説明

車形検出装置及び同装置を備えた洗車機

【課題】本発明の課題は、洗浄による飛散水や湯気の発生あるいは素子の汚れ等によって光量が不足した場合であっても、車形データを作成することができる車形検出装置及びこの装置を備えた洗車機を提供するものである。
【解決手段】発光部5aにおける隣接する2つの発光素子La・La+1を同時に発光させ、その一方の発光素子Laと水平に対向する1つの受光素子Raで受光する第1の光軸Bdと、同じく2つの発光素子La・La+1を同時に発光させ、その他方の発光素子La+1のと水平に対向する1つの受光素子Ra+1で受光する第2の光軸Beとを形成し、各素子毎に各光軸で車体検出する強光検出モードを実行可能にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の形状を検出する車形検出装置、及び同装置を備え、洗浄する自動車車体の形状に応じて、洗浄ブラシ,乾燥ノズル等の洗車処理装置を作用させて自動車車体の洗浄,乾燥等の処理を施す洗車機に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の装置として、特許文献1に記載された車形検出装置を提案している。この装置は、自動車を幅方向に挟んで発光部と受光部を配置した車体検出器と、この車体検出器を自動車の長さ方向に移動させる走行手段と、走行手段による移動距離を検出する移動距離検出手段とを備え、車体検出器が単位距離走行する毎に車体を検出し、車形データを作成するものである。
【0003】
車体検出器は、上下に複数の発光素子を配列した発光部と、発光素子と対をなす受光素子を配列した受光部とからなり、各発光素子と受光素子との間に形成される光軸の透光/遮光によって車体の有無を検出する。光軸の透光/遮光は、受光素子での受光レベルが所定のしきい値に達するか否かで判定され、透光した光軸を「0」、遮光した光軸を「1」として2値画像データが作成される。
【0004】
ところで、特許文献1では、車体検出動作と洗車動作とが並行して実行される洗車コースの場合、洗浄による飛散水や湯気等が発生し車体検出器の間に入り込むため、発光素子からの光信号が減衰して十分な発光量が得られず、受光素子で受光することができなかった。これは、発光素子や受光素子が汚れている場合も同じであり、いずれも正確な車形データを検出することが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4047672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、洗浄による飛散水や湯気の発生あるいは素子の汚れ等によって光量が不足した場合であっても、車形データを作成することができる車形検出装置及びこの装置を備えた洗車機を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような課題を解決するために本発明は、上下に複数の発光素子を配置した発光部と、該発光部の発光素子と対向する複数の受光素子を上下に配置した受光部とを自動車の幅方向に挟んで対向させた車体検出装置と、該車体検出装置の発光部と受光部の各素子間に形成される光軸の透光/遮光により車体の有無を検出する車形制御部とを備えた車形検出装置において、該車形制御部は、前記発光部における隣接した2つ以上の発光素子を1組とし、この発光組を発光させて対応する1つの受光素子で受光する単位検出動作を、組数分繰り返して車体を検出する強光検出モードを実行可能にしたものである。
【0008】
発光組における一方の発光素子と水平に対向する受光素子との間に形成される第1の光軸と、発光組における他方の発光素子と水平に対向する受光素子との間に形成される第2の光軸と、発光組における一方の発光素子と水平に対向する受光素子と上または下に隣接する受光素子との間に形成される第3の光軸とを形成し、強光検出モードは、これら光軸のいずれか2つ以上について単位検出動作を実行して車体を検出するようにした。
【0009】
また、門型状に形成した洗車機本体内に、洗浄ブラシ,乾燥ノズル等の洗車処理装置を備え、洗車機本体と洗浄する自動車とを相対移動させて自動車の洗浄を行う洗車機において、上記車形検出装置と、該車形検出装置で検出した車体に対して前記洗車処理装置を制御する洗車制御部とを備えた。
【0010】
この洗車機において、車形検出動作と洗浄動作を同時に実行する洗車コースを備え、該洗車コースを実行するときに強光検出モードを実行して車体検出を行うようにした。また、車体検出装置に自動車が無い状態で、発光部と受光部の各素子間に水平に形成される水平光軸の受光判断しきい値を設定するしきい値設定部を備え、該しきい値設定部で設定したしきい値が所定値未満となる水平光軸が複数個連続したら発光量不足と判断して、強光検出モードを実行して車体検出を行うようにした。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、発光素子を2つ以上同時に発光させることで発光側の光量を上げることができるので、洗浄による飛沫や湯気の発生あるいは素子の汚れ等によって光量が不足した場合であっても、車体検出が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明を門型洗車機に使用した例を示す説明図である。
【図2】車体検出装置5の構成及び制御系を示すブロック図である。
【図3】各車体検出モードの概要を示す説明図である。
【図4】通常モードによるしきい値設定処理を示すフローチャートである。
【図5】通常モードのしきい値設定処理によるしきい値データである。
【図6】強光モードによるしきい値設定動作を示すフローチャートである。
【図7】強光モードのしきい値設定処理によるしきい値データである。
【図8】車形検出処理を示すフローチャートである。
【図9】通常モードの車形検出処理動作による2値データである。
【図10】強光モードの車形検出処理動作による2値データである。
【図11】洗車処理動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を基に本発明の実施態様について説明する。
図1は本発明を門型洗車機に使用した例を示す説明図である。
1は門型洗車機で、レール2,2間に停車させた自動車Aを跨いで往復走行する。洗車機1には、主に自動車の上面を処理する上面ブラシ・上面乾燥ノズル・上面ジェットノズル等の上面処理装置3と、主に自動車の側面を処理する側面処理装置4を備え、これらの処理装置を自動車Aの形状に沿って作用させて車体を自動洗浄する。
【0014】
5は車体検出装置で、洗車機1の前方に備えられ自動車Aを幅方向に挟んでそれぞれ上下に複数の発光素子と受光素子とを対向させてなり、発光・受光素子間で授受される光信号が自動車Aの車体によって遮られるか否かにより車体を検出する。6は洗車機1の走行輪7の回転を検出する走行エンコーダであり、洗車機1が単位距離走行するごとにパルス信号を出力し、このパルス信号をカウントすることにより洗車機1の移動距離を検出することができる。
【0015】
図2は車体検出装置5の構成及び制御系を示すブロック図である。
車体検出装置5は、発光素子L1〜Lnを上下に複数配列させた発光部5aと、発光素子L1〜Lnと対をなす受光素子R1〜Rnを複数配列させた受光部5bとで構成され、発光部5aと受光部5bとの間で光信号(赤外線)を授受している。この車体検出装置5は、発光部5aの発光素子と受光部5bの受光素子とが1対1で対応するよう配列させてあり、水平に対向する素子同士で光軸を構成するのが基本であるが、1つの発光素子からの光信号はある程度の角度で拡散されるため、対応する受光素子と隣接した別の受光素子でも光軸を構成することが可能になる。8は発光部5aの走査駆動部で、車体検出時に発光素子を上から下(もしくは下から上)に順次点灯する。9は受光部5bの走査駆動部で、発光素子の走査に対応する受光素子を順次受光状態とする。
【0016】
10はマイクロコンピュータを含む車形制御部で、各走査駆動部8・9を周期的に動作させて自動車の上面形状を検出するものである。車形制御部10において、11は走行位置検出部で、走行エンコーダ6からのパルス信号により洗車機1の走行位置を検出する。12は受光検出部で、各受光素子での受光レベルを検出する。13はしきい値設定部で、発光部5aと受光部5bとの間に自動車が存在しない状態で各受光素子が受信する受光レベルに基づいて光軸の透光/遮光を判断する判別しきい値を設定する。14は車体検出部で、所定周期毎に走査駆動部8,9を動作させ、受光検出部12で検出される各受光素子の受光レベルをしきい値設定部13で設定した判別しきい値と比較して各光軸の透光/遮光を判定する。15は車形データ検出部で、走行位置検出部11から与えられる洗車機1の走行位置と車体検出部14から与えられる各光軸の透光/遮光から2値画像データを作成する。16は画像処理部で、車形データ検出部15で作成した車形データを解析処理し、洗車用データを作成する。17はデータ記憶部で、走行位置検出部11で検出される洗車機の走行位置データ・しきい値設定部13で設定されるしきい値・車形データ検出部15で作成される2値画像データ・画像処理部16で抽出される洗車用車形データが記憶される。
【0017】
18は洗車機1の洗車制御部で、洗車動作のプログラムに従って洗車駆動部19を介して上面洗浄装置3、側面洗浄装置4、洗車機1の走行モータ等を駆動し、洗車機1を走行させつつ車体の洗浄・乾燥といった洗車処理をさせるもので、特に作成される洗車用車形データに基づいて上面洗浄装置3を昇降制御し、これらの洗車処理装置が車体面を忠実にトレースするよう操作する。20は操作パネルで、洗車機1前面に設けられ洗車内容の選択入力や洗車開始入力を行うものである。
【0018】
操作パネル20は、洗車コースとして洗車機1の1往復走行に伴い洗浄と乾燥を実行する1往復洗車コースと、洗車機1の2往復走行に伴い洗浄と乾燥を実行する2往復洗車コースとが選択できる。1往復洗車コースは、洗車機1の1往行で車形検出と洗浄を同時に行い、1復行で乾燥を行う。2往復洗車コースは、洗車機1の1往行で車形検出を行い、1復行と2往行で洗浄、2復行で乾燥を行う。尚、ジェット洗浄、撥水処理等のトッピングメニューキーや装備品を指定する装備品キーを備えてもよい。
【0019】
続いて、車形制御部10の動作について説明する。
本装置では、1往復洗車と2往復洗車が選択できる。このうち、2往復洗車コースが選択された場合、車形検出工程が単独で実行されるため、飛沫や湯気等の影響が小さいとして通常モードによる車形検出が行われる。一方、1往復洗車コースが選択された場合、車形検出工程と洗車工程が同時に実行されるため、飛沫や湯気等の影響が大きいとして強光モードによる車形検出が行われる。
【0020】
図3は各モードによる車形検出の概要を示す説明図である。
通常モードは、特許第4047672号で提案した車形検出であり、図3(a)に示すように、1つの発光素子Laを点灯させて水平に対向した受光素子Raで光信号を授受する光軸Baと、受光素子Raの下に隣接した受光素子Ra+1で光信号を授受する光軸Bbと、受光素子Raの上に隣接した受光素子Ra-1で光信号を授受する光軸Bcとを形成し、各光軸の透光/遮光を検出して発・受光素子の高さの車体有無と発・受光素子の中間高さの車体有無を判定するものである。1つの発光素子に対して3つの光軸が形成され、素子数の約2倍の分解能で車体検出が可能となる。
【0021】
強光モードは、本発明で提案する車形検出であり、図3(b)に示すように、2つの発光素子La・La+1を同時に点灯させて発光素子Laと水平に対向した受光素子Raで光信号を授受する光軸Bdと、発光素子La+1と水平に対向した受光素子Ra+1で光信号を授受する光軸Beと、受光素子Raの上に隣接した受光素子Ra-1で光信号を授受する光軸Bfとを形成し、各光軸の透光/遮光を検出して発・受光素子の高さの車体有無と発・受光素子の中間高さの車体有無を判定するものである。2つの発光素子に対して3つの光軸が形成され、素子数の約1.5倍の分解能で車体検出が可能になる。また、2つの発光素子を同時に発光させることから光量を倍増させた車体検出が可能になる。
【0022】
以下、各モード別に車形検出の具体的な動作を説明する。
車形検出を行うにあたり、各光軸の判別しきい値を設定する。このしきい値設定は、各発光素子や受光素子の性能や精度に応じて透光/遮光を判別する基準値となるので、汚れの付着等による受光レベル低下も許容できるように車体検出前に必ず各光軸毎に設定される。
【0023】
<通常モードのしきい値設定処理>
図4は通常モードのしきい値設定処理を示すフローチャート図である。
まず、車体検出装置5の発光部5aと受光部5bの間に自動車が入り込んでない状態で、受光部5bの走査駆動部9を駆動し、発光素子L1を発光させる前の受光素子R1の受光レベルLvaを取り込む(1)。次に、発光部5aの走査駆動部8と受光装置5bの走査駆動部9を駆動し、発光素子L1を発光させた時の受光素子R1の受光レベルLvbを取り込む(2)。その後、処理(1)で取り込んだ受光レベルLvaと処理(2)で取り込んだ受光レベルLvbとの差分受光レベルLvcを算出し(3)、この差分受光レベルLvcに対して所定割合p1(=30%)をしきい値に設定し(4)、光軸Ba1の判別しきい値Sa1としてデータ記憶部17に記憶する(5)。こうした処理(1)〜(5)までの基本動作を素子数分繰り返し、光軸Baの判別しきい値Saを設定する(6)。
【0024】
また同様に、処理(1)〜(5)までの基本動作を繰り返し、光軸Bbの判別しきい値Sbと光軸Bcの判別しきい値Scを設定していく。このとき、発光部5aの走査駆動部8と受光装置5bの走査駆動部9のタイミングをずらして受光レベルを取り込むため、発光素子L1の光軸Bc1と発光素子Lnの光軸Bbnは形成されない。よって、処理(1)〜(5)までの基本動作を素子数n−1分繰り返すことで各しきい値を得ることになり、結果的にデータ記憶部17には、図5に示すしきい値データが作成される。
【0025】
<強光モードのしきい値設定処理>
図6は強光モードのしきい値設定処理を示すフローチャート図である。
まず、車体検出装置5の発光部5aと受光部5bの間に自動車が入り込んでない状態で、受光部5bの走査駆動部9を駆動し、発光素子を発光させる前の受光素子R1の受光レベルLvaを取り込む(7)。次に、発光部5aの走査駆動部8と受光装置5bの走査駆動部9を駆動し、発光素子L1・L2を発光させた時の受光素子R1の受光レベルLvbを取り込む(8)。その後、処理(7)で取り込んだ受光レベルLvaと処理(8)で取り込んだ受光レベルLvbとの差分受光レベルLvcを算出し(9)、この差分受光レベルLvcに対して所定割合p2(=5%)をしきい値に設定し(10)、光軸Bd1の判別しきい値Sd1としてデータ記憶部18に記憶する(11)。こうした処理(7)〜(11)までの基本動作を繰り返し、光軸Bdの判別しきい値Sdを設定する(12)。
【0026】
また同様に、処理(7)〜(11)までの基本動作を繰り返し、光軸Beの判別しきい値Seと光軸Bfの判別しきい値Sfを設定していく。このとき、発光部5aの走査駆動部8と受光装置5bの走査駆動部9のタイミングをずらして受光レベルを取り込むため、発光素子L1の光軸Bf1は形成されない。また、強光モードでは発光素子を2つ同時に点灯させ1つの対応する受光素子で受光しているので、形成される光軸はBd1,Bd3のように発光素子の奇数番に相当する数となる。よって、処理(7)〜(11)までの基本動作を素子数n/2−1分繰り返すことで各しきい値を得ることになり、結果的にデータ記憶部17には、図7に示すしきい値データが作成される。
【0027】
こうして各光軸の判別しきい値が設定され、設定される各しきい値の総数は、通常モードで素子数の約3倍(100対の素子があれば298個)、強光モードで素子数の約1.5倍(100対の素子であれば146個)となる。このように、検出を行う各素子間のしきい値を一つ一つ設定するのは、各素子の器差という問題もあるが、各素子やそのカバー等の汚れ等で素子間の通光条件が異なるからで、正確な車体検出ために必要となる。
【0028】
尚、通常モードにおける受光達成率を所定割合p1として30%に設定し、強光モードにおける同所定割合p2を5%に設定しているが、これは車形検出を単独で実行する洗車コースでは散水や湯気等の影響が少なく光信号の減衰が小さい一方、洗浄と並行して車形検出を実行する洗車コースでは散水や湯気等の影響が懸念され光信号の減衰が大きいためである。
【0029】
次に車形検出処理について、図8のフローチャート図を用いて説明する。
車形検出処理は、通常モードと強光モードのどちらも共通で、まず前記しきい値設定処理の処理(1)〜(3)と同様の手順で、各光軸Bの差分受光レベルLvcを算出し(13)、データ記憶部18に記憶された判別しきい値Sと比較する(14)。ここで、差分受光レベルLvcが記憶された判別しきい値Sよりも高ければ透光と判断してその光軸Bに「0」の2値データを与え(15)、判別しきい値Sよりも低ければ遮光と判断して光軸Bに「1」の2値データを与えて(16)、データ記憶部17に記憶する(17)。そして、このような処理(13)〜(17)を光軸Ba・光軸Bb・光軸Bc、もしくは光軸Bd・光軸Be・光軸Bfについて実行し(18)、2値データを作成していく。
【0030】
ここで、通常モードにおける光軸Baは、発・受光素子間に車体が存在するか否かの判定基準となり、光軸Bb・光軸Bcは、発・受光素子間の中間高さに車体が存在するか否かの判定基準となる。すなわち、光軸Bbの検出結果は、その上の発・受光素子間の中間高さの2値データとしてコピーされ、光軸Bcの検出結果は、その下の発・受光素子間の中間高さの2値データとしてコピーされる。例えば、光軸Bb2の検出結果が「0」であったとき、発光素子L1−受光素子R1(光軸Ba1)と発光素子L2−受光素子R2(光軸Ba2)の中間高さに「0」の2値データがコピーされ、光軸Bc3の検出結果が「1」であったとき、発光素子L2−受光素子R2(光軸Ba2)と発光素子L3−受光素子R3(光軸Ba3)の中間高さに「1」の2値データがコピーされる。図9はこの車体検出で得られた通常モードでの2値データの例である。これにより、実際に設けられた発・受光素子の中間高さでの車体の有無を判定するので、素子の高さ位置とその中間位置とで素子数の約2倍の分解能で車体検出できる。
【0031】
また、強光モードにおける光軸Bd・Beは、発・受光素子間及び発・受光素子間の中間高さに車体が存在するか否かの判定基準となり、光軸Bfは、発・受光素子間の中間高さに車体が存在するか否かの判定基準となる。すなわち、光軸Bdの検出結果は、その下の発・受光素子間の中間高さの2値データとしてコピーされ、光軸Beの検出結果は、その上の発・受光素子間の中間高さの2値データとしてコピーされ、光軸Bfの検出結果は、その下の発・受光素子間の中間高さの2値データとしてコピーされる。例えば、光軸Bd1の検出結果が「0」であったとき、発光素子L1−受光素子R1と発光素子L2−受光素子R2の中間高さに「0」の2値データがコピーされ、光軸Be4の検出結果が「0」であったとき、発光素子L3−受光素子R3と発光素子L4−受光素子R4の中間高さに「0」の2値データがコピーされ、光軸Bf5の検出結果が「1」であったとき、発光素子L4−受光素子R4と発光素子L5−受光素子R5の中間高さに「1」の2値データがコピーされる。図10はこの車体検出で得られた強光モードでの2値データの例である。これにより、実際に設けられた発・受光素子の中間高さでの車体の有無を判定するので、素子の高さ位置とその中間位置とで素子数の約1.5倍の分解能で車体検出できる。
【0032】
こうした車形検出処理は、洗車機1が往行を終了するまで連続的に実行されることで、透光「0」、遮光「1」とする2値化された2値画像データが作成される。作成された車形データは、画像処理部17において、論理フィルターをかけられて輪郭線が抽出される。この処理は、車形データにおいて「1」が隣どうし連続して存在している連結成分の、最も下でかつ最も左に位置するセルを追跡開始点とし、この点を中心にその周りに隣接する8セルを右まわりに調べ、「0」から「1」に変わるセルを検出していき、検出したセルを輪郭線とするものである。実際には、洗車機1の走行とともに自動車の車体画像データが順次送られてきて展開されつつ輪郭線を追跡するので、自動車全体の画像データ取り込みを完了した時点で全体の輪郭線が抽出される。こうして得られた自動車の輪郭から、洗車機本体の走行x軸方向に対する自動車高さy軸方向のデータを決定した洗車用データが作成される。
【0033】
以上のように構成する車形検出装置を採用した洗車機の動作について説明する。
自動車Aを車体検出装置5で検出されない所定の停車位置に停止させ、操作パネル20で洗車コースを選択し(20)、洗車スタートを入力すると洗車動作が開始する。洗車がスタートすると、選択した洗車コースに応じたしきい値設定処理を行う(21),(22)。このしきい値設定動作が終了すると、洗車機本体1を走行させ(23)、走行エンコーダ6がパルス信号を発信すると(24)、走行位置検出部11で洗車機1の走行距離を検知し(25)、車形検出処理を行い1走査分の2値画像データを作成する(26)。尚、車形検出処理を実行するタイミングは、走行エンコーダのパルス信号をトリガにするだけでなく、一定周期で実行するようにしても良い。
【0034】
洗車機1の走行に伴い、ある程度(ここでは5走査分)の2値画像データがたまったら(27)、車形データを画像処理して洗車用データを作成する(28)。この洗車用データの作成は、洗車機1が往路を走行する間継続して実行され(29)、連続した自動車の上面輪郭が得られる。
【0035】
自動車の形状が検出されると、検出された自動車の輪郭に基づいて洗車動作が行われる(30)。洗車動作は、洗車機1の走行に伴い、シャンプー噴射を伴う車体のブラッシングと、ワックス噴射に伴うコーティングと、高速風の噴射によるブロー等が実行される。このうち、上面ブラシ及び上面ノズルは、検出された自動車の輪郭に沿って上下制御される。こうして、洗車動作が終了すると、自動車Aの退出を促して洗車を終了する。
【0036】
以上説明したように本発明は、車形検出として通常モードと強光モードを備え、飛沫や湯気の多い悪環境での車形検出を強光モードで行うようにしたものである。この強光モードは、通常モードより分解能は低いが、発光素子を2つ同時発光させることで光量アップを図ったモードであり、主に洗浄と並行して車形検出を実行する洗車コースが選択された場合に自動設定されるように構成している。これにより、受光側のしきい値を変更することでしか対応できなかった飛沫や汚れに対する対応が可能になり、従来まで車形検出が困難で洗車不可となっていた環境であっても洗車が行えるようになる。
【0037】
なお、上記以外の実施態様として、発光・受光素子の汚れが原因で十分な受光レベルが得られないと判断した場合に強光モードによる車形検出を行うことも可能である。この場合、図4における通常モードのしきい値設定処理で、差分受光レベルが所定値未満となる受光素子が複数個連続して存在していると、汚れ等により発光素子からの光量が不足していると判断して、強光モードに切り替えて車体検出を行うようにする。また、外気温センサ等を備え、外気温が湯気の発生しやすい温度の時には洗車コースにかかわらず強光モードで車体検出を行うようにしても良い。
【0038】
更に、分解能の高い通常モードと、光量が高い強光モードとを1走査ずつ交互に実行ようにしても良い。この場合、通常モードによる車形データと強光モードによる車形データが交互に検出されるため、通常モードでは湯気などで遮光と判断された部分が強光モードでは透光と判断される等、前後方向(すなわち車体の長さ方向)の車形データが補間できるようになる。
【符号の説明】
【0039】
1 洗車機本体
5 車体検出装置
5a 発光装置
5b 受光装置
8,9 走査駆動部
10 車形制御部
11 走行位置検出部
12 受光検出部
13 しきい値設定部
14 車体検出部
15 車形データ検出部
16 画像処理部
17 データ記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下に複数の発光素子を配置した発光部と、該発光部の発光素子と対向する複数の受光素子を上下に配置した受光部とを自動車の幅方向に挟んで対向させた車体検出装置と、該車体検出装置の発光部と受光部の各素子間に形成される光軸の透光/遮光により車体の有無を検出する車形制御部とを備えた車形検出装置において、
該車形制御部は、前記発光部における隣接した2つ以上の発光素子を1組とし、この発光組を発光させて対応する1つの受光素子で受光する単位検出動作を、組数分繰り返して車体を検出する強光検出モードを実行可能にしたことを特徴とする車形検出装置。
【請求項2】
前記発光組における一方の発光素子と水平に対向する受光素子との間に形成される第1の光軸と、発光組における他方の発光素子と水平に対向する受光素子との間に形成される第2の光軸と、発光組における一方の発光素子と水平に対向する受光素子と上または下に隣接する受光素子との間に形成される第3の光軸とを形成し、
前記強光検出モードは、これら光軸のいずれか2つ以上について単位検出動作を実行して車体を検出することを特徴とする上記請求項1記載の車形検出装置。
【請求項3】
門型状に形成した洗車機本体内に、洗浄ブラシ,乾燥ノズル等の洗車処理装置を備え、洗車機本体と洗浄する自動車とを相対移動させて自動車の洗浄を行う洗車機において、
上記請求項1または2記載の車形検出装置と、該車形検出装置で検出した車体に対して前記洗車処理装置を制御する洗車制御部とを備えたことを特徴する洗車機。
【請求項4】
車形検出動作と洗浄動作を同時に実行する洗車コースを備え、該洗車コースを実行するときに前記強光検出モードを実行して車体検出を行うことを特徴とする上記請求項3記載の洗車機。
【請求項5】
前記車体検出装置に自動車が無い状態で、発光部と受光部の各素子間に水平に形成される水平光軸の受光判断しきい値を設定するしきい値設定部を備え、該しきい値設定部で設定したしきい値が所定値未満となる水平光軸が複数個連続したら発光量不足と判断して、前記強光検出モードを実行して車体検出を行うことを特徴とする上記請求項3記載の洗車機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−252777(P2011−252777A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−126395(P2010−126395)
【出願日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【出願人】(000103138)エムケー精工株式会社 (174)
【Fターム(参考)】