはブラインドスポット)に存在する物体を検知し、警報を発する車両用後側方警報装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両走行中の事故を防止するために車両に測距センサなどを装備し、車両周囲の障害物を検出して運転者に報知する警報装置が知られている。
例えば、従来の警報装置は、特開昭54-118036号公報に開示されている無謀追い越し警報装置が知られている。この装置は、車両の車線変更を行なう方向の斜め後方を監視して、その方向における後続車両を検出するものである。この装置においては、車線変更の指示操作が検出され、この指示操作があったときに後続車両が所定領域に入っているか否かを判定し、この判定結果に応じて追い越し危険の警報が発せられる。
また、特開2000-233699号公報に開示されている警報装置は、操舵角及びヨーレートセンサ、ナビゲーション等の情報に基づいて、車両走行状況を識別し、走行状況に適した方向の物体を検出することによって、車両周囲に障害物が検出されたときに警報を発する制御をしていた。
【0003】
【特許文献1】特開昭54-118036号公報
【特許文献2】特開2000-233699号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来における警報装置では、特定の距離範囲に存在する全ての物体に対して警報を発してしまうので、例えば、高速道路の出口等でガードレールや壁に対しても警報が発せられ、ドライバーに煩わしさを感じさせてしまうという問題があった。
【0005】
本発明は、このような課題を解決すべく考案されたものであり、ガードレールや壁等の路側の静止物に対しては警報せず、後方から接近する車両や自車両の死角領域に留まる車両に対しては確実に警報する車両用後側方警報装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による車両用後側方警報装置は、自車両の車線変更側の斜め後方に向けてパルス状の電波を送信する送信手段と、この送信手段から送信した電波が複数の物体で反射した反射波を受信し、ビート信号を出力する受信手段と、送信開始時からの所定の時間間隔でビート信号をサンプリングするサンプリング手段と、このサンプリング手段により求められたサンプリングタイミング毎のサンプリング時系列データに対してFFT演算を行うFFT演算手段と、上記各サンプリングタイミングのFFT演算結果について最大振幅値およびその周波数成分を求める最大振幅成分抽出手段と、この最大振幅成分抽出手段により求められた各サンプリングタイミングにおける最大振幅値をもとに検出閾値を設定する検出閾値設定手段と、上記最大振幅成分抽出手段により求められた各サンプリングタイミングにおける最大振幅値をもとに、上記検出閾値を超えるピークを検出するピーク検出手段と、このピーク検出手段により求められたピークタイミングから距離を算出し、そのピークタイミングにおける周波数成分から相対速度を算出する距離・相対速度演算手段と、ドライバーの車線変更意思を検出する車線変更意思検出手段と、上記ピーク検出手段により検出された物体が、ドライバーにとっての警報対象かどうかを判定する警報対象判定手段と、少なくとも、自車両の側方及び斜め後方の所定距離内に物体が存在することが検出され、かつ上記車線変更意思検出手段によってドライバーの車線変更意思が検出され、かつ上記警報対象判定手段によりこの物体がドライバーにとっての警報対象であると判定された時、ドライバーに対して警報を行う警報判定手段とを備えた車両用後側方警報装置において、上記警報対象判定手段は、距離の時間的な履歴から自車両の前方方向から接近する物体を認識する前方接近物認識手段と、自車速に応じてドップラー周波数に対する閾値を設定する周波数閾値設定手段と、上記ピーク検出手段により求められたピークタイミングをもとに着目するサンプリングタイミングを設定する着目サンプリングタイミング設定手段と、上記着目されたサンプリングタイミングのFFT演算結果について、上記周波数閾値設定手段により設定された周波数閾値以上の周波数成分が存在するか否かを判定する周波数判定手段とを備え、上記前方接近物認識手段により、物体が自車両の前方方向から接近していると判定された場合において、上記周波数判定手段により上記周波数閾値以上の周波数成分が存在すると判定されたときに、この物体は静止物であるとして警報対象でないと判定するようにしたものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の車両用後側方警報装置によれば、路側のガードレールや壁等の静止物と、後方から接近する車両や死角領域に留まる車両を区別して、後者の場合にのみ警報することができるので、ドライバーにとって不要な警報を除去して必要な警報のみを発生させることができるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
本発明の実施の形態1について説明する。
本実施の形態1における車両用後側方警報装置の構成を図1に示す。図1の各ブロックは次の通りである。
201:所定幅のパルス状の電磁波を送信する送信手段
202:電磁波の周辺対象物による反射波を受信する受信手段
203:受信波を2値化するためのコンパレータ手段
204:送信パルスや受信タイミング信号を発生するタイミング制御手段
205:2値化された受信信号をサンプリングタイミング毎に積算する受信信号積算手 段
206:サンプリングタイミング毎に積算受信信号に対してFFT
(Fast Fourier Transf orm)演算を行うFFT演算手段
207:サンプリングタイミング毎のFFT演算結果から最大振幅値およびその周波数 成分を求める最大振幅成分抽出手段
208:サンプリングタイミング毎のFFT演算結果の最大振幅値をもとに検出閾値を 設定する検出閾値設定手段
209:サンプリングタイミング毎のFFT演算結果の最大振幅値をもとに、検出閾値 を超えるピークを検出するピーク検出手段
210:距離、相対速度を演算する距離・相対速度演算手段
211:ドライバーにとっての警報対象かどうかを、判定する警報対象判定手段
212:方向指示器214のON/OFF状態および警報対象判定手段の判定結果に基 づき、警報ブザー213を駆動させるべきかどうか判定する警報判定手段
215:入力車速
【0009】
ここでは、受信信号を2値化し、積算する例を示すが、受信信号をA/D変換する構成にしてもよい。
【0010】
図2に送信手段201、受信手段202を含むRFモジュールの構成を示す。
発信器301によって発生された12GHzの電波は、分配器302によって分配され、変調器303により、パルス(ASK)変調される。その後、逓倍器304によって24GHzに逓倍され、バンドパスフィルタ305により、12GHzの電波を抑制して、送信アンテナ306を介して、24GHzの電波が放射される。
物体からの反射波は受信アンテナ307を介して受信され、RF増幅器308により増幅された後、ミキサ310に入力される。一方、分配器302により分配された12GHzの電波は逓倍器309により24GHzに逓倍され、ミキサ310に入力される。ミキサ310では、上記2つの入力電波が混合され、ベースバンド信号が出力される。その後、ローパスフィルタ311により、高周波成分がカットされ、ベースバンドアンプ312にて増幅された後、受信信号として出力される。
【0011】
次にタイミング制御手段204、受信信号積算手段205およびFFT演算手段206から構成されるFPGAの内手段構成を図3(a)に、タイミングチャートを図3(b)にそれぞれ示す。
このFPGAは、図3(a)に示すように、タイミング制御回路、シフトレジスタ、シフトレジスタの各ビットに対応した加算器、積算用レジスタ、オフセット回路、所定回数分の積算値を記憶するための積算値用メモリおよびFFT演算を行うFFTモジュールを構成している。
タイミング制御回路は、FPGA外手段に接続した発振器によるクロック信号(例えば125MHz=8ns周期)に基づき、送信手段が電磁波放射をOn/Offするための送信信号、後述のシフトレジスタに対してビットシフトするタイミングを伝えるシフト信号、加算器に対して加算タイミングを伝える加算信号、積算用レジスタに対して所定回数(例えば100回)の積算が完了したことを示す積算完了信号を生成する。この積算完了信号は、積算用レジスタの値を積算値用メモリに転送し、積算用レジスタの値をクリアする働きを有するものである。シフトレジスタは、タイミング制御回路のシフト信号に基づき1ビットずつシフトしながら、コンパレータ回路の出力する2値化データを記憶していく(ビット数=N)。加算器は、タイミング制御回路からの加算信号に従って各ビットの2値化データ(0又は1)と積算用レジスタの内容を加算する。積算用レジスタは、加算器による出力を積算データとして保持するものである。オフセット回路(例えば、オフセット値=50)は積算用レジスタの積算値に対して所定値を減算する回路であり、後のFFT演算に際し、積算値の直流成分をカットするためのものである。積算値用メモリは、各ビット(サンプリングタイミング)の所定個数(例えば128個)のオフセット後の積算結果を記憶するものである。FFTモジュールは、各ビット毎に所定個数の積算結果を入力データとして、FFT演算を行うものである。
【0012】
次にこのFPGAの動作を説明する。まず、図3(b)に示すように、外手段クロック信号に基づき、送信信号を立ち上げ1クロック後に立ち下げる。送信信号の立ち上げと同時にクロック信号に同期したシフト信号をシフトレジスタのビット数だけ出力する。このシフト信号に基づき、シフトレジスタはコンパレータ回路の出力する2値化データを各ビットに保持していく。続いて、シフトレジスタのビット数分のシフト信号を出力した後、加算信号を出力する。この信号に基づいて、加算器は加算処理を行う。そして、所定回数(例えば100回)この動作を繰り返した後、積算完了信号を出力し、各ビット毎にオフセット回路を介した後、オフセット後の積算値を積算値用メモリへ転送して、積算用レジスタの値をクリアする。
積算値用メモリに所定個数の積算結果が記憶されると、FFTモジュールにて、各ビット毎にFFT演算を行う。
全てのビットに対してFFT演算が終了すると、FFTモジュールからタイミング制御回路へFFT処理終了信号が送信され、その信号を受けて、CPUへ同信号を送信する。
CPUは、FFT処理終了信号を受信すると、各ビットのFFT演算結果を読み出す。
【0013】
次に最大振幅成分抽出手段207、検出閾値設定手段208、ピーク検出手段209、距離・相対速度演算手段210、警報対象判定手段211および警報判定手段212から構成されるCPUにおける処理を説明する。
【0014】
図4にCPUにおける処理のフローチャートを示す。
S501:各サンプリングタイミングのFFT演算結果について、最大振幅値およびそ
の周波数成分を求める。
S502:各サンプリングタイミングの最大振幅値をもとに検出閾値を設定する。
S503:各サンプリングタイミングの最大振幅値をもとに検出閾値を越えるピークを 検出する。
S504:ピークタイミングから距離を算出し、そのピークタイミングにおける周波数 成分から相対速度を算出する。
S505:検出された物体がドライバーにとっての警報対象かどうかを判定する。
S506:ドライバーに対して警報を行う。
【0015】
次に最大振幅成分抽出処理S501について詳細に説明する。
図5にあるサンプリングタイミングにおけるFFT演算結果(振幅算出後)の例を示す。図に示すように例えば、低周波数側から最大振幅値をサーチしていき、最大振幅値およびその周波数値を求める。
FFT演算結果の1周波数ビンに相当する周波数(周波数きざみ)は、FFT処理に入力する時系列データのサンプル間隔を100μs、FFT点数を128点とした場合には、観測時間が、100μs×128=12.8msとなるので、78.125Hzとなる。よって、例えば、第5周波数ビンが最大振幅となっている場合では、周波数値は、
5×78.125=390.625 [Hz]
となる。
【0016】
図6に最大振幅成分抽出処理S501のフローチャートを示す。
S701:最大振幅値をサーチするサンプリングタイミングNo.iを初期化。
S702:サンプリングタイミングNo. iのFFT演算結果に対して、最大振幅値をサ ーチする。
S703:最大振幅値を記憶する(例えばレジスタA[i]に格納)。
S704:最大振幅を持つ周波数値を記憶する(例えばレジスタ F[i]に記憶)。
S705:サンプリングタイミングNo.をインクリメント。
S706:全てのサンプリングタイミングについて、最大振幅値サーチの終了をチェッ クする。
以下、各サンプリングタイミングについて、記憶された最大振幅値(上記A[i])を、単 に“振幅値”と呼ぶことにする。
【0017】
次に検出閾値設定処理S502について詳細に説明する。
検出閾値は、各サンプリングタイミングについて、振幅値の時間的な移動平均値を求め、その移動平均値に予め設定した一定値を加えた値とする。
【0018】
図7に検出閾値設定処理S502のフローチャートを示す。
S801:サンプリングタイミングNo.iを初期化。
S802:サンプリングタイミングNo.iについて、過去の振幅値(N回分)の移動平均 値を算出する(Av[i])。
S803:移動平均値Av[i]に予め設定した一定値αを加え、検出閾値とする。
S804:サンプリングタイミングNo.をインクリメント。
S805:全てのサンプリングタイミングについて、検出閾値設定の終了をチェックす る。
【0019】
なお、ここでは各サンプリングタイミングについて、振幅値の移動平均値を求め、所定値を加えた値を検出閾値としたが、全サンプリングタイミングにおいて、予め設定した所定値を検出閾値としてもよい。
【0020】
次にピーク検出処理S503について詳細に説明する。
図8にピーク検出の様子を示す。図のように検出閾値を超える極大点をピークとして、そのサンプリングタイミングと振幅値(ピークタイミングおよびその前後のタイミング)を記憶する(j、k、A[j]、A[j-1]、A[j+1]、A[k]、A[k-1]、A[k+1])。さらに、最大振幅成分抽出処理S501で求めたピークタイミングにおける周波数値も記憶する(F[j]、F[k])。
【0021】
図9にピーク検出処理S503のフローチャートを示す。
S1001:サンプリングタイミングNo.iを初期化。
S1002:ピークタイミング(Pt[n])・ピークレベル(Pa[n])・ピーク周波数
(Pf[n])を初期化(=0)。ただし、n = 0〜M。
S1003:ピーク情報(ピークタイミング・ピークレベル・ピーク周波数)を格納す るレジスタの配列番号(以下、インデックス)の初期化(j = 0)
S1004:一つ前のサンプリングタイミングの振幅値および一つ後のサンプリングタ イミングの振幅値と比較し、サンプリングタイミングiにて極大になっているかどうか をチェックする。極大になっている場合にはS1005へ進み、なっていない場合には S1008へ進む。
S1005:サンプリングタイミングiでの振幅値と検出閾値とを比較し、検出閾値よ りも大きい場合にはS1006へ進み、それ以外の場合にはS1008へ進む。
S1006:サンプリングタイミングiの振幅値が極大かつ検出閾値より大きいので、 ピーク情報をレジスタに格納する(Pt[j] = i、Pa[j] = A[i]、Pf[j] = F[i]、ここで F[i]は、S501で求めた周波数値)。
S1007:ピークインデックス No.(j)をインクリメントする。
S1008:サンプリングタイミングNo.(i)をインクリメントする。
S1009:全てのサンプリングタイミング(ただし、i = 2〜N-2)について、処理 が終了したかどうかをチェックする。終了していない場合には、S1004に戻り、終 了した場合には本処理を終了する。
【0022】
次に距離・相対速度演算処理S504について詳細に説明する。
ピーク検出処理S503で求めたピーク情報から距離および相対速度を算出する。
【0023】
図10に距離・相対速度演算処理S504のフローチャートを示す。
S1101:ピークインデックスNo.を初期化(j = 0)。
S1102:ピークタイミング(Pt[j])が0か否かを判定、すなわち、ピークが存在 するか否かを判定する。ピークが存在する場合にはS1103へ進み、ピークが存在し ない場合にはS1108に進む。
S1103:ピークタイミング(Pt[j])の両隣のサンプリングタイミングの振幅値
(A[Pt[j]-1]、A[Pt[j]+1])を比較し、左隣のサンプリングタイミングにおける振幅値 の方が右隣のサンプリングタイミングにおける振幅値より大きい場合には、S1104 に進み、それ以外の場合には、S1105に進む。
S1104:Pt[j]の他、Pt[j]-2、Pt[j]-1、Pt[j]+1のサンプリングタイミングに お ける振幅値(A[Pt[j]]、A[Pt[j]-2]、A[Pt[j]-1]、A[Pt[j]+1])を使用し、加重平均 をとる。
S1105:Pt[j]の他、Pt[j]-1、Pt[j]+1、Pt[j]+2のサンプリングタイミングに お ける振幅値(A[Pt[j]]、A[Pt[j]-1]、A[Pt[j]+1]、A[Pt[j]+2])を使用し、加重平均 をとる。
S1106:1サンプリングに相当する距離DIST_UNITを乗じ、単位を[m/256]とする ために、256を乗ずる。
S1107:ピークタイミング(Pt[j])における周波数値(Pf[j])から相対速度を 算出する。相対速度の算出には(式1)を用いる。
(相対速度)=(光速)×(ドップラー周波数)/(2×キャリア周波数)
・・・(式1)
例えば、
光速 =3×108 [m/s]
ドップラー周波数=1340 [Hz]
キャリア周波数 =24.125 [GHz]
の場合、
相対速度 =8.3 [m/s] (=30 [km/h])
となる。
ここでは、単位を[m/s/256]とするために、256を乗ずる。
なお、周波数値Pf[j]は、最大振幅成分抽出処理S501でFFT演算結果から算出されたものである。
S1108:ピークが存在しない場合の処理であり、DIST_MAXを距離値(Dist[j])と する。
S1109:SPEED_MAXを相対速度値(Speed[j])とする。
S1110:ピークインデックスをインクリメントする。
S1111:全てのピークインデックスについて処理が終了したかどうかをチェックす る。終了していない場合には、S1102に戻る。
【0024】
なお、ここでは、ピーク前後の振幅値について加重平均を用いたが、それ以外の方法を用いて、距離の補間を行ってもよい。
【0025】
次に警報対象判定処理S505について詳細に説明する。
まず、自車両の前方方向から接近する物体の認識方法について説明する。
図11(a)及び(b)に示すように、測距センサ1201は車両のコーナーに設置され、測距センサ1201の最大放射方向(アンテナ利得が最大になる方向)が自車両1202の斜め45度後方になるように設置されている。また本実施の形態の説明のために使用する測距センサ1201の視野角は90度とする。
この場合、図11(a)のように自車両1202が隣車線の前方から接近する車両1203とすれ違う状況では、距離Rの時間的推移の形が図11(c)のようになる。一方、図11(b)のように、隣車線の後方から接近する車両1204が自車両を追い越す状況では、距離Rの時間的推移の形が図11(d)のようになる。
このように、距離Rの時間的な推移を追うことにより、自車両の前方方向から接近する物体を認識することができる。
【0026】
次に自車両の前方方向から接近する物体からの反射波に含まれるドップラー周波数について説明する。
図12に自車両の前方方向から接近する物体を検出する場合のモデル図を示す。ここでは、物体が自車両の進行方向前方から接近してきて、後方へ遠ざかっていく様子を示している。例えば、位置Aの場合には、センサ方向の速度ベクトル成分VraはVs*cosθAとなり、比較的小さいが、位置Bの場合には、センサ方向の速度ベクトル成分VrbはVs*cosθBとなり、Vraよりも大きい値となり、後方へ行くに従い、Vsに近づくことになる。いずれの場合においても、速度ベクトル成分に応じたドップラー周波数が反射波に含まれることになる。
【0027】
また、図13のようにガードレール等のような長さを持った路側の静止物の横を走行するような場合においては、距離R1で検出しているような場合でも、距離R1より遠方からの反射波が存在し、そのような遠方からの反射波には、ある程度大きなセンサ方向の速度ベクトル成分が存在し、それに応じたドップラー周波数が存在することになる。
【0028】
したがって、前方方向からの接近検出物について、その反射波に含まれるドップラー周波数に対して自車速に応じた周波数閾値を設け、その閾値を超える周波数成分が存在した時には、路側のガードレール等の長さを持った静止物からの反射として、警報対象としないことにより、煩わしい誤警報を抑制することができる。
一方、死角内に留まる車両を検出するような場合においては、その反射波に含まれるドップラー周波数は極めて小さくなるため、警報対象とすることができる。
【0029】
図14に警報対象判定手段211のブロック図を示す。図14において、警報対象判定手段211は、距離の時間的な履歴から自車両の前方方向から接近する物体を認識する前方接近物認識手段2111と、自車速に応じてドップラー周波数に対する閾値を設定する周波数閾値設定手段2112と、ピーク検出手段により求められたピークタイミングをもとに着目するサンプリングタイミングを設定する着目サンプリングタイミング設定手段2113と、着目されたサンプリングタイミングのFFT演算結果について、周波数閾値設定手段2112により設定された周波数閾値以上の周波数成分が存在するか否かを判定する周波数判定手段2114とを備え、前方接近物認識手段2111により、物体が自車両の前方方向から接近していると判定された場合において、周波数判定手段2114により周波数閾値以上の周波数成分が存在すると判定されたときに、この物体は静止物であるとして警報対象でないと判定する。
【0030】
図15に警報対象判定処理S505のフローチャートを示す。
S1501:ピークインデックスNo.(j)をクリアする。(j=0)
S1502:それぞれの検出ピークに対するターゲットフラグ(Ftarget[j]、j=0〜M 、警報対象とする時にこのフラグをセットする。)をクリアする。
S1503:ピークタイミング(Pt[j])が0か否かを判定、すなわち、ピークが存在 するか否かを判定する。Pt[j]が0より大きい場合、すなわち、ピークが存在する場合 には、S1504に進み、それ以外の場合は、S1508に進む。
S1504:前方接近物認識処理(後に詳細説明)。前方から接近する物体と認識した 場合には、ターゲットフラグをセットしない。
S1505:自車速に応じてドップラー周波数に対する閾値を設定する。例えば、自車 速が100km/hの場合に、自車速の60%、すなわち、60km/h相当のドップ ラー周波数を閾値とする。具体的には、この場合、(式1)からドップラー周波数を逆 算すると、2681Hzとなる。
S1506:着目するサンプリングタイミングを設定する。着目サンプリングタイミン グは、図18に示すように、ピークタイミングおよびそのタイミングより遠方側の隣り 合う複数のサンプリングタイミングとする(Att[k]、k=0〜N)。あるいは、ピークタイ ミングを除き、その遠方側の隣り合う複数のサンプリングタイミングとしてもよい。
S1507:周波数判定処理(後に詳細説明)。着目されたサンプリングタイミングの それぞれのFFT演算結果に対して、所定の振幅閾値を設定し、その閾値を超える最大 周波数と、自車速に応じて設定された周波数閾値とを比較し、最大周波数の方が大きい 場合には、路側の静止物と判断し、ターゲットフラグをセットしない。
S1508:全てのピークについて、処理が終了したかどうかをチェックする。終了し ていない場合には、S1503に戻る。
【0031】
図16に前方接近物認識処理S1504のフローチャートを示す。
S1601:初めて検出された物体かどうかが判定される。初めて検出した物体であれ ばS1602へ進み、そうでなければS1604に進む。
S1602:前方接近物判定距離Rstartを、今回、測距センサ1201が検出した距 離Rに設定する。
S1603:ターゲットフラグをクリアする(初期化)。
S1604:前方接近物判定距離Rstartと測距センサ1201が検出した距離Rとの 比較が行われる。R<Rstartの場合はS1605へ進み、それ以外の場合は処理を終 了する。
S1605:後方から接近する物体と判断し、ターゲットフラグをセットする。
すなわち、この前方接近物認識処理S1504においては、物体が初めて検出された時の距離を基準距離とし、この基準距離よりも短い距離で検出した履歴がある場合に、この物体を後方から接近する物体であると認識し、それ以外の場合は、物体を前方から接近する物体であると認識する。
【0032】
図17に周波数判定処理(S1507)のフローチャートを示す。
S1701:着目サンプリングタイミングのインデックスをクリアする(k = 0)。
S1702:着目サンプリングタイミング(Att[k])におけるFFT演算結果に対して 、所定の振幅閾値を設定する。
S1703:図19に示すように、振幅閾値を超える最大周波数(Fm)を検出する。
S1704:FmとS1505で算出した周波数閾値とを比較し、Fmの方が大きい場合に は、S1706に進み、それ以外の場合には、S1705へ進む。
S1705:静止物ではないとして、ターゲットフラグ(Ftarget[j])をセットする。
S1706:全ての着目サンプリングタイミングについて処理が終了したかどうかをチ ェックする。終了していない場合には、S1702に戻る。
【0033】
次に警報判定処理S506について詳細に説明する。図20は本処理のフローチャート である。
S2001:方向指示器がONの状態かどうかが判定される。方向指示器ONの場合は ドライバーが警報を要求する状況であるとしてS2002に進み、それ以外の場合は警 報をOFFにするべくS2008へ進む。
S2002:ピークインデックスをクリアする(j = 0)
S2003:測距センサ1201が検出した距離Dist[j]と警報判定距離Rwarnとの比 較が行われる。Dist[j]<Rwarnの場合は、測距センサ1201が検出した物体が自車 両と衝突する可能性が高い領域に存在するものとしてS2004へ進む。それ以外の場 合は警報をOFFにするべくS2007へ進む。
S2004:ターゲットフラグ(Ftarget[j])の状態により警報対象かどうかを判定 する。ターゲットフラグがセット状態であれば、測距センサ1201が検出した物体が ドライバーにとっての警報対象であるとして、S2006へ進む。それ以外の場合は警 報をOFFにするべくS2005へ進む。
S2005:警報フラグ(Fwarn)をクリアし、S2009へ進む。
S2006:警報フラグ(Fwarn)をセットし、処理を終了する。
S2007:警報フラグ(Fwarn)をクリアし、S2009へ進む。
S2008:警報フラグ(Fwarn)をクリアし、処理を終了する。
S2009:全てのピークについて、処理が終了したかどうかをチェックする。終了し ていない場合には、S2003に戻る。
【0034】
以上より、本実施の形態によれば、路側のガードレールや壁等の静止物と、後方から接近する車両や死角領域に留まる車両を区別して、後者の場合にのみ警報することができるので、ドライバーにとって不要な警報を除去して必要な警報のみを発生させることができるという効果が得られる。
【0035】
尚、本実施の形態1においては、測距センサ1201を、その最大放射方向が自車両の斜め45度後方になるように設置し、また測距センサ1201の視野角を90度としたが、図21に示すように、視野角が車両の進行方向軸Yと軸Yと垂直をなす軸Xによって囲まれる図21の斜線の領域に含まれる範囲で、任意の設置方向と視野角が選択できる。
【0036】
実施の形態2.
本発明の実施の形態2について説明する。
本実施の形態2における車両用後側方警報装置の構成は図1と同じ構成をとる。また処理の流れも図4に従うが、S505の警報対象判定処理の方法が異なる。
【0037】
本実施の形態2にかかるS505の警報対象判定処理について詳細に説明する。以下、実施の形態1と異なる点についてのみ説明する。
【0038】
実施の形態1では、図15のS1506において、着目サンプリングタイミングを図18にも示すように、ピークタイミングおよびそのタイミングより遠方側の隣り合う複数のサンプリングタイミングとしたが、本実施の形態2では、ピークタイミングのみを着目サンプリングタイミングとする。例えば、図13にて距離R1のみから反射してくるような場合についても、高速道路走行時のような自車速が比較的大きい時には、センサ方向の速度ベクトル成分が大きくなり、適当な周波数閾値を設定することにより、路側の静止物として判定することができる。
【0039】
また、実施の形態1では、図15のS1507において、着目されたサンプリングタイミングのそれぞれのFFT演算結果に対して、所定の振幅閾値を設定し、その閾値を超える最大周波数と、自車速に応じて設定された周波数閾値とを比較した。しかしながら、図22に示すように、隣車線を走行する大型トラック1203を追い越すような状況において、反射波のレベルが非常に大きい場合には、FFT演算結果が図23(a)のように広がりを持ってしまい、所定の振幅閾値を超える最大周波数(Fm)が比較的大きな値になることがある。これはすなわち、追い越し車両をガードレール等の静止物と誤認識することを意味する。この課題を解決するために、本実施の形態2では、所定の周波数範囲での平均振幅値を算出し、その値をもとに振幅閾値を設定する(例えば、平均振幅値の4倍)。このようにすることで、最大周波数(Fm)を小さくすることができ、誤認識を抑制することができる。
【0040】
また、本実施の形態2では、図24の(a)及び(b)に示すように、測距センサ1201は車両のコーナーに設置され、測距センサ1201の最大放射方向(アンテナ利得が最大になる方向)が自車両の斜め45度後方になるように設置されている。また本実施の形態の説明のために使用する測距センサ1201の視野角は90以上となっており、ここでは120度とする。この場合、図24(a)のように自車両2401が前方車2402とすれ違う状況では、距離Rの時間的推移の形が図24(c)のようになる。これに対し、図24(b)のように後方接近物体2404が自車両2403を追い越す状況では、図24(d)のようになる。距離Rの時間的な推移を追うことにより、自車両の前方方向から接近する物体を認識することができる。ただし、実施の形態1(測距センサ1201の視野角が90度未満の場合)と比較して、本実施の形態では、図24(a)のように自車両2401が前方車2402とすれ違う状況であっても、物体までの距離Rの時間推移は、初めて検出した時の距離を若干下回ってから徐々に大きくなるという変化を示す。
【0041】
図25に前方接近物認識処理S1504のフローチャートを示す。
S2501:初めて検出された物体かどうかが判定される。初めて検出した物体であれ ばS2502へ進み、そうでなければS2504に進む。
S2502:前方接近物判定距離Rstartを、今回、測距センサ1201が検出した距 離Rからオフセット距離(Roffset)を減じた値に設定する。
S2503:ターゲットフラグをクリアする(初期化)。
S2504:前方接近物判定距離Rstartと測距センサ1201が検出した距離Rとの 比較が行われる。R<Rstartの場合はS2505へ進み、それ以外の場合は処理を終 了する。
S2505:後方から接近する物体と判断し、ターゲットフラグをセットする。
すなわち、この前方接近物認識処理S1504においては、物体が初めて検出された時の距離から所定距離だけ短い距離を基準距離とし、この基準距離よりも短い距離で検出した履歴がある場合に、この物体を後方から接近する物体であると認識し、それ以外の場合は、物体を前方から接近する物体であると認識する。
【0042】
以上より、本実施の形態2によれば、路側のガードレールや壁等の静止物と、後方から接近する車両や死角領域に留まる車両を区別して、後者の場合にのみ警報することができるので、ドライバーにとって不要な警報を除去して必要な警報のみを発生させることができるという効果が得られる。さらに、大型トラックのように大きな反射体を追い越すような状況においても、ガードレール等の路側の静止物と誤認識することなく、かつ、測距センサ1201の視野角を90度以上に拡大して、つまり後側方への監視領域を拡大しながら、上記の効果が得られるという効果がある。
【0043】
また、実施の形態1のように、測距センサ1201の視野角が90度未満であっても、距離Rにノイズが含まれる場合、具体的には、自車両が前方接近物とすれ違う状況における距離Rの時間的推移が、図26に示すような出力しか得られない場合においても、本実施の形態にかかる警報対象判定処理を実施することにより、前方接近物体を認識することができる。
【0044】
実施の形態3.
本発明の実施の形態3について説明する。
本実施の形態における後側方警報装置の構成は図1と同じ構成をとる。また処理の流れも図4に従うが、S505の警報対象判定処理の方法が異なる。
【0045】
本実施の形態3にかかるS505の警報対象判定処理について詳細に説明する。以下、実施の形態1と異なる点についてのみ説明する。
【0046】
図13にはガードレール等の長さを持った路側の静止物の横を走行する場合の検出の様子を示したが、路側の静止物の種類には様々なものがある。その種類によっては、図13のように比較的近い距離からより遠方の距離まで連続的に反射されず、図27に示すように、反射が単一部位からとなってしまう。図27(b)のような場合では比較的遠距離からの反射であるので、センサ方向の速度ベクトル成分は大きくなるが、図27(a)のようにセンサのほぼ真横からの反射の場合においては、センサ方向の速度ベクトルは非常に小さくなってしまう。ただし、そのような路側の静止物の場合において、現実的には自車両は走行しているので、センサからの相対位置が同一の状態が続くことはなく、センサが測定する毎にその反射ポイントが刻々と変化する現象となる。
【0047】
したがって、所定時間、周波数判定手段により、閾値以上の周波数成分が存在するかどうかを監視しておくことにより、路側の静止物の判定が可能となる。
【0048】
図28に周波数判定処理S1507のフローチャートを示す。
S2801:着目サンプリングタイミングのインデックスをクリアする(k = 0)。
S2802:着目サンプリングタイミング(Att[k])におけるFFT演算結果に対して 、所定の振幅閾値を設定する。
S2803:振幅閾値を超える最大周波数(Fm)を検出する。
S2804:Fmと周波数閾値とを比較し、Fmの方が大きい場合には、S2805に進み 、それ以外の場合には、S2806へ進む。
S2805:過去Q回分の静止物フラグ情報の最新情報として、静止物フラグをセット する。
S2806:過去Q回分の静止物フラグ情報の最新情報として、静止物フラグをクリア する。
S2807:過去Q回分の静止物フラグ情報中に静止物フラグがセットされた経緯があ るかどうかをチェックし、静止物フラグがセットされた経緯がある場合には、S280 9に進み、それ以外の場合には、S2808に進む。
S2808:静止物ではないとして、ターゲットフラグ(Ftarget[j])をセットする。
S2809:全ての着目サンプリングタイミングについて処理が終了したかどうかをチ ェックする。終了していない場合には、S2802に戻る。
【0049】
以上より、本実施の形態3によれば、路側の長さを持った静止物の種類によらず、静止物と判定できるので、ドライバーにとって不要な警報をより減らすことができ、かつ、後方から接近する車両や死角領域に留まる車両に対しては確実に警報できるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施の形態1のブロック構成を示す図である。
【図2】実施の形態1のRFモジュールの構成を示す図である。
【図3】実施の形態1のFPGA内の構成と動作を説明するための図である。
【図4】実施の形態1におけるCPU内の処理の概略を説明するためのフローチャートである。
【図5】実施の形態1の最大振幅成分抽出処理を説明するための図である。
【図6】実施の形態1の最大振幅成分抽出処理のフローチャートである。
【図7】実施の形態1の検出閾値設定処理のフローチャートである。
【図8】実施の形態1のピーク検出処理を説明するための図である。
【図9】実施の形態1のピーク検出処理のフローチャートである。
【図10】実施の形態1の距離・相対速度演算処理のフローチャートである。
【図11】実施の形態1の自車両の周辺状況に応じた測距センサの距離変化を示すタイムチャートである。
【図12】実施の形態1の自車両の周辺状況を説明するための図である。
【図13】実施の形態1の自車両の周辺状況を説明するための図である。
【図14】実施の形態1の警報対象判定処理部のブロック構成を示す図である。
【図15】実施の形態1の警報対象判定処理のフローチャートである。
【図16】実施の形態1の前方接近物認識処理のフローチャートである。
【図17】実施の形態1の周波数判定処理のフローチャートである。
【図18】実施の形態1の警報対象判定処理を説明するための図である。
【図19】実施の形態1の周波数判定処理を説明するための図である。
【図20】実施の形態1の警報判定処理のフローチャートである。
【図21】実施の形態1の測距センサの視野を説明するための図である。
【図22】実施の形態2の自車両の周辺状況を説明するための図である。
【図23】実施の形態2の周波数判定処理を説明するための図である。
【図24】実施の形態2の自車両の周辺状況に応じた測距センサの距離変化を示すタイムチャートである。
【図25】実施の形態2の前方接近物認識処理のフローチャートである。
【図26】実施の形態2の測距センサの距離変化を示すタイムチャートである。
【図27】実施の形態3の自車両の周辺状況を説明するための図である。
【図28】実施の形態3の周波数判定処理のフローチャートである。
【符号の説明】
【0051】
201:送信手段
202:受信手段
203:コンパレータ手段
204:タイミング制御手段
205:受信信号積算手段
206:FFT演算手段
207:最大振幅成分抽出手段
208:検出閾値設定手段
209:検出手段
210:距離・相対速度演算手段
211:警報対象判定手段
212:警報判定手段
215:入力車速
2111:前方接近物認識手段
2112:周波数閾値設定手段
2113:着目サンプリングタイミング設定手段
2114:周波数判定手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の車線変更側の斜め後方に向けてパルス状の電波を送信する送信手段と、この送信手段から送信した電波が複数の物体で反射した反射波を受信し、ビート信号を出力する受信手段と、送信開始時からの所定の時間間隔でビート信号をサンプリングするサンプリング手段と、このサンプリング手段により求められたサンプリングタイミング毎のサンプリング時系列データに対してFFT演算を行うFFT演算手段と、上記各サンプリングタイミングのFFT演算結果について最大振幅値およびその周波数成分を求める最大振幅成分抽出手段と、この最大振幅成分抽出手段により求められた各サンプリングタイミングにおける最大振幅値をもとに検出閾値を設定する検出閾値設定手段と、上記最大振幅成分抽出手段により求められた各サンプリングタイミングにおける最大振幅値をもとに、上記検出閾値を超えるピークを検出するピーク検出手段と、このピーク検出手段により求められたピークタイミングから距離を算出し、そのピークタイミングにおける周波数成分から相対速度を算出する距離・相対速度演算手段と、ドライバーの車線変更意思を検出する車線変更意思検出手段と、上記ピーク検出手段により検出された物体が、ドライバーにとっての警報対象かどうかを判定する警報対象判定手段と、少なくとも、自車両の側方及び斜め後方の所定距離内に物体が存在することが検出され、かつ上記車線変更意思検出手段によってドライバーの車線変更意思が検出され、かつ上記警報対象判定手段によりこの物体がドライバーにとっての警報対象であると判定された時、ドライバーに対して警報を行う警報判定手段とを備えた車両用後側方警報装置において、
上記警報対象判定手段は、距離の時間的な履歴から自車両の前方方向から接近する物体を認識する前方接近物認識手段と、
自車速に応じてドップラー周波数に対する閾値を設定する周波数閾値設定手段と、
上記ピーク検出手段により求められたピークタイミングをもとに着目するサンプリングタイミングを設定する着目サンプリングタイミング設定手段と、
上記着目されたサンプリングタイミングのFFT演算結果について、上記周波数閾値設定手段により設定された周波数閾値以上の周波数成分が存在するか否かを判定する周波数判定手段とを備え、
上記前方接近物認識手段により、物体が自車両の前方方向から接近していると判定された場合において、上記周波数判定手段により上記周波数閾値以上の周波数成分が存在すると判定されたときに、この物体は静止物であるとして警報対象でないと判定することを特徴とする車両用後側方警報装置。
【請求項2】
上記着目サンプリングタイミング設定手段は、上記ピーク検出手段により求められたピークタイミングおよびそのタイミングより遠方側の隣り合う複数のサンプリングタイミングを着目サンプリングタイミングに設定することを特徴とする請求項1に記載の車両用後側方警報装置。
【請求項3】
上記着目サンプリングタイミング設定手段は、上記ピーク検出手段により求められたピークタイミングより遠方側の隣り合う複数のサンプリングタイミングを着目サンプリングタイミングに設定することを特徴とする請求項1に記載の車両用後側方警報装置。
【請求項4】
上記着目サンプリングタイミング設定手段は、上記ピーク検出手段により求められたピークタイミングを着目サンプリングタイミングに設定することを特徴とする請求項1に記載の車両用後側方警報装置。
【請求項5】
上記周波数判定手段は、上記着目されたサンプリングタイミングのそれぞれのFFT演算結果に対して、所定の振幅閾値を設定し、その閾値を超える最大周波数値と、上記周波数閾値設定手段により設定された周波数閾値を比較することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の車両用後側方警報装置。
【請求項6】
上記周波数判定手段は、上記着目されたサンプリングタイミングのそれぞれのFFT演算結果に対して、所定の周波数範囲での平均振幅値を算出し、その値をもとに振幅閾値を設定し、その閾値を超える最大周波数値と、上記周波数閾値設定手段により設定された周波数閾値を比較することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の車両用後側方警報装置。
【請求項7】
上記前方接近物認識手段は、物体が初めて検出された時の距離を基準距離とし、この基準距離よりも短い距離で検出した履歴がある場合に、この物体を後方から接近する物体であると認識し、それ以外の場合は、物体を前方から接近する物体であると認識することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の車両用後側方警報装置。
【請求項8】
上記前方接近物認識手段は、物体が初めて検出された時の距離から所定距離だけ短い距離を基準距離とし、この基準距離よりも短い距離で検出した履歴がある場合に、この物体を後方から接近する物体であると認識し、それ以外の場合は、物体を前方から接近する物体であると認識することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の車両用後側方警報装置。
【請求項9】
上記警報対象判定手段は、上記前方接近物認識手段により、物体が前方から接近していると判定された場合において、所定時間、上記周波数判定手段により上記周波数閾値以上の周波数成分が存在するかどうかを監視し、その時間内で上記周波数閾値以上の周波数成分が存在したときに、この物体は静止物であるとして警報対象でないと判定することを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の車両用後側方警報装置。
【請求項1】
自車両の車線変更側の斜め後方に向けてパルス状の電波を送信する送信手段と、この送信手段から送信した電波が複数の物体で反射した反射波を受信し、ビート信号を出力する受信手段と、送信開始時からの所定の時間間隔でビート信号をサンプリングするサンプリング手段と、このサンプリング手段により求められたサンプリングタイミング毎のサンプリング時系列データに対してFFT演算を行うFFT演算手段と、上記各サンプリングタイミングのFFT演算結果について最大振幅値およびその周波数成分を求める最大振幅成分抽出手段と、この最大振幅成分抽出手段により求められた各サンプリングタイミングにおける最大振幅値をもとに検出閾値を設定する検出閾値設定手段と、上記最大振幅成分抽出手段により求められた各サンプリングタイミングにおける最大振幅値をもとに、上記検出閾値を超えるピークを検出するピーク検出手段と、このピーク検出手段により求められたピークタイミングから距離を算出し、そのピークタイミングにおける周波数成分から相対速度を算出する距離・相対速度演算手段と、ドライバーの車線変更意思を検出する車線変更意思検出手段と、上記ピーク検出手段により検出された物体が、ドライバーにとっての警報対象かどうかを判定する警報対象判定手段と、少なくとも、自車両の側方及び斜め後方の所定距離内に物体が存在することが検出され、かつ上記車線変更意思検出手段によってドライバーの車線変更意思が検出され、かつ上記警報対象判定手段によりこの物体がドライバーにとっての警報対象であると判定された時、ドライバーに対して警報を行う警報判定手段とを備えた車両用後側方警報装置において、
上記警報対象判定手段は、距離の時間的な履歴から自車両の前方方向から接近する物体を認識する前方接近物認識手段と、
自車速に応じてドップラー周波数に対する閾値を設定する周波数閾値設定手段と、
上記ピーク検出手段により求められたピークタイミングをもとに着目するサンプリングタイミングを設定する着目サンプリングタイミング設定手段と、
上記着目されたサンプリングタイミングのFFT演算結果について、上記周波数閾値設定手段により設定された周波数閾値以上の周波数成分が存在するか否かを判定する周波数判定手段とを備え、
上記前方接近物認識手段により、物体が自車両の前方方向から接近していると判定された場合において、上記周波数判定手段により上記周波数閾値以上の周波数成分が存在すると判定されたときに、この物体は静止物であるとして警報対象でないと判定することを特徴とする車両用後側方警報装置。
【請求項2】
上記着目サンプリングタイミング設定手段は、上記ピーク検出手段により求められたピークタイミングおよびそのタイミングより遠方側の隣り合う複数のサンプリングタイミングを着目サンプリングタイミングに設定することを特徴とする請求項1に記載の車両用後側方警報装置。
【請求項3】
上記着目サンプリングタイミング設定手段は、上記ピーク検出手段により求められたピークタイミングより遠方側の隣り合う複数のサンプリングタイミングを着目サンプリングタイミングに設定することを特徴とする請求項1に記載の車両用後側方警報装置。
【請求項4】
上記着目サンプリングタイミング設定手段は、上記ピーク検出手段により求められたピークタイミングを着目サンプリングタイミングに設定することを特徴とする請求項1に記載の車両用後側方警報装置。
【請求項5】
上記周波数判定手段は、上記着目されたサンプリングタイミングのそれぞれのFFT演算結果に対して、所定の振幅閾値を設定し、その閾値を超える最大周波数値と、上記周波数閾値設定手段により設定された周波数閾値を比較することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の車両用後側方警報装置。
【請求項6】
上記周波数判定手段は、上記着目されたサンプリングタイミングのそれぞれのFFT演算結果に対して、所定の周波数範囲での平均振幅値を算出し、その値をもとに振幅閾値を設定し、その閾値を超える最大周波数値と、上記周波数閾値設定手段により設定された周波数閾値を比較することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の車両用後側方警報装置。
【請求項7】
上記前方接近物認識手段は、物体が初めて検出された時の距離を基準距離とし、この基準距離よりも短い距離で検出した履歴がある場合に、この物体を後方から接近する物体であると認識し、それ以外の場合は、物体を前方から接近する物体であると認識することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の車両用後側方警報装置。
【請求項8】
上記前方接近物認識手段は、物体が初めて検出された時の距離から所定距離だけ短い距離を基準距離とし、この基準距離よりも短い距離で検出した履歴がある場合に、この物体を後方から接近する物体であると認識し、それ以外の場合は、物体を前方から接近する物体であると認識することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の車両用後側方警報装置。
【請求項9】
上記警報対象判定手段は、上記前方接近物認識手段により、物体が前方から接近していると判定された場合において、所定時間、上記周波数判定手段により上記周波数閾値以上の周波数成分が存在するかどうかを監視し、その時間内で上記周波数閾値以上の周波数成分が存在したときに、この物体は静止物であるとして警報対象でないと判定することを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の車両用後側方警報装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
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【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
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【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【公開番号】特開2006−88896(P2006−88896A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−277474(P2004−277474)
【出願日】平成16年9月24日(2004.9.24)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月24日(2004.9.24)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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