説明

透明な物品を非接触検知する装置及び方法

レーザベースの変位検出器(26)を使用して、透明な物品(20)の一つの面に塗布された化粧コーティング(22)を検出し、それによって、レーザ加工システムの中に装填されているときにどの面が最も上になっているかを判定する。具体的には、可視光に対して透明で、レーザ加工システムの中で適切な向きにすることが特に困難である物品(20)が、レーザベースの変位検出器(26)を物品(20)上の部分コーティング(22)と共に使用することによって、向きを定められる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザベースの変位センサを用いて物品を非接触検知する方法及び装置に関し、具体的には、非接触レーザセンサで使用されるレーザ波長に対して概して透明な物品を非接触検知することに関する。より具体的には、本発明は、使用されるレーザ放射の波長に対して不透明な材料で物品の一つの面をコーティングすることによって、レーザ波長に対して概して透明な物品の向きを決定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ加工がより機能的になり経済的になるにつれて、ますます多くの部品が機械的、化学的又は電気的加工の代わりにレーザ加工を使用して機械加工されるようになっている。レーザ加工に好適な材料の具体的な種類の一つに、ガラス及びガラス状の材料がある。レーザを使用するガラス又はガラス状物品の加工については、本出願の譲受人に譲渡された二つの同時係属の出願、すなわち米国特許出願第12/336,609号METHOD FOR LASER PROCESSING GLASS WITH A CHAMFERED EDGE、及び第61/164,162号GLASS MACHINING WITH PRECISELY TIMED LASER PULSESで論じられており、両文献を参照により組み込む。
【0003】
ガラス物品の機械加工時には、機械加工されるべき部品の正しい面が加工ヘッドに向けられていることを確認する必要がある。機械加工作業が通常、物品の上面と下面に関して対称ではなく、したがって物品は、適切に機械加工されるように正しく向けて置かなければならないため、これは重要である。これは、問題の部品が、正しい加工面の目視識別を困難にするほどよく似て見える二つ以上の面を有する場合には、些細なことではなくなりうる。一つの例には、どちらの面が上でもシステムの中に配置できる本質的に平坦な「シート状」部品がある。通常、部品製造業者は、部品のどの面が「加工面」であるかに関して、この面に操作員又は自動機械視覚システムが確認できる固有の識別名による印(ラベル、バーコードなど)を付けることによって、あるいは、加工領域に部品を正しい向き以外のどの向きにすることもできないようにする取付け孔(fixturing hole)をドリルで部品に開けることによって、不明確さがないことを保証しようとする。
【0004】
しかし、物品の中には、このようにして向きを定めることに適さないものもある。部品に印又はラベルを付けることで、時間と費用が製造工程に加わる。物品の中には、取付け孔又は取付け機構が完成品を損なうことになるので、それらを部品に追加することに適さないものもある。部品のどの面が最も上になっているかを識別する方法は、物品が不適切に装填されることを防止するのに有効である。人間の介在なしで自動的に機械に装填する場合では、装填物品の向きを識別する方法により、間違った面を機械が加工することを防止することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、レーザ加工機械に装填された透明な物品の向きを識別する方法及び装置が目下必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、透明な物品の一部分に化粧用に塗布された不透明コーティングが存在することに依拠する。物品の一つの面上のこの不透明コーティングは、物品の向きに関する情報を得るために検出され使用される。透明な物品上の不透明材料を検出するために従来のレーザベースの変位検出器が使用されて、機械の中でどの面が最も上になっているかが判定される。正しい面が最も上になっている場合には、加工が進行する。正しくない面が最も上になっていると判定された場合には、自動的に物品の向きを変えることが、機械にその機能があれば可能であり、あるいは、部品の向きを変えるように操作員に警告することが可能である。塗布された不透明コーティングは、それが物品への化粧用追加物になるように設計されている場合は、機械加工作業後もそのままにすることができ、さもなければ次の機械加工で除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】サンプル部品の図である。
【図2a】塗装面を上に向けたサンプル部品の図である。
【図2b】塗装面を下に向けたサンプル部品の図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の諸実施形態は、コントローラを有するレーザ加工システムを用いて透明な物品を加工するための改善された方法を提示する。本発明は、透明な物品の一つの面にコーティングを塗布するステップと、レーザ加工システムにレーザ距離測定デバイスを設けるステップとを含む。次に、この実施形態は、レーザ距離測定デバイスを用いてコーティングを検出することによって透明な物品の位置を測定して、そのコーティングの位置をコントローラに伝達する。コントローラは、伝えられた位置を調べ、前記コントローラに伝達された前記位置により前記透明な物品を加工するかどうかを決定する。
【0009】
本発明は、機械加工する目的の透明な物品の正しい加工面を確定することに関連する。この場合、透明性は主として、人間の観察者の目で見た透明性と定義されるが、レーザ加工ビーム又はレーザ測定ビームに対する透明性もまたありうる。本明細書で説明されている物品を加工する例示的なレーザ加工システムは、オレゴン州ポートランドのエレクトロサイエンティフィックインダストリーズ株式会社(Electro Scientific Industries, Inc, Portland, OR)製のESI Model MM5900微細機械加工システムである。ある特定の場合には、材料は透明ガラスであり、物品は、図1に示されているような、外周部に黒塗料の帯がある本質的に平坦なシートである。図1は、物品の上面にコーティング12が塗布されている物品10を示す。この場合にもまた、機械加工作業が物品の上面と下面に関して対称ではないので、向きが分かることは重要である。この実施形態では、物品の位置を検出するためにレーザ変位センサが使用される。例示的なレーザ変位センサは、オレゴン州ポートランド97210のシュミットインダストリーズ(Schmitt Industries, Portland, Oregon 97210)製のAcuity AR200シリーズのセンサである。レーザ変位センサの動作原理はよく知られており、本明細書では論じない。
【0010】
このセンサは、その使用レーザ波長に対して、配置されるべき材料が透明になるように選択される。物品に塗布されるコーティングは、使用されるレーザ波長に対して不透明である、又は少なくとも部分的に反射性であるように選択される。レーザセンサは、物品の上方の、測定されるべき表面に垂直な位置から物品の方に向けられる。センサから物品までの距離が測定され、レーザ加工システムのコントローラ内に記憶された既定の距離と比較される。物品の反射性表面の測定位置を比較することにより、部品がレーザ加工システムの中に正しい面を上にして挿入されたか、又は上下反対に挿入されたかを判定することができる。
【0011】
図2aは、コーティング22がある正しい面を上にしてレーザ加工システム(図示せず)の中に装填された物品20を示し、コーティング22は、センサ26から放出されコーティングの上面28で反射されセンサ26で受光されるレーザ放射24に対して、少なくとも部分的に反射性である。これにより、センサ26からの物品20の変位に関するDtの値が得られる。図2bは、コーティング32がある面が上下反対でレーザ加工システム(図示せず)の中に装填された物品30を示し、コーティング32は、センサ36から放出されコーティングの下面38で反射されセンサ36で受光されるレーザ放射34に対して、少なくとも部分的に反射性である。これにより、Dbの測定変位値が得られる。Dbは、正しい面を上にした測定値であるDtの基準値とほぼ等しくないので、システムは、物品が不適切に挿入されていると結論付ける。この時点でシステムは、システムの材料操作要素に物品を反転するように指示することが、本発明の実施形態がそのように装備されている場合には可能であり、あるいは操作員に部品が不適切に挿入されていることを警告し、又はただ単に停止することが可能である。
【0012】
これを実現するために、レーザセンサは、それが測定部分に関して有効で繰返し可能な位置を伝えることができる場所に取り付けられなければならない。こうするには、その位置を高い信頼性で測定し、レーザ加工システムコントローラに伝達できるように、既知の位置にセンサが取り付けられていることが必要である。センサは、レーザビームが物品を可能な限り垂直に近く横切るように取り付けられなければならない。センサは、レーザビームが物品のコーティングされた部分で反射するように取り付けられなければならない。材料操作要素を有する諸実施形態では、物品は、レーザセンサから放出されるレーザビームを物品のコーティングされた部分に当たるように誘導するコントローラの指示を受けて、材料操作要素によって適切な場所に置くことができる。本発明の諸実施形態で使用されるコーティングには、レーザ機械加工されるべき物品を構成するガラス又はガラス状材料に付着するように作ることができる塗料、エポキシ樹脂又は粉末が含まれる。こうした付着は、コーティングが機械加工の後に除去される場合には一時的なものとすることができ、あるいは、コーティングが物品の化粧仕上げの一部分を形成する場合には恒久的なものとすることができる。コーティングはまた、機械加工の目的で物品に付着させる膜の形にして、後で除去することもできる。この膜は、例えばプラスチック又は紙で作ることができる。これらの実施形態のすべてが、ガラス又はガラス状材料で作られている物品に付着することができ、かつ、材料を透過又は半透過する波長のレーザ光を反射又は部分的に反射することができる。
【0013】
物品の向きの判定は、レーザ加工システムのコントローラにプログラムされた事前情報に依存する。これを判定する一つの方法は、物品を正しくレーザ加工システムの中に挿入してから、物品を測定し結果をコントローラ内に記憶するようにシステムに命令することである。その後システムの中に誤って挿入され測定される物品では、透明な物品の厚さによって、記憶された値とは異なる測定値が得られることになる。このデータが取得されると、部品の向きは、測定誤差に起因する適切な許容値と共に取得データを記憶データと比較することによって、特定することができる。例えば、上面を上にして挿入された部品までの測定距離がDtであり、下面を上にして挿入された部品までの測定距離がDbであれば、二測定閾値Tdは次式で設定することができる。
【0014】
Td = (Dt + Db)/2
Td以下の測定値は、部品が正しく挿入されていることを示す。一方で、tが部品の厚さ、nがレーザ波長に対する材料の屈折率とした場合、t/nと等しい検知厚さが分かっていれば、単一測定閾値Tsは、次式で計算することができる。
【0015】
Ts = Dt + t/2n
ここで、Ts未満の測定値は、物品が正しく挿入されていることを示す。
【0016】
より巧緻なアルゴリズムでは、本開示で説明している種類のセンサを利用して、部品距離測定値を用いることができるが、本明細書で概説した手法の範囲内に依然としてとどまる。この理由から、本発明者らは、本発明の範囲が添付の特許請求の範囲によってのみ決定されることを要請する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コントローラを有するレーザ加工システムを用いて視覚的に透明な物品を加工するための改善された方法であって、
前記透明な物品の一つの面にコーティングを塗布するステップと、
前記レーザ加工システムにレーザ距離測定デバイスを設けるステップと、
前記レーザ距離測定デバイスを用いて前記コーティングを検出することによって前記透明な物品の位置を測定して、前記位置を前記コントローラに伝達するステップと、
前記コントローラに伝達された前記位置により前記透明な物品を加工するかどうかを決定するステップとを含む、方法。
【請求項2】
前記レーザ距離測定デバイスが可視領域の波長で動作する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記レーザ加工システムがレーザ機械加工システムである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記透明な物品がガラスである、請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【公表番号】特表2012−527630(P2012−527630A)
【公表日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−512065(P2012−512065)
【出願日】平成22年5月21日(2010.5.21)
【国際出願番号】PCT/US2010/035811
【国際公開番号】WO2010/135668
【国際公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(593141632)エレクトロ サイエンティフィック インダストリーズ インコーポレーテッド (161)
【Fターム(参考)】