説明

配線基板及びその製造方法

【課題】配線基板全体の厚さを可及的に薄くすると共に、工程の簡素化を図り、コストの低減化に寄与すること。
【解決手段】一方の面に所要のパターン形状に形成された凹部RPを有する基材11と、基材12とを、凹部RPが形成されている側の面を内側にして直接貼り合わせた構造体を作製し、その構造体の所要の箇所に、厚さ方向に貫通し、かつ、凹部RPと連通するようにスルーホールTHを形成し、その表面に絶縁層13を形成した後、スルーホールTH及び凹部RPに導電性材料14,15を充填する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子等の電子部品を実装するのに用いられる配線基板を製造する技術に係り、特に、高密度化及び高機能化に適応された多層配線構造を有し、ベース基材として供されるコア基板の新規な構造を有した配線基板(以下、「半導体パッケージ」ともいう。)及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
BGA(Ball Grid Array) やLGA(Land Grid Array) 、PGA(Pin Grid Array)等の半導体パッケージを製造する場合、一般的には、当該パッケージのベース基材として供されるコア層(コア基板)を用意し、その両面に、例えばビルドアップ法により、導体パターン(配線層)の形成、絶縁層の形成、絶縁層におけるビアホールの形成を順次繰り返して多層配線構造とし、最終的に最外層の配線層を保護膜(ソルダレジスト層)で被覆し、保護膜の所要箇所を開口して導体パターンの一部(パッド部もしくはランド部)を露出させている。さらに、BGAやPGAの場合、その露出しているパッド部等に外部接続端子としてのボールやピン等を接合している。このような半導体パッケージは、一方の面に半導体素子等のチップが搭載され、他方の面に設けられた外部接続端子を介してプリント基板等の実装用基板に実装されるようになっている。つまり、半導体パッケージを介してチップと実装用基板とが電気的に接続されるようになっている。
【0003】
このため、半導体パッケージのコア基板には、その両面間を電気的に導通させるための手段としてスルーホールが形成され、このスルーホールに導電性材料(導体)が充填されている。そして、このスルーホールに充填された導体(以下、「スルーホール電極」ともいう。)を介して、コア基板の一方の面側に形成された配線層と、その反対側に形成された配線層とが電気的に接続されるようになっている。
【0004】
上記のスルーホールへの導体の充填に関連する技術としては、例えば、特許文献1に記載されるように、半導体装置の製造方法であって、先ず基板表面側に第1支持体を取り付け、次に基板をその裏面側から薄化し、次に第1支持体を基板から取り外し、次に開口部を有する第2支持体を基板裏面側に取り付け、次に基板表面に第1絶縁膜を形成し、次に第2支持体の開口部に繋がる貫通孔を基板に形成し、次に第2絶縁膜を基板の貫通孔内部に形成した後、基板の貫通孔内部に導電体を充填するようにしたものがある。
【特許文献1】特開2006−228947号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように従来の多層配線構造を有する配線基板では、そのベース基材として用いられるコア基板にスルーホール電極が形成され、このスルーホール電極に接続されるようにしてコア基板の両面にビルドアップ法による配線層が積層されていた。
【0006】
このため、コア基板の両面に相当数の配線層を形成する必要があり、配線基板全体の厚さが大きくなってしまうという問題があった。特に、配線基板をCPU用パッケージとして利用する場合、信号層として使用する配線層の数と比べて、電源層/グランド層として使用する配線層は相当数積層する必要があり、かなりの数の配線層を形成する必要があるため、上記の問題は一層顕著である。
【0007】
また、従来のプロセスでは、コア基板のスルーホール電極を形成するための処理(めっき処理等)と、ビルドアップ配線を形成するための処理(めっき処理等)とを別々の工程で行う必要があった。特に、配線基板をCPU用パッケージとして利用する場合には、かなりの数の配線層をビルドアップ法で積み重ねる必要があるため、工程も増え、そのために製造コストが高くなるといった課題があった。
【0008】
本発明は、かかる従来技術における課題に鑑み創作されたもので、配線基板全体の厚さを可及的に薄くすると共に、工程の簡素化を図り、ひいてはコストの低減化に寄与することができる配線基板及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した従来技術の課題を解決するため、本発明の一形態によれば、コア基板の少なくとも一方の面側に配線層を積み重ねてなる配線基板であって、前記コア基板が、一方の面に所要のパターン形状に形成された凹部を有する平板状の第1の基材と、平板状の第2の基材とを、前記凹部が形成されている側の面を内側にして直接貼り合わせた構造体からなり、該構造体の所要の箇所に、厚さ方向に貫通し、かつ、前記凹部と連通するよう形成されたスルーホールと、前記凹部とに、導電性材料が一体的に充填されていることを特徴とする配線基板が提供される。
【0010】
この形態に係る配線基板の構成によれば、コア基板の内部の凹部に充填された導電性材料(導体)は内部配線を構成する。つまり、コア基板の内部に配線層(内部配線)が設けられているので、従来のようにコア基板の外側に設けていた相当数の配線層の一部をこの内部配線に置き換えることができる。これによって、従来はコア基板の外側に設けていた配線層の一部を、本発明ではコア基板の外側に設ける必要がないので、コア基板を含めた配線基板全体の厚さを薄くすることが可能となる。
【0011】
また、本発明の他の形態によれば、所要の厚さに薄化された平板状の第1の基材の一方の面に、所要のパターン形状に凹部を形成する工程と、所要の厚さに薄化された平板状の第2の基材を用意し、該第2の基材を、前記第1の基材の前記凹部が形成されている側の面と直接接合により貼り合わせる工程と、貼り合わされた構造体の所要の箇所に、その厚さ方向に貫通し、かつ、前記凹部と連通するようにスルーホールを形成する工程と、前記スルーホールが形成された構造体の表面に絶縁層を形成する工程と、前記絶縁層で覆われた構造体に対し、前記スルーホール及び前記凹部に導電性材料を充填する工程とを含むことを特徴とする配線基板の製造方法が提供される。
【0012】
この形態に係る配線基板の製造方法によれば、スルーホール電極(スルーホールに充填された導体)を形成する際に同時に内部配線(凹部に充填された導体)も形成しているので、従来のようにコア基板のスルーホール電極を形成するための処理(めっき処理等)とビルドアップ配線を形成するための処理(めっき処理等)とを別々の工程で行う場合と比べて、工程の簡素化を図ることができる。これは、製造コストの低減化に寄与する。
【0013】
本発明に係る配線基板及びその製造方法の他の構成/プロセス上の特徴及びそれに基づく特有の利点等については、以下の発明の実施の形態を参照しながら説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施の形態について、添付の図面を参照しながら説明する。
【0015】
図1は本発明の一実施形態に係る配線基板の構成を断面図の形態で示したものである。図示の例では、本実施形態の配線基板30に半導体素子等の電子部品(チップ)40がその電極端子41を介して表面実装され得る様子を示している。
【0016】
本実施形態に係る配線基板30は、図示のように配線基板のベース基材として供されるコア層(コア基板)10と、このコア基板10の両面にそれぞれ所要のパターン形状に形成された配線層20及び21と、各配線層20,21を覆って両面にそれぞれ形成され、所要の箇所において各配線層20,21のパッド部に達するビアホールが形成された絶縁層22及び23と、各絶縁層22,23上にそれぞれ所要のパターン形状に、かつ当該ビアホールを充填するように形成された配線層24及び25と、各配線層24,25のそれぞれ所要の箇所に画定されたパッド部24P,25Pを除いて両面を覆うように形成された保護膜としての絶縁層26及び27とを備えている。配線層20,21,24,25の材料としては代表的に銅(Cu)が用いられ、絶縁層22,23の材料としては代表的にエポキシ樹脂が用いられ、最表層の絶縁層26,27の材料としてはソルダレジストが用いられる。
【0017】
また、最表層の絶縁層26,27から露出するパッド部24P,25Pには、それぞれ外部接続端子(本配線基板30に実装されるチップ40の電極端子41、本配線基板30をプリント配線板等のマザーボードに実装する際に使用されるはんだボールやピン等)が接合されるので、各パッド部(Cu)24P,25P上にニッケル(Ni)めっき及び金(Au)めっきをこの順に施しておくのが望ましい。これは、外部接続端子を接合したときのコンタクト性を良くするため(Au層)と、パッド部24P,25Pを構成するCu層とAu層との密着性を高め、CuがAu層中へ拡散するのを防止するため(Ni層)である。
【0018】
本実施形態では、チップ実装面側のパッド部24Pについては、出荷先の便宜を考慮して、図示のようにチップ40を実装する際にその電極端子41と接続し易いようにはんだ28を被着させている。一方、チップ実装面側と反対側のパッド部25Pについては、出荷先で必要に応じて外部接続端子を接合できるように露出させた状態のままにしている。もちろん、出荷先の要望に応じて前もってパッド部25Pにはんだボールやピン等を接合しておいてもよい。
【0019】
本発明を特徴付けるコア基板10は、基本的には2枚の平板状の基材11及び12を直接貼り合わせた構造体からなる。具体的には、一方の基材11の一方の面(図示の例では、上側)の所要の箇所には、凹部(図3においてRPで示す部分)が所要のパターン形状に形成されており、この凹部が形成されている側の面を内側にして他方の基材12と直接接合されている。本実施形態では、各基材11,12の材料として、シリコン(Si)ウエハを使用している。便宜上、各基材11,12を「シリコン板」ともいう。各シリコン板11,12を貼り合わせてなる構造体の所要の箇所には、その厚さ方向に貫通し、かつ、凹部RPと連通するようにスルーホール(図4においてTHで示す部分)が形成されている。さらに、凹部RPと連通するスルーホールTHが形成された構造体の表面(スルーホールTH及び凹部RPの各内壁面上を含む)には、絶縁層13が形成されている。この絶縁層13は、熱酸化法等により形成することができる。
【0020】
本実施形態では、後述するようにスルーホールTH及び凹部RPに導電性材料(導体)が一体的に充填され、その充填された各々の部分の導体が、スルーホール電極14及び内部配線15を構成している。スルーホール電極14及び内部配線15は、無電解/電解めっきを施すことによって形成され、あるいは導電性ペースト等の充填によって形成することができる。
【0021】
めっきを施す際(もしくは導電性ペースト等を充填する際)、めっき液(もしくは導電性ペースト等)はスルーホールTH内を介して凹部RP内を流動することになるが、スルーホールTHの直径(本実施形態では50μm程度)と比べて凹部RPは非常に狭いため(本実施形態では厚さ5μm前後)、スルーホールTHの周囲の比較的短い距離(スルーホールTHの直径と同じ50μm程度の距離)であれば、凹部RP内を導電性材料で確実に埋めることができる。そのため、コア基板10内に形成される内部配線15(凹部RP内の導体)は、隣合うスルーホール電極14(スルーホールTH内の導体)間を繋ぐようにパターン形成されている。
【0022】
図2はそのパターンレイアウトの一例を概略的に示したものであり、内部配線15は、図示のように隣合うスルーホール電極14を介して繋がっている。(a)に示す例では、各スルーホール電極14間が同じ導体(内部配線15)を介して一体的に接続されたレイアウトとなっており、(b)に示す例では、2つに分けたグループの一方に属する各スルーホール電極14a間が同じ導体(内部配線15a)を介して一体的に接続され、他方のグループに属する各スルーホール電極14b間が同じ導体(内部配線15b)を介して一体的に接続されたレイアウトとなっている。
【0023】
図2に例示するように内部配線のレイアウトには制約があるため、信号配線パターンのように、隣合うスルーホール電極を迂回して離れた位置にあるスルーホール電極との間を接続するパターンや、任意の2つのスルーホール電極間を選択的に接続するパターンなど複雑なパターンは、実際上形成するのが難しい。よって、コア基板10内に形成される内部配線15(15a,15b)の用途は限定されることになる。
【0024】
一方、配線基板をCPU用パッケージとして利用する場合、現状の技術では、コア基板の両面に配線層を何層にも(4層〜8層程度)積層する必要があるが、そのうち信号層として実際に使用している配線層は1層もしくは2層程度である。他の配線層はすべて電源層もしくはグランド層として利用されており、殆どの場合、信号配線のように微細かつ複雑なパターンではなく、ベタ状に形成されたプレーン層である。従って、図2に例示するパターンレイアウトから、コア基板10内に形成される内部配線15(15a,15b)は、電源プレーンもしくはグランドプレーンとして好適に利用することができる。
【0025】
本実施形態に係る配線基板30は、図1、図2に示されるように、コア基板10の内部に配線層15(15a,15b)を設けたことを特徴とする。このコア基板10を含む配線基板30を構成する各構成部材の材料や大きさ等については、以下のプロセスに関連させて具体的に説明する。
【0026】
以下、本実施形態に係る配線基板10を製造する方法について、その製造工程を順に示す図3、図4及び図5を参照しながら説明する。なお、各工程図に示す例では、図示の簡単化のため、本発明に関連する部分(コア基板10)の構成のみを示している。
【0027】
先ず最初の工程では(図3(a)参照)、直径が8インチで厚さが725μm程度のシリコン(Si)ウエハを用意し、100μm程度の厚さに薄化する(シリコン板11)。薄化処理は、例えば、化学研磨、化学機械研磨(CMP)、プラズマエッチング等の加工技術を用いて行うことができる。
【0028】
次の工程では(図3(b)参照)、薄化されたシリコン板11の一方の面(図示の例では、上側)に、パターニング材料を使用してエッチング用レジストを形成し、その所要の箇所を開口する(開口部OP1を備えたレジスト層R1の形成)。この開口部OP1は、形成すべきコア基板内の内部配線のパターン形状、すなわち、図2に例示したように隣合うスルーホール電極14(14a,14b)間を繋ぐような形状に従ってパターニング形成される。パターニング材料としては、感光性のドライフィルム、又は液状のフォトレジスト(例えば、ノボラック系樹脂、エポキシ系樹脂等の液状レジスト)を用いることができる。
【0029】
例えば、ドライフィルムを使用する場合、典型的にレジスト材料をポリエステルのカバーシートとポリエチレンのセパレータシートの間に挟んだ構造となっているので、表面洗浄→ラミネーション前処理(セパレータシート剥離)→大気中でのレジストラミネーション→露光→カバーシート剥離→現像の工程を経て、パターニングされたレジスト層R1を形成する。具体的には、先ずシリコン板11の表面を洗浄した後、その表面にドライフィルムを熱圧着により貼り付け、このドライフィルムに対し、所要の内部配線の形状にパターニングされたマスク(図示せず)を用いて紫外線(UV)照射による露光を施して硬化させ、さらに所定の現像液(ネガ型のレジストの場合には有機溶剤を含む現像液、ポジ型のレジストの場合にはアルカリ系の現像液)を用いて当該部分をエッチング除去し(開口部OP1の形成)、所要のパターン形状に応じたレジスト層R1を形成する。同様に、液状レジストを用いた場合にも、表面洗浄→表面にレジスト塗布→乾燥→露光→現像の工程を経て、所要形状にパターニングされたレジスト層R1を形成することができる。
【0030】
次の工程では(図3(c)参照)、シリコン板11に対し、パターニングされたレジスト層R1をマスクにして、反応性イオンエッチング(RIE)などのドライエッチング法により、レジスト層R1の開口部OP1(図3(b))から露出している部分を5〜10μm程度所要の厚さにエッチングして、凹部RPを形成する。RIEは、SF6 /O2 系ガスもしくはCF4 /O2 系ガスを用いて行うことができるが、エッチングレートが高いという点で前者(SF6 /O2 系ガス)の方が好ましい。
【0031】
次の工程では(図3(d)参照)、エッチング用レジストとして使用したレジスト層R1(図3(c))を除去する。例えば、エッチング用レジストとしてドライフィルムを使用した場合には、水酸化ナトリウムやモノエタノールアミン系等のアルカリ性の薬液を用いて除去することができる。また、エッチング用レジストとしてノボラック系樹脂、エポキシ系樹脂等の液状レジストを使用した場合には、アセトンやアルコール等を用いて除去することができる。これによって、図示のように一方の面に所要の内部配線のパターン形状に従って形成された凹部RPを有するシリコン板11が作製されたことになる。
【0032】
次の工程では(図4(a)参照)、その作製されたシリコン板11と、図3(a)の工程で行った処理と同様にして所定の厚さ(200μm程度)に薄化して作製したシリコン板12とを、図示のようにシリコン板11の凹部RPが形成されている側の面を内側にして、直接接合により貼り合わせる。これは、先ずシリコン板11,12の表面を洗浄し、次に真空雰囲気中で両シリコン板11,12を図示のように位置合わせした後、1000℃前後で加熱(焼成)及び加圧することで、貼り合わせることができる。つまり、焼成により各シリコン板11,12の界面付近のシリコン原子同士が反応し、接合層が形成されて両者は直接接合される。
【0033】
次の工程では(図4(b)参照)、2枚のシリコン板11,12が貼り合わされた構造体の一方の面(図示の例では、上側)に、図3(b)の工程で行った処理と同様にして、パターニング材料を使用してエッチング用レジストを形成し、その所要の箇所を開口する(開口部OP2を備えたレジスト層R2の形成)。パターニング材料としては、同様に感光性のドライフィルムもしくは液状のフォトレジストを用いることができる。
【0034】
レジスト層R2に形成すべき開口部OP2は、後の工程で形成するスルーホールのパターン形状に従って形成される。ただし、開口部OP2のパターニングに際しては、平面的に見て、開口部OP2の周縁部分が凹部RPの周縁部分と一部重なるような大きさに選定する。つまり、図示のように隣合う凹部RP間の部分の両側にそれぞれ所要の幅(d=5μm程度)のマージンをもたせて開口部OP2を形成する。このように凹部RPの周縁部分と一部重なるような大きさで開口部OP2を形成する理由は、スルーホールを形成したときに当該スルーホールを凹部RPと連通させる必要があるからである。
【0035】
次の工程では(図4(c)参照)、2枚のシリコン板11,12が貼り合わされた構造体に対し、図3(c)の工程で行った処理と同様にして、パターニングされたレジスト層R2をマスクにして、反応性イオンエッチング(RIE)などのドライエッチング法により、レジスト層R2の開口部OP2(図4(b))から露出している部分を、厚さ方向に貫通するようにエッチングして、スルーホールTHを形成する。開口部OP2は、上述したように特定の大きさで形成されているので、この開口部OP2の大きさに従って形成されたスルーホールTHは、図示のように凹部RPと確実に連通する。
【0036】
次の工程では(図5(a)参照)、エッチング用レジストとして使用したレジスト層R2(図4(c))を除去する。レジスト層R2は、図3(d)の工程で行った処理と同様にして除去することができる。これによって、図示のように2枚のシリコン板11,12が貼り合わされた構造体の所要の箇所に、その厚さ方向に貫通し、かつ、凹部RPと連通するようにスルーホールTHが形成された構造体が作製されたことになる。
【0037】
次の工程では(図5(b)参照)、その作製された構造体の表面(スルーホールTH及び凹部RPの内壁面上を含む)に、例えば、熱酸化法やCVD法等により、SiO2 の絶縁層(シリコン酸化膜)13を1.5μm程度の厚さに形成する。
【0038】
最後の工程では(図5(c)参照)、表面が絶縁層13で覆われた構造体(貼り合わされたシリコン板11,12)に対し、スルーホールTH及び凹部RP(図5(b)参照)に導電性材料を一体的に充填してスルーホール電極14及び内部配線15を形成し(コア基板10の完成)、さらにコア基板10の両面に所要のパターン形状に配線層20,21を形成する。例えば、以下のようにして形成することができる。
【0039】
先ず絶縁層13の表面に、銅(Cu)の無電解めっきによりシード層を形成し、次にこのシード層を給電層として利用した電解CuめっきによりスルーホールTH及び凹部RPに導体(Cu)を充填する。あるいは、無電解Cuめっきのみで充填することも可能である。あるいは、導電性ペーストを用いたスクリーン印刷法やインクジェット法等により、Cu等の金属を含有する導電性材料をスルーホールTH及び凹部RPに充填することも可能である。これによって、めっき液等がスルーホールTH内及び凹部RP内を流動し、図示のように各々の部分が導電性材料で一体的に充填されて、スルーホール電極14及び内部配線15が形成される。
【0040】
さらに、スルーホールTHに充填された導体14に接続されるようにして両面に、サブトラクティブ法、セミアディティブ法、インクジェット法等により、所要の形状にCuの配線パターン(配線層20,21)を形成する。セミアディティブ法もしくはインクジェット法を用いた場合には、スルーホールTH及び凹部RPへの導体(Cu)の充填と同時に配線パターン20,21を形成することができ、工程の簡素化に寄与する。
【0041】
以上の工程により、本発明を特徴付けるコア基板10の両面にそれぞれ所要のパターン形状に形成された配線層20,21を備えた構造体が作製されたことになる。
【0042】
さらにこの後、特に図示はしていないが、その構造体の両面に、ビルドアップ法を用いて絶縁層(ビアホールを含む)及び導体パターン(配線層)を交互に所要の層数となるまで積み上げていく。本実施形態では、図1に示したように、絶縁層22,23及び配線層24,25を1層ずつ形成する。さらに、上側に露出しているパッド部24Pと下側に露出しているパッド25Pの部分を除いて全面を覆うように、それぞれ保護膜として機能するソルダレジスト層26,27を形成する。さらに、各ソルダレジスト層26,27から露出している各パッド部(Cu)24P,25P上にNi/Auめっきを施す。そして、チップ実装面側のパッド部24Pについては、プリソルダを施しておく(はんだ28の被着)。
【0043】
以上の工程により、本実施形態の配線基板30(図1)が製造されたことになる。
【0044】
以上説明したように、本実施形態に係る配線基板30及びその製造方法によれば、コア基板10の内部に配線層15(15a,15b)が設けられているので、従来のようにコア基板の外側に設けていた相当数の配線層の一部をこの内部配線に置き換えることができる。特に、従来のCPU用パッケージでは、コア基板の両面に相当数の配線層(そのうち電源用/グランド用の配線層が多数を占める)を形成する必要があったが、本実施形態では、コア基板10の内部に配線層15(特に、図2に示したようなグランド配線15a、電源配線15b)を好適に内蔵させることができるので、その分の電源用/グランド用の配線層をコア基板10の外側に設ける必要がない。これによって、コア基板10を含めた配線基板30(半導体パッケージ)の全体の厚さを薄くすることができる。
【0045】
また、本実施形態に係るプロセスでは、スルーホール電極14(スルーホールTH内の導体)を形成する際に同時に内部配線15(凹部RP内の導体)も形成しているので(図5(c)参照)、従来のようにコア基板のスルーホール電極を形成するための処理(めっき処理等)と、ビルドアップ配線を形成するための処理(めっき処理等)とを別々の工程で行う場合と比べて、工程の簡素化を図ることができる。これは、製造コストの低減化に寄与する。
【0046】
上述した実施形態では、2枚のシリコン板11,12を貼り合わせてコア基板10を作製する場合を例にとって説明したが、本発明の要旨からも明らかなように、貼り合わせるシリコン板の枚数が2枚に限定されないことはもちろんである。例えば、3枚のシリコン板を貼り合わせてコア基板を作製することも可能である。
【0047】
また、4枚以上のシリコン板を貼り合わせることも技術的に可能ではあるが、貼り合わせたトータルの厚さが厚すぎると、最終工程(図5(c))で行うスルーホールTH及び凹部RPへの導電性材料(めっき液、導電性ペースト等)の充填に相当の時間がかかる。また、めっき液等はスルーホールTH内を介して凹部RP内を流動するが、上述したようにスルーホールの直径と比べて凹部は非常に狭いため、トータルの厚さが厚すぎると、めっき液等が凹部RP内をスムーズに流動せず、所要の内部配線15(15a,15b)が形成されない可能性もある。また、枚数が多すぎると、1枚1枚のシリコン板の厚さを相対的に薄くする必要があるので、割れたりするおそれがあり、取扱い性が低下する。このような制約条件を考慮して、トータルの厚さは300〜400μm程度に収めるのが望ましく、それに要するシリコン板の枚数は最大でも3枚が適当である。
【0048】
シリコン板を3枚貼り合わせてコア基板を作製する方法は、特に図示はしないが、基本的には上述したプロセス(図3〜図5)と同じである。ただし、この方法では、上述した図3(a)〜(d)の工程で行った処理(一方の面の所要の箇所に凹部RPを有したシリコン板11の作製)と同等の処理を2回行って2枚のシリコン板を作製し、これら2枚のシリコン板に3枚目のシリコン板(図4(a)のシリコン板12に相当)を位置合わせして、直接接合により貼り合わせる。
【0049】
シリコン板を3枚貼り合わせた構造体(コア基板)では、上述した実施形態と比べて内部配線の自由度を高めることができる。例えば、第1のシリコン板と第2のシリコン板の間の内部配線をグランドプレーン層として専用に割り当て、第2のシリコン板と第3のシリコン板の間の内部配線を電源プレーン層として専用に割り当てることができる。
【0050】
なお、3枚貼り合わせて形成されるコア基板の変形例としては、上記の2枚のシリコン板のうち1枚(中央に挟まれるシリコン板)についてその両面に所要の形状に凹部を形成したものを使用してもよい。また、3枚目のシリコン板についても、上述した実施形態のようにその両面が必ずしも平坦である必要はなく、その一方の面(内側に対向する側)に所要の形状に凹部を形成したものを使用してもよい。かかる形態によれば、内部配線の自由度をより一層高めることができる。
【0051】
また、上述した実施形態では、コア基板10を構成する基材としてシリコン板を用いた場合を例にとって説明したが、使用する基材は必ずしもシリコン板に限定されず、他の材料を使用することも可能である。例えば、ガラス(特定的には、パイレックスガラス(コーニング社の硼珪酸ガラスの商品名))を使用することも技術的には可能である。ガラスはその成分としてSiO2 を含んでいるので、これを基材として用いた場合、上述した図5(b)の工程で行った処理(熱酸化等によるシリコンの表面への絶縁膜13の形成)が不要となり、工程の簡素化に寄与する。
【0052】
ただし、他の工程で特有の処理を行う必要がある。先ず、図3(c)の工程において、凹部RPは、例えば、ブラスト加工により形成する。ブラスト加工は、ケイ砂、スチールグリット等を研掃材として用い、これらを圧縮空気などに混合させて加工対象の表面に吹きつけることで、その表面処理を行う方法である。この場合、レジスト層R1の開口部OP1(図3(b))から露出しているガラス基材に対して細かい研磨粒(例えば、SiC#700)を吹き付けることで、その吹付け圧力によって当該部分が削られ、凹部RPが形成される。次に、図4(a)の工程において、2枚のガラス基材は、例えば、低温ガラス接合技術を用いて貼り合わせる。低温ガラス接合以外の方法として、熱圧着、超音波接合、ガラスフリット、プラズマによる接合などを用いることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の一実施形態に係る配線基板(半導体パッケージ)の構成を示す断面図である。
【図2】図1の配線基板におけるコア基板の要部(内部配線)のパターンレイアウトの一例を概略的に示す平面図である。
【図3】図1の配線基板(コア基板の部分)の製造方法の工程(その1)を示す断面図である。
【図4】図3の工程に続く工程(その2)を示す断面図である。
【図5】図4の工程に続く工程(その3)を示す断面図である。
【符号の説明】
【0054】
10…コア基板、
11,12…シリコン板(基材)、
13,22,23…絶縁層、
14,14a,14b…スルーホール電極(導体/導電性材料)、
15,15a,15b…内部配線(導体/導電性材料)、
20,21,24,25…配線層、
26,27…ソルダレジスト層(保護膜/絶縁層)、
30…配線基板(半導体パッケージ)、
RP…凹部、
TH…スルーホール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア基板の少なくとも一方の面側に配線層を積み重ねてなる配線基板であって、
前記コア基板が、一方の面に所要のパターン形状に形成された凹部を有する平板状の第1の基材と、平板状の第2の基材とを、前記凹部が形成されている側の面を内側にして直接貼り合わせた構造体からなり、該構造体の所要の箇所に、厚さ方向に貫通し、かつ、前記凹部と連通するよう形成されたスルーホールと、前記凹部とに、導電性材料が一体的に充填されていることを特徴とする配線基板。
【請求項2】
前記第1の基材及び第2の基材はそれぞれシリコン板からなり、前記導電性材料は、各シリコン板の表面に形成された絶縁層を介して前記スルーホール及び前記凹部に充填されていることを特徴とする請求項1に記載の配線基板。
【請求項3】
前記コア基板内の前記凹部に充填されている部分の導体は、グランド用配線もしくは電源用配線として割り当てられていることを特徴とする請求項1に記載の配線基板。
【請求項4】
所要の厚さに薄化された平板状の第1の基材の一方の面に、所要のパターン形状に凹部を形成する工程と、
所要の厚さに薄化された平板状の第2の基材を用意し、該第2の基材を、前記第1の基材の前記凹部が形成されている側の面と直接接合により貼り合わせる工程と、
貼り合わされた構造体の所要の箇所に、その厚さ方向に貫通し、かつ、前記凹部と連通するようにスルーホールを形成する工程と、
前記スルーホールが形成された構造体の表面に絶縁層を形成する工程と、
前記絶縁層で覆われた構造体に対し、前記スルーホール及び前記凹部に導電性材料を充填する工程とを含むことを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項5】
前記第1の基材及び第2の基材を直接接合により貼り合わせる工程と前記スルーホールを形成する工程との間に、貼り合わされた構造体の一方の面に、所要の箇所に開口部を有するレジスト層を形成する工程を含み、
該レジスト層を形成する工程において、前記開口部は、平面的に見てその周縁部分が前記凹部の周縁部分と一部重なるような大きさを有して形成されており、該開口部の形状に従って前記スルーホールが形成されていることを特徴とする請求項4に記載の配線基板の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−176791(P2009−176791A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−11072(P2008−11072)
【出願日】平成20年1月22日(2008.1.22)
【出願人】(000190688)新光電気工業株式会社 (1,516)
【Fターム(参考)】