説明

道路地図データ構造、道路地図データ記憶媒体、及びナビゲーション装置

【課題】各リンクのリンクIDの番号範囲を適切に設定することができ、それにより、将来の更新に備えてリンクIDの連続性を維持したままで各リンクを分割できる回数を十分に確保可能であるとともに、各リンクのリンクIDを表すためのデータ量を少なく抑えることが可能な道路地図データ構造を提供する。
【解決手段】複数のリンクLの接続関係により道路を表す道路ネットワークデータRnを備える道路地図データ構造であって、道路ネットワークデータRnの各リンクLに、各リンクLのリンク長と道路属性とに応じて設定された番号範囲を有するとともに、一列に接続された複数のリンクLで構成されるリンク列ML毎に当該リンク列ML内での接続順に従って連続するように設定された、リンクIDが付与されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばナビゲーション装置等に用いる道路地図データの構造に関し、複数のリンクの接続関係により道路を表す道路ネットワークデータを備える道路地図データ構造、それを記録した道路地図データ記憶媒体、及びそれを用いたナビゲーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ナビゲーション装置等において、現実世界の道路の情報を表すデジタルデータである道路地図データを用いて、自位置の表示や目的地までの経路の案内等を行う技術が知られている。このような道路地図データは、多くの場合、格納される道路情報の詳細度や表示縮尺等に応じた複数レベルの道路ネットワークデータを備えており、各レベルの道路ネットワークデータが、複数のリンクの接続関係により道路を表す構造となっている。このような道路ネットワークデータを構成する各リンクを識別するためのリンクIDとして、通常、共通の属性を有して連続する複数のリンクで構成されるリンク列毎に、当該リンク列内での接続順に連続するリンクIDが用いられている。また、このようなリンクIDとして、それぞれに連続する複数の番号を含む所定の番号範囲を設定した構造が知られている。更に、このようなリンクIDの番号範囲として、各リンクのリンク長に比例した範囲を設定することも知られている(例えば、下記の特許文献1及び2参照)。
【0003】
このような道路地図データの構造では、上記のようにリンクIDが所定の番号範囲を有している。そのため、既存のリンクの途中に新たなリンクが接続するために、既存のリンクが複数に分割されるような道路ネットワークデータの更新を行う場合にも、リンク列内での接続順のリンクIDの連続性を維持することができる。すなわち、このような場合には、既存のリンクのリンクIDの番号範囲を分割して新たな複数のリンクIDを生成し、当該生成された新たなリンクIDを分割された既存のリンクのそれぞれに付与することで、リンクIDの連続性を維持しつつ、新たなリンクを追加する更新を容易に行うことができる。
【0004】
【特許文献1】特許第3725022号公報
【特許文献2】特開2005−70482号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記のような道路地図データの構造では、道路ネットワークを構成する多数のリンクをリンクIDにより識別する必要があるため、各リンクIDに番号範囲を持たせるためには、そのような番号範囲を持たせない場合よりもリンクIDとして用いる番号の桁数が多く必要になる。特に、上記のような道路ネットワークデータの更新時におけるリンクの分割回数を多く確保するために番号範囲を広く設定するほど、当該番号範囲の桁数が多く必要になる。このようにリンクIDの番号範囲の桁数を多くすると、リンクIDを表すデータのビット数も多く必要になり、リンクIDを表すためのデータ量が大きくなるという問題がある。一方、リンクIDの番号範囲の桁数を小さくするために、各リンクIDの番号範囲を一律に狭く設定した場合には、将来の道路ネットワークデータの更新に際して、特定のリンクに対しての多数回の分割に対応できず、リンクIDの連続性を維持できない事態が生じ得るという問題がある。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、各リンクのリンクIDの番号範囲を適切に設定することができ、それにより、将来の更新に備えてリンクIDの連続性を維持したままで各リンクを分割できる回数を十分に確保可能であるとともに、各リンクのリンクIDを表すためのデータ量を少なく抑えることが可能な道路地図データ構造、それを記録した道路地図データ記憶媒体、及びそれを用いたナビゲーション装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係る、複数のリンクの接続関係により道路を表す道路ネットワークデータを備える道路地図データ構造の特徴構成は、前記道路ネットワークデータの各リンクに、各リンクのリンク長と道路属性とに応じて設定された番号範囲を有するとともに、一列に接続された複数のリンクで構成されるリンク列毎に当該リンク列内での接続順に従って連続するように設定された、リンクIDが付与されている点にある。
【0008】
上記の道路地図データ構造の特徴構成によれば、各リンクの道路属性に応じて、将来の道路ネットワークデータの更新の際の新規リンクの追加等に伴って分割される可能性が高い道路属性を有するリンクについては、リンク長に対してリンクIDの番号範囲を広く設定し、リンクIDの連続性を維持したままで当該リンクを分割できる回数を十分に確保することが可能となる。一方、そのような分割の可能性が低い道路属性を有するリンクについては、リンク長に対してリンクIDの番号範囲を狭く設定することにより、道路ネットワークを構成する全てのリンクを識別するために必要なリンクIDの番号の総範囲を必要最小限に抑え、各リンクIDの番号範囲の桁数を小さくすることができる。したがって、将来の更新に備えてリンクIDの連続性を維持したままで各リンクを分割できる回数を、各リンクの道路属性に応じて十分に確保可能であるとともに、各リンクのリンクIDを表すためのデータ量を少なく抑えることが可能である道路地図データ構造を実現することができる。
【0009】
ここで、前記道路属性は、各リンクの道路種別についての種別属性と、各リンクが存在する地域についての地域属性との少なくとも一方を含む構成とすると好適である。
【0010】
このように構成すれば、前記道路ネットワークデータの更新によりリンクが分割される可能性に与える影響が大きい、各リンクの道路種別と各リンクが存在する地域との少なくとも一方に応じて、適切にリンクIDの番号範囲を設定することが可能となる。
【0011】
また、前記リンクIDの番号範囲は、各リンクのリンク長に、各リンクの前記道路属性に応じて定められた属性係数を乗じて得られる値に基づいて設定されている構成とすると好適である。
【0012】
このように構成すれば、前記リンクIDの番号範囲を、各リンクのリンク長と、各リンクの前記道路属性とに応じて適切に設定することができる。
【0013】
また、前記属性係数は、前記道路属性に応じて分けられた複数の属性区分のそれぞれに予め設定された係数であり、前記各属性区分についての、前記道路ネットワークデータの更新によりリンクが分割される可能性の高さに応じた値が設定される構成とすると好適である。
【0014】
このように構成すれば、前記道路ネットワークデータの更新によりリンクが分割される可能性の高いほど、リンク長に対してリンクIDの番号範囲が広く設定されるようにすることができる。したがって、リンクIDの連続性を維持したままで当該リンクを分割できる回数を十分に確保することができるとともに、道路ネットワークデータを構成する全てのリンクを識別するために必要なリンクIDの番号の総範囲を必要最小限に抑え、各リンクのリンクIDを表すためのデータ量を少なく抑えることが可能である道路地図データ構造を実現することができる。
【0015】
また、前記属性区分は、高速道路本線、高速道路付随道路、及び一般道路の少なくとも3つの種別属性区分を有し、前記各種別属性区分の前記属性係数は、高速道路本線、高速道路付随道路、一般道路の順に後の区分ほど大きい値が設定されている構成とすると好適である。
【0016】
ここで、高速道路の本線は、通常、インターチェンジ、サービスエリア、パーキングエリア等が新設されない限り新規の道路が接続されることはなく、高速道路の本線に対応するリンクが道路ネットワークデータの更新により分割される可能性は低い。これに対して、一般道路は、通常、新規の道路が接続される可能性が比較的高い。インターチェンジ、サービスエリア、パーキングエリア等、並びにこれらと高速道路の本線とを結ぶ誘導路等の高速道路の付随道路は、新規の道路が接続される可能性が、高速道路の本線より高く、一般道路より低いと考えられる。したがって、この構成によれば、各リンクの道路種別による分割の可能性に応じて、適切にリンクIDの番号範囲を設定することができる。
【0017】
また、前記属性区分は、市街地及び地方の少なくとも2つの地域属性区分を有し、前記各地域属性区分の前記属性係数は、地方、市街地の順に後の区分ほど大きい値が設定されている構成とすると好適である。
【0018】
ここで、通常、市街地の道路は、地方の道路よりも更新される頻度が高く、新規の道路が接続されて道路ネットワークデータの更新により分割される可能性が比較的高い。したがって、この構成によれば、各リンクが存在する地域による分割の可能性に応じて、適切にリンクIDの番号範囲を設定することができる。
【0019】
以上の各構成を備えた道路地図データ構造の道路地図データは、記憶媒体に格納されて道路地図データ記憶媒体としても好適に利用される。
【0020】
本発明に係るナビゲーション装置の特徴構成は、上記の各構成を備えたデータ構造の道路地図データを格納した地図データベースと、自位置を検出する自位置検出手段と、前記道路地図データを参照して動作するアプリケーションプログラムと、前記アプリケーションプログラムに従って動作して案内情報を出力する案内情報出力手段とを備える点にある。
【0021】
この特徴構成によれば、ナビゲーション装置の地図データベースに、将来の道路ネットワークデータの更新に備えてリンクIDの連続性を維持したままで各リンクを分割できる回数を、各リンクの道路属性に応じて十分に確保可能であるとともに、各リンクのリンクIDを表すためのデータ量を少なく抑えることが可能である道路地図データを備えることになる。したがって、道路ネットワークデータの更新を適切に行うことができるとともに、更新後にもリンクIDの連続性が維持されるので、道路地図データの読み出しに関わる処理の速度が低下することがないナビゲーション装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態に係るナビゲーション装置1の概略構成を示すブロック図である。このナビゲーション装置1は、自位置表示、出発地から目的地までの経路探索、目的地までの進路案内、目的地の検索等の一般的なナビゲーション機能を実現可能に構成されている。そのため、図1に示すように、このナビゲーション装置1は、地図データベース2、演算処理部3、自位置検出部4、メモリ5、通信部6、表示入力部7、及び音声出力部8を備えている。ナビゲーション装置1のこれらの各機能部は、CPU(Central Processing Unit:中央処理装置)等で構成される演算処理部3を中核部材として、入力されたデータに対して種々の処理を行うための機能部がハードウエア又はソフトウエア(プログラム)或いはその両方で実装されて構成されている。以下、各部の構成について説明する。
【0023】
地図データベース2は、後述するアプリケーションプログラムPG1に従って動作する演算処理部3が参照する道路地図データRDを格納したデータベースである。この地図データベース2は、例えば、ハードディスクドライブ、フラッシュメモリ等の書き換え可能な記憶媒体とその駆動手段とを有する装置をハードウエア構成として備えている。本実施形態では、この地図データベース2が、本発明における道路地図データRDを格納した「道路地図データ記憶媒体」に相当する。そして、この地図データベース2に格納されている道路地図データRDが、本発明に係る特徴的なデータ構造を備えている。なお、図示は省略するが、地図データベース2には、道路地図データRD以外にも、アプリケーションプログラムPG1で用いる、表示、案内、検索等のための各種のデータ(案内用データ)が格納されている。これらのデータは、具体的には、画像データ、音声データ、POI(Point of Interest)データ等を含んで構成され、各データが、道路地図データRDに含まれるリンクやノード等(図3参照)に関連付けられて格納されている。以下、道路地図データRDの構造について図2及び図3に基づいて詳細に説明する。
【0024】
図2は、道路地図データRDを構成する複数の区画pの階層構造を説明するための説明図である。この図に示すように、道路地図データRDは、複数のレベルを有しているとともに、各レベルの地図データがそのレベルに応じた範囲の複数の区画pに分割されている。この際、上位のレベルほど、現実世界の広い領域に対応した区画pが設定されている。したがって、上位のレベルの一つの区画pには、それより下位のレベルの複数の区画pに対応する領域が含まれる。本例では、道路地図データRDは、最下位のレベル0から最上位のレベル3までの4つのレベルを有している。ここで、最下位のレベル0の地図データは、市街地の道路の詳細を表示する際等に用いる市街地図を構成するデータであり、一部の地域にだけ存在する。したがって、全ての地域を網羅する地図データとしては、レベル1が最下位レベルの地図データである。そして、このレベル1以上のレベル1〜レベル3の地図データが、それぞれ経路探索等に用いられる道路ネットワークデータRnを備えている。
【0025】
図3は、道路地図データRDの各レベル(レベル1〜レベル3)間での道路ネットワークデータRnの関係を示す図である。この図に示すように、道路地図データRDは、格納される道路情報の詳細度や表示縮尺等に応じた複数レベルの地図データのそれぞれに道路ネットワークデータRn(Rn1〜Rn3)を階層構造で備えている。ここで、各レベルの道路ネットワークデータRnは、複数のリンクLの接続関係により現実世界の道路を模式的に表すデータである。本例では、道路ネットワークデータRnは、最下位のレベル1から最上位のレベル3までの3つのレベルを有している。ここで、上位のレベルの一つの区画pには、それより下位のレベルの複数の区画pに対応する領域が含まれる。そして、各レベルの道路ネットワークデータRnは、複数本のリンクLが、各リンクNの端部に設けられたノードNを介して接続された構造を有している。ここで、各ノードNは、基本的には現実世界の交差点に対応して設定され、各リンクLは、各交差点間を結ぶ道路に対応して設定される。なお、リンクLが区画pの境界をまたぐ場合には、現実世界の交差点とは関係なく、当該区画pの境界上にダミーノードが設定される。すなわち、ノードNは、現実世界の交差点に対応して設定された実ノードと、交差点とは関係なく各区画の境界上に設定されたダミーノードとの2種類を含んでいる。本例では、これらを総称してノードNと呼ぶ。
【0026】
なお、本実施形態の説明では、各レベルの道路ネットワークデータRnを総称して符号「Rn」を用いるが、各レベルをそれぞれ区別する場合にはレベル1〜レベル3に対応させて「Rn1」〜「Rn3」の符号を用いる。道路ネットワークデータRnは、下位のレベルほど詳細な道路情報を含んでいる。本例では、最下位レベルであるレベル1の道路ネットワークデータRn1には、道路地図データが有する全ての道路種別の道路についての情報、具体的には、例えば、高速道路(本線及び付随道路を含む)、国道、主要地方道、県道、その他の幹線道路、及び細街路等についての情報が含まれている。また、上位レベルのレベル2及びレベル3の道路ネットワークデータRn2、Rn3では、経路探索等のために重要でない道路種別の道路(例えば細街路等)についての情報が省かれている。
【0027】
道路ネットワークデータRnのノードN及びリンクLを表す情報は、各レベル(レベル1〜3)において、共通の道路属性を有して一列に接続された複数のリンクで構成されるリンク列(マルチリンク)ML(図4参照)毎に、当該リンク列ML内での接続順に従って配列されたデータとなっている。本例では、各リンク列MLを規定する共通の道路属性として、例えば「国道1号線」や「名神高速道路」等のような現実世界における道路の名称を示す道路名称を用いている。そして、同じ道路名称の道路に対応するリンクLについて、区画p内を限度としてできるだけ長く一つにまとめて1本のリンク列MLを構成している。なお、各リンク列MLを規定する共通の道路属性は道路名称に限られるものではなく、例えば、道路種別、車線数、道路幅等の道路又はリンクについての各種の道路属性を用いることが可能である。
【0028】
また、道路ネットワークデータRnは、リンク列ML毎にまとめられたリンクL及びノードNの属性情報を含んで構成されている。ここで、ノードNの属性情報には、例えば、各ノードNの座標を示す座標情報、ダミーノードか実ノードかを示す情報、通行規制を示す情報、各ノードNが存在する上限のレベル(レベル1〜3)を示す情報、及び信号機の有無を示す情報等が含まれる。また、リンクLの属性情報には、例えば、後述する各リンクのリンクIDを示すリンクID情報、各リンクLの形状を示す形状情報、通行規制を示す情報、道路種別を示す情報、前記道路名称情報、幅員を示す情報、車線数を示す情報、及び各リンクLが存在する上限のレベル(レベル1〜3)を示す情報等が含まれる。
【0029】
道路地図データRD内の各リンクLには、それぞれを識別するための重複しない唯一のID(identifier:識別子)として、リンクIDが付与されている。そして、この道路地図データRDは、道路ネットワークデータRnの各リンクLに、各リンクLのリンク長と道路属性とに応じて設定された番号範囲を有するとともに、一列に接続された複数のリンクLで構成されるリンク列ML毎に当該リンク列ML内での接続順に従って連続するように設定された、リンクIDを付与した構造となっている。以下、このようなリンクIDの構成について詳細に説明する。
【0030】
図4は、各レベルの道路ネットワークデータRn1〜Rn3を構成する各リンクLのリンクIDの設定例を示す図である。この図に示すように、各リンクLのリンクIDは、連続する複数の番号を含む所定の番号範囲を有して構成されている。ここでは、番号範囲を有するリンクIDを、当該リンクIDの先頭番号と当該先頭番号に対する末尾番号の差分との組合せにより表している。例えば、リンクIDが「100−13」である場合、「100」が先頭番号であり、「13」が先頭番号に対する末尾番号の差分であることから、番号範囲が「14」である、100〜113の連続する番号(ここでは自然数)がリンクIDとして付与されていることになる。このリンクIDの番号範囲の設定規則については後で詳細に説明する。また、図4に示す例では、一列に接続された複数のリンクLで構成されるリンク列MLとして、第一リンク列ML1、第二リンク列ML2、第三リンク列ML3、及び第四リンク列ML4の4つが示されている。なお、本実施形態の説明では、各リンク列を総称して符号「ML」を用いるが、各リンク列MLをそれぞれ区別する場合には「ML1」〜「ML4」の符号を用いる。
【0031】
そして、各リンクLのリンクIDは、各リンク列ML1〜ML4のそれぞれについて、各リンク列ML1〜ML4内での接続順に従って連続するように設定されている。例えば、レベル1の道路ネットワークデータRn1における、第一リンク列ML1内の各リンクLのリンクIDは、先頭のリンクL(図4の最も左側のリンクL)から順に、「100−13」、「114−12」、「127−9」、「137−16」となっている。これらのリンクIDを番号で表すと、順に「100〜113」、「114〜126」、「127〜136」、「137〜153」となっており、リンクIDは、リンク列ML1内での接続順に従って番号が連続するように設定されている。また、レベル1より上位のレベル2及びレベル3の道路ネットワークデータRn2、Rn3では、下位のレベルの複数のリンクLを統合して一つのリンクLとしている。そして、当該統合したリンクLのリンクIDは、統合前の各リンクLのリンクIDを統合したものとしている。例えば、レベル2の道路ネットワークデータRn2の第一リンク列ML1では、レベル1のリンクIDが「100−13」と「114−12」の2つのリンクLを統合したレベル2のリンクLのリンクIDが「100−26」、レベル1のリンクIDが「127−9」と「137−16」の2つのリンクLを統合したレベル2のリンクLのリンクIDが「127−26」となっている。リンクIDをこのような構成としたことにより、下位レベルのリンクLと上位レベルのリンクLとの関係を、リンクIDに基づいて容易に対応付けることができる。
【0032】
次に、リンクIDの番号範囲の設定規則について説明する。本実施形態においては、リンクIDの番号範囲は、各リンクのリンク長に、各リンクの道路属性に応じて定められた属性係数を乗じて得られる値に基づいて設定される。本例では、リンクIDの番号範囲を設定するための道路属性として、各リンクの道路種別についての種別属性と、各リンクが存在する地域についての地域属性とを用いる。したがって、本例では、前記属性係数として、種別属性に応じて定められた種別属性係数Caと、地域属性に応じて定められた地域属性係数Cbとを用いる。そして、リンクIDの番号範囲Rは、下記の式(1)により演算して求める。
R=S×LL×Ca×Cb・・・(1)
ここで、「S」は、単位リンク長当りの番号範囲の基準を表す基準数である。この基準数Sは、本例では、後述する種別属性が「一般道路」であって地域属性が「市街地」であるリンクLに適した番号範囲を基準として設定され、例えば、リンク長100〔m〕当り「20」等とされる。また、「LL」は、リンク長であり、各リンクLの現実世界での長さに対応する長さの情報が用いられる。上記のとおり、このリンク長の情報は、各リンクLの属性情報として道路ネットワークデータRnに含まれている。
【0033】
そして、各リンクLのリンクIDは、上記の式(1)により求められる番号範囲Rと、先頭番号とにより決定される。すなわち、例えば先頭番号が「100」で番号範囲Rが「14」である場合、リンクIDは「100−13」となる。ここで、リンクIDの先頭番号は、当該リンクLが属するリンク列ML内での当該リンクLが接続する一つ前のリンクLのリンクIDの末尾番号の次の番号(ここでは自然数)となる。すなわち、一つ前のリンクLのリンクIDが「100−13」であるリンクLのリンクIDの先頭番号は「114」となる。なお、リンク列MLの先頭のリンクLについては、当該リンク列MLを構成する全てのリンクLのリンクIDが、他のリンク列MLのリンクIDと重複しないようにリンクIDの先頭番号が設定される。なお、本実施形態においては、最下位レベルであるレベル1の道路ネットワークデータRn1について、上記のような規則に従ってリンクIDの番号範囲を設定する。そして、上位のレベル2及びレベル3の道路ネットワークデータRn2、Rn3については、上記のとおり、レベル1のリンクLのリンクIDを統合したリンクIDを付与する。
【0034】
前記属性係数としての種別属性係数Ca及び地域属性係数Cbは、それぞれの道路属性(種別属性又は地域属性)に応じて分けられた複数の属性区分のそれぞれに予め設定された係数である。そして、これらの種別属性係数Ca及び地域属性係数Cbは、前記各属性区分についての、道路ネットワークデータRnの更新によりリンクLが分割される可能性の高さに応じた値が設定されている。図5は、種別属性係数Caの属性区分及び設定値の具体例を示す図であり、図6は、地域属性係数Cbの属性区分及び設定値の具体例を示す図である。
【0035】
図5に示すように、本例では、種別属性に係る種別属性区分として、道路種別を「高速道路本線」、「高速道路付随道路」、「一般道路」の3つに区分している。そして、各種別属性区分の種別属性係数Caは、「高速道路本線」、「高速道路付随道路」、「一般道路」の順に後の区分ほど大きい値、具体的には、順に「0.3」、「0.6」、「1」の値が設定されている。ここで、「高速道路本線」の区分には、高速道路や有料道路等の本線部分を構成するリンクLが含まれる。「高速道路付随道路」の区分には、インターチェンジ、サービスエリア、パーキングエリア等、並びにこれらと高速道路の本線とを結ぶ誘導路等を構成するリンクLが含まれる。「一般道路」の区分には、「高速道路本線」及び「高速道路付随道路」の区分に属さない全てのリンクLが含まれる。具体的には、国道、主要地方道、県道、その他の幹線道路、及び細街路等を構成するリンクLが含まれる。そして、「高速道路本線」の区分に属する道路種別の道路には、通常、インターチェンジ、サービスエリア、パーキングエリア等が新設されない限り新規の道路が接続されることはなく、この区分に属するリンクLが道路ネットワークデータRnの更新により分割される可能性は低い。これに対して、「一般道路」の区分に属する道路種別の道路には、新規の道路が接続される可能性が比較的高い。また、「高速道路付随道路」の区分に属する道路種別の道路に新規の道路が接続される可能性の高さは、「高速道路本線」と「一般道路」との間であると考えられる。したがって、このような各種別属性区分についての、道路ネットワークデータRnの更新によりリンクLが分割される可能性の高さに応じて、当該可能性が高いほど、種別属性係数Caを大きい値に設定している。
【0036】
また、図6に示すように、本例では、地域属性に係る地域属性区分として、地域を「市街地」、「地方」の2つに区分している。そして、各地域属性区分の地域属性係数Cbは、「地方」、「市街地」の順に後の区分ほど大きい値、具体的には、順に「1」、「0.7」の値が設定されている。ここで、各リンクLが「市街地」の区分に属するか、「地方」の区分に属するかの判定は、本例では、各リンクLの少なくとも一部が、レベル0の市街地図を構成する地図データを有する地図上の領域に含まれているか否かに基づいて行う。これは、市街地図が道路地図データRDの全ての地域を網羅しているものではなく、一部の市街地のみについて設けられていることを利用して市街地か否かの判定を簡易的に行うものである。そして、「市街地」の区分に属する道路は、通常、「地方」の区分に属する道路よりも更新される頻度が高く、新規の道路が接続されて道路ネットワークデータの更新により分割される可能性が比較的高い。したがって、このような各地域属性区分についての、道路ネットワークデータRnの更新によりリンクLが分割される可能性の高さに応じて、当該可能性が高いほど、地域属性係数Cbを大きい値に設定している。
【0037】
図4に示す例では、各リンク列MLを構成するリンクLの種別属性区分は、第一リンク列ML1が「高速道路本線」、第二リンク列ML2が「高速道路付随道路」、第三リンク列ML3が「一般道路」、第四リンク列ML4が「高速道路付随道路」である。なお、第四リンク列ML4は「高速道路本線」の第一リンク列ML1と並列に設けられた、サービスエリア及びその誘導路等を構成するリンク列MLである。また、第二リンク列ML2は「高速道路本線」の第一リンク列ML1と直列に設けられた、インターチェンジ及びその誘導路等を構成するリンク列MLである。したがって、例えば、上記の式(1)の基準数Sがリンク長100〔m〕当り「20」であり、第一から第四リンク列ML1〜ML4を構成する全てのリンクLが「市街地」の区分に属するという条件下では、第一リンク列ML1のリンク長が220〔m〕のリンクLのリンクIDの番号範囲Rは、上記の式(1)に従い、以下のように求められる。
R=(20/100)×220×0.3×1=13.2
本例では、番号範囲Rを自然数とするため四捨五入する。よって、番号範囲Rは「13」となる。そして、当該リンクLが接続する一つ前のリンクLのリンクIDの末尾番号が「113」である場合には、リンクIDは「114−12」となる。
また、上記と同じ条件で、第三リンク列ML3のリンク長が100〔m〕のリンクLのリンクIDの番号範囲Rは、上記の式(1)に従い、以下のように求められる。
R=(20/100)×100×1×1=20
そして、当該リンクLが接続する一つ前のリンクLのリンクIDの末尾番号が「373」である場合には、リンクIDは「373−19」となる。
【0038】
なお、以上のように、少なくとも最下位レベルであるレベル1の道路ネットワークデータRn1について、上記のような規則に従ってリンクIDの番号範囲を設定し、上位のレベル2及びレベル3の道路ネットワークデータRn2、Rn3については、レベル1のリンクLのリンクIDを統合したリンクIDを付与する。これにより、上位レベルの道路ネットワークデータRn2、Rn3についても同様に、道路ネットワークデータRnの各リンクLに、各リンクLのリンク長と道路属性とに応じて範囲設定された番号範囲を有するとともに、一列に接続された複数のリンクLで構成されるリンク列ML毎に当該リンク列ML内での接続順に従って番号範囲が連続するように設定されたリンクIDが付与されることになる。
【0039】
演算処理部3は、メモリ5に格納されたアプリケーションプログラムPG1に従って動作する演算処理機能部であり、上記のように、CPU等の公知の演算処理手段により構成される。図示は省略するが、アプリケーションプログラムPG1には、例えば、表示プログラム、マップマッチングプログラム、経路探索プログラム、案内プログラム、及び検索プログラム等が含まれる。ここで、表示プログラムは、表示入力部7の表示画面に自位置や目的地等の周辺の地図表示を行うとともに、当該地図上への自位置表示等を行うためのプログラムである。マップマッチングプログラムは、自位置検出部4により検出された自位置を地図の道路上に合わせるマップマッチング処理を行うためのプログラムである。経路探索プログラムは、例えば自位置等の出発地から表示入力部7により入力された目的地までの案内経路等を探索する経路探索を行うためのプログラムである。案内プログラムは、経路探索プログラムにより決定された目的地までの経路に従って、表示入力部7の表示画面による案内表示や音声出力部8による音声案内等により、ユーザに対して適切な進路を案内する処理を行うためのプログラムである。検索プログラムは、目的地や地図表示のための地点等を、住所、電話番号、施設名称、ジャンル等に基づいて検索するためのプログラムである。なお、これらの各プログラムに基づいて動作する演算処理部3によるナビゲーション装置1の動作処理は公知であるので詳細な説明は省略する。そして、このアプリケーションプログラムPG1に従って動作する演算処理部3は、地図情報として地図データベース2に格納された道路地図データRDを参照する。
【0040】
また、メモリ5には、後述する地図更新用サーバ装置11から供給される更新用データファイルDf(図7参照)に基づいて、道路地図データRDを更新する処理を演算処理部3に行わせるための更新プログラムPG2も格納されている。本実施形態では、後述するように、更新用データファイルDfは、地図データベース2に格納されている道路地図データRDに対する更新部分のデータを一つにまとめたファイルとされている。したがって、この更新用データファイルDfに含まれるデータにより、道路地図データRDの更新対象となる部分を書き換え等することにより、道路地図データRDを更新することができる。
【0041】
自位置検出部4は、ナビゲーション装置1の現在位置を検出するための機能部である。そのため、自位置検出部4は、図示は省略するが、例えば、GPS受信機、方位センサ、及び距離センサ等を備える。そして、これらにより取得された情報に基づいて現在の位置を示す座標や進行方位等の情報を取得して、演算処理部3に出力する。本実施形態では、この自位置検出部4が、本発明における「自位置検出手段」に相当する。
【0042】
表示入力部7は、液晶表示装置等の表示画面と、この表示画面に連動するタッチパネルや操作スイッチ等を備えて構成される。また、音声出力部8は、スピーカ及びアンプ等を備えて構成される。これらの表示入力部7及び音声出力部8は、演算処理部3に接続され、演算処理部3の動作に従って自位置表示、2地点間の経路探索、進路案内、目的地検索等のための表示や音声出力等を行う。また、表示入力部7は、ユーザによる操作入力を受け付けて演算処理部3にその内容を出力する。よって、本実施形態では、上記の演算処理部3と、表示入力部7及び音声出力部8が、本発明における「案内情報出力手段9」を構成する。
【0043】
通信部6は、後述する地図更新用サーバ装置11との間で通信を行うための機能部である。本例では、この通信部6は、無線基地局20(図7参照)との間で無線によりデータの送受信を行うことが可能に構成されている。このような無線通信方法としては、例えば携帯電話網や無線LAN(Local Area Network)等の公知の通信網を用いることができる。これにより、通信部6は、図7に示すように、無線基地局20及びインターネット等の通信ネットワーク19を介して地図更新用サーバ装置11と通信可能に構成されている。よって、ナビゲーション装置1は、地図更新用サーバ装置11から送信される更新用データファイルDfを受信することができる。なお、図示は省略するが、通信部6は、ユーザやナビゲーション装置1の取扱い業者等の有する更新用端末との間でも有線又は無線により通信可能に構成されていると好適である。これにより、ナビゲーション装置1は、前記更新用端末に通信ネットワークを介して送信された更新用データファイルDfを受信することが可能に構成される。
【0044】
次に、上記ナビゲーション装置1の道路地図データRDを更新するための更新用データファイルDfを配信する地図更新用サーバ装置11の構成について説明する。図7は、この地図更新用サーバ装置11の概略構成を示すブロック図である。本実施形態では、地図更新用サーバ装置11は、更新入力部16からの入力データにより更新される元地図データD1が格納された元地図データベース12と、ナビゲーション装置1の地図データベース2内の道路地図データRDと同内容の対象用地図データD2が格納された対照用地図データベース13とに基づいて更新用データファイルDfを生成する。そして、地図更新用サーバ装置11は、生成した更新用データファイルDfを更新データベース14に格納しておき、ナビゲーション装置1との通信時に通信部18を介して更新用データファイルDfをナビゲーション装置1に配信する。そのため、図7に示すように、この地図更新用サーバ装置11は、元地図データベース12、対象用地図データベース13、更新データベース14、演算処理部15、更新入力部16、メモリ17、通信部18を備えている。地図更新用サーバ装置11のこれらの各機能部は、CPU(Central Processing Unit:中央処理装置)等で構成される演算処理部15を中核部材として、入力されたデータに対して種々の処理を行うための機能部がハードウエア又はソフトウエア(プログラム)或いはその両方で実装されて構成されている。以下、各部の構成について説明する。
【0045】
元地図データベース12に格納されている元地図データD1は、道路ネットワークデータを構成するための各リンクLを、所定のリンクIDと属性データとの組合せにより表したデータ構造を有する地図データである。本例では、元地図データD1のリンクIDとして、道路ネットワークデータRnにおけるリンクLの接続順と無関係な番号、文字、符号等で構成されるパーマネントIDを用いている。そして、各リンクLの属性データには、上述した道路地図データRDに含まれるリンクL及びノードNの属性データと同様の情報が含まれている。この元地図データD1は、更新入力部16からの入力データにより更新される。ここで、更新入力部16は、例えば、モニタ等の表示装置とキーボードやマウス等の入力装置とを有している。そして、演算処理部15を介して元地図データD1の内容を表示装置に表示し、作業者が元地図データD1の内容を確認しつつ、入力装置を用いて新たな道路地図情報を入力して更新することができる構成となっている。すなわち、作業者は、実地調査や航空写真等により得られた道路の変更に関する情報に基づいて、更新入力部16を介して元地図データD1の内容を更新することができる構成となっている。
【0046】
対象用地図データベース13に格納されている対象用地図データD2は、ナビゲーション装置1の地図データベース2に格納されている道路地図データRDと同じ内容となっている。すなわち、対象用地図データD2は、道路地図データRDと同様に、複数レベルの地図データを備え、各レベルの地図データのそれぞれに道路ネットワークデータRn(Rn1〜Rn3)を階層構造で備えている。したがって、道路地図データRDと同様に、対象用地図データD2内の各リンクLにも、それぞれを識別するための重複しない唯一のID(identifier:識別子)として、各リンクLのリンク長と道路属性とに応じて設定された番号範囲を有するとともに、一列に接続された複数のリンクLで構成されるリンク列ML毎に当該リンク列ML内での接続順に従って連続するように設定された、リンクIDが付与されている。なお、これ以上の説明は、道路地図データRDの構成についての説明と重複するので、ここでは省略する。そして、この対象用地図データD2の内容は、更新用データファイルDfを生成した後に、更新後の元地図データD1に基づく更新後の道路地図データRDrの内容と一致するように更新される。これにより、対象用地図データD2の内容は、更新用データファイルDfにより更新されるナビゲーション装置1の道路地図データRDと同じ内容になるよう常に維持される。よって、本実施形態では、この対象用地図データベース13も、本発明における道路地図データRDを格納した「道路地図データ記憶媒体」に相当する。
【0047】
更新データベース14に格納されている更新用データファイルDfは、地図データベース2に格納されている道路地図データRDに対する更新部分のデータを一つにまとめたファイルである。この更新用データファイルDfは、メモリ17に格納された更新データ生成プログラムPG3に従って動作する演算処理部15により生成され、更新データベース14に格納される。本例では、更新用データファイルDfは、元地図データD1に基づいて生成される更新後の道路地図データRDrと対照用地図データベース13に格納されている対象用地図データD2とを対比し、これらの差分を抽出することにより生成される差分データのファイルとしている。
【0048】
演算処理部15は、メモリ17に格納された更新データ生成プログラムPG3及び更新データ送信プログラムPG4に従って動作する演算処理機能部であり、上記のように、CPU等の公知の演算処理手段により構成される。ここで、更新データ生成プログラムPG3は、元地図データD1が更新された場合に、更新後の元地図データD1と対象用地図データD2とに基づいて更新用データファイルDfを生成するためのプログラムである。また、更新データ送信プログラムPG4は、更新データ生成プログラムPG3に従って生成された更新用データファイルDfをナビゲーション装置1に送信するためのプログラムである。これらの更新データ生成プログラムPG3及び更新データ送信プログラムPG4に従った演算処理部15の動作処理については、後に図8及び図9に示すフローチャートに基づいて詳細に説明する。
【0049】
通信部18は、ナビゲーション装置1との間で通信を行うための機能部である。本例では、この通信部18は、インターネット等の通信ネットワーク19及び無線基地局20を介してナビゲーション装置1との間で通信可能に構成されている。これにより、通信部18は、ナビゲーション装置1に対して更新用データファイルDfを送信することが可能となっている。
【0050】
次に、地図更新用サーバ装置11における、更新データ生成プログラムPG3及び更新データ送信プログラムPG4に従った演算処理部15の動作処理について図8及び図9に示すフローチャートに基づいて説明する。図8は、更新データ生成プログラムPG3及び更新データ送信プログラムPG4に従った演算処理部15の動作処理の全体を示すフローチャートである。また、図9は、図8のステップ#02における更新後の道路地図データRDrの生成処理の詳細を示すフローチャートである。
【0051】
まず、図8のフローチャートについて説明する。更新入力部16からの入力データによる、元地図データD1の更新があった場合には(ステップ#01:Yes)、演算処理部15は、更新データ生成プログラムPG3に従い、元地図データD1に基づいて、更新後の道路地図データRDrを生成する(ステップ#02)。このステップ#02の処理の詳細については、後に図9のフローチャートを用いて説明する。ここで生成される更新後の道路地図データRDrは、元地図データD1の更新内容に合わせて更新されている以外は、対象用地図データD2及びナビゲーション装置1の地図データベース2に格納されている道路地図データRDと同様であり、これらは同じデータ形式のデータとなっている。このステップ#02で生成された更新後の道路地図データRDrは、メモリ17に一時的に格納される。次に、演算処理部15は、更新データ生成プログラムPG3に従い、更新後の道路地図データRDrと対象用地図データベース13に格納されている対象用地図データD2とを対比し、更新用データファイルDfを生成する(ステップ#03)。具体的には、更新後の道路地図データRDrと対象用地図データD2とは、データの内容に、元地図データD1の更新による更新後と更新前との相違がある点以外は共通であり、同じデータ形式で対比可能となっている。そこで、対象用地図データD2を基準として更新後の道路地図データRDrとの間での差分データを抽出してまとめることにより、更新用データファイルDfを生成する。
【0052】
そして、演算処理部15は、ステップ#03で生成された更新用データファイルDfを、更新データベース14に格納する(ステップ#04)。その後、通信部18において、ナビゲーション装置1との間で通信可能か否かを判定する(ステップ#05)。なお、通信部18は、上記のとおり、通信ネットワーク19及び無線基地局20等を介してナビゲーション装置1との通信を行う。そして、通信が可能な場合には(ステップ#05:Yes)、演算処理部15は、通信部18を介してナビゲーション装置1に更新用データファイルDfを送信する(ステップ#06)。その後、演算処理部15は、更新後の道路地図データRDrに基づいて、対象用地図データD2を更新する(ステップ#07)。以上で、地図更新用サーバ装置11の処理を終了する。なお、更新用データファイルDfを受信したナビゲーション装置1では、更新プログラムPG2に従って演算処理部3が動作し、地図データベース2内の道路地図データRDの更新を行う(図1参照)。
【0053】
次に、図9のフローチャートに基づいて、上述したステップ#02の更新後の道路地図データRDrを生成する処理の詳細について説明する。まず、演算処理部15は、更新データ生成プログラムPG3に従って、元地図データD1のデータ構造を、道路地図データRDと同じ構造、すなわち複数レベルの地図データを備え、各レベルの地図データのそれぞれに道路ネットワークデータRn(Rn1〜Rn3)を階層構造で備える構造に変換する(ステップ#11)。そして、変換後のデータから最下位レベルであるレベル1の各リンクLのデータ抽出し(ステップ#12)、抽出された各リンクLにリンクIDを付与する処理を行う(ステップ#13)。具体的には、上記のとおり、抽出された各リンクLに、それぞれを識別するための重複しない唯一のID(identifier:識別子)として、各リンクLのリンク長と道路属性とに応じて設定された番号範囲を有するとともに、一列に接続された複数のリンクLで構成されるリンク列ML毎に当該リンク列ML内での接続順に従って連続するように設定された、リンクIDを付与する。このようなリンクIDの設定規則については、既に説明したのでここでは説明を省略する。ところで、元地図データD1の更新に伴う道路ネットワークデータRnの更新により、分割されるリンクLのリンクIDについては、更新前のリンクIDを分割して生成した新たなリンクIDを付与する。なお、対象用地図データD2との間で変更がないリンクLについては、対象用地図データD2と同じリンクIDを更新後の道路地図データRDrでも用いる。
【0054】
ここでは一例として、図4に示すリンクIDが「325−25」の既存のリンクL内に、図10に太線で示すように、新たなノードN´及びリンク列ML5が追加された場合について説明する。この場合、既存のリンクLのリンクIDを分割し、分割後の各リンクLのリンクIDとすると好適である。また、この際、分割後のリンクLのリンクIDの番号範囲Rは、上記の式(1)により求められる。例えば、リンク長が130〔m〕で番号範囲Rが「26」である、図4に示すリンクID「325−25」の既存のリンクLが、リンク列MLの先頭側(図4及び図10の左側)が80〔m〕、その後方側(図4及び図10の左側)が50〔m〕となるように分割された場合には、以下のようにリンクIDが設定される。すなわち、上記の式(1)の基準数Sがリンク長100〔m〕当り「20」であり、第四リンク列ML1を構成する全てのリンクLが「市街地」の区分に属するという条件下では、分割後のリンク長が80〔m〕のリンクLのリンクIDの番号範囲Rは、上記の式(1)に従い、以下のように求められる。
R=(20/100)×80×1×1=16
ここで、分割前のリンクIDの番号範囲Rが「26」であるから、分割後のリンク長が50〔m〕のリンクLのリンクIDの番号範囲Rは「10」となる。したがって、分割後のリンクIDは、図10に示すように、先頭側が「325−15」、後方側が「341−9」となる。なお、追加されたリンク列ML5を構成する各リンクLについては、既存の各リンク列ML1〜ML4を構成する各リンクLのリンクIDとは重複しないリンクIDを、リンク列ML5内での接続順に従って連続するように設定している。ここでは、一例として、「600−23」、「624−18」のリンクIDを付与している。
【0055】
そして、図9に示すように、各リンクLのリンクIDを付与した後(ステップ#13)、最下位レベルであるレベル1の全てのリンクLにリンクIDを付与したか否かを判定する(ステップ#14)。レベル1の全てのリンクLにリンクIDを付与するまでは(ステップ#14:No)、ステップ#12及び#13の処理を繰り返す。そして、レベル1の全てのリンクLにリンクIDを付与した後(ステップ#14:Yes)。最下位レベルであるレベル1のリンクLのリンクIDを統合し、上位レベルであるレベル2及びレベル3の各リンクのリンクIDを付与する(ステップ#15)。そして、道路地図データRDに含まれる全てのリンクLのリンクIDを付与した後、更新後の道路地図データRDrを生成する処理は終了する。
【0056】
〔その他の実施形態〕
(1)上記の実施形態では、リンクIDの番号範囲を設定するための道路属性として、各リンクの道路種別についての種別属性と、各リンクが存在する地域についての地域属性とを用いる場合を例として説明した。しかし、本発明の適用範囲はこの例に限定されない。したがって、例えば、リンクIDの番号範囲を設定するための道路属性として、種別属性のみを用い、或いは、地域属性のみを用いることも本発明の好適な実施形態の一つである。また、種別属性及び地域属性以外の道路属性を用いてリンクIDの番号範囲を設定する構成とすることも可能である。
【0057】
(2)上記の実施形態では、種別属性に係る種別属性区分として「高速道路本線」、「高速道路付随道路」、「一般道路」の3つの区分を用い、地域属性に係る地域属性区分として「市街地」、「地方」の2つの区分を用いる場合を例として説明した。しかし、本発明の適用範囲はこの例に限定されるものではなく、これらの種別属性区分及び地域属性区分の具体的な区分は、道路ネットワークデータRnの更新によりリンクLが分割される可能性の高さに応じて適宜設定すると好適である。また、これらの各区分に対応する種別属性係数Ca及び地域属性係数Cbの値についても、同様に道路ネットワークデータRnの更新によりリンクLが分割される可能性の高さに応じて適宜設定すると好適である。
【0058】
(3)上記の実施形態では、リンクIDを、当該リンクIDの先頭番号と当該先頭番号に対する末尾番号の差分との組合せにより表す場合について説明した。しかし、リンクIDの構成はこれに限定されない。例えば、リンクIDを「100〜113」、「114〜126」、「127〜136」等のように番号範囲の先頭番号と末尾番号のそれぞれの番号で表すことも可能である。
【0059】
(4)上記の実施形態では、対象用地図データD2及び更新用データファイルDfの更新バージョンについては説明しなかった。しかし、複数のナビゲーション装置1の道路地図データRDの更新を行う場合には、各ナビゲーション装置1の更新状態に応じて、古いバージョンの対象用地図データD2及び更新用データファイルDfを含む複数バージョンのデータを対象用地図データベース13及び更新データベース14に格納する構成とすると好適である。すなわち、複数のナビゲーション装置1の全てについて、地図更新用サーバ装置11と頻繁に通信を行うことができない場合があり、更新できずに古い道路地図データRDを有するナビゲーション装置1と、最新の更新用データファイルDfにより更新された道路地図データRDを有するナビゲーション装置1とが混在する場合がある。そこで、それら全てのナビゲーション装置1の道路地図データRDの更新に対応可能とするため、道路地図データRD、対象用地図データD2、及び更新用データファイルDfのそれぞれにバージョン情報を備える構成とすると好適である。そして、ナビゲーション装置1が備える道路地図データRDのバージョンよりも新しいバージョンの更新用データファイルDfを全て用いて、当該道路地図データRDを更新するように構成する。これにより、各ナビゲーション装置1の更新状態に応じて適切に道路地図データRDの更新を行うことが可能となる。
【0060】
(5)上記の実施形態では、本発明に係る道路地図データRDの構造を、ナビゲーション装置1の道路地図データに適用する場合を例として説明した。しかし、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではなく、目的地検索用の地図データベース等の他の用途に用いる道路地図データにも適用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明に係る道路地図データ構造は、例えばナビゲーション装置や地図データベース等に利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施形態に係るナビゲーション装置の概略構成を示すブロック図
【図2】道路地図データを構成する複数の区画の階層構造を説明するための説明図
【図3】道路地図データの各レベル間での道路ネットワークデータの関係を示す図
【図4】各レベルの道路ネットワークデータを構成する各リンクのリンクIDの設定例を示す図
【図5】種別属性係数の属性区分及び設定値の具体例を示す図
【図6】地域属性係数の属性区分及び設定値の具体例を示す図
【図7】本発明の実施形態に係る地図更新用サーバ装置の概略構成を示すブロック図
【図8】地図更新用サーバ装置における更新データ生成及び送信の動作処理の全体を示すフローチャート
【図9】更新後の道路地図データの生成処理の詳細を示すフローチャート
【図10】リンクIDの設定例を示す図
【符号の説明】
【0063】
1:ナビゲーション装置
2:地図データベース(道路地図データ記憶媒体)
4:自位置検出部(自位置検出手段)
9:案内情報出力手段
13:対象用地図データベース(道路地図データ記憶媒体)
RD:道路地図データ
Rn:道路ネットワークデータ
ML:リンク列
L:リンク
PG1:アプリケーションプログラム
Ca:種別属性係数(道路属性)
Cb:地域属性係数(道路属性)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のリンクの接続関係により道路を表す道路ネットワークデータを備える道路地図データ構造であって、
前記道路ネットワークデータの各リンクに、各リンクのリンク長と道路属性とに応じて設定された番号範囲を有するとともに、一列に接続された複数のリンクで構成されるリンク列毎に当該リンク列内での接続順に従って連続するように設定された、リンクIDが付与されている道路地図データ構造。
【請求項2】
前記道路属性は、各リンクの道路種別についての種別属性と、各リンクが存在する地域についての地域属性との少なくとも一方を含む請求項1に記載の道路地図データ構造。
【請求項3】
前記リンクIDの番号範囲は、各リンクのリンク長に、各リンクの前記道路属性に応じて定められた属性係数を乗じて得られる値に基づいて設定されている請求項1又は2に記載の道路地図データ構造。
【請求項4】
前記属性係数は、前記道路属性に応じて分けられた複数の属性区分のそれぞれに予め設定された係数であり、前記各属性区分についての、前記道路ネットワークデータの更新によりリンクが分割される可能性の高さに応じた値が設定される請求項3に記載の道路地図データ構造。
【請求項5】
前記属性区分は、高速道路本線、高速道路付随道路、及び一般道路の少なくとも3つの種別属性区分を有し、
前記各種別属性区分の前記属性係数は、高速道路本線、高速道路付随道路、一般道路の順に後の区分ほど大きい値が設定されている請求項4に記載の道路地図データ構造。
【請求項6】
前記属性区分は、市街地及び地方の少なくとも2つの地域属性区分を有し、
前記各地域属性区分の前記属性係数は、地方、市街地の順に後の区分ほど大きい値が設定されている請求項4又は5に記載の道路地図データ構造。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載のデータ構造を有する道路地図データを格納した道路地図データ記憶媒体。
【請求項8】
請求項1から6のいずれか一項に記載のデータ構造の道路地図データを格納した地図データベースと、自位置を検出する自位置検出手段と、前記道路地図データを参照して動作するアプリケーションプログラムと、前記アプリケーションプログラムに従って動作して案内情報を出力する案内情報出力手段とを備えるナビゲーション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−164732(P2008−164732A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−351618(P2006−351618)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】