説明

送風装置およびそれを搭載した電気機器

【課題】圧力損失など静圧が変化しても風量の変化量が極めて少ない高精度な風量−静圧特性を実現した上で、湿度の変化に応じて、湿度が高い場合は送風量を多くできる送風装置の提供を目的としている。
【解決手段】磁石回転子3の磁極部3aをポリアミド6樹脂にて形成することで、同一分子長においてアミド基が多いために、アミド基と水素結合する水分子が、さらに湿度が高い領域では周囲の水分子を引きつけ、水分子−水分子の水素結合を形成して膨潤するため、磁石回転子3の磁極部3aの外径は大きくなり、エアーギャップ18は小さくなることとなり、駆動コイル2に誘起される誘起電圧は高くなり、駆動コイル2に供給する電流が同一であれば、誘起電圧が高くなった分、軸トルクは高くなるので、常湿時に対して高湿時には換気風量が増加する風量−静圧特性が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主にレンジフードや天井埋め込み型等の排気用および給気用の換気装置や、加湿機、除湿機、冷凍機器、空気調和機、給湯機、ファンフィルタユニットなどに搭載する送風装置およびその送風装置を搭載した電気機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、換気装置等の電気機器に搭載する送風装置においては、低価格化、高効率化、静音化をした上で、ダクト配管形態による圧力損失や外風圧、フィルタ等の目詰まりによる圧力損失の変化の影響を受けることなく、居室の状況に応じて最適な風量で換気ができるような制御性の良い送風装置が求められている。
【0003】
従来、この種の送風装置は、特許文献1に開示された構成のものが知られている。
【0004】
以下、その送風装置について図8を参照しながら説明する。
【0005】
図に示すように、送風装置110はブラシレスDCモータ111を搭載した遠心型送風機110aを内蔵し、ブラシレスDCモータ111は駆動ロジック制御手段105とインバータ回路106にて駆動制御され、インバータ回路106への電源を供給する低圧直流電圧変換手段108の出力電圧−電流特性を出力電圧が高くなるにしたがい、電流が線形的に増加するよう制御する風量制御手段132を備えた構成としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−100574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような従来の送風装置によれば、快適な室内空気質の実現の観点から、室内の湿度に応じて、湿度が低い場合に対して湿度が高い場合は一定風量であっても送風量を増やすことが要望される換気装置等に搭載した場合、湿度が低い場合の送風量と、湿度が高い場合の送風量を変更できないという課題があり、必要とする回路スペースを大きくすることなく、特別なセンサや、マイクロコンピュータを用いることなく、風量−静圧特性や、複数の風量設定などの仕様調整を容易にでき、湿度の変化に応じて送風量を制御できることが要求されている。
【0008】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、仕様調整の簡素化、回路の小型化、高品質化、圧力損失など静圧が変化しても風量の変化量が極めて少ない高精度な風量−静圧特性を実現した上で、湿度の変化に応じて、湿度が高い場合は送風量を多くできる送風装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そして、この目的を達成するために、本発明は、駆動コイルを巻装した固定子にエアーギャップを介して回転自在に配置された磁石回転子にて構成され、この磁石回転子の磁極部を水素結合により膨潤するプラスチックマグネットにて形成するブラシレスDCモータを搭載した遠心型送風機と、上段と下段からなり、それぞれ複数のスイッチング素子でブリッジ接続されたインバータ回路と、このインバータ回路に直流電圧を印加するチョッパ回路にて形成された直流電圧変換手段と、この直流電圧変換手段にて生成した直流電圧を、前記インバータ回路を介して前記ブラシレスDCモータの駆動コイルに所定の方向と順序で順次全波通電するための駆動ロジック制御手段と、前記インバータ回路に供給する平均電流を前記直流電圧変換手段の出力を可変して略一定に制御する供給電流値制御手段と、この供給電流値制御手段によって略一定に制御する平均電流値を指示する電流値指示手段と、前記直流電圧変換手段にて生成した直流電圧の所定電圧時に、前記電流値指示手段が指示する基準電流値を指示する基準電流値指示手段と、前記電流値指示手段には前記直流電圧変換手段にて生成した直流電圧の電圧値に応じて、前記電流値指示手段によって指示する平均電流値との相関関係を指示する相関関係指示手段を配し、この相関関係指示手段は前記基準電流値指示手段にて指示された基準電流値に対して線形あるいは非線形的に変化させて前記電流値指示手段によって指示する平均電流値を決定し、前記磁石回転子の前記磁極部は基準湿度よりも高湿になることで、吸湿によって膨潤することにより、前記エアーギャップが小さくなることを特徴とする送風装置としたものであり、これにより所期の目的を達成するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、駆動コイルを巻装した固定子にエアーギャップを介して回転自在に配置された磁石回転子にて構成され、この磁石回転子の磁極部を水素結合により膨潤するプラスチックマグネットにて形成するブラシレスDCモータを搭載した遠心型送風機と、インバータ回路に直流電圧を印加するチョッパ回路にて形成された直流電圧変換手段と、前記インバータ回路に供給する平均電流を前記直流電圧変換手段の出力を可変して略一定に制御する供給電流値制御手段と、この供給電流値制御手段によって略一定に制御する平均電流値を指示する電流値指示手段と、前記直流電圧変換手段にて生成した直流電圧の所定電圧時に、前記電流値指示手段が指示する基準電流値を指示する基準電流値指示手段と、前記電流値指示手段には前記直流電圧変換手段にて生成した直流電圧の電圧値に応じて、前記電流値指示手段によって指示する平均電流値との相関関係を指示する相関関係指示手段を配し、この相関関係指示手段は前記基準電流値指示手段にて指示された基準電流値に対して線形あるいは非線形的に変化させて前記電流値指示手段によって指示する平均電流値を決定し、前記磁石回転子の前記磁極部は基準湿度よりも高湿になることで、吸湿によって膨潤することにより、前記エアーギャップが小さくなることを特徴とする送風装置という構成にしたことにより、回転数が上昇するにしたがって軸トルクが一段と大きくなるブラシレスDCモータの回転数−トルク特性は、基準湿度よりも高湿になることで、吸湿によって膨潤することにより、エアーギャップが小さくなり、駆動コイルに誘起される誘起電圧が高くなるため、同一回転数での軸トルクは高くなるので、マイクロコンピュータや湿度センサなどの特別なセンサを使用することなく、風量一定制御における風量の増加を実現できる送風装置および電気機器が提供できるという効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態1における送風装置を内蔵した換気装置の構成を示すブロック図
【図2】同送風装置に搭載するブラシレスDCモータの一例を示す断面図
【図3】同送風装置に搭載するブラシレスDCモータの出力電圧−電流特性の一例を示すグラフ
【図4】同送風装置に搭載するブラシレスDCモータの回転数−トルク特性の一例を示すグラフ
【図5】同送風装置を内蔵した換気装置の風量−静圧特性の一例を示すグラフ
【図6】同送風装置を内蔵した換気装置を示す三面図
【図7】本発明の実施の形態2における送風装置を内蔵した換気装置の構成を示すブロック図
【図8】従来の送風装置を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の請求項1記載の送風装置は、駆動コイルを巻装した固定子にエアーギャップを介して回転自在に配置された磁石回転子にて構成され、この磁石回転子の磁極部を水素結合により膨潤するプラスチックマグネットにて形成するブラシレスDCモータを搭載した遠心型送風機と、上段と下段からなり、それぞれ複数のスイッチング素子でブリッジ接続されたインバータ回路と、このインバータ回路に直流電圧を印加するチョッパ回路にて形成された直流電圧変換手段と、この直流電圧変換手段にて生成した直流電圧を、前記インバータ回路を介して前記ブラシレスDCモータの駆動コイルに所定の方向と順序で順次全波通電するための駆動ロジック制御手段と、前記インバータ回路に供給する平均電流を前記直流電圧変換手段の出力を可変して略一定に制御する供給電流値制御手段と、この供給電流値制御手段によって略一定に制御する平均電流値を指示する電流値指示手段と、前記直流電圧変換手段にて生成した直流電圧の所定電圧時に、前記電流値指示手段が指示する基準電流値を指示する基準電流値指示手段と、前記電流値指示手段には前記直流電圧変換手段にて生成した直流電圧の電圧値に応じて、前記電流値指示手段によって指示する平均電流値との相関関係を指示する相関関係指示手段を配し、この相関関係指示手段は前記基準電流値指示手段にて指示された基準電流値に対して線形あるいは非線形的に変化させて前記電流値指示手段によって指示する平均電流値を決定し、前記磁石回転子の前記磁極部は基準湿度よりも高湿になることで、吸湿によって膨潤することにより、前記エアーギャップが小さくなることを特徴とする送風装置の構成を有する。これにより、回転数が上昇するにしたがって軸トルクが一段と大きくなるブラシレスDCモータの回転数−トルク特性は、基準湿度よりも高湿になることで、吸湿によって膨潤することにより、エアーギャップが小さくなり、駆動コイルに誘起される誘起電圧が高くなるため、同一回転数での軸トルクは高くなるので、マイクロコンピュータや、湿度センサなどの特別なセンサを使用することなく、風量一定制御における風量の増加を実現できる送風装置が提供できるという効果を奏する。
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0014】
(実施の形態1)
図1〜図6に示すように、10はブラシレスDCモータ11を搭載した遠心型送風機10aを内蔵した送風装置で、外部電源に接続されている。1は送風装置10を内蔵した換気装置である。送風装置10によって吸い込まれた、煙草の煙や調理等で発生し、汚れた室内空気は換気装置1の吐出口、ダクト23を介して建物の壁を貫通して屋外に排出される。ブラシレスDCモータ11の磁石回転子3の磁極部3aはポリアミド6樹脂を主バインダとし、エラストマを補助バインダとするプラスチックマグネットを射出成形時に極配向させて形成しており、磁石回転子3と駆動コイル2を巻装した固定子19との間にエアーギャップ18を形成している。ブラシレスDCモータ11の外被は炭酸カルシウムや水酸化アルミニウムやワラストナイトなどの充填材とガラス繊維を含有する不飽和ポリエステル等の樹脂でモールドされている。このモールド樹脂は、ホール素子4と、磁束密度分布波形合成手段12と、インバータ回路6と、駆動ロジック制御手段5と、電流波形制御手段7を内蔵している。ホール素子4は、磁石回転子3の磁極位置と磁束密度分布を検知する磁極位置検出手段となる。磁束密度分布波形合成手段12は、このホール素子4の出力波形を合成する。インバータ回路6は、上段側スイッチング素子Q1、Q3、Q5と下段側スイッチング素子Q2、Q4、Q6をブリッジ接続したものである。駆動ロジック制御手段5は、磁束密度分布波形合成手段12の出力に基づいて駆動コイル2に所定の方向と順序で順次全波通電となるようスイッチング素子Q1〜Q6のON/OFFを制御する。電流波形制御手段7は、駆動コイル2の各相電流波形が磁束密度分布波形合成手段12によって高調波成分を除去した波形に略相似形の略正弦波になるように、スイッチング素子Q1〜Q6が飽和に近い非飽和状態になるようにフィードバックしながら出力バイアス電流を調整する。ここで、磁石回転子3の磁極部3aは極異方性磁石となっているため、駆動コイル2に誘起される誘起電圧は略正弦波状の波形となり、ホール素子4の検出波形も略正弦波状の波形となり、磁束密度分布波形合成手段12は駆動コイル2のu相に供給する電流波形の高調波成分を除去するために、ホール素子4のu相波形からv相波形を減算し、同様に駆動コイル2のv相にはホール素子4のv相波形からw相波形を減算し、駆動コイルのw相にはホール素子4のw相波形からu相波形を減算する。そして、電流波形制御手段7は駆動コイル2の各相電流波形が磁束密度分布波形合成手段12によって高調波成分を除去した波形に略相似形になるように、スイッチング素子Q1〜Q6が飽和に近い非飽和状態になるようにフィードバックしながら出力バイアス電流を調整するので、インバータ回路6に供給される電流には非通電区間がなく、電流波形には急峻な変化が無くなるとともにリプルの発生が抑制されることとなる。そして、ブラシレスDCモータ11の外部には、昇降圧型のチョッパ回路にて構成された直流電圧変換手段8と、インバータ回路6に供給される電流を検知する電流検出手段15と、直流電圧変換手段8にて生成した直流電圧の所定電圧時にインバータ回路6に供給される基準電流値を設定する基準電流値指示手段16と、相関関係指示手段13と、電流検出手段15にて検出するインバータ回路6に供給される平均電流値が電流値指示手段9にて指示された電流値と同等になるように、直流電圧値変更手段14を制御することにより、直流電圧変換手段8から出力される電圧を可変しながらフィードバック制御する供給電流値制御手段17と、送風装置10の複数の運転風量を指示する風量指示手段20と、基準電流値指示変更手段21と、相関関係変更手段22とを配し、相関関係指示手段13は直流電圧変換手段8の出力電圧−電流特性が図3に示すような特性になるように、出力電圧の変化をフィードバックして、直流電圧変換手段8の出力する電圧値の大きさに応じて、インバータ回路6に供給する電流を基準電流値に対して線形変化(比例)させて電流値指示手段9に指示する。この時、インバータ回路6の耐圧とキックバック電圧を考慮した上でインバータ回路6に印加する直流電圧に上限を設け、電流を制御することなく電圧一定で運転する区間を設けている。相関関係指示手段13は接続する抵抗R1の抵抗値の大きさにより、基準電流値指示手段16にて指示された基準電流値に対して変化させる変化量を決定し、基準電流値指示手段16は接続する抵抗R2の抵抗値の大きさによって、直流電圧変換手段8にて生成した直流電圧の所定電圧時にインバータ回路6に供給される基準電流値を決定する。風量指示手段20はトルク特性変更手段24を制御することによって、基準電流値指示変更手段21により、基準電流値指示手段16に接続する抵抗R2の抵抗値を変更するとともに、相関関係変更手段22により、相関関係指示手段13に接続する抵抗R1の抵抗値を変更する構成である。
【0015】
このような本発明の送風装置10によれば、相関関係指示手段13が直流電圧変換手段8の出力する電圧値の大きさに応じて、インバータ回路6に供給する電流を基準電流値に対して線形変化させて電流値指示手段9に指示するので、回転数が高くなれば供給電流も大きくなり、逆に回転数が低くなれば供給電流も小さくなる。そのため、図4に示すように、ブラシレスDCモータ11の回転数−トルク特性は回転数が上昇するにしたがって軸トルクが大きくなる特性が得られることになる。この特性によって、送風装置10を搭載する換気装置1では、図5に示すような外風圧やダクト長さなどの圧力損失が変化しても風量が大きく変化しない風量−静圧特性が得られる。さらに、磁石回転子3の磁極部3aを形成するポリアミド6樹脂は、同一分子長においてアミド基が多く、アミド基と水素結合する水分子が、さらに湿度が高い領域では周囲の水分子を引きつけ、水分子−水分子の水素結合を形成して膨潤する。そのため、磁石回転子3の磁極部3aの外径は大きくなり、エアーギャップ18は小さくなることとなる。そして、駆動コイル2に誘起される誘起電圧は高くなり、駆動コイル2に供給する電流が同一であれば、誘起電圧が高くなった分、軸トルクは高くなるので、図5に示す風量−静圧特性は、基準湿度時(常湿時)に対して高湿時には換気風量が増加する風量−静圧特性が得られる。
【0016】
また、相関関係指示手段13に接続する抵抗R1の抵抗値の大きさにより、基準電流値指示手段16にて指示された基準電流値に対して変化させる変化量を決定する。そのため、ブラシレスDCモータ11の回転数−トルク特性における、回転数が上昇するにしたがって軸トルクが大きくなる度合いを変更することができる。そして、換気装置1の機内抵抗の変更への対応のための仕様調整や、遠心型送風機10aの羽根径変更・ブレード枚数変更・ブレード仕様変更などによる負荷変更への対応のための仕様調整や、送風装置10の風量−静圧特性の調整ができる。従って、仕様調整に要する工数の大幅な削減ができるとともに、ブラシレスDCモータ11や主要制御回路の標準化を可能にできることとなる。
【0017】
また、基準電流値指示手段16に接続する抵抗R2の抵抗値の大きさにより、直流電圧変換手段8にて生成した直流電圧の所定電圧時にインバータ回路6に供給される基準電流値を決定するため、換気装置1の機内抵抗の変更への対応のための仕様調整や、換気装置1の風量−静圧特性における風量の調整ができることから、仕様調整に要する工数の大幅な削減ができるとともに、ブラシレスDCモータや主要制御回路の標準化を可能にできることとなる。
【0018】
また、風量指示手段20の指示状態によって、基準電流値指示手段16に接続する抵抗R2の抵抗値を変更するため、風量指示手段20の風量指示に応じた風量調整が容易にできる。そのため、換気装置1を設置する居室などの要求される必要風量に応じて抵抗R2のみの調整で可能となるので、仕様調整に要する工数の大幅な削減ができるとともに、ブラシレスDCモータや主要制御回路の標準化を可能にできることとなる。
【0019】
また、風量指示手段20の指示状態によって、相関関係変更手段22は、相関関係指示手段13に接続する抵抗R1の抵抗値を変更するため、送風装置10が要求される風量−静圧特性に応じた風量特性が容易にできる。そのため、換気装置1を設置する居室などの要求される必要風量に応じて抵抗R1のみの調整で可能となるので、仕様調整に要する工数の大幅な削減ができるとともに、ブラシレスDCモータや主要制御回路の標準化を可能にできることとなる。
【0020】
また、駆動ロジック制御手段5は駆動コイル2に非通電区間がない電流を供給するため、インバータ回路に供給される電流のリプルが大幅に減少し、電流検出手段15による電流検出精度の高精度化による風量精度の高精度化と、モータのトルクリプル低減による低振動化を実現した送風装置10および換気装置1を可能にできることとなる。
【0021】
また、ホール素子4の検知する波形が極異方性磁石によって駆動コイル2に誘起される誘起電圧波形と略相似となるようにホール素子4と磁石の空隙を設定して配置し、電流波形制御手段7はホール素子4が検知した磁束密度分布波形に略相似形の電流を駆動コイル2に流すことにより、誘起電圧波形と電流波形が略相似となるので、トルクリプルおよびトルク変化率を一層低く抑えることができるとともに、モータ効率が大幅に向上するため、低騒音化、高効率化を実現した送風装置10および換気装置1が得られる。
【0022】
また、磁石回転子3の磁極部を極異方性磁石とすることにより、誘起電圧波形も電流波形もともに正弦波となることから、トルクリプルおよびトルク変化率をより一層低く抑えることができるとともに、モータ効率も大幅に向上するので、静音化、高効率化を実現した送風装置10および換気装置1が得られる。
【0023】
また、磁束密度分布波形合成手段12が、ホール素子4が検知したu相、v相、w相の波形を合成することにより、各相のホール素子4のばらつきの影響が小さくなるとともに、u相、v相、w相各相の磁束密度分布波形は、基本的には位相が単にずれただけの波形であることから、2相を減算合成することにより、検知した磁束密度分布波形に含まれた高調波成分が除去されるので、回転むらの発生が抑制できるとともに、トルクリプルおよびトルク変化率をさらに低く抑えることができるため、高品質化を実現した送風装置10および換気装置1が得られる。
【0024】
なお、本実施の形態1では相関関係指示手段13が直流電圧変換手段8の出力する電圧値の大きさに応じて、インバータ回路6に供給する電流を基準設定値に対して線形変化させて指示する構成としたが、非線形変化(高次式比例)させる構成でも良く、ファン負荷などの負荷量から、回転数−トルク特性の特性カーブの最適な傾きとなるように適宜設定することによって同様の作用効果を得ることができる。
【0025】
また、本実施の形態1では駆動コイル2に供給される電流波形を、誘起電圧波形に略相似形となるように構成したが、用途、商品の要求される風量精度や騒音レベルに応じて、120度矩形波通電や、140度、150度通電のように広角通電方式や、二相変調による正弦波駆動方式としても良く、モータの回転数−トルク特性は回転数が上昇するにしたがって軸トルクが大きくなる特性が得られることに差異は生じない。
【0026】
また、本実施の形態1では磁束密度分布検知手段としてホール素子4を用いた構成としたが、非通電相に誘起される誘起電圧や、電流を検知して磁石回転子に対する通電位相を決めるセンサレス方式としても良く、その作用効果に差異を生じない。
【0027】
また、本実施の形態1ではスイッチング素子Q1〜Q6が飽和に近い非飽和状態になるようにフィードバックしながら出力バイアス電流を調整したが、スイッチング素子Q1〜Q6をPWM制御して電流波形を制御しても良く、その場合にはスイッチング素子Q1〜Q6の損失が低減できるので、スイッチング素子Q1〜Q6の発熱が抑制され、使用可能な負荷トルクの範囲がさらに広くできる送風装置が得られることとなる。
【0028】
また、本実施の形態1では昇降圧型のチョッパ回路にて直流電圧変換手段8を構成したが、降圧型のチョッパ回路にて構成しても良く、その作用効果に差異を生じない。
【0029】
また、本実施の形態1では、送風装置10には外部電源より直流電圧を入力する構成としたが、商用の交流電圧を入力し、整流平滑してから直流電圧変換手段8に供給する構成としても良く、その作用効果に差異を生じない。
【0030】
また、本実施の形態1では、風量指示手段20の指示状態によって、トルク特性変更手段24が基準電流値指示変更手段21により、基準電流値指示手段16に接続する抵抗R2の抵抗値を変更するとともに、相関関係変更手段22により、相関関係指示手段13に接続する抵抗R1の抵抗値を変更制御する構成としたが、基準電流値指示変更手段21もしくは相関関係変更手段22のどちらかのみを制御する構成としてもよく、その作用効果に差異を生じない。
【0031】
(実施の形態2)
図7に示すように、25は商用交流電源を接続する交流電源接続手段で、強出力接続端子25a、弱出力接続端子25b、共通接続端子25cより成り、実施の形態1と同一部分には同一番号を付して詳細な説明は省略する。26は外部スイッチで、強出力接続端子25aまたは弱出力接続端子25bのどちらかに接続する構成で、入力された商用交流電源は整流手段27および平滑手段28にて整流平滑されて、インバータ回路6に印加される。29は風量指示手段であって、外部スイッチ26が強出力接続端子25aまたは弱出力接続端子25bのどちらに接続されているのかを検知し、トルク特性変更手段24が風量指示手段29の出力信号を受けて、基準電流値指示変更手段21と、相関関係変更手段22へ信号を送る。その他の送風装置10を構成するブラシレスDCモータ11、インバータ回路6、駆動ロジック制御手段5、電流検出手段15、基準電流値指示手段16、相関関係指示手段13などの構成は実施の形態1と同じである。
【0032】
このような本発明の送風装置10によれば、交流電源接続手段25において、強出力接続端子25aと弱出力接続端子25bのように2箇所設け、風量指示手段29が強出力接続端子25aに接続されているのか、弱出力接続端子25bに接続されているのかを検知し、その結果に基づいて風量指示手段29がトルク特性変更手段24に基準電流値指示変更手段21を制御して基準電流値指示手段16に接続する抵抗R2の抵抗値を変更する指示をするため、インバータ回路6に供給する電流の基準設定値が変更されることにより、2段階の風量が得られるので、交流電源ラインの接続切り替えによる速度調節が可能な送風装置が得られる。ここで、交流電源接続手段25において、その接続端子の数量に応じて、風量指示手段29の指示により、トルク特性変更手段24が基準設定値を変更すれば、接続端子の数だけ常湿時に対して高湿時には換気風量が増加する風量−静圧特性が得られることとなる。
【0033】
また、風量指示手段29が相関関係変更手段22を制御して相関関係指示手段13に接続する抵抗R1の抵抗値を変更するため、交流電源ラインの接続切り替えによる風量−静圧特性の変更が容易にできる送風装置が得られる。ここで、交流電源接続手段25において、その接続端子の数量に応じて、風量指示手段29の指示により、トルク特性変更手段24が相関関係を変更すれば、接続端子の数だけ常湿時に対して高湿時には換気風量が増加する風量−静圧特性が得られることとなる。
【0034】
また、実施の形態1および実施の形態2に示した構成と同様の構成における作用効果に差異は生じない。
【0035】
なお、風量指示手段29の指示により、トルク特性変更手段24が基準電流値指示変更手段21により、基準電流値指示手段16に接続する抵抗R2の抵抗値を変更するとともに、相関関係変更手段22により、相関関係指示手段13に接続する抵抗R1の抵抗値を変更制御する構成としたが、基準電流値指示変更手段21もしくは相関関係変更手段22のどちらかのみを制御する構成としてもよく、その作用効果に差異を生じない。
【産業上の利用可能性】
【0036】
以上のように、本発明にかかる送風装置は、圧力損失の影響を受けることなく、風量−静圧特性において、静圧に関係なく風量一定の特性が得られ、急な静圧変化においても風量の変化量を少なくできることから、送風装置を内蔵し、静圧の変化があっても、大きな風量変化が無いことが要求される電気機器である換気装置、給湯機、エアコンなどの空気調和機、空気清浄機、除湿機、乾燥機、ファンフィルタユニットなどへの搭載が有用である。
【符号の説明】
【0037】
1 換気装置
2 駆動コイル
3 磁石回転子
3a 磁極部
4 ホール素子
5 駆動ロジック制御手段
6 インバータ回路
7 電流波形制御手段
8 直流電圧変換手段
9 電流値指示手段
10 送風装置
10a 遠心型送風機
11 ブラシレスDCモータ
12 磁束密度分布波形合成手段
13 相関関係指示手段
14 直流電圧値変更手段
15 電流検出手段
16 基準電流値指示手段
17 供給電流値制御手段
18 エアーギャップ
19 固定子
20 風量指示手段
21 基準電流値指示変更手段
22 相関関係変更手段
23 ダクト
24 トルク特性変更手段
25 交流電源接続手段
25a 強出力接続端子
25b 弱出力接続端子
25c 共通接続端子
26 外部スイッチ
27 整流手段
28 平滑手段
29 風量指示手段
Q1 上段側スイッチング素子
Q2 下段側スイッチング素子
Q3 上段側スイッチング素子
Q4 下段側スイッチング素子
Q5 上段側スイッチング素子
Q6 下段側スイッチング素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動コイルを巻装した固定子にエアーギャップを介して回転自在に配置された磁石回転子にて構成され、この磁石回転子の磁石を水素結合により膨潤するプラスチックマグネットにて形成するブラシレスDCモータを搭載した遠心型送風機と、上段と下段からなり、それぞれ複数のスイッチング素子でブリッジ接続されたインバータ回路と、このインバータ回路に直流電圧を印加するチョッパ回路にて形成された直流電圧変換手段と、この直流電圧変換手段にて生成した直流電圧を、前記インバータ回路を介して前記ブラシレスDCモータの駆動コイルに所定の方向と順序で順次全波通電するための駆動ロジック制御手段と、前記インバータ回路に供給する平均電流を前記直流電圧変換手段の出力を可変して略一定に制御する供給電流値制御手段と、この供給電流値制御手段によって略一定に制御する平均電流値を指示する電流値指示手段と、前記直流電圧変換手段にて生成した直流電圧の所定電圧時に、前記電流値指示手段が指示する基準電流値を指示する基準電流値指示手段と、前記電流値指示手段には前記直流電圧変換手段にて生成した直流電圧の電圧値に応じて、前記電流値指示手段によって指示する平均電流値との相関関係を指示する相関関係指示手段を配し、この相関関係指示手段は前記基準電流値指示手段にて指示された基準電流値に対して線形あるいは非線形的に変化させて前記電流値指示手段によって指示する平均電流値を決定し、前記磁石回転子の前記磁石は基準湿度よりも高湿になることで、吸湿によって膨潤することにより、前記エアーギャップが小さくなることを特徴とする送風装置。
【請求項2】
複数の運転風量を指示する風量指示手段と、この風量指示手段によって指示された各風量で一定運転するために、基準電流値指示変更手段を制御するトルク特性変更手段を設けたことを特徴とする請求項1記載の送風装置。
【請求項3】
前記トルク特性変更手段は、前記風量指示手段の指示によって相関関係変更手段を制御することを特徴とする請求項2記載の送風装置。
【請求項4】
交流電源を接続する交流電源接続手段を複数設け、この交流電源接続手段への接続箇所に応じて、前記風量指示手段によって指示する風量を変更することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の送風装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の送風装置を搭載した電気機器。
【請求項6】
請求項5記載の電気機器は換気装置、除湿機、加湿機、空気調和機、給湯機、ファンフィルタユニットのいずれかであることを特徴とする電気機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−157910(P2011−157910A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−21781(P2010−21781)
【出願日】平成22年2月3日(2010.2.3)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】