配線接続構造およびその形成方法
【課題】 配線上に良好なカーボンナノチューブを形成する。
【解決手段】 下層Cu配線1上にMoを堆積して接続層2を形成し、この接続層2上にCVD法を用いてカーボンナノチューブ6を成長させる。Moからなる接続層2を形成することにより、カーボンナノチューブ6を成長させるCVDの際に熱が加えられても、下層Cu配線1からのCuの熱拡散が抑制され、触媒金属5の活性低下が抑えられる。さらに、Moはカーボンナノチューブ6との間の接触抵抗が低いため、下層Cu配線1との低抵抗接続を確保しつつ、良好なカーボンナノチューブ6を形成することができる。
【解決手段】 下層Cu配線1上にMoを堆積して接続層2を形成し、この接続層2上にCVD法を用いてカーボンナノチューブ6を成長させる。Moからなる接続層2を形成することにより、カーボンナノチューブ6を成長させるCVDの際に熱が加えられても、下層Cu配線1からのCuの熱拡散が抑制され、触媒金属5の活性低下が抑えられる。さらに、Moはカーボンナノチューブ6との間の接触抵抗が低いため、下層Cu配線1との低抵抗接続を確保しつつ、良好なカーボンナノチューブ6を形成することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は配線接続構造およびその形成方法に関し、特に半導体装置等に用いられ、配線間を電気的に接続するための配線接続構造およびその形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置やプリント配線基板等には、異なる層や面に存在する配線間を電気的に接続するため、層間絶縁膜や基板等にビアホールを形成し、そこに導電性材料を形成したビア構造が広く採用されている。近年、配線材料には専ら銅(Cu)が用いられており、そのようなCu配線に通じるよう所定位置に形成したビアホール内にCu等の導電性金属材料を充填等することにより、ビアを形成するのが一般的である。
【0003】
近年では、このようなビアに、Cuのような金属材料のほか、いわゆるカーボンナノチューブや筒状になったカーボンファイバ等に代表されるような炭素の筒状構造体(「炭素元素円筒型構造体」という。)を含んだ炭素材料を用いる検討がされている。特にカーボンナノチューブは、化学的安定性に優れ、また、特異な物理的・電気的性質を有する等、様々な特性を有しており、半導体装置等の形成材料として注目され、例えば、その太さや長さの制御のほか、形成位置制御やカイラリティ制御等、現在も様々な検討が続けられている。
【0004】
一例として、カーボンナノチューブを配線間の接続に用いた場合の配線接続構造について述べる(例えば特許文献1参照)。図14はカーボンナノチューブを用いた従来の配線接続構造の断面模式図である。
【0005】
図14に示すような従来の配線接続構造では、下層側のCu配線(「下層Cu配線」という。)100上に形成された層間絶縁膜101にこれを貫通するビアホール102が形成されており、このビアホール102内には、下層Cu配線100に対して垂直方向に延びるカーボンナノチューブ103の集合体が形成されている。カーボンナノチューブ103は、例えば、化学気相成長(Chemical Vapor Deposition,CVD)法を用い、ビアホール102内の下層Cu配線100上に堆積したコバルト(Co)等の触媒金属104を利用して炭素を垂直配向成長させることにより形成することができる。そして、このようにして形成されたカーボンナノチューブ103の上端側に、図示しないCu配線(「上層Cu配線」という。)等の導電層が形成され、カーボンナノチューブ103によって下層Cu配線100と上層の導電層とが電気的に接続される。
【0006】
また、従来は、活性領域を有する基板上に形成された誘電体にその活性領域に通じるビアホールを形成し、その活性領域上にタングステン(W)等の薄層を介してカーボンナノチューブを垂直配向成長させ、さらに、そのカーボンナノチューブの上端側に導電層を形成することにより、活性領域と導電層とをカーボンナノチューブで電気的に接続する構造等も提案されている(例えば特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2002−329723号公報
【特許文献2】特開2004−6864号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記のように炭素をCVD法によって垂直配向成長させてカーボンナノチューブやカーボンファイバ等の炭素元素円筒型構造体を形成するときには、そのCVDの際に被処理体はカーボンナノチューブ等の成長に必要な400℃〜900℃程度の温度に加熱される。そのため、CVD前にCu配線上にCo等の触媒金属を堆積している場合には、その熱によってCuと触媒金属との相互熱拡散が引き起こされ、それによって触媒金属の活性が低下し、カーボンナノチューブ等の成長が阻害されてしまうといった問題点があった。その結果、例えば、カーボンナノチューブ等を目的の長さや太さに形成することができなかったり、カーボンナノチューブ等をビアホール内に目的の密度で形成することができなかったりして、半導体装置等の要求特性を十分に満足させることができない場合があった。
【0008】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、配線上に良好な炭素元素円筒型構造体が形成された配線接続構造を提供することを目的とする。
さらに、本発明は、炭素元素円筒型構造体の形成時に触媒金属の活性を高く維持して配線上に良好な炭素元素円筒型構造体を形成することのできる配線接続構造の形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では上記課題を解決するために、図1に例示する構成で実現可能な配線接続構造が提供される。本発明の配線接続構造は、配線に炭素元素円筒型構造体が電気的に接続された配線接続構造において、前記配線上に、導電性を有する接続層を介して、前記炭素元素円筒型構造体が形成されていることを特徴とする。
【0010】
図1に例示するような配線接続構造によれば、下層Cu配線1と炭素元素円筒型構造体であるビアホール4内のカーボンナノチューブ6との間に導電性の接続層2が設けられている。これにより、下層Cu配線1とカーボンナノチューブ6とを直接接触させずに接続層2を介して電気的な接続を確保する。カーボンナノチューブ6が形成される際には、この接続層2が下層Cu配線1を覆っているため、下層Cu配線1のCuの熱拡散が抑えられる。
【0011】
また、本発明では、配線に炭素元素円筒型構造体が電気的に接続された配線接続構造の形成方法において、前記配線上に導電性を有する接続層を形成し、前記接続層上に前記炭素元素円筒型構造体を形成することを特徴とする配線接続構造の形成方法が提供される。
【0012】
このような配線接続構造の形成方法によれば、配線上に導電性の接続層を形成し、その上に炭素元素円筒型構造体を形成するので、配線と炭素元素円筒型構造体との間の電気的な接続が確保される。さらに、接続層を形成することにより、例えば、炭素元素円筒型構造体の形成時に熱が加えられても、接続層によって配線材料の熱拡散が抑えられるようになる。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、配線と炭素元素円筒型構造体との間に導電性の接続層を設けるようにした。これにより、炭素元素円筒型構造体の形成時に熱が加えられたときの配線材料の熱拡散が抑制され、それによって引き起こされることのある弊害、すなわち、触媒金属の活性が低下して良好な炭素元素円筒型構造体を形成することができないという弊害を回避することができるようになる。その結果、炭素元素円筒型構造体で接続される配線間の接続信頼性を高めることができ、製品の高品質化を図ることができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を、炭素元素円筒型構造体をカーボンナノチューブとして、図面を参照して詳細に説明する。
図1はカーボンナノチューブを用いた配線接続構造の一例の断面模式図である。
【0015】
図1に示す配線接続構造では、下層Cu配線1上に導電性を有する接続層2が形成され、この接続層2上にSiO2等の層間絶縁膜3が形成されている。層間絶縁膜3には、これを貫通するビアホール4が形成されており、このビアホール4内には、Co等の触媒金属5を内部に含み下層Cu配線1に対して垂直方向に延びる複数のカーボンナノチューブ6が形成されている。カーボンナノチューブ6の上端側には、図示しない上層Cu配線等の導電層が形成され、それにより、下層Cu配線1と上層の導電層とがカーボンナノチューブ6を介して電気的に接続される。なお、ここでは図示を省略するが、通常は下層Cu配線1の下層にはSiO2等の絶縁性の下地層が設けられる。この下地層はまた、半導体基板や別の配線層の上に設けられる。
【0016】
このような配線接続構造は、例えば次のような手順で形成される。まず、所定の厚さで下地層の上に形成された下層Cu配線1上に接続層2を形成し、その上に、層間絶縁膜3を形成する。次いで、層間絶縁膜3の所定領域をエッチングして接続層2に達するビアホール4を形成した後、ビアホール4内に露出した接続層2上に触媒金属5を堆積する。そして、CVD法を用い、ビアホール4内に触媒金属5を利用してカーボンナノチューブ6を成長させる。
【0017】
このように下層Cu配線1とカーボンナノチューブ6との間に導電性の接続層2を設けることにより、カーボンナノチューブ6のCVDの際に、その成長に必要な一定の熱が加えられても、下層Cu配線1のCuの熱拡散を抑制して触媒金属5の活性を維持することが可能になる。それにより、下層Cu配線1とカーボンナノチューブ6との間の電気的な接続を確保しつつ、ビアホール4内に良好なカーボンナノチューブ6を成長させることができるようになる。
【0018】
したがって、接続層2には、少なくともカーボンナノチューブ6の成長温度でCuの熱拡散を抑制し、かつ、カーボンナノチューブ6との間の接触抵抗が低い、という2つの特性を十分に備えていることが望まれる。ここで、接続層2の材料選定に当たり、これら2つの特性に関し検討した結果について説明する。
【0019】
まず、Cuの熱拡散抑制について検討した結果を説明する。
図2はCuと各種金属とを積層した試料のシート抵抗の温度依存性を示す図である。この図2において、横軸は試料の加熱温度(℃)を表し、縦軸はシート抵抗の比を表している。また、図3はシート抵抗測定に用いた試料の断面模式図である。
【0020】
ここでは図3に示すように、シート抵抗測定用の試料10として、Si基板11上に下地層となるSiO2膜12を形成し、その上に厚さ約300nmのCu層13と厚さ約5nmの各種金属層14とを積層形成したものを用いている。Cu層13が上記の下層Cu配線1に、また、金属層14が上記の接続層2に、それぞれ対応している。金属層14は、モリブデン(Mo)層、タンタル(Ta)層、チタン(Ti)層、パラジウム(Pd)層のいずれかとした。このような試料10を600℃程度までの適当な温度で加熱し、各温度での加熱後、室温まで冷却して、Cu層13と金属層14との積層体のシート抵抗を測定した。なお、各温度での加熱時間は約10分とした。
【0021】
試料10において、Cuの熱拡散が抑えられている場合には、シート抵抗の上昇が抑えられるようになる。測定結果は、図2に示すように、金属層14がPd層の場合のシート抵抗が加熱温度の上昇に伴って大幅に上昇してしまうのに対し、Mo層、Ta層およびTi層の場合のシート抵抗が加熱温度の上昇によっても比較的低く維持された。特にMo層の場合のシート抵抗は、全測定温度範囲内で低い水準を示した。
【0022】
この測定結果より、Cuの熱拡散抑制という点では、Mo,Ta,Ti,Pdのいずれかを単独で用いる場合には、上記の接続層2には、PdよりもMo,Ta,Tiを用いる方が好ましく、また、Mo,Taを用いる方がより好ましいと言える。
【0023】
続いて、カーボンナノチューブとの間の接触抵抗について検討した結果を説明する。
図4はカーボンナノチューブと各種金属との間の接触抵抗の温度依存性を示す図である。この図4において、横軸は試料の加熱温度(℃)を表し、縦軸は2端子間の抵抗(Ω)を表している。また、図5は接触抵抗測定に用いた試料の断面模式図である。
【0024】
ここでは図5に示すように、接触抵抗測定用の試料20として、Si基板21上に下地層であるSiO2膜22を形成し、その上にSiO2膜22平面方向に延びるカーボンナノチューブ23を形成し、このカーボンナノチューブ23の両端部に金属層24を形成したものを用いている。カーボンナノチューブ23が上記の縦方向に延びるカーボンナノチューブ6に、また、金属層24が上記の接続層2に、それぞれ対応している。金属層24は、Mo層、Ta層、Ti層、Pd層のいずれかとした。このような試料20を600℃程度までの適当な温度で加熱し、各温度での加熱後、室温まで冷却して、カーボンナノチューブ23両端部の金属層24間における抵抗を測定した。なお、各温度での加熱時間は約10分とした。
【0025】
測定結果は、図4に示すように、金属層24がTa層の場合には抵抗が高いが、その他の金属を金属層24に用いた場合には、Ti層、Pd層、Mo層の順で低い抵抗が得られた。特に金属層24がPd層およびMo層の場合の抵抗は、全測定温度範囲内で低い水準を示した。
【0026】
この測定結果より、低接触抵抗という点では、Mo,Ta,Ti,Pdのいずれかを単独で用いる場合には、上記の接続層2には、TaよりもMo,Ti,Pdを用いる方が好ましく、また、Mo,Pdを用いる方がより好ましいということができる。
【0027】
以上、上記の接続層2に望まれるCuの熱拡散抑制と低接触抵抗という2つの特性に関して検討した結果について説明したが、この検討結果より、両特性を共に満足する金属はMoである。したがって、上記の配線接続構造における接続層2を単一種の金属によって構成する場合には、接続層2をMo層とすることにより、カーボンナノチューブ6のCVDの際に加えられる熱によっても下層Cu配線1のCuの熱拡散を抑制して触媒金属5の活性を高く維持することができ、下層Cu配線1とカーボンナノチューブ6との間の低抵抗接続を確保しつつ、ビアホール4内にカーボンナノチューブ6を良好に成長させることができる。
【0028】
また、接続層2は、単一種の金属で構成するのみでなく、複数種の金属を用いて構成することもできる。例えば、単独でも目的の特性を満足することのできるMoを、他の金属と合金化して接続層2に用いてもよい。Moと合金化する金属の例としてはTiやCoを挙げることができる。Tiは、上記の図2および図4に示したように、単独でもある程度のCuの熱拡散抑制と低接触抵抗を実現しており、MoTi合金としても両特性を共に満足させることが可能である。また、接続層2をMoCo合金とした場合には、これに含有されているCoをカーボンナノチューブ6成長時の触媒として機能させることが可能になる。
【0029】
さらに、接続層2は、2種の金属を積層させた構造としてもよい。その場合、接続層2は、下層Cu配線1側に、第1の層として、主にCuの熱拡散を抑制する金属層を設け、カーボンナノチューブ6側に、第2の層として、主に低接触抵抗を示す金属層を設けた2層構造とする。このような積層構造によっても、Cuの熱拡散抑制と低接触抵抗という両特性を共に満足させることができる。
【0030】
このような積層構造の例としては、下層Cu配線1側にTa層を設けてカーボンナノチューブ6側にTi層を設けたTa/Ti積層構造のほか、下層Cu配線1側にTa層を設けてカーボンナノチューブ6側にPd層を設けたTa/Pd積層構造や、下層Cu配線1側にTa層を設けてカーボンナノチューブ6側にMo層を設けたTa/Mo積層構造等を挙げることができる。積層金属の組合せは、上記の図2および図4の結果を用いて適宜選択することが可能である。このほか、積層構造を構成する各金属層にはその合金を用いるようにしても構わない。
【0031】
また、接続層2は、必要に応じて、3層以上の積層構造とすることも可能である。例えば、下層Cu配線1側に設ける金属層とカーボンナノチューブ6側に設ける金属層との接続強度を確保する目的で、両金属層の間に、それを補う別の金属層を挿入するような構成としてもよい。なお、この場合にも、それぞれの金属層にはその合金を用いることが可能である。
【0032】
なお、以上、配線接続構造の構成例について説明したが、この配線接続構造において、接続層2は、これに用いる金属をスパッタ法や蒸着法を用いて形成することができる。また、接続層2の厚さは、1nm〜20nm程度、好ましくは2nm〜10nm程度とする。接続層2の厚さが1nmを下回る場合には、Cuの熱拡散抑制効果を十分に得ることが難しくなり、また、20nmを上回る場合には、下層Cu配線1とカーボンナノチューブ6との間の導通抵抗が高くなってしまうためである。
【0033】
また、上記の配線接続構造における触媒金属5は、これに用いる金属をスパッタ法や蒸着法を用いて形成することができ、CVD法を用いたカーボンナノチューブ6成長のためには、この触媒金属5は、最終的に層状、粒子状のいずれの形態をとっていても構わない。
【0034】
また、上記の配線接続構造におけるカーボンナノチューブ6は、単層構造、多層構造のいずれのものでもよく、1つのビアホール4内に単層構造と多層構造の両方が混在していても構わない。また、このカーボンナノチューブ6は、その1本1本が独立したものであっても、あるいは複数がバンドル状になったものであっても構わない。このほか、カーボンナノチューブ6は、ピーポッド構造を有しているものであってもよい。
【0035】
CVD法を用いてカーボンナノチューブ6を成長させる場合、成長は、プラズマCVD法によっても、あるいは熱CVD法によっても行うことができる。なお、プラズマCVD法を用いた場合には、カーボンナノチューブ6の成長は、触媒金属5がカーボンナノチューブ6内の先端部分(上層Cu配線側の端部)に残る、いわゆる先端成長で進み、熱CVD法を用いた場合には、触媒金属5がカーボンナノチューブ6内の根元部分(下層Cu配線1側の端部)に残る、いわゆる根元成長で進む。
【0036】
以下、カーボンナノチューブを用いた配線接続構造およびその形成方法について、具体例を挙げて説明する。
まず、第1の実施の形態について説明する。
【0037】
図6から図8は配線接続構造の形成方法の説明図であって、図6は第1の実施の形態の接続層およびビアホール形成工程の断面模式図、図7は第1の実施の形態の触媒金属形成工程の断面模式図、図8は第1の実施の形態のカーボンナノチューブ形成工程の断面模式図である。
【0038】
この第1の実施の形態の配線接続構造では、図6に示すように、はじめに、適当な絶縁性の下地層(図示せず。)の上に形成された厚さ約100nmの下層Cu配線1上に、スパッタ法または蒸着法により、Moを厚さ約5nmになるように堆積して接続層2を形成し、続いて、層間絶縁膜3として厚さ約350nmのSiO2を堆積する。そして、この層間絶縁膜3上に、ビアの形成予定領域にパターニング法を用いてレジスト膜の開口を形成し、フッ素を用いたドライエッチングにより接続層2が露出するまで層間絶縁膜3のエッチングを行い、ビアホール4を形成する。
【0039】
なお、ビアホール4を形成する際には、ドライエッチングと例えばフッ酸を用いたウェットエッチングを併用するようにしてもよい。それにより、接続層2に与えるダメージを抑えてエッチングすることが可能になる。
【0040】
次いで、図7に示すように、ビアホール4内に触媒金属5としてCo層を堆積する。その際には、まず、スパッタ法または蒸着法により、Coを全面に厚さ約2.5nmになるように堆積する。そして、レジスト膜を用いたリフトオフ法により、ビアホール4内にCo層を形成する。
【0041】
なお、触媒金属5としてここではCoを用いたが、Coに代えて鉄(Fe)やニッケル(Ni)を用いてもよく、これらの元素を含んだ合金を用いてもよい。また、ここでは触媒金属5を薄層としたが、微粒子であってもよい。
【0042】
このようにして接続層2上に触媒金属5を形成した後、図8に示すように、その触媒金属5を利用して、ビアホール4内にカーボンナノチューブ6を成長させる。
カーボンナノチューブ6の成長には、例えば熱フィラメントによりガス解離を行う熱フィラメントCVD法を用いることができる。この場合、例えば、反応ガスとしてアセチレン(C2H2)と水素(H2)の混合ガス(C2H2/H2=80sccm/20sccm)を真空チャンバ内に導入し、チャンバ内圧力を約1000Pa、被処理体温度を約600℃、熱フィラメント温度を約1800℃とする。なお、「sccm」は、0℃,101.3kPaでの流量(mL/min)を表す。
【0043】
さらに、カーボンナノチューブ6の成長には、熱フィラメントを直流(DC)プラズマと組み合わせたDCプラズマ熱フィラメントCVD法を用いることもできる。この場合、例えば、反応ガスとしてC2H2とH2の混合ガス(C2H2/H2=80sccm/20sccm)を真空チャンバ内に導入し、チャンバ内圧力を約1000Pa、被処理体温度を約600℃、熱フィラメント温度を約1800℃とする。
【0044】
また、カーボンナノチューブ6の成長には、従来広く一般に行われている通常の熱CVD法を用いることも可能である。この場合、例えば、反応ガスとしてC2H2とH2の混合ガス(C2H2/H2=80sccm/20sccm)を真空チャンバ内に導入し、チャンバ内圧力を約200Pa、被処理体温度を約900℃とする。ただし、被処理体温度が上記の熱フィラメントを利用したCVD法の場合に比べて高温になるので、接続層2の材料選定に留意する必要がある。
【0045】
カーボンナノチューブ6を接続層2上に垂直配向成長させるためには、CVD時に、接地したチャンバに対して被処理体に例えばマイナス400V程度のDC電界を印加する。このようにDC電界を印加することにより、垂直方向に配向させてカーボンナノチューブ6を成長させることができる。
【0046】
このように、第1の実施の形態では、Moで接続層2を形成し、この上に触媒金属5およびカーボンナノチューブ6を形成するようにした。これにより、CVDの際に下層Cu配線1のCuの熱拡散が抑えられ、良好なカーボンナノチューブ6を形成することができるとともに、カーボンナノチューブ6と下層Cu配線1とを低抵抗で電気的に接続することができる。
【0047】
次に、第2の実施の形態について説明する。
図9から図11は第2の実施の形態の配線接続構造の形成方法の説明図であって、図9は第2の実施の形態のビアホール形成工程の断面模式図、図10は第2の実施の形態の接続層および触媒金属形成工程の断面模式図、図11は第2の実施の形態のカーボンナノチューブ形成工程の断面模式図である。
【0048】
この第2の実施の形態の配線接続構造では、図9に示すように、はじめに、適当な下地層(図示せず。)の上に形成された厚さ約100nmの下層Cu配線1上に、厚さ約350nmのSiO2を堆積して層間絶縁膜3を形成する。そして、この層間絶縁膜3上に、ビアの形成予定領域にパターニング法を用いてレジスト膜の開口を形成し、フッ素を用いたドライエッチングにより下層Cu配線1が露出するまで層間絶縁膜3のエッチングを行い、ビアホール4を形成する。なお、ビアホール4を形成する際には、ドライエッチングと例えばフッ酸を用いたウェットエッチングを併用するようにしてもよい。
【0049】
次いで、スパッタ法または蒸着法により、全面にMoを厚さ約5nmになるように堆積し、続けてCoを厚さ約2.5nmになるように堆積する。そして、レジスト膜を用いたリフトオフ法により、図10に示すように、ビアホール4内に、接続層2としてのMo層と触媒金属5としてのCo層を形成する。なお、触媒金属5には、CoのほかFeやNi、またはこれらの元素を含んだ合金を用いてもよい。また、触媒金属5は、薄層であっても、微粒子であってもよい。
【0050】
このようにしてビアホール4内に接続層2および触媒金属5を形成した後、図11に示すように、その触媒金属5を利用して、ビアホール4内にカーボンナノチューブ6を成長させる。カーボンナノチューブ6の成長には、上記第1の実施の形態と同様、熱フィラメントCVD法やDCプラズマ熱フィラメントCVD法のほか、通常の熱CVD法を用いることができる。各CVD法によるカーボンナノチューブ6の成長条件は、例えば上記第1の実施の形態と同じにすることができる。
【0051】
このように、第2の実施の形態では、下層Cu配線1に通じるビアホール4内に接続層2および触媒金属5を形成してカーボンナノチューブ6を形成するようにした。このような方法および構成によっても、CVDの際の下層Cu配線1のCuの熱拡散を抑えて良好なカーボンナノチューブ6を形成することができるとともに、カーボンナノチューブ6と下層Cu配線1とを低抵抗で電気的に接続することができる。
【0052】
次に、第3の実施の形態について説明する。
図12および図13は第3の実施の形態の配線接続構造の形成方法の説明図であって、図12は第3の実施の形態の接続層および触媒金属形成工程の断面模式図、図13は第3の実施の形態のカーボンナノチューブ形成工程の断面模式図である。
【0053】
この第3の実施の形態の配線接続構造では、第2の実施の形態と同様、図12に示すように、はじめに、下地層(図示せず。)の上に形成された厚さ約100nmの下層Cu配線1上に、厚さ約350nmのSiO2を堆積して層間絶縁膜3を形成し、パターニング法を用いて下層Cu配線1に通じるビアホール4を形成する。
【0054】
次いで、スパッタ法または蒸着法により、全面にTaを厚さ約5nmになるように堆積し、続けてTiを厚さ約2.5nmになるように堆積する。そして、その上に更にCoを厚さ約2.5nmになるように堆積する。その後、レジスト膜を用いたリフトオフ法により、図12に示したように、ビアホール4内に、接続層2としてTa層2aとTi層2bの積層構造を形成し、Ti層2b上に触媒金属5としてCo層を形成する。なお、触媒金属5には、CoのほかFeやNi、またはこれらの元素を含んだ合金を用いてもよい。また、触媒金属5は、薄層であっても、微粒子であってもよい。
【0055】
このようにしてビアホール4内に接続層2および触媒金属5を形成した後、図13に示すように、その触媒金属5を利用して、ビアホール4内にカーボンナノチューブ6を成長させる。カーボンナノチューブ6の成長には、上記第1の実施の形態と同様、熱フィラメントCVD法やDCプラズマ熱フィラメントCVD法のほか、通常の熱CVD法を用いることができる。各CVD法によるカーボンナノチューブ6の成長条件は、例えば上記第1の実施の形態と同じにすることができる。
【0056】
このように、第3の実施の形態では、下層Cu配線1に通じるビアホール4内にTa/Ti積層構造を有する接続層2および触媒金属5を形成してカーボンナノチューブ6を形成するようにした。このような2層構造の接続層2では、下層Cu配線1側に形成されたTa層2aが主にCVDの際のCuの熱拡散を抑え、カーボンナノチューブ6側に形成されたTi層2bが主にカーボンナノチューブ6との間の低接触抵抗を実現している。それにより、良好なカーボンナノチューブ6を形成することができるとともに、カーボンナノチューブ6と下層Cu配線1とを低抵抗で電気的に接続することができる。
【0057】
なお、接続層2を、先に例示したTa/Pd積層構造、Ta/Mo積層構造とした場合にもこれと同様に形成することができ、また、同様の効果を得ることができる。
以上説明したように、カーボンナノチューブ6を用いた配線接続構造において、下層Cu配線1上に導電性を有する接続層2を介してカーボンナノチューブ6を形成する。これにより、下層Cu配線1とカーボンナノチューブ6との間の電気的な接続を確保しつつ、下層Cu配線1のCuの熱拡散を抑えて良好なカーボンナノチューブ6を形成することが可能になり、カーボンナノチューブ6を用いた接続信頼性の高い配線接続構造が実現される。
【0058】
なお、以上では炭素元素円筒型構造体がカーボンナノチューブであるとして説明したが、その他の炭素元素円筒型構造体、例えばカーボンファイバがほぼ筒状に形成されたもの等でも、上記した効果と同等の効果を得ることができる。さらに、そのような筒状のカーボンファイバがカーボンナノチューブと混在しているものであっても、同等の効果を得ることができる。また、このような炭素元素円筒型構造体に炭素元素を含有するその他の構造体が含まれていても同様である。
【0059】
(付記1) 配線に炭素元素円筒型構造体が電気的に接続された配線接続構造において、
前記配線上に、導電性を有する接続層を介して、前記炭素元素円筒型構造体が形成されていることを特徴とする配線接続構造。
【0060】
(付記2) 前記接続層は、前記配線の配線材料の拡散を抑制するとともに、前記炭素元素円筒型構造体と低接触抵抗で接続されることを特徴とする付記1記載の配線接続構造。
【0061】
(付記3) 前記接続層は、モリブデン層であることを特徴とする付記1記載の配線接続構造。
(付記4) 前記接続層は、モリブデンを含む層であることを特徴とする付記1記載の配線接続構造。
【0062】
(付記5) 前記接続層は、前記配線側に設けられ前記配線の配線材料の拡散を抑制する第1の層と、前記炭素元素円筒型構造体側に設けられ前記炭素元素円筒型構造体と低接触抵抗で接続される第2の層と、を有する積層構造であることを特徴とする付記1記載の配線接続構造。
【0063】
(付記6) 前記接続層は、前記配線側にタンタル層を設け前記炭素元素円筒型構造体側にチタン層を設けたタンタル/チタン積層構造であることを特徴とする付記1記載の配線接続構造。
【0064】
(付記7) 前記接続層は、前記配線側にタンタル層を設け前記炭素元素円筒型構造体側にパラジウム層を設けたタンタル/パラジウム積層構造であることを特徴とする付記1記載の配線接続構造。
【0065】
(付記8) 前記接続層は、前記配線側にタンタル層を設け前記炭素元素円筒型構造体側にモリブデン層を設けたタンタル/モリブデン積層構造であることを特徴とする付記1記載の配線接続構造。
【0066】
(付記9) 前記炭素元素円筒型構造体の内部に前記炭素元素円筒型構造体形成用の触媒金属が含まれていることを特徴とする付記1記載の配線接続構造。
(付記10) 前記炭素元素円筒型構造体は、カーボンナノチューブであることを特徴とする付記1記載の配線接続構造。
【0067】
(付記11) 前記触媒金属は、鉄、ニッケル、コバルトの中から選択される1種または2種以上の元素を含むことを特徴とする付記9記載の配線接続構造。
(付記12) 配線に炭素元素円筒型構造体が電気的に接続された配線接続構造の形成方法において、
前記配線上に導電性を有する接続層を形成し、前記接続層上に前記炭素元素円筒型構造体を形成することを特徴とする配線接続構造の形成方法。
【0068】
(付記13) 前記接続層の形成後に、前記接続層に通じるビアホールを形成し、
前記ビアホール底面に露出する前記接続層上に前記炭素元素円筒型構造体を形成することを特徴とする付記12記載の配線接続構造の形成方法。
【0069】
(付記14) 前記配線に通じるビアホールを形成し、
前記ビアホールの形成後に、前記ビアホール底面に露出する前記配線上に前記接続層を形成し、前記接続層上に前記炭素元素円筒型構造体を形成することを特徴とする付記12記載の配線接続構造の形成方法。
【0070】
(付記15) 前記接続層の形成後に、
前記接続層上に触媒金属を堆積し、前記触媒金属を用いて前記接続層上に前記炭素元素円筒型構造体を形成することを特徴とする付記12記載の配線接続構造の形成方法。
【0071】
(付記16) 前記炭素元素円筒型構造体は、化学気相成長法を用いて前記接続層上に形成することを特徴とする付記12記載の配線接続構造の形成方法。
(付記17) 化学気相成長法を用いて前記接続層上に前記炭素元素円筒型構造体を形成する際には、一定の方向に電界を印加しながら炭素を前記接続層上に成長させることを特徴とする付記16記載の配線接続構造の形成方法。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】カーボンナノチューブを用いた配線接続構造の一例の断面模式図である。
【図2】Cuと各種金属とを積層した試料のシート抵抗の温度依存性を示す図である。
【図3】シート抵抗測定に用いた試料の断面模式図である。
【図4】カーボンナノチューブと各種金属との間の接触抵抗の温度依存性を示す図である。
【図5】接触抵抗測定に用いた試料の断面模式図である。
【図6】第1の実施の形態の接続層およびビアホール形成工程の断面模式図である。
【図7】第1の実施の形態の触媒金属形成工程の断面模式図である。
【図8】第1の実施の形態のカーボンナノチューブ形成工程の断面模式図である。
【図9】第2の実施の形態のビアホール形成工程の断面模式図である。
【図10】第2の実施の形態の接続層および触媒金属形成工程の断面模式図である。
【図11】第2の実施の形態のカーボンナノチューブ形成工程の断面模式図である。
【図12】第3の実施の形態の接続層および触媒金属形成工程の断面模式図である。
【図13】第3の実施の形態のカーボンナノチューブ形成工程の断面模式図である。
【図14】カーボンナノチューブを用いた従来の配線接続構造の断面模式図である。
【符号の説明】
【0073】
1 下層Cu配線
2 接続層
2a Ta層
2b Ti層
3 層間絶縁膜
4 ビアホール
5 触媒金属
6,23 カーボンナノチューブ
10,20 試料
11,21 Si基板
12,22 SiO2膜
13 Cu層
14,24 金属層
【技術分野】
【0001】
本発明は配線接続構造およびその形成方法に関し、特に半導体装置等に用いられ、配線間を電気的に接続するための配線接続構造およびその形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置やプリント配線基板等には、異なる層や面に存在する配線間を電気的に接続するため、層間絶縁膜や基板等にビアホールを形成し、そこに導電性材料を形成したビア構造が広く採用されている。近年、配線材料には専ら銅(Cu)が用いられており、そのようなCu配線に通じるよう所定位置に形成したビアホール内にCu等の導電性金属材料を充填等することにより、ビアを形成するのが一般的である。
【0003】
近年では、このようなビアに、Cuのような金属材料のほか、いわゆるカーボンナノチューブや筒状になったカーボンファイバ等に代表されるような炭素の筒状構造体(「炭素元素円筒型構造体」という。)を含んだ炭素材料を用いる検討がされている。特にカーボンナノチューブは、化学的安定性に優れ、また、特異な物理的・電気的性質を有する等、様々な特性を有しており、半導体装置等の形成材料として注目され、例えば、その太さや長さの制御のほか、形成位置制御やカイラリティ制御等、現在も様々な検討が続けられている。
【0004】
一例として、カーボンナノチューブを配線間の接続に用いた場合の配線接続構造について述べる(例えば特許文献1参照)。図14はカーボンナノチューブを用いた従来の配線接続構造の断面模式図である。
【0005】
図14に示すような従来の配線接続構造では、下層側のCu配線(「下層Cu配線」という。)100上に形成された層間絶縁膜101にこれを貫通するビアホール102が形成されており、このビアホール102内には、下層Cu配線100に対して垂直方向に延びるカーボンナノチューブ103の集合体が形成されている。カーボンナノチューブ103は、例えば、化学気相成長(Chemical Vapor Deposition,CVD)法を用い、ビアホール102内の下層Cu配線100上に堆積したコバルト(Co)等の触媒金属104を利用して炭素を垂直配向成長させることにより形成することができる。そして、このようにして形成されたカーボンナノチューブ103の上端側に、図示しないCu配線(「上層Cu配線」という。)等の導電層が形成され、カーボンナノチューブ103によって下層Cu配線100と上層の導電層とが電気的に接続される。
【0006】
また、従来は、活性領域を有する基板上に形成された誘電体にその活性領域に通じるビアホールを形成し、その活性領域上にタングステン(W)等の薄層を介してカーボンナノチューブを垂直配向成長させ、さらに、そのカーボンナノチューブの上端側に導電層を形成することにより、活性領域と導電層とをカーボンナノチューブで電気的に接続する構造等も提案されている(例えば特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2002−329723号公報
【特許文献2】特開2004−6864号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記のように炭素をCVD法によって垂直配向成長させてカーボンナノチューブやカーボンファイバ等の炭素元素円筒型構造体を形成するときには、そのCVDの際に被処理体はカーボンナノチューブ等の成長に必要な400℃〜900℃程度の温度に加熱される。そのため、CVD前にCu配線上にCo等の触媒金属を堆積している場合には、その熱によってCuと触媒金属との相互熱拡散が引き起こされ、それによって触媒金属の活性が低下し、カーボンナノチューブ等の成長が阻害されてしまうといった問題点があった。その結果、例えば、カーボンナノチューブ等を目的の長さや太さに形成することができなかったり、カーボンナノチューブ等をビアホール内に目的の密度で形成することができなかったりして、半導体装置等の要求特性を十分に満足させることができない場合があった。
【0008】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、配線上に良好な炭素元素円筒型構造体が形成された配線接続構造を提供することを目的とする。
さらに、本発明は、炭素元素円筒型構造体の形成時に触媒金属の活性を高く維持して配線上に良好な炭素元素円筒型構造体を形成することのできる配線接続構造の形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では上記課題を解決するために、図1に例示する構成で実現可能な配線接続構造が提供される。本発明の配線接続構造は、配線に炭素元素円筒型構造体が電気的に接続された配線接続構造において、前記配線上に、導電性を有する接続層を介して、前記炭素元素円筒型構造体が形成されていることを特徴とする。
【0010】
図1に例示するような配線接続構造によれば、下層Cu配線1と炭素元素円筒型構造体であるビアホール4内のカーボンナノチューブ6との間に導電性の接続層2が設けられている。これにより、下層Cu配線1とカーボンナノチューブ6とを直接接触させずに接続層2を介して電気的な接続を確保する。カーボンナノチューブ6が形成される際には、この接続層2が下層Cu配線1を覆っているため、下層Cu配線1のCuの熱拡散が抑えられる。
【0011】
また、本発明では、配線に炭素元素円筒型構造体が電気的に接続された配線接続構造の形成方法において、前記配線上に導電性を有する接続層を形成し、前記接続層上に前記炭素元素円筒型構造体を形成することを特徴とする配線接続構造の形成方法が提供される。
【0012】
このような配線接続構造の形成方法によれば、配線上に導電性の接続層を形成し、その上に炭素元素円筒型構造体を形成するので、配線と炭素元素円筒型構造体との間の電気的な接続が確保される。さらに、接続層を形成することにより、例えば、炭素元素円筒型構造体の形成時に熱が加えられても、接続層によって配線材料の熱拡散が抑えられるようになる。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、配線と炭素元素円筒型構造体との間に導電性の接続層を設けるようにした。これにより、炭素元素円筒型構造体の形成時に熱が加えられたときの配線材料の熱拡散が抑制され、それによって引き起こされることのある弊害、すなわち、触媒金属の活性が低下して良好な炭素元素円筒型構造体を形成することができないという弊害を回避することができるようになる。その結果、炭素元素円筒型構造体で接続される配線間の接続信頼性を高めることができ、製品の高品質化を図ることができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を、炭素元素円筒型構造体をカーボンナノチューブとして、図面を参照して詳細に説明する。
図1はカーボンナノチューブを用いた配線接続構造の一例の断面模式図である。
【0015】
図1に示す配線接続構造では、下層Cu配線1上に導電性を有する接続層2が形成され、この接続層2上にSiO2等の層間絶縁膜3が形成されている。層間絶縁膜3には、これを貫通するビアホール4が形成されており、このビアホール4内には、Co等の触媒金属5を内部に含み下層Cu配線1に対して垂直方向に延びる複数のカーボンナノチューブ6が形成されている。カーボンナノチューブ6の上端側には、図示しない上層Cu配線等の導電層が形成され、それにより、下層Cu配線1と上層の導電層とがカーボンナノチューブ6を介して電気的に接続される。なお、ここでは図示を省略するが、通常は下層Cu配線1の下層にはSiO2等の絶縁性の下地層が設けられる。この下地層はまた、半導体基板や別の配線層の上に設けられる。
【0016】
このような配線接続構造は、例えば次のような手順で形成される。まず、所定の厚さで下地層の上に形成された下層Cu配線1上に接続層2を形成し、その上に、層間絶縁膜3を形成する。次いで、層間絶縁膜3の所定領域をエッチングして接続層2に達するビアホール4を形成した後、ビアホール4内に露出した接続層2上に触媒金属5を堆積する。そして、CVD法を用い、ビアホール4内に触媒金属5を利用してカーボンナノチューブ6を成長させる。
【0017】
このように下層Cu配線1とカーボンナノチューブ6との間に導電性の接続層2を設けることにより、カーボンナノチューブ6のCVDの際に、その成長に必要な一定の熱が加えられても、下層Cu配線1のCuの熱拡散を抑制して触媒金属5の活性を維持することが可能になる。それにより、下層Cu配線1とカーボンナノチューブ6との間の電気的な接続を確保しつつ、ビアホール4内に良好なカーボンナノチューブ6を成長させることができるようになる。
【0018】
したがって、接続層2には、少なくともカーボンナノチューブ6の成長温度でCuの熱拡散を抑制し、かつ、カーボンナノチューブ6との間の接触抵抗が低い、という2つの特性を十分に備えていることが望まれる。ここで、接続層2の材料選定に当たり、これら2つの特性に関し検討した結果について説明する。
【0019】
まず、Cuの熱拡散抑制について検討した結果を説明する。
図2はCuと各種金属とを積層した試料のシート抵抗の温度依存性を示す図である。この図2において、横軸は試料の加熱温度(℃)を表し、縦軸はシート抵抗の比を表している。また、図3はシート抵抗測定に用いた試料の断面模式図である。
【0020】
ここでは図3に示すように、シート抵抗測定用の試料10として、Si基板11上に下地層となるSiO2膜12を形成し、その上に厚さ約300nmのCu層13と厚さ約5nmの各種金属層14とを積層形成したものを用いている。Cu層13が上記の下層Cu配線1に、また、金属層14が上記の接続層2に、それぞれ対応している。金属層14は、モリブデン(Mo)層、タンタル(Ta)層、チタン(Ti)層、パラジウム(Pd)層のいずれかとした。このような試料10を600℃程度までの適当な温度で加熱し、各温度での加熱後、室温まで冷却して、Cu層13と金属層14との積層体のシート抵抗を測定した。なお、各温度での加熱時間は約10分とした。
【0021】
試料10において、Cuの熱拡散が抑えられている場合には、シート抵抗の上昇が抑えられるようになる。測定結果は、図2に示すように、金属層14がPd層の場合のシート抵抗が加熱温度の上昇に伴って大幅に上昇してしまうのに対し、Mo層、Ta層およびTi層の場合のシート抵抗が加熱温度の上昇によっても比較的低く維持された。特にMo層の場合のシート抵抗は、全測定温度範囲内で低い水準を示した。
【0022】
この測定結果より、Cuの熱拡散抑制という点では、Mo,Ta,Ti,Pdのいずれかを単独で用いる場合には、上記の接続層2には、PdよりもMo,Ta,Tiを用いる方が好ましく、また、Mo,Taを用いる方がより好ましいと言える。
【0023】
続いて、カーボンナノチューブとの間の接触抵抗について検討した結果を説明する。
図4はカーボンナノチューブと各種金属との間の接触抵抗の温度依存性を示す図である。この図4において、横軸は試料の加熱温度(℃)を表し、縦軸は2端子間の抵抗(Ω)を表している。また、図5は接触抵抗測定に用いた試料の断面模式図である。
【0024】
ここでは図5に示すように、接触抵抗測定用の試料20として、Si基板21上に下地層であるSiO2膜22を形成し、その上にSiO2膜22平面方向に延びるカーボンナノチューブ23を形成し、このカーボンナノチューブ23の両端部に金属層24を形成したものを用いている。カーボンナノチューブ23が上記の縦方向に延びるカーボンナノチューブ6に、また、金属層24が上記の接続層2に、それぞれ対応している。金属層24は、Mo層、Ta層、Ti層、Pd層のいずれかとした。このような試料20を600℃程度までの適当な温度で加熱し、各温度での加熱後、室温まで冷却して、カーボンナノチューブ23両端部の金属層24間における抵抗を測定した。なお、各温度での加熱時間は約10分とした。
【0025】
測定結果は、図4に示すように、金属層24がTa層の場合には抵抗が高いが、その他の金属を金属層24に用いた場合には、Ti層、Pd層、Mo層の順で低い抵抗が得られた。特に金属層24がPd層およびMo層の場合の抵抗は、全測定温度範囲内で低い水準を示した。
【0026】
この測定結果より、低接触抵抗という点では、Mo,Ta,Ti,Pdのいずれかを単独で用いる場合には、上記の接続層2には、TaよりもMo,Ti,Pdを用いる方が好ましく、また、Mo,Pdを用いる方がより好ましいということができる。
【0027】
以上、上記の接続層2に望まれるCuの熱拡散抑制と低接触抵抗という2つの特性に関して検討した結果について説明したが、この検討結果より、両特性を共に満足する金属はMoである。したがって、上記の配線接続構造における接続層2を単一種の金属によって構成する場合には、接続層2をMo層とすることにより、カーボンナノチューブ6のCVDの際に加えられる熱によっても下層Cu配線1のCuの熱拡散を抑制して触媒金属5の活性を高く維持することができ、下層Cu配線1とカーボンナノチューブ6との間の低抵抗接続を確保しつつ、ビアホール4内にカーボンナノチューブ6を良好に成長させることができる。
【0028】
また、接続層2は、単一種の金属で構成するのみでなく、複数種の金属を用いて構成することもできる。例えば、単独でも目的の特性を満足することのできるMoを、他の金属と合金化して接続層2に用いてもよい。Moと合金化する金属の例としてはTiやCoを挙げることができる。Tiは、上記の図2および図4に示したように、単独でもある程度のCuの熱拡散抑制と低接触抵抗を実現しており、MoTi合金としても両特性を共に満足させることが可能である。また、接続層2をMoCo合金とした場合には、これに含有されているCoをカーボンナノチューブ6成長時の触媒として機能させることが可能になる。
【0029】
さらに、接続層2は、2種の金属を積層させた構造としてもよい。その場合、接続層2は、下層Cu配線1側に、第1の層として、主にCuの熱拡散を抑制する金属層を設け、カーボンナノチューブ6側に、第2の層として、主に低接触抵抗を示す金属層を設けた2層構造とする。このような積層構造によっても、Cuの熱拡散抑制と低接触抵抗という両特性を共に満足させることができる。
【0030】
このような積層構造の例としては、下層Cu配線1側にTa層を設けてカーボンナノチューブ6側にTi層を設けたTa/Ti積層構造のほか、下層Cu配線1側にTa層を設けてカーボンナノチューブ6側にPd層を設けたTa/Pd積層構造や、下層Cu配線1側にTa層を設けてカーボンナノチューブ6側にMo層を設けたTa/Mo積層構造等を挙げることができる。積層金属の組合せは、上記の図2および図4の結果を用いて適宜選択することが可能である。このほか、積層構造を構成する各金属層にはその合金を用いるようにしても構わない。
【0031】
また、接続層2は、必要に応じて、3層以上の積層構造とすることも可能である。例えば、下層Cu配線1側に設ける金属層とカーボンナノチューブ6側に設ける金属層との接続強度を確保する目的で、両金属層の間に、それを補う別の金属層を挿入するような構成としてもよい。なお、この場合にも、それぞれの金属層にはその合金を用いることが可能である。
【0032】
なお、以上、配線接続構造の構成例について説明したが、この配線接続構造において、接続層2は、これに用いる金属をスパッタ法や蒸着法を用いて形成することができる。また、接続層2の厚さは、1nm〜20nm程度、好ましくは2nm〜10nm程度とする。接続層2の厚さが1nmを下回る場合には、Cuの熱拡散抑制効果を十分に得ることが難しくなり、また、20nmを上回る場合には、下層Cu配線1とカーボンナノチューブ6との間の導通抵抗が高くなってしまうためである。
【0033】
また、上記の配線接続構造における触媒金属5は、これに用いる金属をスパッタ法や蒸着法を用いて形成することができ、CVD法を用いたカーボンナノチューブ6成長のためには、この触媒金属5は、最終的に層状、粒子状のいずれの形態をとっていても構わない。
【0034】
また、上記の配線接続構造におけるカーボンナノチューブ6は、単層構造、多層構造のいずれのものでもよく、1つのビアホール4内に単層構造と多層構造の両方が混在していても構わない。また、このカーボンナノチューブ6は、その1本1本が独立したものであっても、あるいは複数がバンドル状になったものであっても構わない。このほか、カーボンナノチューブ6は、ピーポッド構造を有しているものであってもよい。
【0035】
CVD法を用いてカーボンナノチューブ6を成長させる場合、成長は、プラズマCVD法によっても、あるいは熱CVD法によっても行うことができる。なお、プラズマCVD法を用いた場合には、カーボンナノチューブ6の成長は、触媒金属5がカーボンナノチューブ6内の先端部分(上層Cu配線側の端部)に残る、いわゆる先端成長で進み、熱CVD法を用いた場合には、触媒金属5がカーボンナノチューブ6内の根元部分(下層Cu配線1側の端部)に残る、いわゆる根元成長で進む。
【0036】
以下、カーボンナノチューブを用いた配線接続構造およびその形成方法について、具体例を挙げて説明する。
まず、第1の実施の形態について説明する。
【0037】
図6から図8は配線接続構造の形成方法の説明図であって、図6は第1の実施の形態の接続層およびビアホール形成工程の断面模式図、図7は第1の実施の形態の触媒金属形成工程の断面模式図、図8は第1の実施の形態のカーボンナノチューブ形成工程の断面模式図である。
【0038】
この第1の実施の形態の配線接続構造では、図6に示すように、はじめに、適当な絶縁性の下地層(図示せず。)の上に形成された厚さ約100nmの下層Cu配線1上に、スパッタ法または蒸着法により、Moを厚さ約5nmになるように堆積して接続層2を形成し、続いて、層間絶縁膜3として厚さ約350nmのSiO2を堆積する。そして、この層間絶縁膜3上に、ビアの形成予定領域にパターニング法を用いてレジスト膜の開口を形成し、フッ素を用いたドライエッチングにより接続層2が露出するまで層間絶縁膜3のエッチングを行い、ビアホール4を形成する。
【0039】
なお、ビアホール4を形成する際には、ドライエッチングと例えばフッ酸を用いたウェットエッチングを併用するようにしてもよい。それにより、接続層2に与えるダメージを抑えてエッチングすることが可能になる。
【0040】
次いで、図7に示すように、ビアホール4内に触媒金属5としてCo層を堆積する。その際には、まず、スパッタ法または蒸着法により、Coを全面に厚さ約2.5nmになるように堆積する。そして、レジスト膜を用いたリフトオフ法により、ビアホール4内にCo層を形成する。
【0041】
なお、触媒金属5としてここではCoを用いたが、Coに代えて鉄(Fe)やニッケル(Ni)を用いてもよく、これらの元素を含んだ合金を用いてもよい。また、ここでは触媒金属5を薄層としたが、微粒子であってもよい。
【0042】
このようにして接続層2上に触媒金属5を形成した後、図8に示すように、その触媒金属5を利用して、ビアホール4内にカーボンナノチューブ6を成長させる。
カーボンナノチューブ6の成長には、例えば熱フィラメントによりガス解離を行う熱フィラメントCVD法を用いることができる。この場合、例えば、反応ガスとしてアセチレン(C2H2)と水素(H2)の混合ガス(C2H2/H2=80sccm/20sccm)を真空チャンバ内に導入し、チャンバ内圧力を約1000Pa、被処理体温度を約600℃、熱フィラメント温度を約1800℃とする。なお、「sccm」は、0℃,101.3kPaでの流量(mL/min)を表す。
【0043】
さらに、カーボンナノチューブ6の成長には、熱フィラメントを直流(DC)プラズマと組み合わせたDCプラズマ熱フィラメントCVD法を用いることもできる。この場合、例えば、反応ガスとしてC2H2とH2の混合ガス(C2H2/H2=80sccm/20sccm)を真空チャンバ内に導入し、チャンバ内圧力を約1000Pa、被処理体温度を約600℃、熱フィラメント温度を約1800℃とする。
【0044】
また、カーボンナノチューブ6の成長には、従来広く一般に行われている通常の熱CVD法を用いることも可能である。この場合、例えば、反応ガスとしてC2H2とH2の混合ガス(C2H2/H2=80sccm/20sccm)を真空チャンバ内に導入し、チャンバ内圧力を約200Pa、被処理体温度を約900℃とする。ただし、被処理体温度が上記の熱フィラメントを利用したCVD法の場合に比べて高温になるので、接続層2の材料選定に留意する必要がある。
【0045】
カーボンナノチューブ6を接続層2上に垂直配向成長させるためには、CVD時に、接地したチャンバに対して被処理体に例えばマイナス400V程度のDC電界を印加する。このようにDC電界を印加することにより、垂直方向に配向させてカーボンナノチューブ6を成長させることができる。
【0046】
このように、第1の実施の形態では、Moで接続層2を形成し、この上に触媒金属5およびカーボンナノチューブ6を形成するようにした。これにより、CVDの際に下層Cu配線1のCuの熱拡散が抑えられ、良好なカーボンナノチューブ6を形成することができるとともに、カーボンナノチューブ6と下層Cu配線1とを低抵抗で電気的に接続することができる。
【0047】
次に、第2の実施の形態について説明する。
図9から図11は第2の実施の形態の配線接続構造の形成方法の説明図であって、図9は第2の実施の形態のビアホール形成工程の断面模式図、図10は第2の実施の形態の接続層および触媒金属形成工程の断面模式図、図11は第2の実施の形態のカーボンナノチューブ形成工程の断面模式図である。
【0048】
この第2の実施の形態の配線接続構造では、図9に示すように、はじめに、適当な下地層(図示せず。)の上に形成された厚さ約100nmの下層Cu配線1上に、厚さ約350nmのSiO2を堆積して層間絶縁膜3を形成する。そして、この層間絶縁膜3上に、ビアの形成予定領域にパターニング法を用いてレジスト膜の開口を形成し、フッ素を用いたドライエッチングにより下層Cu配線1が露出するまで層間絶縁膜3のエッチングを行い、ビアホール4を形成する。なお、ビアホール4を形成する際には、ドライエッチングと例えばフッ酸を用いたウェットエッチングを併用するようにしてもよい。
【0049】
次いで、スパッタ法または蒸着法により、全面にMoを厚さ約5nmになるように堆積し、続けてCoを厚さ約2.5nmになるように堆積する。そして、レジスト膜を用いたリフトオフ法により、図10に示すように、ビアホール4内に、接続層2としてのMo層と触媒金属5としてのCo層を形成する。なお、触媒金属5には、CoのほかFeやNi、またはこれらの元素を含んだ合金を用いてもよい。また、触媒金属5は、薄層であっても、微粒子であってもよい。
【0050】
このようにしてビアホール4内に接続層2および触媒金属5を形成した後、図11に示すように、その触媒金属5を利用して、ビアホール4内にカーボンナノチューブ6を成長させる。カーボンナノチューブ6の成長には、上記第1の実施の形態と同様、熱フィラメントCVD法やDCプラズマ熱フィラメントCVD法のほか、通常の熱CVD法を用いることができる。各CVD法によるカーボンナノチューブ6の成長条件は、例えば上記第1の実施の形態と同じにすることができる。
【0051】
このように、第2の実施の形態では、下層Cu配線1に通じるビアホール4内に接続層2および触媒金属5を形成してカーボンナノチューブ6を形成するようにした。このような方法および構成によっても、CVDの際の下層Cu配線1のCuの熱拡散を抑えて良好なカーボンナノチューブ6を形成することができるとともに、カーボンナノチューブ6と下層Cu配線1とを低抵抗で電気的に接続することができる。
【0052】
次に、第3の実施の形態について説明する。
図12および図13は第3の実施の形態の配線接続構造の形成方法の説明図であって、図12は第3の実施の形態の接続層および触媒金属形成工程の断面模式図、図13は第3の実施の形態のカーボンナノチューブ形成工程の断面模式図である。
【0053】
この第3の実施の形態の配線接続構造では、第2の実施の形態と同様、図12に示すように、はじめに、下地層(図示せず。)の上に形成された厚さ約100nmの下層Cu配線1上に、厚さ約350nmのSiO2を堆積して層間絶縁膜3を形成し、パターニング法を用いて下層Cu配線1に通じるビアホール4を形成する。
【0054】
次いで、スパッタ法または蒸着法により、全面にTaを厚さ約5nmになるように堆積し、続けてTiを厚さ約2.5nmになるように堆積する。そして、その上に更にCoを厚さ約2.5nmになるように堆積する。その後、レジスト膜を用いたリフトオフ法により、図12に示したように、ビアホール4内に、接続層2としてTa層2aとTi層2bの積層構造を形成し、Ti層2b上に触媒金属5としてCo層を形成する。なお、触媒金属5には、CoのほかFeやNi、またはこれらの元素を含んだ合金を用いてもよい。また、触媒金属5は、薄層であっても、微粒子であってもよい。
【0055】
このようにしてビアホール4内に接続層2および触媒金属5を形成した後、図13に示すように、その触媒金属5を利用して、ビアホール4内にカーボンナノチューブ6を成長させる。カーボンナノチューブ6の成長には、上記第1の実施の形態と同様、熱フィラメントCVD法やDCプラズマ熱フィラメントCVD法のほか、通常の熱CVD法を用いることができる。各CVD法によるカーボンナノチューブ6の成長条件は、例えば上記第1の実施の形態と同じにすることができる。
【0056】
このように、第3の実施の形態では、下層Cu配線1に通じるビアホール4内にTa/Ti積層構造を有する接続層2および触媒金属5を形成してカーボンナノチューブ6を形成するようにした。このような2層構造の接続層2では、下層Cu配線1側に形成されたTa層2aが主にCVDの際のCuの熱拡散を抑え、カーボンナノチューブ6側に形成されたTi層2bが主にカーボンナノチューブ6との間の低接触抵抗を実現している。それにより、良好なカーボンナノチューブ6を形成することができるとともに、カーボンナノチューブ6と下層Cu配線1とを低抵抗で電気的に接続することができる。
【0057】
なお、接続層2を、先に例示したTa/Pd積層構造、Ta/Mo積層構造とした場合にもこれと同様に形成することができ、また、同様の効果を得ることができる。
以上説明したように、カーボンナノチューブ6を用いた配線接続構造において、下層Cu配線1上に導電性を有する接続層2を介してカーボンナノチューブ6を形成する。これにより、下層Cu配線1とカーボンナノチューブ6との間の電気的な接続を確保しつつ、下層Cu配線1のCuの熱拡散を抑えて良好なカーボンナノチューブ6を形成することが可能になり、カーボンナノチューブ6を用いた接続信頼性の高い配線接続構造が実現される。
【0058】
なお、以上では炭素元素円筒型構造体がカーボンナノチューブであるとして説明したが、その他の炭素元素円筒型構造体、例えばカーボンファイバがほぼ筒状に形成されたもの等でも、上記した効果と同等の効果を得ることができる。さらに、そのような筒状のカーボンファイバがカーボンナノチューブと混在しているものであっても、同等の効果を得ることができる。また、このような炭素元素円筒型構造体に炭素元素を含有するその他の構造体が含まれていても同様である。
【0059】
(付記1) 配線に炭素元素円筒型構造体が電気的に接続された配線接続構造において、
前記配線上に、導電性を有する接続層を介して、前記炭素元素円筒型構造体が形成されていることを特徴とする配線接続構造。
【0060】
(付記2) 前記接続層は、前記配線の配線材料の拡散を抑制するとともに、前記炭素元素円筒型構造体と低接触抵抗で接続されることを特徴とする付記1記載の配線接続構造。
【0061】
(付記3) 前記接続層は、モリブデン層であることを特徴とする付記1記載の配線接続構造。
(付記4) 前記接続層は、モリブデンを含む層であることを特徴とする付記1記載の配線接続構造。
【0062】
(付記5) 前記接続層は、前記配線側に設けられ前記配線の配線材料の拡散を抑制する第1の層と、前記炭素元素円筒型構造体側に設けられ前記炭素元素円筒型構造体と低接触抵抗で接続される第2の層と、を有する積層構造であることを特徴とする付記1記載の配線接続構造。
【0063】
(付記6) 前記接続層は、前記配線側にタンタル層を設け前記炭素元素円筒型構造体側にチタン層を設けたタンタル/チタン積層構造であることを特徴とする付記1記載の配線接続構造。
【0064】
(付記7) 前記接続層は、前記配線側にタンタル層を設け前記炭素元素円筒型構造体側にパラジウム層を設けたタンタル/パラジウム積層構造であることを特徴とする付記1記載の配線接続構造。
【0065】
(付記8) 前記接続層は、前記配線側にタンタル層を設け前記炭素元素円筒型構造体側にモリブデン層を設けたタンタル/モリブデン積層構造であることを特徴とする付記1記載の配線接続構造。
【0066】
(付記9) 前記炭素元素円筒型構造体の内部に前記炭素元素円筒型構造体形成用の触媒金属が含まれていることを特徴とする付記1記載の配線接続構造。
(付記10) 前記炭素元素円筒型構造体は、カーボンナノチューブであることを特徴とする付記1記載の配線接続構造。
【0067】
(付記11) 前記触媒金属は、鉄、ニッケル、コバルトの中から選択される1種または2種以上の元素を含むことを特徴とする付記9記載の配線接続構造。
(付記12) 配線に炭素元素円筒型構造体が電気的に接続された配線接続構造の形成方法において、
前記配線上に導電性を有する接続層を形成し、前記接続層上に前記炭素元素円筒型構造体を形成することを特徴とする配線接続構造の形成方法。
【0068】
(付記13) 前記接続層の形成後に、前記接続層に通じるビアホールを形成し、
前記ビアホール底面に露出する前記接続層上に前記炭素元素円筒型構造体を形成することを特徴とする付記12記載の配線接続構造の形成方法。
【0069】
(付記14) 前記配線に通じるビアホールを形成し、
前記ビアホールの形成後に、前記ビアホール底面に露出する前記配線上に前記接続層を形成し、前記接続層上に前記炭素元素円筒型構造体を形成することを特徴とする付記12記載の配線接続構造の形成方法。
【0070】
(付記15) 前記接続層の形成後に、
前記接続層上に触媒金属を堆積し、前記触媒金属を用いて前記接続層上に前記炭素元素円筒型構造体を形成することを特徴とする付記12記載の配線接続構造の形成方法。
【0071】
(付記16) 前記炭素元素円筒型構造体は、化学気相成長法を用いて前記接続層上に形成することを特徴とする付記12記載の配線接続構造の形成方法。
(付記17) 化学気相成長法を用いて前記接続層上に前記炭素元素円筒型構造体を形成する際には、一定の方向に電界を印加しながら炭素を前記接続層上に成長させることを特徴とする付記16記載の配線接続構造の形成方法。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】カーボンナノチューブを用いた配線接続構造の一例の断面模式図である。
【図2】Cuと各種金属とを積層した試料のシート抵抗の温度依存性を示す図である。
【図3】シート抵抗測定に用いた試料の断面模式図である。
【図4】カーボンナノチューブと各種金属との間の接触抵抗の温度依存性を示す図である。
【図5】接触抵抗測定に用いた試料の断面模式図である。
【図6】第1の実施の形態の接続層およびビアホール形成工程の断面模式図である。
【図7】第1の実施の形態の触媒金属形成工程の断面模式図である。
【図8】第1の実施の形態のカーボンナノチューブ形成工程の断面模式図である。
【図9】第2の実施の形態のビアホール形成工程の断面模式図である。
【図10】第2の実施の形態の接続層および触媒金属形成工程の断面模式図である。
【図11】第2の実施の形態のカーボンナノチューブ形成工程の断面模式図である。
【図12】第3の実施の形態の接続層および触媒金属形成工程の断面模式図である。
【図13】第3の実施の形態のカーボンナノチューブ形成工程の断面模式図である。
【図14】カーボンナノチューブを用いた従来の配線接続構造の断面模式図である。
【符号の説明】
【0073】
1 下層Cu配線
2 接続層
2a Ta層
2b Ti層
3 層間絶縁膜
4 ビアホール
5 触媒金属
6,23 カーボンナノチューブ
10,20 試料
11,21 Si基板
12,22 SiO2膜
13 Cu層
14,24 金属層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線に炭素元素円筒型構造体が電気的に接続された配線接続構造において、
前記配線上に、導電性を有する接続層を介して、前記炭素元素円筒型構造体が形成されていることを特徴とする配線接続構造。
【請求項2】
前記接続層は、前記配線の配線材料の拡散を抑制するとともに、前記炭素元素円筒型構造体と低接触抵抗で接続されることを特徴とする請求項1記載の配線接続構造。
【請求項3】
前記接続層は、モリブデンを含む層であることを特徴とする請求項1記載の配線接続構造。
【請求項4】
前記接続層は、前記配線側に設けられ前記配線の配線材料の拡散を抑制する第1の層と、前記炭素元素円筒型構造体側に設けられ前記炭素元素円筒型構造体と低接触抵抗で接続される第2の層と、を有する積層構造であることを特徴とする請求項1記載の配線接続構造。
【請求項5】
前記接続層は、前記配線側にタンタル層を設け前記炭素元素円筒型構造体側にチタン層を設けたタンタル/チタン積層構造であることを特徴とする請求項1記載の配線接続構造。
【請求項6】
前記接続層は、前記配線側にタンタル層を設け前記炭素元素円筒型構造体側にパラジウム層を設けたタンタル/パラジウム積層構造であることを特徴とする請求項1記載の配線接続構造。
【請求項7】
前記接続層は、前記配線側にタンタル層を設け前記炭素元素円筒型構造体側にモリブデン層を設けたタンタル/モリブデン積層構造であることを特徴とする請求項1記載の配線接続構造。
【請求項8】
配線に炭素元素円筒型構造体が電気的に接続された配線接続構造の形成方法において、
前記配線上に導電性を有する接続層を形成し、前記接続層上に前記炭素元素円筒型構造体を形成することを特徴とする配線接続構造の形成方法。
【請求項9】
前記接続層の形成後に、前記接続層に通じるビアホールを形成し、
前記ビアホール底面に露出する前記接続層上に前記炭素元素円筒型構造体を形成することを特徴とする請求項8記載の配線接続構造の形成方法。
【請求項10】
前記配線に通じるビアホールを形成し、
前記ビアホールの形成後に、前記ビアホール底面に露出する前記配線上に前記接続層を形成し、前記接続層上に前記炭素元素円筒型構造体を形成することを特徴とする請求項8記載の配線接続構造の形成方法。
【請求項1】
配線に炭素元素円筒型構造体が電気的に接続された配線接続構造において、
前記配線上に、導電性を有する接続層を介して、前記炭素元素円筒型構造体が形成されていることを特徴とする配線接続構造。
【請求項2】
前記接続層は、前記配線の配線材料の拡散を抑制するとともに、前記炭素元素円筒型構造体と低接触抵抗で接続されることを特徴とする請求項1記載の配線接続構造。
【請求項3】
前記接続層は、モリブデンを含む層であることを特徴とする請求項1記載の配線接続構造。
【請求項4】
前記接続層は、前記配線側に設けられ前記配線の配線材料の拡散を抑制する第1の層と、前記炭素元素円筒型構造体側に設けられ前記炭素元素円筒型構造体と低接触抵抗で接続される第2の層と、を有する積層構造であることを特徴とする請求項1記載の配線接続構造。
【請求項5】
前記接続層は、前記配線側にタンタル層を設け前記炭素元素円筒型構造体側にチタン層を設けたタンタル/チタン積層構造であることを特徴とする請求項1記載の配線接続構造。
【請求項6】
前記接続層は、前記配線側にタンタル層を設け前記炭素元素円筒型構造体側にパラジウム層を設けたタンタル/パラジウム積層構造であることを特徴とする請求項1記載の配線接続構造。
【請求項7】
前記接続層は、前記配線側にタンタル層を設け前記炭素元素円筒型構造体側にモリブデン層を設けたタンタル/モリブデン積層構造であることを特徴とする請求項1記載の配線接続構造。
【請求項8】
配線に炭素元素円筒型構造体が電気的に接続された配線接続構造の形成方法において、
前記配線上に導電性を有する接続層を形成し、前記接続層上に前記炭素元素円筒型構造体を形成することを特徴とする配線接続構造の形成方法。
【請求項9】
前記接続層の形成後に、前記接続層に通じるビアホールを形成し、
前記ビアホール底面に露出する前記接続層上に前記炭素元素円筒型構造体を形成することを特徴とする請求項8記載の配線接続構造の形成方法。
【請求項10】
前記配線に通じるビアホールを形成し、
前記ビアホールの形成後に、前記ビアホール底面に露出する前記配線上に前記接続層を形成し、前記接続層上に前記炭素元素円筒型構造体を形成することを特徴とする請求項8記載の配線接続構造の形成方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2006−108210(P2006−108210A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−289720(P2004−289720)
【出願日】平成16年10月1日(2004.10.1)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成16年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「ナノカーボン応用製品創製プロジェクト」委託研究、産業再生法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年10月1日(2004.10.1)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成16年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「ナノカーボン応用製品創製プロジェクト」委託研究、産業再生法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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