説明

車両用表示装置

【課題】 運転者が、路幅が狭い部分を容易に把握できる車両用表示装置を提供する。
【解決手段】 表示手段は、地図情報記憶手段に記憶された地図情報に基づいて走路形状を表示する。位置検出手段は、自車両の現在位置を検出する。制御手段は、位置検出手段により検出された自車両の現在位置に基づいて、地図情報を読み出して自車両の前方側の走路形状を表示手段に表示させる。制御手段は、表示手段に表示させる走路形状において、自車両の現在位置よりも路幅が所定値以上に狭い部分を強調して表示させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドアップディスプレイ等の表示手段によって走路形状を表示する車両用表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両のフロントガラスに表示ユニットから発せられる表示光を投影して、虚像を表示するヘッドアップディスプレイが知られており、例えば特許文献1に開示されている。前記表示ユニットは、蛍光表示管等の表示器と、この表示器が発した表示光を反射させる反射ミラーとをハウジングに収容したものであり、車両のダッシュボード内に配設される。表示ユニットが投射した表示光は、フロントガラスにより運転者の視点に反射される。斯かる構成によれば、車速,エンジン回転数等の車両情報やナビゲーション情報等の各種情報を虚像として表示することができる。
【0003】
また、前述の車両用表示装置において、運転者の視点から見た前方の走路形状を表す走路形状画像を表示するものが知られており、例えば特許文献2に開示されている。斯かる車両用表示装置によれば、運転者は、天候条件,走路のカーブ,周辺車両及び建物などの影響で、実際の走路形状を目視しにくい場合であっても、表示された走路形状画像によって実際の走路形状を把握することができる。
【特許文献1】特開平11−310055号公報
【特許文献2】特開2000−211452号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、運転者は、車両の走行に応じて更新される走路形状画像によって、走路が直線であるかカーブであるか、或いはブレーキを操作する必要のある急カーブであるか否か等を判断できるが、走路の路幅については認識し難いという問題があった。つまり、走路が急カーブである場合だけでなく、路幅が狭い場合にも、ブレーキを操作する必要があるが、表示された走路形状画像では、走路の路幅を把握することは困難であった。
本発明は、上記課題に着目してなされたものであり、運転者が、路幅が狭い部分を容易に把握できる車両用表示装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、請求項1に記載したように、地図情報記憶手段に記憶された地図情報に基づいて走路形状を表示する表示手段と、自車両の現在位置を検出する位置検出手段と、前記位置検出手段により検出された前記自車両の現在位置に基づいて前記地図情報を読み出して前記自車両の前方側の走路形状を前記表示手段に表示させる制御手段と、を備える車両用表示装置であって、前記制御手段は、前記表示手段に表示させる前記走路形状において、前記自車両の現在位置よりも路幅が所定値以上に狭い部分を強調して表示させるものである。
【0006】
また、請求項2に記載したように、前記制御手段は、通常の前記走路形状の表示色と異なる表示色にて前記部分を表示させるものである。
【0007】
また、請求項3に記載したように、前記制御手段は、前記部分を点滅表示させるものである。
【0008】
また、請求項4に記載したように、前記表示手段は、表示器が発した表示光を投影部材に投影して虚像を表示させるヘッドアップディスプレイからなるものである。
【発明の効果】
【0009】
走路の路幅が狭い部分を強調表示させることによって、運転者が、路幅が狭い部分を容易に把握できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を車両用ヘッドアップディスプレイ装置に適用した一実施形態を添付の図面に基づいて説明する。
1は表示ユニットであり、この表示ユニット1は車両A(自車両)のダッシュボード内に配設される。表示ユニット1が投射した表示光Lは、コンバイナ処理されたフロントガラスW(投影部材)により運転者の視点Dに反射され、虚像Vが表示される。運転者は虚像Vを風景と重畳させて観察することができる。
【0011】
2は表示器であり、この表示器2はTFT型の液晶表示パネル及びこの液晶表示パネルを透過照明するバックライト手段からなるものである。3は回路基板であり、この回路基板3に表示器2が搭載されている。4は反射ミラーであり、この反射ミラー4は表示器2が発した表示光LをフロントガラスWに反射させる。反射ミラー4の反射面4aは凹面になっており、表示器2からの表示光Lを拡大してフロントガラスWに投射することができる。5は保持部材であり、反射ミラー4は保持部材5に両面粘着テープにより貼着されている。なお、表示器2は、液晶表示素子を備える構成に限定されるものではなく、例えば有機EL表示パネルを備える構成であっても良い。
【0012】
6はハウジングであり、このハウジング6には、表示器2,回路基板3,反射ミラー4等が収容される。ハウジング6には表示光Lが通過する透光性カバー7が配設されている。透光性カバー7は、アクリル等の透光性樹脂からなるものであり、湾曲形状になっている。ハウジング6には遮光壁6aが設けられており、太陽光等の外光が表示器2に入射し虚像Vが見えにくくなる現象(ウォッシュアウト)を防止している。
【0013】
図3は、車両用ヘッドアップディスプレイ装置の電気的構成を示すブロック図である。車両用ヘッドアップディスプレイ装置は、車両Aに搭載され、速度センサ10(車速検出手段)と、GPS(Global Positioning System)装置11と、ジャイロセンサ12と、記憶媒体13(地図情報記憶手段)と、操作手段14と、制御手段15と、表示駆動回路16と、表示器2と、から構成されている。
【0014】
速度センサ10は、車両Aの走行速度を検出するためのもので、車速に応じた信号を制御手段15に出力する。GPS装置11は、自車位置(車両Aの現在位置)を求めるための装置であり、GPS用受信アンテナや増幅回路を備え、前記受信アンテナで受信した人工衛星からの位置情報である送信電波を高周波信号として増幅してなる信号を制御手段15に出力する。
【0015】
ジャイロセンサ12は、車両Aの車体向き(進行方向)を検出するためのものであり、車両Aの方向変化に応じた信号を制御手段15へ出力する。記憶媒体13は、CD−ROM、DVD−ROMあるいはハードディスク等によって構成され、地図データおよび走路形状を示すための三次元の座標情報からなるデジタルマップデータ(地図情報)が記憶されており、このデジタルマップデータは、制御手段15による後述する描画処理を行う際に使用される。なお、デジタルマップデータは、走路の形状を示す走路形状データ,走路の所定位置における高さを示す高さデータ,走路の左右の傾きを示す傾きデータ,走路の曲率を示す曲率データ,走路の路幅を示す路幅データ等を有している。
【0016】
操作手段14は、選択キーや決定キー等の複数のスイッチを有するものであり、後述する走路形状画像(前記走路の各三次元の座標情報を描画処理したもの)の表示形態または表示設定を切り換えるものである。また、運転者は、前記表示設定として、前記走路形状画像の表示または非表示の選択、あるいは、前記走路形状画像を表示する際の各設定値等を、操作手段14を操作することによって、表示器2による表示内容を任意に設定することができる。
【0017】
制御手段15は、マイクロコンピュータを適用でき、処理動作のプログラムが記憶されたROMと、演算値を一時的に記憶するRAMと、予め設定される各種設定値を記憶するEEPROMと、前記プログラムを実行するためのCPUと、入出力インターフェイス回路と、によって構成される。前記入出力インターフェイス回路は、速度センサ10、GPS装置11、ジャイロセンサ12、記憶媒体13、操作手段14や、表示駆動回路16に対してそれぞれ電気的な接続関係をなすための回路である。制御手段15は、速度センサ10,GPS装置11,ジャイロセンサ12,記憶媒体13,操作手段14からの入力及び前記プログラムに基づいて、表示駆動回路16に制御信号を出力し、表示器2に所望の情報を表示させるものである。
【0018】
表示駆動回路16は、表示器2に表示用の信号を与えるための回路であり、ICまたはLSIにて構成される。表示駆動回路16は、制御手段15からの信号に基づいて所定の表示を行うように表示器2を駆動制御するものである。表示器2は、TFT型の液晶表示素子およびバックライト手段からなり、表示光Lを発するように表示駆動回路16に駆動制御される。表示器2は、表示駆動回路16によって、走路形状画像など所望の表示形態を表示光LとしてフロントガラスWに投影するものである。
【0019】
以上の構成によって、制御手段15は、速度センサ10,GPS装置11,ジャイロセンサ12から構成される位置検出手段17の信号に基づいて、車両位置座標および車両の向きを算出し、この車両の前方側(進行方向側)に対応する走路形状を、記憶媒体13に格納されたデジタルマップデータに基づいて、表示駆動回路16を介して、表示器2に表示させることができる。
【0020】
次に、制御手段15による描画に関して、図4及び図5を用いて説明する。図4は、制御手段15による処理を示すものである。
【0021】
制御手段15は、位置検出手段17からの信号に基づいて、車両位置座標および車両Aの進行方向を算出する(ステップS1)。このとき、制御手段15は、GPS装置11,速度センサ10,ジャイロセンサ12によって、車両位置座標を算出する。例えば、制御手段15は、GPS装置12を用いて、時間によって変化する車両Aの軌跡を求めることによって、車両Aの車両位置座標や進行方向を算出することができる。また、制御手段15は、速度センサ10やジャイロセンサ12からの信号に基づいて、車両Aの移動距離や車体向きから車両位置座標および進行方向を算出することができる。
【0022】
次に、制御手段15は、車両位置座標に応じて視点座標を設定し、車両Aの進行方向に基づいて表示方向を設定する(ステップS2)。例えば、視点座標は、車両位置座標から15メートル高い位置に設定され、表示方向は、車両Aの進行方向と同じ方向に設定される。
次に、制御手段15は、記憶媒体13に格納された路幅データに基づいて、車両位置座標から進行方向に300メートルの範囲における路幅の平均値を演算する(ステップS3)。
【0023】
次に、制御手段15は、記憶媒体13に格納されたデジタルマップデータにおいて、視点座標および表示方向に基づいて選択される三次元の座標情報を演算することによって、走路形状を白色で表示させる画像データと、走路の路幅が前記平均値よりも1メートル以上狭い領域を赤色で表示させる画像データとを含む描画データを作成する(ステップS4)。この場合、車両位置座標から進行方向側に300メートル以内の三次元の座標情報についての描画データを作成する。
次に、制御手段15は、ステップS4において作成された描画データを画像2aとして表示器2に表示させるように、前記描画データを表示駆動回路16に出力する(ステップS5)。
【0024】
表示器2の画像2aにおいては、走路形状L1が白色で、走路の路幅が狭い部分L2が赤色で表示される(図5参照)。したがって、走路の路幅が狭い部分L2を異なる表示色にすることによって、路幅を容易に把握可能な表示を行うことのできる車両用ヘッドアップディスプレイ装置となる。
【0025】
なお、本発明の実施の形態においては、路幅の平均値よりも1メートル以上狭い部分を赤色で表示するものであったが、例えば、路幅の平均値よりも15%以上狭い部分を赤色で表示させても良い。また、路幅の平均値よりも所定値以上狭い部分を点滅表示させても良い。
また、表示器2からの表示光Lは、フロントガラスWに投影されるものであったが、本発明における投影部材は本実施形態に限定されるものではなく、例えば、車両のフロントガラス面あるいは車両のダッシュボード上に配設されるコンバイナに表示器からの表示光を投影させるものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態を示す表示ユニットの断面図。
【図2】同上実施形態を示す概略構成図。
【図3】同上実施形態を示すブロック図。
【図4】同上実施形態を示すフロー図。
【図5】同上実施形態の表示画像を示す図。
【符号の説明】
【0027】
2 表示器
10 速度センサ(車速検出手段)
13 記憶媒体(地図情報記憶手段)
15 制御手段
17 位置検出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地図情報記憶手段に記憶された地図情報に基づいて走路形状を表示する表示手段と、自車両の現在位置を検出する位置検出手段と、前記位置検出手段により検出された前記自車両の現在位置に基づいて前記地図情報を読み出して前記自車両の前方側の走路形状を前記表示手段に表示させる制御手段と、を備える車両用表示装置であって、
前記制御手段は、前記表示手段に表示させる前記走路形状において、前記自車両の現在位置よりも路幅が所定値以上に狭い部分を強調して表示させることを特徴とする車両用表示装置。
【請求項2】
前記制御手段は、通常の前記走路形状の表示色と異なる表示色にて前記部分を表示させることを特徴とする請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記部分を点滅表示させることを特徴とする請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項4】
前記表示手段は、表示器が発した表示光を投影部材に投影して虚像を表示させるヘッドアップディスプレイからなることを特徴とする請求項1に記載の車両用表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−178707(P2006−178707A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−370697(P2004−370697)
【出願日】平成16年12月22日(2004.12.22)
【出願人】(000231512)日本精機株式会社 (1,561)
【Fターム(参考)】