説明

車両用運転評価システムおよび車両用運転評価方法

【課題】ユーザが日常的に行っている車両の減速時における運転が、省燃費運転であるか否かを、ユーザに適切に認識させることが可能な車両用運転評価システムを提供する。
【解決手段】自車両の車速情報およびアクセル開度情報を少なくとも含む自車両に関する情報である車両情報を取得する取得手段と、取得手段により取得された車両情報を構成する各情報を、時系列ごとに対応付けて、履歴情報として記憶する記憶手段230と、記憶手段230に記憶された履歴情報に基づいて、自車両のアクセル開度が0になってから車両が停車するまでの間に、車両が走行した距離を停止距離として検出する検出手段と、停止距離と予め設定された基準距離とを比較する比較手段と、比較手段による比較結果を、ユーザに提示するための提示手段170,180と、を有することを特徴とする車両用運転評価システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用運転評価システムおよび車両用運転評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
急加速などの燃費を悪化させる特定の運転が行われたときの燃料消費量と、該特定の運転が行われないときの燃料消費量とを比較し、運転を評価する技術が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−362185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術では、急加速などの特定の運転が行われた場合にのみ、運転の評価を行うものであり、そのため、ユーザが日常的に行っている車両の減速時における運転が、省燃費運転(燃費の良い運転)であるか否かを、ユーザに適切に認識させることが困難であった。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、ユーザが日常的に行っている車両の減速時における運転が、省燃費運転であるか否かを、ユーザに適切に認識させることが可能な車両用運転評価システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、時系列ごとに対応付けて記憶した車速情報およびアクセル開度情報に基づいて、アクセル開度が0になってから自車両が停車するまでの間に、自車両が走行した距離を停止距離として算出し、算出した停止距離と予め設定された基準距離とを比較し、該比較結果をユーザに提示することにより上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、アクセル開度が0になってから自車両が停車するまでの間に、自車両が走行した停止距離に基づいて、ユーザの運転を評価することで、ユーザが日常的に行っている車両の減速時における運転が、省燃費運転であるか否かを、ユーザに適切に認識させることができ、ユーザの省燃費運転に対する意識の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施形態に係る運転評価システムの構成図である。
【図2】情報センタのデータベースに記憶された走行情報の一例を示す図である。
【図3】データベースから抽出された走行情報に含まれる停止距離の分布を例示する分布図である。
【図4】ユーザの運転を評価する方法を説明するための図である。
【図5】差分距離を算出し、過剰燃料消費量を算出する方法を説明するための図である。
【図6】本実施形態の運転評価処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面に基づいて、本実施形態に係る運転評価システムについて説明する。
【0010】
図1は、本実施形態に係る運転評価システムの構成を示す図である。図1に示すように、本実施形態に係る運転評価システムは、車両に搭載された車載装置100と、車両の外部に設置される情報センタ200とから構成される。車載装置100と情報センタ200とは、それぞれの通信装置110,210を介して、情報の授受が可能となっており、車載装置100において取得した自車両に関する情報を情報センタ200に送信し、情報センタ200において、車載装置100から送信された情報に基づいて、車両の減速時におけるユーザのアクセル操作が省燃費運転であったか否かを評価し、情報センタ200から車載装置100に評価の結果を送信し、車載装置100において、情報センタ200から送信された評価の結果を、ユーザに提示する。
【0011】
まず、車載装置100の構成について説明する。車載装置100は、図1に示すように、車載通信装置110と、車載装置用コントローラ120と、車速センサ130と、アクセル開度センサ140と、GPS(Global Positioning System)ユニット150と、ECU(electronic control unit)160と、ディスプレイ170と、スピーカ180とを有する。これら構成は、CAN(Controller Area Network)その他の車載LANによって接続され、相互に情報の授受を行うことができる。
【0012】
車載通信装置110は、情報センタ200から送信された運転の評価を受信し、車載装置用コントローラ120に送信する。また、車載通信装置110は、車載装置用コントローラ120から送信される車速情報やアクセル開度情報などを含む車両情報を、情報センタ200に送信する。
【0013】
車速センサ130は、自車両の速度情報を検出する。車速センサ130で検出された車速情報は、車載装置用コントローラ120に送信される。
【0014】
アクセル開度センサ140は、ユーザにより操作されるアクセルペダルに設けられ、アクセルペダルの踏み込み量に相当するアクセル開度情報を検出する。アクセル開度センサ140で検出されたアクセル開度情報は、車載装置用コントローラ120に送信される。
【0015】
GPSユニット150は、図示しない複数の衛星通信から送信される電波を検出して、自車両の位置情報を検出する。GPS150により検出された位置情報は、車載装置用コントローラ120に送信される。
【0016】
ECU160は、エンジンが吸入する空気量を用いて所定の空燃比になるために必要な燃料(ガソリン)の量を計算し、噴射弁を開いて燃料(ガソリン)を吸気管内または燃焼室へ供給させる電子制御燃料噴射(EGI:Electronic Gasoline Injection)などを実行する。また、ECU160は、電子制御燃料噴射を実行する際に、燃料の供給量を制御するインジェクタの燃料噴射量を、インジェクタの電磁式コイルの通電時間により制御しており、燃料噴射量に対応するPWM(Pulse Width Modulation)制御のパルス指令値を、インジェクタに送信するとともに、車載装置用コントローラ120にも送信する。これにより、車載装置用コントローラ120は、後述するように、ECU160から送信されたパルス指令値のパルス幅(オンタイム時間の長さ)に基づいて、燃料消費量情報を求めることができる。
【0017】
なお、車速センサ130、アクセル開度センサ140、GPSユニット150、およびECU160は、車速情報、アクセル開度情報、自車両の位置情報、およびパルス指令値を、所定の周期(例えば、Nミリ秒ごと)でそれぞれ検出し、周期的に、車載装置用コントローラ120に、これらの情報を送信する。
【0018】
本実施形態の車載装置用コントローラ120は、車両情報を取得するための処理を実行するためのプログラムが格納されたROM(Read Only Memory)と、このROMに格納されたプログラムを実行する動作回路としてのCPU(Central Processing Unit)と、アクセス可能な記憶装置として機能するRAM(Random Access Memory)と、を備える。なお、動作回路としては、CPUに代えて又はこれとともに、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などを用いることができる。
【0019】
車載装置用コントローラ120は、ROMに格納されたプログラムをCPUにより実行することにより取得機能を実現する。
【0020】
取得機能は、自車両の車速情報およびアクセル開度情報などを含む車両情報を取得する。具体的には、取得機能は、所定の周期(例えば、Nミリ秒ごと)で、車速センサ130から車速情報、アクセル開度センサ140からアクセル開度情報、GPSユニット150から自車両の位置情報および位置情報を取得した時刻である日時情報、ECU160からパルス指令値を車両情報として取得する。
【0021】
また、取得機能は、所定の周期で、車速センサ130から取得した車速情報に基づいて、1周期ごとの車両の走行距離を算出する。さらに、取得情報は、車載装置用コントローラ120のROMまたはRAMなどに記憶されている車台番号、車載装置ID、またはユーザの携帯電話番号などの車両識別情報を取得する。
【0022】
加えて、車載装置用コントローラ120のROMには、燃料噴射量とパルス指令値のパルス幅とを対応づけた噴射量マップが記憶されており、取得機能は、噴射量マップを参照して、ECU160から送信されたパルス指令値に含まれるパルス幅(オンタイム時間の長さ)に基づいて、燃料噴射量、すなわち燃料消費量情報を取得する。
【0023】
このように、取得機能により取得された日時情報、車両識別情報、車速情報、アクセル開度情報、位置情報、走行距離、および燃料消費量情報などの車両情報は、車載通信装置110を介して、情報センタ200に送信される。
【0024】
なお、取得機能は、GPSユニット150から位置情報を取得した際に、図示しないジャイロセンサから角度変化情報をさらに取得し、角度変化情報および車速センサ130から取得した車速情報に基づいて、自車両の位置情報を補正し、補正した位置情報を情報センタ200に送信してもよい。
【0025】
ディスプレイ170は、車載装置用コントローラ120を介して、情報センタ200から送信された運転の評価を、ディスプレイ170が備える画面上に表示することで、ユーザに運転の評価を提示する。また、スピーカ180は、運転の評価を音声で出力することにより、ユーザに運転の評価を提示する。なお、運転の評価として、ユーザの運転が省燃費運転であったか否かの評価と、さらにユーザの運転が省燃費運転ではなかった場合には過剰燃料消費量とが、ユーザに提示される。これに加え、評価の対象となった運転を行った日時情報や位置情報、および省燃費運転のためのアドバイス情報も運転の評価としてユーザに提示される。
【0026】
次に、情報センタ200について説明する。情報センタ200は、車両の外部に設置されるサーバなどであり、図1に示すように、通信装置210と、処理装置220と、データベース230とを備える。
【0027】
通信装置210は、車載装置100から送信された車両情報を受信し、処理装置220に送信する。また、通信装置210は、処理装置220から送信された運転の評価を車載装置100に送信する。
【0028】
データベース230には、後述する基準距離が記憶されている。また、データベース230は、車載装置100から送信された車両情報を構成する各情報を、時系列ごとに対応付けて、履歴情報として記憶する。さらに、データベース230は、履歴情報に基づいて取得された走行情報を記憶する。なお、データベース230が管理する情報は、上述した情報に限定されず、例えば、地図情報や交通情報などの情報もさらに含まれる。
【0029】
処理装置220は、ユーザの運転を評価するための処理を実行するためのプログラムが格納されたROMと、このROMに格納されたプログラムを実行する動作回路としてのCPUと、アクセス可能な記憶装置として機能するRAMと、を備える。そして、ROMに格納されたプログラムをCPUで実行することで、検出機能、走行情報取得機能、判断機能、評価機能、差分距離算出機能、過剰燃料消費量算出機能、および基準距離決定機能を実現する。以下において、処理装置220が備える各機能について説明する。
【0030】
検出機能は、アクセル開度が0になってから車両が停車するまでの間に、車両が走行した距離を停止距離として検出する。ここで、検出機能により停止距離を検出する方法は特に限定されないが、本実施形態では、例えば、以下に説明する方法で停止距離を検出する。すなわち、検出機能は、データベース230に記憶された履歴情報のうち、アクセル開度が0になってから、車両が停車するまでの履歴情報を抽出する。そして、データベース230から抽出された履歴情報に含まれる走行距離の合計を算出し、算出した走行距離の合計値を停止距離として検出する。なお、車両が停車したか否かの判定は、特に限定されず、例えば、履歴情報に含まれる車速が所定値以下となった場合に、車両が停車したと判定される。
【0031】
走行情報取得機能は、履歴情報に含まれる各種情報に基づいて、アクセル開度が0になってから車両が停車するまでの間の車両の走行状況に関する走行情報を取得する。具体的には、走行情報取得機能は、以下に説明する走行情報を取得する。
【0032】
データベース230には、例えば、車両識別情報(例えば、車台番号、車載装置ID、ユーザの携帯電話番号)と車両の車種情報とが対応付けて記憶されており、走行情報取得機能は、履歴情報に含まれる車両識別情報に基づいて、車両の車種情報を取得する。また、走行情報取得機能は、データベース230に記憶された地図情報を参照し、履歴情報に含まれる位置情報および日時情報に基づいて、車両が走行する道路の道路リンクIDおよび車両の進行方向を取得する。さらに、情報センタ200は、通信装置220を介して、交通情報を収集しており、データベース230には、渋滞度を含む現在(リアルタイム)の交通情報および統計交通情報が格納されている。走行情報取得機能は、データベース230に記憶されているこれらの交通情報を参照して、履歴情報に含まれる道路リンクIDおよび車両の進行方向に基づいて、車両が走行している道路の渋滞度を取得する。加えて、走行情報取得機能は、履歴情報に含まれる車速情報およびアクセル開度情報に基づいて、アクセル開度が0になった際の車速を、アクセルオフ時車速として取得する。
【0033】
走行情報取得機能は、このように取得した車種情報、道路リンクID、車両の進行方向、渋滞度、およびアクセルオフ時車速と、検出機能により検出された停止距離とを関連付けて、走行情報として、データベース230に記憶する。図2は、データベース230に記憶された走行情報の一例を示す図である。図2に示すようなデータベース230に記憶された走行情報は、以下に説明するように、基準距離を設定する際に用いられる。
【0034】
ここで、基準距離の設定方法について説明する。データベース230には、車種ごと、道路リンクごと、車両の進行方向ごと、渋滞度ごと、およびアクセルオフ時車速ごとに基準距離が予め設定されている。基準距離は、図2に示すようなデータベース230に記憶された走行情報に基づいて、処理装置220の基準距離決定機能により決定される。すなわち、基準距離決定機能は、データベース230に記憶されている走行情報のうち、走行情報取得機能により取得された走行情報と、車種情報、道路リンクID、車両の進行方向、渋滞度、およびアクセルオフ時車速が対応する走行情報を抽出する。そして、基準距離決定機能は、データベース230から抽出された全ての走行情報に含まれる停止距離のうち、距離の長さが長い方から所定%に位置する停止距離を、基準距離として決定する。ここで、図3はデータベース230から抽出された走行情報に含まれる停止距離の分布を例示した分布図である。図3に示す例では、基準距離決定機能は、データベース230から抽出された全ての走行情報に含まれる停止距離のうち、距離の長さが長い方から上位γ%に位置する停止距離を、基準距離βとして決定する。そして、基準距離決定機能は、決定された基準距離と、基準距離を決定する際に用いられた車種情報、道路リンクID、車両の進行方向、渋滞度、およびアクセルオフ時車速とを関連付けてデータベース230に記憶する。
【0035】
なお、基準距離は、基準距離決定機能により決定されるものに限らず、例えば、予め定められた固定値としてもよいし、ユーザの省燃費運転に関する技能レベルに応じた可変値としてもよい。
【0036】
判断機能は、時系列ごとに記憶された履歴情報に基づいて、アクセル開度が0になってから車両が停車するまでの間の所定時間における減速度を算出し、算出された減速度のうち絶対値が最大となる最大減速度を求め、最大減速度の絶対値が所定値以上であるか否かを判断する。具体的には、まず、判断機能は、時系列ごとに記憶された履歴情報を参照して、アクセル開度が0になってから車両が停車するまでの間の所定時間ごとの減速度を算出する。例えば、N秒ごとに履歴情報が記憶されている場合、任意の履歴情報に含まれる車速情報が取得された時刻を時刻t1とし、時刻t1からN秒後の履歴情報に含まれる車速情報が取得された時刻を時刻t2とした場合、減速度は、下記式(1)に基づいて、算出される。
減速度(m/s) = {(時刻t2における車速(m/s))−(時刻t1における車速(m/s))}÷ N(s) … (1)
そして、判断機能は、時系列ごとに記憶された履歴情報に基づいて算出された減速度のうち、最も減速度の絶対値が大きい減速度を、最大減速度として選択する。なお、判断機能は、選択した最大減速度の単位(m/s)を、重力加速度(G:9.80665(m/s))に変換する。
【0037】
判断機能は、このように選択した最大減速度の絶対値が、下記式(2)に示すように、正の所定値θ以上であるか否かを判断する。
|最大減速度| ≧ θ … (2)
なお、判断機能による判断の結果は、後述する評価機能により用いられる。
【0038】
評価機能は、検出機能により検出された停止距離と、予め設定された基準距離とを比較し、ユーザの運転を評価する。ユーザの運転を評価するため、まず、評価機能は、データベース230から、走行情報取得機能により取得された走行情報に含まれる各情報に対応する基準距離を抽出する。ここで、上述したように、データベース230には、車種ごと、道路リンクごと、車両の進行方向ごと、渋滞度ごと、およびアクセルオフ時車速ごとに基準距離が予め設定されている。評価機能は、走行情報取得機能により取得された走行情報に含まれる車種情報、道路リンクID、車両の進行方向、渋滞度、およびアクセルオフ時車速を用いて、これら走行情報の各情報に対応する基準距離を、データベース230から抽出する。
【0039】
そして、評価機能は、検出機能により検出された停止距離と、データベース230から抽出された基準距離とを比較し、ユーザの運転を評価する。ここで、図4は、ユーザの運転を評価する方法を説明するための図である。評価機能は、図4に示す停止距離α2のように、停止距離α2が基準距離β以上となる場合には、ユーザの運転は省燃費運転であると評価する。一方、図4に示す停止距離α1のように、停止距離α1が基準距離βよりも短い場合には、ユーザの運転は省燃費運転ではないと評価する。
【0040】
また、評価機能は、判断機能により最大減速度の絶対値が所定値θ以上であると判断された場合には、例えば、障害物を回避するなどの事情により、ユーザが車両を減速させたものであると判断し、この履歴情報に基づいて検出された停止距離を、評価の対象外とする。すなわち、判断機能により最大減速度の絶対値が所定値θ以上であると判断された場合には、停止距離と基準距離との比較を行わない。
【0041】
差分距離算出機能は、停止距離が基準距離よりも短い場合に、停止距離と基準距離との差を差分距離として算出する。ここで、図5は、差分距離を算出し、過剰燃料消費量を算出する方法を説明するための図である。図5においては、図4に示す停止距離α1と基準距離βとを示しており、さらに停止距離α1と基準距離βとの差である差分距離β−α1を示している。差分距離算出機能は、図5に示すように、停止距離α1と基準距離βとに基づいて、停止距離α1と基準距離βとの差である差分距離β−α1を算出する。
【0042】
過剰燃料消費量算出機能は、データベース230に記憶された履歴情報に基づいて、差分距離算出機能により算出された差分距離を走行するのに要した燃料消費量を、過剰燃料消費量として算出する。ここで、停止距離が図5に示す停止距離α1である場合、ユーザは、Pα1の位置においてアクセルをオフ(アクセル開度が0)としているが、Pβの位置からPα1の位置までの距離においては、アクセルをオン(アクセル開度が0よりも大きい)のまま、燃料を消費してこの距離を走行したことになる。そのため、停止距離が図5に示す停止距離α1である場合には、停止距離が図5に示す基準距離βである場合と比べると、差分距離β−α1だけ燃料を過剰に消費して走行したことになり、差分距離β−α1を走行した分の燃料は、過剰に消費された燃料消費量となる。過剰燃料消費量算出機能は、このように、アクセル開度が0になってから車両が停車するまでの間に車両が走行した距離が基準距離である場合と比べて、過剰に消費した燃料消費量を、過剰燃料消費量として算出する。
【0043】
ここで、過剰燃料消費量算出機能により過剰燃料消費量を算出する方法は特に限定されないが、例えば、以下に説明する方法で過剰燃料消費量を算出できる。例えば、図5に示す例において、過剰燃料消費量算出機能は、データベース230に記録された履歴情報を参照して、差分距離β−α1を走行時の車速情報と差分距離β−α1の長さから、車両がPβの位置を通過時の時刻を算出する。そして、履歴情報に含まれる燃料消費量を参照して、Pβの位置を通過時の時刻からPα1の位置を通過時の時刻(アクセル開度が0になった時刻)までにおける燃料消費量を合計し、過剰燃料消費量を算出する。また、履歴情報には走行距離が含まれているため、アクセル開度が0になった時点における履歴情報から前の時刻における履歴情報へと、履歴情報に含まれる走行距離の積分値が差分距離となるまで遡り、アクセル開度が0になった時点における履歴情報から走行距離の積分値が差分距離となった履歴情報までの燃料消費量の合計値を、過剰燃料消費量として算出してもよい。
【0044】
このように、本実施形態では、運転評価システムを、車載装置100と情報センタ200とからなる構成とし、運転評価における処理負担を分散させることで、運転評価システム全体の処理負担を軽減させることができる。なお、本実施形態の運転評価システムは、車載装置100を搭載した複数の車両により利用されるものであり、情報センタ200のデータベース230には、複数の車両から送信された車両情報が、車両ごと、かつ、時系列ごとに履歴情報として記憶され、情報センタ200は、車両ごと、かつ、時系列ごとに記憶された履歴情報に基づいて、各車両について、運転の評価を行う。
【0045】
次に、図6を参照して、本実施形態の運転評価処理について説明する。図6は、本実施形態の運転評価処理を示すフローチャートである。なお、図6に示す運転評価処理は、例えば、イグニッションオンあるいは運転を評価するための所定の操作がユーザにより行われることで開始され、イグニッションオフあるいは運転の評価を終了するための所定の操作がユーザにより行われるまで、繰り返し行われる。
【0046】
ステップS101では、車載装置100の車載装置用コントローラ120の取得機能により、日時情報、車両識別情報(例えば、車台番号、車載装置ID、携帯電話番号)、車速情報、アクセル開度情報、自車両の位置情報、走行距離、燃料消費量などの各種の車両情報が、周期的(例えば、Nミリ秒ごと)に取得される。
【0047】
ステップS102では、車載装置100の車載通信装置110を介して、ステップS101で取得された車両情報が、車載装置100から情報センタ200に送信される。情報センタ200では、情報センタ200の通信装置210を介して、各種車両情報が受信され、情報センタ200の処理装置220に送信される。
【0048】
ステップS103では、情報センタ200の処理装置220により、車載装置100から送信された車両情報に含まれる各種情報が、時系列ごとに対応付けられ、履歴情報としてデータベース230に記憶される。
【0049】
ステップS104では、処理装置220の検出機能により、ステップS103で記憶された履歴情報に基づいて、アクセル開度が0になってから車両が停車するまでの間に、車両が走行した距離が停止距離として検出される。
【0050】
そして、ステップS105では、処理装置220の走行情報取得機能により、データベース230に記憶された履歴情報に基づいて、車種情報、道路リンクID、車両の進行方向、渋滞度、アクセルオフ時車速などの走行情報が取得される。
【0051】
次に、ステップS106では、処理装置220の評価機能により、ステップS105で取得された走行情報に含まれる各情報に対応する基準距離が、データベース230から抽出される。
【0052】
ステップS107では、処理装置220の判断機能により、アクセル開度が0になってから車両が停車するまでの間の所定時間における減速度が算出され、算出された減速度のうち絶対値が最大となる最大減速度が選択され、選択された最大減速度の絶対値が所定値θ以上であるか判断される。最大減速度の絶対値が所定値θ以上である場合(ステップS107=YES)には、例えば、障害物を回避するなどの事情により、ユーザが車両を減速させたものであると判断し、ステップS104で算出された停止距離は、運転評価の対象から外される。すなわち、後述するステップS109において、停止距離と基準距離との比較が行われることなく、この運転評価処理が終了する。一方、最大減速度の絶対値が所定値θよりも小さい場合(ステップS107=NO)には、停止距離に基づいてユーザの運転を評価するため、ステップS108に進む。なお、ステップS107の処理は、ステップS104で停止距離を算出する処理の前に行ってもよい。
【0053】
ステップS108では、処理装置220の走行情報取得機能により、ステップS104で算出された停止距離と、ステップS105で取得された走行情報とが関連付けられ、図2に示すように、データベース230に記憶される。これにより、データベース230に記憶された走行情報を用いて、基準距離を決定することができる。
【0054】
ステップS109では、処理装置220の評価機能により、ステップS104で算出された停止距離と、ステップS106で抽出された基準距離とが比較される。比較の結果、例えば、図4に示す停止距離α2のように、停止距離α2が基準距離β以上である場合(ステップS109=YES)には、ステップS110に進み、ユーザの運転は省燃費運転であると評価される。一方、図4に示す停止距離α1のように、停止距離α1が基準距離βよりも小さい場合(ステップS109=NO)には、ステップS111に進み、ユーザの運転は省燃費運転ではないと評価される。
【0055】
また、停止距離が基準距離よりも小さい場合(ステップS109=NO)、ステップS111に続いて、ステップS112では、処理装置220の過剰燃料消費量算出機能により、過剰燃料消費量が算出される。例えば、過剰燃料消費量算出機能は、図5に示すように、停止距離α1が基準距離βよりも小さい場合、停止距離α1と基準距離βの差である差分距離β−α1を走行するのに要した燃料消費量を、過剰燃料消費量として算出する。
【0056】
ステップS113では、情報センタ200の通信装置210を介して、情報センタ200から車載装置100に評価情報が送信される。ここで、評価情報とは、ステップS110でユーザの運転は省燃費運転であると評価された場合には、ユーザの運転は省燃費運転であるという評価を含む情報であり、一方、ステップS111でユーザの運転は省燃費運転ではないと評価された場合には、ユーザの運転は省燃費運転ではないという評価と、ステップS112で算出された過剰燃料消費量とを含む情報である。さらに評価情報には、評価の対象となった運転を行った日時情報や位置情報、および省燃費運転のためのアドバイス情報などの情報も含まれる。車載装置100は、情報センタ200から送信された評価情報を、車載通信装置110を介して受信する。
【0057】
そして、ステップS114では、情報センタ200から送信された評価情報が、車載装置用コントローラ120からディスプレイ170およびスピーカ180に送信される。そして、ディスプレイ170では、評価情報をディスプレイ170が備える画面上に表示し、また、スピーカ180では、評価情報を音声で出力することで、評価情報をユーザに提示する。
【0058】
ステップS114で、評価情報がユーザに提示された後は、この運転評価処理を終了する。
【0059】
以上のように、本実施形態の運転評価システムは、アクセル開度が0になってから、車両が停車するまでの間に、車両が走行した距離を停止距離として算出し、算出した停止距離と、予め設定された基準距離とを比較することで、ユーザの運転を評価する。これにより、本実施形態においては、ユーザが日常的に行っている車両の減速時において、ユーザの運転が省燃費運転であるか否かを、適切に評価することができ、ユーザの省燃費運転に対する意識の向上を図ることができる。
【0060】
また、本実施形態では、ユーザの運転が省燃費運転であるか否かの評価に加えて、停止距離が基準距離よりも短く、ユーザの運転が省燃費運転ではないと評価された場合に、停止距離と基準距離との差を差分距離として算出し、差分距離を走行するのに要した燃料消費量を過剰燃料消費量として算出し、算出された過剰燃料消費量をユーザに提示する。これにより、ユーザが省燃費運転を行うことで削減可能な燃料消費量を、定量的に、ユーザに認識させることができ、ユーザの省燃費運転に対する意識の向上を図ることができる。
【0061】
さらに、本実施形態では、時系列ごとに記憶された履歴情報に基づいて、アクセル開度が0になってから車両が停車するまでの間の所定時間における減速度を算出し、算出された減速度のうち絶対値が最大となる最大減速度を求め、最大減速度の絶対値が、所定値以上であるか否かを判断する。そして、最大減速度の絶対値が所定値以上である場合には、停止距離と基準距離との比較を行わず、検出された停止距離を運転の評価の対象から外す。このように、最大減速度の絶対値が所定値以上である場合には、例えば、障害物を回避するなどの事情により、ユーザが車両を減速させたものであると判断されるため、このように検出された停止距離を、評価の対象から外すことで、ユーザの運転をより適切に評価することができる。
【0062】
加えて、本実施形態では、基準距離を、データベース230に記憶されている走行情報に基づいて決定する。データベース230に記憶されている走行情報は、自車両または他の車両が実際に走行した際に検出した停止距離などを含む走行情報を収集したものである。そのため、基準距離をデータベース230に記憶されている走行情報に基づいて決定することで、ユーザの過去の運転または他のユーザの運転と、運転評価の対象となるユーザの運転とを比較することができるため、ユーザの運転をより適切に評価でき、ユーザの省燃費運転に対する意識の向上を図ることができる。
【0063】
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0064】
例えば、本実施形態の運転評価システムは、車載装置100および情報センタ200から構成されているが、運転評価システムを車載装置100のみからなる構成としてもよい。すなわち、車載装置用コントローラ120において、停止距離を検出し、停止距離と基準距離とを比較することで、情報センタ200を介することなく、ユーザの運転を評価してもよい。また、この構成において基準距離を決定する際には、例えば、車載装置100にデータベースをさらに設け、自車両が過去に走行した際の停止距離を含む走行情報を車載装置100に搭載されたデータベースに記憶し、このデータベースに記憶された走行情報に基づいて、基準距離を決定する構成としてもよく、また、例えば、他の車両と通信することで、他の車両から取得した走行情報と、自車両の過去の走行に基づく走行情報とを車載装置100に搭載されたデータベースに記憶し、このデータベースに記憶された走行情報に基づいて、基準距離を決定する構成としてもよく、さらに、例えば、所定の通信サービスを利用する際に、車載通信装置110を介して、基準距離をダウンロードする構成としてもよい。
【0065】
また、本実施形態においては、停止距離と基準距離とを比較して、ユーザの運転が省燃費運転であるか否かで、ユーザの運転を評価しているが、この評価に代えて、またはこの評価に加えて、基準距離に対する停止距離の差または割合に応じた停止度(ポイント)を算出して、ユーザに提示してもよい。例えば、基準距離が100mであり、停止距離が90mである場合には、停止度を、(90m(停止距離)÷ 100m(基準距離))× 100 = 90ポイントのように算出して、ユーザに提示してもよい。
【0066】
さらに、本実施形態では、停止距離と基準距離とを比較することで、ユーザの運転を評価しているが、比較する対象は距離に限られず、例えば、アクセル開度が0になってから車両が停車するまでの間の時間を停止時間として算出し、算出した停止時間と予め設定された基準時間とを比較し、停止時間が基準時間以上である場合は、ユーザの運転は省燃費運転であると評価し、反対に、停止時間が基準時間よりも短い場合は、ユーザの運転は省燃費運転ではないと評価してもよい。例えば、アクセル開度が0になってから車両が停車するまでの間の停止時間が20秒であり、基準時間が15秒である場合には、停止時間が基準時間以上であるため、ユーザの運転は省燃費運転であると評価される。
【0067】
また、停止時間と基準時間とに基づいてユーザの運転を評価する場合であって、停止時間が基準時間よりも短く、ユーザの運転が省燃費運転ではないと評価された場合には、停止時間と基準時間との差を差分時間として算出し、算出した差分時間の間、車両が走行するのに要した燃料消費量を、過剰燃料消費量として算出することができる。
【0068】
このように、停止時間と基準時間とに基づいてユーザの運転を評価する場合も、停止距離と基準距離とに基づいてユーザの運転を評価する場合と同様に、ユーザが日常的に行っている車両の減速時において、ユーザの運転が省燃費運転であるか否かを、適切に評価することができる。
【0069】
さらに、本実施形態では、情報センタ200において、ユーザの運転を評価し、運転の評価を車載装置100に送信することで、車載装置100のディスプレイ170あるいはスピーカ180を介して、ユーザに運転の評価を提示しているが、運転の評価をユーザに提示する方法は特に限定されず、例えば、情報センタ200から、ユーザが所有するパーソナルコンピュータあるいは携帯電話機などの装置に、運転の評価を送信し、これらの装置が備えるディスプレイあるいはスピーカを介して、ユーザに運転の評価を提示するような構成であってもよい。
【0070】
なお、上述した実施形態の車載装置100の車載装置用コントローラ120の取得機能は本発明の取得手段に、情報センタ200の処理装置220の検出機能は本発明の検出手段に、同じく処理装置220の評価機能は本発明の比較手段に、同じく処理装置220の差分距離算出機能は本発明の差分距離算出手段に、同じく処理装置220の過剰燃料消費量算出機能は本発明の過剰燃料消費量算出手段に、同じく処理装置220の判断機能は本発明の判断手段に、同じく処理装置220の基準距離決定機能は本発明の基準距離決定手段に、車載装置100のディスプレイ170およびスピーカ180は本発明の提示手段に、情報センタ200は本発明のサーバに、情報センタ200の通信装置210は本発明の受信手段および送信手段に、情報センタ200のデータベース230は本発明の記憶手段にそれぞれ相当する。
【符号の説明】
【0071】
100…車載装置
110…車載通信装置
120…車載装置用コントローラ
130…車速センサ
140…アクセル開度センサ
150…GPSユニット
160…ECU
170…ディスプレイ
180…スピーカ
200…情報センタ
210…通信装置
220…処理装置
230…データベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の車速情報およびアクセル開度情報を少なくとも含む自車両に関する情報である車両情報を取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された車両情報を構成する各情報を、時系列ごとに対応付けて、履歴情報として記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された前記履歴情報に基づいて、自車両のアクセル開度が0になってから車両が停車するまでの間に、車両が走行した距離を停止距離として検出する検出手段と、
前記停止距離と予め設定された基準距離とを比較する比較手段と、
前記比較手段による比較結果を、ユーザに提示するための提示手段と、を有することを特徴とする車両用運転評価システム。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用運転評価システムであって、
前記車両情報は、自車両の燃料消費量情報をさらに含むことを特徴とする車両用運転評価システム。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用運転評価システムであって、
前記停止距離が前記基準距離よりも短い場合に、前記停止距離と前記基準距離との差を差分距離として算出する差分距離算出手段と、
前記履歴情報に基づいて、自車両が前記差分距離を走行するのに要した燃料消費量を、過剰燃料消費量として算出する過剰燃料消費量算出手段と、をさらに備え、
前記提示手段は、算出された前記過剰燃料消費量を、ユーザに提示することを特徴とする車両用運転評価システム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の車両用運転評価システムであって、
前記履歴情報に基づいて、前記アクセル開度が0になってから自車両が停車するまでの間における減速度を算出し、前記減速度が、所定値以上であるか否かを判断する判断手段をさらに有し、
前記比較手段は、前記判断手段により、前記減速度が前記所定値以上であると判断された場合に、前記停止距離と前記基準距離との比較を行わないことを特徴とする車両用運転評価システム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の車両用運転評価システムであって、
前記記憶手段に記憶されている前記履歴情報、および前記検出手段により検出された前記停止距離に基づいて、前記基準距離を決定する基準距離決定手段をさらに備えることを特徴とする車両用運転評価システム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の車両用運転評価システムであって、
前記記憶手段、前記検出手段、および前記比較手段は、自車両外部に設置されたサーバに備えられていることを特徴とする車両用運転評価システム。
【請求項7】
請求項6に記載の車両用運転評価システムであって、
前記サーバは、前記車両情報を車両から受信する受信手段、および、前記比較手段による比較結果を車両に送信する送信手段をさらに備えることを特徴とする車両用運転評価システム。
【請求項8】
請求項7に記載の車両用運転評価システムであって、
前記受信手段は、複数の車両から前記車両情報を受信し、
前記記憶手段は、前記受信手段により受信された前記車両情報を構成する各情報を、車両ごとに、かつ、時系列ごとに対応付けて、前記履歴情報として記憶することを特徴とする車両用運転評価システム。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の車両用運転評価システムであって、
前記検出手段は、前記停止距離の代わりに、前記記憶手段に記憶された前記履歴情報に基づいて、自車両のアクセル開度が0になってから車両が停車するまでの時間を停止時間として検出し、
前記比較手段は、前記停止時間と予め設定された基準時間とを比較することを特徴とする車両用運転評価システム。
【請求項10】
時系列ごとに対応付けて記憶した車速情報およびアクセル開度情報に基づいて、前記アクセル開度が0になってから自車両が停車するまでの間に、自車両が走行した距離を停止距離として算出し、前記停止距離と予め設定された基準距離とを比較し、該比較結果をユーザに提示することを特徴とする車両用運転評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−48551(P2011−48551A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−195465(P2009−195465)
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】