説明

配線回路基板の製造方法

【課題】導体パターンの検査と、導体パターンから露出する絶縁層の上に存在する異物の検査とを、容易かつ同時に実施することのできる、配線回路基板の製造方法を提供する。
【解決手段】ベース絶縁層2と、その上に形成される導体パターン3とを備える配線回路基板1を用意し、配線回路基板1を、支持台4の上に配置し、光10を、配線回路基板1の上側から配線回路基板1に向けて照射することにより、パターン反射光7と台反射光8と異物反射光9とを検知して、それらの間のコントラストによって、導体パターン3および異物11を検査する。この検査工程において、台反射光8の反射率を30〜70%に調整し、異物反射光9の反射率を10%以下に調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線回路基板の製造方法、詳しくは、フレキシブル配線回路基板などの配線回路基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フレキシブル配線回路基板などの配線回路基板は、ベース絶縁層およびその上に形成される導体パターンを有している。かかる配線回路基板の製造では、ベース絶縁層の上に導体パターンを形成し、その後、導体パターンの形状の良否を光学的に検査することが知られている。
例えば、図5が参照されるように、ベース絶縁層42およびその上に形成された導体パターン41を備える配線回路基板40を、金属製の支持台44の上面に載置し、その後、上側から配線回路基板40に光を照射して、配線回路基板40で反射する反射光によって、導体パターン41を検査することが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
具体的には、反射光として、光が導体パターン41で反射したパターン反射光51や、光が導体パターン41から露出するベース絶縁層42を介して支持台44で反射した台反射光52を、CCDカメラにより検知している。
そして、特許文献1における導体パターン41の検査では、パターン反射光51と台反射光52との光量の差、つまり、それらの間のコントラスト(明暗差)を利用して、導体パターン41の形状を認識し、導体パターン41の形状の良否を判定している。
【0004】
また、特許文献1では、パターン反射光51と台反射光52との間のコントラストが低い場合には、導体パターン41の形状の認識が困難となる不具合があり、かかる不具合を解消すべく、台反射光52の反射率を10%以下に低減することにより、パターン反射光51と台反射光52との間の高いコントラストを確保することが提案されている。
一方、従来より、配線回路基板の製造において、導体パターンの上に存在する異物を検査することが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
具体的には、図5の実線が参照されるように、異物46がゴムなどの樹脂材料からなる場合には、光が異物46で反射した異物反射光53の反射率は低く、そのため、異物反射光53とパターン反射光51との間の高いコントラストを確保して、導体パターン41の上に存在する異物46を検査している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−112845号公報
【特許文献2】特開平11−307883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、図5の仮想線が参照されるように、異物46が、導体パターン41から露出するベース絶縁層42の上に存在するときには、異物反射光53および台反射光52の反射率がともに低いため、それらの間のコントラストが低くなる。そのため、導体パターン41から露出するベース絶縁層42の上に存在する異物46を検査することが困難となる。
本発明の目的は、導体パターンの検査と、導体パターンから露出する絶縁層の上に存在する異物の検査とを、容易かつ同時に、実施することのできる、配線回路基板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明の配線回路基板の製造方法は、絶縁層と、前記絶縁層の上に形成される導体パターンとを備える配線回路基板を用意する工程、前記配線回路基板を、支持台の上に配置する工程、および、光を、前記配線回路基板の上側から前記配線回路基板に向けて照射することにより、前記光が前記導体パターンで反射したパターン反射光と、前記光が前記導体パターンから露出する前記絶縁層を介して前記支持台で反射した台反射光と、前記光が前記導体パターンから露出する前記絶縁層の上に存在する異物で反射した異物反射光とを検知して、それらの間のコントラストによって、前記導体パターンおよび前記異物を検査する工程を備え、前記導体パターンおよび前記異物を検査する工程において、前記台反射光の反射率が30〜70%であり、前記異物反射光の反射率が10%以下であることを特徴としている。
【0009】
また、本発明の配線回路基板の製造方法では、前記パターン反射光の反射率は、前記台反射光の反射率に対して、20%以上高いことが好適である。
また、本発明の配線回路基板の製造方法では、前記光の波長が、500nm以上であることが好適である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の配線回路基板の製造方法によれば、導体パターンおよび異物を検査する工程において、台反射光の反射率は30〜70%であり、異物反射光の反射率は10%以下である。
そのため、パターン反射光と台反射光との間のコントラスト、および、台反射光と異物反射光との間のコントラストを、バランスよく、ともに高く設定することができる。
【0011】
そのため、導体パターンの検査と、導体パターンから露出する絶縁層の上に存在する異物の検査とを、容易かつ同時に、実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の配線回路基板の製造方法により製造される配線回路基板の一実施形態の幅方向に沿う断面図である。
【図2】本発明の配線回路基板の製造方法の一実施形態の工程図であって、(a)は、ベース絶縁層を用意する工程、(b)は、導体パターンを形成する工程、(c)は、異物が存在せず、配線が正常に形成される配線回路基板において、導体パターンおよび異物を検査する工程、(c’)は、異物が存在し、配線が短絡する配線回路基板において、導体パターンおよび異物を検査する工程、(d)は、カバー絶縁層を形成する工程を示す。
【図3】図2の実施形態を実施するための搬送装置の概略構成図である。
【図4】検査工程を実施するための検査装置の概略構成図である。
【図5】従来技術の説明図であって、導体パターンの上に異物が存在する配線回路基板を検査する工程を示す。
【図6】実施例1の検査工程における画像処理図を示す。
【図7】実施例2の検査工程における画像処理図を示す。
【図8】実施例3の検査工程における画像処理図を示す。
【図9】比較例1の検査工程における画像処理図を示す。
【図10】比較例2の検査工程における画像処理図を示す。
【図11】比較例3の検査工程における画像処理図を示す。
【図12】比較例4の検査工程における画像処理図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明の配線回路基板の製造方法により製造される配線回路基板の一実施形態の幅方向(長手方向に直交する方向)に沿う断面図、図2は、本発明の配線回路基板の製造方法の一実施形態の工程図、図3は、図2の実施形態を実施するための搬送装置の概略構成図、図4は、後述する検査工程を実施するための検査装置の概略構成図である。
図1において、この配線回路基板1は、長手方向に延びる平帯シート形状に形成されるフレキシブル配線回路基板であって、絶縁層としてのベース絶縁層2と、ベース絶縁層2の上に形成される導体パターン3とを備えている。また、配線回路基板1は、必要により、ベース絶縁層2の上に、導体パターン3を被覆するように形成されるカバー絶縁層5を備えている。
【0014】
ベース絶縁層2を形成する絶縁材料としては、例えば、ポリイミド、ポリアミドイミド、アクリル、ポリエーテルニトリル、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリ塩化ビニルなどの合成樹脂が用いられる。好ましくは、耐熱性や光に対する透過特性などの観点から、ポリイミドが用いられる。
また、上記した絶縁材料には、必要により、顔料などが配合されている。顔料は、後述する検査工程における台反射光8の反射率R2を調整するために適宜の割合で配合される。
【0015】
ベース絶縁層2は、長手方向に延びる配線回路基板1の外形形状に対応して、平帯シート形状に形成されている。
ベース絶縁層2は、波長が500nm以上の光(好ましくは、500〜1500nmの光、さらに好ましくは、500〜1000nmの光)に対する光透過率Tが、例えば、60%以上、好ましくは、70%以上、さらに好ましくは、80%以上であり、通常、100%以下である。
【0016】
また、ベース絶縁層2の厚みは、例えば、5〜50μm、好ましくは、10〜40μmである。
導体パターン3を形成する導体材料としては、例えば、銅、ニッケル、金、はんだ、またはこれらの合金などの導体材料が用いられる。好ましくは、電気抵抗や、光に対する反射特性の観点から、銅が用いられる。
【0017】
導体パターン3は、長手方向に沿って延び、幅方向において互いに間隔を隔てて並列配置される配線6と、各配線6の長手方向両端部に配置される図示しない端子部とを一体的に備えている。また、各配線6は、カバー絶縁層5に被覆される一方で、図示しない各端子部は、カバー絶縁層5から露出している。また、導体パターン3は、断面(幅方向断面)視略矩形状に形成されている。
【0018】
導体パターン3の厚みは、例えば、3〜30μm、好ましくは、5〜20μmである。また、各配線6および各端子部の幅(幅方向長さ)は、同一または相異なっていてもよく、例えば、5〜500μm、好ましくは、15〜200μmであり、各配線6間の間隔(幅方向における間隔)および各端子部間の間隔は、同一または相異なっていてもよく、例えば、5〜200μm、好ましくは、5〜100μmである。
【0019】
カバー絶縁層5は、配線6を被覆してこれを電気的に封止する。カバー絶縁層5を形成する絶縁材料としては、上記したベース絶縁層2を形成する絶縁材料と同様の絶縁材料が用いられる。
カバー絶縁層5は、ベース絶縁層2の表面に、配線6を被覆し、かつ、端子部を露出するパターンで形成されている。カバー絶縁層5の厚みは、例えば、10〜50μm、好ましくは、14〜20μmである。
【0020】
次に、本発明の配線回路基板の製造方法の一実施形態について、図2〜図4を参照して、説明する。
この方法では、図3に示すように、配線回路基板1の製造における各工程(図2(a)〜(d)。)を、例えば、搬送装置13を用いるロール・トゥ・ロール法により実施する。搬送装置13は、例えば、互いに間隔を隔てて配置される巻出ロール16および巻取ロール17を備えている。
【0021】
ロール・トゥ・ロール法では、例えば、各工程ごとに、巻出ロール16にロール状に巻回された長尺状のベース絶縁層2を、巻取ロール17に向けて巻き出し、巻取ロール17で巻き取るようにロール搬送しており、このロール搬送の途中において、図2に示す各工程を順次実施している。
まず、この方法では、図2(a)に示すように、ベース絶縁層2を、巻出ロール16に巻回されたシートして用意する。
【0022】
次いで、この方法では、図2(b)に示すように、導体パターン3を、ベース絶縁層2の上に、配線6および端子部を有する配線回路パターンで形成する。導体パターン3は、例えば、サブトラクティブ法やアディティブ法などの公知のパターンニング法によって形成する。
これにより、ベース絶縁層2と、その上に形成された導体パターン3とを備える、配線回路基板1(検査工程前の配線回路基板1)を用意する。
【0023】
その後、図2(c)および(c’)に示すように、配線回路基板1を、支持台4(後述)の上に配置し、次いで、導体パターン3と異物11とを検査する(検査工程)。検査工程では、図4に示す検査装置12が用いられる。
検査装置12は、巻出ロール16および巻取ロール17の間に配置されている。検査装置12は、巻出ロール16および巻取ロール17間に搬送される配線回路基板1の厚み方向上側に配置される発光部14および受光部15と、それらと厚み方向下側に対向配置される支持台4とを備えている。
【0024】
発光部14は、搬送方向に間隔を隔てて対向配置されている。各発光部14は、配線回路基板1に対向する下面が、光10が発光される発光面となり、各発光面から発光される光10が各発光部14の中間において配線回路基板1に集光されるように、その集光部分(配線回路基板1の幅方向に沿う集光ライン)を中心として傾斜する線対称で配置されている。
【0025】
具体的には、各発光部14は、例えば、波長が500nm以上の光(好ましくは、500〜1500nmの光、さらに好ましくは、500〜1000nmの光)10を発光できるランプであって、好ましくは、光源として、上記波長を含む、光の波長を照射可能な近赤外LED(発光ダイオード)が用いられる。
光10の波長が上記した範囲内にあると、検査工程において、ベース絶縁層2の高い光透過率を確保することができ、台反射光8の反射率R2(後述)を所望の範囲内に設定することができる。そのため、パターン反射光7と台反射光8との間のコントラスト(後述)、および、台反射光8と異物反射光9との間のコントラスト(後述)を、より一層バランスよく設定することができる。
【0026】
受光部15は、厚み方向において配線回路基板1の上側に間隔を隔てて配置され、搬送方向において各発光部14間に配置されている。また、受光部15は、その下面が、光10が配線回路基板1および支持台4で反射される反射光(後述)7、8および9が受光される受光面となり、その受光面が、発光部14より上方において、集光部分の上側に対向配置されている。
【0027】
具体的には、受光部15は、例えば、近赤外線カメラ、CCDカメラなどからなり、好ましくは、汎用性の観点から、CCDカメラ、より具体的には、配線回路基板1における搬送方向に直交するライン(集光ライン)を読み取り可能なCCDラインスキャンカメラからなる。
支持台4は、略平板形状をなし、その上面(表面)は、平滑面に形成されている。また、支持台4を形成する材料としては、後述する台反射光8の反射率R2を所望の範囲内に設定するべく、例えば、ステンレス(具体的には、SUS304など)、アルミニウムなどの金属材料、例えば、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系樹脂材料などが用いられる。また、支持台4の上面には、必要により、金属膜が形成されている。
【0028】
金属膜を形成する材料としては、例えば、上記した支持台4を形成する金属材料と同様の金属材料が用いられる。金属膜を形成する材料と、支持台4を形成する金属材料とは、通常、異なる種類の材料で組み合わされる。金属膜の厚みは、例えば、0.1〜100μmである。
支持台4は、搬送される配線回路基板1の下側に配置される。支持台4は、その上面が配線回路基板1の下面と摺動自在に接触しており、これにより、配線回路基板1を支持している。また、支持台4には、図示しないが、厚み方向を貫通する貫通孔が形成されており、この貫通孔の下端には、コンプレッサが接続されている。
【0029】
なお、この検査装置12では、発光部14から照射される照射光10と、受光部15に受光される反射光とのなす角度θが、例えば、0〜90度、好ましくは、0〜45度に設定されている。また、発光部14の発光面および配線回路基板1の集光部分間の長さが、例えば、5〜300mm、好ましくは、10〜100mmに設定されている。また、配線回路基板1の集光部分および受光部15の受光面間の長さが、例えば、20〜300mmに設定されている。
【0030】
そして、巻出ロール16に巻回されている配線回路基板1を、ベース絶縁層2の下面が支持台4の上面と接触するように、巻取ロール17に向けて巻き出すことにより、配線回路基板1を支持台4の上に配置する。
その後、巻出ロール16の巻き出しおよび巻取ロール17の巻き取りを中断して、次いで、コンプレッサを作動して、空気を貫通孔を介して吸引することにより、配線回路基板1を支持台4の上に固定する(吸着させる)。
【0031】
その後、検査装置12により配線回路基板1における導体パターン3と異物11とを同時に検査する。
この検査工程では、上記した波長の光(照射光)10を、配線回路基板1の上側から配線回路基板1に照射する。具体的には、上記した波長の光10を、発光部14から配線回路基板1に向けて照射する。
【0032】
上記した光10の照射により、図2(c)および図2(c’)が参照されるように、上記した照射光10が導体パターン3の表面で反射したパターン反射光7と、上記した照射光10が導体パターン3から露出するベース絶縁層2(導体パターン3間のベース絶縁層2)を介して支持台4で反射した台反射光8と、上記した照射光10が異物11で反射した異物反射光9(後述)とを、受光部15によって検知する。
【0033】
パターン反射光7の反射率R1は、例えば、70%以上、好ましくは、80%以上、さらに好ましくは、90%以上であり、通常、100%以下である。
パターン反射光7の反射率R1は、発光部14から照射される照射光10の光量を100%としたときの、受光部15で検知されるパターン反射光7の光量の比率(=(パターン反射光7の光量)/(照射光10の光量)×100)として求められる。
【0034】
また、台反射光8は、照射光10が、ベース絶縁層2の上面から入射してベース絶縁層2内を下方に向かって通過して、次いで、支持台4の上面において反射され、その後、ベース絶縁層2内を上方に向かって再度通過して、次いで、ベース絶縁層2の上面から出射した光を主成分として含んでいる。また、台反射光8は、照射光10が、ベース絶縁層2の上面において反射した光(図示せず)を副成分として含んでいる。
【0035】
このような台反射光8の反射率R2は、30〜70%、好ましくは、30〜60%、さらに好ましくは、30〜50%である。
台反射光8の反射率R2は、発光部14から照射される照射光10の光量を100%としたときの、受光部15で検知される台反射光8の光量の比率(=(台反射光8の光量)/(照射光10の光量)×100)として求められる。
【0036】
異物反射光9の反射率R3は、後述する異物11を形成する材料によって決定され、例えば、10%以下、好ましくは、5%以下、さらに好ましくは、1%以下であり、通常、0.2%以上である。
異物反射光9の反射率R3は、発光部14から照射される照射光10の光量を100%としたときの、受光部15で検知される異物反射光9の光量の比率(=(異物反射光9の光量)/(照射光10の光量)×100)として求められる。
【0037】
異物11は、図2(c’)に示すように、不良品として判定される配線回路基板1において、導体パターン3から露出するベース絶縁層2の上に存在している。具体的には、異物11は、導体パターン3(幅方向に隣接する各配線6)の間や、導体パターン3(幅方向最外側の配線6)の幅方向外側に存在している。
異物11の形状は、特に限定されず、また、異物11を形成する材料としては、上記した反射率R3を満足させる材料であれば、特に限定されず、例えば、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンファイバー、黒鉛(グラファイト)などの炭素系無機材料(金属材料を除く導電性無機材料)、例えば、ゴム、接着剤などの有機材料(樹脂材料)などが挙げられる。
【0038】
とりわけ、導体パターン3の性能(電気信号伝達性能)を損なわせる材料から形成される異物11が含まれている場合には、配線回路基板1は確実に不良品であると判定して、その配線回路基板1を除去するかまたはマーク(不良品であることを示す印を付与)する必要がある。そのため、検知すべき異物11を形成する材料としては、とりわけ、導電性無機材料(金属材料を除く)が挙げられる。
【0039】
そして、検知した反射光7、8および9の光量の間のコントラスト(光量の差)によって、導体パターン3および異物11を同時に検査する。
すなわち、受光部15によって検知した反射光7、8および9の光量を、受光部15に接続されるCPU(図示せず)などによってデータ処理して、画像処理図(配線回路基板1の平面視における画像処理図。図6〜図8参照。)を形成し、形成した画像処理図において、導体パターン3、ベース絶縁層2および異物11を現すことにより、導体パターン3および異物11を検査する。
【0040】
詳しくは、導体パターン3は、図2(c)、図2(c’)、図6〜図8が参照されるように、パターン反射光7および台反射光8の間のコントラストにより検査する。
導体パターン3の検査では、パターン反射光7および台反射光8の間のコントラストによって、導体パターン3のパターンデータを取得して、CPUにより、画像処理図を形成し、かかる画像処理図から導体パターン3のパターン形状を正しく認識し、配線6や端子部の欠陥や、配線6間や端子部間の短絡などを正確に判定する。
【0041】
パターン反射光7および台反射光8の間のコントラストは、それらの反射率の差D1、より具体的には、パターン反射光7の反射率R1から台反射光8の反射率R2を減じた値D1(=R1−R2)で、例えば、20%以上、好ましくは、30%以上であり、通常、70%以下である。換言すれば、パターン反射光7の反射率R1は、台反射光8の反射率R2に対して、例えば、20%以上、好ましくは、30%以上高い。
【0042】
パターン反射光7および台反射光8の間のコントラストが上記した範囲内にあると、導体パターン3の形状の良否をより一層正確に判定することができる。
そして、上記した導体パターン3の検査では、図2(c’)に示すように、パターン反射光7および台反射光8の間のコントラストから得られたパターンデータを、導体パターン3のパターンデータに存在しないパターンデータとして取得した場合には、導体パターン3の形状が不良である(配線6が短絡している)と判定する。一方、図2(c)に示すように、パターン反射光7および台反射光8の間のコントラストから得られたパターンデータと、本来の導体パターン3のパターンデータとに相違がない場合には、導体パターン3の形状が正常であると判定する。
【0043】
異物11は、図2(c’)、図6〜図8が参照されるように、台反射光8と異物反射光9との間のコントラストにより検査する。
異物11の検査では、台反射光8と異物反射光9との間のコントラストによって、導体パターン3から露出するベース絶縁層2のパターンデータを取得して、CPUにより、画像処理図を形成し、かかる画像処理図から、導体パターン3から露出するベース絶縁層2のパターン形状を正しく認識し、異物11の存在の有無を正確に判定する。
【0044】
台反射光8と異物反射光9との間のコントラストは、それらの反射率の差D2、より具体的には、台反射光8の反射率R2から異物反射光9の反射率R3を減じたときの値D2(=R2−R3)で、例えば、20%以上、好ましくは、30%以上であり、通常、70以下である。換言すれば、台反射光8の反射率R2は、異物反射光9の反射率R3に対して、例えば、20%以上、好ましくは、30%以上高い。
【0045】
そして、上記した異物11の検査では、図2(c’)に示すように、台反射光8と異物反射光9との間のコントラストから得られたパターンデータを、導体パターン3から露出するベース絶縁層2のパターンデータには存在しないパターンデータとして取得した場合には、異物11が導体パターン3から露出するベース絶縁層2の上に存在すると判定する。一方、図2(c)に示すように、台反射光8と異物反射光9との間のコントラストから得られたパターンデータと、本来の、導体パターン3から露出するベース絶縁層2のパターンデータとに相違がない場合には、異物11が導体パターン3から露出するベース絶縁層2に存在しないと判定する。
【0046】
なお、上記波長の光10を用いる検査は、通常、常温(25℃)で実施されており、検査後における配線回路基板1の表面(ベース絶縁層2および導体パターン3の表面)の温度は、例えば、常温あるいは30℃以下であり、好ましくは、25℃以下である。つまり、導体パターン3および異物11の検査の前後における温度上昇の範囲は、例えば、5℃以下である。
【0047】
その後、この方法では、コンプレッサによる吸引を解除して、配線回路基板1の支持台4への固定を解除し、その後、搬送装置13による配線回路基板1の搬送を再開させる。これにより、検査工程後の配線回路基板1を巻取ロール17で巻き取るとともに、検査工程前の配線回路基板1を、順次、巻出ロール16から新たに巻き出して、支持台4の上に配置および固定する。その後、上記と同様の検査工程を実施する。検査装置12では、このような検査工程が繰り返される。
【0048】
その後、この方法では、図2(d)に示すように、カバー絶縁層5を、ベース絶縁層2の上に、導体パターン3を被覆するように、上記したパターンで形成する。
カバー絶縁層5を形成するには、例えば、樹脂溶液の塗布、あるいは、樹脂シートの貼着などの公知の方法により形成される。
樹脂溶液の塗布では、例えば、まず、上記した合成樹脂の溶液と、感光剤とを含有する、感光性の樹脂溶液(ワニス)を調製する。感光性のワニスを、導体パターン3を含むベース絶縁層2の上面全面に塗布して乾燥させて、カバー皮膜を形成する。次いで、カバー皮膜を、フォトマスクを介して、露光後、現像して、パターンに加工して、必要により、加熱して硬化させる。
【0049】
樹脂シートの貼着では、上記したパターンに予め形成した絶縁材料(必要により顔料を含む)のシートを、公知の接着剤を介して、ベース絶縁層2および導体パターン3の上に積層する。
その後、巻取ロール17により巻き取られ、不良品として判定された配線回路基板1を、長尺状のベース絶縁層2から切り離して除去しまたはマークする一方、良品として判定された配線回路基板1を製造する。
【0050】
そして、この方法によれば、導体パターン3および異物11の検査工程において、台反射光8の反射率R2は30〜70%であり、異物反射光9の反射率R3は10%以下である。
そのため、パターン反射光7と台反射光8との間のコントラスト、および、台反射光8と異物反射光9との間のコントラストを、バランスよく、ともに高く設定することができる。
【0051】
その結果、導体パターン3の検査と、導体パターン3から露出するベース絶縁層2の上に存在する異物11の検査とを、容易かつ同時に、実施することができる。
なお、上記した説明では、本発明の配線回路基板の製造方法として、ロール・トゥ・ロール法を例示したが、これに限定されず、例えば、図示しないが、枚葉法などを用いることができる。
【0052】
また、上記した説明では、本発明の配線回路基板の製造方法により得られる配線回路基板として、ベース絶縁層2が金属支持層などに支持されていないフレキシブル配線回路基板を例示したが、例えば、図示しないが、ベース絶縁層2の周端部の下面が金属支持層により支持され、金属支持層が補強層として設けられたフレキシブル配線回路基板や、COF基板(TABテープキャリアなどを含む)、回路付サスペンション基板などの各種配線回路基板の製造にも広く適用することができる。
【実施例】
【0053】
以下に実施例および比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、何ら実施例および比較例に限定されることはない。
実施例1
上記した図3に示す搬送装置を用いるロール・トゥ・ロール法によって、以下の工程を順次実施し、フレキシブル配線回路基板を製造した。
【0054】
すなわち、幅300mm、厚み25μmのポリイミドからなる長尺シート状のベース絶縁層を用意した。(図2(a)参照)。
次いで、このベース絶縁層の上に、厚み8μmの銅からなる導体パターンを、アディティブ法により、配線および端子部を有する配線回路パターンで形成した(図2(b)参照)。各配線の幅は30μm、各端子部の幅は30μmであり、各配線間の間隔は60μm、各端子部間の幅は60μmであった。
【0055】
次いで、平均粒子径20μmのカーボンブラック(異物)を、配線から露出するベース絶縁層の上に混入させた。
次いで、上記した図4に示すように、発光部(光源:近赤外LED拡散照明)と受光部(CCDラインスキャンカメラ、型番P3−80−12K40、DALSA社製)と支持台(ステンレス(SUS304)製)とを備える検査装置を用いて、カーボンブラックおよび導体パターンを同時に検査した(図2(c)および(c’)参照)。
【0056】
検査装置では、発光部から照射される光と、受光部に受光される光とのなす角度が10度であり、発光部の発光面およびフレキシブル配線回路基板の集光部分間の長さは50mmであり、受光部の受光面およびフレキシブル配線回路基板の集光部分間の長さは120mmであった。
この検査では、波長850nmの光を用い、温度25℃で実施した。
【0057】
データ処理により得られた画像処理図を図6に示し、検査における評価を表1に示す。
その後、導体パターンおよび異物を含むベース絶縁層の上に、感光性ポリアミック酸のワニスを塗布し、乾燥後、露光し、次いで、現像して上記したパターンに加工し、加熱して硬化することにより、ポリイミドからなる厚み18μmのカバー絶縁層を形成した(図2(d)参照)。
【0058】
実施例2
検査工程において、その表面に厚み0.5μmの錫膜が形成された支持台(ステンレス製)を用いた以外は、実施例1と同様にして、検査工程を実施した。
データ処理により得られた画像処理図を図7に示し、検査における評価を表1に示す。
実施例3
検査工程において、その表面に厚み2μmのニッケル膜が形成された支持台(ステンレス製)を用いた以外は、実施例1と同様にして、検査工程を実施した。
【0059】
データ処理により得られた画像処理図を図8に示し、検査における評価を表1に示す。
比較例1
検査工程において、その表面に厚み8μmの銅膜が形成された支持台(ステンレス製)を用いた以外は、実施例1と同様にして、検査工程を実施した。
データ処理により得られた画像処理図を図9に示し、検査における評価を表1に示す。
【0060】
比較例2
検査工程において、その表面に厚み500μmの黒色の塩化ビニル樹脂からなるテープが貼着された支持台(ステンレス製)を用いた以外は、実施例1と同様にして、検査工程を実施した。データ処理により得られた画像処理図を図10に示す。
データ処理により得られた画像処理図を図10に示し、検査における評価を表1に示す。
【0061】
比較例3
導体パターンを形成する工程において、導体パターンの表面に、厚み0.5μmの錫めっき層をさらに形成し、検査工程において、その表面に厚み8μmの銅膜が形成された支持台(ステンレス製)を用いた以外は、実施例1と同様にして配線回路基板を製造し、続いて、検査工程を実施した。
【0062】
データ処理により得られた画像処理図を図11に示し、検査における評価を表1に示す。
比較例4
導体パターンを形成する工程において、導体パターンの表面に、厚み0.5μmの錫めっき層をさらに形成し、また、検査工程において、その表面に厚み500μmの黒色の塩化ビニル樹脂からなるテープが貼着された支持台(ステンレス製)を用いた以外は、実施例1と同様にして、検査工程を実施した。
【0063】
データ処理により得られた画像処理図を図12に示し、検査における評価を表1に示す。
【0064】
【表1】

【0065】
表1の異物の検査の欄において、「○」は、異物が有ることを明確に判定できたこと、「×」は、異物の存在の有無を判定できなかったことを示し、導体パターンの検査の欄において、「○」は、導体パターンの形状が正常であることを明確に判定できたこと、「×」は、導体パターンの形状の良否を判定できなかったことを示す。
【符号の説明】
【0066】
1 配線回路基板
2 ベース絶縁層
3 導体パターン
4 支持台
7 パターン反射光
8 台反射光
9 異物反射光
10 照射光
11 異物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層と、前記絶縁層の上に形成される導体パターンとを備える配線回路基板を用意する工程、
前記配線回路基板を、支持台の上に配置する工程、および、
光を、前記配線回路基板の上側から前記配線回路基板に向けて照射することにより、前記光が前記導体パターンで反射したパターン反射光と、前記光が前記導体パターンから露出する前記絶縁層を介して前記支持台で反射した台反射光と、前記光が前記導体パターンから露出する前記絶縁層の上に存在する異物で反射した異物反射光とを検知して、それらの間のコントラストによって、前記導体パターンおよび前記異物を検査する工程を備え、
前記導体パターンおよび前記異物を検査する工程において、
前記台反射光の反射率が30〜70%であり、
前記異物反射光の反射率が10%以下であることを特徴とする、配線回路基板の製造方法。
【請求項2】
前記パターン反射光の反射率は、前記台反射光の反射率に対して、20%以上高いことを特徴とする、請求項1に記載の配線回路基板の製造方法。
【請求項3】
前記光の波長が、500nm以上であることを特徴とする、請求項1または2に記載の配線回路基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−190671(P2010−190671A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−34225(P2009−34225)
【出願日】平成21年2月17日(2009.2.17)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】