説明

軸受装置

【課題】本発明は、検出した検出対象の検出情報を容易に分類管理できる軸受装置を提供する。
【解決手段】ワイヤレスセンサ2は、このワイヤレスセンサ2の各センサモジュール4,5で検出した振動や温度などの検出情報に、各センサモジュール4,5に固有の識別情報を付して通信装置10から電波で信号Rを送信する。また、この信号Rを受信する管理装置3は、この信号Rに含まれる識別情報を基に検出情報を分類保管する。そして、監視装置1は、加工機の可動軸などに取り付けた複数のワイヤレスセンサ2を管理装置3で管理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業機械や自動車や鉄道車両などの車両に取り付けられて、運転状態を示す信号を無線で送信するワイヤレスセンサを備えた軸受装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車や鉄道車両など車両の車軸である回転軸を支持する軸受や、加工機や組立装置など産業機械に適用されているボールねじやリニアガイドなどの直動装置及び軸受は、運動することによって振動(すなわち、加速度の変化)を生じたり、摩擦によって発熱したりする。これらの振動や温度は、軸受や直動装置の寿命に影響するとともに、産業機械などの精度や車両などの安全性に関わるため、適宜計測して定格状態であることを監視することが望ましい。また、回転運動する軸受の回転速度は、この軸受が取り付けられた装置などの運転状態を把握する上で重要であるため、常時監視されることが多い。
【0003】
そこで、加速度計を備えた汎用の振動センサや、熱電対などを備えた汎用の温度センサ、あるいは、回転速度を検出するための回転センサなどが、対象となる軸受のハウジングや直動装置の可動体に取り付けられ、計測装置と有線で接続されて振動や温度などが監視される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この場合、各センサと計測装置とを有線で接続配線すると、多軸制御の加工機や、組立ラインなどのように監視の対象となる可動部が多い装置では、配線が煩雑になるという問題がある。そして、保全点検などによって、センサ取付部周辺を分解する場合においては、その都度センサ及びケーブルを取り外さなければならないと言う煩わしさがある。また、リニアガイドなどの直動装置の可動部に配線する場合は、使用中にその配線が切れるなどの問題がある。車両などのようにセンサの取付部が移動する場合は、計測機器類をその車体に搭載する必要がある。計測器類をその車体に搭載した場合でも、車両の車輪は、乗り心地を考慮してサスペンションなどにより、車体に対して相対的に動くように支持されている。そのため、車輪の軸受に取付けられるセンサに接続されるケーブルは、車両が走行することによって繰り返し屈曲され、いずれ断線してしまうことが懸念される。
【0005】
したがって、本発明は、センサの信号を送るための配線をする必要性がないワイヤレスセンサを備えた転がり軸受装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで上記の課題を解決するために、本発明に係るワイヤレスセンサは、検出対象を検出する検出部と、この検出部で検出された情報を処理する情報処理部と、この処理部で処理された検出情報を無線で送信する通信装置とを備える。
【0007】
または、本発明に係るワイヤレスセンサは、検出対象を検出する検出部と、この検出部で検出された情報を処理する情報処理部と、この処理部で処理された検出情報を前記検出部に固有の識別情報とともに無線で送信する通信装置とを備える。
【0008】
この場合、利用者が任意にワイヤレスセンサの検出情報を入手できるように、送受信を行う通信装置が検出部の識別情報に対応する指令信号を受信したときに、この指令信号に指定された前記検出部の検出情報を識別情報とともに送信するようにする。また、利用者が、容易に信号を識別できるように、通信装置は、検出部で検出した信号またはこれに関する情報をディジタル情報に変換して送信する。
【0009】
本発明に係る軸受装置は、内外の軌道輪と、これら軌道輪間に配置された複数の転動体とを有し、外側軌道輪と内側軌道輪のどちらか一方が静止輪であり、他方が回転輪である転がり軸受において、前記のいずれかのワイヤレスセンサを、前記静止輪もしくは静止輪に取り付けた部材に一体的に固定するか、または回転輪もしくは回転輪に取り付けた部材と一体的に動くように設ける。
【0010】
または、本発明に係る軸受装置は、1組の軌道輪と、これら1組の軌道輪の内の第1の軌道輪に設けられるパルサリングと、このパルサリングと相対的に回転する第2の軌道輪に前記パルサリングと対向して取付けられる前記いずれかのワイヤレスセンサとを備える。
【0011】
この場合、軸受装置は、パルサリングとワイヤレスセンサとが相対的に回転することによって、回転速度センサで検出される周期信号に関する情報をFM変調方式で送信する。そして、パルサリングとワイヤレスセンサが相対的に回転することによって回転速度センサに発生する周期信号の波長または周波数に基づいて情報処理部が求めた軸受装置の回転数と回転速度の内の少なくとも一方を送信する。また、パルサリングとワイヤレスセンサが相対的に回転することによって回転速度センサに発生する周期信号の1周期の区切りごとに少なくとも固有の識別情報を送信する。
【0012】
本発明に係る管理装置は、検出対象を検出する検出部を備えたワイヤレスセンサまたは軸受装置から送信された信号を受信する通信機と、前記信号に含まれる前記検出部またはワイヤレスセンサの少なくとも一方に固有の識別情報を基に、受信した信号を管理する信号処理部とを備える。この場合、この管理装置が受け持つ以外のワイヤレスセンサまたは軸受装置の信号との混信を防止するために、通信機は、信号に含まれる検出部に固有の識別情報を基に、管理装置に予め登録された識別情報を含む信号を選択して受信する。さらに、必要に応じてワイヤレスセンサまたは軸受装置の最新の検出情報が入手できるように、通信機は、ワイヤレスセンサまたは軸受装置に対して検出情報を含む信号を要求する指令信号を送信する。
【0013】
本発明に係る監視装置は、前述のワイヤレスセンサまたは軸受装置と、管理装置を組み合わせて使用する。監視装置は、ワイヤレスセンサまたは軸受装置を同時に複数使用する場合、管理装置がワイヤレスセンサごと及び軸受装置ごとにそれぞれ異なる固有の周波数の搬送波で通信する。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るワイヤレスセンサまたは軸受装置によれば、検出対象を検出する検出部と、この検出部で検出された情報を処理する情報処理部と、この処理部で処理された検出情報を無線で送信する通信装置とを備え、検出した情報を電波や超音波や光などを使用した無線で送信できるので、信号を送るための配線をする必要性がなくなる。また、可動部分に検出部を設けた場合においては、信号を送るための配線をする必要がないため、配線が切れるなどの問題は生じない。また、車両などの移動体に使用した場合は、その移動体に計測機器類を搭載するだけでなく、移動体とは別の場所で、その検出情報を管理することができる。
【0015】
また、検出対象を検出する検出部と、この検出部で検出された情報を処理する情報処理部と、この処理部で処理された検出情報を前記検出部に固有の識別情報とともに無線で送信する通信装置とを備えたので、複数のワイヤレスセンサから送信された信号を容易に識別することができる。また、識別信号に対応する指令信号を受信したときに、この指令信号に指定された検出部の検出対象を検出し、その検出情報とともにこの検出部の識別信号を送信するので、利用者が所望する任意のワイヤレスセンサまたは軸受装置の最新の情報を容易に得ることができる。検出した情報またはこれに関係する情報をディジタル情報に変換して送信することで、周囲のノイズによって劣化した信号を受信側で再生しやすくなるので、情報の欠落を防止することができる。
【0016】
転動体を介して相対的に回転する1組の軌道輪の第1の軌道輪にパルサリングを設け、このパルサリングと相対的に回転する第2の軌道輪に本発明のワイヤレスセンサを取付けた本発明に係る軸受装置によれば、検出した信号を無線で送信するとともに、パルサリングと対向して設けられた回転速度センサのコイルに発生する電流を利用して、ワイヤレスセンサ内の回路に電力を供給することができる。したがって、検出した信号を送信するための信号線と、ワイヤレスセンサ内の回路に電力を供給するための電線とを配線する必要がない。
【0017】
複数の軸受装置を同時に利用する場合、検出した信号に関係する情報をFM変調方式で送信する本発明に係る軸受装置は、軸受装置ごとに異なる固有の搬送波を使って送信できるので、互いの信号の混信を防止することができる。
【0018】
回転速度センサに発生する周期信号に基づいて信号処理部が求めた回転数または回転速度の内の少なくとも一方を送信する本発明に係る軸受装置によれば、数値化された情報が送信されるので、信号が伝播される間に検出情報が変化することを防止することができる。
【0019】
回転速度センサに発生する周期信号の1周期の区切りごとに少なくとも固有の識別情報を送信する本発明に係る軸受装置によれば、軸受装置ごとに検出された信号を混信することなく、より少ない情報量で監視装置に送信することができる。
【0020】
また、本発明に係る管理装置によれば、ワイヤレスセンサや軸受装置から出力された信号を、この信号に含まれる検出部に固有の識別情報を基に分類するので、容易に管理することができる。そして、信号に含まれる検出部に固有の識別情報を基に、この管理装置に予め登録された識別情報を前記信号を選択して受信する管理装置の発明によれば、より確実に混信を防ぐことができる。
【0021】
また、本発明に係るワイヤレスセンサまたは軸受装置と、本発明の管理装置を用いた監視装置によれば、ワイヤレスセンサまたは軸受装置がその検出部で検出した検出情報とともにその検出部に固有の識別情報を送信し、管理装置でその識別情報を基に検出情報を分類して管理するので、複数のワイヤレスセンサまたは軸受装置を同時に監視できる。
【0022】
本発明に係るワイヤレスセンサや軸受装置を同時に複数使用し、管理装置が、ワイヤレスセンサごと及び軸受装置ごとに異なる固有の搬送波で通信する本発明の監視装置によれば、ワイヤレスセンサと監視装置の信号の混信を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の第1の実施形態について、図1から図3を参照して説明する。図1に示す監視装置1は、検出対象となる振動や温度を検出してその検出情報を送信するワイヤレスセンサ2と、複数のワイヤレスセンサ2から出力された信号Rを受信する管理装置3からなる。
【0024】
ワイヤレスセンサ2は、振動センサモジュール4と、温度センサモジュール5と、マルチプレクサ6と、A/Dコンバータ7と、RAM(Random Access Memory)8と、信号処理部9と、通信装置10とを備えている。振動センサモジュール4は、検査対象である振動を検出する検出部としての振動センサを備えており、検出した加速度などの振動の変化を電気信号に変換して出力する。温度センサモジュール5は、検出対象である温度を検出する検出部としての温度センサを備えており、検出した温度を電気信号に変えて出力する。
【0025】
マルチプレクサ6は、振動センサモジュール4及び温度センサモジュール5からそれぞれ出力された信号をそれぞれ独立した検出情報として後で分けられるように混成する。なお、マルチプレクサ6による混成は、多重通信方式であってもよいし、時分割方式であってもよい。また、センサモジュール4,5が一つの場合、このマルチプレクサ6は不要である。また、マルチプレクサ6を使用せずA/Dコンバータ7を複数設けてもよい。
【0026】
A/Dコンバータ7は、振動センサモジュール4や温度センサモジュール5のアナログ信号をディジタル信号に変換する。RAM8は、A/Dコンバータ7で変換された検出情報を処理する前に一時保管するために設けられている。なお、RAM8は、記憶装置の一例であって、検出情報を一時的に保管できるものであればよい。
【0027】
信号処理部9は、RAM8に一時保管された各センサモジュール4,5の検出情報を順次呼び出し、振動及び温度のそれぞれに予め設定された閾値と比較するなどの処理を行った後、各センサモジュール4,5毎に固有の識別情報とともに通信装置10へ出力する。なお、振動や温度の値そのものを識別情報とともに通信装置10に出力してもよい。また、A/Dコンバータ7とRAM8と信号処理部9とをまとめた処理部であってもよい。
【0028】
センサモジュール4,5が複数の検出部を備えている場合、識別情報は、その検出情報を検出した検出部毎とするとよい。また、センサモジュール4,5毎の識別情報のほかにワイヤレスセンサ2毎の識別情報を付して送信すると、さらに管理装置3側で多用な分類管理が可能となるのでよい。識別情報は、検出部毎に与えられるものであるので、センサモジュール4,5で検出情報に添付して出力してもよい。
【0029】
通信装置10は、送信及び受信が可能であって、信号処理部9から出力された信号を電波の信号Rに変換して送信する。なお、電波の使用が難しい環境においては、信号を超音波や、光、例えば赤外線に変換する通信装置10を用いるとよい。
【0030】
以上のように構成されたワイヤレスセンサ2は、各センサモジュール4,5で検出された検出情報をマルチプレクサ6によって多重通信し、A/Dコンバータ7でディジタル信号に変換した後、RAM8に一時保管する。保管された検出情報は、順次信号処理部9で読み出されて演算などの処理を施され、かつ、センサモジュール4,5毎に固有の識別情報が添付された信号Rとなって、通信装置10から送信される。なお、振動や温度などを検出する間隔は、所定の時間間隔、または、所定の閾値によるトリガーで起動する間隔とすると、情報量を減らすことができるのでよい。
【0031】
このように、このワイヤレスセンサ2は、検出情報を電波で送信するため、通信線が不要である。したがって、加工機などの可動軸や車両の軸受部へ取り付ける場合、配線作業による煩わしさがないのでよい。このようにワイヤレスセンサ2を用いることで結果として、配線が煩雑になることはなく、配線の工数をなくすことができる。また、ワイヤレスセンサ2から送信される信号Rに各センサモジュール4,5毎の識別情報が付されているので、複数のワイヤレスセンサ2から同じ周波数で信号Rを送信しても各ワイヤレスセンサ2からの信号Rをそれぞれ識別することができる。そのため、この信号Rを受信する管理装置3が、ワイヤレスセンサ2あるいはセンサモジュール4,5毎に周波数を変えなくてもよいとともに、受信対象となるワイヤレスセンサ2を追加した場合でも、同じ設定で受信することができる。そして、識別情報を基に各ワイヤレスセンサ2または各センサモジュール4,5で検出された検出情報を容易に分類することができる。
【0032】
また、このワイヤレスセンサ2は、個別の識別情報に対応する指令信号Qを受信すると、指令信号Qに指定されたセンサモジュールの最新の状態を検出し、通信装置10から識別情報とともに送信する。したがって、利用者が、再度検出情報の確認をしたい場合、その都度、任意のワイヤレスセンサの最新の検出情報を容易に得ることができる。
【0033】
なお、図1においてワイヤレスセンサ2に設けられた振動センサモジュール4と温度センサモジュール5は、いずれか一方のみであってもよいし、これらの代わり、あるいはどちらか一方の代わりに回転速度を検出する回転速度センサモジュールを設けてもよし、振動センサモジュール4と温度センサモジュール5と回転速度センサモジュールのそれぞれが設けられていてもよい。
【0034】
次に、管理装置3について説明する。図1に示す管理装置3は、通信機11と、信号処理部12と、RAM13と、インターフェイス14とを備えている。通信機11は、周囲に点在する複数のワイヤレスセンサ2から無線、例えば電波で送信される信号Rを受信しその信号Rを信号処理部12に送る。なお、通信機11が使用する電波の周波数は、単一周波数であってもよいが、送受信で少なくとも2つの周波数帯を使用できることが好ましい。
【0035】
信号処理部12は、送られてきた信号Rに含まれているワイヤレスセンサ2毎または、センサモジュール4,5毎に固有の識別情報を基に、信号Rに含まれている検出情報を分類する。RAM13は、ワイヤレスセンサ2のRAM8と比較して十分に大きい記憶容量を備えており、分類された検出情報(または信号R)を個別に管理保管する。なお、RAM13は、記憶装置の一例であって、受信した検出情報(または信号R)を個別に管理保管できるものであればよい。インターフェイス14は、RAM13と並列に信号処理部12から設けられており、信号処理部12で分類された検出情報を外部に出力する。
【0036】
また、管理装置3は、任意のワイヤレスセンサ2またはセンサモジュール4,5の最新の検出情報を要求する指令信号Qを通信機11から送信する。この指令信号Qには、利用者が指定するワイヤレスセンサ2またはセンサモジュール4,5の識別情報に対応した情報、例えば、所望するワイヤレスセンサ2またはセンサモジュール4,5に固有の識別情報が付されている。
【0037】
以上のように構成された管理装置3は、複数のワイヤレスセンサ2から送信された信号Rを受信し、その信号Rに含まれるセンサモジュール4,5の識別情報を基に検出情報を分類してRAM13に記録保管するとともに、必要に応じてインターフェイス14からRAM13に保管されている検出情報を外部に出力する。したがって、蓄積された各ワイヤレスセンサ2やセンサモジュール4,5の検出情報を基に、各機械装置などの運転状況を管理装置3の信号処理部12で分析したり、インターフェイス14で外部に取り出して情報処理できるので、より高度で正確な分析ができる。
【0038】
次に、前述のワイヤレスセンサ2と管理装置3からなる監視装置1は、所定の時間間隔、あるいは予めワイヤレスセンサ2の信号処理部9に設定された閾値を超えたときに、ワイヤレスセンサ2で検出対象の振動や温度を検出して各ワイヤレスセンサ2毎または各センサモジュール4,5毎の識別情報を付して送信する。そして、この信号Rを管理装置3で受信し、各識別情報毎に検出情報を分類して保管管理する。
【0039】
また、この監視装置1は、任意のワイヤレスセンサ2またはセンサモジュール4,5に対応した指令信号Q、例えば任意のワイヤレスセンサ2またはセンサモジュール4,5に固有の識別情報を含んだ指令信号Qを管理装置3から送信することで、その指令信号Qに含まれた識別情報に指定されたワイヤレスセンサ2の各センサモジュール4,5、または識別情報に指定されたセンサモジュール(4または5)の最新の検出情報をそのワイヤレスセンサ2から信号Rとして(折返し)送信させることができる。したがって、利用者が所望する任意のワイヤレスセンサ2、またはセンサモジュール4,5の最新の検出情報を管理装置3において適宜入手することができる。
【0040】
そこで、図2に示すようにこの監視装置1のワイヤレスセンサ2を工作機械21の各可動軸22,23にそれぞれ取り付け、管理装置3を工作機械の本体24に設ける。そして、ワイヤレスセンサ2で所定の時間間隔ごとに振動や温度あるいは回転軸や移動軸の速度を検出し、各ワイヤレスセンサ2毎の検出情報を管理装置3で受信し、各検出情報を識別情報毎に分類して保管する。
【0041】
このように監視装置1を工作機械21に適用すると、ワイヤレスセンサ2が無線(電波)で通信するので、可動軸22,23への取付が容易であるとともに、通信配線がないので、メンテナンスなどで周辺を分解する場合においても脱着を容易に行うことができる。また、ワイヤレスセンサ2を追加する場合においても、取り付けが容易であるとともに、検出情報が識別情報とともに信号Rで送信されるので、管理装置3で、他のワイヤレスセンサ2と同様に識別情報毎に検出情報を分類管理できる。さらに、利用者が、最新の検出情報を所望するのワイヤレスセンサ2のセンサモジュール4,5の識別情報を付した指令信号を管理装置3から送信することで、そのセンサモジュール4,5の最新の検出情報を入手することができる。なお、この指令信号は、工作機械21の制御盤25への入力によって、管理装置3から送信されるようにすると、利用者に使いやすいのでよい。
【0042】
また、管理装置3で保管されている検出情報をインターフェイス14(図1)を通して工作機械21の制御盤25に提供すると、工作機械21の自己診断や不具合防止に有効である。
【0043】
複数の監視装置1が隣接して使用される場合は、受信したいワイヤレスセンサ2の識別情報を管理装置3に予め設定し、受信したいワイヤレスセンサ2の検出情報を選択して受信するようにする。このようにすると、他の工作機械のワイヤレスセンサ2の信号と混信しないのでよい。
【0044】
さらに、図3のように複数の加工機26、例えばNC旋盤やマシニングセンタなどに設けたワイヤレスセンサ2のそれぞれの検出情報を離隔地に設けた管理装置3で受信して一括管理する場合は、各加工機26に取り付けられたワイヤレスセンサ2から出力された信号Rを一旦加工機26毎にまとめ、それを管理装置3に送信する。この場合、加工機26毎に検出情報を処理して蓄積し、管理装置3からの指令信号に応じて検出情報を出力してもよいし、検出されるたびに検出情報をそのワイヤレスセンサ2、またはセンサモジュールの識別情報とともに管理装置3に向けて送信してもよい。また、ワイヤレスセンサ2の出力が小さい場合は、中継機27を経由させるとよい。
【0045】
このようにすることで、各加工機26の運転状況を確認、及び監視するために、利用者が加工機26の傍まで行かなくてもよい。また、加工機26に取り付けられたワイヤレスセンサと管理装置3との間を無線で通信するので、新たに通信線を敷設する必要がなく、監視装置1を既存の設備に導入しやすい。
【0046】
また、ワイヤレスセンサまたは加工機26と管理装置3との間の通信に携帯電話やPHS(Personal Handyphone System)及び、衛星電話などの移動体通信の回線を利用すると、広範囲にわたって移動する自動車や鉄道車両の軸受やギヤボックスなどの運転状況をリアルタイムで集中管理・監視できるのでよい。この場合、ワイヤレスセンサ2から管理装置3までを移動体通信回線を使って通信してもよいし、ワイヤレスセンサの信号Rを電波で近くの中継機27に送信し、その中継機27から管理装置3までを移動体通信回線やシリアルパラレル通信(有線)、一般電話回線(有線)、LAN(Local Area Network)、有線、または無線、あるいはインターネットを使って通信してもよい。また、管理装置3側は、一般電話回線(有線)で受信してもよい。
【0047】
ワイヤレスセンサ2が設置される機器が、作業状況や日程などにより複数の建物に移動して使用される場合や、ラインの稼動率を上げるために前記機器が複数台用意され、保守的に入れ替えを行って使用される場合は、建物あるいは部屋毎に設置された管理装置3同士を移動体通信や一般電話回線やLAN、あるいはインターネットを使ってワイヤレスセンサの管理番号や検出情報を共有化することにより、もれのない監視が可能となる。
【0048】
なお、監視装置1の通信に移動体通信回線や一般電話回線を利用すると、管理装置3で受信された検出情報を基に、この検出情報を送信してきたワイヤレスセンサが取り付けられた加工機26や自動車及び鉄道車両に、保守点検の必要があると判断された場合、管理装置3から保守担当者が携帯する移動体通信装置に自動的に報知するように管理装置3を設定することも可能であるとともに、保守担当者が、移動体通信装置を使って、ワイヤレスセンサの検出情報を検索することも可能である。
【0049】
次に、本発明の第2の実施形態について図4及び図5を参照して説明する。図4(A)に示す転がり軸受装置31は、軸受部32とワイヤレスセンサであるセンサ部33とを備える。軸受部32は、内外の軌道輪34,35と、これら軌道輪34,35の間に配置された転動体36と、この転動体36の保持器37とシールまたはシールド板351を備えている。センサ部33は、図4(B)に示すように検出対象を検出する検出部38と、検出された情報を処理する処理部39と、この処理部39から出力された信号を無線で送信する通信装置40と、これら検出部38、処理部39、通信装置40に電力を供給する電池41とを備えている。
【0050】
センサ部33は、軸受部32の外輪35と一体的に固定あるいは密着された外輪間座42の中心方向に向かって形成されたフランジ43に取り付けられている。検出部38は、振動(すなわち加速度の変化)を検出する振動センサ44と、温度を検出する温度センサ45とを備えている。この振動センサ44及び温度センサ45は、軸受部32のより正確な振動や温度を検出するために、外輪間座42の軸受部32に面した一部に設けられた凹部46a,46bにそれぞれ取り付けられている。なお、加速度センサ44及び温度センサ45を取り付ける凹部46a,46bは、それぞれ独立して設けてもよいし、ひとつに設けてもよい。なお、軸受部32の内輪34の振動や温度を積極的に検出する場合は、内輪34と一体的に固定あるいは密着される内輪間座47にセンサ部33を取り付けるとよい。また、このセンサ部33を内輪34や外輪35やシールまたはシールド板351に直接組み込んだ軸受装置としてもよい。または、このセンサ部33を内輪34や外輪35に取り付けた部材に組み込んだ軸受装置としてもよい。
【0051】
また、図5に示すように処理部39は、アンプ48と、コンパレータ49と、信号処理部50と、ASK(Amplitude Shift Keying)変調器51とを備えている。アンプ48は、振動センサ44で検出された振動の信号を絶対値化する。コンパレータ49は、アンプ48で絶対値化された振動センサ44の信号と温度センサ45から出力された信号を予め設定されている閾値と比較し、その結果を出力する。信号処理部50は、コンパレータ49から出力された検出情報に、その検出情報を出力した加速度センサ44または温度センサ45に固有の識別情報を添付するとともに、検出情報のうち閾値を超えていると判断された検出情報にアラーム信号を添付して出力する。ASK変調器51は、信号処理部50から出力された信号を変調してディジタル化(2進化)する。なお、通信するための変調方式は、FSK(Frequency Shift Keying)方式などその他の方式であってもよい。通信装置40は、ASK変調器51でディジタル化された信号を電波に変換して信号Rとして送信する。また、検出部38、ASK変調器51、通信装置40などへの電力の供給を信号処理部50によって適宜制御し、検出時や信号出力時以外での電力の消費を抑えると、電池41の寿命を延ばすことができるのでよい。
【0052】
なお、電池41を交換することができない部位にセンサ部33が組み込まれる場合や、振動、温度を常時監視する場合は、内輪間座47に図示しない多極磁石あるいは平歯車状の凹凸を設け、フランジ43または外輪間座42に図示しないコイルあるいは磁石を併用したコイルを設けることにより発電機を構成し、電源回路を通じて検出部38、処理部39、通信装置40に電力を供給するのがよい。なお、電源回路に二次電池を併用すると、発電機が稼動していない状態でもワイヤレスセンサは稼動できるのでさらに好ましい。
【0053】
軸受装置31から送信された信号Rは、この軸受装置31が取り付けられている加工機や車両などの本体または離隔地に設けられた管理装置3によって受信される。なお、管理装置3については、第1の実施形態で説明の管理装置3と同様であるので、その説明を省略する。
【0054】
以上のように構成された軸受装置31は、検出情報を無線で出力するため、通信線が不要であり、加工装置の可動軸や車両などの軸受として容易に取り付けることができる。また、軸受装置31から送信された信号Rは、軸受装置31毎、または軸受装置31の検出部38毎、あるいは加速度センサ44や温度センサ45毎に固有の識別情報が付されているので、信号Rを同一の周波数で送信しても、この信号Rを受信する管理装置3が、軸受装置31毎、または検出部38毎、あるいは加速度センサ44や温度センサ45毎に個々の信号Rを容易に識別することができる。なお、振動センサ44と温度センサ45は、いずれか一方のみであってもよいし、これらの代わり、あるいはどちらか一方の代わりに回転速度センサを設けてもよい。また、振動センサ44と温度センサ45と回転速度センサのそれぞれが設けられていてもよい。
【0055】
さらに、受信対象となる軸受装置31を追加する場合でも、通信線を必要としないので容易に追加することができる。そして、送信されてくる信号Rには、識別信号が検出情報毎に付されているので、同じ周波数で信号Rが送信されても容易に分類することができる。
【0056】
また、この軸受装置31は、加速度センサ44や温度センサ45、または各検出部38、あるいは軸受装置31毎に固有の識別情報に対応する指令信号Qを受信すると、指令信号Qに指定された加速度センサ44や温度センサ45、または検出部38、あるいは軸受装置31の全ての検出部38の最新の情報を検出し、通信装置40からその識別情報とともに送信する。したがって、利用者が検出情報を得たいときに、その都度、任意の軸受装置31の最新の情報を容易に得ることができる。そして、この軸受装置31を第1の実施形態で説明の管理装置3とともに使用する監視装置とすると、第1の実施形態の監視装置1と同様の効果が得られる。
【0057】
また、第2の実施形態の軸受装置31の図5で示したブロック図を第1の実施形態のワイヤレスセンサ2の図1で示したブロック図で置き換えてもよいし、第1の実施形態のワイヤレスセンサ1の図1で示したブロック図を第2の実施形態の軸受装置31の図5で示したブロック図で置き換えてもよい。また、ブロック図は本実施例に限定するものではなく、同様の効果を奏するものであれば、他のブロック図でもよい。
【0058】
さらに、第2の実施形態の軸受装置31を図2の工作機械21や図3の加工機26の回転軸に取り付けて使用することで、同様の効果を得ることができる。
【0059】
また、回転形の転がり軸受だけではなく、リニアガイドやボールねじなどにも適用できる。リニアガイドやボールねじの場合は、可動部分が転がり軸受の回転輪に相当する。
【0060】
本発明に関する第3の実施形態について、自動車61の車輪62の回転数を監視するためにABS(Anti-lock Braking System)に用いられる監視装置63を例に、図6から図10を参照して説明する。なお、第1の実施形態及び第2の実施形態において説明したワイヤレスセンサ、軸受装置、管理装置、監視装置と同じ構成については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0061】
図6に示す監視装置63は、自動車61の各車輪62に取付けられるハブ軸受装置64と、車体65に取付けられる管理装置66とを備えている。ハブ軸受装置64は、図7に示すようにホイールベアリング67とパルサリング68とワイヤレスセンサ69とを備える。ホイールベアリング67は、外輪70と第1の内輪71と第2の内輪72とによる1組の軌道輪及びこれらに転接する2列の転動体73を備えている。外輪70は、ナックル部Kにボルトで固定されるフランジ74を備える。第1の内輪71は、ブレーキディスクを挟んで車輪62とボルトで固定されるフランジ75を備える。第1の内輪71は、内面にスプライン71aが形成されており、車軸76の外面に形成されたスプライン76aと嵌合し、ナット77で車軸76と固定される。第2の内輪72は、第1の内輪71に嵌合する。第1の内輪71と第2の内輪72が回転する軸線に沿う方向に近寄ると、ホイールベアリング67の予圧は、大きくなる。
【0062】
パルサリング68は、凸部78が周方向に沿って等間隔で形成されており、第2の内輪72に取付けられている。なお、パルサリング68は、ワイヤレスセンサ69と相対的に回転する位置に取付けられていればよいので、第2の内輪72以外に、車軸76とともに回転する回転側に取付けてもよい。また、ワイヤレスセンサ69が回転側に取付けられる場合、パルサリング68は固定側に取付けられる。
【0063】
ワイヤレスセンサ69は、図7に示すように外輪70に固定されており、図8に示すように回転速度を検出する速度センサモジュール79と、信号処理部80と、通信装置81と、電源回路82とを備える。なお、ワイヤレスセンサ69は、パルサリング68と相対的に回転する位置に、パルサリング68と対向して取付けられていればよいので、ナックル部Kに取付けてもよい。
【0064】
速度センサモジュール79は、図7に示すようにコイル83とポール84と磁石85と回転検出回路86とを備えている。コイル83は、中心にポール84が通されている。ポール84は、透磁率の大きい部材、たとえが鉄心などでできている。ポール84は、パルサリング68に形成された凸部78に一端84aが接近している。磁石85は、ポール84の他端84bに取付けられている。回転検出回路86は、コイル83の電流の変化を検出する。外輪70と第2の内輪72が相対的に回転すると、パルサリング68の凸部78は、ポール84を通る磁束密度を変化させる。コイル83は、ポール84の磁束密度の変化によって誘導電流を発生する。なお、パルサリング68は、コイル83の中を通る磁束密度を変化させればよいので、一定の間隔で穴が明けられたリングでもよいし、N極とS極とが一定の間隔で交互に着磁された多極磁石などの磁性体でもよい。多極磁石をパルサリングに用いる場合、ポール84の他端84bに取付ける磁石85は、無くてもよい。また、ポール84の形状は、コイルに誘導電流を発生させる形状であれば、棒状に限らず他の形状でもよい。
【0065】
信号処理部80は、回転検出回路86で検出された連続する正弦波形の信号を二値化した図9の(A)に示す矩形波の速度信号88に変換する。なお、図9の(A)は、図8の信号処理部が出力する速度信号を模式的に示し、(B)は、(A)の速度信号に基づいて搬送波を通信装置がFM変調方式で変調した送信信号を模式的に示し、(C)は、(A)の速度信号の周期にあわせて通信装置から送信される識別情報とこの識別情報に関連する速度情報のディジタル信号を模式的に示し、(D)は、(A)の速度信号の周期にあわせて送信される識別情報のディジタル信号を模式的に示す。また、信号処理部80は、カウンタ87を備えており、矩形波のパルスの山または谷の数を数えることで、ハブ軸受装置64の回転数や回転速度を求め、これを数値化した信号を速度信号として出力するようにしてもよい。回転数や回転速度を数値化した信号にすることで、送信途中でノイズなどにより速度信号88が変化してしまうことを防止することができる。
【0066】
通信装置81は、信号処理部80で作られた速度信号88を用いて、速度信号88の周波数より十分短い波長の搬送波を図9の(B)に示す送信信号89にFM変調し、信号Rとして送信する。この場合、各ハブ軸受装置64は、送信信号89を管理装置66が識別できるように異なる周波数の搬送波を使用する。
【0067】
電源回路82は、コイル83に発生する電流を利用して発電し、速度センサモジュール79と信号処理部80と通信装置81に電力を供給する。また、電源回路82は、二次電池90を備える。二次電池90は、ハブ軸受装置64の回転数が安定しているときに余剰電力を蓄電し、ハブ軸受装置64の回転数が低下して供給する電力を十分に発電できなくなったときに蓄電した電力を放電する。したがって、ワイヤレスセンサ69は、ケーブルによる電力の供給が不要であるとともに、一次電池などの交換が必要となる電源を搭載しないので、長期間の使用に適している。なお、電源回路82は、コイル83に発生する交流の電流を直流にする整流回路や、二次電池90の残存電力量などをモニターして充電と放電とを制御する充電回路などを備える。
【0068】
なお、ワイヤレスセンサ69は、信号をより確実に送信するために、検出した信号を増幅する増幅回路や、信号の波形を成形する波形成形回路を備えてもよい。また、回転検出回路86によって検出された信号の周波数が搬送波の周波数よりも十分に大きい、すなわち、車軸76の回転速度が速く、検出される信号が高周波である場合、搬送波に近い周波数となってしまい、搬送波をうまく変調できない可能性がある。このような場合、信号処理部80は、回転検出回路86によって検出された信号を二値化した後、カウンタ87で矩形波の山または谷の数を数え、車軸76の回転数や回転速度に比例する矩形波の信号を速度信号として出力する。そして、これを用いて搬送波を送信信号89に変調し、信号Rとして送信する。
【0069】
管理装置66は、図8に示すように通信機11と信号処理部12とRAM13とインターフェイス14とを備えている。通信機11は、各ハブ軸受装置64から送信されてくる信号Rを受信するとともに、各ハブ軸受装置64に対して指令信号Qを送信する。また、通信機11は、分波器91を内蔵している。分波器91は、ハブ軸受装置64ごとに異なる搬送波を基に、送信してくる送信信号89を分波する。信号処理部12は、ハブ軸受装置64ごとに設けられ、ハブ軸受装置64から送信されてきた送信信号89に含まれる速度信号88を分離する。なお、分波器を設ける変わりに、通信機11を複数、具体的にはハブ軸受装置64に対応する数設けてもよい。
【0070】
なお、ワイヤレスセンサ69と管理装置66の間で使用する信号の変調方式は、FM変調のほかに、FSK変調、AM変調、ASK変調などでもよい。
【0071】
以上のように構成された監視装置63は、自動車61が走行すると、車輪62とともにハブ軸受装置64の第1と第2の内輪71,72、車軸76、パルサリング68が回転する。パルサリング68は、ワイヤレスセンサ69と相対的に回転することによって、速度センサモジュール79に設けられたコイル83の中を通る磁束密度を変動させる。磁束密度が変動すると、コイル83は、正弦波状に変動する電流を発生する。発生した電流を利用して、電源回路82は、信号処理部80と通信装置81に電力を供給する。また、信号処理部80は、この電流の変動を検出し、二値化した後、パルスの数をカウンタ87で数え、速度信号88を出力する。通信装置81は、この速度信号88に基づいて、搬送波をFM変調した送信信号89を管理装置66へ向けて送信する。この場合、搬送波は、ハブ軸受装置64ごとに周波数が異なるので、送信された信号が混信することなく管理装置66で受信することができる。
【0072】
管理装置66は、受信した送信信号89をハブ軸受装置64ごとの信号に分類して、RAM13に保管する。また、インターフェイス14を通してRAM13に保管された速度信号に関する情報を必要に応じて自動車61の走行を制御する制御装置に出力する。
【0073】
車輪が多いトラックや列車など管理すべき車輪が離れている車両に監視装置63を適用する場合、図6のA部のようにワイヤレスセンサ69に近い車体65に管理装置66の通信機11を配置し、ワイヤレスセンサ69と通信する。この場合、通信機11から管理装置66までの配線Wは、車体65に沿って取付けられており、自動車61が走行することで屈曲されない。このように、ハブ軸受装置64のワイヤレスセンサ69近くに、対応する通信機11を配置し、かつ、同じ自動車61の中で他の車輪62に取付けられたハブ軸受装置64のワイヤレスセンサ69の送信信号89と混信することがない出力の送信信号89で通信する場合、各ハブ軸受装置64の通信装置81に設定される搬送波の周波数は同じ周波数でもよい。
【0074】
ワイヤレスセンサ69は、ハブ軸受装置64の検出部である速度センサモジュール79で検出された情報またはこれに関係する情報をディジタル情報に変換し、図9の(C)に示すように、ディジタル信号92の信号Rを送信してもよい。この場合、速度センサモジュールで検出された情報またはこれに関係する情報として、速度センサモジュール79で検出された信号に基づいて作られる速度信号88、この速度信号88のパルスの数をカウンタ87で数えてハブ軸受装置64の回転数や回転速度などの数値に置き換えた速度情報93、各速度センサモジュールに対応する識別情報94、速度情報93が検出された時刻などが含まれる。なお、図9の(C)においては、速度情報93と識別情報94をディジタル信号92として送信する場合を示している。
【0075】
このようにすると、管理装置66がハブ軸受装置64から送信されてくる速度情報93を識別しやすくなるのでよい。また、ディジタル信号92で速度情報89を送信することで、周囲のノイズなどによりディジタル信号92が劣化しても受信側で再生することができ、速度情報89の欠落を防止することができる。速度情報89に識別情報94を添付することで、同じ周波数の搬送波で各ハブ軸受装置64の速度情報93を送信することができるようになるので、管理装置66の分波器91をなくすことができる。この場合、管理装置66は、識別情報94に応じて速度情報93を処理する回路を信号処理部12に含む。速度情報93は、ワイヤレスセンサ69の信号処理部80のカウンタ87で数えられた速度信号88のパルスの数の情報であってもよいし、パルスの数を回転速度や回転数に換算した情報であってもよい。識別情報94を送信した後これに続いて速度情報93を送信すると、識別情報94と速度情報93を関連付けやすい。識別情報94と速度情報93を含むディジタル信号92は、速度信号88のパルスにあわせて出力される。
【0076】
また、ワイヤレスセンサ69は、図9の(D)のように速度信号88にあわせて識別信号94のみを信号Rとして送信してもよい。この場合、管理装置66の信号処理部12にカウンタを設け、ハブ軸受装置64ごとに送信されてくる識別情報94の周期を測定することで、各ハブ軸受装置64で検出された速度信号88を再生する。このようにすることによって、ハブ軸受装置ごとの速度信号88をより少ない情報量で混信することなく送信することができる。また、識別情報94の送信の頻度は、ハブ軸受装置64が1回転するごととしてもよいし、パルサリング68によって速度センサモジュール79のコイル83に発生する電流の1周期、あるいは任意の周期ごととしてもよい。
【0077】
監視装置63は、各ハブ軸受装置64に対応する識別情報94を適用することで、識別情報94のビット数に応じた数のハブ軸受装置64を管理装置66で識別することができるようになる。したがって、トラックや列車など車輪の多い車両にも容易に適用することができる。また、ビット数を増やし、識別できる情報数を増やすことで、他の車両のハブ軸受装置64から送信される速度情報93との混信を防止することができる。他の車両のハブ軸受装置から送信される信号や情報との混信を防止することを考慮すると、識別情報94の具体的なビット数は、16ビット、32ビット、64ビット、またはそれ以上であることが好ましい。
【0078】
なお、速度センサモジュール79は、コイル83とその中心に配置される棒状のポール84とを備えたものであってもよいし、周方向に沿ってパルサリング68の凸部78ごとに蛇行する環状のコイルであってもよい。パルサリング68と速度センサモジュール79とは、転動体73の間に配置してもよい。また、速度センサモジュールの形態は、第3の実施形態のハブ軸受装置に適用して示したパッシブタイプでもよいし、アクティブタイプでもよい。アクティブタイプの速度センサモジュールを適用する場合、発電用のコイルを別途設ける。
【0079】
図7に示すハブ軸受装置64は、球を介した球軸受を適用しているが、円筒ころ軸受や円錐ころ軸受であってもよいし、単列の軸受を組み合わせて使用してもよい。また、速度センサモジュール79とともに第1の実施形態で示した振動センサモジュール4、温度センサモジュール5及び第2の実施形態で示した振動センサ44、温度センサ45を併設してもよい。信号の伝送方式は、電波に限らず超音波、赤外線、光などを用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の第1の実施形態に関する監視装置のブロック図。
【図2】図1の監視装置を工作機械に適用した状態を示す斜視図。
【図3】図1の監視装置を複数の加工機に適用した状態を示す斜視図。
【図4】(A)は、本発明の第2の実施形態に関する軸受装置を示す断面図。(B)は、図4(A)のF4-F4で示す軸受装置のセンサ部の側面図。
【図5】図4の軸受装置のブロック図。
【図6】本発明の第3の実施形態に関する監視装置を自動車に適用した状態を模式的に示す図。
【図7】図6の監視装置に使用されるハブ軸受装置の断面図。
【図8】図6の監視装置のブロック図。
【図9】図8の信号処理部が出力する速度信号、送信信号、速度情報のディジタル信号、及び識別情報のディジタル信号を模式的に示す波形図。
【符号の説明】
【0081】
1,63…監視装置
2,69…ワイヤレスセンサ
3,66…管理装置
4…振動センサモジュール(振動センサ)
5…温度センサモジュール(温度センサ)
7…A/Dコンバータ(情報処理部)
8…RAM(情報処理部)
9…信号処理部(情報処理部)
10…通信装置
11…通信機
12…信号処理部
31…軸受装置
33…センサ部(ワイヤレスセンサ)
34…内輪
35…外輪
36…転動体
38…検出部
39…処理部(情報処理部)
40…通信装置
44…振動センサ
45…温度センサ
64・・・ハブ軸受装置(軸受装置)
68…パルサリング
70…外輪(第2の軌道輪)
71…第1の内輪
72…第2の内輪(第1の軌道輪)
73…転動体
79…速度センサモジュール(回転速度センサ)
92…ディジタル信号
93…速度情報
94…識別情報
Q…指令信号
R…信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
転動体を介して相対的に回転する1組の軌道輪と、
これら1組の軌道輪の内の第1の軌道輪に設けられるパルサリングと、
このパルサリングと相対的に回転する第2の軌道輪に前記パルサリングと対向して取付けられる、回転速度センサを有するワイヤレスセンサと、
を具備したことを特徴とする軸受装置。
【請求項2】
前記ワイヤレスセンサに、
前記パルサリングと前記ワイヤレスセンサとが相対的に回転することによって前記ワイヤレスセンサの回転速度センサが検出する周期信号に関する情報を変調して送信する通信装置を具備したことを特徴とする請求項1に記載の軸受装置。
【請求項3】
前記通信装置は、
前記パルサリングと前記ワイヤレスセンサが相対的に回転することによって回転速度センサに発生する周期信号の波長または周波数に基づいて情報処理部が求めた軸受装置の回転数と回転速度の内の少なくとも一方を送信する
ことを特徴とする請求項2に記載の軸受装置。
【請求項4】
前記通信装置は、
前記パルサリングと前記ワイヤレスセンサが相対的に回転することによって回転速度センサに発生する周期信号の1周期の区切りごとに少なくとも固有の識別情報を送信する
ことを特徴とする請求項2に記載の軸受装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2007−323665(P2007−323665A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−191357(P2007−191357)
【出願日】平成19年7月23日(2007.7.23)
【分割の表示】特願2002−86611(P2002−86611)の分割
【原出願日】平成14年3月26日(2002.3.26)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】