説明

車両用走行制御装置および車両用走行制御方法

【課題】一般道路は勿論、高速道路においても最適な速度でカーブを走行できる新規な車両用走行制御装置および車両用走行制御方法の提供。
【解決手段】カーナビゲーションシステム20によって誘導走行している自車両の走行路前方の道路情報を検出し、その走行路が一般道路であるときは、先行車に対する追従走行を優先し、高速道路であるときは、前記カーナビゲーションシステム20のナビゲーション情報から得られる目標車速と追従走行時の車速を比較し、低いほうの車速を選択して(セレクトロー)走行するように制御する。これによって、一般道路は勿論、高速道路においても的確な速度でカーブを走行できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーナビゲーションシステム(自動車経路誘導システム)を利用した車両用走行制御装置および車両用走行制御方法に係り、特に、走行路前方のカーブ状態に応じて的確な走行制御を実現する車両用走行制御装置および車両用走行制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、多くの自動車に搭載されているカーナビゲーションシステムは、地図情報やGPS機能などを用いて自車両の現在走行位置を検出すると共に現在位置から目標到達位置までの走行経路を算出して自車両を誘導するものであるが、さらに、近年ではこのカーナビゲーションシステムの機能を利用して自車両の車速制御などを複合的に行う走行制御技術が多く提案されている。
【0003】
例えば、以下の特許文献1では、自車両が走行している走行路前方にカーブが検出されたときは、そのカーブの大きさなどからそのカーブを通過する際の自車両の目標車速を算出し、算出された目標車速とその目標車速を得るための目標減速度を算出し、自車両がオーバースピードであると判断したときには、そのカーブの手前で自車両を減速制御することでそのカーブを最適な速度で通過できるようにしている。
【特許文献1】特開平6−36187号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、一般に従来のカーナビゲーションシステムに搭載されている地図情報のうち、高速道路の場合は、そのカーブの位置や形状などに関する情報は比較的精度が高く実際の状況と殆ど差がないが、高速道路を除く一般道路、例えば国道や都道府県道、市町村道などの場合は、そのカーブの位置や形状などに関する情報が実際の状況と比べて誤差が大きいことが知られている。
【0005】
そのため、前記提案技術のようにそのカーナビゲーションシステムの地図情報に基づいてカーブ手前で自車両の減速制御などを行う場合には、その一般道路における地図情報と実際の状況との誤差を考慮した制御、つまりカーブを通過する際の目標車速などを計算値よりも小さくする制御を行う必要がある。
しかしながら、このように一般道路の状況に合わせてカーブを通過する際の目標車速などを計算値よりも小さくすると、高速道路を走行した場合には、そのカーブでの通過速度が遅くなってしまい、ドライバにもたつき感を与えたり、周囲の交通の流れを乱す可能性がある。
【0006】
そこで本発明はこのような課題を有効に解決するために案出されたものであり、その目的は、一般道路に関する地図情報の誤差と高速道路に関する地図情報の誤差との違いを考慮した制御を行うことで、一般道路は勿論、高速道路においても最適な速度でカーブを走行できる新規な車両用走行制御装置および車両用走行制御方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために本発明は、
道路情報検出手段が自車両前方走行路の道路情報を検出し、減速制御設定変更手段が、当該道路情報検出手段で検出した道路情報に応じて自車両の減速制御量または減速制御設定値を変更するようにしたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、道路情報検出手段が自車両前方走行路の道路情報を検出し、減速制御設定変更手段がその検出した道路情報に応じて減速制御量または減速制御設定値を変更するようにしたことから、カーナビゲーションシステムのナビゲーション情報から得られるカーブの位置や形状と実際のカーブとの誤差が大きい一般道路では、その減速制御量または減速制御設定値を大きくすることによってその誤差を考慮した的確な速度でカーブを走行することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための最良の形態を添付図面を参照しながら詳述する。
(第1実施形態)
(構成)
図1は、本発明に係る車両用走行制御装置100の実施の一形態を示したものである。
図示するように、この車両用走行制御100は、コントローラ10と、カーナビゲーションシステム20と、車輪速センサ(車輪速検出手段)21と、ACCSW22と、外界認識装置(先行車追従走行手段)23と、加減速制御装置(加減速制御手段)30とから主に構成されている。
【0010】
先ず、このコントローラ10は、入力ポート11および出力ポート12、CPU13、RAM14、ROM15、タイマ16などからなる情報処理システム(マイクロコンピュータシステム)から構成されており、カーナビゲーションシステム20や車輪速センサ21、ACCSW22、外界認識装置23などの外部デバイスからの出力信号を入力ポート11から入力して演算処理し、その演算処理結果を出力ポート12からエンジン制御装置31やブレーキ制御装置32などからなる加減速制御装置30へ出力してこれらを複合的に制御するようになっている。
【0011】
次に、カーナビゲーションシステム20は、従来の公知のものと同様な構成および機能を有しており、CD−ROMやDVD−ROM、HDDなどの大容量記憶媒体に記憶された地図情報やGPS機能、ジャイロセンサなどによって自車両の現在走行位置を検出すると共に、現在位置から目標到達位置までの最適走行経路を算出して自車両を誘導する機能を提供するようになっている。そして、このカーナビゲーションシステム20は、その地図情報や走行経路情報から自車両の走行位置や自車両が走行している走行路前方カーブのノード情報などを含む各種ナビゲーション情報をコントローラ10に入力するようになっている。
【0012】
車輪速センサ21は、自車両の前後車輪などの備えられると共にその前後車輪の車輪速パルスを計測し、その計測信号を同じくコントローラ10に対して随時入力するようになっている。
ACCSW22は、例えば自車両のステアリングやインストルメントパネルなどに取り付けられている本発明装置100などを作動させるための操作スイッチであり、そのスイッチ状態を検出し、その検出信号を同じくコントローラ10などに対して随時入力するようになっている。
【0013】
外界認識装置23は、例えば、ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)などと称される車間自動制御システムを構成するミリ波レーダーやレーザーレーダーなどであり、自車両の直前を走行する先行車を検出し、その検出信号を同じくコントローラ10に対して随時入力することで後述する先行車に対する自車両の追従走行制御を可能とするようになっている。
【0014】
そして、図2は、これら各システムやデバイスからの入力信号に基づいて機能するコントローラ10の機能を詳細に示した機能ブロック図である。
図示するように、このコントローラ10は、ナビゲーション情報処理部101と、道路情報検出部102と、追従/非追従切り替え判断部103と、目標車速算出部104と、目標減速度算出部105と、目標車速指令値算出部106と、車速設定部107と、追従時目標車速算出部108と、車速指令値演算部109と、車速サーボ演算部110と、トルク配分制御演算部111と、エンジントルク演算部112と、ブレーキ液圧演算部113の各機能を前述した情報処理システムにより実現するようになっている。
【0015】
ナビゲーション情報処理部101は、カーナビゲーションシステム20から得られたナビゲーション情報(ノード情報(地図情報)、道路種別、リンク種別など)に基づいて自車両走行路前方のノード点からカーブの有無およびそのカーブ上の各ノード点における旋回半径、旋回方向などのカーブ状態に関する値を検出し、検出した値を道路情報検出部102および追従/非追従切り替え判断部103に出力するようになっている。
【0016】
道路情報検出部102は、このナビゲーション情報処理部101で取得された自車両前方走行路に関する情報などから道路情報を検出し、その道路情報を追従/非追従切り替え判断部103と、目標車速算出部104と、目標減速度算出部105とにそれぞれ出力すると共に、自車両走行前方のカーブ走行路上の各ノード点における旋回半径、旋回方向に関する各種カーブ走行路情報を目標車速算出部104に出力するようになっている。
【0017】
追従/非追従切り替え判断部103は、外界認識装置23から得られた先行車状態と、道路情報検出部102から得られた自車両前方走行路における道路情報とに基づいて先行車が検出された場合には、その先行車に対して自車両が追従するか否かを判断し、その判断結果を車速指令値演算部109へ出力するようになっている。
目標車速算出部104は、ナビゲーション情報処理部101で演算された前方カーブ上の各ノード点における旋回半径と、道路情報検出部102で検出された道路情報を基に、自車両前方カーブおよびその前方の各ノード点における目標車速を設定し、その設定値を目標減速度算出部105へ出力するようになっている。
【0018】
目標減速度算出部105は、この目標車速算出部104で設定された前方カーブおよびその前方の各ノード点における目標車速と、車輪速センサ21から得られた自車両の速度を基づいて自車両前方カーブおよびその前方の各ノード点における目標車速を満たすために目標減速度を算出すると共に、算出された目標減速度のなかから最小となるノード点および目標減速度を検出し、目標車速指令値算出部106に出力するようになっている。
【0019】
目標車速指令値算出部106は、この目標減速度算出部105で得られた自車両前方カーブの各ノード点において最小となる目標減速度に基づいて減速度の変化量リミッタを付加した目標車速指令値を算出してその目標車速指令値を車速指令値演算部109に出力するようになっている。
車速設定部107は、ACCSW22から得られる操作スイッチの状態および車輪速センサ21から得られる自車速から低速走行を行うための車速を設定すると共に、その設定車速を車速指令値演算部109に出力するようになっている。例えば、ACCメインスイッチがセットされた状態で、セットスイッチを押した場合は、そのときの自車両速度が設定車速となり、その設定車速で低速走行を行うようになっている。
【0020】
追従時目標車速算出部108は、外界認識装置23で得られた先行車状態と、車輪速センサ21から得られる自車両速度から追従時目標車速を算出し、その追従時目標車速を車速指令値演算部109に出力するようになっている。
車速指令値演算部109は、目標車速指令値算出部106で算出された目標車速指令値と、車速設定部107で設定された設定車速と、追従時目標車速算出部108で算出された追従時目標車速と、追従/非追従切り替え判断部103で判断された結果に基づいて車速指令値を選択し、その車速指令値を車速サーボ演算部110に出力するようになっている。
【0021】
車速サーボ演算部110は、この車速指令値演算部109で演算された車速指令値となるように車両を制駆動制御するものであり、この車速指令値を達成するための目標化減速度を演算し、目標加減速度に応じたトルク配分を行うために、目標加減速をトルク配分制御演算部111に出力するようになっている。
トルク配分制御演算部111は、この車速サーボ演算部110で演算された目標加減速度に応じたエンジントルク、ブレーキトルクのトルク配分制御値を演算すると共に、演算したトルク配分制御値をそれぞれエンジントルク演算部112と、ブレーキ液圧演算部113に出力するようになっている。
【0022】
エンジントルク演算部112は、このトルク配分制御演算部111で配分されたエンジン側のトルクを達成するためにスロットル開度などによりエンジントルクを演算し、その指令値を加減速制御装置30のエンジン制御装置31に出力するようになっている。
ブレーキ液圧演算部113は、同じくこのトルク配分制御演算部111で配分されたブレーキ側のトルクを達成するためにブレーキ液圧指令値を演算し、その指令値を加減速制御装置30のブレーキ制御装置32に出力するようになっている。
【0023】
(動作)
次に、このような構成をした車両用走行制御装置100を用いた車両用走行制御方法を主に図3、図7、図9のフローチャート図および図4、図5、図6、図8、図10の各図を参照しながら説明する。
先ず、図3は本発明方法に係る第1の実施の形態を示したフローチャート図である。なお、各ステップS100〜S126は内蔵されたタイマ16によるクロック数に基づいて一定間隔毎に連続して実行されるようになっている。
【0024】
すなわち、このコントローラ100(のCPU13)は、電源投入(車両起動)と同時に前記各部の機能を実現するためのプログラムをロードした後、最初のステップS100において入力ポート11から入力される各センサやシステムからの各種データを読み込んだ後、ステップS102以降のステップを順次移行して所定の処理を一定の間隔毎に繰り返し実行することになる。
【0025】
(ステップS100)
先ず、最初のステップS100における各種データの読み込み処理としては、具体的には、各車輪速Vwi(i=1〜4)や、アクセル開度A、横加速度値Yg、ステアリングに取り付けられているスイッチ(MAIN、RES、SETなど)、カーナビゲーションシステム20からのナビゲーション情報などを読み込むことになる。ここで、ナビゲーション情報の具体例としては、自車両位置(X、Y)および自車両前方の各ノード点N(j=1〜n、nは整数)に関するノード点情報(X、Y、L、Branch)の他、その自車両が走行している道路種別、リンク種別などの道路情報も同時に読み込むことになる。なお、このノード点情報のうち、X、Yはノード点の座標であり、Lは自車両位置(X、Y)からのノード点の位置(X、Y)までの距離情報である。また、各ノード点N(j=1〜n)の間の関係は、jの値が大きいノード点Nほど自車両から遠くなる。
【0026】
(ステップS101)
次に、ステップS101では、ステップS100で読み込まれたデータのうち、例えば、カーナビゲーションシステム20から得られるナビゲーション情報などに基づいて自車両の前方走行路の道路情報を検出する。
具体的には、自車両が走行する前方走行路が高速道路か、あるいは高速道路以外の一般道路(国道、都道府県道、市町村道、私道など)であるかをそのナビゲーション情報の地図情報などに含まれている道路種別やリンク種別などから判断する。
ここで、この道路の種類の判断基準としては特に限定するものでないが、例えば道路種別が有料道路以上でかつリンク種別が本線上下線分離の場合は、高速道路と判断する。一方、道路種別が有料道路以下でかつリンク種別が本線上下線非分離の場合には、高速道路以外の一般道路(以下、単に「一般道路」という)と判断する。
【0027】
(ステップS102)
ステップS102では、自車速Vを算出する。本実施の形態では通常走行時には、例えば後輪駆動の車両の場合は、下記(1)式により前輪の車輪速Vw、Vwの平均として自車速Vを算出する。
V=(Vw+Vw)/2…(1)
なお、ABS制御などの車速を用いたシステムが作動している場合には、そのようなシステムで使用している自車速(推定車速)を用いるようにする。
【0028】
(ステップS104)
ステップS104では、最初のステップS100で読み込んだナビゲーション情報のノード情報に基づいて各ノード点Nの旋回半径Rを算出する。
ここで、旋回半径R自体の算出方法は、いくつかの方法があるが、ここでは例えば一般的に利用される3点法に基づいて旋回半径Rを算出する。また、各ノード点Nにおける旋回半径Rを算出する他、各ノード点Nを通過するように等間隔に補間点を作成し、その補間点における旋回半径Rを算出しても良い。
【0029】
(ステップS105)
ステップS105では、予め設定された自車両の横加速度設定値を変更する。例えば、前記ステップS101において、自車両が一般道路を走行していると判断したときは、図4の破線に示すようにその横加速度設定値を低めに変更し、反対に自車両が高速道路を走行していると判断したときは、図4の実線に示すように高めに設定する。なお、図4中横軸は、自車両前方走行路のカーブの旋回半径Rである。
【0030】
(ステップS106)
ステップS106では、各ノード点における目標車速を算出する。具体的には、先に得た各ノード点Nの旋回半径Rおよび横加速度Ygとしてある所定値、例えば0.3Gとする。また、例えばドライバが任意に設定した横加速度でも良い。この各ノード点Nにおける目標車速Vrは下記(2)式により算出することができる。
Vr=Yg×|R|…(2)
この(2)式によれば、旋回半径Rが大きくなると目標車速Vrも大きくなる。
ここで、このステップS106では各ノード点に対して目標車速を設定したが、ステップS104と同様に各ノード点を通過するように等間隔に補間点を作成し、その補間点における目標車速を算出しても良い。
【0031】
(ステップS108)
ステップS108では、各ノード点における目標減速度を算出する。具体的には、先に得た自車速V、各ノード点における目標車速Vrおよび現在位置から各ノード点までの距離Lを用いて下記(3)式により各ノード点における目標減速度Xgsを算出する。
Xgs=(V−Vr)/(2×L
=(V−Yg×|R|)/(2×L)…(3)
ここで、この目標減速度Xgsとしては減速側をプラスとする。このように目標減速度Xgsは、自車速V、目標車速Vrおよび現在位置から各ノード点までの距離Lにより算出される値になっており、具体的には目標車速Vrや旋回半径Rが小さいほど、あるいは距離Lが小さいほど目標減速度Xgsは大きくなる。
また、このステップS108では、各ノードまでの距離Lを使用し、各ノード点の目標減速度を算出したが、等間隔に打たれた補間点までの距離を使用して各補間点での目標減速度を算出しても良い。
【0032】
(ステップS110)
ステップS110では、各ノード点における目標減速度のなかから制御対象となるノード点を検出するため、下記(4)式により目標減速度の最小値を算出する。具体的には、前記ステップS108で算出した各ノード点における目標減速度の最小値Xgs_minを算出する。
Xgs_min = min(Xgs)…(4)
(ステップS112)
ステップS112では、このステップS110で算出された目標減速度の最小値Xgs_minから、下記(5)式により減速度の変化量リミッタを付加した目標車速指令値Vrrを算出する。
Vrr=f(Xgs_min)×t…(5)
ここで、tは時間を表し、変化量リミッタは、例えば0.01G/secとする。
【0033】
(ステップS116)
ステップS116では、警報作動開始判断を行う。具体的には、前記ステップS112で算出した目標車速指令値Vrrと、自車速Vおよび設定車速Vsetを用いて警報作動開始判断を行う。例えば、図5に示すように、設定車速Vset=自車速Vの場合は、Vset=V>Vrrとなったときに警報を作動させる。さらに、警報作動フラグflg_wowをflg_wow=1とする。
【0034】
(ステップS118)
ステップS118では、減速制御作動判断を行う。具体的には、前記ステップS112で算出した目標車速指令値Vrrと、自車速Vおよび設定車速Vsetを用いて減速制御作動開始判断を行う。例えば、図6に示すように、設定車速Vset=自車速Vの場合は、Vset=V>Vrrとなったときに減速制御を作動させる。さらに、減速制御作動フラグflg_controlをflg_control=1とする。
【0035】
(ステップS120)
ステップS120では、前記ステップS112で算出した目標車速指令値Vrrを達成するための制御量を算出する。
ここで、制御量の算出は、減速制御作動フラグflg_controlがflg_control=1となったときに、ステップS112で算出した目標車速指令値Vrrを達成するために、車速サーボ演算部110で算出された目標減速度に応じてトルク配分制御演算部111にてエンジントルク、ブレーキトルクへとそれぞれトルク配分を行う。そして、配分されたエンジントルクを達成するためのスロットル開度指令値およびブレーキトルクを達成するためのブレーキ液圧指令値を出力する。例えば、図6に示すように、減速制御作動フラグflg_controlがflg_control=1となったときに液圧指令値を出力し、ブレーキ制御を作動させる。
【0036】
(ステップS122)
ステップS122では、減速制御および警報を車両に出力させる。ここで、警報の具体れとしては、警報音やHUD(Head-Up Display)による表示、カーナビゲーションシステムのスピーカーからの音声発話、カーナビゲーションシステムのモニターからの画面表示、メータ表示などでも良い。
【0037】
(効果)
このように本実施の形態は、カーナビゲーションシステム20からのナビゲーション情報から前方カーブの旋回半径を算出し、算出した各ノード点の旋回半径と予め設定された横加速度を基に各ノード点での目標車速を設定し、設定された各ノード点での目標車速と車輪速センサ21から計測された自車速を基に各ノード点での目標減速度を算出した後、各ノード点での目標減速度のなかから最小値を検出し、制御対象となるノード点および目標減速度を設定し、制御対象となるノード点での目標車速を達成するための目標車速指令値を算出して出力するようにしたものである。
【0038】
(1)すなわち、本実施の形態は、ステップS101において自車両の前方走行路に関する道路情報を検出し、ステップS105においてその横加速度設定値を一般道路と高速道路とで変更するようにしたため、それぞれの走行路に適した横加速度設定値を設定することができる。
(2)これによって、カーナビゲーションシステム20のナビゲーション情報などから得られる自車両前方走行路のカーブの位置や形状と実際のカーブとの誤差が大きい一般道路では、その横加速度設定値(減速制御設定値)を小さくすることによってその誤差を考慮した的確な速度でカーブを走行することができる。
【0039】
(3)また、高速道路においては、一般にカーナビゲーションシステム20のナビゲーション情報などから得られる自車両前方走行路のカーブの位置や形状と実際のカーブとの誤差が殆どないことから、その横加速度設定値(減速制御設定値)をゼロまたは大きくすることによってドライバに速度が遅すぎるといった感覚を与えることなく最適な速度でカーブを走行できる。
【0040】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2の実施の形態を説明する。
図7は本実施の形態に係る動作の流れを示したフローチャート図である。
すなわち、図示するように本実施の形態は、基本的には前記第1の実施の形態と同様な処理の流れとなるが、ステップS106の処理(各ノード点目標車速算出)の後に新たなステップS107として目標減速度変更処理を追加したものである。
このステップS107は、自車両の目標減速度を一般道路と高速道路とで切り替えるようにしたものである。例えば、ステップS101で検出された自車前方走行路が一般道路であると判断したときは、自車両の目標減速度を図8の破線に示すような傾向に沿って変更し、反対に高速道路であると判断したときは、自車両の目標減速度を図8の実線に示すような傾向に沿って変更する。つまり、一般道路を走行しているときは、目標減速度の初期の減速度が高くなるように目標減速度のゲインなどを変更し、高速道路を走行しているときは、目標減速度の減速度が均一になるように目標減速度のゲインなどを変更する。
【0041】
(4)これによって、一般道路を走行している場合では、初期の減速度が高くなって明確に分かりやすい減速感をドライバに与えることができるため、安心してカーブを通過することができる。
(5)また、高速道路を走行している場合では、減速が滑らかとなるため、交通の流れを乱したりすることなく流れにのったスムーズなカーブ走行が可能となる。
【0042】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3の実施の形態を説明する。
図9は本実施の形態に係る動作の流れを示したフローチャート図である。
図示するように本実施の形態は、基本的には前記第1および第2の実施の形態と同様な処理の流れとなるが、前記第1の実施の形態におけるステップS105の処理(設定横加速度変更)およびに前記第2の実施の形態におけるステップS107の処理(目標減速度変更)を省略すると共に、ステップS112の処理(目標車速指令値)の後に、新たに2つのステップS113(追従/非追従切り替え)と、ステップS114(車速指令値算出)を追加したものである。
【0043】
すなわち、ステップS113では、ステップS101で検出された自車前方走行路が一般道路であると判断したときは、先行車追従走行機能を作動させて自車両の直前を走行する先行車を探知し、先行車が検出されたときは、その先行車に追従した走行を行うべく車速指令値を算出する。
一方、ステップS101で検出された自車前方走行路が高速道路であると判断したときは、同じく先行車追従走行機能による自車両の直前を走行する先行車を探知してその先行車に対する目標車速を算出すると共に、前述したナビゲーション情報から目標車速を算出し、それら各目標車速を比較して目標車速が低いほうを選択して(セレクトロー)、その目標車速になるように車速指令値を算出する。
【0044】
つまり、一般道路を走行している場合の自車両前方の先行車は、一般にその走行路を適正な速度で走行している場合が多く、反対に高速道路を走行している場合の先行車は、一般にその走行路をオーバースピードで走行している場合が多い。
従って、一般道路を走行しているときに先行車を検知した場合は、図10(A)に示すように、その先行車に対する追従走行を優先すべく追従目標車速になるような車速指令値が出力され、反対に高速道路を走行している場合には、図10(B)に示すように、ナビゲーション情報から算出された目標車速と先行車の追従目標車速のうち小さいほうが優先的に選択(セレクトロー)されるような車速指令値が出力されるように制御したものである。
【0045】
ここで、図10(A)は、一般道路を走行中に先行車が検出されたときは、その先行車に対する追従目標車速(図中実線)がナビゲーション情報から算出された目標車速(図中破線)よりも高い場合であっても、追従目標車速が優先的に選択される例を示したものである。
反対に、図10(B)は、高速道路を走行中に先行車が検出されたときは、その先行車に対する追従目標車速(図中破線)とナビゲーション情報から算出された目標車速(図中実線)を比較し、常に低いほうの目標車速が選択されるセレクトローの例を示したものである。つまり、先行車が検出された時点でナビゲーション情報から算出された目標車速のほうが低い場合には、その目標車速が選択されるが、このナビゲーション情報から算出された目標車速が追従目標車速を上回った場合には、追従目標車速が優先的に選択される例を示したものである。
【0046】
(7)このように本実施の形態では、道路情報に応じて追従走行または非追従走行を切り替えるようにしたため、高速道路走行時には、カーブに対してオーバースピードである先行車に追従して走行してしまうことがなくなり、適正な速度でそのカーブを通過することができる。
また、一般道路では、追従走行を優先することでその道路に適した速度でそのカーブを通過することができる。
なお、本実施の形態においては、前記第1の実施の形態におけるステップS105の処理(設定横加速度変更)および前記第2の実施の形態におけるステップS107の処理(目標減速度変更)を省略した例で説明したが、これらステップS105、ステップS107の処理を組み合わせたものであっても良い。
【0047】
また、前記発明が解決しようとする課題の欄や特許請求の範囲などに記載した「カーブ状態検出手段」は、図2に示すナビゲーション情報処理部101に対応するものである。
また、「目標車速算出手段」は、図2に示す目標車速算出部104に対応し、「目標減速度算出手段」は、図2に示す目標減速度算出部105に対応し、さらに「目標車速指令値算出手段」は、図2に示す目標車速指令値算出部106に対応するものである。
【0048】
また、「道路情報検出手段」は、図2に示す道路情報検出部102に対応し、「減速制御設定変更手段」は、図3のステップS105などの設定横加速度変更処理などに対応し、「減速制御手段」は、図1および図2の減速制御装置30に対応するものである。
また、この「減速制御設定変更手段」で変更される「減速制御量」とは、例えば、図7のステップS107に示す「目標減速度」であり、また、「減速制御設定値」とは、例えば、図3のステップS105に示す「横加速度設定値」である。
【0049】
また、「先行車追従走行手段」は、図2の外界認識装置23やACCSW22、追従時目標車速算出部108、車速指令値演算部109、車速サーボ演算部110、トルク配分制御演算部、エンジントルク演算部112,ブレーキ液圧演算部113,エンジン制御装置30,ブレーキ制御装置31などで実現される公知の車間自動制御システム(ACC)に対応するものである。
【0050】
すなわち、この「先行車追従走行手段」は、自車両前方を走行する先行車の有無を検出し、先行車が検出されたならば自車両がその先行車に追従するための追従目標車速を算出し、前記目標車速指令値算出手段が算出した目標車速指令値と、前記設定車速算出手段が算出した設定車速と、前記追従時目標車速に基づいて車速制御するための車速指令値を選択し、選択した車速指令値に基づいて車速制御を行うようにしたものである。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明に係る自車両走行制御装置の基本概念を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る自車両走行制御装置の機能を示すブロック図である。
【図3】本発明に係る自車両走行制御方法に関する第1の実施の形態を示すフローチャート図である。
【図4】横加速度設定値とカーブの旋回半径との関係を示す図である。
【図5】目標車速指令値と警報作動などとの関係を示す図である。
【図6】目標車速指令値とブレーキ液圧指令値などとの関係を示す図である。
【図7】本発明に係る自車両走行制御方法に関する第2の実施の形態を示すフローチャート図である。
【図8】目標減速度と時間との関係を示す図である。
【図9】本発明に係る自車両走行制御方法に関する第3の実施の形態を示すフローチャート図である。
【図10】一般道路と高速道路における目標車速と時間との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0052】
100…車両用走行制御装置
10…コントローラ
20…カーナビゲーションシステム
21…車輪速センサ(車輪速計測手段)
22…ACCSW
23…外界認識装置(先行車追従走行手段)
30…加減速制御装置(加減速制御手段)
31…エンジン制御装置
32…ブレーキ制御装置
101…ナビゲーション情報処理部
102…道路情報検出部
103…追従/非追従切り替え判断部
104…目標車速算出部
105…目標減速度算出部
106…目標車速指令値算出部
107…車速設定部
108…追従時目標車速算出部
109…車速指令値演算部
110…車速サーボ演算部
111…トルク配分制御演算部
112…エンジントルク演算部
113…ブレーキ液圧演算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
取得したナビゲーション情報に基づいて走行路前方にあるカーブの状態を検出するカーブ状態検出手段と、
当該カーブ状態検出手段が検出した前方カーブの状態と予め設定された自車両の横加速度設定値とに基づいて前方カーブでの自車両の目標車速を算出する目標車速算出手段と、
当該目標車速算出手段が算出した目標車速に基づいて自車両の現在走行位置での目標減速度を算出する目標減速度算出手段と、
当該目標減速度算出手段が算出した目標減速度に基づいて減速制御手段に指令する目標車速指令値を算出する目標車速指令値算出手段とを備えた車両用走行制御装置であって、
自車両前方走行路の道路情報を検出する道路情報検出手段と、
当該道路情報検出手段で検出した道路情報に応じて、減速制御量または減速制御設定値を変更する減速制御設定変更手段とを備えたことを特徴とする車両用走行制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用走行制御装置において、
前記道路情報検出手段は、前記ナビゲーション情報に含まれる道路種別またはリンク種別に基づいて自車両前方走行路の道路情報を検出することを特徴とする車両用走行制御装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車両用走行制御装置において、
前記道路情報検出手段で検出する道路情報は、自車両前方走行路が高速道路または高速道路以外の一般道路のいずれかを示す情報であることを特徴とする車両用走行制御装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両用走行制御装置において、
前記減速制御設定変更手段で変更される減速制御設定値は、前記予め設定された自車両の横加速度設定値であることを特徴とする車両用走行制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載の車両用走行制御装置において、
前記減速制御設定変更手段は、前記予め設定した自車両の横加速度設定値を、一般道路よりも高速道路のほうが高い値になるように変更することを特徴とする車両用走行制御装置。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両用走行制御装置において、
前記減速制御設定変更手段で変更される減速制御量は、前記目標減速度算出手段で算出した目標減速度のゲインであることを特徴とする車両用走行制御装置。
【請求項7】
請求項6に記載の車両用走行制御装置において、
前記減速制御設定変更手段は、前記目標減速度算出手段で算出した目標減速度のゲインを、高速道路よりも一般道路のほうが高い値になるように変更することを特徴とする車両用走行制御装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の車両用走行制御装置において、
自車両の前を走行する先行車に追従して自車両を走行させる先行車追従走行手段をさらに備え、
前記減速制御設定変更手段は、前記道路情報検出手段で検出された自車両前方走行路の種類に応じて前記先行車追従走行手段による自車両の追従走行を制御することを特徴とする車両用走行制御装置。
【請求項9】
請求項8に記載の車両用走行制御装置において、
前記減速制御設定変更手段は、前記道路情報検出手段で検出された自車両前方走行路が一般道路であるときは、前記先行車追従走行手段によって自車両を先行車に対して追従走行し、前記自車両前方走行路が高速道路であるときは、前記目標車速指令値算出手段で算出された目標車速と、先行車追従走行手段で算出された先行車に対する目標車速とを比較し、当該各目標車速のうち低いほうの目標車速を選択して自車両を走行制御することを特徴とする車両用走行制御装置。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の車両用走行制御装置において、
前記ナビゲーション情報を提供するカーナビゲーションシステムと、車輪速情報を提供する車輪速検出手段と、制御指令に基づいて車両を減速する減速制御手段とを備えたことを特徴とする車両用走行制御装置。
【請求項11】
請求項8または9に記載の車両用走行制御装置において、
前記ナビゲーション情報を提供するカーナビゲーションシステムと、車輪速情報を提供する車輪速検出手段と、制御指令に基づいて車両を加速または減速する加減速制御手段とを備えたことを特徴とする車両用走行制御装置。
【請求項12】
カーナビゲーションシステムによって誘導走行している自車両の走行路前方のカーブ状態を検出し、検出した前方カーブの状態と予め設定された自車両の横加速度設定値とに基づいて前方カーブでの自車両の目標車速を算出し、当該目標車速に基づいて自車両の現在走行位置での目標減速度を算出すると共に、当該目標減速度に基づいて目標車速指令値を算出して減速手段に指令する車両用走行制御方法であって、
前記カーナビゲーションシステムのナビゲーション情報に基づいて自車両前方走行路の道路情報を検出し、検出した当該道路情報に応じて前記横加速度設定値または算出された前記目標減速度のいずれか一方あるいは両方を変更することを特徴とする車両用走行制御方法。
【請求項13】
請求項12に記載の車両用走行制御方法において、
自車両の前を走行する先行車に追従して自車両を走行させる先行車追従走行システムをさらに備え、
前記カーナビゲーションシステムのナビゲーション情報に基づいて検出した自車両前方走行路が一般道路のときは、前記先行車追従走行システムによる自車両の追従走行を優先し、前記自車両前方走行路が高速道路であるときは、前記目標車速指令値算出手段で算出された目標車速と、先行車追従走行手段で算出された先行車に対する目標車速とを比較し、当該各目標車速のうち低いほうの目標車速を選択して自車両を走行制御することを特徴とする車両用走行制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−35222(P2009−35222A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−203231(P2007−203231)
【出願日】平成19年8月3日(2007.8.3)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】