説明

過給機付き内燃機関の制御装置

【課題】この発明は、過給機付き内燃機関の制御装置に関し、フューエルカットを伴う減速時に吸気弁を閉弁状態で停止させつつ排気弁を稼働状態とした際に、エンジンブレーキ力を良好に確保できるようにすることを目的とする。
【解決手段】内燃機関10の排気エネルギにより作動するタービン20aを排気通路22に備えるターボ過給機20と、吸気弁14を閉弁状態で停止可能な吸気可変動弁機構18とを備える。フューエルカットを伴う減速時に、吸気可変動弁機構18を用いて閉弁状態での吸気弁14の停止を実行する。この吸気弁14の閉弁停止時に、タービン20aの上流側の排気圧力の低下が抑制されるように排気通路22を切り替える。具体的には、EGR通路28における排気通路22側の端部に配置された排気通路切替弁36を開くようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、過給機付き内燃機関の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1には、ターボ過給機を備える内燃機関のための圧縮圧開放型のエンジンブレーキ装置が開示されている。この従来の装置では、圧縮行程の終わり頃に排気弁を開いて制動力を得るようにしたエンジンブレーキ装置の作動時に、EGR弁を開き、排気の一部を内燃機関に再循環させる制御を行うようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−307898号公報
【特許文献2】特開平10−141076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、排気通路に配置される触媒が高温である状態でフューエルカットを伴う減速がなされると、触媒に新気が供給されることで触媒の劣化が懸念される。そこで、ターボ過給機を備える内燃機関において、フューエルカットを伴う減速時に吸気弁を閉弁状態で停止させつつ排気弁を稼働状態とすることにより、触媒への新気の供給防止によって触媒の劣化抑制を図りつつ、エンジンブレーキ力の確保を図ることが考えられる。
【0005】
しかしながら、上記のように減速時に吸気弁を閉弁状態で停止させつつ排気弁を稼働状態とすることで、吸気側から排気側へのガスの流れを停止させた状態であっても、排気通路に配置されるタービンは、直ちに回転を停止するわけではなく、慣性により回転が継続されることになる。その結果、タービンの回転継続中には、排気弁からタービンまでの区間にある排気ガスがタービンの下流側に送り出されるようになり、タービンの上流側の排気圧力が低下してしまう。これにより、排気弁の稼働により筒内に吸入、排気される排気ガス量が減少するので、内燃機関が行うポンプ仕事が小さくなり、十分なエンジンブレーキ力を確保しにくくなることが懸念される。
【0006】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、ターボ過給機を備える内燃機関において、フューエルカットを伴う減速時に吸気弁を閉弁状態で停止させつつ排気弁を稼働状態とした際に、エンジンブレーキ力を良好に確保できるようにした過給機付き内燃機関の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、過給機付き内燃機関の制御装置であって、
内燃機関の排気エネルギにより作動するタービンを排気通路に備えるターボ過給機と、
吸気弁を閉弁状態で停止可能な吸気可変動弁機構と、
フューエルカットを伴う減速時に、前記吸気可変動弁機構を用いて閉弁状態での前記吸気弁の停止を実行する吸気弁停止実行手段と、
前記吸気弁停止実行手段による前記吸気弁の閉弁停止時に、前記タービンの上流側の排気圧力の低下が抑制されるように前記排気通路を切り替える排気通路切替手段と、
を備えることを特徴とする。
【0008】
また、第2の発明は、第1の発明において、
前記排気通路切替手段は、前記閉弁停止時に、前記タービンの上流側の前記排気通路に連通する通路が増大するように前記排気通路を切り替える手段であることを特徴とする。
【0009】
また、第3の発明は、第2の発明において、
前記内燃機関は、
第1および第2気筒群と、
前記第1気筒群から排出される排気ガスが流れる第1排気通路と、
前記第2気筒群から排出される排気ガスが流れる第2排気通路と、
前記第1排気通路と前記第2排気通路とが合流した後の合流後排気通路と、を備え、
前記タービンは、
前記第1排気通路に配置される第1タービンと、
前記第2排気通路に配置される第2タービンと、を含み、
前記内燃機関は、
前記第1タービンよりも上流側の前記第1排気通路と前記第2タービンよりも上流側の前記第2排気通路とを連通する排気連通路と、
前記第1排気通路および前記第2排気通路の何れか一方の通路における前記排気連通路との接続点と前記一方の通路における前記合流後排気通路との接続点との間の部位に配置され、当該部位において前記一方の通路の開閉を担う排気通路切替弁と、を更に備え、
前記排気通路切替手段は、前記排気通路切替弁が閉じた状態からの前記閉弁停止時に、前記排気通路切替弁を開くようにする手段であることを特徴とする。
【0010】
また、第4の発明は、第2の発明において、
前記内燃機関は、
前記タービンよりも上流側の部位において前記排気通路から分岐し、当該タービンの下流側の部位において前記排気通路に再び合流する排気バイパス通路と、
前記排気バイパス通路の開閉を担うウエストゲートバルブと、を備え、
前記排気通路切替手段は、前記閉弁停止時に、前記ウエストゲートバルブの開度を大きくする手段であることを特徴とする。
【0011】
また、第5の発明は、第2の発明において、
前記内燃機関は、
前記タービンの上流側の前記排気通路と吸気通路とを連通する排気ガス還流通路と、
前記排気ガス還流通路の途中に配置され、前記排気通路から前記吸気通路への排気ガス再循環量を制御するEGR弁と、
前記EGR弁よりも前記排気通路側の前記排気ガス還流通路に配置され、前記排気ガス還流通路の開閉を担う排気通路切替弁と、を備え、
前記排気通路切替手段は、前記閉弁停止時に、前記排気通路切替弁の開度を大きくする手段であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
第1の発明によれば、吸気弁の閉弁停止時にタービンの上流側の排気圧力の低下が抑制されるように排気通路を切り替える手段を備えていることにより、吸気弁の閉弁停止時に慣性によりタービンが回転を続ける場合であっても、ポンプ仕事の低下を抑制することができる。このため、フューエルカットを伴う減速時に吸気弁を閉弁状態で停止させつつ排気弁を稼働状態とした際に、エンジンブレーキ力を良好に確保することができるようになる。
【0013】
第2の発明によれば、吸気弁の閉弁停止時にタービンの上流側の排気通路に連通する通路が増大するように排気通路が切り替えられることにより、タービンの上流側の排気圧力の低下を効果的に抑制することができる。
【0014】
第3の発明によれば、第1タービンよりも上流側の第1排気通路と第2タービンよりも上流側の第2排気通路とを連通する排気連通路と、第1排気通路および第2排気通路の何れか一方の通路の開閉を担う排気通路切替弁とを備える内燃機関において、タービンの上流側の排気圧力の低下を効果的に抑制することができる。
【0015】
第4の発明によれば、排気バイパス通路の開閉を担うウエストゲートバルブを備える内燃機関において、タービンの上流側の排気圧力の低下を効果的に抑制することができる。
【0016】
第5の発明によれば、EGR弁よりも排気通路側の排気ガス還流通路に排気通路切替弁を備える内燃機関において、タービンの上流側の排気圧力の低下を効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態1のシステム構成を説明するための図である。
【図2】本発明の実施の形態1における特徴的な制御の概要を示すタイムチャートである。
【図3】本発明の実施の形態1において実行されるルーチンのフローチャートである。
【図4】本発明の実施の形態2のシステム構成を説明するための図である。
【図5】本発明の実施の形態2において実行されるルーチンのフローチャートである。
【図6】本発明の実施の形態3のシステム構成を説明するための図である。
【図7】本発明の実施の形態3において実行されるルーチンのフローチャートである。
【図8】本発明の実施の形態4のシステム構成を説明するための図である。
【図9】本発明の実施の形態4において実行されるルーチンのフローチャートである。
【図10】吸気弁の閉弁停止時のポンプ仕事の低下抑制を実現することのできる他のシステム構成およびその制御を説明するための図である。
【図11】図10に示す制御を実現するために実行されるルーチンのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
実施の形態1.
[実施の形態1のシステム構成]
図1は、本発明の実施の形態1のシステム構成を説明するための図である。図1に示すシステムは、内燃機関10を備えている。内燃機関10は、車両に搭載され、その動力源とされるものである。
【0019】
内燃機関10の各気筒12には、2つの吸気弁14と2つの排気弁16とが備わっているものとする。吸気弁14は、吸気可変動弁機構18により駆動される。ここでは、吸気可変動弁機構18として、吸気弁14を閉弁状態で停止可能な機構が用いられているものとする。そのような機構18の具体的な構成については、特に限定させるものではなく、例えば、電磁力を利用して吸気弁14を駆動する電磁駆動式の可変動弁機構を用いることができる。尚、排気弁16を駆動する動弁機構(図示省略)は、固定された所定の開閉時期で排気弁16を開閉駆動できるものでよい。
【0020】
また、内燃機関10は、ターボ過給機20を備えている。ターボ過給機20は、排気ガスの排気エネルギによって作動するタービン20aと、タービン20aと一体的に連結され、タービン20aに入力される排気ガスの排気エネルギによって回転駆動されるコンプレッサ20bとを有している。
【0021】
ターボ過給機20のタービン20aは、排気通路22の途中に配置されている。タービン20aよりも下流側の排気通路22には、排気ガスを浄化するための触媒24が配置されている。また、ターボ過給機20のコンプレッサ20bは、吸気通路26の途中に配置されている。
【0022】
また、タービン20aよりも上流側の排気通路22には、EGR通路(排気ガス還流通路)28の一端が接続されている。EGR通路28の他端は、コンプレッサ20bよりも下流側の吸気通路26に接続されている。EGR通路28の途中には、EGR通路28を通って吸気通路26に還流する排気ガス量(すなわち、EGRガス量)を調整するためのEGR弁30が設けられている。
【0023】
EGR弁30よりも排気通路22に近い側(EGRガスの上流側)のEGR通路28には、EGRクーラ32およびEGR触媒34が設けられている。更に、EGR通路28における排気通路22側の端部には、排気通路切替弁36が配置されている。この排気通路切替弁36は、タービン20aよりも上流側の排気通路容積を調整するための手段である。すなわち、このような排気通路切替弁36を開くこととすれば、排気通路22とEGR通路28とを遮断状態から連通状態に切り替えることができる。これにより、EGR通路28の容積がタービン20aの上流側の排気通路容積に加わるので、閉弁時と比べ、EGR通路28の容積分だけ排気通路容積を増大させることができる。
【0024】
本実施形態のシステムは、更に、ECU(Electronic Control Unit)40を更に備えている。ECU40には、エンジン回転数および吸入空気量等の内燃機関10の運転状態を検出するための各種のセンサ、更には、内燃機関10を搭載した車両のアクセル開度を検出するためのアクセル開度センサ42等が接続されている。また、ECU40には、吸気可変動弁機構18、EGR弁30、および排気通路切替弁36とともに、燃料噴射弁(図示省略)等の内燃機関10の運転状態を制御するための各種のアクチュエータが接続されている。
【0025】
以上のように構成された本実施形態のシステムにおいて、排気通路22に配置される触媒24が高温である状態でフューエルカットを伴う減速がなされると、触媒24に新気が供給されることで触媒24の劣化が懸念される。そこで、フューエルカットを伴う減速時に吸気弁14を閉弁状態で停止させつつ排気弁16を稼働状態とすることにより、触媒24への新気の供給防止によって触媒24の劣化抑制を図りつつ、エンジンブレーキ力の確保を図ることが考えられる。
【0026】
しかしながら、上記のように減速時に吸気弁14を閉弁状態で停止させつつ排気弁16を稼働状態とすることで、吸気側から排気側へのガスの流れを停止させた状態であっても、排気通路22に配置されるタービン20aは、直ちに回転を停止するわけではなく、慣性により回転が継続されることになる。その結果、タービン20aの回転継続中には、排気弁16からタービン20aまでの区間にある排気ガスがタービン20aの下流側に送り出されるようになり、タービン20aの上流側の排気圧力が低下してしまう。これにより、排気弁16の稼働により筒内に吸入、排気される排気ガス量が減少するので、内燃機関10が行うポンプ仕事が小さくなり、十分なエンジンブレーキ力を確保しにくくなることが懸念される。
【0027】
図2は、本発明の実施の形態1における特徴的な制御の概要を示すタイムチャートである。
上記の問題点を解消すべく、本実施形態では、触媒劣化抑制のために減速時に吸気弁14を閉弁状態で停止させる際(以下、「吸気弁14の閉弁停止時」と略することがある)に、タービン20aの上流側の排気圧力の低下が抑制されるように排気通路22を切り替えるようにした。具体的には、図2に示すように、吸気弁14の閉弁停止時に、排気通路切替弁36を開くようにした。
【0028】
図3は、上記の機能を実現するために、本実施の形態1においてECU40が実行するルーチンのフローチャートである。
図3に示すルーチンでは、先ず、排気通路切替弁36が閉弁中であるか否かが判別される。その結果、排気通路切替弁36が閉弁中であると判定された場合には、減速時にフューエルカットを行うための所定の実行条件が成立しているか否かが、ECU40に接続されたアクセル開度センサ42等の所定のセンサ出力情報に基づいて判別される(ステップ102)。
【0029】
上記ステップ102において上記実行条件が成立していると判定された場合には、吸気弁14を閉弁状態で停止させる弁停止制御を行うか否かが判別される(ステップ104)。既述したように、触媒24が高温状態にある際には、触媒24の劣化抑制のためにフューエルカット時に吸気弁14を閉弁状態に停止させる必要があると判断できる。このため、本ステップ104では、触媒24の温度を運転状態に基づく推定等に手法によって取得したうえで、触媒24の温度に基づいて弁停止制御を行うか否かを判断するようにしている。
【0030】
上記ステップ104において弁停止制御を行うと判定された場合には、吸気可変動弁機構18を用いて吸気弁14が閉弁状態で停止される(ステップ106)。また、この場合には、排気通路切替弁36を開く動作が実行される(ステップ108)。
【0031】
以上説明した図3に示すルーチンによれば、吸気弁14の閉弁停止時に排気通路切替弁36を開くようにすることで、タービン20aに連通する通路(この場合はEGR通路28)を増大させることができる。言い換えれば、タービン20aの上流側の排気通路容積をEGR通路28分だけ増大させることができる。これにより、吸気弁14の閉弁停止時に慣性により回転を続けるタービン20aによってガスが掻き出されることとなる部位(すなわち、タービン20aの上流側の部位)の容積を大きく確保することで、タービン20aの上流側の排気圧力の低下を抑制することができ、ポンプ仕事の低下を抑制することができる。このため、減速時に吸気弁14の閉弁停止を行う際に、触媒34の劣化抑制を図りつつ、エンジンブレーキ力を良好に確保することができる。
【0032】
ところで、上述した実施の形態1においては、吸気弁14の閉弁停止時に排気通路切替弁36を閉じた状態から開くようにしている。しかしながら、本発明はこれに限定されず、すなわち、閉じた状態からに限らず排気通路切替弁36の開度を吸気弁14の閉弁停止時に大きくするものであってもよい。
【0033】
尚、上述した実施の形態1においては、ECU40が、上記ステップ106の処理を実行することにより前記第1の発明における「吸気弁停止実行手段」が、上記ステップ108の処理を実行することにより前記第1の発明における「排気通路切替手段」が、それぞれ実現されている。
【0034】
実施の形態2.
次に、図4および図5を参照して、本発明の実施の形態2について説明する。
図4は、本発明の実施の形態2のシステム構成を説明するための図である。尚、図4において、上記図1に示す構成要素と同一の要素については、同一の符号を付してその説明を省略または簡略する。
【0035】
図4に示すシステムは、2つの気筒群50a、50bを有する内燃機関50を備えている。図4に示す排気通路52は、第1気筒群50aから排出される排気ガスが流れる第1排気通路52aと、第2気筒群50bから排出される排気ガスが流れる第2排気通路52bと、これらの排気通路52a、52bが合流した後の合流後排気通路52cとを備えている。尚、合流後排気通路52cには、触媒24が配置されている。
【0036】
また、第1排気通路52aの途中には、第1ターボ過給機(T/C1)の第1タービン54が配置されており、第2排気通路52bの途中には、第2ターボ過給機(T/C2)の第2タービン56が配置されている。更に、排気通路52は、第1タービン54よりも上流側の第1排気通路52aと第2タービン56よりも上流側の第2排気通路52bとを連通する排気連通路52dを備えている。
【0037】
また、第1排気通路52aにおける第1タービン54よりも下流側の部位には、その部位の開閉を担う排気通路切替弁58が配置されている。この排気通路切替弁58は、ECU40に接続されている。
【0038】
以上のように構成された本実施形態のシステムにおいて、排気通路切替弁58を閉じるようにすると、第2気筒群50bからの排気ガスが第2排気通路52bを通って第2タービン56に供給されるとともに、第1気筒群50aからの排気ガスについても第1タービン54には供給されずに第1排気通路52aおよび排気連通路52dを通って第2タービン56に供給されるようになる。
【0039】
本実施形態では、排気通路切替弁58を閉じた状態での運転中に吸気弁14の閉弁停止が実行された際に、第2タービン56の上流側の排気圧力の低下を抑制するために、排気通路切替弁58を開くようにした。
【0040】
図5は、上記の機能を実現するために、本実施の形態2においてECU40が実行するルーチンのフローチャートである。尚、図5において、実施の形態1における図3に示すステップと同一のステップについては、同一の符号を付してその説明を省略または簡略する。
図5に示すルーチンでは、先ず、排気通路切替弁58が閉弁中であるか否かが判別される(ステップ200)。
【0041】
その結果、排気通路切替弁58が閉弁中であると判定された場合において、フューエルカット実行条件が成立し(ステップ102)、かつ、弁停止制御を行うと判定された場合には(ステップ104)、吸気弁14が閉弁状態で停止されたうえで(ステップ106)、排気通路切替弁58を開く動作が実行される(ステップ202)。
【0042】
以上説明した図5に示すルーチンによれば、吸気弁14の閉弁停止時に排気通路切替弁58を開くようにすることで、第1排気通路52aおよび排気連通路52dを介して、第2タービン56の上流と下流とが連通するようになる。言い換えれば、第2タービン56の上流側の第2排気通路52bに連通する通路が増大するようになる。尚、排気通路切替弁58を閉じた状態において吸気弁14の閉弁停止がされる場合には、第1タービン54は駆動状態にないので、第1タービン54の回転数が低い状態にあり、第1排気通路52aがガス通路として機能することが可能な状態であることが期待できる。
【0043】
そして、上記制御により第2タービン56の上流と下流とが連通することで、吸気弁14の閉弁停止時に慣性により回転を続ける第2タービン56の動作に起因して、図4中に時計廻りの矢印で示すように、第1排気通路52aの下流側から排気連通路52dを介して第2タービン56の上流に向かう排気ガスの流れが形成されるようになる。これにより、第2タービン56の上流側の排気圧力の低下を抑制することができ、ポンプ仕事の低下を抑制することができる。このため、本実施形態のシステムにおいても、減速時に吸気弁14の閉弁停止を行う際に、触媒34の劣化抑制を図りつつ、エンジンブレーキ力を良好に確保することができる。
【0044】
ところで、上述した実施の形態2においては、第1タービン54よりも下流側の第1排気通路52a上に排気通路切替弁58を配置するようにしている。しかしながら、本発明における排気通路切替弁の配置場所は、これに限定されるものではなく、例えば、第1排気通路52aにおける排気連通路52dとの接続点と第1タービン54との間の部位であってもよい。或いは、第2排気通路52bにおける排気連通路52dとの接続点と合流後排気通路52cとの接続点との間の部位であってもよい。
【0045】
尚、上述した実施の形態2においては、ECU40が上記ステップ202の処理を実行することにより前記第1の発明における「排気通路切替手段」が実現されている。
【0046】
実施の形態3.
次に、図6および図7を参照して、本発明の実施の形態3について説明する。
図6は、本発明の実施の形態3のシステム構成を説明するための図である。尚、図6において、上記図4に示す構成要素と同一の要素については、同一の符号を付してその説明を省略または簡略する。
【0047】
図6に示す排気通路60は、第1気筒群50aから排出される排気ガスが流れる第1排気通路60aと、第2気筒群50bから排出される排気ガスが流れる第2排気通路60bと、これらの排気通路60a、60bが合流した後の合流後排気通路60cとを備えている。尚、合流後排気通路60cには、触媒24が配置されている。
【0048】
また、第1排気通路60aの途中には、第1ターボ過給機(T/C1)の第1タービン54が配置されており、第2排気通路60bの途中には、第2ターボ過給機(T/C2)の第2タービン56が配置されている。
【0049】
更に、第1排気通路60aには、第1タービン54をバイパスして第1タービン54の入口側と出口側とを接続する第1排気バイパス通路62が接続されている。第1排気バイパス通路62の途中には、第1排気バイパス通路62の開閉を担う電動式の第1ウエストゲートバルブ64が配置されている。同様に、第2排気通路60bには、第2タービン56をバイパスして第2タービン56の入口側と出口側とを接続する第2排気バイパス通路66が接続されており、第2排気バイパス通路66の途中には、第2排気バイパス通路66の開閉を担う電動式の第2ウエストゲートバルブ68が配置されている。これらのウエストゲートバルブ64、68は、ECU40に接続されている。
【0050】
以上のシステム構成を有する本実施形態では、ウエストゲートバルブ64、68を閉じた状態での運転中に吸気弁14の閉弁停止が実行された際に、タービン54、56のそれぞれの上流側の排気圧力の低下を抑制するために、ウエストゲートバルブ64、68をそれぞれ開くようにした。
【0051】
図7は、上記の機能を実現するために、本実施の形態3においてECU40が実行するルーチンのフローチャートである。尚、図7において、実施の形態1における図3に示すステップと同一のステップについては、同一の符号を付してその説明を省略または簡略する。
図7に示すルーチンでは、先ず、ウエストゲートバルブ64、68がともに閉弁中であるか否かが判別される(ステップ300)。
【0052】
その結果、ウエストゲートバルブ64、68がともに閉弁中であると判定された場合において、フューエルカット実行条件が成立し(ステップ102)、かつ、弁停止制御を行うと判定された場合には(ステップ104)、吸気弁14が閉弁状態で停止されたうえで(ステップ106)、ウエストゲートバルブ64、68をそれぞれ開く動作が実行される(ステップ302)。
【0053】
以上説明した図7に示すルーチンによれば、吸気弁14の閉弁停止時にウエストゲートバルブ64、68をそれぞれ開くようにすることで、排気バイパス通路62、66を介して、タービン54、56のそれぞれの上流と下流とが連通するようになる。言い換えれば、タービン54、56のそれぞれの上流側の排気通路60a、60bにそれぞれ連通する通路が増大されるようになる。
【0054】
そして、上記制御によりタービン54、56のそれぞれの上流と下流とが連通することで、吸気弁14の閉弁停止時に慣性により回転を続けるタービン54、56の動作に起因して、図6中に矢印で示すように、排気バイパス通路62、66を介してタービン54、56の下流から上流に向かう排気ガスの流れが形成されるようになる。これにより、タービン54、56の上流側の排気圧力の低下を抑制することができ、ポンプ仕事の低下を抑制することができる。このため、本実施形態のシステムにおいても、減速時に吸気弁14の閉弁停止を行う際に、触媒34の劣化抑制を図りつつ、エンジンブレーキ力を良好に確保することができる。
【0055】
ところで、上述した実施の形態3においては、吸気弁14の閉弁停止時にウエストゲートバルブ64、68を閉じた状態から開くようにしている。しかしながら、本発明はこれに限定されず、すなわち、閉じた状態からに限らずウエストゲートバルブ64、68の開度を吸気弁14の閉弁停止時に大きくするものであってもよい。
【0056】
尚、上述した実施の形態3においては、ECU40が上記ステップ302の処理を実行することにより前記第1の発明における「排気通路切替手段」が実現されている。
【0057】
実施の形態4.
次に、図8および図9を参照して、本発明の実施の形態4について説明する。
図8は、本発明の実施の形態4のシステム構成を説明するための図である。尚、図8において、上記図4に示す構成要素と同一の要素については、同一の符号を付してその説明を省略または簡略する。
【0058】
図8に示すシステムでは、上記図4に示すシステムとは異なり、第2排気通路52bの途中にのみターボ過給機(T/C)のタービン70が配置されている。また、排気連通路52dよりも下流側の第1排気通路52aには、その部位の開閉を担う第1排気通路切替弁72が配置されている。更に、タービン70よりも下流側の第2排気通路52bには、その部位の開閉を担う第2排気通路切替弁74が配置されている。これらの排気通路切替弁72、74は、ECU40に接続されている。
【0059】
以上のように構成された本実施形態のシステムにおいて、第1排気通路切替弁72を閉じ、かつ第2排気通路切替弁74を開くようにすると、第1気筒群50aおよび第2気筒群50bの双方からの排気ガスがタービン70を通って排出されるようになる。一方、本実施形態のシステムにおいて、第1排気通路切替弁72を開き、かつ第2排気通路切替弁74を閉じるようにすると、第1気筒群50aおよび第2気筒群50bの双方からの排気ガスがタービン70を通らずに排出されるようになる。
【0060】
本実施形態では、第1排気通路切替弁72を閉じ、かつ第2排気通路切替弁74を開いた状態での運転中に吸気弁14の閉弁停止が実行された際に、タービン70の上流側の排気圧力の低下を抑制するために、第2排気通路切替弁74を閉じるようにした。
【0061】
図9は、上記の機能を実現するために、本実施の形態4においてECU40が実行するルーチンのフローチャートである。尚、図9において、実施の形態1における図3に示すステップと同一のステップについては、同一の符号を付してその説明を省略または簡略する。
図9に示すルーチンでは、先ず、第1排気通路切替弁72が閉弁中であって第2排気通路切替弁74が開弁中であるか否かが判別される(ステップ400)。
【0062】
その結果、第1排気通路切替弁72が閉弁中であって第2排気通路切替弁74が開弁中であると判定された場合において、フューエルカット実行条件が成立し(ステップ102)、かつ、弁停止制御を行うと判定された場合には(ステップ104)、吸気弁14が閉弁状態で停止されたうえで(ステップ106)、第2排気通路切替弁74を閉じる動作が実行される(ステップ402)。
【0063】
以上説明した図9に示すルーチンによれば、吸気弁14の閉弁停止時にタービン70の下流において第2排気通路切替弁74を閉じるようにすることで、慣性により回転しているタービン70による当該タービン70前後のガス流れを、強制的に抑制して短時間で停止させることができる。これにより、タービン70の上流側の排気圧力の低下を抑制することができ、ポンプ仕事の低下を抑制することができる。このため、本実施形態のシステムにおいても、減速時に吸気弁14の閉弁停止を行う際に、触媒34の劣化抑制を図りつつ、エンジンブレーキ力を良好に確保することができる。
【0064】
ところで、上述した実施の形態4においては、タービン70よりも下流側の第2排気通路52b上に第2排気通路切替弁74を配置するようにしている。しかしながら、本発明において、このような排気通路切替弁の配置場所は、これに限定されるものではなく、第2排気通路52bにおける排気連通路52dとの接続点とタービン70との間の部位であってもよい。
【0065】
また、上述した実施の形態4においては、吸気弁14の閉弁停止時にタービン70の下流の第2排気通路切替弁74を閉じることで、タービン70の上流側の排気圧力の低下を抑制して、ポンプ仕事の低下を抑制している。吸気弁14の閉弁停止時にポンプ仕事の低下を抑制するという点においては、例えば、以下のような排気通路構成を有するシステムにおいて以下の制御を行うものであってもよい。
【0066】
図10は、吸気弁14の閉弁停止時のポンプ仕事の低下抑制を実現することのできる他のシステム構成およびその制御を説明するための図である。尚、図10において、上記図1に示す構成要素と同一の要素については、同一の符号を付してその説明を省略または簡略する。
【0067】
図10に示す内燃機関80の排気通路82は、タービン20aに通じる第1排気通路82aと、タービン20aに通じない第2排気通路82bとを備えている。また、内燃機関80の各気筒12には、第1排気通路82aを開閉する第1排気弁(Ex1)84aと第2排気通路82bを開閉する第2排気弁(Ex2)84bとが配置されている。
【0068】
また、このシステムは、上記排気弁84a、84bを駆動するための排気可変動弁機構86を備えている。より具体的には、排気可変動弁機構86は、その詳細な説明は省略するが、第1排気弁84aを第2排気弁84bとは独立して閉弁状態で停止可能な機構であるものとする。この排気可変動弁機構86は、ECU40に接続されている。
【0069】
以上のように構成された図10に示すシステムによれば、排気可変動弁機構86を用いて第1排気弁84aを閉弁状態で停止させることにより、各気筒12からの排気ガスの全量を、タービン20aを通さずに触媒24を介して排出できるようになる。
【0070】
このようなシステムが採用されている場合において、第1排気弁84aを第2排気弁84bとともに稼働させた状態での運転中における吸気弁14の閉弁停止時のポンプ仕事の低下を抑制するためには、次のような制御を行うことが好適である。すなわち、吸気弁14の閉弁停止が実行された際に、排気可変動弁機構86を用いて第1排気弁84aを閉弁状態で停止させるようにする。
【0071】
図11は、上記の機能を実現するために、ECU40が実行するルーチンのフローチャートである。尚、図11において、実施の形態1における図3に示すステップと同一のステップについては、同一の符号を付してその説明を省略または簡略する。
図11に示すルーチンでは、先ず、第1排気弁84aが稼働中であるか否かが判別される(ステップ500)。
【0072】
その結果、第1排気弁84aが稼働中であると判定された場合において、フューエルカット実行条件が成立し(ステップ102)、かつ、弁停止制御を行うと判定された場合には(ステップ104)、吸気弁14が閉弁状態で停止されたうえで(ステップ106)、第1排気弁84aを閉弁状態で停止させる動作が実行される(ステップ502)。
【0073】
以上説明した図11に示すルーチンによれば、吸気弁14の閉弁停止時にタービン20aに通じる第1排気通路82a側の第1排気弁84aを閉弁状態で停止させることで、慣性により回転しているタービン20aによる当該タービン20a前後のガス流れを、強制的に抑制して短時間で停止させることができる。これにより、負圧下となるタービン20aの上流側の部位が筒内と連通しないようにすることで、慣性により回転しているタービン20aの影響を受けない第2排気通路82b側のみを利用して、ポンプ仕事を確保することができる。このため、このような手法によっても、減速時に吸気弁14の閉弁停止を行う際に、触媒34の劣化抑制を図りつつ、エンジンブレーキ力を良好に確保することができる。
【0074】
尚、上述した実施の形態4においては、ECU40が上記ステップ402の処理を実行することにより前記第1の発明における「排気通路切替手段」が実現されている。
【符号の説明】
【0075】
10、50、80 内燃機関
12 気筒
14 吸気弁
16 排気弁
18 吸気可変動弁機構
20 ターボ過給機
20a、70 タービン
20b コンプレッサ
22、52、60、82 排気通路
24 触媒
26 吸気通路
28 EGR通路
30 EGR弁
36、58 排気通路切替弁
40 ECU(Electronic Control Unit)
50a 第1気筒群
50b 第2気筒群
52a、60a、82a 第1排気通路
52b、60b、82b 第2排気通路
52c、60c 合流後排気通路
52d 排気連通路
54 第1タービン
56 第2タービン
62 第1排気バイパス通路
64 第1ウエストゲートバルブ
66 第2排気バイパス通路
68 第2ウエストゲートバルブ
72 第1排気通路切替弁
74 第2排気通路切替弁
84a 第1排気弁
84b 第2排気弁
86 排気可変動弁機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気エネルギにより作動するタービンを排気通路に備えるターボ過給機と、
吸気弁を閉弁状態で停止可能な吸気可変動弁機構と、
フューエルカットを伴う減速時に、前記吸気可変動弁機構を用いて閉弁状態での前記吸気弁の停止を実行する吸気弁停止実行手段と、
前記吸気弁停止実行手段による前記吸気弁の閉弁停止時に、前記タービンの上流側の排気圧力の低下が抑制されるように前記排気通路を切り替える排気通路切替手段と、
を備えることを特徴とする過給機付き内燃機関の制御装置。
【請求項2】
前記排気通路切替手段は、前記閉弁停止時に、前記タービンの上流側の前記排気通路に連通する通路が増大するように前記排気通路を切り替える手段であることを特徴とする請求項1記載の過給機付き内燃機関の制御装置。
【請求項3】
前記内燃機関は、
第1および第2気筒群と、
前記第1気筒群から排出される排気ガスが流れる第1排気通路と、
前記第2気筒群から排出される排気ガスが流れる第2排気通路と、
前記第1排気通路と前記第2排気通路とが合流した後の合流後排気通路と、を備え、
前記タービンは、
前記第1排気通路に配置される第1タービンと、
前記第2排気通路に配置される第2タービンと、を含み、
前記内燃機関は、
前記第1タービンよりも上流側の前記第1排気通路と前記第2タービンよりも上流側の前記第2排気通路とを連通する排気連通路と、
前記第1排気通路および前記第2排気通路の何れか一方の通路における前記排気連通路との接続点と前記一方の通路における前記合流後排気通路との接続点との間の部位に配置され、当該部位において前記一方の通路の開閉を担う排気通路切替弁と、を更に備え、
前記排気通路切替手段は、前記排気通路切替弁が閉じた状態からの前記閉弁停止時に、前記排気通路切替弁を開くようにする手段であることを特徴とする請求項2記載の過給機付き内燃機関の制御装置。
【請求項4】
前記内燃機関は、
前記タービンよりも上流側の部位において前記排気通路から分岐し、当該タービンの下流側の部位において前記排気通路に再び合流する排気バイパス通路と、
前記排気バイパス通路の開閉を担うウエストゲートバルブと、を備え、
前記排気通路切替手段は、前記閉弁停止時に、前記ウエストゲートバルブの開度を大きくする手段であることを特徴とする請求項2記載の過給機付き内燃機関の制御装置。
【請求項5】
前記内燃機関は、
前記タービンの上流側の前記排気通路と吸気通路とを連通する排気ガス還流通路と、
前記排気ガス還流通路の途中に配置され、前記排気通路から前記吸気通路への排気ガス再循環量を制御するEGR弁と、
前記EGR弁よりも前記排気通路側の前記排気ガス還流通路に配置され、前記排気ガス還流通路の開閉を担う排気通路切替弁と、を備え、
前記排気通路切替手段は、前記閉弁停止時に、前記排気通路切替弁の開度を大きくする手段であることを特徴とする請求項2記載の過給機付き内燃機関の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−249041(P2010−249041A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−99956(P2009−99956)
【出願日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】