説明

車両用駆動装置

【課題】小型化が可能であって精度よく磁石温度によって変化する磁石磁束を算出できる車両用駆動装置を提供する。
【解決手段】エンジン6と、永久磁石72aを内蔵したモータ7と、第1クラッチ41を介してエンジン6に連結されるとともにモータ7に連結され第1変速用シフター51により複数のギヤを選択可能な第1主軸11と、第2クラッチ42を介してエンジン6に連結され第2変速用シフター52により複数のギヤを選択可能な第2中間軸16と、を備え、モータ7の電圧、電流、インダクタンス、回転数から永久磁石72aの磁石磁束を算出して、トルク指示値を補正するECU5を備え、ECU5は、磁石磁束の算出が所定時間以上行なわれていない場合であって、且つ、モータ7の回転数が所定回転数以上又は前記モータの電圧振幅が所定振幅以上の場合に、磁石磁束の算出を行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両の車両用駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から伝達効率の高い手動変速機の変速動作を自動化した変速装置(以下、AMT)をベースとして変速時のトルク中断によるショックを防止するため、2つの入力軸は歯車群を有し夫々クラッチを介してエンジンに接続可能とし、一方の入力軸をモータで駆動可能としたツインクラッチ式変速機を備えたハイブリッド車両の駆動装置(AMT−HEV)が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
このハイブリッド車両の駆動装置に組み込まれるモータとしては、ロータに永久磁石を配置し、コイルをインバータで駆動する永久磁石モータ(以下、IPMモータという。)が使用されている。このIPMモータのモータトルクTは、以下の(1)式で与えられる。
【0004】
【数1】

【0005】
ここで、Φは磁石磁束(鎖交磁束数)、Pは極対数、Lはd軸インダクタンス、Lはq軸インダクタンス、Iはd軸電流、Iはq軸電流である。
【0006】
また、図9に示すように、永久磁石の磁石磁束と磁石温度には、磁石温度が上昇するにつれて磁石磁束が減少する性質がある。
従ってこのIPMモータを備えたハイブリッド車両では、ロータの回転により磁束が変化し、永久磁石に渦電流が発生する。そして、永久磁石の磁石温度が上昇することにより、磁石磁束が減少し、想定したモータトルクTが得られないという問題があった。IPMモータの指示トルクと実トルクに誤差が生じると、クラッチ締結時にクラッチトルクとモータトルクに差異が生じてしまい、車両に押し出し推力又は引き込み推力が作用し、ドライバビリティーが悪化するという問題があった。
【0007】
これに対し、特許文献2では、モータの回転速度、フィードバックコイル電流、d・q軸のモータ印加電圧指令値から磁石温度によって変化する磁石磁束を算出する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−147312号公報
【特許文献2】特開2005−218215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献2に記載の磁石磁束の算出方法では、モータの回転により発生する誘起電圧成分が小さいために、所望の精度が確保できない場合があった。また、磁石磁束を算出するタイミングについて開示しておらず、常に磁石磁束を算出すると処理量の大きな計算装置が必要となり、装置が大型化してしまうという問題があった。
【0010】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたもので、その目的は、小型化が可能であって精度よく磁石温度によって変化する磁石磁束を算出できる車両用駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、
エンジン(例えば、後述の実施形態のエンジン6)と、永久磁石(例えば、後述の実施形態の永久磁石72a)を内蔵したモータ(例えば、後述の実施形態のモータ7)と、第1断接手段(例えば、後述の実施形態の第1クラッチ41)を介して前記エンジンに連結されるとともに前記モータに連結され第1同期装置(例えば、後述の実施形態の第1変速用シフター51)により複数のギヤ(例えば、後述の実施形態の第3速用駆動ギヤ23a、第5速用駆動ギヤ25a)を選択可能な第1変速部(例えば、後述の実施形態の第1主軸11)と、第2断接手段(例えば、後述の実施形態の第2クラッチ42)を介して前記エンジンに連結され第2同期装置(例えば、後述の実施形態の第2変速用シフター52)により複数のギヤ(例えば、後述の実施形態の第2速用駆動ギヤ22a、第4速用駆動ギヤ24a)を選択可能な第2変速部(例えば、後述の実施形態の第2中間軸16)と、を備え、前記第1変速部には前記エンジンと前記モータの少なくとも一方の動力が入力され、前記第2変速部には前記エンジンの動力が入力され、前記第1及び第2変速部を介して被駆動部(例えば、後述の実施形態の駆動軸9,9)に動力を出力する車両用駆動装置(例えば、後述の実施形態の車両用駆動装置1)であって、
前記モータの電圧、電流、インダクタンス、回転数から前記永久磁石の磁石磁束を算出して、トルク指示値を補正する制御部(例えば、後述の実施形態のECU5)を備え、
前記制御部は、前記磁石磁束の算出が所定時間以上行なわれていない場合であって、且つ、前記モータの回転数が所定回転数以上又は前記モータの電圧振幅が所定振幅以上の場合に、前記磁石磁束の算出を行なうことを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明の構成に加えて、
前記制御部は、前記モータの回転数が前記所定回転数より低いか又は前記モータの前記電圧振幅が所定振幅より低い場合には、磁石磁束算出待機状態として、前記車両用駆動装置の状態に応じて、前記モータの回転数又は電圧振幅を制御して前記磁石磁束の算出を行なうか、又は、前記磁石磁束を算出せずに前回値を保持することを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明の構成に加えて、
前記制御部は、前記磁石磁束算出待機状態において、前記第1及び第2断接手段が切断され且つ前記モータが回生しているとき、前記モータの回転数が前記所定回転数以上又は前記モータの電圧振幅が前記所定振幅以上となるようにシフトダウンして、前記磁石磁束の算出を行うことを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明の構成に加えて、
前記制御部は、前記磁石磁束算出待機状態において、前記第1及び第2断接手段が切断され且つ前記モータが回生しているとき以外であって、前記モータを前記被駆動部から分離可能な場合、前記第1同期装置により前記第1変速部のいずれのギヤも選択していない状態で前記モータの回転数が前記所定回転数以上又は前記モータの電圧振幅が前記所定振幅以上となるように制御して、前記磁石磁束の算出を行うことを特徴とする。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項3に記載の発明の構成に加えて、
前記制御部は、前記磁石磁束算出待機状態において、前記第1及び第2断接手段が切断され且つ前記モータが回生しているとき以外であって、前記モータを前記被駆動部から分離不可能な場合、前記磁石磁束を算出せずに前回値を保持することを特徴とする。
【0016】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の発明の構成に加えて、
カーナビゲーションシステムと連動して、前記第1断接手段の断接が想定される場合に前記磁石磁束を算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の車両用駆動装置によれば、磁石磁束の算出が所定時間以上行なわれていない場合に磁石磁束の算出がなされるので、常に磁石磁束を算出する場合に比べて処理量が小さくなり、装置を小型化することができる。また、モータの回転数が所定回転数以上又はモータの電圧振幅が所定振幅以上の場合に磁石磁束を算出するので、精度よく磁石磁束を算出することができる。これにより、算出した磁石磁束に応じてトルク指示値を補正することで、磁石温度に起因するクラッチ締結時のショックを回避して、ドライバビリティーを向上させることができる。
【0018】
請求項2の車両用駆動装置によれば、車両用駆動装置の状態に応じて適切な処理がなされる。
【0019】
請求項3の車両用駆動装置によれば、磁石磁束算出待機状態において、第1及び第2断接手段が切断され且つモータが回生しているとき、モータの回転数が所定回転数以上又はモータの電圧振幅が所定振幅以上となるようにシフトダウンして、磁石磁束の算出を行うことにより、回生状態を維持しながら精度よく磁石磁束を算出することができる。
【0020】
請求項4の車両用駆動装置によれば、磁石磁束算出待機状態において、第1及び第2断接手段が切断され且つモータが回生しているとき以外であって、モータを被駆動部から分離可能な場合、第1同期装置により第1変速部のいずれのギヤも選択していない状態でモータの回転数が所定回転数以上又はモータの電圧振幅が所定振幅以上となるように制御して、磁石磁束の算出を行うことにより、走行状態を維持しながら精度よく磁石磁束を算出することができる。
【0021】
請求項5の車両用駆動装置によれば、磁石磁束算出待機状態において、第1及び第2断接手段が切断され且つモータが回生しているとき以外であって、モータを被駆動部から分離不可能な場合、磁石磁束を算出せずに前回値を保持することにより、精度の低い状態で磁石磁束を算出することを回避することができる。
【0022】
請求項6の車両用駆動装置によれば、第1断接手段による押し出し推力又は引き込み推力が作用することが想定される場合に磁石磁束を算出することで、より処理量を低減し制御装置の負荷を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態の車両用駆動装置を示す概略図である。
【図2】磁石磁束の算出フローを示すフロー図である。
【図3】第2速走行時における車両用駆動装置のトルクの伝達状況を示す図である。
【図4】(a)は第5速EV走行時の回生中における速度線図であり、(b)は第5速EV走行時の回生中における車両用駆動装置のトルクの伝達状況を示す図である。
【図5】(a)は第3速EV走行時の回生中における速度線図であり、(b)は第3速EV走行時の回生中における車両用駆動装置のトルクの伝達状況を示す図である。
【図6】第1速走行時における車両用駆動装置のトルクの伝達状況を示す図である。
【図7】(a)は第2速走行アシスト時における速度線図であり、(b)は第2速走行アシスト時における車両用駆動装置のトルクの伝達状況を示す図である。
【図8】(a)は第3速EV走行時における速度線図であり、(b)は第3速EV走行時における車両用駆動装置のトルクの伝達状況を示す図である。
【図9】磁石温度と磁石磁束の関係を表わすグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る車両用駆動装置の一実施形態ついて図面を参照しながら説明する。
車両用駆動装置1は、図1に示すように、車両(図示せず)の駆動軸9,9(被駆動部)を介して駆動輪DW,DWを駆動するためのものであり、駆動源であるエンジン6と、モータ7と、動力を駆動輪DW,DWに伝達するための変速機20と、変速機20の一部を構成する差動式減速機としての遊星歯車機構30と、を備えている。
【0025】
エンジン6は、例えばガソリンエンジンであり、このエンジン6のクランク軸6aには、変速機20の第1クラッチ41(第1断接手段)と第2クラッチ(第2断接手段)が設けられている。
【0026】
モータ7は、3相ブラシレスDCモータ(以下、IPMモータと呼ぶことがある。)であり3n個の電機子71aで構成されたステータ71と、このステータ71に対向するように配置されたロータ72とを有している。各電機子71aは、鉄芯71bと、この鉄芯71bに巻き回されたコイル71cで構成されており、不図示のケーシングに固定され、回転軸を中心に周方向にほぼ等間隔で並んでいる。3n個のコイル71cは、n組のU相、V相,W相の3相コイルを構成している。
【0027】
ロータ72は、回転軸を中心にほぼ等間隔で並んだn個の永久磁石72aを有しており、隣り合う各2つの永久磁石72aの極性は、互いに異なっている。各永久磁石72aを固定する固定部72bは、軟磁性体(例えば鉄)で構成された中空円筒状を有し、後述する遊星歯車機構30のリングギヤ35の外周側に配置され、遊星歯車機構30のサンギヤ32に連結されている。これにより、ロータ72は、遊星歯車機構30のサンギヤ32と一体に回転するように構成されている。なお、ロータ72には不図示のレゾルバにより回転数が検出される。
【0028】
遊星歯車機構30は、サンギヤ32と、このサンギヤ32と同軸上に配置され、かつ、このサンギヤ32の周囲を取り囲むように配置されたリングギヤ35と、サンギヤ32とリングギヤ35に噛合されたプラネタリギヤ34と、このプラネタリギヤ34を自転可能、かつ、公転可能に支持するキャリア36とを有している。このようにして、サンギヤ32とリングギヤ35とキャリア36が、相互に差動回転自在に構成されている。
【0029】
リングギヤ35には、同期機構を有しリングギヤ35の回転を停止(ロック)可能に構成されたシンクロロック機構61が設けられている。
【0030】
変速機20は、前述した第1クラッチ41と第2クラッチ42と、遊星歯車機構30と、後述する複数の変速ギヤ群を備えた、いわゆるツインクラッチ式変速機である。
【0031】
より具体的に、変速機20は、エンジン6のクランク軸6aと同軸(回転軸線A1)上に配置された第1主軸11(第1変速部)と、第2主軸12と、連結軸13と、回転軸線A1と平行に配置された回転軸線B1を中心として回転自在なカウンタ軸14と、回転軸線A1と平行に配置された回転軸線C1を中心として回転自在な第1中間軸15と、回転軸線A1と平行に配置された回転軸線D1を中心として回転自在な第2中間軸16(第2変速部)と、回転軸線A1と平行に配置された回転軸線E1を中心として回転自在なリバース軸17を備えている。
【0032】
第1主軸11には、エンジン6側に第1クラッチ41が設けられ、エンジン6側とは反対側に遊星歯車機構30のサンギヤ32とモータ7のロータ72が取り付けられている。従って、第1主軸11は、第1クラッチ41によって選択的にエンジン6のクランク軸6aと連結されるとともにモータ7と直結され、エンジン6及び/又はモータ7の動力がサンギヤ32に伝達されるように構成されている。
【0033】
第2主軸12は、第1主軸11より短く中空に構成されており、第1主軸11のエンジン6側の周囲を覆うように相対回転自在に配置されている。また、第2主軸12には、エンジン6側に第2クラッチ42が設けられ、エンジン6側とは反対側にアイドル駆動ギヤ27aが一体に取り付けられている。従って、第2主軸12は、第2クラッチ42によって選択的にエンジン6のクランク軸6aと連結され、エンジン6の動力がアイドル駆動ギヤ27aへ伝達されるように構成されている。
【0034】
連結軸13は、第1主軸11より短く中空に構成されており、第1主軸11のエンジン6側とは反対側の周囲を覆うように相対回転自在に配置されている。また、連結軸13には、エンジン6側に第3速用駆動ギヤ23aが一体に取り付けられ、エンジン6側とは反対側に遊星歯車機構30のキャリア36が一体に取り付けられている。従って、プラネタリギヤ34の公転により連結軸13に取り付けられたキャリア36と第3速用駆動ギヤ23aが一体に回転するように構成されている。
【0035】
さらに、第1主軸11には、連結軸13に取り付けられた第3速用駆動ギヤ23aと第2主軸12に取り付けられたアイドル駆動ギヤ27aとの間に、第1主軸11と相対回転自在に第5速用駆動ギヤ25aが設けられるとともに第1主軸11と一体に回転するリバース従動ギヤ28bが取り付けられている。さらに第3速用駆動ギヤ23aと第5速用駆動ギヤ25aとの間には、第1主軸11と第3速用駆動ギヤ23a又は第5速用駆動ギヤ25aとを連結又は開放する第1変速用シフター51(第1同期装置)が設けられている。そして、第1変速用シフター51が第3速用接続位置でインギヤするときには、第1主軸11と第3速用駆動ギヤ23aが連結して一体に回転し、第5速用接続位置でインギヤするときには、第1主軸11と第5速用駆動ギヤ25aが一体に回転し、第1変速用シフター51がニュートラル位置にあるときには、第1主軸11は第3速用駆動ギヤ23aと第5速用駆動ギヤ25aに対し相対回転する。なお、第1主軸11と第3速用駆動ギヤ23aが一体に回転するとき、第1主軸11に取り付けられたサンギヤ32と第3速用駆動ギヤ23aに連結軸13で連結されたキャリア36が一体に回転するとともに、リングギヤ35も一体に回転し、遊星歯車機構30が一体となる。
【0036】
第1中間軸15には、第2主軸12に取り付けられたアイドル駆動ギヤ27aと噛合する第1アイドル従動ギヤ27bが一体に取り付けられている。
【0037】
第2中間軸16には、第1中間軸15に取り付けられた第1アイドル従動ギヤ27bと噛合する第2アイドル従動ギヤ27cが一体に取り付けられている。第2アイドル従動ギヤ27cは、前述したアイドル駆動ギヤ27aと第1アイドル従動ギヤ27bとともに第1アイドルギヤ列27Aを構成している。また、第2中間軸16には、第1主軸11周りに設けられた第3速用駆動ギヤ23aと第5速用駆動ギヤ25aと対応する位置にそれぞれ第2中間軸16と相対回転可能な第2速用駆動ギヤ22aと第4速用駆動ギヤ24aとが設けられている。さらに第2中間軸16には、第2速用駆動ギヤ22aと第4速用駆動ギヤ24aとの間に、第2中間軸16と第2速用駆動ギヤ22a又は第4速用駆動ギヤ24aとを連結又は開放する第2変速用シフター52(第2同期装置)が設けられている。そして、第2変速用シフター52が第2速用接続位置でインギヤするときには、第2中間軸16と第2速用駆動ギヤ22aとが一体に回転し、第2変速用シフター52が第4速用接続位置でインギヤするときには、第2中間軸16と第4速用駆動ギヤ24aとが一体に回転し、第2変速用シフター52がニュートラル位置にあるときには、第2中間軸16は第2速用駆動ギヤ22aと第4速用駆動ギヤ24aに対し相対回転する。
【0038】
カウンタ軸14には、エンジン6側とは反対側から順に第1共用従動ギヤ23bと、第2共用従動ギヤ24bと、パーキングギヤ21と、ファイナルギヤ26aとが一体に取り付けられている。
ここで、第1共用従動ギヤ23bは、連結軸13に取り付けられた第3速用駆動ギヤ23aと噛合して第3速用駆動ギヤ23aと共に第3速用ギヤ対23を構成し、第2中間軸16に設けられた第2速用駆動ギヤ22aと噛合して第2速用駆動ギヤ22aと共に第2速用ギヤ対22を構成する。
第2共用従動ギヤ24bは、第1主軸11に設けられた第5速用駆動ギヤ25aと噛合して第5速用駆動ギヤ25aと共に第5速用ギヤ対25を構成し、第2中間軸16に設けられた第4速用駆動ギヤ24aと噛合して第4速用駆動ギヤ24aと共に第4速用ギヤ対24を構成する。
ファイナルギヤ26aは差動ギヤ機構8と噛合して、差動ギヤ機構8は、駆動軸9,9を介して駆動輪DW,DWに連結されている。従って、カウンタ軸14に伝達された動力はファイナルギヤ26aから差動ギヤ機構8、駆動軸9,9、駆動輪DW,DWへと出力される。
【0039】
リバース軸17には、第1中間軸15に取り付けられた第1アイドル従動ギヤ27bと噛合する第3アイドル従動ギヤ27dが一体に取り付けられている。第3アイドル従動ギヤ27dは、前述したアイドル駆動ギヤ27aと第1アイドル従動ギヤ27bとともに第2アイドルギヤ列27Bを構成している。また、リバース軸17には、第1主軸11に取り付けられた後進用従動ギヤ28bと噛合する後進用駆動ギヤ28aがリバース軸17と相対回転自在に設けられている。後進用駆動ギヤ28aは、後進用従動ギヤ28bとともに後進用ギヤ列28を構成している。さらに後進用駆動ギヤ28aのエンジン6側とは反対側にリバース軸17と後進用駆動ギヤ28aとを連結又は開放する後進用シフター53が設けられている。そして、後進用シフター53が後進用接続位置でインギヤするときには、リバース軸17と後進用駆動ギヤ28aとが一体に回転し、後進用シフター53がニュートラル位置にあるときには、リバース軸17と後進用駆動ギヤ28aとが相対回転する。
【0040】
なお、第1変速用シフター51、第2変速用シフター52、後進用シフター53は、接続する軸とギヤの回転数を一致させる同期機構(シンクロナイザー機構)を有するクラッチ機構を用いている。
【0041】
このように構成された変速機20は、2つの変速軸の一方の変速軸である第1主軸11上に第3速用駆動ギヤ23aと第5速用駆動ギヤ25aからなる奇数段ギヤ群が設けられ、2つの変速軸の他方の変速軸である第2中間軸16上に第2速用駆動ギヤ22aと第4速用駆動ギヤ24aからなる偶数段ギヤ群が設けられる。
【0042】
以上の構成により、本実施形態の車両用駆動装置1は、以下の第1〜第5の伝達経路を有している。
(1)第1伝達経路は、エンジン6のクランク軸6aが、第1主軸11、遊星歯車機構30、連結軸13、第3速用ギヤ対23(第3速用駆動ギヤ23a、第1共用従動ギヤ23b)、カウンタ軸14、ファイナルギヤ26a、差動ギヤ機構8、駆動軸9,9を介して、駆動輪DW,DWに連結される伝達経路である。ここで、遊星歯車機構30の減速比は、第1伝達経路を介して駆動輪DW,DWに伝達されるエンジントルクが第1速相当となるように設定されている。即ち、遊星歯車機構30の減速比と第3速用ギヤ対23の減速比をかけ合わせた減速比が第1速相当となるように設定されている。この第1伝達経路を介して、第1クラッチ41を締結し、シンクロロック機構61をロックするとともに第1変速用シフター51をニュートラルにすることで、第1速走行がなされる。
(2)第2伝達経路は、エンジン6のクランク軸6aが、第2主軸12、第1アイドルギヤ列27A(アイドル駆動ギヤ27a、第1アイドル従動ギヤ27b、第2アイドル従動ギヤ27c)、第2中間軸16、第2速用ギヤ対22(第2速用駆動ギヤ22a、第1共用従動ギヤ23b)又は第4速用ギヤ対24(第4速用駆動ギヤ24a、第2共用従動ギヤ24b)、カウンタ軸14、ファイナルギヤ26a、差動ギヤ機構8、駆動軸9,9を介して、駆動輪DW,DWに連結される伝達経路である。この第2伝達経路を介して、第2クラッチ42を締結し、第2変速用シフター52を第2速用接続位置でインギヤすることで第2速走行がなされ、第2変速用シフター52を第4速用接続位置でインギヤすることで第4速走行がなされる。
(3)第3伝達経路は、エンジン6のクランク軸6aが、第1主軸11、第3速用ギヤ対23(第3速用駆動ギヤ23a、第1共用従動ギヤ23b)又は第5速用ギヤ対25(第5速用駆動ギヤ25a、第2共用従動ギヤ24b)、カウンタ軸14、ファイナルギヤ26a、差動ギヤ機構8、駆動軸9,9を介して、遊星歯車機構30を介さずに、駆動輪DW,DWに連結される伝達経路である。この第3伝達経路を介して、第1クラッチ41を締結し、第1変速用シフター51を第3速用接続位置でインギヤすることで第3速走行がなされ、第1変速用シフター51を第5速用接続位置でインギヤすることで第5速走行がなされる。
(4)第4伝達経路は、モータ7が、遊星歯車機構30又は第3速用ギヤ対23(第3速用駆動ギヤ23a、第1共用従動ギヤ23b)又は第5速用ギヤ対25(第5速用駆動ギヤ25a、第2共用従動ギヤ24b)、カウンタ軸14、ファイナルギヤ26a、差動ギヤ機構8、駆動軸9,9を介して、駆動輪DW,DWに連結される伝達経路である。この第4伝達経路を介して、第1及び第2クラッチ41、42を切断した状態で、シンクロロック機構61をロックするとともに第1変速用シフター51をニュートラルにすることで第1速EV走行がなされ、シンクロロック機構61のロックを解除し第1変速用シフター51を第3接続位置でインギヤすることで第3速EV走行がなされ、シンクロロック機構61のロックを解除し第1変速用シフター51を第5接続位置でインギヤすることで第5速EV走行がなさる。
(5)第5伝達経路は、エンジン6のクランク軸6aが、第2主軸12、第2アイドルギヤ列27B(アイドル駆動ギヤ27a、第1アイドル従動ギヤ27b、第3アイドル従動ギヤ27d)、リバース軸17、後進用ギヤ列28(後進用駆動ギヤ28a、後進用従動ギヤ28b)、遊星歯車機構30、連結軸13、第3速用ギヤ対23(第3速用駆動ギヤ23a、第1共用従動ギヤ23b)、カウンタ軸14、ファイナルギヤ26a、差動ギヤ機構8、駆動軸9,9を介して、駆動輪DW,DWに連結される伝達経路である。この第5伝達経路を介して、第2クラッチ42を締結し後進用シフター53を後進用接続位置でインギヤすることで後進走行がなされる。
【0043】
また、本実施形態の車両用駆動装置1において、モータ7は、その動作を制御するパワーコントロールユニット(以下、PDUという。)2を介してバッテリ3に接続され、バッテリ3からの電力供給と、バッテリ3へのエネルギー回生がPDU2を介して行われるようになっている。即ち、モータ7は、バッテリ3からPDU2を介して供給された電力によって駆動され、また、減速走行時における駆動輪DW,DWの回転やエンジン6の動力により回生発電を行って、バッテリ3の充電(エネルギー回収)を行うことが可能である。さらに、PDU2は、電気制御ユニット(以下、ECUという。)5に接続されている。ECU5は、車両全体の各種制御をするための制御装置であり、ECU5には加速要求、制動要求、エンジン回転数、モータ回転数、第1,第2主軸11、12の回転数、カウンタ軸14等の回転数、車速、シフトポジション、SOCなどが入力される一方、ECU5からは、エンジン6を制御する信号、モータ7を制御する信号、バッテリ3における発電状態・充電状態・放電状態などを示す信号、第1,第2変速シフター51、52、後進用シフター53を制御する信号、シンクロロック機構61のロックを制御する信号などが出力される。
【0044】
このように構成された車両用駆動装置1は、第1及び第2クラッチ41、42の断接を制御するとともに第1変速用シフター51、第2変速用シフター52および後進用シフター53の接続位置を制御することにより、エンジン6で第1〜第5速走行および後進走行を行うことができる。また、エンジン6で走行中に第1及び第2変速用シフター51、52の接続位置を制御することにより、モータ7でアシストしたり回生したり、さらにアイドリング中にエンジン6をモータ7で始動したりバッテリ3を充電することもできる。また、車両用駆動装置1はモータ7を利用してEV走行を行なうこともできる。
【0045】
ここで、本実施形態のECU5は、ロータ72に内蔵された永久磁石72aの磁石磁束を以下の方法で算出し、温度変化による磁石磁束の変化に基づいて補正後のトルク指示値Trq_tarを与える。
IPMモータの電圧方程式は、以下の(2)〜(4)式で表わされる。
【0046】
【数2】

【0047】
【数3】

【0048】
【数4】

但し、rはコイル抵抗値、Lはd軸インダクタンス、Lqはq軸インダクタンス、ωは角周波数、Φは磁石磁束、Vはモータ電圧、Vはd軸印加電圧、Vqはq軸印加電圧、Iはd軸コイル電流、Iqはq軸コイル電流である。なお、d軸インダクタンス、q軸インダクタンスは、予め電流進角と相電流振幅の関係から作成されたインダクタンスマップに基づいて求められる。
【0049】
この(2)〜(4)式から磁石磁束Φは以下の(5)式で表わされる。
【0050】
【数5】

また、基準温度での磁石磁束Φbase、基準温度でのモータトルクTrqbase、温度変化によるトルク変化量をΔTrqとすると、補正後のトルク指示値Trq_tarは以下の(6)式で表わされる。
【0051】
【数6】

【0052】
ここで、ΔTrq=P・I(Φbase−Φ)であって、(1)式より、Trqbase=P・I(Φbase+(L−L)・I)である。なお、基準の磁石磁束Φbaseは、ロータ72が交換されることを想定して、レゾルバの0点学習時に設定することが好ましく、コイル温度センサ値と連携させてもよい。
【0053】
ただし、磁石磁束Φはモータ7が所定回転数以下であると、モータ7の回転により発生する誘起電圧成分(V)が小さく、所望の精度が確保できないため、図2に示すフローチャートに従って、磁石磁束Φが算出される。
【0054】
先ず、前回の磁石磁束Φの算出時からの所定時間が経過していないかどうかが判別される(S1)。そして、所定時間経過していなければ、前回の磁石磁束Φの算出値(以下、前回値と呼ぶ。)を保持する(S2)。これにより、処理量が軽減され装置の大型化を抑制することができる。
【0055】
前回の磁石磁束Φの算出時から所定時間が経過している場合、続いて、モータ7の回転数を検出して、所定の回転数以上であるか否かが判別される(S3)。その結果、所定の回転数以上であれば、そのまま磁石磁束Φが算出される(S4)。一方、モータ7の回転数が所定の回転数より低ければ、ECU5は磁石磁束算出待機状態として、モータ7が駆動中であるか回生中であるか、第1変速用シフター51、第2変速用シフター52及び後進用シフター53のシフト位置などの車両用駆動装置1の状態に応じてモータ7の回転数を制御して永久磁石72 aの磁石磁束Φを算出するか、又は、磁石磁束Φを算出せずに前回値を保持する。
【0056】
より具体的に説明すると、磁石磁束算出待機状態では、先ず、エンジン6が切り離されてモータ7が駆動軸9,9に連結されて回生中であるかどうかが判別される(S5)。エンジン6が切り離されてモータ7が回生中である場合には、シフトダウンのタイミングを早めてモータ7の回転数を所定回転数以上にして磁石磁束Φが算出される(S6)。第1及び第2クラッチ41、42が切断されてモータ走行中にモータ7で回生している場合、例えば、図4に示す、第1及び第2クラッチ41、42が切断されて第1変速用シフター51が第5速接続位置でインギヤして回生している第5速EV走行中に、第1変速用シフター51を第5速用接続位置から第3速用接続位置にシフトダウンして図5に示す第3速EV走行にすることで、モータ7の回転数を所定の回転数まで上昇させることができる。これにより、モータ7の回転数を所定回転数まで上昇させて精度よく磁石磁束Φを算出することができる。
【0057】
エンジン6が切り離されてモータ7が回生中でない場合には、続いてモータ7が駆動軸9,9から分離可能であるか否かが判別される(S7)。なお、モータ7が駆動軸9,9から分離可能とは、モータ7を駆動軸9,9から分離しても走行に影響を与えずにこれまでの走行を維持できる状態を意味する。その結果、モータ7が駆動軸9,9から分離可能である場合、奇数段シフトをニュートラルとし、モータ7の回転数を所定回転数以上に引き上げ磁石磁束を算出する(S8)。奇数段シフトをニュートラル8とするとは、シンクロロック機構61のロックを解除するとともに、第1変速用シフター51をニュートラル位置にすることを意味する。例えば、図3に示す第2速走行では、シンクロロック機構61のロックがなされていない場合であって且つ第1変速用シフター51がニュートラル位置にあり、モータ7の動力が駆動輪DW,DWに伝達されないため、モータ7の回転数が車両の駆動に影響することがなく、モータ7の回転数を所定回転数まで上げて磁石磁束Φを算出することができる。
【0058】
また、モータ7が駆動軸9,9から分離可能ではない場合、即ち、モータ7が駆動軸9,9に連結されてモータ7の回転数が走行に影響を与えうる状態を意味する。このとき、磁石磁束Φを算出せずに前回値が保持される(S9)。例えば、図6に示す第1速走行では、シンクロロック機構61のロックがなされモータ7の回転数を上げると駆動軸9,9を介して駆動輪DW,DWにモータトルクが出力されてしまう。また、例えば、前述した図3に示す第2速走行から図7に示す、第1変速用シフター51が第3速用接続位置でインギヤして、モータ7でアシスト走行をしている場合、及び、図8に示す第3速EV走行中などの場合にモータ7の回転数を上げると駆動軸9,9を介して駆動輪DW,DWにモータトルクが出力されてしまう。従って、このようにモータ7が駆動軸9,9に連結されてモータ7の回転数が駆動輪DW,DWに影響を与えうる状態であれば、磁石磁束Φを算出せずに前回値が保持され、精度の低い状態で磁石磁束Φを算出することを回避することができる。
【0059】
以上説明したように、本実施形態によれば、精度よく磁石磁束Φを算出することで、第1及び第2クラッチ41、42の断接時においてドライバビリティーが悪化するのを回避することができる。例えば、図7に示す第2速アシスト走行から、第1及び第2クラッチ41、42をつなぎかえて第2変速用シフター52を第2速用接続位置からニュートラル位置に戻すことで図8に示す第3速EV走行に移行することができるが、適切に磁石磁束Φを算出して算出した磁石磁束Φに基づいてトルク指示値を補正することで、第1及び第2クラッチ41、42の締結時に車両に押し出し推力又は引き込み推力が作用するのを回避することができる。また、図8に示す第3速EV走行中にエンジン6を始動する際には、第1クラッチ41を締結するが、このときも同様に、適切に磁石磁束Φを算出して算出した磁石磁束Φに基づいてトルク指示値を補正することで、第1クラッチ41の締結時における車両に押し出し推力又は引き込み推力が作用するのを回避することができる。
【0060】
また、本実施形態によれば、磁石磁束Φの算出が所定時間以上行なわれていない場合に磁石磁束Φの算出がなされるので、常に磁石磁束Φを算出する場合に比べて処理量が小さくなり、装置を小型化することができる。また、モータ7の回転数が所定回転数以上の場合に磁石磁束Φを算出するので、精度よく磁石磁束Φを算出することができる。
【0061】
また、本実施形態によれば、ECU5は、モータ7の回転数が所定回転数より低い場合には、磁石磁束算出待機状態として、車両用駆動装置1の状態に応じて、モータ7の回転数を制御して磁石磁束Φの算出を行なうか、又は、磁石磁束Φを算出せずに前回値を保持するので、車両用駆動装置1の状態に応じて適切な処理がなされる。
【0062】
また、本実施形態によれば、ECU5は、磁石磁束算出待機状態において、第1及び第2クラッチ41、42が切断され且つモータ7が回生しているとき、モータ7の回転数が所定回転数以上となるようにシフトダウンして磁石磁束Φを算出するので、回生状態を維持しながら精度よく磁石磁束を算出することができる。
【0063】
また、本実施形態によれば、ECU5は、磁石磁束算出待機状態において、第1及び第2クラッチ41、42が切断され且つモータ7が回生しているとき以外であって、モータ7を駆動軸9,9から分離可能な場合、第1変速用シフター51により第1主軸11のいずれのギヤも選択していない状態でモータ7の回転数が所定回転数以上となるように制御して、磁石磁束の算出を行うことにより、走行状態を維持しながら精度よく磁石磁束を算出することができる。
【0064】
また、本実施形態によれば、ECU5は、磁石磁束算出待機状態において、第1及び第2クラッチ41、42が切断され且つモータ7が回生しているとき以外であって、モータ7を駆動軸9,9から分離不可能な場合、磁石磁束を算出せずに前回値を保持することにより、精度の低い状態で磁石磁束を算出することを回避することができる。
【0065】
尚、本発明は、前述した各実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。例えば、本実施形態においては、モータ7の回転数が所定回転数以上か否かを判断して磁石磁束Φの算出精度を維持したが、電圧振幅が所定振幅以上か否かを判断してもよい。これによっても算出精度を維持することができる。
【0066】
また、カーナビゲーションシステムと連動して、第1及び第2クラッチ41、42の断接が想定される場合に磁石磁束Φの算出を行なうようにしてもよい。これにより、第1クラッチ41締結時のショックが解消され、ECU5の処理量を低減して負荷を軽減することができる。
【符号の説明】
【0067】
1 車両用駆動装置
5 ECU
6 エンジン
7 モータ
11 第1主軸(第1変速部)
12 第2主軸
13 連結軸
14 カウンタ軸
15 第1中間軸
16 第2中間軸(第2変速部)
20 変速機
22 第2速用ギヤ対
22a 第2速用駆動ギヤ
23 第3速用ギヤ対
23a 第3速用駆動ギヤ
23b 第1共用従動ギヤ
24 第4速用ギヤ対
24a 第4速用駆動ギヤ
24b 第2共用従動ギヤ
25 第5速用ギヤ対
25a 第5速用駆動ギヤ
26a ファイナルギヤ
27A 第1アイドルギヤ列
27B 第2アイドルギヤ列
27a アイドル駆動ギヤ
27b 第1アイドル従動ギヤ
27c 第2アイドル従動ギヤ
27d 第3アイドル従動ギヤ
30 遊星歯車機構
32 サンギヤ
35 リングギヤ
36 キャリア
41 第1クラッチ(第1断接手段)
42 第2クラッチ(第2断接手段)
61 シンクロロック機構
72a 永久磁石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、永久磁石を内蔵したモータと、第1断接手段を介して前記エンジンに連結されるとともに前記モータに連結され第1同期装置により複数のギヤを選択可能な第1変速部と、第2断接手段を介して前記エンジンに連結され第2同期装置により複数のギヤを選択可能な第2変速部と、を備え、前記第1変速部には前記エンジンと前記モータの少なくとも一方の動力が入力され、前記第2変速部には前記エンジンの動力が入力され、前記第1及び第2変速部を介して被駆動部に動力を出力する車両用駆動装置であって、
前記モータの電圧、電流、インダクタンス、回転数から前記永久磁石の磁石磁束を算出して、トルク指示値を補正する制御部を備え、
前記制御部は、前記磁石磁束の算出が所定時間以上行なわれていない場合であって、且つ、前記モータの回転数が所定回転数以上又は前記モータの電圧振幅が所定振幅以上の場合に、前記磁石磁束の算出を行なうことを特徴とする車両用駆動装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記モータの回転数が前記所定回転数より低いか又は前記モータの前記電圧振幅が所定振幅より低い場合には、磁石磁束算出待機状態として、前記車両用駆動装置の状態に応じて、前記モータの回転数又は電圧振幅を制御して前記磁石磁束の算出を行なうか、又は、前記磁石磁束を算出せずに前回値を保持することを特徴とする請求項1に記載の車両用駆動装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記磁石磁束算出待機状態において、前記第1及び第2断接手段が切断され且つ前記モータが回生しているとき、前記モータの回転数が前記所定回転数以上又は前記モータの電圧振幅が前記所定振幅以上となるようにシフトダウンして、前記磁石磁束の算出を行うことを特徴とする請求項2に記載の車両用駆動装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記磁石磁束算出待機状態において、前記第1及び第2断接手段が切断され且つ前記モータが回生しているとき以外であって、前記モータを前記被駆動部から分離可能な場合、前記第1同期装置により前記第1変速部のいずれのギヤも選択していない状態で前記モータの回転数が前記所定回転数以上又は前記モータの電圧振幅が前記所定振幅以上となるように制御して、前記磁石磁束の算出を行うことを特徴とする請求項3に記載の車両用駆動装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記磁石磁束算出待機状態において、前記第1及び第2断接手段が切断され且つ前記モータが回生しているとき以外であって、前記モータを前記被駆動部から分離不可能な場合、前記磁石磁束を算出せずに前回値を保持することを特徴とする請求項3に記載の車両用駆動装置。
【請求項6】
カーナビゲーションシステムと連動して、前記第1断接手段の断接が想定される場合に前記磁石磁束を算出することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の車両用駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−143850(P2011−143850A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−7145(P2010−7145)
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】