説明

遮断空気通路を有するガイド装置の支持リング

支持リング(40)の軸方向端面に形成された遮断空気通路(46)は、ガス流出ハウジング(22)によって、通路の開放側で密封されている。遮断空気通路は、横断面プロファイルの外側領域における設置の故に、全遮断空気を円周に沿って一箇所のみに供給することが可能な程度の大きな横断面を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体機械のための、特に、過給される内燃機関用の排気ガス・ターボチャージャのタービンのための、ガイド装置の分野に関する。
本発明は、複数の調整可能なガイドブレードを有する、ガイド装置の支持リングと、このような支持リングを有するガイド装置と、このような支持リングを有するこのようなガイド装置と、を備えた流体機械に関する。
【背景技術】
【0002】
排気ガス・ターボチャージャは、内燃機関(往復動機関)の出力を増大させるために、用いられる。排気ガス・ターボチャージャは、内燃機関の排気ガス流に設けられた排気ガスタービンと、内燃機関の吸気路(Ansaugtrakt)に設けられたコンプレッサとからなる。排気ガスタービンのタービンホイールは、内燃機関の排気ガス流によって回転され、シャフトによって、コンプレッサの回転ホイールを駆動する。コンプレッサは、内燃機関の吸気路における圧力を増加させる。それ故に、吸気の際に、コンプレッサを有しない内燃機関の場合より大きな量の空気が、燃焼室に達する。排気ガス・ターボチャージャは、出力タービンとしても用いられる。この場合、排気ガス・ターボチャージャは、シャフトを介して、排気ガス・ターボチャージャのコンプレッサを駆動せず、他の機械的な電源ユニットが、カップリングを介して、発生器を駆動する。
【0003】
最新の往復動機関の最近の開発は、排気の、費用の及び燃料消費の減少によって促進される。この場合、エンジンの過給システムは、特に開発目標への達成に寄与する。過去では、大型エンジンの場合に、固定のジオメトリ(固定ジオメトリ)を有するタービン構成要素及びコンプレッサ構成要素を備えた排気ガス・ターボチャージャが用いられた。これらのジオメトリは、個々のエンジンのために設計され且つエンジンの規格に適合された。しかし、エンジンの作動中に、ジオメトリは変化しない。今後、作動中のエンジンへの排気ガス・ターボチャージャの一層良い適合を可能にするために、作動中に調整可能な(または可変の)タービン・ジオメトリ(VTG)の使用が、ますます議論される。
【0004】
この場合、排気ガスタービンのガイド装置のガイドブレードの開口部は、ガイドプレートの回転によって変化される。調整可能なタービン・ジオメトリの使用は、従来の知られた技術では、及び、特に、例えば乗用車で用いられる小型エンジンの領域で、広く普及されている。大型エンジンの場合、既に今日では、燃料対空気比率の正確な制御を必要とするガスエンジンの場合、可変のタービン・ジオメトリが用いられる。今後は、大型エンジンの場合には、可変のタービン・ジオメトリの使用の普及が見込まれる。
【0005】
可変のタービン・ジオメトリを有する排気ガス・ターボチャージャにおいて、内燃機関からの排気ガスが、ガイド装置のガイドブレードの取付け箇所に入ることを阻止するために、及び環境への排気ガスの漏れを排除するために、ガイド装置に遮断空気を供給しなければならない。
【0006】
従来のガイド装置では、遮断空気を、ガイド装置の支持型のハウジングリング−以下、支持リングと言う−の横断面プロファイルの内部に設けられた環状通路の中へ導く。支持リングの鋳造の場合、この環状通路の故に、鋳造用コアが必要である。このことは、鋳造工程のコストを上げる。更に、遮断空気通路の横断面は、支持リングのプロファイルの内部における、制限された空間条件の故に、比較的小さい。遮断空気の均一な供給を達成するために、従って、空気を、複数の個所に供給しなければならない。このためには、ガイド装置の外に、他の特殊な管が必要である。
【発明の概要】
【0007】
本発明の課題は、液体機械のガイド装置の、安価に製造される支持リングを提供することである。
【0008】
このことは、本発明により、ガスが流路からガイド装置のガイドプレートの取付け箇所に浸入することを阻止するための遮断空気通路が、外へ開いており且つ周方向に延びている溝としてデザインされていてなる支持リングによって、達成される。
【0009】
軸方向に排気ガスが貫流されるガイド装置のための支持リングにおいて、溝は、この場合、支持リングの軸方向端面に形成されている。径方向に排気ガスが貫流されるガイド装置において、溝は、径方向外側または内側にある周面に形成されている。遮断空気通路が、開放型の溝として、支持リングに形成されるとき、このことによって、支持リングを、遮断空気通路のためのコアなしに鋳造することができる。
【0010】
支持リングの軸方向端面または周面に形成された遮断空気通路は、本発明によれば、通路の開放側で、ガス流入ハウジングおよび/または他のハウジング部分、例えばカバーリングによって密封される。
【0011】
本発明に基づいて形成される支持リングの遮断空気通路は、横断面プロファイルにおける外側領域の設置の故に、全遮断空気を円周に沿って1箇所のみに供給することが可能な程度に大きな横断面を有している。このことは、分配管の省略を可能にし、且つ支持リングの機械的加工のより少ない数を必要とする。
他の利点は、従属請求項から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】従来の技術に基づく排気ガス・ターボチャージャの全体図を示す。
【図2】従来の技術に基づく調整可能な、軸方向に排気ガスが貫流されるガイド装置を有する排気ガスタービンの断面図を示す。
【図3】本発明に基づいて形成された支持リングを有し且つ調整可能な、軸方向に排気ガスが貫流されるガイド装置を備えた排気ガスタービンの断面図を示す。
【図4】本発明に基づいて形成されており且つ図3に示す支持リングの、軸方向に見た図を示す。
【図5】図4に示す支持リングの、V−Vに沿って延びている断面図を示す。
【図6】径方向に排気ガスが貫流されるガイド装置の、本発明に基づいて形成された支持リングの断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳述する。
図1は、排気ガスタービン20及びコンプレッサ10と、両者の間に設けられた軸受ハウジング50と、を有する従来の排気ガス・ターボチャージャを示している。排気ガスタービン20は、ガス流入ハウジング21を有している。このガス流入ハウジングを通って、熱い排気ガスが、タービンホイールに向かって流れ、且つタービンホイールを駆動する。その後、排気ガスは、ガス流出ハウジング22を通って排気システムに供給される。タービンホイールは、軸Aを中心として回転可能なシャフトの一端に設けられており、このシャフトは、軸受ハウジング50に回転自在に取り付けられている。シャフトの他端には、コンプレッサホイールがある。コンプレッサホイールは、空気流入ハウジング11を通って吸引される空気を圧縮する。空気は、続いて、空気流出ハウジングの中に集められ、内燃機関の燃焼室に供給される。
【0014】
図示した実施の形態では、タービンは、軸方向に排気ガス流に曝される軸流タービンである。その代わりに、排気ガスを、厳密に径方向にまたは径方向に対し僅かに傾斜した方向に、タービンホイールへ送ることができるだろう。この場合には、ラジアル・タービンまたは混流タービンのことを述べている。
【0015】
図2は、従来の排気ガス・ターボチャージャの軸流タービンの断面図を示している。タービンホイール25は、軸線Aを中心として回転自在に軸受ハウジング50に取り付けられたシャフト30に設けられている。タービンホイール25は、多数の回転ブレード26を有している。これらの回転ブレードは、タービンホイールの径方向外側の縁部にタービンホイールの周囲に沿って設けられている。ガス流入ハウジング21からガス流出ハウジング22までの流路の中の排気ガス流は、各々の図では、矢印によって示されている。タービンホイールの回転ブレードは、軸方向に排気ガス流に曝される。
【0016】
回転ブレード26の上流には、調整可能なガイド装置(調整可能なタービン・ジオメトリ)が設けられている。この調整可能なガイド装置は、夫々1つのシャフト42を有する多数のガイドブレード41を備えている。各々のガイドブレード41の各々のシャフト42は、軸線Bを中心として回転自在にハウジングに取り付けられている。ガイド装置のハウジングは、流路を環状に取り囲む支持リング40を有している。流路に向かって、支持リング40は、カバーリング45を取り囲むことができる。ガイドブレード41のシャフト42は、支持リング40に、取付けの目的のための設けられた孔に設けられており且つ取り付けられている。これらの取付け箇所は、ガイドブレード41のシャフト42のように、実質的に径方向に延びている。支持リング40は、通常は、固定手段によって、ガス流出ハウジング22および/またはガス流入ハウジング21に固定されている。固定手段としては、ボルト、ネジまたは継目板が用いられる。
【0017】
調整可能なガイド装置は、更に、調整リング43及び1つのガイドブレードにつき1つの調整レバー44を有している。各々の調整レバーは、支持リングの開口部49を通って、シャフト42へ延びている。ガイド装置を調整するために、調整リング43は周方向に動かされる。調整レバー44は、回転運動を、ガイドブレードのシャフト42に伝達する。ガイドブレード41の取付け箇所への排気ガスの流入を阻止するために、及び環境への排気ガスの漏れを排除するために、支持リング40には、遮断空気通路46が設けられている。その際、遮断空気は、支持リング40のプロファイルの内部に環状に延びている遮断空気通路46における1つまたは複数の箇所で供給され、ガイドブレードのシャフトのための開口部を通って、流路へ流れる。
【0018】
本発明に基づいて形成されており且つ図3に示す支持リングの場合、ガイドブレード41のシャフト42を保持し且つ取り付けるための複数の開口部48には、同様に、遮断空気通路46を介して、遮断空気が供給される。調整レバー44を通すための開口部49に対して、遮断空気通路46は、シール要素47で密封されている。それ故に、この方向へは、ガイドブレードのシャフトに沿って遮断空気が漏れ出ることはない。本発明によれば、遮断空気通路46は、図4及び図5に示す、軸方向に排気ガスが貫流されるガイド装置の略図から見て取れるように、支持リング40の軸方向端面に形成された溝としてデザインされている。
【0019】
遮断空気通路46は、組み込まれた状態では、軸方向端面に隣接するハウジング部分22によって、区画される。かくして、溝として支持リング40に形成された遮断空気通路46のために、組み込まれた状態で、環状の空所が生じる。遮断空気通路の横断面を拡張するために、ハウジング側で、軸方向に開いている溝23が形成されていても良い。この場合、遮断空気通路は、支持リング側の遮断空気通路46と、ハウジング側の溝23とから構成されている。
【0020】
支持リングと、隣接するハウジング部分との間の接触面は、遮断空気通路の領域では、平坦に、斜めにまたは段を付けられていても良い。
【0021】
選択肢として、遮断空気通路を拡張する溝23が、ハウジング側で、カバーリング45の領域にまで延びている。このことによって、横断面が更に拡張される。
【0022】
選択肢として、遮断空気通路を、遮断空気通路の径方向内側および/または外側に設けられたシール要素47によって密封することができる。従って、超過圧力によって遮断空気通路46に供給される遮断空気が、ガス流出ハウジング22と支持リング40との間の接続個所を通って逃げることが、阻止される。
【0023】
選択肢として、遮断空気通路46を形成する溝が、支持リング40の、ガス流入ハウジング21に向いた端面でも、形成されていても良い。
【0024】
選択肢として、遮断空気通路を形成する複数の溝が、支持リングおよび/または隣接するハウジングに、環状溝セグメントとして形成されており、従って、周面に沿って、複数の部分に区分されていても良い。この場合、各々の環状溝セグメントには、個々に、外から、遮断空気を供給することができる。
【0025】
図6は、径方向に排気ガスが貫流され且つ例えばラジアル・タービンまたは混流タービンに用いられるガイド装置の断面を示している。この場合、本発明によれば、遮断空気通路46は、径方向外側または径方向内側に開いている溝によって、支持リングに形成されている。遮断空気通路46を形成するこの溝は、従って、支持リング40の周面に形成されている。環状空所に対する溝の限定は、隣のハウジング部分によってなされる。排気ガスタービンの場合に、ハウジング部分は、例えば、ガス流入ハウジング21であろう。同様に、遮断空気通路46を隣のハウジング部分へ拡張するためには、周囲溝23が形成されていても良い。
【0026】
図4、図5及び図6に示す略図には、ガイドブレードを調整するための調整レバーが描かれていない。
【0027】
詳述された実施の形態は、本発明に基づいて形成された支持リングを有するガイド装置を、排気ガスタービンの調整可能なガイド装置として示している。しかしながら、すべての特徴は、任意の流体機関、特にコンプレッサにおける一般的な用途に当て嵌まることが意図されている。
【符号の説明】
【0028】
10・・・コンプレッサ、11・・・コンプレッサの空気流入ハウジング、12・・・コンプレッサの空気流出ハウジング、20・・・排気ガスタービン、21・・・排気ガスタービンのガス流入ハウジング、22・・・排気ガスタービンのガス流出ハウジング、23・・・排気ガスタービンのハウジングに形成された溝、25・・・タービンホイール、26・・・タービンホイールの回転ブレード、30・・・排気ガス・ターボチャージャのシャフト、40・・・ガイド装置の支持リング、41・・・ガイドブレード(調整可能)、42・・・ガイドブレードのシャフト、43・・・調整リング、44・・・調整レバー、45・・・カバーリング、46・・・支持リングに形成された遮断空気通路、47・・・シール要素、48・・・ガイドブレードのシャフトを保持し及び取り付けるための開口部、49・・・調整レバーを通すための開口部、50・・・排気ガス・ターボチャージャのシャフトを取り付けるための軸受ハウジング、A・・・排気ガス・ターボチャージャのシャフトの軸線、B・・・ガイドブレードのシャフトの軸線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の調整可能なガイドブレード(41)を有する、ガイド装置の支持リング(40)であって、
この支持リングは、前記ガイドブレードのシャフト(42)を保持し且つ回転自在に取り付けるための開口部(48)と、遮断空気を前記ガイド装置に供給するための遮断空気通路(46)とを有し、
前記遮断空気通路(46)は、ブレード用の前記シャフト(42)を保持するための開口部(48)に通じており、
前記遮断空気通路(46)は、外側に開いており且つ周方向に延びている溝として、前記支持リング(40)の外面に形成されていること、
を特徴とする支持リング。
【請求項2】
前記遮断空気通路(46)は、円周に沿って、複数の環状溝セグメントに区分されている、請求項1に記載の支持リング。
【請求項3】
前記ガイドブレード(41)は、夫々、シャフト(42)を有し、このシャフトは、夫々、請求項1または2に記載の支持リング(40)の開口部(48)に回転自在に取り付けられている、複数の調整可能なガイドブレード(41)を有する支持リング。
【請求項4】
前記遮断空気通路(46)は、軸方向に開いており且つ周方向に延びている溝として、前記支持リング(40)の軸方向端面に形成されている、請求項3に記載の、複数の調整可能なガイドブレード(41)を有する軸方向に排気ガスが貫流されるガイド装置。
【請求項5】
前記遮断空気通路(46)は、径方向に開いており且つ周方向に延びている溝として、前記支持リング(40)の周面に形成されている、請求項3に記載の、複数の調整可能なガイドブレード(41)を有する軸方向に排気ガスが貫流されるガイド装置。
【請求項6】
ハウジング(22)及び請求項3または4に記載のガイド装置を有する流体機械であって、
前記支持リング(40)の、前記遮断空気通路(46)を有する端面が、前記ハウジング(22)が前記遮断空気通路(46)を軸方向に区画するように、前記流体機械の前記ハウジング(22)にある流体機械。
【請求項7】
前記遮断空気通路(46)の軸方向の境界個所の領域における前記ハウジング(22)には、軸方向に且つ前記支持リング(40)の前記遮断空気通路(46)に向かって開いており且つ周方向に延びている溝(23)が形成されている、請求項6に記載の流体機械。
【請求項8】
ハウジング(21)、及び請求項3または5に記載のガイド装置を有する流体機械であって、
前記支持リング(40)の、前記遮断空気通路(46)を有する周面は、前記ハウジング(21)が前記遮断空気通路(46)を径方向に区画するように、前記流体機械の前記ハウジング(21)にある流体機械。
【請求項9】
前記遮断空気通路(46)の軸方向の境界個所の領域における前記ハウジング(21)には、径方向に且つ前記支持リング(40)の前記遮断空気通路(46)に向かって開いており且つ周方向に延びている溝(23)が形成されている、請求項8に記載の流体機械。
【請求項10】
前記支持リング(40)と前記流体機械の前記ハウジングとの間の移行領域で前記遮断空気通路(46)を密封するために、複数のシール要素(47)が設けられている、請求項6ないし9の何れか1項に記載の流体機械。
【請求項11】
請求項6ないし10の何れか1項に基づいて形成された排気ガスタービン。
【請求項12】
請求項6ないし10の何れか1項に基づいて形成されたコンプレッサ。
【請求項13】
請求項11に記載の排気ガスタービンおよび/または請求項12に記載のコンプレッサを有する排気ガス・ターボチャージャ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−500922(P2012−500922A)
【公表日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−505504(P2011−505504)
【出願日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際出願番号】PCT/EP2009/054857
【国際公開番号】WO2009/130262
【国際公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(501405177)アーベーベー ターボ システムズ アクチエンゲゼルシャフト (37)
【住所又は居所原語表記】Bruggerstrasse 71a, CH−5400 Baden, Switzerland
【Fターム(参考)】