説明

車両用発電制御装置

【課題】無段階変速機の変速比およびエンジン駆動トルクおよび発電駆動トルクを制御し、発電効率が最良となるように走行中のエンジン駆動による発電を行い、制御の不連続に起因するショックの発生を抑制する発電制御装置を提供する。
【解決手段】発電制御装置は、走行中のエンジン駆動による発電条件が成立すると、無段階変速機の変速比を微小量変化させた場合の仮想的発電効率を算出し、仮想的発電効率が現在の発電効率より優っていた場合は変速比を微小量変化させる。同様に、エンジン駆動トルクと発電駆動トルクを微小量変化させた場合の仮想的発電効率を算出し、仮想的発電効率が現在の発電効率より優っていた場合はエンジン駆動トルクと発電駆動トルクを微小量変化させる。前述の変速比の微小量変化とエンジン駆動トルクおよび発電駆動トルクの微小量変化を交互に繰り返し実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、発電機と無段階変速機を備えた車両における発電制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エンジンの出力軸に従動回転する発電機の発電量を可変自在とし、効率的に発電を行う発電制御システムが開発されている。一般的に、これらの発電制御システムは、車両の減速時に発電量を増加し車両の運動エネルギーを電力として回収するが、走行中に電力が不足する場合には、エンジンにより発電機を駆動して不足した電力を発電する。
【0003】
車両の走行中に、エンジン駆動トルクとエンジン回転速度により求められるエンジン効率が要求エンジン効率に満たない場合はエンジンによる発電を許可せず、前記エンジン効率が要求エンジン効率より高い場合はエンジンによる発電を許可することで、効率的に発電することを可能とするものが提案されている(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−125877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示すような従来装置では、車両の走行中に、エンジン駆動トルクとエンジン回転速度により求められるエンジン効率が良い場合には、走行中のエンジン駆動による発電が許可される。しかしながら、走行中にエンジン駆動によって発電する際に、発電効率を向上させる目的でエンジン回転速度を変化させることについては、何等言及されていない。
【0006】
従って、特許文献1に示すような従来装置で走行中のエンジン駆動による発電を行った場合、エンジン効率が最良となる状態で発電するように制御することができなかった。また、発電機の特性は考慮されていないため、発電に伴って増加した燃料量と発電量の関係が最良となる状態で発電していないことが少なくなかった。
【0007】
上述したような、特許文献1に示すような従来装置の問題点について、図16に表されるエンジン効率と発電効率を示すマップを用いてもう少し詳しく説明する。図16において、下側のマップ(a)はエンジン回転速度とエンジン駆動トルクに対するエンジン効率を示しており、上側のマップ(b)は、エンジン回転速度と発電駆動トルクに対する発電効率(発電量を燃料消費量で除算したものと定義する)を示す。
【0008】
図16(a)において、車両が発電を行わずに定常状態(定負荷・定速)で走行していたときの、エンジン効率は図の状態1で示される。次に、エンジン駆動トルクを付加し、図16(a)の状態2に到達した場合のエンジン効率を演算する。演算により得たエンジン効率が意図したエンジン効率の閾値を上回っている場合には発電を許可し、制御点を状態2に遷移して発電を行うが、下回っている場合は発電を行わないようになっている。
なお、図16(a)中、点曲線はエンジンの作動領域を示し、これ以上の領域では運転されることはない。
しかし、このような制御においては、エンジン回転速度を一切変更しないため、エンジン効率が最良となる点で発電することができなかった。さらに、図16(b)に示される発電効率マップ上では、状態1’から状態2’に遷移し状態2’で発電を行うが、状態2’は発電効率が最良となる状態ではない。エンジン効率が最良となる状態と発電効率が最良となる状態は異なることがあるため、発電機の特性も考慮することが、発電効率を最良とする上で好ましい。
【0009】
上記のように、特許文献1に示すような従来装置では、発電時に変速比を制御しないため、また、発電機の特性を考慮せずにエンジン効率のみで発電する状態を決定していたため、必ずしも発電効率が最良となる状態で発電することができなかった。
【0010】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、走行中にエンジン駆動による発電を行う場合に、エンジン駆動トルクと発電駆動トルクに加えてさらに、無段階変速機の変速比を制御することで、発電に伴って増加する燃料量と発電量との関係が最良となる状態で発電することを目的とする。
また、発電に伴って増加する燃料量と発電電力量の関係が最良となる状態に漸次的に近づけることで、制御状態の急変に起因するエンジン回転速度の著しい変化などのドライバビリティへの悪影響を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明の第1の観点に係る発電制御装置は、
車両の動力源としてのエンジンと、
前記エンジンの動力を無段階的に変速し車両の駆動輪に伝えるための無段階変速機と、
前記エンジンの駆動軸に従動して回転し発電量を可変に制御できる発電機と、
前記発電機により充電され車両の電気負荷に電力を供給する蓄電装置と、
前記エンジンの回転速度を検出するエンジン回転速度検出手段と、
前記エンジンの駆動トルク値を制御するエンジン駆動トルク制御手段と、
前記発電機の回転速度を検出する発電機回転速度検出手段と、
前記発電機の駆動トルク値を制御する発電駆動トルク制御手段と、
エンジン回転速度およびエンジン駆動トルクの値からエンジンの燃料消費量を算出する燃料消費量算出手段と、
発電機回転速度と発電駆動トルクの値から前記発電機の発電量を算出する発電量算出手段を有し、
前記無段階変速機の変速比を仮想的に微小量変化させたときに、現在の車両の速度と推進力が維持されるような仮想エンジン駆動トルクおよび仮想エンジン回転速度を算出し、前記仮想エンジン駆動トルクおよび仮想エンジン回転速度から前記燃料消費量算出手段により算出された仮想燃料消費量と、前記仮想エンジン回転速度と発電駆動トルクから前記発電量算出手段により算出された仮想発電量と、から仮想発電効率を算出し、
現在の発電量と燃料消費量から現在の発電効率を算出し、
前記仮想発電効率が現在の発電効率より優っている場合には、前記無段階変速機の変速比を前記微小量変化させる変速比変更手段と、
前記エンジン駆動トルクあるいは発電駆動トルクを仮想的に微小量変化させたときの、前記燃料消費量算出手段により算出された仮想燃料消費量と、前記発電量算出手段により算出された仮想発電量とから仮想発電効率を算出し、現在の発電量と燃料消費量から現在の発電効率を算出し、前記仮想発電効率が現在の発電効率より優っている場合には、エンジン駆動トルクを前記微小量変化させ、発電駆動トルクを前記微小量変化させる発電駆動トルク変更手段を有し、
前記変速比変更手段と前記発電駆動トルク変更手段を交互に実行し、発電を行うことを
特徴とするものである。
【0012】
この発明の第2の観点に係る発電制御装置は、
車両の動力源としてのエンジンと、
前記エンジンの動力を無段階的に変速し車両の駆動輪に伝えるための無段階変速機と、
前記エンジンの駆動軸に従動して回転し発電量を可変に制御できる発電機と、
前記発電機により充電され車両の電気負荷に電力を供給する蓄電装置と、
前記エンジンの駆動トルク値を制御するエンジン駆動トルク制御手段と、
前記発電機の駆動トルク値を制御する発電駆動トルク制御手段と、
エンジンの燃料消費量を検出する燃料消費量検出手段と、
発電量を検出する発電量検出手段を有し、
前記無段階変速機の変速比を微小量変更するとともに、現在の車両の速度と推進力が維持されるようにエンジン駆動トルクおよび発電駆動トルクを変更し、前記変速比を変化させた後の燃料消費量と発電量から発電効率を算出し、前記変速比を変化させる前の発電効率より悪化した場合には、前記無段階変速機の変速比を変更する前の状態に戻す変速比変更手段と、
前記発電駆動トルクを微小量変更するとともに、現在の車両の速度と推進力が維持されるようにエンジン駆動トルクを変更し、前記発電駆動トルクを変化させた後の燃料消費量と発電量から発電効率を算出し、前記発電駆動トルクを変化させる前の発電効率より悪化した場合には、前記発電駆動トルクを変更する前の状態に戻す発電駆動トルク変更手段を有し、
前記変速比変更手段と前記発電駆動トルク変更手段を交互に実行し、発電を行うことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
この発明の第1の観点に係る発電制御装置によれば、無段階変速機の変速比および(または)発電駆動トルクおよび(または)エンジン駆動トルクを、現在の状態から仮想的に微小量変化させたときの仮想発電効率を算出し、仮想発電効率が現在の発電効率に対して優っていた場合に微小量変化させる処理を繰り返し行うことで、発電効率が最良となる制御状態まで漸次的に到達することができる。また、この発明に係る発電制御装置によれば、無段階変速機の変速比および(または)発電駆動トルクおよび(または)エンジン駆動トルクを漸次的に変更することになるため、制御状態の急変に起因するエンジン回転速度の著しい変化といった違和感を抑制することができる。
【0014】
この発明の第2の観点に係る発電制御装置によれば、無段階変速機の変速比および(または)発電駆動トルクおよび(または)エンジン駆動トルクを実際に微小量変化させ、検出した燃料消費量及び発電量から発電効率を算出し、前記変速比および(または)発電駆動トルクおよび(または)エンジン駆動トルクを前記微小量変化させる前の発電効率と比較して悪化した場合は、前記変速比および(または)発電駆動トルクおよび(または)エンジン駆動トルクを前記微小量変化させる前の状態に戻す処理を繰り返し行うことで、発電効率が最良となる制御状態まで漸次的に到達することができる。この発明の第2の観点に係る発電制御装置によれば、第1の観点に係る発電制御装置と比較して、燃料噴射量及び電力量をテーブル参照により算出する必要が無いため、煩雑な処理を必要としない。また、実際の燃料噴射量及び発電量を検出して制御を行うため、製造ばらつきや経年変化などの環境要因に起因する誤差の影響を受けることがない。
【0015】
図17の発電効率マップに示されるように、車両の積載量などに起因する走行負荷や車両の速度などの要因が異なる場合には、発電駆動トルクと変速比および発電効率の関係は異なるマップとなるが、この発明による発電制御装置によれば、各々の車両の走行状態に合わせて、発電の効率が最良となる状態を探索しつつ漸次的に接近することで、発電の効率が最良となる状態で発電することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明の実施の形態1による発電制御装置を示す構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1による発電制御装置の処理を示すブロック図である。
【図3】図2の現在の発電効率算出手段105および仮想的な発電効率算出手段106の処理を示すブロック図である。
【図4】エンジン回転速度とエンジン駆動トルクから燃料消費量を算出するためのエンジン特性を示すグラフである。
【図5】発電機回転速度と発電駆動トルクから発電量を算出するための発電機特性を示すグラフである。
【図6】この発明の実施の形態1による発電制御装置の動作による発電効率の遷移を、定常走行状態における発電効率マップ上で示した図である。
【図7】この発明の実施の形態1による発電制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図8】この発明の実施の形態2による発電制御装置の処理を示すブロック図である。
【図9】この発明の実施の形態2による発電制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図10】この発明の実施の形態3による発電制御装置の動作による発電効率の遷移を、定常走行状態における発電効率マップ上で示した図である。
【図11】この発明の実施の形態3による発電制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図12】この発明の実施の形態4による発電制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図13】この発明の実施の形態5による発電制御装置の動作による発電効率の遷移を、定常走行状態における発電効率マップ上で示した図である。
【図14】この発明の実施の形態5による発電制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図15】この発明の実施の形態6による発電制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図16】従来技術による発電制御のエンジン効率と発電効率を表すグラフである。
【図17】従来技術による車両の状態が異なる場合の発電効率マップの相違を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明を実施するための形態について説明する。
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1による発電制御装置を示す構成図である。
図1において、車両の動力源としてのエンジン1の動力が無段階変速機3に伝達されるように接続されている。無段階変速機3はエンジン1の動力を変速し車両の駆動輪に伝達する。無段階変速機3の変速比は連続的な値として変化することが出来る。発電機2はエンジン1に従動して回転されるよう接続され、エンジン1の動力により発電しバッテリ等の蓄電装置4に電力を供給する。コントローラ100は、エンジン1のエンジン駆動トルクを制御するとともにエンジン回転速度を検出し、発電機2の発電駆動トルクを制御するとともに発電機回転速度を検出し、無段階変速機3の変速比を制御する。
【0018】
次に、コントローラ100の構成について説明する。図2は、図1のコントローラ100の処理を示すブロック図である。図2において、コントローラ100は、エンジン駆動トルク制御手段101、エンジン回転速度検出手段102、発電駆動トルク制御手段103、発電機回転速度検出手段104、現在の発電効率算出手段105、仮想的な発電効率算出手段106、比較器107、制御量決定手段108、変速比制御手段109を有している。
【0019】
現在の発電効率算出手段105は、エンジン駆動トルク制御手段101に指令されているエンジン駆動トルクとエンジン回転速度検出手段102により検出したエンジン回転速度と発電駆動トルク制御手段103に指令されている発電駆動トルクと発電機回転速度検出手段104により検出した発電機回転速度に基づいて、現在の発電効率を算出する。
【0020】
制御量微小量変更手段110は、エンジン駆動トルク制御手段101に指令されているエンジン駆動トルクとエンジン回転速度検出手段102により検出したエンジン回転速度と発電駆動トルク制御手段103に指令されている発電駆動トルクと発電機回転速度検出手段104により検出した発電機回転速度から、車両の推進力および車両の速度を維持しつつ、発電駆動トルクまたは変速比を微小量変化させたときの、仮想的なエンジン駆動トルクと仮想的なエンジン回転速度と仮想的な発電駆動トルクと仮想的な発電機回転速度を算出する。仮想的な発電効率算出手段106は、制御量微小量変更手段110が算出した仮想的なエンジン駆動トルクと仮想的なエンジン回転速度と仮想的な発電駆動トルクと仮想的な発電機回転速度に基づいて、現在の制御量を仮想的に微小量変化させた場合における、仮想的な発電効率を算出する。比較器107は、現在の発電効率算出手段105が算出した現在の発電効率と仮想的な発電効率算出手段106が算出した仮想的な発電効率を比較する。
【0021】
現在の発電効率算出手段105と仮想的な発電効率算出手段106は同一回路構成であり、図3に図示される処理を行い発電効率を算出する。図3の燃料消費量算出手段111はエンジン駆動トルクとエンジン回転速度から図4に示されるようなテーブルを用いて燃料消費量を算出し、発電量算出手段112は発電駆動トルクと発電機回転速度から、図5に示されるようなテーブルを用いて発電量を算出する。図3の発電効率算出手段113は、前記燃料消費量と前記発電量から発電効率を算出する。
【0022】
図2に戻り、制御量決定手段108は、比較器107で比較した結果が仮想的な発電効率が優っていた場合には、制御量を前記微小量変化させた値に決定し、エンジン駆動トルク制御手段101にエンジン駆動トルク指令値を出力し、発電駆動トルク制御手段103に発電駆動トルク指令値を出力し、変速比制御手段109に変速比指令値を出力する。比較器107で比較した結果が仮想的な発電効率が優っていない場合には制御量は据え置く。
【0023】
次に、実施の形態1に係る発電制御装置による発電を実施した場合の、変速比と発電駆動トルクおよび発電効率の変遷について、図6により説明する。図6は、定常走行状態における無段階変速機の変速比と発電駆動トルクと発電効率との関係を示したマップ上で、実施の形態1に係る発電制御装置による発電を実施した場合の動作を説明する図である。まず、定常走行中に発電機が発電を行っていない状態の発電効率は、図6の状態1で示される。その後、発電駆動トルク及び(または)変速比を微小量変化させたときに発電効率が向上する場合は、発電駆動トルク及び(または)変速比を微小量変化させる処理を繰り返すことにより、発電効率の良い経路を経て発電効率が最良となる状態2に漸次的に接近し、状態2で発電するに至る。
【0024】
次に、コントローラ100の動作について説明する。図7は、図1のコントローラ100の動作を示すフローチャートである。図7に示す動作は、コントローラ100によって一定周期で実行される。
まず、図7のステップS100では、コントローラ100は、現在の発電効率を算出する。詳しくは、現在のエンジン回転速度およびエンジン駆動トルクより図4のようなエンジン特性を示すテーブルを用いて現在の燃料消費量を算出する。また、現在の発電機回転速度および発電駆動トルクより図5のような発電機特性を示すテーブルを用いて現在の発電量を算出する。前記現在の燃料消費量と前記現在の発電量から、現在の発電効率を算出する。
【0025】
図7のステップS101では、ステップS102とステップS106とステップS110とステップ114が順番に実行されるように処理を振り分ける。この実施例では、一度の処理による演算量を低減するために処理を4つに分割したが、これらの処理の一部あるいは全部を一度に実行するように構成してもよい。
【0026】
図2のステップS102では、図2の制御量微小量変更手段110によりエンジン1の現在のエンジン駆動トルクTeを微小量ΔTeだけ増加させた仮想的なエンジン駆動トルクTe’を設定する。同時に、変速機3への伝達トルクが維持されるような発電駆動トルクTg’を算出する。詳細には下式のように求められる。ここでは簡便のため、エンジン1と発電機2のプーリ比は1であるとして算出した。
Te’=Te+ΔTe
Tg’=Tg+ΔTe
Te:現在のエンジン駆動トルク、Te’:仮想的なエンジン駆動トルク、Tg:現在の発電駆動トルク、Tg’:仮想的な発電駆動トルク
【0027】
図7のステップS103では、エンジン1のエンジン駆動トルクを仮想的なエンジン駆動トルクTe’とした場合における仮想的な発電効率を算出する。詳しくは、前記エンジン回転速度Neおよび前記仮想的なエンジン駆動トルクTe’より図4のようなエンジン特性を示すテーブルを用いて仮想的な燃料消費量を算出する。また、前記発電機回転速度Ngおよび前記仮想的な発電駆動トルクTg’より図5のような発電機特性を示すテーブルを用いて仮想的な発電量を算出する。前記仮想的な発電量を前記仮想的な燃料消費量で除算して仮想的な発電効率を算出する。
【0028】
図7のステップS104では、ステップS100で求めた現在の発電効率とステップS103で算出した仮想的な発電効率を比較し、前記仮想的な発電効率のほうが優っていた場合にはステップS105に進む、その他の場合には今回の処理を終了する。ステップS105では、仮想的なエンジン駆動トルクTe’をエンジン駆動トルク指令値として図2のエンジン駆動トルク制御手段101に出力し、仮想的な発電駆動トルクTg’を発電駆動トルク指令値として図2の発電駆動トルク制御手段103に出力し、今回の処理を終了する。
【0029】
図7のステップS106では、図2の制御量微小量変更手段110によりエンジン1の現在のエンジン駆動トルクTeを微小量ΔTeだけ減少させた仮想的なエンジン駆動トルクTe’を設定する。同時に、変速機3への伝達トルクが維持されるような仮想的な発電駆動トルクTg’を算出する。詳細には下式のように求められる。ここでは簡便のため、エンジン1と発電機2のプーリ比は1であるとして算出した。
Te’=Te−ΔTe
Tg’=Tg−ΔTe
Te:現在のエンジン駆動トルク、Te’:仮想的なエンジン駆動トルク、 Tg:現在の発電駆動トルク 、Tg’:仮想的な発電駆動トルク
【0030】
図7のステップ107では、エンジン1のエンジン駆動トルクを仮想的なエンジン駆動トルクTe’とした場合における仮想的な発電効率を算出する。詳しくは、前記エンジン回転速度Neおよび前記仮想的なエンジン駆動トルクTe’より図4のようなエンジン特性を示すテーブルを用いて仮想的な燃料消費量を算出する。また、前記発電機回転速度Ngおよび前記仮想的な発電駆動トルクTg’より図5のような発電機特性を示すテーブルを用いて仮想的な発電量を算出する。前記仮想的な発電量を前記仮想的な燃料消費量で除算して仮想的な発電効率を算出する。
【0031】
図7のステップS108では、ステップS100で求めた現在の発電効率とステップS107で算出した仮想的な発電効率を比較し、前記仮想的な発電効率のほうが優っていた場合にはステップS109に進む、その他の場合には今回の処理を終了する。ステップS109では、仮想的なエンジン駆動トルクTe’をエンジン駆動トルク指令値として図2のエンジン駆動トルク制御手段101に出力し、仮想的な発電駆動トルクTg’を発電駆動トルク指令値として図5の発電駆動トルク制御手段103に出力し、今回の処理を終了する。
【0032】
図7のステップS110では、図2の制御量微小量変更手段110により無段階変速機3の現在の変速比Gを微小量ΔGだけ増加させた仮想的な変速比G’を算出する。
G’=G+ΔG
同時に、図2の制御量微小量変更手段110は変速比が現在の変速比Gから仮想的な変速比G’に変更した場合にも、現在の車両の推進力Fおよび車両の速度Vsを維持するような、仮想的なエンジン駆動トルクTe’と仮想的なエンジン回転速度Ne’を現在のエンジン駆動トルクTeおよび現在のエンジン回転速度Neをもとに算出し、仮想的な発電駆動トルクTg’と仮想的な発電機回転速度Ng’を現在の発電駆動トルクTgおよび現在の発電機回転速度Ngをもとに算出する。
【0033】
詳細には下式のように求められる。
Vs ∝ Ne/Gであるため、
Ne’=Ne{(G+ΔG)/G}、Ng’=Ng{(G+ΔG)/G}
F∝ TG であるため、
T’=T{G/(G+ΔG)}(ただし、T=Te−Tg)
よって、Te’=Te{G/(G+ΔG)}、Tg’=Tg{G/(G+ΔG)}
Vs:車両の速度 、F:車両の推進力 、G:変速比 、Te:現在のエンジン駆動トルク 、Te’:仮想的なエンジン駆動トルク 、Tg:現在の発電駆動トルク 、Tg’:仮想的な発電駆動トルク 、Ne:現在のエンジン回転速度 、Ne’:仮想的なエンジン回転速度 、Ng:現在の発電機回転速度 、Ng’:仮想的な発電機回転速度
【0034】
図7のステップS111では、無段階変速機3の変速比を仮想的な変速比G’とした場合における発電効率を算出する。詳しくは、前記仮想的なエンジン回転速度Ne’および仮想的なエンジン駆動トルクTe’より図4のようなエンジン特性を示すテーブルを用いて仮想的な燃料消費量を算出する。また、仮想的な発電機回転速度Ng’および仮想的な発電駆動トルクTg’より図5のような発電機特性を示すテーブルを用いて仮想的な発電量を算出する。前記仮想的な発電量を前記仮想的な燃料消費量で除算して仮想的な発電効率を算出する。
【0035】
図7のステップS112では、ステップS100で求めた現在の発電効率とステップS111で算出した仮想的な発電効率を比較し、前記仮想的な発電効率のほうが優っていた場合にはステップS113に進む、その他の場合には今回の処理を終了する。ステップS113では、仮想的な変速比G’を変速比指令値として図2の変速機制御手段109に出力し、ステップS110で算出した仮想的なエンジン駆動トルクTe’をエンジン駆動トルク指令値として図2のエンジン駆動トルク制御手段101に出力し、仮想的な発電駆動トルクTg’を発電駆動トルク指令値として図2の発電駆動トルク制御手段103に出力し、今回の処理を終了する。
【0036】
図7のステップS114では、図2の制御量微小量変更手段110により無段階変速機3の現在の変速比Gを微小量ΔGだけ減少させた仮想的な変速比G’を算出する。
G’=G−ΔG
同時に、図2の制御量微小量変更手段110は変速比が現在の変速比Gから仮想的な変速比G’に変更した場合にも、現在の車両の推進力Fおよび車両の速度Vsを維持するような、仮想的なエンジン駆動トルクTe’と仮想的なエンジン回転速度Ne’を現在のエンジン駆動トルクTeおよび現在のエンジン回転速度Neをもとに算出し、仮想的な発電駆動トルクTg’と仮想的な発電機回転速度Ng’を現在の発電駆動トルクTgおよび現在の発電機回転速度Ngをもとに算出する。
【0037】
詳細には下式のように求められる。
Vs∝Ne/Gであるため、
Ne’=Ne{(G−ΔG)/G}、Ng’=Ng{(G−ΔG)/G}
F∝TGであるため、
T’=T{G/(G−ΔG)} (ただし、T=Te−Tg)
よって、Te’=Te{G/(G−ΔG)},Tg’=Tg{G/(G−ΔG)}
Vs:車両の速度 、F:車両の推進力 、G:変速比 、Te:現在のエンジン駆動トルク 、Te’:仮想的なエンジン駆動トルク 、Tg:現在の発電駆動トルク、Tg’:仮想的な発電駆動トルク 、Ne:現在のエンジン回転速度 、Ne’:仮想的なエンジン回転速度 、Ng:現在の発電機回転速度 、 Ng’:仮想的な発電機回転速度
【0038】
図7のステップS115では、無段階変速機3の変速比を仮想的な変速比G’とした場合における発電効率を算出する。詳しくは、前記仮想的なエンジン回転速度Ne’および仮想的なエンジン駆動トルクTe’より図4のようなエンジン特性を示すテーブルを用いて仮想的な燃料消費量を算出する。また、仮想的な発電機回転速度Ng’および仮想的な発電駆動トルクTg’より図5のような発電機特性を示すテーブルを用いて仮想的な発電量を算出する。前記仮想的な発電量を前記仮想的な燃料消費量で除算して仮想的な発電効率を算出する。
【0039】
図7のステップS116では、ステップS100で求めた現在の発電効率とステップS115で算出した仮想的な発電効率を比較し、前記仮想的な発電効率のほうが優っていた場合にはステップS117に進む、その他の場合には今回の処理を終了する。ステップS117では、仮想的な変速比G’を変速比指令値として図2の変速機制御手段109に出力し、仮想的なエンジン駆動トルクTe’をエンジン駆動トルク指令値として図2のエンジン駆動トルク制御手段101に出力し、仮想的な発電駆動トルクTg’を発電駆動トルク指令値として図2の発電駆動トルク制御手段103に出力し、今回の処理を終了する。
【0040】
上記の実施の形態1のような発電制御装置によれば、発電効率が最良となる状態で発電を行うことができる。また、発電駆動トルクおよびエンジン駆動トルクおよび変速比を急変することがないため、車両にショックが発生するなどの違和感を生じることがない。
【0041】
実施の形態2.
実施の形態1では、仮想的にエンジン駆動トルクまたは変速比を変更した場合の発電効率を計算し、現在の発電効率より優っていた場合に実際にエンジン駆動トルクまたは変速比を変更する操作を繰り返した。これに対して、実施の形態2では、実際にエンジン駆動トルクまたは変速比を変更し、変更前後の発電効率を比較して変更前の発電効率のほうが優っていた場合は、変更前のエンジン駆動トルクまたは変速比に戻す操作を繰り返すようにしたものである。
【0042】
図8にこの発明の実施の形態2による発電制御装置の構成図を示している。
図において、制御量決定手段108は車両の走行に影響しないように制御点を微小量移動させ、エンジン駆動トルク制御手段101、発電駆動トルク制御手段103、および変速比制御手段109のそれぞれに制御量を指示することは実施の形態1と同様である。
【0043】
実施の形態2では燃料消費量および発電量を実際に計測あるいは検出する燃料消費量検出手段113および発電量検出手段114を備えている。発電効率算出手段115は上記燃料消費量検出手段113で検出された燃料消費量と発電量検出手段114で検出された発電量から、現在の発電効率を算出する。制御量決定手段108が制御点を変更する前に算出した発電効率を記憶手段116に保存しておき、両者を比較器107により比較する。制御点変更前の発電効率が優れている場合には、エンジン駆動トルク制御手段101、発電駆動トルク制御手段103、および変速比制御手段109に指示していた制御量を制御点変更前の状態に戻す。これらの処理を繰り返し行い、発電効率が良い制御点に漸次近接する。
【0044】
次に、実施の形態2のコントローラ100の動作について説明する。図9は、コントローラ100の動作を示すフローチャートである。図9に示す動作は、コントローラ100によって一定周期で実行される。
まず、図9のステップS200では、コントローラ100は、実測により検出した発電量と燃料消費量から、制御点変更前の発電効率を算出する。ステップS201では、ステップS202とステップS206とステップS210とステップS214が順番に実行されるように処理を振り分ける。
【0045】
ステップS202では、発電駆動トルク制御手段103に出力する発電駆動トルクTgも微小量ΔT増加させるとともに、変速機3への伝達トルクの大きさが維持されるようエンジン駆動トルク制御手段101に出力するエンジン駆動トルクTeを微小量ΔT増加させる。ステップS203では、検出した発電量と燃料消費量から制御点変更後の発電効率を算出する。
【0046】
ステップS204では、ステップS200で算出した制御点変更前の発電効率と、ステップS203で検出した制御点変更後の発電効率を比較し、前記変更後の発電効率のほうが優っていた場合は今回の処理を終了し、その他の場合にはステップS205に進む。ステップS205では、ステップS202で変更したエンジン駆動トルクと発電駆動トルクを変更前の値に戻し、各々エンジン駆動トルク制御手段101と発電駆動トルク制御手段103に出力し、今回の処理を終了する。
【0047】
ステップS206では、エンジン駆動トルク制御手段101に出力するエンジン駆動トルクTeを微小量ΔT減少させるとともに、変速機3への伝達トルクの大きさが維持されるよう発電駆動トルク制御手段103に出力する発電駆動トルクTgも微小量ΔT減少させる。ステップS203では、検出した発電量と燃料消費量から制御状態変更後の発電効率を算出する。
【0048】
ステップS207では、ステップS200で算出した制御点変更前の発電効率と、ステップS207で算出した制御点変更後の発電効率を比較し、前記変更後の発電効率のほうが優っていた場合は今回の処理を終了し、その他の場合にはステップS209に進む。ステップS209では、ステップS206で変更したエンジン駆動トルクと発電駆動トルクを変更前の値に戻し、各々エンジン駆動トルク制御手段101と発電駆動トルク制御手段103に出力し、今回の処理を終了する。
【0049】
ステップS210では、変速比制御手段109に出力する変速比Gを微小量ΔG増加させるとともに、車両の速度Vsと推進力Fが維持されるように、エンジン駆動トルクTe’と発電駆動トルクTg’を算出し、それぞれエンジン駆動トルク制御手段101と発電駆動トルク制御手段103に出力する。詳しくは、エンジン駆動トルクTe’と発電駆動トルクTg’は下記のように算出する。
F∝TGであるため、
T’=T{G/(G+ΔG)} (ただし、T=Te−Tg)
Te’=Te{G/(G+ΔG)}、Tg’=Tg{G/(G+ΔG)}とする
F:車両の推進力 、G:変速比 、Te:現在のエンジン駆動トルク 、Te’:変更後のエンジン駆動トルク 、Tg:現在の発電駆動トルク 、Tg’:変更後の発電駆動トルク
【0050】
ステップS211では、検出した発電量と燃料消費量から制御点変更後の発電効率を算出する。ステップS212では、ステップS200で算出した制御点変更前の発電効率と、ステップS211で算出した制御点変更後の発電効率を比較し、前記変更後の発電効率のほうが優っていた場合は今回の処理を終了し、その他の場合にはステップS213に進む。ステップS213では、ステップS210で変更したエンジン駆動トルクと発電駆動トルクを変更前の値に戻し、各々エンジン駆動トルク制御手段101と発電駆動トルク制御手段103に出力し、今回の処理を終了する。
【0051】
ステップS214では、変速比制御手段109に出力する変速比Gを微小量ΔG減少させるとともに、車両の速度Vsと推進力Fが維持されるように、エンジン駆動トルクTe’と発電駆動トルクTg’を算出し、それぞれエンジン駆動トルク制御手段101と発電駆動トルク制御手段103に出力する。詳しくは、エンジン駆動トルクTe’と発電駆動トルクTg’は下記のように算出する。
F∝TGであるため、
T’=T{G/(G−ΔG)} (ただし、T=Te−Tg)
Te’=Te{G/(G−ΔG)}、Tg’=Tg{G/(G−ΔG)}とする
F:車両の推進力 、G:変速比 、Te:現在のエンジン駆動トルク 、Te’:変更後のエンジン駆動トルク 、Tg:現在の発電駆動トルク 、Tg’:変更後の発電駆動トルク
【0052】
ステップS215では、検出した発電量と燃料消費量から制御点変更後の発電効率を算出する。ステップS216では、ステップS200で算出した制御点変更前の発電効率と、ステップS215で算出した制御点変更後の発電効率を比較し、前記変更後の発電効率のほうが優っていた場合は今回の処理を終了し、その他の場合にはステップS217に進む。ステップS217では、ステップS214で変更したエンジン駆動トルクと発電駆動トルクを変更前の値に戻し、各々エンジン駆動トルク制御手段101と発電駆動トルク制御手段103に出力し、今回の処理を終了する。
【0053】
上記の実施の形態2のような発電制御装置によれば、実施の形態1と比較して、燃料消費量と発電量をマップ参照により算出しないため、コンピュータは煩雑な処理を必要としない。また、実施の形態1で参照したエンジンの燃料消費量特性や発電機の発電量特性が実機の動作とコンピュータが記憶しているマップの間で不整合が生じる場合にも(例えば、個体ばらつきや経年変化などが発生)、正しく発電効率が最良となる制御状態に到達することができる。
【0054】
実施の形態3.
実施の形態2では、発電の要求が発生した時点から、制御点を微小変化させた場合の発電効率を制御点変化前後で比較し、制御点変化後の発電効率が優っていた場合には、制御点を変更する処理を行った。実施の形態3では、発電の要求が発生した時点では、まず、発電駆動トルクを増加させて最小限の発電量を確保した後に、制御点を微小変化させる処理を実施する。例えば、発電量の最小値は無発電状態で蓄電装置が放電していた電力量などと設定する。
【0055】
次に、実施の形態3に係る発電制御装置による発電を実施した場合の、変速比と発電駆動トルクおよび発電効率の変遷について、図10により説明する。図10は、定常走行状態における無段階変速機の変速比と発電駆動トルクと発電効率との関係を示したマップ上で、実施の形態3に係る発電制御装置による発電を実施した場合の動作を説明する図である。まず、定常走行中に発電機が発電を行っていない状態の発電効率は、図10の状態1で示される。その後、発電量が発電量の下限値に達するまで、発電駆動トルクを増加させ、状態2に到達する。その後、発電駆動トルク及び(または)変速比を微小量変化させたときに発電効率が向上する場合は、発電駆動トルク及び(または)変速比を微小量変化させる処理を繰り返すことにより、発電量の最小値を確保しつつ発電効率が最良となる状態3に漸次的に接近し、状態3で発電するに至る。
【0056】
一例として、発電量の下限値は、前照灯などの車両の電気負荷への供給電量に設定する。前記車両の電気負荷への供給電量は、車両の電気負荷への供給電量を検出する手段(図示されない)により検出する。前記のようにすれば、発電により車両が必要とする消費電量を供給し、蓄電手段の放電を防止することができる。
【0057】
次に、実施の形態3のコントローラ100の動作について説明する。図11は、この発明の実施の形態3に係るコントローラ100の動作を示すフローチャートである。図11のA部は互いに繋がっている。実施の形態3のコントローラ100の動作の概要は、実施の形態1と同様であるため、実施の形態1との違いを中心に説明する。主に、発電量が発電量の最小値に満たない場合に発電駆動トルクを増加する動作が実施の形態1とは異なっている。
【0058】
まず、図11のステップS300では、コントローラ100は現在の発電量を発電量の下限値と比較し、現在の発電量のほうが大きい場合にはステップS100に進み、その他の場合はステップS301に進む。ステップS301では、発電駆動トルク制御手段103に出力する発電駆動トルクTgを微小量ΔT増加させるとともに、変速機3への伝達トルクTの大きさが維持されるようエンジン駆動トルク制御手段101に出力するエンジン駆動トルクTeも微小量ΔT増加させ、今回の処理を終了する。他の動作は、実施の形態1と同様である。
上記の実施の形態3のような発電制御装置によれば、実施の形態1と比較して、車両が必要とする最低限の発電量を確保しつつ、発電効率が最良となる制御状態で発電することができる。
【0059】
実施の形態4.
実施の形態2では、発電の要求が発生した時点から、制御状態を微小変化させて発電効率を制御状態変化前後で比較し、制御状態変化前の発電効率が優っていた場合には、制御状態を変更する前の状態に戻す処理を行った。実施の形態4では、実施の形態3と同様に発電の要求が発生した時点では、まず、発電駆動トルクを増加させて最小限の発電量を確保した後に、制御状態を微小量変化させる処理を実施する。
実施の形態4に係る発電制御装置による発電を実施した場合の、変速比と発電駆動トルクおよび発電効率の変遷は、図10により示される実施の形態3と同様である。
【0060】
次に、実施の形態4のコントローラ100の動作について説明する。図12は、実施の形態4に係るコントローラ100の動作を示すフローチャートである。図12のA部は互いに繋がっている。実施の形態4のコントローラ100の動作の概要は、実施の形態2と同様であるため、実施の形態2との違いを中心に説明する。主に、発電量が発電量の最小値に満たない場合に発電駆動トルクを増加する動作が、実施の形態2とは異なっている。
【0061】
まず、図12のステップS300では、コントローラ100は現在の発電量を発電量の下限値と比較し、現在の発電量のほうが大きい場合にはステップS200に進み、その他の場合はステップS301に進む。ステップS301では、発電駆動トルク制御手段103に出力する発電駆動トルクTgを微小量ΔT増加させるとともに、変速機3への伝達トルクTの大きさが維持されるようエンジン駆動トルク制御手段101に出力するエンジン駆動トルクTeも微小量ΔT増加させ、今回の処理を終了する。他の動作は、実施の形態2と同様である。
上記の実施の形態4のような発電制御装置によれば、実施の形態2と比較して、車両が必要とする最低限の発電量を確保しつつ、発電効率が最良となる制御状態で発電することができる。
【0062】
実施の形態5.
実施の形態3では、発電量に下限値を設定し発電要求が発生した時点で、まず必要とされる発電量を確保するように制御した。実施の形態5では、さらに発電量に上限値を設定し、発電量の下限値と上限値の間を変遷しながら、発電量が最良となる状態を探索するように制御する。
【0063】
次に、実施の形態5に係る発電制御装置による発電を実施した場合の、変速比と発電駆動トルクおよび発電効率の変遷について、図13により説明する。図13は、定常走行状態における無段階変速機の変速比と発電駆動トルクと発電効率との関係を示したマップ上で、実施の形態5に係る発電制御装置による発電を実施した場合の動作を説明する図である。
【0064】
まず、定常走行中に発電機が発電を行っていない状態の発電効率は、図13の状態1で示される。その後、発電量が発電量の下限値(下側点線)に達するまで、発電駆動トルクを増加させ、状態2に到達する。その後、発電駆動トルク及び(または)変速比を微小量変化させたときに発電効率が向上する場合は、発電駆動トルク及び(または)変速比を微小量変化させる処理を繰り返すことにより、発電効率の良い経路を経て発電量が発電量の上限値(上側点線)に達する状態3に至る。このようにして、発電量が発電量の下限値と上限値の間で、発電効率が最良となる状態で発電することが出来る。
【0065】
次に、実施の形態5に係るコントローラ100の動作について説明する。図14は、この発明の実施の形態5に係るコントローラ100の動作を示すフローチャートである。図14のA部は互いに繋がっている。実施の形態5のコントローラ100の動作の概要は、実施の形態3と同様であるため、実施の形態3との違いを中心に説明する。主に、仮想的に制御状態を微小量変更した場合の発電量が上下限値の範囲内でない場合に、制御状態を変更させない動作が実施の形態3とは異なっている。
【0066】
発電量の最大値は、過大な発電による車両に搭載する蓄電手段への損傷を防止するように設定する。一例として、前記蓄電手段の定格容量の10分の1の値に前記発電量の最大値を設定し、前もってコントローラ100に記憶させておく。
【0067】
まず、図14のステップS401では、ステップS102で算出した仮想的な発電駆動トルクTg’と仮想的な発電機回転速度Ng’から図5に示されるような発電機の発電量特性を示すテーブルを用いて仮想的な発電量を算出し、仮想的な発電量が発電量の下限値より大きい場合はステップS402に進み、それ以外の場合は今回の処理を終了する。ステップS402では、前記仮想的な発電量が発電量の上限値より小さい場合はステップS103に進み、それ以外の場合は今回の処理を終了する。
【0068】
図14のステップS403では、ステップS106で算出した仮想的な発電駆動トルクTg’と仮想的な発電機回転速度Ng’から図5に示されるような発電機の発電量特性を示すテーブルを用いて仮想的な発電量を算出し、仮想的な発電量が発電量の下限値より大きい場合はステップS404に進み、それ以外の場合は今回の処理を終了する。ステップS404では、前記仮想的な発電量が発電量の上限値より小さい場合はステップS107に進み、それ以外の場合は今回の処理を終了する。
【0069】
図14のステップS405では、ステップS110で算出した仮想的な発電駆動トルクTg’と仮想的な発電機回転速度Ng’から図5に示されるような発電機の発電量特性を示すテーブルを用いて仮想的な発電量を算出し、仮想的な発電量が発電量の下限値より大きい場合はステップS406に進み、それ以外の場合は今回の処理を終了する。ステップS406では、前記仮想的な発電量が発電量の上限値より小さい場合はステップS111に進み、それ以外の場合は今回の処理を終了する。
【0070】
図14のステップS407では、ステップS114で算出した仮想的な発電駆動トルクTg’と仮想的な発電機回転速度Ng’から図5に示されるような発電機の発電量特性を示すテーブルを用いて仮想的な発電量を算出し、仮想的な発電量が発電量の下限値より大きい場合はステップS408に進み、それ以外の場合は今回の処理を終了する。ステップS408では、前記仮想的な発電量が発電量の上限値より小さい場合はステップS115に進み、それ以外の場合は今回の処理を終了する。他の動作は、実施の形態3と同様である。
【0071】
上記の実施の形態5のような発電制御装置によれば、実施の形態3と比較して、さらに発電量の上限を設けることで、発電量が過剰になる状況を防ぎつつ、発電量が上下限値の範囲内で発電効率が最良となる状態に漸次的に接近し、高効率で発電することができる。
【0072】
実施の形態6.
実施の形態4では、発電量に下限値を設定し発電要求が発生した時点で、まず必要とされる発電量を確保するように制御した。実施の形態5と同様に、実施の形態6では、さらに発電量に上限値を設定し、発電量の下限値と上限値の間を変遷しながら、発電量が最良となる状態を探索するように制御する。
実施の形態6に係る発電制御装置による発電を実施した場合の、変速比と発電駆動トルクおよび発電効率の変遷は、図13により示される実施の形態5と同様である。
【0073】
次に、実施の形態6のコントローラ100の動作について説明する。図15は、実施の形態6に係るコントローラ100の動作を示すフローチャートである。図15のA部は互いに繋がっている。実施の形態6のコントローラ100の動作の概要は、実施の形態4と同様であるため、実施の形態4との違いを中心に説明する。主に、制御状態を微小量変化させて、制御状態変化後の発電量が上下限値の範囲内でない場合に、制御状態を変更する前の状態に戻す動作が実施の形態5とは異なっている。
【0074】
まず、図15のステップS501では、検出した発電量が発電量の下限値より大きい場合はステップS502に進み、それ以外の場合はステップS205に進む。ステップS502では、検出した発電量が発電量の上限値より小さい場合はステップS203に進み、それ以外の場合にはステップS205に進む。
【0075】
図15のステップS503では、検出した発電量が発電量の下限値より大きい場合はステップS504に進み、それ以外の場合はステップS209に進む。ステップS504では、検出した発電量が発電量の上限値より小さい場合はステップS207に進み、それ以外の場合にはステップS209に進む。
【0076】
図15のステップS505では、検出した発電量が発電量の下限値より大きい場合はステップS506に進み、それ以外の場合はステップS213に進む。ステップS506では、検出した発電量が発電量の上限値より小さい場合はステップS211に進み、それ以外の場合にはステップS213に進む。
【0077】
図15のステップS507では、検出した発電量が発電量の下限値より大きい場合はステップS508に進み、それ以外の場合はステップS217に進む。ステップS508では、検出した発電量が発電量の上限値より小さい場合はステップS215に進み、それ以外の場合にはステップS217に進む。他の動作は、実施の形態4と同様である。
【0078】
上記の実施の形態6のような発電制御装置によれば、実施の形態4と比較して、さらに発電量の上限を設けることで、発電量が過剰になる状況を防ぎつつ、発電量が上下限値の範囲内で発電効率が最良となる状態に漸次的に接近し、高効率で発電することができる。
【符号の説明】
【0079】
1 エンジン、 2 発電機、 3 無段階変速機、 4 蓄電装置、
100 コントローラ、 101 エンジン駆動トルク制御手段、
102 エンジン回転速度検出手段、 103 発電駆動トルク制御手段、
104 発電機回転速度検出手段、 105 現在の発電効率算出手段、
106 仮想的な発電効率算出手段、 107 比較器、 108 制御量決定手段、
109 変速比制御手段、 110 制御量微小量変更手段、
111 燃料消費量算出手段、 112 発電量算出手段、
113 燃料消費量検出手段、 114 発電量検出手段、
115 発電効率算出手段、 116 記憶手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の動力源としてのエンジンと、
前記エンジンの動力を無段階的に変速し車両の駆動輪に伝えるための無段階変速機と、
前記エンジンの駆動軸に従動して回転し発電量を可変に制御できる発電機と、
前記発電機により充電され車両の電気負荷に電力を供給する蓄電装置と、
前記エンジンの回転速度を検出するエンジン回転速度検出手段と、
前記エンジンの駆動トルク値を制御するエンジン駆動トルク制御手段と、
前記発電機の回転速度を検出する発電機回転速度検出手段と、
前記発電機の駆動トルク値を制御する発電駆動トルク制御手段と、
エンジン回転速度およびエンジン駆動トルクの値からエンジンの燃料消費量を算出する燃料消費量算出手段と、
発電機回転速度と発電駆動トルクの値から前記発電機の発電量を算出する発電量算出手段を有し、
前記無段階変速機の変速比を仮想的に微小量変化させたときに、現在の車両の速度と推進力が維持されるような仮想エンジン駆動トルクおよび仮想エンジン回転速度を算出し、前記仮想エンジン駆動トルクおよび仮想エンジン回転速度から前記燃料消費量算出手段により算出された仮想燃料消費量と、前記仮想エンジン回転速度と発電駆動トルクから前記発電量算出手段により算出された仮想発電量と、から仮想発電効率を算出し、
現在の発電量と燃料消費量から現在の発電効率を算出し、
前記仮想発電効率が現在の発電効率より優っている場合には、前記無段階変速機の変速比を前記微小量変化させる変速比変更手段と、
前記エンジン駆動トルクあるいは発電駆動トルクを仮想的に微小量変化させたときの、前記燃料消費量算出手段により算出された仮想燃料消費量と、前記発電量算出手段により算出された仮想発電量とから仮想発電効率を算出し、現在の発電量と燃料消費量から現在の発電効率を算出し、前記仮想発電効率が現在の発電効率より優っている場合には、エンジン駆動トルクを前記微小量変化させ、発電駆動トルクを前記微小量変化させる発電駆動トルク変更手段を有し、
前記変速比変更手段と前記発電駆動トルク変更手段を交互に実行し、発電を行うことを特徴とする発電制御装置。
【請求項2】
車両の動力源としてのエンジンと、
前記エンジンの動力を無段階的に変速し車両の駆動輪に伝えるための無段階変速機と、
前記エンジンの駆動軸に従動して回転し発電量を可変に制御できる発電機と、
前記発電機により充電され車両の電気負荷に電力を供給する蓄電装置と、
前記エンジンの駆動トルク値を制御するエンジン駆動トルク制御手段と、
前記発電機の駆動トルク値を制御する発電駆動トルク制御手段と、
エンジンの燃料消費量を検出する燃料消費量検出手段と、
発電量を検出する発電量検出手段を有し、
前記無段階変速機の変速比を微小量変更するとともに、現在の車両の速度と推進力が維持されるようにエンジン駆動トルクおよび発電駆動トルクを変更し、前記変速比を変化させた後の燃料消費量と発電量から発電効率を算出し、前記変速比を変化させる前の発電効率より悪化した場合には、前記無段階変速機の変速比を変更する前の状態に戻す変速比変更手段と、
前記発電駆動トルクを微小量変更するとともに、現在の車両の速度と推進力が維持されるようにエンジン駆動トルクを変更し、前記発電駆動トルクを変化させた後の燃料消費量と発電量から発電効率を算出し、前記発電駆動トルクを変化させる前の発電効率より悪化した場合には、前記発電駆動トルクを変更する前の状態に戻す発電駆動トルク変更手段を有し、
前記変速比変更手段と前記発電駆動トルク変更手段を交互に実行し、発電を行うことを特徴とする発電制御装置。
【請求項3】
請求項1あるいは請求項2に記載の発電制御装置であって、
現在の発電量を検出する発電量検出手段と、
発電量の下限値を設定する下限発電量設定手段を備え、
前記現在の発電量が前記発電量の下限値より下回っている場合には、前記発電機の発電駆動トルクを増加するとともに、現在の車両の速度と推進力が維持されるようにエンジン駆動トルクを増加することを特徴とする発電制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載の発電制御装置であって、
発電量の上限値を設定する上限発電量設定手段を備え、
前記変速比変更手段により変速比を微小量変更した場合に、発電量が前記発電量の下限値を下回る、或いは、前記発電量の上限値を上回る場合には、前記変速比変更手段を禁止し、
前記発電駆動トルク変更手段により発電駆動トルクを微小量変更した場合に、発電量が前記発電量の下限値を下回る、或いは、前記発電量の上限値を上回る場合には、前記発電駆動トルク変更手段を禁止することを特徴とする発電制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−120335(P2012−120335A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−268267(P2010−268267)
【出願日】平成22年12月1日(2010.12.1)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】