説明

通信装置の位置情報を利用する通信システム

【課題】 本発明の目的は、通報者からの通報が発生したとき、通報者の周囲に位置する人への当該通報された情報の提供と、さらにその周囲に位置する人に関する情報の入手を効率的に行うことである。
【解決手段】
本発明の通信システムは、通信装置から送信される位置情報に基づき、その位置情報を含む報知信号を生成して他の通信装置へ報知する手段を備え、通信装置は、受信した報知信号に含まれる位置情報と当該通信装置において計測される位置情報を比較し、受信した位置と計測された位置が所定の距離以内であれば、報知信号の報知内容を所有者に表示する手段と当該通信装置が有する情報を自動的に送信する手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ある通信装置から通報される位置情報に基づき、その通信装置周辺の他の通信装置への情報の提供を行う通信システムに関し、さらに前記他の通信装置からの情報の入手を行う通信システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、通信装置の中でも、移動端末に代表される移動体通信市場は飛躍的に発展している。現在にても、人口に対するその普及率は非常に高く、今後も加入者数の増加が見込まれている。また、従来の音声通信に加え、データ通信の割合も急増しつつある。さらに、現在の移動体通信システムにおいては、移動端末自体が検出した位置情報による様々なサービスも行われている。この位置情報は、例えばCDMA(Code Division Multiple Access)方式では、複数の基地局から受信する電波を用いて計測することが可能である。また、GPS( Global Positioning Systems )衛星から受信する電波を用い、現在の位置を計測できる移動端末も存在する。
【0003】
ところで、近年、事件や事故などの緊急事態の多発に伴い、その防止や早期解決を目的とする装置やサービスが拡大している。例えば、特別な緊急通報ボタンを装備する通信装置が開発されている。このボタンを押下すると、予め設定された通報先に通報され、さらに通報者の個人情報や位置情報なども合わせて伝達される。また、緊急通報ボタンに加えて防犯カメラや赤色灯を装備する緊急通報装置の、道路や公園への設置も進められている。この緊急通報ボタンを押下すると、予め設定された通報先に通報され、さらに赤色灯の点灯やブザーの鳴動により周囲に通知される。
【0004】
以後、説明を簡略化するため、通信装置として移動端末を想定して記述する。
従来の緊急通報サービスを行うための移動体通信網の構成例を図6に示す。移動体通信網は、移動端末(601)、基地局(611)、網接続装置(621)、音声通信網(631)、データ通信網(632)、緊急通報処理装置(641)、通報先(651)から構成される。移動端末(601)から基地局(611)までは無線回線で、基地局(611)から音声通信網(631)、データ通信網(632)、緊急通報処理装置(641)までは有線回線で接続される。基地局(611)は、無線回線上の信号と有線回線上の信号の変換および中継を行い、網接続装置(621)は、無線回線および有線回線の制御や管理を行う。音声通信網(631)およびデータ通信網(632)では、それぞれ音声およびデータが転送される。データ通信網(632)にはInternetなどが含まれる。通報先(651)には、警察や消防のほか、移動端末の所有者が指定する特別通報先が含まれる。
【0005】
通報者が移動端末(601)の緊急通報ボタンを押下すると、移動端末(601)からの個人情報や位置情報などは、基地局(611)、網接続装置(621)さらに緊急通報処理装置(641)を経由して通報先(651)に転送される。一方、通報者が通報先と音声にて通信するときは、緊急通報処理装置(641)ではなく音声通信網(631)を経由して接続される。
【0006】
従来の移動端末(601)の構成を図7に示す。移動端末(601)は、無線送受信部(701)、制御部(711)、記憶部(712)、マイク部(721)、スピーカ部(722)、キー入力部(723)、画面表示部(724)、GPS受信部(731)から構成される。カメラ部やラジオ/テレビ受信部を有する移動端末も存在する。なお、緊急通報ボタンは、キー入力部(723)に含まれる。
【0007】
次に、緊急通報設定における画面表示部(724)の画面遷移を図8に示す。移動端末(601)が待受け中のとき、利用者は、キー入力部(723)および画面表示部(724)を使用して、緊急通報設定を行う。緊急通報ボタン選択画面(811)は、待受け画面(801)より移行する。そして、緊急通報ボタン選択画面(811)にてボタン−A、ボタン−Bなどの緊急通報ボタンを選択し、選択されたボタンのための緊急通報設定画面(821)に移行する。緊急通報設定画面(821)では、通報先や緊急種別に加え、名前、緊急連絡先、血液型などの個人情報を設定する。緊急種別は、発生した緊急事態の種類を示すものであり、例えば、犯罪や事故、怪我などの程度を示す。一方、電話番号は、移動端末(601)の識別情報のため予め設定され、ユーザが変更することはできないものである。また、緊急通報処理装置(641)に関する情報も予め設定される。この緊急通報設定は、記憶部(712)に保持される。なお、位置情報は、緊急通報設定に関係なく個人情報に添付される。
【0008】
従来の緊急通報シーケンスを図9に示す。緊急通報設定の後に、通報者が緊急通報ボタンを押下するとき、記憶部(712)に保持される個人情報が無線送受信部(701)を経由して移動端末(601)から送信される。また、移動端末はGPS受信部(731)にて位置情報を計測し、それも合わせて送信する。移動端末(601)からの通報は、基地局(611)、網接続装置(621)を通じて緊急通報処理装置(641)に送信される。
【0009】
緊急通報処理装置(641)は、移動端末(601)からの個人情報や位置情報などを通報先(651)に転送する。なお、移動端末(601)が個人情報や位置情報などを送信した後に、通報者は通報先と音声にて通信することもできる。
【0010】
上記の移動端末を用いた緊急通信システムと同様な目的のシステムが、下記特許文献1に記載されている。特許文献1に記載されたシステムは、現在位置の情報を取得して位置情報データとして送信するとともに、緊急時に緊急信号を送信する移動端末と、移動端末から送信される位置情報データを公衆通信網を介して受信し、要求に応じて該位置情報データを出力する位置情報サービスサーバと、緊急信号を受信した場合に当該緊急信号を出力した移動端末の位置情報データを位置情報サービスサーバから取得して、移動端末毎に設定される通報先に対して前記移動端末の位置情報データを含む緊急情報データを送信する緊急情報サービスサーバとを有している。また、通報先として、移動端末の利用者と関係のある登録者が保有する登録者端末の存在することも記載されている。
【特許文献1】特開2002−16726号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前述のとおり、特別な緊急通報ボタンを装備する通信装置は開発されている。また、緊急通報ボタンに加えて防犯カメラや赤色灯を装備する緊急通報装置の設置も進められている。しかしながら、これらの装置やサービスが存在しても、通報してから警察や消防などが到着するまで時間を要するときには、犯人や目撃者など周囲に位置していた人はその場所を離れてしまい、目撃情報等の収集が困難になる。また、防犯カメラを装備する装置が設置されていても、その場所が緊急事態の発生した場所から離れている場合には、そこに有効な情報が含まれていない可能性がある。
【0012】
そこで、本発明の目的は、緊急通報等が発生したとき、通報者の周囲に位置する人への情報の提供を行うことである。さらにその通報者の周囲に位置する人に関する情報の入手を効率的に行うことである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するために、本発明の通信システムは、通信装置から送信される位置情報に基づき、該位置情報を含む報知信号を生成して他の通信装置へ報知する手段を備える。
【0014】
また、本発明の通信装置は、受信した報知信号に含まれる位置情報と該通信装置において計測される位置情報を比較し、送信された位置と計測された位置が所定の距離以内であれば、報知信号の報知内容を所有者に表示し、該通信装置が有する情報を自動的に送信する手段を備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、通報者の周囲に位置する人に対して情報を提供することができる。さらにその周囲に位置する人に関する情報を入手することができるので、例えば、緊急通報が発生したとき、通報者の周囲に位置する人に関する情報を入手して目撃者や犯人、加害者の探索を容易にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明による移動体通信網の構成例を図1Aに示す。移動体通信網の構成自体は、移動端末(101)、基地局(111)、網接続装置(121)、音声通信網(131)、データ通信網(132)、緊急通報処理装置(141)、通報先(151)から構成されるものであり、その点では図6に記載されたものと同様であるが、緊急通報処理装置(141)には報知機能が追加され、また、移動端末として本発明の移動端末(101)が利用される。
【0017】
緊急通報処理装置(141)の報知機能は、通報者から伝達される位置情報に基づき報知信号を作成し、かつ報知信号を網接続装置(121)に送信する機能である。
例えば緊急通報処理装置(141)は、移動端末(101)、基地局(111)及び網接続装置(121)からなる移動網側に移動網を運用するオペレータの設備として設置される。そして、図示するように音声通信網(131)及びデータ通信網(132)とは並列に接続され、通報先(151)には専用回線で接続される。
【0018】
なお、通報者の周囲に位置する人が、同じオペレータに属する移動端末を所持するとは限らないため、移動網を運用するオペレータがその地域に複数存在する場合は、図1Bに示すように、緊急通報処理装置(141)は各オペレータ1〜3の網接続装置(121)に接続する。
【0019】
図1Bに示した例では、緊急通報処理装置(141)は各オペレータに共通に設けられているが、オペレータ毎に設けることも可能である。また、警察等の通報先(151)に設けるなど、緊急通報サービスの内容に応じて設けることも考えられる。
【0020】
さらに、移動網に直接接続するのではなく、音声通信網(131)やデータ通信網(132)を介して接続することも可能である。また、通報先(151)との接続も、接続時間に比較的余裕を持てる種類の緊急通報であれば、専用線による接続に替えて、公衆網を介した接続とすることもできる。
【0021】
いずれの場合でも、緊急通報処理装置(141)が適切なセル(基地局のカバーする区域)を決定し、それらのセルに報知信号を送信するためには、緊急通報処理装置(141)は各セルの所在する範囲を示す位置情報が必要である。まず、通報者の位置情報から通報者の在圏するセルを判別し、当該セルに報知信号を送信することが最低限必要である。また、通報者が、その在圏するセルの境界に近い場所に位置する場合には、隣接するセルにも報知信号を送信する必要がある。さらに、移動網を運用するオペレータがその地域に複数存在する場合は、それぞれのセルの位置情報に基づいて必要なセルに報知信号を送信しなければならない。
【0022】
複数のオペレータが存在する場合には、セルの位置情報には企業秘密が存在しうること、報知信号の受信者の個人情報、すなわち各オペレータの契約者情報等が送信されることなどから、図1Bに示した構成で、各オペレ−タに対して中立的な立場の者が緊急通報処理装置(141)を運用することが望ましい。
【0023】
次に、本発明の移動端末(101)の構成を図2に示す。移動端末(101)は、図7に記載された従来のものと同様である無線送受信部(201)、制御部(211)、記憶部(212)、マイク部(221)、スピーカ部(222)、キー入力部(223)、画面表示部(224)、GPS受信部(231)に加え、制御部(211)に位置比較機能、時間調整機能、自動通知機能が追加される。
【0024】
制御部(211)の位置比較機能は、報知信号に含まれる通報者の位置情報とGPS受信部(231)にて計測される位置情報を比較する機能である。また、時間調整機能は、位置比較機能により起動され、自動通知機能を起動させるまでの時間を移動端末(101)毎に調整する機能である。さらに、自動通知機能は、時間調整機能により起動され、記憶部(212)に保持される個人情報や位置情報などを緊急通報処理装置(141)に自動的に送信する機能である。
【0025】
緊急通報ボタンは、従来例の場合と同様にキー入力部(223)に含まれるが、専用のものではなくワンタッチダイヤルや短縮ダイヤルなどで代用することも可能である。
移動端末(101)の配置例を図3に示す。図3に示された例では、基地局(111)のセル内に移動端末1(101)、移動端末2(101)及び移動端末3(101)が在圏しており、移動端末2(101)は、移動端末1(101)の近傍である点線で示されている円内に位置している。
【0026】
上記配置例に従う本発明の緊急通報シーケンスを図4Aに示す。図8で示した従来例の場合と同様に緊急通報設定がされているものとする。
通報者が緊急通報ボタンを押下すると、記憶部(212)に保持される個人情報や緊急通報ボタンに対応して設定された通報先を示す情報が無線送受信部(201)を経由して図示の移動端末1(101)から送信される。また、移動端末1(101)はGPS受信部(231)にて位置情報を計測し、それも合わせて送信する。位置情報を計測するタイミングは、移動速度が大きくないのであれば、緊急通報ボタンを押下してからではなく、予め一定時間間隔で計測するようにして、位置情報を記憶部(212)に記憶しておくこともできる。そのようにすることにより、緊急通報ボタンの押下時の位置情報計測時間を省略することができる。
【0027】
移動端末1(101)から送信された通報信号は、基地局(111)、網接続装置(121)を経由して緊急通報処理装置(141)に送信される。このとき、網接続装置(121)は通報者が位置するセルの識別子を緊急通報処理装置(141)に通知してもよい。
【0028】
緊急通報処理装置(141)は、移動端末1(101)からの個人情報や位置情報などを通報先情報が示す通報先(151)に転送する。さらに、本発明による報知機能を使用して、通報者から伝達される位置情報に基づき報知信号を作成する。なお、緊急通報処理装置(141)が、移動端末1(101)からの個人情報や位置情報などを保持して、通報先(151)と連携して各種処理を行ってもよい。
【0029】
緊急通報処理装置(141)で作成された報知信号は、網接続装置(121)および基地局(111)を経由して、通報者が位置するセルに送信される。基地局(111)から移動端末(101)までの無線区間において、例えば、第3世代移動体通信システムの標準化プロジェクトである3GPP(3rd Generation Partnership Project)による標準規格のセルブロードキャスト機能が使用される。なお、報知信号は、先に述べたように、通報者が位置するセルおよびその周辺セルに対して送信されてもよい。また、各オペレータに属する移動端末(101)に対して送信されてもよい。これらのセルの宛先の決定は、前述のように各セルの位置情報に基づいて行われるが、網接続装置から通報者が位置するセルを通知してくるのであれば、通報者の位置するセルの決定動作を省略することができる。また、余分な移動端末にも報知信号を送信する可能性が増加するが、通報者のセルと報知信号を送信するセルの対応を予め決定しておくことで、各セルの地理的な位置情報無しで宛先セルを決定するようにもできる。
【0030】
上記のようにして決定された宛先のセルに位置する例えば図示の移動端末2、3(101)が、報知信号を受信する。
緊急通報処理装置(141)が作成する報知信号のフォーマット例を図4Bに示す。報知信号は、メッセージ種別とメッセージ内容から構成される。メッセージ種別は、報知情報のメッセージであることを示す。さらに、メッセージ内容は、例えば、報知元、緊急種別、位置情報および判定距離から構成される。報知元は、当該メッセージを報知する緊急通報処理装置(141)を示すものであり、緊急種別は図8の緊急通報設定画面で設定された緊急事態の種類を示すものである。位置情報は通報者から送信された通報者の位置情報であり、判定距離は、報知信号を受信した移動端末(101)において、画面表示部(224)への表示や緊急通報処理装置(141)への通知を行うべきかの判断基準となる通報者から移動端末(101)までの所定距離である。なお、上記メッセージ内容のうち、位置情報は必須であるが、他の情報は、それぞれ一定の固定情報として省略することもできる。
【0031】
ちなみに、図3に示した移動端末1(101)を中心とした円は、移動端末1(101)が緊急通報をした場合の判定距離内の地域を示しており、移動端末2(101)がその地域内にあり、移動端末3(101)がその地域外にあることを示している。
【0032】
上記移動端末2、3(101)における報知信号受信時の処理の一例を図5Aのフローにより説明する。待受け中にステップS1で報知信号を受信すると、ステップS2で、移動端末(101)自身の位置情報と画面表示部(224)への表示や緊急通報処理装置(141)への通知を行うべきかの判断基準となる通報者から当該移動端末(101)までの所定距離を取得する。移動端末(101)自身の位置情報は先に述べたとおり、例えばCDMA方式では、複数の基地局から受信する電波を用いて計測することが可能である。また、GPS( Global Positioning Systems )衛星から受信する電波を用い、現在の位置を計測することも可能である。計測するタイミングも、報知信号を受信してからではなく、予め一定時間間隔で計測して、位置情報を記憶部(212)に記憶しておくこともできる。
【0033】
前記所定距離は、予め移動端末(101)に固定情報として設定しておくこともできるが、図4Bに例示した報知信号のフォーマットのように報知信号に含まれるようにしてそこから取得するようにすれば、緊急種別に応じて所定距離を変更するなどきめの細かいサービスを提供することができる。例えば、火事や洪水のような広い範囲に影響を与える恐れのある緊急事態の発生の報知の場合は所定距離を大きくすることが考えられる。
【0034】
次にステップS3で、図2において説明した制御部(211)の位置比較機能を使用して報知信号から得られる通報者の位置情報とステップS2で取得した自位置情報から通報者と自位置の距離を求めて所定距離と比較し、通報者の位置が所定の距離内であるか判定をする。
【0035】
図3に示した例の移動端末2(101)では比較した結果が所定距離内と判定され、移動端末3(101)では所定距離内ではないと判定される。
移動端末2(101)ではステップS4に進み、報知信号に含まれる緊急通報に関する情報に基づき、周囲にて緊急通報が発生した旨を画面表示部(224)に表示する。また、併せてブザーや光などで所有者に通知してもよい。そして、位置比較機能は時間調整機能を起動する。さらに、GPS計測部(231)にて計測される位置情報を一時的に記憶部(212)に保持しておく。
【0036】
時間調整機能は、乱数などを使用して自動通知機能を起動させるまでの時間を調整する。通報者から所定距離内と判断する複数の移動端末(101)が存在するとき、各移動端末(101)が同時に個人情報や位置情報などを緊急通報処理装置(141)に送信すると、移動体通信網の負荷が過剰となる。そのため、各移動端末(101)にて送信までの時間を分散させる。ステップS5において、調整された時間がタイムアップしたかを判定し、調整された時間が経過すると、時間調整機能は自動通知機能を起動する。ステップS6において、自動通知機能は記憶部(212)に保持される個人情報および位置情報などを緊急通報処理装置(141)に自動的に送信する。なお、通報者から所定距離外と判断した移動端末3(101)は何も行わず待受け中に戻る。
【0037】
次に、報知信号受信に関する移動端末(101)における設定について説明する。報知信号の受信と個人情報や位置情報の送信については、報知されたすべての報知信号を受信し、所定距離以内であれば自動的に個人情報や位置情報を送信することのほか、受信する報知信号に制限を加えたり、個人情報等の自動通知を拒否できるようにすることもできる。
【0038】
以下、報知信号を受信する側の移動端末(101)における報知信号設定について図5Bにより説明する。図5Bは、報知信号設定における画面表示部(224)の画面遷移を示すものである。
【0039】
移動端末(101)が待受け中のとき、利用者は、キー入力部(223)および画面表示部(224)を使用して、報知信号設定を行う。報知信号選択画面(511)は、待受け画面(501)より移行する。そして、報知信号選択画面(511)にて、設定しようとする報知信号を識別する報知信号−A、報知信号−Bなどを選択し、報知信号設定画面(521)に移行する。報知信号設定画面(521)では、受信したい報知信号に関する報知元や緊急種別、判定距離などの設定を行う。
【0040】
全ての報知信号を受信したい場合、その旨を許容する設定も入力できる。なお、画面表示部(224)への表示や緊急通報処理装置(141)への通知を行うべきかの判断基準となる通報者から移動端末までの所定距離が報知情報に含まれる場合、例えば、報知信号設定画面(521)の判定距離と比較して小さい方を優先させることができる。
【0041】
また、報知信号設定画面(521)では、自動通知機能に関する設定も行うことができる。名前や電話番号などは、緊急通報処理装置(141)へ通知される個人情報である。電話番号は、移動端末(101)の識別情報のため、予め設定され利用者が変更することはできない。自動通知設定が”ON”であるとき、自動通知機能の起動を許容し、記憶部(212)に保持される個人情報および位置情報などが緊急通報処理装置(141)に自動的に送信される。位置情報は、報知信号設定に関係なく個人情報に添付される。なお、緊急通報処理装置(141)に関する情報は、報知元の選択に対応して予め設定される。この報知信号設定は、記憶部(212)に保持される。
【0042】
移動端末(101)は、報知信号を受信すると、以上のように報知信号設定画面(521)にて設定された報知元や緊急種別、判定距離などを送信された報知信号のものと比較し、周囲にて緊急通報が発生した旨の通知画面(531)を表示手段である画面表示部(224) に表示したり、ブザーや光などで所有者に通知する。
【0043】
以上詳細に説明した本発明の手段により、ある人の周囲に位置する人のみに情報を提供することができる。例えば、緊急通報が発生したとき、通報者の周囲に位置する人に緊急通報が発生した旨を通知することで、自発的に周囲への注意を促すことができる。これにより、被害者を減少させ、さらに目撃者を増加させることができる。また、ある人の周囲に位置する人に関する情報を入手することができる。例えば、緊急通報が発生したとき、通報者の周囲に位置する人に関する情報を入手することで、目撃者や犯人、加害者の探索を容易にすることができる。
【0044】
本発明の通信装置として、移動端末を例にあげて説明したが、位置が固定されているのであればその位置を通信システム側で保持することが可能であることから、本発明が固定電話のような位置の固定された発信側の通信装置からの通報や、位置の固定された通信装置への報知信号の送信にも応用可能であることは、当業者には明らかである。特に、消防や警察への通報の場合、固定電話からの通報を削除する理由はない。また、緊急事態の報知先として、テレビ受像器やラジオを削除する理由もない。本発明の通信装置は、これらのものにも適用可能である。
【0045】
本発明は、一般の通信装置保持者に利用される場合に限らず、緊急事態に対処することを職業としている人々や、近隣のパトロール等のボランティア活動を行っている人々にとっても、近くで緊急事態の発生したことが報知され、直ちに対処可能となるので、有益である。また、報知元では、どのような人が緊急事態発生個所の近傍にいるかが判るので、より適切な対処を検討することも可能となる。このような特定のグループに属する人にのみ報知信号を与えるためには、グループを特定するキー番号を決めておき、通信装置にはそのキー番号を設定しておき、報知信号にそのキー番号を含めることにより、実現できる。
【0046】
また、本発明の通信システムを、緊急通信サービスを実現するものとして説明したが、ある人がリーダシップを取って周辺にいる人同士で会合をもつ、あるいはある地域の人を対象として調査を行うためのデータを収集する等の新しいサービスへの応用も可能である。
【0047】
なお、本発明による、緊急通報等の通信に伴う課金についての一例としては、通報者からの通報については従来の方式とし、通報者の周辺への報知と報知信号を受信した周辺の通信装置からの通信については、周辺に存在する人に関する情報収集の利益を享受する報知元が負担することが考えられる。
【0048】
(付記1) 発信側の通信装置の位置情報に基づき、該位置情報を含む報知信号を作成し、該報知信号を他の通信装置に対して報知する通信システム。
(付記2) 前記発信側の通信装置は位置情報の計測機能を有し、前記発信側の通信装置の位置情報は前記発信側の通信装置から送信されることを特徴とする付記1記載の通信システム。
(付記3) 前記発信側の通信装置は緊急事態発生を通知する通信装置であることを特徴とする付記1記載の通信システム。
(付記4) 前記報知信号を報知される通信装置は、前記報知信号の受信に伴い、予め設定された情報を送信することを特徴とする付記1記載の通信システム。
(付記5) 前記緊急事態発生を通知する通信装置は位置情報の計測機能を有し、前記緊急事態発生を通知する通信装置の位置情報は前記緊急事態発生を通知する通信装置から送信されることを特徴とする付記3記載の通信システム。
(付記6) 前記報知信号を報知される通信装置は移動端末であり、当該移動端末は位置情報の計測機能を有することを特徴とする付記5記載の通信システム。
(付記7) 前記緊急事態発生を通知する通信装置は移動端末であることを特徴とする付記5記載の通信システム。
(付記8) 前記報知信号を報知される通信装置は移動端末であり、当該移動端末は位置情報の計測機能を有することを特徴とする付記7記載の通信システム。
(付記9) 前記報知信号を報知される移動端末は、当該報知信号に含まれる位置情報と当該移動端末において計測される位置情報を比較し、その結果に基づいて受信した報知信号に基づき緊急事態発生を通知する表示を行うことを特徴とする付記8記載の通信システム。
(付記10)前記緊急事態発生を通知する移動端末には所有者の個人情報と緊急事態発生時の通報先情報が設定されており、前記緊急事態発生を通知する移動端末は、緊急事態発生時に前記位置情報と所有者の個人情報と通報先情報を送信するものであり、
当該送信された前記移動端末の位置情報と当該移動端末の所有者の個人情報と通報先情報を受信し、当該通報先情報に基づいて前記移動端末の位置情報と当該移動端末の所有者の個人情報を当該通報先に転送するとともに、前記緊急事態発生を報知する報知信号を作成し、前記移動端末の位置情報に基づいて前記報知信号を送信するセルを決定する緊急通報処理装置と、
前記移動端末の位置情報と当該移動端末の所有者の個人情報を前記緊急通報処理装置から転送され、緊急事態発生を通報される通報先と、
を備えることを特徴とする付記9記載の通信システム。
(付記11)前記報知信号を報知される移動端末は、当該報知信号に含まれる位置情報と当該移動端末において計測される位置情報を比較し、その結果に基づいて当該移動端末が有する情報を前記緊急通信処理装置に送信することを特徴とする付記10記載の通信システム。
(付記12)前記報知信号を報知される移動端末は、当該移動端末が有する情報を送信する時間を調整することを特徴とする付記11記載の通信システム。
(付記13)緊急事態発生を通知する他の通信装置の位置情報を含む報知信号を受信する手段と、
位置情報計測手段と、
該報知信号に含まれる位置情報と前記位置情報計測手段で計測された位置情報を比較し、前記緊急事態発生を通知する他の通信装置が所定距離内に存在するかを判定する判定手段と、
前記判定手段が前記緊急事態発生を通知する他の通信装置が所定距離内に存在すると判定した場合に、前記受信した報知信号に基づき緊急事態発生を通知する表示を行う表示手段と、
を備えたことを特徴とする通信装置。
(付記14)記憶手段と、
前記判定手段が前記緊急事態発生を通知する他の通信装置が所定距離内に存在すると判定した場合に、前記記憶手段に格納された情報を送信する手段と、
を備えたことを特徴とする付記13記載の通信装置。
(付記15)前記判定手段が判定に用いる所定距離を設定する手段を備えたことを特徴とする付記13又は14記載の通信装置
(付記16)前記報知信号は当該報知信号を送信した報知元と発生した緊急事態の種類を示す緊急種別を含み、前記通知手段は、当該報知元と緊急種別に基づいて緊急事態発生の通知を行うことを特徴とする付記13又は14記載の通信装置。
(付記17)前記報知信号はキー番号を含み、前記通知手段は、前記キー番号に基づいて緊急事態発生の通知を行うことを特徴とする付記13又は14記載の通信装置。
(付記18)前記記憶手段に格納された情報を送信する時間を調整する時間調整手段を備えたことを特徴とする付記14記載の通信装置。
(付記19)緊急事態発生を通知する移動端末から送信された該移動端末の位置情報と該移動端末の所有者の個人情報と通報先情報を受信する手段と、
該受信した通報先情報に基づき受信した該移動端末の位置情報と該移動端末の所有者の個人情報を該通報先に転送する手段と、
前記緊急事態発生を報知する報知信号を作成する手段と、
前記緊急事態発生を通知する移動端末の位置情報に基づいて前記報知信号を送信するセルを決定する手段と、
を備えたことを特徴とする緊急通報処理装置。
(付記20)前記報知信号を送信するセルを決定する手段は、前記緊急事態発生を通知する移動端末の位置するセルのセル識別子に基づいて前記報知信号を送信するセルを決定することを特徴とする付記19記載の緊急通報処理装置。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1A】本発明の移動体通信網の構成図。
【図1B】複数オペレータが存在する場合の本発明の移動体通信網の構成図。
【図2】本発明の移動端末の構成図。
【図3】移動端末の配置例を示す図。
【図4A】本発明による緊急通報シーケンス図。
【図4B】報知信号のフォーマット図。
【図5A】報知信号受信時の移動端末の処理フロー図。
【図5B】報知信号設定における移動端末の画面遷移図。
【図6】従来の移動体通信網の構成図。
【図7】従来の移動端末の構成図。
【図8】緊急通報設定における移動端末の画面遷移図。
【図9】従来の緊急通報シーケンス図。
【符号の説明】
【0050】
101、601 移動端末
111、611 基地局
121、621 網接続装置
131、631 音声通信網
132、632 データ通信網
141、641 緊急通報処理装置
151、651 通報先
201、701 無線送受信部
211、711 制御部
212、712 記憶部
221、721 マイク部
222、722 スピーカ部
223、723 キー入力部
224、724 画面表示部
231、731 GPS受信部
501、801 待ち受け画面
511 報知信号選択画面
521 報知信号設定画面
531 通知画面
811 緊急通報ボタン選択画面
821 緊急通報設定画面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発信側の通信装置の位置情報に基づき、該位置情報を含む報知信号を作成し、該報知信号を他の通信装置に対して報知する通信システム。
【請求項2】
緊急事態発生を通知する他の通信装置の位置情報を含む報知信号を受信する手段と、
位置情報計測手段と、
該報知信号に含まれる位置情報と前記位置情報計測手段で計測された位置情報を比較し、前記緊急事態発生を通知する他の通信装置が所定距離内に存在するかを判定する判定手段と、
前記判定手段が前記緊急事態発生を通知する他の通信装置が所定距離内に存在すると判定した場合に、前記受信した報知信号に基づき緊急事態発生を通知する表示を行う表示手段と、
記憶手段と、
前記判定手段が前記緊急事態発生を通知する他の通信装置が所定距離内に存在すると判定した場合に、前記記憶手段に格納された情報を送信する手段と、
を備えたことを特徴とする通信装置。
【請求項3】
緊急事態発生を通知する移動端末から送信された該移動端末の位置情報と該移動端末の所有者の個人情報と通報先情報を受信する手段と、
該受信した通報先情報に基づき受信した該移動端末の位置情報と該移動端末の所有者の個人情報を該通報先に転送する手段と、
前記緊急事態発生を報知する報知信号を作成する手段と、
前記緊急事態発生を通知する移動端末の位置情報に基づいて前記報知信号を送信するセルを決定する手段と、
を備えたことを特徴とする緊急通報処理装置。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図5A】
image rotate

【図5B】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2007−74449(P2007−74449A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−259978(P2005−259978)
【出願日】平成17年9月7日(2005.9.7)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】