説明

避難誘導システム及び避難誘導方法

【課題】 災害発生時におけるGPS機能を使用した避難誘導案内に関して長い時間有効に使用可能な避難誘導システム及び避難誘導方法を提供する。
【解決手段】 携帯電話機100と基地局203とを有する避難誘導システムであって、中央制御部106は、基地局203との通信が行えるか否かを判定し、基地局203との通信ができない場合には、行き先がデータメモリ部105に登録されているか否かを判定し、行き先がデータメモリ部105に登録されていなければ、GPS部109により割り出された現在位置を表示部103に表示し、行き先がデータメモリ部105に登録されていれば、登録した行き先までの距離と方角を表示部103に表示し、その後、一定時間通信機能を中断し、一定時間経過後に基地局203との通信を再開する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、避難誘導システム及び避難誘導システムを使用した避難誘導方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の災害発生時における避難誘導案内は、公共放送または自治体の防災放送による通知が取られ、一時的な避難誘導を行うことができる。しかし、個々の地域による避難情報では、その後の行動を行う情報として不十分であり、また不十分と言いつつも災害による通信劣化がはたらくことは考えられる。
【0003】
災害が起きた場合、通信回線へのアクセスの急増、基地局の災害による機能低下により、通信障害が起こる確率が高くなる。しかし、その場合でも、通信状態を確保するために、携帯電話機側で通信のパワーを上げる対応が行われ、長時間の使用が困難な状態を作り出す状況となる。
【0004】
このような避難誘導案内に関する従来技術として、避難誘導システムおよび避難誘導方法(特許文献1:特開2005-17027号公報)あるいは緊急対策用ネットワークシステム(特許文献2:特開2003-044969号公報)等がある。
【0005】
特許文献1には、避難を要する対象者の所在置を自動的に把握し、同時に危険の少ない避難経路を選択して避難場所へ案内する避難誘導システムが開示されている。
【0006】
特許文献2には、住民の所持するGPS対応携帯電話からの位置情報を地上基地で受信し、地上基地の受信した住民の位置情報を地域管理センターで分析し、地域管理センターの分析結果である人口分布図や避難経路地図を住民に検索可能に提供する管理サーバとからなる緊急対策用ネットワークシステムが開示されている。
【0007】
従来技術の第1の課題は、災害による通信劣化がはたらくため、安定した情報入手ができないということである。
【0008】
また、従来技術の第2の課題は、安定した情報入手ができないため、携帯電話機では、通信状況を安定させるために、電波の高出力化が起こり消費電流の増大に繋がり、長時間の使用ができないということである。
【0009】
【特許文献1】特開2005-017027号公報
【特許文献2】特開2003-044969号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みて成されたものであり、その目的は、災害発生時におけるGPS機能を使用した避難誘導案内に関して長い時間有効に使用可能な避難誘導システム及び避難誘導方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明では、少なくともGPS部と表示部と記憶部と中央制御部とを有する携帯電話機と、携帯電話機からの電波送受信をネットワークへ繋ぐ基地局とを有する避難誘導システムにおいて、記憶部は行き先の有無を登録し、GPS部は現在位置を割り出し、中央制御部は、基地局との通信が行えるか否かを判定し、基地局との通信ができない場合には、行き先が記憶部に登録されているか否かを判定し、行き先が記憶部に登録されていなければ、GPS部により割り出された現在位置を表示部に表示し、行き先が記憶部に登録されていれば、登録した行き先までの距離と方角を表示部に表示し、その後、一定時間通信機能を中断し、一定時間経過後に基地局との通信を再開することを特徴とする。
【0012】
また、前記ネットワークには、前記携帯電話機との間で送受信を行う情報を管理するサーバが接続されており、前記中央制御部は、基地局との通信が行えるか否かを判定した結果、基地局との通信が可能な場合には通信状態の良否を判定し、通信状態が良くない場合には、避難システムに必要な情報として文字情報をネットワークを介してサーバから引き出し、通信状態が良い場合には、避難システムに必要な情報として画像情報と文字情報とをネットワークを介してサーバから引き出し、サーバから引き出した情報を避難誘導が行える状態で表示部に表示する。
【0013】
また、前記通信状態の良否は、例えば、通信に行われる送受信の感度レベルにより判定する。
【0014】
また、前記サーバは、災害情報データベース及び地図情報データベースを有することが好ましい。
【0015】
このように、本発明では、GPS付き携帯電話機による避難誘導において、誘導システムを長時間使用し得るために、段階を設けて情報提供を行い消費電量の削減を行う。
【0016】
つまり、本発明は、GPS機能を搭載した携帯端末機において、災害時における避難集合場所または帰宅経路の案内を、災害による通信障害が起きた場合でも避難誘導を行うことを特徴としている。
【0017】
昨今の携帯端末にはGPS機能を搭載した携帯端末が多数種に及びつつあり、災害時のGPS機能を使用した避難誘導については有効性がある。ここで、GPSを安易に使用するとき、通信、測量、表示を行うため、携帯端末として消費電流が多く必要な状態となる。
【0018】
本発明では、災害による避難誘導サポートを行うシステムにおいて、誘導システムの稼働時間を延ばすように、かつ消費電流を抑えるように、表示、通信に制御段階を設けることを特徴としている。具体的には、本発明では、通信状況に合わせて消費電流をコントロールし、通信状況に合わせた情報入手状況による避難誘導の切替手段が設けられている。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明は以下のような効果を有する。
【0020】
第1の効果として、通信状態を監視しているので、通信状態に合わせて消費電流の削減を行うことができる。
【0021】
第2の効果として、通信できない状態でも行動しえる情報があるので、適切に避難誘導を行うことができる。
【0022】
第3の効果として、通信できない状態であることにより、その地域が少なくとも正常に公共施設の使用が出来ない状態に近い状況であり、その状況から抜け出すまでには、安定した電力の供給が困難となってしまうので、その状態で長く避難誘導システムを動作させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
(本発明の実施形態の構成)
図1は、本発明に係る避難誘導システムの一実施形態の構成を示す図である。
【0024】
本発明に係る避難誘導システムは、携帯電話機100と、携帯電話機100からの電波送受信をネットワーク202へ繋ぐ基地局203と、ネットワーク202に接続されかつ携帯電話機100との間で送受信を行う情報を管理するサーバ201とを有する。
【0025】
携帯電話機100は、GPS機能を有するものであり、アンテナ101、送受信部102、GPS部109、方位検出部108、表示部103、中央制御部106、キー操作部107、データメモリ部105及び時計部104から構成される。
【0026】
アンテナ101は、携帯電話機100の電波送信効率をよく行うための内蔵または伸縮式のものである。送受信部102は、アンテナ101を介して受信された信号を復調し、中央制御部106へ出力すると共に、中央制御部106から出力された信号を変調した後、無線周波数に変換して送信するものである。
【0027】
GPS部109は、GPS衛星からの測位用電波を受信し、現在の位置情報を算出するものである。方位検出部108は、地磁気の検出を行って絶対方位を検出する。キー操作部107は、数字キー、記号等のファンクションキーを備え、発着呼の操作、電話番号の登録操作を行うものである。また、その操作により生成される信号は、中央制御部106へ出力される。
【0028】
中央制御部106は、キー操作部107からの各種入力操作に応じた各部制御を一括して行うものであり、プログラム化された動作手順に従った制御を行う。
【0029】
表示部103は、中央制御部106の表示命令に応じて、データメモリ部105に記憶されている画像データ、電話番号またはテキストデータ等を表示するものである。データメモリ部105は、電話番号、電話先の名前、名称、文字等のテキストデータ、画像データ、計測データを記憶する。計時部104は、計時機能を有する。
【0030】
基地局203は、携帯電話機100からの電波送受信を電話網、インターネット網などのネットワーク202へ繋ぐ役割を有する。ネットワーク202は、電話網、インターネット網などの網関係であり、サーバ201を繋げる通信回線システムの役割を有する。
【0031】
サーバ201は、携帯電話機100との間で送受信を行う情報を管理する装置であり、災害情報データベース及び地図情報データベースを有する。
【0032】
(本発明の実施形態の動作)
次に、本実施形態の動作を図2に示すタイムチャートを使用して説明する。
【0033】
まず、ステップ301にて、行き先について事前に行き先の位置の登録がされているか、通信できる状態で位置が登録できる場合などに行き先の登録を行う。この行き先はデータメモリ部105に記憶される。
【0034】
次に、ステップ302にて、GPS部109による測量を行い現在位置の情報を割り出す。
【0035】
次に、ステップ303にて、基地局203との通信ができるか否かを判定する。この判定は、中央制御部106により行われる。
【0036】
基地局203との通信ができない場合、ステップ304にて、ステップ301で行き先が登録されているか否かが判定される。この判定は、中央制御部106により行われる。
【0037】
判定の結果、行き先が登録されていなければ、ステップ305において、ステップ302で測量した現在位置(緯度、経度)を表示部103に表示する。判定の結果、行き先が登録されていれば、ステップ308にて、ステップ301で登録した行き先までの距離と方角を表示部103に表示する。
【0038】
次に、ステップ306にて、ある一定間隔タイマを設け通信機能にかかる電力をカットさせる。
【0039】
次に、ステップ307にて、基地局203との通信を再開させ、ステップ303の基地局203との通信有無を確認する。
【0040】
ステップ303にて、基地局203との通信ができる状態なら、ステップ309にて通信状態の良否を判定する。この判定は、中央制御部106により行われる。通信状態の良否については、通信に行われる送受信の感度レベルにより容易に分かる。
【0041】
判定の結果、通信状態が良くない場合には、ステップ310にて、情報量の少ない文字情報等(避難システムに必要な情報)をネットワーク202を介してサーバ201から引き出す。判定の結果、通信状態が良い場合には、ステップ312にて、画像情報、文字情報等の避難システムに必要な情報をネットワーク202を介してサーバ201から引き出す。
【0042】
次に、ステップ311にて、サーバ201から引き出した情報を避難誘導が行える状態で表示部103に表示する。
【0043】
(本発明の他の実施形態)
本発明の他の実施形態として、その基本的構成は上記の通りであるが、図2で示すステップ305については、出発地点の座標を携帯電話機100側で記憶し、避難行動した距離、方角をGPS部109の再測量により位置情報として入手でき、2点間の関係より算出できるため、携帯電話機100側のみの機能で表示する方法として構成してもよい。
【0044】
以上、本願発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本願発明は前記実施形態に限定されるものでなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係る避難誘導システムの一実施形態の構成を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態の動作を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
【0046】
100 携帯電話機
101 アンテナ
102 送受信部
103 表示部
104 時計部
105 データメモリ部
106 中央制御部
107 キー操作部
108 方位検出部
109 GPS部
201 サーバ
202 ネットワーク
203 基地局

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともGPS部と表示部と記憶部と中央制御部とを有する携帯電話機と、携帯電話機からの電波送受信をネットワークへ繋ぐ基地局とを有する避難誘導システムにおいて、
記憶部は行き先の有無を登録し、
GPS部は現在位置を割り出し、
中央制御部は、
基地局との通信が行えるか否かを判定し、
基地局との通信ができない場合には、行き先が記憶部に登録されているか否かを判定し、
行き先が記憶部に登録されていなければ、GPS部により割り出された現在位置を表示部に表示し、
行き先が記憶部に登録されていれば、登録した行き先までの距離と方角を表示部に表示し、
その後、一定時間通信機能を中断し、一定時間経過後に基地局との通信を再開することを特徴とする避難誘導システム。
【請求項2】
前記ネットワークには、前記携帯電話機との間で送受信を行う情報を管理するサーバが接続されており、
前記中央制御部は、
基地局との通信が行えるか否かを判定した結果、基地局との通信が可能な場合には通信状態の良否を判定し、
通信状態が良くない場合には、避難システムに必要な情報として文字情報をネットワークを介してサーバから引き出し、
通信状態が良い場合には、避難システムに必要な情報として画像情報と文字情報とをネットワークを介してサーバから引き出し、
サーバから引き出した情報を避難誘導が行える状態で表示部に表示することを特徴とする請求項1に記載の避難誘導システム。
【請求項3】
前記通信状態の良否は、通信に行われる送受信の感度レベルにより判定することを特徴とする請求項2に記載の避難誘導システム。
【請求項4】
前記サーバは、災害情報データベース及び地図情報データベースを有することを特徴とする請求項2又は3に記載の避難誘導システム。
【請求項5】
少なくともGPS部と表示部と記憶部と中央制御部とを有する携帯電話機と、携帯電話機からの電波送受信をネットワークへ繋ぐ基地局とを有する避難誘導システムを使用した避難誘導方法において、
記憶部に行き先の有無を登録し、
GPS部により現在位置を割り出し、
中央制御部は、
基地局との通信が行えるか否かを判定し、
基地局との通信ができない場合には、行き先が記憶部に登録されているか否かを判定し、
行き先が記憶部に登録されていなければ、GPS部により割り出された現在位置を表示部に表示し、
行き先が記憶部に登録されていれば、登録した行き先までの距離と方角を表示部に表示し、
その後、一定時間通信機能を中断し、一定時間経過後に基地局との通信を再開することを特徴とする避難誘導方法。
【請求項6】
前記ネットワークには、前記携帯電話機との間で送受信を行う情報を管理するサーバが接続されており、
前記中央制御部は、
基地局との通信が行えるか否かを判定した結果、基地局との通信が可能な場合には通信状態の良否を判定し、
通信状態が良くない場合には、避難システムに必要な情報として文字情報をネットワークを介してサーバから引き出し、
通信状態が良い場合には、避難システムに必要な情報として画像情報と文字情報とをネットワークを介してサーバから引き出し、
サーバから引き出した情報を避難誘導が行える状態で表示部に表示することを特徴とする請求項5に記載の避難誘導方法。
【請求項7】
前記通信状態の良否は、通信に行われる送受信の感度レベルにより判定することを特徴とする請求項6に記載の避難誘導方法。
【請求項8】
前記サーバは、災害情報データベース及び地図情報データベースを有することを特徴とする請求項6又は7に記載の避難誘導方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−192067(P2008−192067A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−28374(P2007−28374)
【出願日】平成19年2月7日(2007.2.7)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】