説明

透明導電膜製膜装置及び多層透明導電膜連続製膜装置並びにその製膜方法

【課題】MOCVD(有機金属化学的気相成長)法により、透明導電膜を多層構造で連続的に製膜するための製膜装置及び製膜方法に於いて、原料を節約し、均一で高品質な膜質を保持しつつ製膜速度を向上させる方法を提供する。
【解決手段】多層透明導電膜連続製膜装置は、基板装着部2と、真空排気を行う仕込み部3と、有機金属化合物(ジエチル亜鉛)とジボランと水を気相で反応させMOCVD法により透明導電膜を基板上に形成する製膜処理部41〜4nを複数有する多層製膜処理部と、基板取り出し部5と、基板取外し部5と、基板セッターを基板装着部へ戻させるセッターリターン部7とからなり、前記各部を順次移動しながら基板に多層透明導電膜を連続的に製膜する。各製膜処理部は、有機金属化合物とジボラン、水の夫々を噴射するノズルを設け、これらを冷却する冷却機構を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MOCVD法により透明導電膜を多層構造で連続的に製膜するための製膜装置及び製膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池作製工程の中で透明導電膜の製膜工程として、スパッタ法と有機金属化学的気相成長(MOCVD)法が使用されている。MOCVD法は、低温(200℃以下)で反応が進行することと、化学的成長法であるため、スパッタ法のように下層の薄膜構成層にエネルギー粒子の衝撃によるダメージを与えるものとは異なり、他の薄膜構成層に機械的なダメージを与えないマイルドな作製方法である。
【0003】
CIGS系の薄膜太陽電池を作製する場合、入射光側から見ると、透明導電膜は薄膜構成層の上部に製膜する。MOCVD法で製膜する透明導電膜はバッファ層の効果(機能)を補う作用を持っているが、スパッタ法の場合は逆にバッファ層にダメージ(損傷)を与えてしまい太陽電池の性能を低下させてしまうことが知られている。
【0004】
従来、MOCVD法で透明導電膜を製膜する方法が開示されている(例えば、特許文献1及び2参照)。ここでは、基板を加熱された支持体上で加熱し、真空排気し約20分間放置し温度を均一とした後に、約30分間MOCVD法によって透明導電膜を約1μm製膜する方法が示されている。MOCVD法製膜装置については、特許文献3に記載されており、石英の反応管内にガス導入口からガスが導入され、反応管内のガスはガス排気口から排気されるものとなっている。そして、反応管内にはカーボン製のサセプタが配置されており、基板はこのサセプタの上にセットされる。また、サセプタ及び基板は、反応管の外部に設置された高周波コイルにより、誘導加熱される構造となっている。この製膜装置では、基板には主に有機金属化合物としてアルキルアルミニウムを使用している。前記MOCVD法製膜装置は透明導電膜を多層構造で連続的に製膜するものではなく、大面積の透明導電膜を製膜することはできないという問題点があった。また、半導体薄膜の連続製膜装置として、複数の反応室を設けてこれらで順次製膜する連続製膜装置が開示されている(例えば、特許文献4参照)が、この連続製膜装置は半導体薄膜を製膜するもので、MOCVD法で透明導電膜を製膜するものではなく、このような半導体薄膜の連続製膜装置をMOCVD法による透明導電膜の連続製膜装置に直ちに転用することは難しいという問題があった。
【0005】
【特許文献1】特公平6−14557号公報
【特許文献2】特開平6−209116号公報
【特許文献3】特開平2−122521号公報
【特許文献4】特許第2842551号公報
【0006】
更に、前記従来のMOCVD法製膜装置として、図5に示すような、アルキル亜鉛用のMOCVD法製膜装置と、図6に示すような、この装置専用のノズルが使用されてきた。
【0007】
この装置は基板をバッチ処理する装置であり、先ず、基板(透明導電膜以外のCIGS系薄膜太陽電池に必要な光吸収層、バッファ層が基板上に製膜されたものを以下、基板という。)を導入するために、チャンバーを大気開放する。そして、ホットプレート上に基板を設置した後、チャンバーを真空状態にする。基板が設定温度に上昇するのを待って、原料導入ポートから原料(例えば、有機金属化合物、例えば、ジエチル亜鉛:Zn(C2 5 2 、ジボラン:B2 6 、純水:H2 O)を導入しキャリヤガスを使用して、夫々の原料に対応するノズルから前記原料が基板上に噴射される。基板上に透明導電膜を一定時間(一定の膜厚に)製膜した後、原料の供給を停止する。そして、チャンバーを大気開放し(大気に戻し)基板を取り出す。バッチ処理であるため、その後、次の基板をホットプレート上に設置する。以後、前記と同様の操作を繰り返すことにより前記基板上への透明導電膜の形成を行う。以下1〜3の特徴を有していた。
【0008】
1.ノズルの特徴は、図6に示すように、有機金属化合物、ジボラン及び、純水を真空中で均一に噴射させる構造である。ノズルの温度はホットプレートからの熱で成長中に上昇して、ノズルに成長物が堆積するため、ノズルのメインテナンスが必要となるという問題があった。また、従来のノズルの構造では、有機金属化合物と水とジボランの噴出部に隙間があるためにノズルの裏及びチャンバー上部迄生成物が堆積し原料の利用効率が低く、頻繁にメインテナンスが必要となるという問題があった。
2.金属ホットプレートに直接基板を置いて透明導電膜を成長させるため、ホットプレートの熱分布が直接透明導電膜の分布に繋がり、ホットプレートの熱分布が不均一の場合には、透明導電膜のシート抵抗等が不均一になるという問題があった。
3.チャンバーが1つのため、基板の処理速度が遅く、製膜速度が遅いという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は前記問題点を解消するため、本発明の第1の目的は、原料の利用効率を向上させると共に、メインテナンスの必要性をより少なくすることである。第2の目的は、シート抵抗が均一な透明導電膜を製膜することである。第3の目的は、高品質な膜質を保持したまま製膜速度を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明は、前記問題点を解決するためのもので、製膜室内部を真空排気後、基板を加熱しながら有機金属化合物(アルキル亜鉛:Zn(Cn 2n+1、nは整数)2 、好ましくは、ジエチル亜鉛:Zn(C2 5 2 )とジボラン(B2 6 )と水(水蒸気)を気相で反応させる有機金属化学的気相成長(MOCVD)法によりn型半導体からなる透明導電膜を前記基板上に形成する透明導電膜製膜装置であって、
ジボランを導電率調整のためのドーパントとして、不活性ガスをキャリアガスとして使用し、有機金属化合物と純水を製膜原料とし、有機金属化合物、ジボラン、純水の前記3つの原料を同時に又は夫々個別に噴射するパイプ状で、その噴射側に複数の噴射孔を設けたノズルを複数個、隙間なく同一平面内に並設したプラナー構造のノズル群を装置内部に設置し、前記ノズル群を冷却するノズル冷却機構を設けた透明導電膜製膜装置である。
【0011】
(2)本発明は、大気中で基板をセッターに装着する基板装着部と、真空排気を行う仕込み部と、基板を加熱しながら有機金属化合物(アルキル亜鉛:Zn(Cn 2n+1、nは整数)2 、好ましくは、ジエチル亜鉛:Zn(C2 5 2 )とジボラン(B2 6 )と水(水蒸気)を気相で反応させる有機金属化学的気相成長(MOCVD)法によりn型半導体からなる透明導電膜を前記基板上に多層構造で形成するための製膜処理部を複数有する多層製膜処理部と、真空中の前記多層構造の透明導電膜が形成された基板を大気圧に戻す取り出し部と、前記セッターから前記多層構造の透明導電膜が形成された基板を取り外す基板取外し部と、前記基板取外し部において多層構造の透明導電膜が形成された基板が取り外されたセッターを前記基板装着部へリターンさせるセッターリターン部とからなり、前記各部を順次移動しながら基板上に前記多層のn型半導体からなる透明導電膜を多層構造で連続的に製膜するインライン型の多層透明導電膜連続製膜装置であって、
前記多層製膜処理部の各製膜処理部は、ジボランを導電率調整のためのドーパントとして、不活性ガスをキャリアガスとして使用し、有機金属化合物と純水を製膜原料とし、有機金属化合物、ジボラン、純水の前記3つの原料を同時に又は夫々個別に噴射するパイプ状で、その噴射側に複数の噴射孔を設けたノズルを複数個、隙間なく同一平面内に並設したプラナー構造のノズル群を装置内部に設置し、前記ノズル群を冷却するノズル冷却機構を設けた多層透明導電膜連続製膜装置である。
【0012】
(3)本発明は、前記仕込み部に予備加熱機構を、前記取り出し部に基板冷却機構を夫々設け、製膜処理部を複数有することで、必要な膜厚を多層構造で製膜しつつ、製膜速度を向上した前記(2)に記載の多層透明導電膜連続製膜装置である。
【0013】
(4)本発明は、前記ノズル冷却機構が、前記ノズル群のノズルとノズルの間に隙間なく冷却パイプを夫々を設けた前記(1)、(2)又は(3)に記載の多層透明導電膜連続製膜装置である。
【0014】
(5)本発明は、前記ノズル冷却機構が、プラナー構造のノズル群の噴射側と反対の側(裏面)に、複数の冷却パイプを並設した冷却パイプ群又は板状の冷却器を設けた前記(1)、(2)又は(3)に記載の多層透明導電膜連続製膜装置である。
【0015】
(6)本発明は、前記セッターが、基板を固定し、製膜装置内各部を移送するための製造治具で、熱伝導度の高い部材(例えば、カーボンコンポジット)からなり、その表面に熱伝導性及び機械的強度の高い金属被膜(例えば、ニッケルメッキ)を施すと共に、セッター上に基板固定用のピンを設けた前記(2)に記載の多層透明導電膜連続製膜装置である。
【0016】
(7)本発明は、大気中で基板をセッターに装着する工程と、前記セッターに装着した基板を真空排気する工程と、基板を加熱しながら有機金属化合物(アルキル亜鉛:Zn(Cn 2n+1、nは整数)2 、好ましくは、ジエチル亜鉛:Zn(C2 5 2 )とジボラン(B2 6 )と水(水蒸気)を気相で反応させる有機金属化学的気相成長(MOCVD)法によりn型半導体からなる透明導電膜を前記基板上に、複数回製膜を繰り返すことにより、多層構造の透明導電膜を形成する工程と、前記真空中の多層構造の透明導電膜が形成された基板を大気圧に戻す工程と、前記セッターから多層構造の透明導電膜が形成された基板を取り外す工程と、前記多層構造の透明導電膜が形成された基板が取り外されたセッターを前記基板装着部へリターンさせる工程とからなり、基板上に多層のn型半導体からなる透明導電膜を多層構造で連続的に製膜するインライン型の多層透明導電膜連続製膜方法である。
【0017】
(8)本発明は、前記多層構造の透明導電膜を形成する工程が、ジボランを導電率調整のためのドーパントとして、不活性ガスをキャリアガスとして使用し、有機金属化合物と純水を製膜原料とし、有機金属化合物、ジボラン、純水の前記3つ原料を同時に又は夫々個別に噴射するパイプ状で、その噴射側に複数の噴射孔を設けたノズルを複数個、隙間なく同一平面内に並設したプラナー構造のノズル群を装置内部に設置し、前記ノズル群を冷却するノズル冷却機構を設けた前記(7)に記載の多層透明導電膜連続製膜方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、前記多層製膜処理部の各製膜処理部における有機金属化合物、ジボラン、純水の3つを同時に又は夫々個別に噴射するパイプ状で、その噴射側に複数の噴射孔を設けたノズルを複数個、隙間なく同一平面内に並設したプラナー構造のノズル群を装置内部に設置し、前記ノズル群を冷却するノズル冷却機構を設けることにより、前記ノズル間が隙間のない1枚構造となり、反応生成物がノズルに堆積するのを防止することができると共に、原料の利用効率を向上することができる。更に、反応生成物がノズルに堆積するのを防止することにより、メインテナンスの必要性をより少なくすることができる。
【0019】
本発明は、前記セッターに、熱伝導度の高い部材(カーボンコンポジット)を用い、その表面に熱伝導性及び機械的強度の高い金属被膜(例えば、ニッケルメッキ)を施すことにより、均一な透明導電膜を製膜することができる。また、前記セッター上に基板固定用のピンを設けることによって、任意の大きさの基板を処理できる。
【0020】
本発明は、前記仕込み部に予備加熱機構を、前記取り出し部に基板冷却機構を夫々設け、製膜処理部を複数有し多層膜を製膜しても膜質を劣化させずに、製膜速度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明は、基板に多層のn型半導体からなる多層透明導電膜を連続的に製膜する多層透明導電膜連続製膜装置及びその製膜方法であり、図1に示すように、大気中で基板Aをセッター7aに装着する基板装着部2と、真空排気を行う仕込み部3と、基板を加熱しながら有機金属化合物(例えば、ジエチル亜鉛:Zn(C2 5 2 )とジボラン(B2 6 )と純水(水蒸気)を気相で反応させ有機金属化学蒸着(MOCVD)法によりn型半導体からなる透明導電膜(例えば、ZnO)を前記加熱された基板上に形成する製膜処理部を複数(41〜4n)有する多層製膜処理部4と、前記多層の透明導電膜が形成された基板を大気開放する(大気に戻す)取り出し部5と、前記セッター7aから前記多層の透明導電膜が形成された基板Aを取り外す基板取り外し部6と、前記基板取り外し部において多層の透明導電膜が形成された基板が取り外されたセッター7aを前記基板装着部2へリターンさせるセッターリターン部7とからなり、前記各部を順次移動しながら連続的に基板に多層のn型半導体からなる多層透明導電膜を連続的に製膜する。
【0022】
図1に示す、前記多層製膜処理部4の各製膜処理部41…4nにおいては、ZnOからなる透明導電膜を製膜する場合は、以下のような化学反応が起こる。
主反応は、以下の1、2のとおりであり、
1.Zn(C2 5 2 +2H2 O→Zn(OH)2 +2C2 6
2.Zn(OH)2 →ZnO+H2
ジボラン(B2 6 )がわずかにZnO中に取り込まれる。
詳細には、
Zn(C2 5 2 +H2 O+nB2 6 →ZnO:B+2C2 6 +nB2 3 で、
nはごくわずかである。
【0023】
前記図1に示す、多層製膜処理部の各製膜処理部41…4nは、図2に示す、前記MOCVD反応を発生する反応物質を噴射する板状(一枚構造)で、且つ、ノズル冷却機能を有する複合ノズル(ノズル群)4Aを具備し、前記複合ノズル4Aは有機金属化合物及びジボランを噴射する第1のノズル4aと純水を噴射する第2のノズル4bと冷却用パイプ4cからなり夫々が独立しており、これらは、夫々断面形状が略四角形のパイプからなり、第1のノズル4a、第2のノズル4b、冷却用パイプ4cの順に相互に隙間なく密着して配置(設置)した平板状のプラナー構造で、第1のノズル4a及び第2のノズル4bの下面(基板設置する側の面)に一定間隔で夫々の反応物質を噴射するための小孔(噴射孔)hが設けてある。なお、前記ノズルは、有機金属化合物、ジボラン、純水の3つを1つのノズルから同時に噴射する方式又は有機金属化合物、ジボラン、純水を夫々個別に噴射する方式にすることもできる。前記ノズル4a、4b、冷却用パイプ4cの断面形状は、相互に隙間なく密着するものであれば、円形等の他の形状でもよい。また、冷却用パイプは、一例であり、図の本数よりも少なく設置することも多く設置することも可能であり、前記のようにノズル群の間に冷却パイプを挿入せずに、ノズル群の噴射側と反対側(裏面)に前記ノズル群に接して冷却パイプ群又は板状の冷却器を設けて、ノズル群全体を冷却する構造でもよく、複合ノズルを独立に、直接冷却できる構造となっていることが特徴である。
【0024】
この冷却用パイプ4cがノズル4a、4bを冷却して、これらノズル近傍における製膜原料である、有機金属化合物、ジボラン及び純水の反応を抑制する。ノズル4a、4bと冷却用パイプ4cは互いに隙間なく密着した平板状(一枚)構造であるため、原料がノズルの裏や、チャンバー上部に堆積することがない(防着板の機能を有する)ので、原料の使用量が削減する。なお、前記実施例では、透明導電膜としてZnOを製膜する場合について説明したが、酸化アルミAl2 3 を製膜する場合は、原料の有機金属化合物はAl(Cn 2n1 3 好ましくは、Al(CH3 3 又はAl(C2 5 3 を使用する。
【0025】
前記セッター7aは、基板を固定し、製膜装置内各部を移送するための製造治具で、熱伝導度の高い部材(カーボンコンポジット)からなり、機械的強度が弱いカーボン素材の機械的強度増強のため、その表面に熱伝導度及び機械的強度の高い金属被膜(例えば、ニッケルメッキ)を施す。また、任意の大きさの基板に対応するために基板固定用のピンを設置する。
【0026】
前記仕込み部3に基板の上面からヒーターにより加熱する予備加熱機構3Aを、前記取り出し部5に基板の下面から冷却板により冷却する基板冷却機構5Aを夫々設ける。
【0027】
図2に示す、本発明の多層透明導電膜連続製膜装置の前記多層製膜処理部4の各製膜処理部41…4nに設置される複合ノズル4A(以下、本発明の複合ノズル4Aという。)により透明導電膜を製膜した場合と、図6に示す、従来の製膜装置のノズルにより透明導電膜を製膜した場合の透明導電膜の原料の利用効率の比較を下記表1に示す。
【0028】
【表1】

【0029】
表1に示すように、本発明の複合ノズル4Aの方が従来の製膜装置のノズルと比べて原料の利用効率が良いことが判明した。
【0030】
本発明の多層透明導電膜連続製膜装置における熱伝導度の高いカーボンコンポジットからなるセッターを使用して透明導電膜を製膜した場合と、従来の製膜装置の加熱用ホットプレート上にそのまま基板をセットして透明導電膜を製膜した場合の透明導電膜の膜特性(シート抵抗の分布)の比較を図3に示す。図3に示すように、本発明の多層透明導電膜連続製膜装置におけるカーボンコンポジットからなるセッターを使用する方が従来の製膜装置の加熱用ホットプレート上にそのままセットする場合と比べて透明導電膜の膜特性(シート抵抗の分布)がより均一であることが判明した。なお、シート抵抗は6〜8〔Ω/□〕範囲で均一に分布している。
【0031】
本発明の仕込み部3に予備加熱機構3Aを、取り出し部5に基板冷却機構5Aを夫々設けた多層透明導電膜連続製膜装置を使用して透明導電膜を製膜した場合と、従来の製膜装置を使用して透明導電膜を製膜した場合の基板処理速度の比較を下記表2に示す。
【0032】
【表2】

【0033】
表2に示すように、本発明の多層透明導電膜連続製膜装置の方が従来の製膜装置と比べて製膜時間が短いことが判明した。
【0034】
本発明の多層透明導電膜連続製膜装置を使用して透明導電膜を製膜したCIS系薄膜太陽電池と、従来の製膜装置を使用して透明導電膜を製膜したCIS系薄膜太陽電池の太陽電池特性の比較を下記表3に示す。
【0035】
【表3】

【0036】
表3に示すように、本発明の多層透明導電膜連続製膜装置の方が従来の製膜装置と比べて太陽電池特性が向上していることが判明した。
【0037】
更に、本発明のノズルを使用して透明導電膜を連続的に製膜した場合と従来のノズルを使用して透明導電膜をバッチ式で製膜した場合の膜質(シート抵抗)と製膜回数との関係を、図4に示す。
従来のノズル(図6参照。)を使用してバッチ式で繰り返し製膜を行った場合と、本発明のノズル(図2参照。)を使用して連続的に製膜を行った場合の透明導電膜のシート抵抗を比較すると、図4に示すように、従来のノズルを使用した場合、製膜回数が増加するにつれて、ノズルが加熱され、基板上への原料供給が減少することで膜厚が薄くなるため、透明導電膜のシート抵抗が増加し、太陽電池の変換効率が低下するという問題点があったが、本発明のノズルを使用して連続的に製膜を行った場合には、ノズルの冷却機構によって透明導電膜のシート抵抗は一定を示すことが証明された。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の多層透明導電膜連続製膜装置の構成図である。
【図2】本発明の多層透明導電膜連続製膜装置の多層製膜処理部の各製膜処理部に設置される複合ノズルの構造を示す図である。
【図3】本発明の多層透明導電膜連続製膜装置における熱伝導度の高いカーボン素材からなるセッターを使用して透明導電膜を製膜した場合と、従来の製膜装置の加熱用ホットプレート上に基板をそのままセットして透明導電膜を製膜した場合の透明導電膜の膜特性(シート抵抗の分布)の比較図である。
【図4】本発明のノズルを使用して製膜した透明導電膜と従来のノズルを使用して製膜した透明導電膜との繰り返し製膜時の膜質と製膜回数の関係を示す図である。
【図5】従来のMOCVD製膜装置の構成図である。
【図6】従来のMOCVD製膜装置のノズルの構造を示す図である。
【符号の説明】
【0039】
1 多層透明導電膜連続製膜装置
2 基板装着部
3 仕込み部
3A 予備加熱機構
4 多層製膜処理部
41 製膜処理部
4n 製膜処理部
4A 複合ノズル
4a 有機金属化合物とジボラン噴射ノズル
4b 水噴射ノズル
4c 冷却用パイプ
5 取り出し部
5A 基板冷却機構
6 基板取外し部
7 セッターリターン部
7a セッター
A 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製膜室内部を真空排気後、基板を加熱しながら有機金属化合物(アルキル亜鉛:Zn(Cn 2n+1、nは整数)2 、好ましくは、ジエチル亜鉛:Zn(C2 5 2 )とジボラン(B2 6 )と水(水蒸気)を気相で反応させる有機金属化学的気相成長(MOCVD)法によりn型半導体からなる透明導電膜を前記基板上に形成する透明導電膜製膜装置であって、
ジボランを導電率調整のためのドーパントとして、不活性ガスをキャリアガスとして使用し、有機金属化合物と純水を製膜原料とし、有機金属化合物、ジボラン、純水の前記3つの原料を同時に又は夫々個別に噴射するパイプ状で、その噴射側に複数の噴射孔を設けたノズルを複数個、隙間なく同一平面内に並設したプラナー構造のノズル群を装置内部に設置し、前記ノズル群を冷却するノズル冷却機構を設けたことを特徴とする透明導電膜製膜装置。
【請求項2】
大気中で基板をセッターに装着する基板装着部と、真空排気を行う仕込み部と、基板を加熱しながら有機金属化合物(アルキル亜鉛:Zn(Cn 2n+1、nは整数)2 、好ましくは、ジエチル亜鉛:Zn(C2 5 2 )とジボラン(B2 6 )と水(水蒸気)を気相で反応させる有機金属化学的気相成長(MOCVD)法によりn型半導体からなる透明導電膜を前記基板上に多層構造で形成するための製膜処理部を複数有する多層製膜処理部と、真空中の前記多層構造の透明導電膜が形成された基板を大気圧に戻す取り出し部と、前記セッターから前記多層構造の透明導電膜が形成された基板を取り外す基板取外し部と、前記基板取外し部において多層構造の透明導電膜が形成された基板が取り外されたセッターを前記基板装着部へリターンさせるセッターリターン部とからなり、前記各部を順次移動しながら基板上に前記多層のn型半導体からなる透明導電膜を多層構造で連続的に製膜するインライン型の多層透明導電膜連続製膜装置であって、
前記多層製膜処理部の各製膜処理部は、ジボランを導電率調整のためのドーパントとして、不活性ガスをキャリアガスとして使用し、有機金属化合物と純水を製膜原料とし、有機金属化合物、ジボラン、純水の前記3つの原料を同時に又は夫々個別に噴射するパイプ状で、その噴射側に複数の噴射孔を設けたノズルを複数個、隙間なく同一平面内に並設したプラナー構造のノズル群を装置内部に設置し、前記ノズル群を冷却するノズル冷却機構を設けたことを特徴とする多層透明導電膜連続製膜装置。
【請求項3】
前記仕込み部に予備加熱機構を、前記取り出し部に基板冷却機構を夫々設け、製膜処理部を複数有することで、必要な膜厚を多層構造で製膜しつつ、製膜速度を向上したことを特徴とする請求項2に記載の多層透明導電膜連続製膜装置。
【請求項4】
前記ノズル冷却機構は、前記ノズル群のノズルとノズルの間に隙間なく冷却パイプを夫々設けたことを特徴とする請求項1、2又は3に記載の多層透明導電膜連続製膜装置。
【請求項5】
前記ノズル冷却機構は、プラナー構造のノズル群の噴射側と反対の側(裏面)に、複数の冷却パイプを並設した冷却パイプ群又は板状の冷却器を設けたことを特徴とする請求項1、2又は3に記載の多層透明導電膜連続製膜装置。
【請求項6】
前記セッターは、基板を固定し、製膜装置内各部を移送するための製造治具で、熱伝導度の高い部材(例えば、カーボンコンポジット)からなり、その表面に熱伝導性及び機械的強度の高い金属被膜(例えば、ニッケルメッキ)を施すと共に、セッター上に基板固定用のピンを設けたことを特徴とする請求項2に記載の多層透明導電膜連続製膜装置。
【請求項7】
大気中で基板をセッターに装着する工程と、前記セッターに装着した基板を真空排気する工程と、基板を加熱しながら有機金属化合物(アルキル亜鉛:Zn(Cn 2n+1、nは整数)2 、好ましくは、ジエチル亜鉛:Zn(C2 5 2 )とジボラン(B2 6 )と水(水蒸気)を気相で反応させる有機金属化学的気相成長(MOCVD)法によりn型半導体からなる透明導電膜を前記基板上に、複数回製膜を繰り返すことにより、多層構造の透明導電膜を形成する工程と、前記真空中の多層構造の透明導電膜が形成された基板を大気圧に戻す工程と、前記セッターから多層構造の透明導電膜が形成された基板を取り外す工程と、前記多層構造の透明導電膜が形成された基板が取り外されたセッターを前記基板装着部へリターンさせる工程とからなり、基板上に多層のn型半導体からなる透明導電膜を多層構造で連続的に製膜するインライン型の多層透明導電膜連続製膜方法。
【請求項8】
前記多層構造の透明導電膜を形成する工程は、ジボランを導電率調整のためのドーパントとして、不活性ガスをキャリアガスとして使用し、有機金属化合物と純水を製膜原料とし、有機金属化合物、ジボラン、純水の前記3つ原料を同時に又は夫々個別に噴射するパイプ状で、その噴射側に複数の噴射孔を設けたノズルを複数個、隙間なく同一平面内に並設したプラナー構造のノズル群を装置内部に設置し、前記ノズル群を冷却するノズル冷却機構を設けたことを特徴とする請求項7に記載の多層透明導電膜連続製膜方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−203022(P2006−203022A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−13682(P2005−13682)
【出願日】平成17年1月21日(2005.1.21)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成16年度新エネルギー・産業技術総合開発機構「太陽光発電技術研究開発委託事業」産業活力再生特別措置法第30条の適用を受けるもの)
【出願人】(000186913)昭和シェル石油株式会社 (322)
【Fターム(参考)】