説明

通信システム及び車載機

【課題】自車の走行位置を精度良く特定することができる通信システム及び車載機を提供する。
【解決手段】車載機40は、通信機10、20、30が送信した信号を受信する。車載機40は、通信機10が送信した信号の受信時点と、通信機20が送信した信号の受信時点との時間差である受信時間差t21を算出する。また、車載機40は、通信機10が送信した信号の受信時点と、通信機30が送信した信号の受信時点との時間差である受信時間差t31を算出する。車載機40は、通信機10、20、30の位置情報、遅れ時間Δt21、Δt31、受信時間差t21、t31に基づいて、自車位置を特定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路を走行する車両の位置を高精度に特定することができる通信システム、該通信システムを構成する車載機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、交差点内及びその付近での車両同士、あるいは車両と歩行者との交通事故を防止するために、交差点に設置された信号機の灯色の表示情報を交差点に向かって走行してくる車両に対して送信し、車両に搭載された車載機で表示情報を受信し、受信した表示情報に基づいて交差点の手前で安全に停止することができるか否か、あるいは、交差点を安全に通過することができるか否かを判定し、判定結果に応じて運転者に音声で注意を促すシステムがある。また、車載機で受信した信号機の表示情報に基づいて、交差点を安全に通過することができるか否かを判定し、判定結果に応じて車両のブレーキ制御を行う信号機連動式車両速度制御装置が提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第2806801号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
交差点手前で安全に車両を停止させる場合、交差点付近に設けられた停止線の手前で確実に車両を停止させる必要があり、車両から停止線までの距離を正確に把握しておく必要がある。しかしながら、特許文献1の装置にあっては、車両を減速させる制御が自動的に行われても車両から停止線までの距離が正確に判らないため、車両を停止線の手前で確実に停止させることは困難であり、オーバーランといった不具合を生じる恐れがある。このため、従来の技術では、車両を停止線の手前で確実に停止させて交差点における交通事故を未然に防止するには不十分な面があった。
【0004】
一方、カーナビゲーションのジャイロセンサ、加速度センサ、GPS(Global Positioning System)などを用いて自車の位置を検出し、地図データに基づいて交差点の位置を特定することによって、現在の位置から自車前方にある交差点手前の停止線の位置までの距離を算出することができる。しかし、ジャイロセンサは、時間の経過とともに検出誤差が蓄積するとともに、車両の振動により誤差が生ずる。また、加速度センサは、温度特性により誤差が生じ、検出精度が十分ではない。さらに、GPS等による位置検出では、都市部においては建物又は車両などの影響により、十分な数のGPS等の電波を受信できないことが多く、誤差が大きくなるため、正確な運転支援を行うことが困難であった。
【0005】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、自車の位置を精度良く特定することができる通信システム及び該通信システムを構成する車載機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1発明に係る通信システムは、所定の信号を送信する少なくとも3つの通信機と、該通信機が送信した信号を受信する車載機とを備える通信システムであって、前記車載機は、各通信機の位置情報を記憶するための記憶手段、第1の通信機が送信した信号の送信時点と、該第1の通信機を除く他の通信機が送信した信号の送信時点との時間差に関する時間差情報を取得する時間差情報取得手段、前記第1の通信機が送信した前記信号の受信時点と、前記他の通信機が送信した前記信号の受信時点との受信時間差を算出する受信時間差算出手段、並びに、各通信機の位置情報、前記時間差情報取得手段で取得した時間差情報及び前記受信時間差算出手段で算出した受信時間差に基づいて、自車位置を特定する特定手段を備えることを特徴とする。
【0007】
第2発明に係る通信システムは、第1発明において、前記他の通信機は、前記第1の通信機が送信した信号を受信する受信手段と、信号を前記車載機へ送信する場合、前記時間差情報を送信する送信手段とを備え、前記時間差情報は、前記他の通信機が送信する信号の送信時点と前記第1の通信機が送信した信号の送信時点又は該信号の前記他の通信機での受信時点との時間差に関する情報であり、前記車載機は、前記時間差情報を受信する受信手段を備え、前記特定手段は、前記受信手段で受信した時間差情報に基づいて、自車位置を特定するように構成してあることを特徴とする。
【0008】
第3発明に係る通信システムは、第1発明において、各通信機は、所定の周波数成分を含む信号を送信するように構成してあり、前記車載機は、受信した信号に基づいて前記周波数成分を抽出する周波数成分抽出手段と、該周波数成分抽出手段で抽出した周波数成分に基づいて、前記受信時間差算出手段で算出する受信時間差を補正する補正手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
第4発明に係る通信システムは、第1発明において、各通信機は、送信する信号に該信号が有効であることを示す情報を含めて送信するように構成してあり、前記特定手段は、受信した各信号に前記情報が含まれる場合、自車位置を特定するように構成してあることを特徴とする。
【0010】
第5発明に係る通信システムは、第1発明において、第2の通信機は、前記第1の通信機が送信した信号を受信する受信手段と、信号を送信する場合、該信号の送信時点と前記受信手段で受信した信号の受信時点との時間差に関する遅延情報を送信する送信手段とを備え、第3の通信機は、前記第1の通信機及び前記第2の通信機の位置情報を記憶する記憶手段と、前記第1の通信機が送信した前記信号並びに前記第2の通信機が送信した前記信号及び遅延情報を受信する受信手段と、前記位置情報、前記受信手段で受信した各信号の受信時点及び遅延情報に基づいて、受信した各信号の有効無効を判定する判定手段とを備えることを特徴とする。
【0011】
第6発明に係る通信システムは、第1発明において、各通信機は、各通信機が送信する信号それぞれに該信号を対応付ける固有の識別情報を含めて送信するように構成してあり、前記特定手段は、前記識別情報で対応付けられた信号に基づいて、自車位置を特定するように構成してあることを特徴とする。
【0012】
第7発明に係る通信システムは、第1発明乃至第6発明のいずれかにおいて、前記車載機は、搭載位置の高さ情報を記憶するための記憶手段を備え、前記特定手段は、前記高さ情報に基づいて自車位置を特定するように構成してあることを特徴とする。
【0013】
第8発明に係る通信システムは、第1発明乃至第6発明のいずれかにおいて、前記車載機は、道路形状情報を記憶するための記憶手段を備え、前記特定手段は、前記道路形状情報に基づいて自車位置を特定するように構成してあることを特徴とする。
【0014】
第9発明に係る通信システムは、第1発明乃至第8発明のいずれかにおいて、各通信機は、信号を変調する変調手段を備え、該変調手段で変調した信号を送信するように構成してあり、前記車載機は、受信した信号を復調する復調手段を備え、前記受信時間差算出手段は、前記復調手段で復調した信号に基づいて、各信号の受信時間差を算出するように構成してあることを特徴とする。
【0015】
第10発明に係る通信システムは、第1発明乃至第8発明のいずれかにおいて、各通信機は、信号を直交周波数多重方式の搬送波に割り当てる割当手段を備え、該割当手段で信号が割り当てられた搬送波を送信するように構成してあり、前記車載機は、前記搬送波を受信する搬送波受信手段を備え、前記受信時間差算出手段は、受信した搬送波に基づいて、各信号の受信時間差を算出するように構成してあることを特徴とする。
【0016】
第11発明に係る通信システムは、第9発明又は第10発明において、各通信機は、立ち上がりを有する信号を所定の間隔で送信するように構成してあり、前記受信時間差算出手段は、受信した各信号の立ち上がり時点に基づいて、各信号の受信時間差を算出するように構成してあることを特徴とする。
【0017】
第12発明に係る通信システムは、第1発明乃至第8発明のいずれかにおいて、各通信機は、交番波形の信号を送信するように構成してあり、前記受信時間差算出手段は、受信した各信号の位相差に基づいて、各信号の受信時間差を算出するように構成してあることを特徴とする。
【0018】
第13発明に係る通信システムは、第12発明において、各通信機は、信号を変調する変調手段を備え、該変調手段で変調した信号を送信するように構成してあり、前記車載機は、受信した信号を復調する復調手段を備え、前記受信時間差算出手段は、前記復調手段で復調した各信号の位相差に基づいて、各信号の受信時間差を算出するように構成してあることを特徴とする。
【0019】
第14発明に係る通信システムは、第1発明乃至第8発明のいずれかにおいて、各通信機は、所定の周期の基準周期信号を生成する生成手段と、該生成手段で生成した基準周期信号の周期を他の通信機の基準周期信号の周期に一致させるべく調整する調整手段とを備えることを特徴とする。
【0020】
第15発明に係る通信システムは、第14発明において、一の通信機は、信号を他の通信機へ無線又は有線で送信するように構成してあり、前記他の送信機は、受信した信号に基づいて、基準周期信号の周期を抽出する周期抽出手段を備え、前記調整手段は、前記周期抽出手段で抽出した周期に基づいて基準周期信号の周期を調整するように構成してあることを特徴とする。
【0021】
第16発明に係る通信システムは、第14発明において、所定周期の周期調整信号を送信する周期調整用送信機を備え、各通信機は、前記周期調整用送信機が送信した周期調整信号を受信する受信手段を備え、前記調整手段は、受信した周期調整信号に基づいて基準周期信号の周期を調整するように構成してあることを特徴とする。
【0022】
第17発明に係る通信システムは、第1発明乃至第8発明のいずれかにおいて、各通信機は、GNSS衛星が送信した信号を受信する受信手段と、受信した信号に基づいて、所定の周期の基準周期信号を生成する生成手段とを備えることを特徴とする。
【0023】
第18発明に係る車載機は、少なくとも3つの地点から送信された所定の信号を受信する車載機であって、各送信地点の位置情報を記憶するための記憶手段、第1の地点から送信された信号の送信時点と、該第1の地点を除く他の地点から送信された信号の送信時点との時間差に関する時間差情報を取得する時間差情報取得手段、前記第1の地点から送信された前記信号の受信時点と、前記他の地点から送信された前記信号の受信時点との受信時間差を算出する受信時間差算出手段、並びに、各地点の位置情報、前記時間差情報取得手段で取得した時間差情報及び前記受信時間差算出手段で算出した受信時間差に基づいて、自車位置を特定する特定手段を備えることを特徴とする。
【0024】
第1発明及び第18発明にあっては、道路を走行する車両に搭載された車載機は、第1の通信機が送信した信号の送信時点と、第1の通信機を除く他の通信機(例えば、第2の通信機、第3の通信機)が送信した信号の送信時点との時間差に関する時間差情報(遅れ時間)を取得する。車載機は、第1の通信機が送信した前記信号の受信時点と、他の通信機が送信した前記信号の受信時点との時間差である受信時間差を算出する。車載機は、受信時間差から遅れ時間を差し引いた時間と、各通信機の位置情報とに基づいて、自車位置を特定する。各通信機の位置情報は、地図データから取得して記憶してもよく、あるいは、通信機から受信して記憶してもよい。
【0025】
従来、複数の通信機からの電波の位相差又は受信時間差を検出して位置を測位するロラン方式又はオメガ方式などの双曲線航法が知られているが、道路上を走行する車両の位置を、例えば、1m以下の精度で検出するためには、送信する電波を非常に高い精度で同期させる必要があった。これに対して、本発明によれば、通信機が送信する信号がお互いに同期していなくても、車両の位置を精度良く特定することができ、特に、道路上を走行する車両の位置を逐一高精度に追跡することができる。
【0026】
また、道路上を走行する不特定多数の車両間、あるいは通信機と車両間の通信システムにおいて、通信チャネルが空いている場合にのみ電波の送出が認められる場合には、通信機が当初予定した時点で自由に電波を送出できる状態にあるわけではなく、車載機が常時電波を受信できるとは限らない。このため、ある通信機からの送信時点が不特定に遅れた場合には、車載機で受信した電波の位相差又は受信時間差を検出できたとしても自車の位置を特定することはできない。本発明によれば、第1の通信機が信号を送信した送信時点と、他の通信機が信号を送信する送信時点との時間差に関する時間差情報(遅れ時間)を取得することにより、通信機が電波を送出することができない期間がある場合であっても、車両の位置を精度良く特定することができる。
【0027】
第2発明にあっては、他の通信機(例えば、第2の通信機、第3の通信機)は、第1の通信機が送信した信号を受信する。他の通信機は、信号を車載機へ送信する場合、その信号の送信時点と第1の通信機が送信した信号の送信時点又は第1の通信機から受信した信号の受信時点との時間差に関する時間差情報を送信する。すなわち、時間差情報は、第1の通信機及び他の通信機が送信した各信号の送信時点間の時間差、あるいは、他の通信機が第1の通信機の信号を受信した時点と他の通信機が送信する信号の送信時点との間の時間差も含むものとする。なお、第1の通信機と他の通信機との距離に基づいて、第1の通信機が送信した信号の送信時点と他の通信機がその信号を受信する受信時点との時間差を求めることができる。また、他の通信機が送信する時間差情報は、車載機へ送信する信号に含めることができる。車載機は、時間差情報を受信し、受信した時間差情報に基づいて、自車位置を特定する。
【0028】
例えば、第1の通信機が送信した信号を第2の通信機で受信した受信時点と、第2の通信機が信号を送信する送信時点との時間差をΔt21とし、車載機で第1の通信機から送信された前記信号を受信する受信時点と、第2の通信機から送信された信号を受信する受信時点との受信時間差をt21とする。この場合、時間差ΔT=t21−Δt21−c21が、第1の通信機が送信した信号が車載機に到達するまでの時間と第2の通信機が送信した信号が車載機に到達するまでの実質的な到達時間差となる。ここで、c21は、第1の通信機が送信した信号が第2の通信機に到達するまでの時間であり、第1の通信機と第2の通信機との距離を光速で除算した値となる。到達時間差に電波の伝播速度を積算すれば第1の通信機からの距離と第2の通信機からの距離との距離差が求められる。例えば、車載機及び通信機の高さが一致する場合(例えば、路面からの高さとして、50cm、1mなど)、自車位置は第1の通信機及び第2の通信機の位置を焦点とする双曲線上にある。同様に、第1の通信機と第3の通信機が送信する信号を受信することにより、自車位置は第1の通信機及び第3の通信機の位置を焦点とする双曲線上にある。最終的に自車位置は、2つの双曲線の交点として特定することができる。
【0029】
他の通信機が、車載機へ送信する信号の送信時点と第1の通信機が送信した信号の送信時点又は第1の通信機から受信した信号の受信時点との時間差(遅れ時間)を車載機へ送信することにより、例えば、空きチャネルがなく他の通信機が任意のタイミングで信号を送信することができない場合であっても、車載機は、他の通信機での信号の遅れ時間を取得することができ、自車位置を特定することができる。
【0030】
第3発明にあっては、車載機は、受信した信号から所定の周波数成分を抽出し、抽出した周波数成分に基づいて、算出する受信時間差を補正する。例えば、通信機と車載機との間で周波数が700MHzの信号を送受信するものと設定されている場合に、仮に車載機で受信した信号の周波数が700.7MHzであるとすると、通信機から送信された遅れ時間の値が、例えば、1μsだとしても、車載機では、700/700.7=0.999μsに相当すると判断して、受信時間差の算出時には、0.999μsを採用する。これにより、通信機と車載機とで単位時間の時間長を一致させることができる。
【0031】
第4発明にあっては、各通信機は、送信する信号に該信号が有効であることを示す情報を含めて送信する。車載機は、受信した各信号にその情報が含まれる場合、自車位置を特定する。例えば、車載機は、第1の通信機、第2の通信機及び第3の通信機から受信した各信号にその信号が有効であることを示す情報(例えば、有効フラグ)が含まれていることを確認した場合にのみ自車位置の特定(測位)を行う。これにより、本来の測位用の信号でない信号を受信して、自車位置を誤って特定することを防止することができる。
【0032】
第5発明にあっては、第2の通信機は、第1の通信機が送信した信号を受信し、信号を送信する場合、その信号の送信時点と受信した前記信号の受信時点との時間差(遅れ時間)に関する遅延情報を送信する。第3の通信機は、第1の通信機及び第2の通信機の位置情報を記憶してあり、第1の通信機が送信した前記信号並びに第2の通信機が送信した前記信号及び遅延情報を受信する。第3の通信機は、第1の通信機及び第2の通信機の位置情報、受信した各信号の受信時点及び遅延情報に基づいて、受信した各信号の有効無効を判定する。
【0033】
例えば、第1の通信機、第2の通信機及び第3の通信機の間の距離がお互いに等距離であるとする。第2の通信機が、第1の通信機が送信した信号を受信した時点から時間t(例えば、1μs)だけ遅れて信号を送信したとすると、送信される遅延情報は時間差tとなる。この場合、第3の通信機は、第1の通信機及び第2の通信機から各信号を受信する受信時点の受信時間差は、t(1μs)+c32となる。ここで、c32は、第2の通信機が送信した信号が第3の通信機に到達するまでの時間であり、第2の通信機と第3の通信機との距離を光速で除算した値となる。しかし、仮に第3の通信機で実際に受信した各信号の受信時点の受信時間差が、t+c32と異なる場合、第3の通信機は、各通信機のいずれかが異常であるとして各信号を無効であると判定する。これにより、システム全体の異常の有無を判定することができ、車載機で誤った測位が行われることを未然に防止することができシステム全体の信頼性を向上させることができる。
【0034】
第6発明にあっては、各通信機は、各通信機が送信する信号それぞれに該信号を対応付ける固有の識別情報を含めて送信する。例えば、固有の識別情報(固有情報)は、各通信機を識別するための識別番号、各通信機が送信する信号のうち測位用として利用できる信号の組を識別する信号番号などを含む。これにより、仮に、ある通信機が送信した信号が車載機へ届かない事態が発生した場合であっても、各通信機が送信する正しい組の信号を車載機で判別して自車位置を特定することができる。
【0035】
第7発明にあっては、車載機は、車両に搭載する際の搭載位置の高さ情報を記憶してあり、記憶した高さ情報に基づいて自車位置を特定する。車載機の高さを考慮することで、信号を受信するアンテナ位置を精度良く特定することができるため、各通信機からの位置を精度良く求めることができ、自車位置をより精度良く特定することができる。
【0036】
第8発明にあっては、車載機は、道路形状情報を記憶してあり、記憶した道路形状情報に基づいて自車位置を特定する。道路形状情報は、例えば、道路の路面の高さ情報、道路の勾配情報などであり、道路形状情報を考慮することで、信号を受信するアンテナ位置を精度良く特定することができるため、各通信機からの位置を精度良く求めることができ、自車位置をより精度良く特定することができる。
【0037】
第9発明にあっては、各通信機は、変調した信号を車載機へ送信し、車載機は、受信した信号を復調し、復調後の信号に基づいて、各信号の受信時間差を算出する。例えば、周波数が10kHz程度の信号を数百MHz程度の搬送波で変調することができる。所要の周波数帯の搬送波を用いることにより、電波の所要の周波数帯を用いて信号を送受信することができる。
【0038】
第10発明にあっては、各通信機は、信号を直交周波数多重方式の搬送波に割り当て、信号を割り当てた搬送波を送信する。例えば、送信する信号に逆フーリエ変換して周波数の異なる少なくとも1つのサブキャリア(搬送波)に変換し、変換した信号をDA変換して通信機から車載機に対して送信する。車載機は、送信された搬送波をAD変換し、変換後の信号同士をパターンマッチングすることで各信号の受信時間差を算出する。直交周波数多重方式を用いることにより、他の帯域における通信との干渉を少なくしつつ周波数帯の利用効率を向上させることができる。
【0039】
第11発明にあっては、各通信機は、立ち上がりを有する信号を所定の間隔T1で送信する。所定の間隔T1は、例えば、通信機から送信された信号が車載機で受信されるまでに要する最大時間T2と、マルチパスによる遅延波が直接波に影響を与える時間T3との合計値より長くする。車載機は、各通信機が送信した各信号の立ち上がり時点の時間差に基づいて受信時間差を算出する。これにより、信号の立ち上がり部分がマルチパスによる影響を受けることがなく、精度良く受信時間差を算出することができる。
【0040】
第12発明にあっては、各通信機は、交番波形(例えば、正弦波形)の信号を送信し、車載機は、受信した信号の位相差に基づいて、各信号の受信時間差を算出する。例えば、各通信機から正弦波状の信号を送信し、車載機で受信した各信号の位相差を位相検出器で検出することができ、簡便な構成で受信時間差を算出することができる。
【0041】
第13発明にあっては、各通信機は、正弦波状の信号(例えば、周波数が10kHz)で搬送波(例えば、周波数が数百MHz)を変調(例えば、周波数変調)し、変調後の信号を送信する。車載機は、受信した搬送波を復調して元の信号を取り出し、各信号の位相差に基づいて、受信時間差を算出する。各信号の位相差を位相検出器で検出することができ、簡便な構成で受信時間差を算出することができる。
【0042】
第14発明にあっては、各通信機は、所定の周期の基準周期信号(例えば、水晶発振器による基準クロック信号)を生成し、生成した基準周期信号の周期を他の通信機の基準周期信号の周期に一致させる。これにより、各通信機は、お互いに同一の周期の基準周期信号(基準クロック信号)で動作することができ、各通信機で単位時間の時間長を一致させることができる。例えば、各通信機における1μsの時間長が一致する。
【0043】
第15発明にあっては、一の通信機は、信号を他の通信機へ無線又は有線で送信する。他の通信機は、受信した信号に基づいて、基準周期信号の周期(周波数)を抽出し、抽出した周期に基づいて基準周期信号の周期を調整する。これにより、基準周期信号の周期が、何らかの理由(例えば、経年変化)で初期の値から変化した場合であっても、一方の通信機が送信する信号により、他方の通信機の基準周期信号の周期を調整することができる。これにより、各通信機は、お互いに同一の周期の基準周期信号(基準クロック信号)で動作することができ、各通信機で単位時間の時間長を一致させることができる。
【0044】
第16発明にあっては、周期調整用送信機は、所定周期(周波数)の周期調整信号を各通信機へ送信する。各通信機は、周期調整信号を受信し、受信した周期調整信号に基づいて、基準周期信号の周期(周波数)を調整する。これにより、各通信機は、お互いに同一の周期の基準周期信号(基準クロック信号)で動作することができ、各通信機で単位時間の時間長を一致させることができる。
【0045】
第17発明にあっては、各通信機は、GNSS(Global Navigation Satellite System)衛星が送信した信号(例えば、約10MHzの基準発振周波数の信号)を受信し、受信した信号に基づいて、所定の周期の基準周期信号を生成する。これにより、各通信機は、お互いに同一の周期の基準周期信号(基準クロック信号)で動作することができ、各通信機で単位時間の時間長を一致させることができる。
【発明の効果】
【0046】
本発明にあっては、自車の位置を精度良く特定することができる。また、各通信機の信号送信タイミングに関わらず自車の位置を特定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
以下、本発明を実施の形態を示す図面に基づいて説明する。図1は本発明に係る通信システムの概要を示す模式図である。本発明に係る通信システムは、特に、路車間通信システムとして実現することができ、道路付近の所定の位置に設置され、所定の信号を送受信する通信機10、20、30、車両に搭載された車載機40などを備えている。なお、各通信機10、20、30の設置位置は、あくまで模式的に示したものであって、図1の例に限定されるものではない。
【0048】
本発明に係る通信システムでは、通信機(第1の通信機)10は、所定の信号を通信機(第2の通信機)20、通信機(第3の通信機)30、及び車載機40へ送信する。通信機20は、通信機10が送信した信号を受信した受信時点から信号を車載機40へ送信する送信時点までの遅れ時間(時間差)Δt21の情報を信号に含めて車載機40へ送信する。同様に、通信機30は、通信機10が送信した信号を受信した受信時点から信号を車載機40へ送信する送信時点までの遅れ時間(時間差)Δt31の情報を信号に含めて車載機40へ送信する。車載機40は、通信機10、20、30が送信した前記信号を受信する。車載機40は、通信機10が送信した信号の受信時点と、通信機20が送信した信号の受信時点との時間差である受信時間差t21を算出する。また、車載機40は、通信機10が送信した信号の受信時点と、通信機30が送信した信号の受信時点との時間差である受信時間差t31を算出する。車載機40は、通信機10、20、30の位置情報、遅れ時間Δt21、Δt31、受信時間差t21、t31に基づいて、自車位置を特定する。さらに自車が走行した場合、車載機40は、同様にして自車の位置を繰り返し特定するものである。なお、図1において、道路は1車線のみ示しているが、道路の車線数は1車線に限定されるものではなく、複数の車線を有する道路であってもよい。また、通信機10、20、30の位置情報は絶対位置でもよく、所定の基準地点からの相対位置でもよい。
【0049】
図2は本発明に係る通信システムの構成を示すブロック図である。通信機10は、通信部11、制御部12などを備えている。通信部11は、例えば、VHF/UHF帯の周波数帯域の電波を他の通信機20、30、車載機40に対して送信する。また、通信部11は、他の通信機20、30から信号を受信する。通信部11は、基準クロック信号を生成する水晶発振器、搬送波生成回路、変調回路等(不図示)を備え、基準クロック信号に基づいて所定の信号(例えば、周波数が10kHz程度の矩形波信号)を生成する。通信部11は、制御部12の制御のもと、生成した信号に基づいて搬送波(例えば、周波数が100MHz程度、200MHz程度、あるいは700MHz程度など)を周波数変調し、アンテナ(不図示)を通じて変調後の搬送波を送信する。なお、通信機10が使用する周波数帯域は、一例であって、VHF/UHF帯に限定されるものではなく、他の周波数帯域でもよい。例えば、自動車専用として割り当てられている5.8GHz帯を使用してもよく、また、携帯電話、PHS等で使用する周波数帯域を使用することも可能である。
【0050】
通信機20は、通信部21、制御部22などを備え、通信部21は、通信機10の基準クロック信号の周期と同一周期の基準クロック信号を生成する水晶発振器、搬送波生成回路、変調回路等(不図示)を備えている。
【0051】
また、通信機20は、通信機10が送信した信号を受信した受信時点から信号を車載機40へ送信する送信時点までの遅れ時間(時間差)Δt21の情報を送信する信号に含めて車載機40へ送信する。なお、遅れ時間Δt21は、通信機10が送信した信号を受信した受信時点と通信機10、20間の距離とに基づいて、通信機10が信号を送信した送信時点を算出し、通信機10が信号を送信した送信時点から通信機20が信号を車載機40へ送信する送信時点までの時間差でもよい。なお、遅れ時間Δt21は通信機20が電波を送出することができるタイミングに依存する。
【0052】
通信機30は、通信部31、制御部32などを備え、通信部31は、通信機10、20の基準クロック信号の周期と同一周期の基準クロック信号を生成する水晶発振器、搬送波生成回路、変調回路等(不図示)を備えている。
【0053】
また、通信機30は、通信機10が送信した信号を受信した受信時点から信号を車載機40へ送信する送信時点までの遅れ時間(時間差)Δt31の情報を送信する信号に含めて車載機40へ送信する。なお、遅れ時間Δt31は、通信機10が送信した信号を受信した受信時点と通信機10、30間の距離とに基づいて、通信機10が信号を送信した送信時点を算出し、通信機10が信号を送信した送信時点から通信機30が信号を車載機40へ送信する送信時点までの時間差でもよい。なお、遅れ時間Δt31は通信機30が電波を送出することができるタイミングに依存する。
【0054】
車載機40は、通信機10、20、30との通信機能を有する通信部41、車載機40の動作を制御する制御部42、記憶部43、表示部44、操作部45などを備えている。なお、車載機40は、GPS(Global Positioning System)受信機能、地図データベース(いずれも不図示)などを備えることもできる。
【0055】
通信部41は、通信機10、20、30が送信した信号を受信する。より具体的には、通信部41は、復調回路を備え、通信機10、20、30が送信した電波を受信し、受信した電波を復調して元の信号を抽出する。
【0056】
通信部41は、抽出した各信号に基づいて、通信機10が送信した信号の受信時点と、通信機20が送信した信号の受信時点との時間差である受信時間差t21を算出し、算出した受信時間差t21を制御部42へ出力する。なお、所定の時間内に、複数回にわたって受信時間差を算出した上で、これらの平均値又は中央値等を用いることもできる。このような方法によれば、ノイズ等による影響を低減し、安定した受信時間差を得ることができる。なお、各信号の受信時間差の算出は、信号波形の立ち上がり部分のみならず、立ち下り部分で算出することもできる。
【0057】
また、通信部41は、抽出した各信号に基づいて、通信機10が送信した信号の受信時点と、通信機30が送信した信号の受信時点との時間差である受信時間差t31を算出し、算出した受信時間差t31を制御部42へ出力する。
【0058】
通信部41は、抽出した各信号に基づいて、通信機10が送信した信号を通信機20で受信した受信時点から通信機20が信号を車載機40へ送信する送信時点までの遅れ時間(時間差)Δt21の情報を取得し、取得した遅れ時間(時間差)Δt21の情報を制御部42へ出力する。
【0059】
また、通信部41は、抽出した各信号に基づいて、通信機10が送信した信号を通信機30で受信した受信時点から通信機30が信号を車載機40へ送信する送信時点までの遅れ時間(時間差)Δt31の情報を取得し、取得した遅れ時間(時間差)Δt31の情報を制御部42へ出力する。
【0060】
制御部42は、受信時間差t21、遅れ時間Δt21に基づいて、時間差(到達時間差)ΔT2=t21−Δt21−c21を算出するとともに、受信時間差t31、遅れ時間Δt31に基づいて、時間差(到達時間差)ΔT3=t31−Δt31−c31を算出する。ここで、c21は、通信機10が送信した信号が通信機20に到達するまでの時間であり、通信機10と通信機20との距離を光速で除算した値となり、また、c31は、通信機10が送信した信号が通信機30に到達するまでの時間であり、通信機10と通信機30との距離を光速で除算した値となる。
【0061】
制御部42は、算出した時間差ΔT2、ΔT3、通信機10、20、30の位置情報に基づいて、自車の位置を特定する。
【0062】
図3は遅れ時間と受信時間差との関係を示す説明図である。図3は通信機10が送信した信号を通信機20及び車載機40で受信し、通信機20が送信した信号を車載機40で受信する例を示している。
【0063】
図3に示すように、通信機10は、空きチャネルがないなどの理由で信号を送信することができないタイミング(時間)が経過した時点(信号を送信できるタイミング)で信号w10を通信機20、車載機40へ送信する。通信機10が送信した信号w10は、通信機20、車載機40で受信される。
【0064】
通信機20は、信号w10を受信する。通信機20は、空きチャネルがないなどの理由で信号を送信することができないタイミング(時間)が経過した時点(信号を送信できるタイミング)で信号w20を車載機40へ送信する。通信機20は、信号w20を送信する場合、信号w10の受信時点から信号w20の送信時点までの遅れ時間Δt21の情報を含めて信号w20を送信する。なお、通信機20は、信号w20を送信する場合、信号w10の送信時点から信号w20の送信時点までの遅れ時間dt21(dt21=Δt21+c21)の情報を含めて信号w20を送信することもできる。ここで、c21は、通信機10が送信した信号が通信機20に到達するまでの時間である。
【0065】
車載機40は、信号w20を受信し、信号w10を受信した受信時点と信号w20を受信した受信時点との受信時間差t21を算出する。
【0066】
車載機40は、受信時間差t21、遅れ時間Δt21に基づいて、時間差ΔT2=t21−Δt21−c21を算出する。仮に、通信機10、20が同じタイミングで信号を送信したとすると、時間差ΔT2は、通信機10が送信した信号が車載機40に到達するまでの時間と通信機20が送信した信号が車載機40に到達するまでの実質的な到達時間差となる。到達時間差に電波の伝播速度αを積算すれば、通信機10からの距離と通信機20からの距離との距離差が求められる。すなわち、車載機40、通信機10及び通信機20の高さ(より具体的には、アンテナの高さ)が一致している場合(例えば、路面からの高さとして、1m、1.5mなど)、自車位置は通信機10及び通信機20の位置を焦点とする双曲線上にある。なお、車載機40は、遅れ時間dt21を受信した場合は、時間差ΔT2=t21−dt21を算出する。
【0067】
図4は遅れ時間と受信時間差との関係を示す説明図である。図4は通信機10が送信した信号を通信機30及び車載機40で受信し、通信機30が送信した信号を車載機40で受信する例を示している。
【0068】
図4に示すように、通信機10は、空きチャネルがないなどの理由で信号を送信することができないタイミング(時間)が経過した時点(信号を送信できるタイミング)で信号w10を通信機30、車載機40へ送信する。通信機10が送信した信号w10は、通信機30、車載機40で受信される。
【0069】
通信機30は、信号w10を受信する。通信機30は、空きチャネルがないなどの理由で信号を送信することができないタイミング(時間)が経過した時点(信号を送信できるタイミング)で信号w30を車載機40へ送信する。通信機30は、信号w30を送信する場合、信号w10の受信時点から信号w30の送信時点までの遅れ時間Δt31の情報を含めて信号w30を送信する。なお、通信機30は、信号w30を送信する場合、信号w10の送信時点から信号w30の送信時点までの遅れ時間dt31(dt31=Δt31+c31)の情報を含めて信号w30を送信することもできる。ここで、c31は、通信機10が送信した信号が通信機30に到達するまでの時間である。
【0070】
車載機40は、信号w30を受信し、信号w10を受信した受信時点と信号w30を受信した受信時点との受信時間差t31を算出する。
【0071】
車載機40は、受信時間差t31、遅れ時間Δt31に基づいて、時間差ΔT3=t31−Δt31−c31を算出する。仮に、通信機10、30が同じタイミングで信号を送信したとすると、時間差ΔT3は、通信機10が送信した信号が車載機40に到達するまでの時間と通信機30が送信した信号が車載機40に到達するまでの実質的な到達時間差となる。到達時間差に電波の伝播速度αを積算すれば、通信機10からの距離と通信機30からの距離との距離差が求められる。すなわち、車載機40、通信機10及び通信機30の高さが一致している場合(例えば、路面からの高さとして、1m、1.5mなど)、自車位置は通信機10及び通信機30の位置を焦点とする双曲線上にある。なお、車載機40は、遅れ時間dt31を受信した場合は、時間差ΔT3=t31−dt31を算出する。
【0072】
図5は信号の到達時間差に基づいて自車位置を特定する例を示す説明図である。図5に示すように、通信機10、20を通る直線をx軸とし、通信機10、20の中点を通りx軸に垂直な直線をy軸とする。xy座標において、通信機10のx座標を(a2 +b2 )の2分の1乗とし、通信機20のx座標を(a2 +b2 )の2分の1乗に−1を積算した値とする。また、車載機40、通信機10、20の高さが一致しているとする(例えば、路面からの高さとして、1m、1.5mなど)。この場合、通信機10までの距離と通信機20までの距離との距離差が一定である位置は、式(1)で表すことができる。これは、通信機10、20の位置を焦点とする双曲線である。
【0073】
【数1】

【0074】
すなわち、図5に示すように、例えば、到達時間差がΔT2(時間差ΔT2=t21−Δt21−c21)である場合、ΔT2に基づいて、自車の位置から通信機10までの距離と、自車の位置から通信機20までの距離との距離差を算出することができ、自車の位置は、図中ΔT2で示す双曲線上にある。例えば、通信機10、20が20m離隔して設置されているとし、到達時間差ΔT2が20ナノ秒であるとすると、信号の伝播速度を光速として、車載機40から通信機10までの距離は、車載機40から通信機20までの距離よりも6m短くなる。
【0075】
自車の位置を(x、y)とすると、自車の位置は、式(2)で表される曲線上にある。式(2)を演算すると式(3)を導くことができ、自車は、式(3)で表される双曲線上にあることになる。
【0076】
同様に、通信機10、30を通る直線をx軸とし、通信機10、30の中点を通りx軸に垂直な直線をy軸とすると、自車の位置は、通信機10までの距離と通信機30までの距離との距離差が一定である位置、すなわち通信機10、30の位置を焦点とする双曲線上にある。最終的に、自車の位置は、2つの双曲線の交点として特定することができる。なお、双曲線を特定する場合、記憶部43に車載機40の高さ情報を記憶しておき、記憶した高さを用いて双曲線を特定することができる。
【0077】
表示部44は、ヘッドアップディスプレイ、カーナビゲーションシステム又は監視モニタなどの液晶表示パネルであり、運転者に対して、各種交通情報を表示することができる。例えば、交差点又は停止線までの距離、交差点を安全に走行できない場合の警告等を表示する。
【0078】
操作部45は、各種操作パネルを備え、運転者と車載機40とのユーザインタフェースとして機能する。例えば、操作部45は、運転者の操作により車載機40の動作の開始又は停止の操作を受け付ける。
【0079】
図6は測位用の信号に含まれるデータ構造の例を示す説明図である。図6に示すように通信機10、20、30が送信する信号は、例えば、測位用信号とデータ領域とで構成され、データ領域には、信号が有効であることを示す有効フラグ、固有情報(例えば、各通信機を識別するための識別番号、各通信機が送信する信号のうち測位用として利用できる信号の組を識別する信号番号など)、遅れ時間などの情報を含む。
【0080】
通信部41は、測位用信号から所定の周波数成分を抽出し、抽出した周波数成分に基づいて、算出する受信時間差を補正する。例えば、各通信機10、20、30と車載機40との間で周波数が700MHzの信号を送受信するものと設定されている場合に、仮に通信部41で受信した通信機20の測位用信号の周波数が700.7MHzであるとすると、通信機から送信された遅れ時間の値が、例えば、1μsだとしても、車載機では、700/700.7=0.999μsに相当すると判断して、受信時間差の算出時には、0.999μsを採用する。これにより、通信機20と車載機40とで単位時間の時間長を一致させることができる。
【0081】
図7は信号の受信時点を求める例を示す説明図である。図7(a)の上段は通信機10、20、30のいずれかから受信した信号の例を模式的に示し、下段は車載機40が予め記憶している相関処理(パターンマッチング)を行うためのレプリカ信号である。図7(a)に示すように、車載機40で受信した信号及びレプリカ信号を所定の時間間隔でサンプリングし、波形とレプリカ信号の波形が一致する場合、図7(b)に示すように両信号の相関値が鋭いピークを示す。図7(b)に示すように、通信部41は、相関値の鋭いピークが取れた時点で、信号の受信時点を求める。なお、マルチパスによる遅延波の影響がある場合、相関は図7(c)のようにピークが2つ以上生じる。
【0082】
なお、通信機20、30の通信部21、31も同様にして受信時点を求めることができる。
【0083】
次に自車の位置を特定する方法について説明する。図8は自車の位置を特定する例を示す説明図であり、図9は自車の位置を特定する処理手順を示すフローチャートである。図8に示すように、車載機40を搭載した車両は、道路を停止線Pに向かって走行を続け、地点Aで自車の位置を特定するものとする。また、通信機10の設置位置の座標を(X1、Y1、Z1)、通信機20の設置位置の座標を(X2、Y2、Z2)、通信機30の設置位置の座標を(X3、Y3、Z3)とする。
【0084】
また、車載機40は、予め通信機10、20、30の位置情報を記憶しているものとする。なお、各通信機10、20、30が自身の位置情報を車載機40へ送信する構成でもよく、いずれかの通信機が各通信機10、20、30の位置情報を車載機40へ送信する構成であってもよい。以下、図8及び図9に従って説明する。
【0085】
車載機40は、各通信機10、20、30が送信した信号を受信し(S11)、受信した各信号が有効であるか否かを判定する(S12)。各信号が有効である場合(S12でYES)、車載機40は、各信号の受信時間差(t21、t31)を算出する(S13)。
【0086】
車載機40は、受信した信号から遅れ時間(Δt21、Δt31)を取得し(S14)、各通信機10、20、30の位置情報を取得する(S15)。
【0087】
車載機40は、各通信機10、20、30の位置情報、各信号の受信時間差(t21、t31)、遅れ時間(Δt21、Δt31)に基づいて、自車位置を特定する(S16)。
【0088】
自車の位置である地点Aから通信機10、20、30までの距離をそれぞれLa1、La2、La3とし、自車位置の座標を(Xa、Ya、Za)とすると、式(4)、式(5)が成立する。
【0089】
【数2】

【0090】
ここで、αは電波の伝播速度であり、Zaは車載機40の高さで既知である。また、c21は、通信機10が送信した信号が通信機20に到達するまでの時間であり、通信機10と通信機20との距離を光速で除算した値となり、また、c31は、通信機10が送信した信号が通信機30に到達するまでの時間であり、通信機10と通信機30との距離を光速で除算した値となる。式(4)、式(5)に基づいて、自車位置は座標(Xa、Ya、Za)で求めることができる。
【0091】
車載機40は、自車の走行方位、速度を算出し(S17)、地点Aで求めた位置と所定位置(停止線P)の位置情報に基づいて、地点Aから所定位置までの距離を算出する(S18)。なお、所定位置(停止線P)の位置情報は地図データなどから取得することができる。また、自車の走行方位、速度は、ジャイロセンサ、車速センサ(いずれも不図示)で検出することができる。あるいは、自車位置を特定する処理を繰り返すことにより、所定の時間経過後の自車位置の変化に基づいて算出することもできる。
【0092】
車載機40は、処理終了の指示の有無を判定し(S19)、処理終了の指示がない場合(S19でNO)、ステップS11以降の処理を続ける。各信号が有効でない場合(S12でNO)、車載機40は、ステップS19の処理を行う。一方、処理終了の指示がある場合(S19でYES)、車載機40は、処理を終了する。
【0093】
図10は通信機10、20が送信する信号の送信間隔の例を示す説明図である。図10に示すように、通信機10、20は、空きチャネルがある場合、矩形状の送信波形を所定の間隔T1で送信する。通信機10、20が送信した信号は、車載機40に直接到達する直接波と、周囲に存在する建物等により反射した後に直接波よりも遅延して到達する遅延波とが合成(重畳)した合成波となる。従って、車載機40で受信する信号の受信波形は、送信波形にマルチパスにより遅延した信号が重畳したような波形となり、マルチパスによる遅延波が直接波に影響を与える時間は、例えば、T3となる。また、車載機40と通信機10、20との距離に応じて、車載機40が信号を受信する時点は、通信機10、20が信号を送信した時点から、例えば、最大時間T2だけ遅れる。
【0094】
この場合、通信機10、20で送信する信号の送信間隔T1を、T1>T2+T3に設定することにより、車載機40で受信した各信号の立ち上がり部分がマルチパスによる影響を受けることがなく、精度良く受信時間差を求めることができる。なお、通信機10、30が送信する信号の送信間隔についても同様である。
【0095】
図11は各通信機10、20、30の基準クロック信号の例を示す説明図である。図11に示すように、各通信機10、20、30は、同一周期Tの基準クロック信号を生成する水晶発振器を備えている。これにより、各通信機10、20、30は、お互いに同一の周期の基準クロック信号で動作することができ、各通信機10、20、30で単位時間の時間長を一致させることができる。例えば、各通信機10、20、30における1μsの時間長を一致させることができる。
【0096】
基準クロック信号を生成する水晶発振器の発振周波数は、経年変化等により誤差を生じ、各通信機10、20、30の基準クロック信号の周期(周波数)がずれる場合がある。以下、各通信機10、20、30の基準クロック信号の周期を同一にする方法について説明する。
【0097】
各通信機10、20、30には、位相同期回路(PLL:Phase-locked loop)を設けておく。例えば、通信機10は、信号を通信機20へ無線又は有線で送信する。通信機20は、受信した信号から基準クロック信号の周期(又は周波数)を抽出して、抽出した周期と同一の周期になるように基準クロック信号の周期(周波数)を調整する。これにより、基準クロック信号の周期が、何らかの理由(例えば、経年変化)で初期の値から変化した場合であっても、通信機10が送信する信号により、通信機20の基準クロック信号の周期を調整することができる。これにより、通信機10、20は、お互いに同一の周期の基準クロック信号で動作することができ、各通信機10、20で単位時間の時間長を一致させることができる。
【0098】
また、通信機10、20、30とは別に、周期調整用送信機を設置する。周期調整用送信機は、所定周期の周期調整信号を通信機10、20、30へ送信する。通信機10、20、30は、周期調整信号を受信し、周期調整信号の周期(周波数)に基づいて、基準クロック信号の周期(周波数)を調整する。
【0099】
また、GPS等を含むGNSS(Global Navigation Satellite System)衛星が送信する信号を受信し、受信した信号から基準発振周波数(例えば、約10MHz)の信号を抽出し、抽出した基準発振周波数の信号に基づいて、基準クロック信号の周期(周波数)を調整することもできる。
【0100】
通信機10、20、30が送信する信号の波形は、矩形波形に限定されるものではなく、正弦波形であってもよい。この場合、通信部41は、位相検出器(不図示)を備え、通信機10、20、30が送信した信号を受信し、受信した各信号を位相検出器へ出力する。位相検出器は、各信号の位相差を検出し、これにより、簡便な構成で各信号の受信時間差(t21、t31)を算出することができる。通信部11、21、31についても同様である。
【0101】
なお、上述の正弦波形の信号を送信する場合、信号を変調して送信することもできる。例えば、通信機10、20、30は、正弦波状の信号(例えば、周波数が10kHz)で搬送波(例えば、周波数が数百MHz)を変調(例えば、周波数変調)し、変調後の信号を送信する。車載機40は、受信した搬送波を復調して元の信号を取り出し、各信号の位相差に基づいて、受信時間差を算出することができる。
【0102】
図12は各通信機10、20、30の信号を識別する例を示す説明図である。各通信機10、20、30それぞれは、測位用の1組の信号w10−1、w20−1、w30−1を送信する。各通信機10、20、30は所定の時間経過後に、別の測位用の1組の信号w10−2、w20−2、w30−2を送信する。同様に、各通信機10、20、30は所定の時間経過後に、別の測位用の1組の信号w10−3、w20−3、w30−3を送信する。以降、同様に測位用の1組の信号を繰り返し送信する。ここで、w10−1、w20−1、w30−1、…は信号の固有情報である。すなわち、w10、w20、w30は各通信機10、20、30を識別する識別番号であり、1、2、3は信号の組を識別する信号番号である。なお、固有情報は一例であって、これに限定されるものではない。
【0103】
車載機40は、1組の信号w10−1、w20−1、w30−1を受信した場合、受信した各信号に基づいて自車位置の特定処理を行う。図12に示すように、仮に信号w10−2を受信することができない場合、車載機40は、信号の固有情報に基づいて、信号w20−2、w30−2を測位用の信号として使用せず、自車の位置を特定しない。その後、車載機40は、1組の信号w10−3、w20−3、w30−3を受信した場合、受信した各信号に基づいて自車位置の特定処理を行う。これにより、仮に、ある通信機が送信した信号が車載機40へ届かない事態が発生した場合であっても、各通信機10、20、30が送信する正しい組の信号を車載機40で判別して用いることができる。
【0104】
図13は通信機30で信号の有効無効を判定する例を示す説明図である。図13は通信機10が送信した信号を通信機20及び通信機30で受信し、通信機20が送信した信号を通信機30で受信する例を示している。
【0105】
図13に示すように、通信機10は、信号w10を通信機20、30へ送信する。通信機10が送信した信号w10は、通信機20、30で受信される。
【0106】
通信機20は、信号w10を受信する。通信機20は、空きチャネルがないなどの理由で信号を送信することができないタイミング(時間)が経過した時点(信号を送信できるタイミング)で信号w20を通信機30へ送信する。通信機20は、信号w20を送信する場合、信号w10の受信時点から信号w20の送信時点までの遅れ時間(例えば、1μs)である遅延情報を含めて信号w20を送信する。
【0107】
通信機30は、信号w20を受信し、信号w10を受信した受信時点と信号w20を受信した受信時点との受信時間差(例えば、2μs)を算出する。一方、通信機30は、通信機20から送信された信号w20に含まれる遅れ時間(1μs)を取得し、取得した遅れ時間に、通信機20が送信した信号が通信機30に到達する時間を加算した値と、算出した受信時間差(2μs)とを比較し、受信した各信号w10、w20の有効無効、あるいは自身の有効無効を判定する。なお、遅れ時間と受信時間差との比較は、両者の差が所定の閾値以下である場合に、信号が有効であると判定するように構成することができる。なお、閾値は、各通信機の位置に応じて適宜設定することができる。また、判定結果は、送信する信号の有効フラグに設定することができる。
【0108】
例えば、通信機10、通信機20、及び通信機30の間の距離がお互いに等距離であるとする。通信機20が、通信機10が送信した信号を受信した時点から遅れ時間(例えば、1μs)だけ遅れて信号を送信したとすると、送信される遅延情報は時間差tとなる。この場合、通信機30は、通信機10及び通信機20から各信号を受信する受信時点の受信時間差は、通信機10、20までの距離が等しいため、時間差t(1μs)+c32となるはずである。ここで、c32は、通信機20が送信した信号が通信機30に到達するまでの時間であり、通信機20と通信機30との距離を光速で除算した値(例えば、0.5μs)となる。しかし、仮に、通信機30で実際に受信した各信号の受信時点の受信時間差が、t+c32(1.5μs)と異なる場合(例えば、2μs)、通信機30は、各通信機10、20、30のいずれかが異常であるとして各信号を無効であると判定する。これにより、システム全体の異常の有無を判定することができ、車載機40で誤った測位が行われることを未然に防止することができシステム全体の信頼性を向上させることができる。
【0109】
図14は道路形状情報により自車位置を特定する方法を示す説明図である。道路形状情報は、道路の路面の高さ情報、道路の勾配情報などであり、一例として、図14に示すように、通信機10付近の道路地点を原点とし、原点から通信機30付近の道路地点の方向をX軸、高さ方向をZ軸とする。また、原点からxだけ離れた地点Aの道路の高さzを、z=0.01xとする。車載機40のアンテナの路面からの高さを1.5mとすると、地点Pにおける車載機40のアンテナの高さzは、z=0.01x+1.5で求められる。
【0110】
式(4)、式(5)のZaに代えて、z=0.01x+1.5を用いることにより、式(4)、式(5)からアンテナの位置(Xa、Ya、Za)を求めることができる。これにより、自車位置をより精度良く特定することができる。
【0111】
以上説明したように、本発明にあっては、車両の位置を精度良く特定することができ、特に、道路上を走行する車両の位置を逐一高精度に追跡することができる。特に、各通信機の信号送信タイミングに関わらず自車の位置を特定することができる。また、通信機と車載機とで単位時間の時間長を一致させることができる。また、本来の測位用の信号でない信号を受信して、自車位置を誤って特定することを防止することができるとともに、システム全体の信頼性を向上させることができる。また、各通信機が送信する正しい組の信号を車載機で判別して用いることができる。
【0112】
また、本発明にあっては、所要の周波数帯の搬送波を用いることにより、電波の所要の周波数帯を用いて信号を送受信することができる。また、信号の立ち上がり部分がマルチパスによる影響を受けることがなく、精度良く受信時間差を算出することができる。また、簡便な構成で受信時間差を算出することができる。また、各通信機は、お互いに同一の周期の基準周期信号(基準クロック信号)で動作することができ、各通信機で単位時間の時間長を一致させることができる。
【0113】
上述の実施の形態では、通信機10、20、30が信号を変調して送信し、車載機40では復調して元の信号を抽出し、各信号の受信時間差を算出する構成であったが、これに限定されるものではなく、通信機10、20、30で、信号を直交周波数多重方式の周波数が異なる搬送波に割り当て、信号が割り当てられた搬送波を送信する。例えば、送信する信号に逆フーリエ変換して周波数の異なる少なくとも1つのサブキャリア(搬送波)に変換し、変換した信号をDA変換して通信機10、20、30から車載機40に対して送信する。車載機40は、送信された搬送波をAD変換し、変換後の信号同士をパターンマッチングすることで各信号の受信時間差を取得する。これにより、他の帯域における通信との干渉を少なくしつつ周波数帯の利用効率を向上させることができる。なお、例えば、通信機20、30が、通信機10が送信した信号を受信する場合も同様である。
【0114】
上述の実施の形態では、時間差情報(遅れ時間)として、例えば、通信機10が送信した信号を通信機20で受信した受信時点と、通信機20が信号を送信する送信時点との時間差Δt21を用いることにより、到達時間差ΔT(ΔT=t21−Δt21−c21)を求める構成であったが、時間差情報として、通信機10が信号を送信した送信時点と、通信機20が信号を送信する送信時点との時間差dt21を用いることもできる。この場合、到達時間差ΔTは、ΔT=t21−dt21とすることができる。通信機10と通信機30との間の関係も同様である。
【0115】
上述の実施の形態では、測位用として通信機を3台用いる構成であったが、通信機の数は、3台に限定されるものではなく、4台以上用いる構成であってもよい。例えば、通信機を4台用いる場合、車載機40等の高さ情報は不要となり、4台のうちのいずれか2つの通信機が送信した各信号に基づいて特定される3つの双曲面の交点を自車の位置として特定することができる。
【0116】
上述の実施の形態では、各通信機10、20、30から1組の測位用の信号を受信する間に車載機40の位置は、変化していないとして自車の位置を特定する構成であるが、自車が高速で走行するような場合、あるいは、信号の遅れ時間が車両の走行速度に比べて無視できない程遅れるような場合には、各通信機10、20、30からの信号を受信する間に自車が走行した距離に基づいて自車の位置を補正することもできる。
【0117】
上述の実施の形態では、通信機を3台使用する構成であったが、通信機に加えて、光ビーコン、電波ビーコンなどの路側装置を設けることもできる。例えば、光ビーコンから位置情報を車載機へ送信し、光ビーコンから受信した位置情報と、各通信機から受信した測位用の信号に基づいて特定した自車位置との差を比較し、この差が所定の閾値より大きい場合には、システムに異常があると判定することができる。また、光ビーコンから信号を受信した時点で、車載機は各通信機による自車位置の特定処理を行うことができるエリア(測位領域)に入ったことを通知する用途に使用することもできる。
【0118】
上述の発明により、走行中の自車の位置を精度良く特定することができるため、本発明を用いることにより、例えば、車載機で前方の信号機の表示情報を受信し、受信した表示情報に基づいて交差点の手前で安全に停止することができるか否か、あるいは、交差点を安全に通過することができるか否かを高精度に判定し、判定結果に応じて運転者に音声で注意を促すことができる。また、車載機で受信した信号機の表示情報に基づいて、交差点を安全に通過することができるか否かを高精度に判定し、判定結果に応じて車両のブレーキ制御を行うこともでき、交通事故を未然に防止して交通の安全性を高めることができる。
【0119】
開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】本発明に係る通信システムの概要を示す模式図である。
【図2】本発明に係る通信システムの構成を示すブロック図である。
【図3】遅れ時間と受信時間差との関係を示す説明図である。
【図4】遅れ時間と受信時間差との関係を示す説明図である。
【図5】信号の到達時間差に基づいて自車位置を特定する例を示す説明図である。
【図6】測位用の信号に含まれるデータ構造の例を示す説明図である。
【図7】信号の受信時点を求める例を示す説明図である。
【図8】自車の位置を特定する例を示す説明図である。
【図9】自車の位置を特定する処理手順を示すフローチャートである。
【図10】通信機が送信する信号の送信間隔の例を示す説明図である。
【図11】各通信機の基準クロック信号の例を示す説明図である。
【図12】各通信機の信号を識別する例を示す説明図である。
【図13】通信機で信号の有効無効を判定する例を示す説明図である。
【図14】道路形状情報により自車位置を特定する方法を示す説明図である。
【符号の説明】
【0121】
10、20、30 通信機
11、21、31 通信部
12、22、32 制御部
40 車載機
41 通信部
42 制御部
43 記憶部
44 表示部
45 操作部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の信号を送信する少なくとも3つの通信機と、該通信機が送信した信号を受信する車載機とを備える通信システムであって、
前記車載機は、
各通信機の位置情報を記憶するための記憶手段、
第1の通信機が送信した信号の送信時点と、該第1の通信機を除く他の通信機が送信した信号の送信時点との時間差に関する時間差情報を取得する時間差情報取得手段、
前記第1の通信機が送信した前記信号の受信時点と、前記他の通信機が送信した前記信号の受信時点との受信時間差を算出する受信時間差算出手段、
並びに、各通信機の位置情報、前記時間差情報取得手段で取得した時間差情報及び前記受信時間差算出手段で算出した受信時間差に基づいて、自車位置を特定する特定手段
を備えることを特徴とする通信システム。
【請求項2】
前記他の通信機は、
前記第1の通信機が送信した信号を受信する受信手段と、
信号を前記車載機へ送信する場合、前記時間差情報を送信する送信手段と
を備え、
前記時間差情報は、
前記他の通信機が送信する信号の送信時点と前記第1の通信機が送信した信号の送信時点又は該信号の前記他の通信機での受信時点との時間差に関する情報であり、
前記車載機は、
前記時間差情報を受信する受信手段を備え、
前記特定手段は、
前記受信手段で受信した時間差情報に基づいて、自車位置を特定するように構成してあることを特徴とする請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
各通信機は、
所定の周波数成分を含む信号を送信するように構成してあり、
前記車載機は、
受信した信号に基づいて前記周波数成分を抽出する周波数成分抽出手段と、
該周波数成分抽出手段で抽出した周波数成分に基づいて、前記受信時間差算出手段で算出する受信時間差を補正する補正手段と
を備えることを特徴とする請求項1に記載の通信システム。
【請求項4】
各通信機は、
送信する信号に該信号が有効であることを示す情報を含めて送信するように構成してあり、
前記特定手段は、
受信した各信号に前記情報が含まれる場合、自車位置を特定するように構成してあることを特徴とする請求項1に記載の通信システム。
【請求項5】
第2の通信機は、
前記第1の通信機が送信した信号を受信する受信手段と、
信号を送信する場合、該信号の送信時点と前記受信手段で受信した信号の受信時点との時間差に関する遅延情報を送信する送信手段と
を備え、
第3の通信機は、
前記第1の通信機及び前記第2の通信機の位置情報を記憶する記憶手段と、
前記第1の通信機が送信した前記信号並びに前記第2の通信機が送信した前記信号及び遅延情報を受信する受信手段と、
前記位置情報、前記受信手段で受信した各信号の受信時点及び遅延情報に基づいて、受信した各信号の有効無効を判定する判定手段と
を備えることを特徴とする請求項1に記載の通信システム。
【請求項6】
各通信機は、
各通信機が送信する信号それぞれに該信号を対応付ける固有の識別情報を含めて送信するように構成してあり、
前記特定手段は、
前記識別情報で対応付けられた信号に基づいて、自車位置を特定するように構成してあることを特徴とする請求項1に記載の通信システム。
【請求項7】
前記車載機は、
搭載位置の高さ情報を記憶するための記憶手段を備え、
前記特定手段は、
前記高さ情報に基づいて自車位置を特定するように構成してあることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の通信システム。
【請求項8】
前記車載機は、
道路形状情報を記憶するための記憶手段を備え、
前記特定手段は、
前記道路形状情報に基づいて自車位置を特定するように構成してあることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の通信システム。
【請求項9】
各通信機は、
信号を変調する変調手段を備え、
該変調手段で変調した信号を送信するように構成してあり、
前記車載機は、
受信した信号を復調する復調手段を備え、
前記受信時間差算出手段は、
前記復調手段で復調した信号に基づいて、各信号の受信時間差を算出するように構成してあることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の通信システム。
【請求項10】
各通信機は、
信号を直交周波数多重方式の搬送波に割り当てる割当手段を備え、
該割当手段で信号が割り当てられた搬送波を送信するように構成してあり、
前記車載機は、
前記搬送波を受信する搬送波受信手段を備え、
前記受信時間差算出手段は、
受信した搬送波に基づいて、各信号の受信時間差を算出するように構成してあることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の通信システム。
【請求項11】
各通信機は、
立ち上がりを有する信号を所定の間隔で送信するように構成してあり、
前記受信時間差算出手段は、
受信した各信号の立ち上がり時点に基づいて、各信号の受信時間差を算出するように構成してあることを特徴とする請求項9又は請求項10に記載の通信システム。
【請求項12】
各通信機は、
交番波形の信号を送信するように構成してあり、
前記受信時間差算出手段は、
受信した各信号の位相差に基づいて、各信号の受信時間差を算出するように構成してあることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の通信システム。
【請求項13】
各通信機は、
信号を変調する変調手段を備え、
該変調手段で変調した信号を送信するように構成してあり、
前記車載機は、
受信した信号を復調する復調手段を備え、
前記受信時間差算出手段は、
前記復調手段で復調した各信号の位相差に基づいて、各信号の受信時間差を算出するように構成してあることを特徴とする請求項12に記載の通信システム。
【請求項14】
各通信機は、
所定の周期の基準周期信号を生成する生成手段と、
該生成手段で生成した基準周期信号の周期を他の通信機の基準周期信号の周期に一致させるべく調整する調整手段と
を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の通信システム。
【請求項15】
一の通信機は、
信号を他の通信機へ無線又は有線で送信するように構成してあり、
前記他の送信機は、
受信した信号に基づいて、基準周期信号の周期を抽出する周期抽出手段を備え、
前記調整手段は、
前記周期抽出手段で抽出した周期に基づいて基準周期信号の周期を調整するように構成してあることを特徴とする請求項14に記載の通信システム。
【請求項16】
所定周期の周期調整信号を送信する周期調整用送信機を備え、
各通信機は、
前記周期調整用送信機が送信した周期調整信号を受信する受信手段を備え、
前記調整手段は、
受信した周期調整信号に基づいて基準周期信号の周期を調整するように構成してあることを特徴とする請求項14に記載の通信システム。
【請求項17】
各通信機は、
GNSS衛星が送信した信号を受信する受信手段と、
受信した信号に基づいて、所定の周期の基準周期信号を生成する生成手段と
を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の通信システム。
【請求項18】
少なくとも3つの地点から送信された所定の信号を受信する車載機であって、
各送信地点の位置情報を記憶するための記憶手段、
第1の地点から送信された信号の送信時点と、該第1の地点を除く他の地点から送信された信号の送信時点との時間差に関する時間差情報を取得する時間差情報取得手段、
前記第1の地点から送信された前記信号の受信時点と、前記他の地点から送信された前記信号の受信時点との受信時間差を算出する受信時間差算出手段、
並びに、各地点の位置情報、前記時間差情報取得手段で取得した時間差情報及び前記受信時間差算出手段で算出した受信時間差に基づいて、自車位置を特定する特定手段
を備えることを特徴とする車載機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2008−249550(P2008−249550A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−92361(P2007−92361)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】