説明

車体前部構造

【課題】エンジンに近づけて触媒を配置するという要請と、前面衝突時のクラッシュストロークを確保するという要請とを満足させる。
【解決手段】DPF容器46は横置きエンジン30に連結されたトランスアクスル32の上方域で車体前後方向に延在している。前方排気方式のエンジン30の前面側には遠心型のターボチャージャー44が配設され、インタークーラー58がコンプレッサー56側に配設されている。DPF容器46は排気タービン72と短い第1排気管80によって連結され、DPF容器46の後端には、下方に向けて屈曲した後エンジンルーム3から後方に延びる第2排気管82が接続されている。インタークーラー58と吸気マニホールド60とを連結する第3吸気管66は横置きエンジン30の上端部におけるDPF容器46とは車幅方向反対側の上方域を延在している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車体前部構造に関し、より詳しくはエンジンルームにおける排気系部品の配置に関する。
【背景技術】
【0002】
環境問題から自動車の排気ガスの浄化が重要な技術課題となっているのは周知のとおりであり、排気ガスの浄化は排気系に配設される触媒手段に大きく依存しているのが現状である。このような浄化装置は触媒反応を促進するために熱を必要とすることから、冷間時に早期に浄化機能を発揮させるために、排気系の上流に触媒手段が配設される。
【0003】
特許文献1は、ガソリンエンジンを搭載した車両に関し、エンジンを横置きにすると共にエンジンの後面から排気させる、いわゆる「横置き、後方排気」に関してエンジン始動時の触媒の早期活性を促すために、触媒手段をエンジンの後面に接近させて配置することを開示している。特許文献1は、具体的には、横置きエンジンの後面に沿って触媒手段を配置することを提案している。
【0004】
特許文献2は、ディーゼルエンジンを搭載した車両に関し、DPF(ディーゼル・パティキュレート・フィルタ)はフィルタに堆積した煤を触媒により燃焼させて消失させることでDPFの再生が行われるため、DPFをエンジンに接近して配置させるのが好ましく、このことから特許文献2はDPFを横置きエンジンの後面に沿って配置することを提案している。
【0005】
特許文献3は、ロータリーエンジンを搭載した車両のヨー慣性モーメントを低減して操縦安定性を向上するため、ダッシュパネルと干渉する位置まで後退した位置にエンジンを搭載したときに触媒をエンジンの前方に配置することを提案している。
【0006】
【特許文献1】特開2007−146681号公報
【特許文献2】特開2006−70878号公報
【特許文献3】特開2003−326981号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
排気ガスの浄化基準が年々厳しくなっており、これに対応するための触媒への依存度が高くなっているのが実情であり、このため触媒も大型化する傾向にある。このことから、特許文献1、2のように、横置きエンジンの後面に沿ってDPFなどの触媒手段を配置した場合、この触媒を収容するケースは比較的硬く前面衝突時にエンジンの後退に伴って触媒も後退してしまうため、前面衝突時のクラッシュストロークが事実上小さくなってしまうという問題が残る。
【0008】
他方、横置き且つ後方排気のエンジンにおいて特許文献3のように触媒手段をエンジンの前方に配置したときには、エンジンから触媒までの排気管が長くなってしまうため、エンジン始動時における触媒の早期活性化を促すことができなくなる。
【0009】
本発明の目的は、エンジンに近づけて触媒を配置するという要請と、前面衝突時のクラッシュストロークを確保するという要請とを満足させることのできる車体前部構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の技術的課題は、本発明によれば、
ダッシュパネルによって車室とエンジンルームとが区画され、前記ダッシュパネルから前方に延びる左右のフロントサイドフレーム間に、トランスアクスルが一体に組み付けられたレシプロエンジンがそのクランクシャフトを車幅方向に沿って延びるように横置きに搭載された車体前部構造において、
前記レシプロエンジンの前面側又は後面側に位置する排気口から延びる排気管の一部を構成する触媒容器が、前記トランスアクスルの上方域且つ前記横置きエンジンの側方域に延在し、該触媒容器よりも下流の排気管が下方に屈曲した後に前記エンジンルームから後方に延びており、
前記レシプロエンジンの後面側又は前面側に位置する吸気口に通じる吸気管の一部が前記レシプロエンジンの前記トランスアクスル側とは反対側の側方域を車体前後方向に延びていることを特徴とする車体前部構造を提供することにより達成される。
【0011】
横置きエンジンに隣接して且つその側方つまりトランスアクスルの上方域に触媒容器を配設することで、始動時に触媒を早期に活性化できるだけでなく、触媒容器をエンジンの後方に隣接して配置させたときの問題である前面衝突時のクラッシュストロークの短縮の問題を解消することができる。また、高温になる触媒容器が位置している側とは横置きエンジンを挟んで反対側に吸気管が延びているため、触媒容器の熱による吸気温度の上昇を抑えることができる。
【0012】
本発明の好ましい実施の形態によれば、前記レシプロエンジンの前面側又は後面側に位置する排気口に関連して配設されたターボチャージャーを更に有し、該ターボチャージャーの遠心式の排気タービンとコンプレッサーが前記レシプロエンジンの前面又は後面に沿って車幅方向に並んで配設され、前記排気タービンが前記触媒容器側に配設され、前記コンプレッサーが前記触媒容器の位置する側とは車幅方向反対側に配設されている。このような構成を採用することにより、排気タービンと触媒容器とを比較的短い排気管で連結することができ、始動時における触媒を一層早期に活性化させることができる。
【0013】
また、本発明の好ましい実施の形態によれば、前記エンジンルームの前記触媒容器が配設されている側とは車幅方向反対側にインタークーラーが配設され、前記レシプロエンジンの排気口が前記触媒容器側に片寄せして設けられ、前記レシプロエンジンの吸気口が前記インタークーラー側に片寄せして設けられている。これによれば、触媒容器から遠ざけた部位においてインタークーラーとエンジンの吸気口とを比較的短い吸気管で連結できるため、触媒容器の熱による吸気温度の上昇を防止することができる。
【0014】
また、本発明の好ましい実施の形態によれば、レシプロエンジンの排気口が該エンジンの後面側に配設され、前記コンプレッサーよりも上流側の第1吸気管と、前記コンプレッサーと前記インタークーラーとを連結する第2吸気管とが、前記レシプロエンジンの前記トランスアクスル側とは反対側の側方域を車体前後方向に延びると共に、前記第1吸気管と前記第2吸気管とが上下に並んで配設されている。このように後方排気方式のエンジンにおいて、コンプレッサーに至る第1吸気管と、コンプレッサーから出る第2吸気管とが横置きエンジンを挟んで触媒容器とは反対側に配設されるため、触媒容器からの熱による影響を吸気系のレイアウトによって合理的に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、添付の図面に基づいて本発明の好ましい実施例を説明する。
【0016】
第1実施例(図1〜図6)
この第1実施例は、前方排気、後方吸気の形式のエンジンに関する。先ず、図3、図4を参照して、参照符号1はダッシュパネルを示し、ダッシュパネル1によって車室2とエンジンルーム3とが区画されている。車室2には、インストルメントパネル4、ブレーキペダル5、ステアリングハンドル等が設けられている。参照符号6はフロントウインドウである。
【0017】
エンジンルームを上から見た図1、エンジンルームを下から見た図2から分かるように、エンジンルーム3の下方域には、エンジンルーム3の全域に亘って車体前後方向に延存する左右のフロントサイドフレーム10、10が配設され、そして、エンジンルーム3の後部には、左右のフロントサイドフレーム10、10の後端の間に亘ってダッシュパネル1に沿って延びるダッシュクロスメンバ12が配設されると共に車幅方向に延在するサブフレーム14が配設されており、サブフレーム14に、ステアリングロッドやその駆動ユニットを含むステアリング装置16が搭載されている。なお、フロントサイドフレーム10、10の前端にはクラッシュカンを介してバンパーレインフォースメント18に連結されている。
【0018】
参照符号20は前輪であり、前輪20のサスペンション機構22はコイルスプリングの中にショックアブソーバを配設したストラット式サスペンションが採用されている。このストラット式サスペンションは、既知のように、左右のサスペンションタワー24、24間の距離を大きくなるという利点がある(図6)。
【0019】
エンジン30は、そのクランクシャフトを車幅方向に向けてエンジンルーム3内に搭載されている(図1、図2)。すなわち、エンジン30は横置きのレシプロエンジンであり、エンジン30のクランクシャフトの後端にはトランスアクスル32が車幅方向に並んで連結されている。トランスアクスル32は、エンジン30のクランクシャフトに連結されたトルクコンバーター34に続いて遊星歯車機構を備えた多段の自動変速機36を備え、自動変速機36に連結されたデファレンシャルギア38を介してエンジン出力が左右の前輪20に伝達される。
【0020】
エンジン30は水冷式の4気筒エンジンであり、このエンジン30の冷却水は、フロントサイドフレーム10の前端部の間のシュラウドパネルに固設されたラジエータ40によって冷却される。
【0021】
横置きのエンジン30は、その後面30aから吸気され、前面30bから排気される。すなわち、エンジン30は、前述したように前方排気、後方吸気の形式が採用されている(図1)。また、このエンジン30はディーゼルエンジンであり、ディーゼルエンジン30は、インタークーラー付きのターボチャージャー44によって過給され、また、排気系にはDPF容器46が介装されている(図1)。
【0022】
エンジン30の吸気系について説明すると、吸気系は、その上流側から順に配設された、エアクリーナボックス52、ターボチャージャー44のコンプレッサー56、インタークーラー58、吸気マニホールド60で構成されている(図1)。エアクリーナボックス52にはエア導入パイプ54を通じて外気が供給され、エアクリーナボックス52に導入された外気はフィルター(図示せず)で浄化される。
【0023】
エアクリーナボックス52内で浄化した外気は、エアクリーナボックス52とコンプレッサー56とを連結する第1吸気管62によってコンプレッサー56に供給され、コンプレッサー56で圧縮される。コンプレッサー56で圧縮された外気は、コンプレッサー56とインタークーラー58とを連結する第2吸気管64によってインタークーラー58に供給され、インタークーラー58で空冷される。インタークーラー58で空冷された外気は、インタークーラー58と吸気マニホールド60とを連結する第3吸気管66によって吸気マニホールド60に供給され、そしてエンジン30の各気筒の吸気行程で各気筒に充填される。
【0024】
次に、エンジン30の排気系について説明すると、エンジン30側から順に遠心型のターボチャージャー44の排気タービン72、DPF(ディーゼル・パティキュレート・フィルタ)を収容した容器46の他に、周知のように、第2触媒、サイレンサーで構成されている。ターボチャージャー44は、エンジン30の前面30bにおいて長手方向に沿って排気タービン72とコンプレッサー56が配列されており、排気タービン72はDPF容器46側に位置し、コンプレッサー56がインタークーラー58側に位置している(図1)。
【0025】
吸気系のレイアウトを説明すると、直方体形状のエアクリーナボックス52は、エンジンルーム3の前端部の一側端部における上端部に配設されている(図1)。エア導入パイプ54は、その上流端開口54aが縦方向に扁平な横方向に細長い形状を有し、そして、このエア導入パイプ54の上流端開口54aが車幅方向中央部においてシュラウドパネルとボンネットフード74との間に配設され、そして前方に向けて開放されている。エア導入パイプ54は、その上流端開口54aから車幅方向に延びてエアクリーナボックス52の側面に連結されている。
【0026】
次にエアクリーナボックス52とコンプレッサー56とを連結する第1吸気管62について説明すると、先ず、コンプレッサー56は、エンジン30の前面30bに隣接して配設されている(図1)。第1吸気管62は、その上流端がエアクリーナボックス52の上面に連結されている。そして、第1吸気管62は、エアクリーナボックス52から車幅方向にエンジンルーム3の中央部分まで延び、そしてターボチャージャー44を越えた後に後方に向けて屈曲し、そして略180度反転してコンプレッサー56に連結されている。すなわち、エンジンルーム3を平面視して第1吸気管62の形状を説明すると、第1吸気管62は、エンジンルーム3の前端部の一側の高所に位置するエアクリーナボックス52から車幅方向中央部分まで車幅方向に沿って延びた後に後方に屈曲し、そして略180度反転する形状を有している。また、第1吸気管62を側面視したときに、エンジンルーム3の上端域つまりボンネットフード74の下面に隣接した略同一の平面内に配設されている(図5、図6)。
【0027】
次に、コンプレッサー56とインタークーラー58とを連結する第2吸気管64について説明すると、先ず、インタークーラー58は、エンジンルーム3の前端部においてエアクリーナボックス52とは車幅方向反対側の他側の前端角隅部に配設され(図1、図2、図5)、そして、エンジンルーム3の前端角隅部における下端部に配設されている(図4)。より詳しくは、インタークーラー58は、フロントサイドフレーム10の前端部よりも車幅方向外方の下方域に配設されている(図2)。
【0028】
第2吸気管64は、コンプレッサー56から一旦前方に延びた後にエンジン30の前面30bに沿って車幅方向に且つ斜め下方に延びてインタークーラー58の上端部に連結されている(図1)。
【0029】
次に、インタークーラー58と吸気マニホールド60とを連結する第3吸気管66について説明すると、先ず吸気マニホールド60は、エンジン30が後方吸気方式を採用していることから、エンジン30の後面30aに取り付けられている(図1)。第3吸気管66は、インタークーラー58の下端部から車幅方向内方に延びた後に後方に向けて且つ上方に向けて斜め上方に延び(図4)、そしてエンジン30の上端部の側方域、つまりDPF容器46とは、横置きエンジン30を挟んで車幅方向反対側の上方域に配置してあるため、インタークーラー58で冷やされたエアをDPF容器46の熱から合理的に隔離した状態で吸気マニホールド60まで移動させることができる。
【0030】
第3吸気管66は、横置きエンジン30のDPF容器46が位置する側とは反対側の上方域を水平方向後方に延びた後に車幅方向中央に向けて略90度屈曲する形状を有している(図1)。この第3吸気管66は、エンジン30の後面30aの上端に沿って延びる吸気マニホールド60の端つまりインタークーラー58側の端に連結されている。
【0031】
排気系のレイアウトを説明すると、DPF容器46は、トランスアクスル32の上方域且つこれに隣接して配設され、また、エンジン30の側方域に隣接して配設され(図5)、そしてDPF容器46は車体前後方向に延在している(図1)。DPF容器46は円筒体の形状を有し、排気ガスは、DPF容器46の前端側から入り、DPF容器46の後端側から流出する。
【0032】
前方排気方式のエンジン30の前面30aに締結された排気マニホールド76の出口はトランスアクスル32側に片寄せして形成されている(図1)。そして、この排気マニホールド76の出口に隣接して遠心型の排気タービン72が取り付けられている。また、排気タービン72の出口は車幅方向外方且つDPF容器46側に向けられており、排気タービン72は排気マニホールド76に実質的に直に連結されている。
【0033】
DPF容器46は、トランスアクスル32の上方に配設されていることは前述したとおりであるが、その高さ位置は排気タービン72と実質的に同じ高さレベルに位置決めされている(図5)。排気タービン72とDPF容器46の前端面とは第1排気管80によって連結されている。DPF容器46の後端はトランスアクスル32の後端よりも前方に位置し(図3)、そして、このDPF容器46の後端には第2排気管82が接続されている。第2排気管82は、エンジンルーム3よりも後方に且つ車体中心軸線に沿って延びている。この第2排気管82には、第2触媒やサイレンサーなどが設置される。なお、DPF容器46の中に酸化触媒を収容してもよく、この場合、上記第2触媒は還元触媒とすればよい。
【0034】
上述したように、前方排気方式のエンジン30に関する実施例によれば、比較的大型であり且つ硬質なケースを含むDPF容器46が横置きエンジン30に連結されたトランスアクスル32の上方域に配設してあり、このことから前方排気のエンジン30に隣接して位置していることから、エンジン30の前面30bの排気マニホールド76に隣接した位置にDPF容器46の入口を位置させることができる(図1)。このことから、DPF容器46をエンジン30に接近させて始動時の早期の活性化を図ることができ且つ従来のやり方であるエンジン30の後方からDPF容器46の存在を排除できるため、このDPF容器46がエンジン30の後方に存在することによってクラッシュストロークが短縮してしまうのを回避することができる。
【0035】
また、第1実施例では遠心型のターボチャージャー44が搭載され、そしてエンジン30の前面30bに隣接して排気タービン72とコンプレッサー56とが車幅方向に並ぶように配設されている(図1)。すなわち、横置きエンジン30の前面30bに沿って排気タービン72とコンプレッサー56が並んで位置しており、このことから遠心型の排気タービン72の出口が車幅方向外方且つDPF容器46側に向けられており、更に、排気タービン72とDPF容器46とが略同一の高さレベルに配設されていることから(図5)、排気タービン72とその側方に位置するDPF容器46の入口とが車幅方向に直線的に延びる比較的短い第1排気管80で連結することができる(図1)。このことから、排気流れを阻害しないで且つエンジン30から出た直後の排気ガスをDPF容器46に導入でき、始動時の触媒の早期の活性化を図ることができる。
【0036】
また、前方排気方式のエンジン30においてDPF容器46を車体前後方向に向けて配置させることができることから、ターボチャージャー44からDPF容器46に至る排気管及びDPF容器46の後方の排気管の曲がりを少なくすることができる。
【0037】
また、第1実施例では、ダッシュパネル1の下部に沿ってダッシュクロスメンバ12を設けることで(図3)、オフセット前面衝突での適合性能を高めるフレーム構造が採用されているが、エンジン30の後方にDPF容器46やターボチャージャー44が存在していないため、また、ダッシュクロスメンバ12がDPF容器46よりも低位の高さレベルに且つトランスアクスル32の後端部つまりデファレンシャルギア38よりも高位の高さレベルに配設されているため、前面衝突時にDPF容器46やデファレンシャルギア38がダッシュクロスメンバ12と干渉することはない。
【0038】
第2実施例(図7〜図12)
第2実施例は、前方吸気、後方排気の形式のエンジンに関する。上述した第1実施例と同一の要素には同一の参照符号を付すことにより説明を省略する。すなわち、横置きのエンジン30は、その前面30aから吸気され、後面30bから排気される。また、このエンジン30は第1実施例と同様にディーゼルエンジンである。
【0039】
第2実施例の吸気系のレイアウトを説明すると、先ず、コンプレッサー56は、エンジン30の後面30bに隣接して配設されている。第1吸気管62は、その上流端がエアクリーナボックス52の上面に連結されている。そして、第1吸気管62は、エアクリーナボックス52から車幅方向の他端部まで延びた後に後方に延び、エンジン30の端面に隣接してその車幅方向外方の領域をエンジン30の後面30bまで延び、そして、この後面30bの上端部に隣接し且つ後面30bに沿って車幅方向に延びることによってコンプレッサー56に連結されている(図7)。すなわち、エンジンルーム3を平面視して第1吸気管62の形状を説明すると、第1吸気管62は、エンジンルーム3の前端部の一側に位置するエアクリーナボックス52から車幅方向他側つまりDPF容器46とは反対側に向けて車幅方向に延びた後に後方に向けて略直角に屈曲し、そして、後方に向けてエンジン30のDPF容器46とは車幅方向反対側の領域を越えるまで後方に延びた後に略直角に屈曲して、エンジン30の後面30bに沿って車幅方向に延びる形状を有している。また、第1吸気管62を側面視したときに、エンジンルーム3の上端域つまりボンネットフード74の下面に隣接した略同一の平面内に配設されている。
【0040】
次に、コンプレッサー56とインタークーラー58とを連結する第2吸気管64について説明すると、先ず、インタークーラー58は、エンジンルーム3の前端部においてエアクリーナボックス52とは車幅方向反対側の他側つまりDPF容器46とは反対側の前端角隅部に配設され、そして、エンジンルーム3の前端角隅部における下端部に配設されている(図7、図12)。より詳しくは、インタークーラー58は、フロントサイドフレーム10の前端部よりも車幅方向外方の下方域に配設されている。
【0041】
第2吸気管64は、コンプレッサー56から一旦上方に延びた後にエンジン30の後面30bに沿って且つ後面22に隣接して車幅方向に延びた後に上記第1吸気管62の直下方を第1吸気管62と上下に並んでエンジンルーム3の側部つまりDPF容器46とは横置きエンジン30を挟んで車幅方向反対側の領域を前方に延び、そしてエンジン30の前面30aを越えた直後に斜め下方に延びてインタークーラー58に連結されている(図12)。このように、横置きエンジン30の後面30b側に配設されたコンプレッサー56に至る第1吸気管62と、コンプレッサー56からインタークーラー58に至る第2吸気管64を横置きエンジン30を挟んでDPF容器46とは車幅方向反対側に配置したことから、DPF容器46の熱から第1、第2の吸気管62、64を通過するエアを合理的に遠ざけることができる。
【0042】
次に、インタークーラー58と吸気マニホールド60とを連結する第3吸気管66について説明すると、先ず吸気マニホールド60は、第2実施例では、エンジン30が前方吸気方式を採用していることから、エンジン30の前面30aに取り付けられている。第3吸気管66は、インタークーラー58から車幅方向内方に向けて延びた後に上方に屈曲して吸気マニホールド60に連結されている。
【0043】
排気系のレイアウトを説明すると、DPF容器46は、第1実施例と同様に、トランスアクスル32の上方域且つこれに隣接して配設され(図11)、また、エンジン30の側方域に隣接して配設され(図7)、そしてDPF容器46は車体前後方向に延在している。排気ガスは、DPF容器46の後面側から入り、DPF容器46の前面側から流出する。
【0044】
エンジン30の後面30bに締結された排気マニホールド76の出口はトランスアクスル32側に片寄せして形成されている(図7)。そして、この排気マニホールド76の出口に隣接して遠心型の排気タービン72が取り付けられている。また、排気タービン72の出口は車幅方向外方且つDPF容器46側に向けられており、排気タービン72は排気マニホールド76に実質的に直に連結されている。
【0045】
DPF容器46は、トランスアクスル32の上方に配設されていることは前述したとおりであるが、その高さ位置は排気タービン72と実質的に同じ高さレベルに位置決めされている。また、DPF容器46の後端は排気タービン72の少なくとも後端よりも前方に位置しており、好ましくは、排気タービン72の出口よりも前方に位置しており、排気タービン72と排気マニホールド76の後端面とは第1排気管80によって連結されている。DPF容器46の前面の出口には第2排気管82が接続され、この第2排気管82は、車幅方向中央部分に向けて且つ下方に向けて斜め下方に延びた後に略90度屈曲してエンジン30の下方を通り且つ車体中心軸線に沿って後方に延びている。
【0046】
上述したように、第2実施例によれば、比較的大型であり且つ硬質なケースを含むDPF容器46が横置きエンジン30に連結されたトランスアクスル32の上方域に配設してあり、このことから後方排気のエンジン30に隣接して位置していることから、排気マニホールド76に隣接した位置にDPF容器46の入口を位置させることができる(図7)。このことから、DPF容器46をエンジン30に接近させて始動時の早期の活性化を図ることができ且つエンジン30の後方からDPF容器46の存在を排除できるため、このDPF容器46がエンジン30の後方に存在することによってクラッシュストロークが短縮してしまうのを回避することができる。
【0047】
また、第2実施例では後方排気方式の横置きエンジン30の後面30bに沿って排気タービン72とコンプレッサー56が並んで位置しており、このことから遠心型の排気タービン72の出口が車幅方向外方且つDPF容器46側に向けられており、更に、排気タービン72とDPF容器46とが略同一の高さレベルに配設されていることから、排気タービン72とその側方に位置するDPF容器46の入口とが車幅方向に直線的に延びる第1排気管80で連結することができるため比較的短い管路で且つ短距離に排気タービン72とDPF容器46とを連結することができる。このことから、排気流れを阻害しないでエンジン30から出た直後の排気ガスをDPF容器46に導入できる。
【0048】
また、排気マニホールド76の出口を排気マニホールド76の長手方向中央からDPF容器46側に片寄せして設定されているため排気タービン72及びコンプレッサー56を車幅方向中央に搭載することができると共に、エンジン30の上部に排気タービン72及びコンプレッサー56を配設することができる。このことから、ダッシュパネル1の車幅方向中央且つ上部に臨んでターボチャージャー44を配設することができ、この結果、前面衝突によってターボチャージャー44が後退してダッシュパネル1と干渉したとしても、このターボチャージャー44によってダッシュパネル1が変形したとしても左右の前席乗員の間であり且つ前席乗員の足元ではないため前席乗員の下肢への影響を回避することができる。
【0049】
また、この第2実施例にあってもダッシュパネル1の下部に沿ってダッシュクロスメンバ12を設けることで、オフセット前面衝突での適合性能を高めるフレーム構造が採用されているが、図8から分かるようにダッシュクロスメンバ12よりも高位の高さレベルにDPF容器46やターボチャージャー44が配設されているため、DPF容器46を含む排気系がダッシュクロスメンバ12と干渉することはない。同様に図8から分かるように、トランスアクスル32の後端部つまりデファレンシャルギア38がダッシュクロスメンバ12よりも低位の高さレベルであるため前面衝突時にデファレンシャルギア38がダッシュクロスメンバ12と干渉することはない。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】第1実施例に関し、エンジンルームを図3のI―I線に沿って上方から見た図である。
【図2】第1実施例に関し、エンジンルームを下方から見た図である。
【図3】第1実施例に関し、エンジンルームを図2のIII−III線に沿って左から右方向に見た図である。
【図4】第1実施例に関し、エンジンルームを右から左方向に見た図である。
【図5】第1実施例に関し、エンジンルームを正面から見た図である。
【図6】第1実施例に関し、エンジンルームを図3のVI−VI線に沿って後方から見た図である。
【図7】第2実施例に関し、エンジンルームを図8のVII―VII線に沿って上方から見た図である。
【図8】第2実施例に関し、エンジンルームを図12のVIII−VIII線に沿って見た図である。
【図9】第2実施例に関し、エンジンルームを右から左方向に見た図である。
【図10】第2実施例に関し、エンジンルームを正面から見た図である。
【図11】第2実施例に関し、エンジンルームを後方から見た図である。
【図12】第2実施例に関し、エンジンルームを下方か見た図である。
【符号の説明】
【0051】
1 ダッシュパネル
2 車室
3 エンジンルーム
10 フロントサイドフレーム
12 ダッシュクロスメンバ
14 サブフレーム
30 エンジン
32 トランスアクスル
38 デファレンシャルギア
44 ターボチャージャー
46 DPF容器
56 コンプレッサー(ターボチャージャー)
58 インタークーラー
60 吸気マニホールド
72 排気タービン(ターボチャージャー)
76 排気マニホールド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダッシュパネルによって車室とエンジンルームとが区画され、前記ダッシュパネルから前方に延びる左右のフロントサイドフレーム間に、トランスアクスルが一体に組み付けられたレシプロエンジンがそのクランクシャフトを車幅方向に沿って延びるように横置きに搭載された車体前部構造において、
前記レシプロエンジンの前面側又は後面側に位置する排気口から延びる排気管の一部を構成する触媒容器が、前記トランスアクスルの上方域且つ前記横置きエンジンの側方域に延在し、該触媒容器よりも下流の排気管が下方に屈曲した後に前記エンジンルームから後方に延びており、
前記レシプロエンジンの後面側又は前面側に位置する吸気口に通じる吸気管の一部が前記レシプロエンジンの前記トランスアクスル側とは反対側の側方域を車体前後方向に延びていることを特徴とする車体前部構造。
【請求項2】
前記レシプロエンジンの前面側又は後面側に位置する排気口に関連して配設されたターボチャージャーを更に有し、
該ターボチャージャーの遠心式の排気タービンとコンプレッサーが前記レシプロエンジンの前面又は後面に沿って車幅方向に並んで配設され、
前記排気タービンが前記触媒容器側に配設され、前記コンプレッサーが前記触媒容器の位置する側とは車幅方向反対側に配設されている、請求項1に記載の車体前部構造。
【請求項3】
前記エンジンルームの前記触媒容器が配設されている側とは車幅方向反対側にインタークーラーが配設され、
前記レシプロエンジンの排気口が前記触媒容器側に片寄せして設けられ、
前記レシプロエンジンの吸気口が前記インタークーラー側に片寄せして設けられている、請求項2に記載の車体前部構造。
【請求項4】
前記インタークーラーが車体前端部に配設され、
前記レシプロエンジンの吸気口が、該エンジンの前面又は後面の前記インタークーラー側の端に配設されている、請求項3に記載の車体前部構造。
【請求項5】
前記レシプロエンジンの排気口が該エンジンの後面側に配設され、
前記コンプレッサーよりも上流側の第1吸気管と、前記コンプレッサーと前記インタークーラーとを連結する第2吸気管とが、前記レシプロエンジンの前記トランスアクスル側とは反対側の側方域を車体前後方向に延びると共に、前記第1吸気管と前記第2吸気管とが上下に並んで配設されている、請求項4に記載の車体前部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−227132(P2009−227132A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−75715(P2008−75715)
【出願日】平成20年3月24日(2008.3.24)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】