説明

酸化物系ナノ素材を含む光触媒

基板と、前記基板上に形成された酸化物系ナノ素材とからなる基材を含む光触媒を開示する。前記光触媒は、同一成分を持つ従来の光触媒より高い体積対表面積比を有し、且つナノサイズの光触媒層を備えることにより、優れた光分解特性を持つ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒に係り、より具体的には、基板上に形成された酸化物系ナノ素子を含む光触媒に関する。
触媒とは、光線、特に紫外線を吸収して強力な酸化力又は還元力を持っている物質を生成することが可能な物質であって、多量の化学品または難分解性汚染物質を、エネルギーを使用しなくも光を用いて親環境的に処理することにより、環境汚染を防止することができる材料をいう。
光触媒を光線に晒すと、電子(e−)及び正孔(h+)が生成される。このような電子及び正孔それぞれを酸素及び水と接触させると、強力な酸化力を持ったスーパーオキシドアニオン(・O2−)とヒドロキシラジカル(・OH)が生成されが、これらは有機汚染物質や各種細菌などを酸化分解させることができる。
【背景技術】
【0002】
通常用いられる光触媒は、薄膜型または粉末型である。薄膜型光触媒は、基板の表面に半導体成分の光触媒層が塗布された光触媒であって、例えば韓国特許公開第2002−0011511号公報に開示されている。粉末型光触媒は、半導体成分が球形または楕円形の光触媒であって、例えば韓国公開第2003−0096171号公報に球形チタニア光触媒として開示されている。
【0003】
ところが、この種の薄膜型または粉末型光触媒において、光を吸収することが可能な面積は、薄膜蛍光触媒表面層または球形光触媒表面層の表面積によって制限され得る。しかも、粉末型光触媒を幾つかの特定の媒質で使用するとき、光触媒に使用された粉末が媒質に浮遊するなどの使用上の不便さを誘発するおそれがある。
【0004】
したがって、既存の薄膜型または粉末型光触媒から脱皮して、より広い表面積を提供することが可能な新しい構造の光触媒を開発し、高性能の光触媒を提供する必要性が依然として存在する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、かかる従来の技術の問題点を解決するために、ナノ技術を導入して体積対表面積比が極大化された酸化物系ナノ素材を含む光触媒を提供することにある。
本発明の他の目的は、ナノサイズに調節された光触媒層を備えることにより、優れた光分解能を有する酸化物系ナノ素子を含む光触媒を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、基板と、前記基板上に形成された酸化物系ナノ素材とからなる基材を含む光触媒を提供する。
【0007】
本発明によれば、前記基板は、シリコン基板、ガラス基板、石英基板、パイレックス(登録商標)基板、サファイア基板及びプラスチック基板よりなる群から選択されることを特徴とする。
【0008】
また、本発明によれば、前記酸化物系ナノ素材は、ナノニードル、ナノロッドまたはナノチューブの形を持つことを特徴とする。
【0009】
また、本発明によれば、前記酸化物系ナノ素材は、多重壁構造の形態からなることを特徴とする。
【0010】
また、本発明によれば、前記多重壁構造の酸化物系ナノ素材は、ZnO及びTiO2をそれぞれ主成分とする二重壁構造からなることを特徴とする。
【0011】
また、本発明によれば、前記酸化物系ナノ素材は、酸化物半導体ナノロッド上に金属を蒸着して形成した金属/酸化物半導体の異種接合構造を持つことを特徴とする。
【0012】
また、本発明によれば、前記金属は、前記酸化物半導体ナノロッド上にスパッタリング法、或いは熱または電子ビーム蒸発法によって蒸着されることを特徴とする。
【0013】
また、本発明によれば、前記酸化物半導体は、ZnOを主成分とし、前記金属として、Ni、Pt、Pd、Au、Ag、W、Ti、Al、In、Cu、PtSi及びNiSiなどのシリサイド系列の金属よりなる群から選ばれた少なくとも一つの金属を使用することを特徴とする。
【0014】
また、本発明によれば、前記酸化物系ナノ素材は、前記基板上に垂直に配向されていることを特徴とする。
【0015】
また、本発明によれば、前記酸化物系ナノ素材は、有機金属化学気相蒸着法、スパッタリング法、熱または電子ビーム蒸発法、パルスレーザー蒸着法、気相輸送法、及び化学的合成法のいずれか一つによって前記基板上に形成されることを特徴とする。
【0016】
また、本発明によれば、前記酸化物系ナノ素材は、直径が5〜200nmであり、長さが0.5〜100μmであることを特徴とする。
【0017】
また、本発明によれば、前記酸化物系ナノ素材は、ZnOを主成分とすることを特徴とし、主成分であるZnOの他に、Mg、Cd、Ti、Li、Cu、Al、Ni、Y、Ag、Mn、V、Fe、La、Ta、Nb、Ga、In、S、Se、P、As、Co、Cr、B、N、Sb及びHよりなる群から選ばれた少なくとも一つの元素を不純物としてさらに含むこともできる。
【0018】
また、本発明によれば、前記酸化物系ナノ素材は、TiO2を主成分とすることを特徴とし、主成分であるTiO2の他に、Mg、Cd、Zn、Li、Cu、Al、Ni、Y、Ag、Mn、V、Fe、La、Ta、Nb、Ga、In、S、Se、P、As、Co、Cr、B、N、Sb及びHよりなる群から選ばれた少なくとも一つの元素を不純物としてさらに含むこともできる。
【0019】
また、本発明によれば、前記酸化物系ナノ素材は、MgO、CdO、GaN、AlN、InN、GaAs、GaP、InPまたはこれらの化合物よりなる群から選ばれた化合物でコートされたことを特徴とする。
【0020】
このような本発明の光触媒は、従来の粉末型光触媒または薄膜型光触媒に比べて光触媒層の体積対表面積比が著しく高く、ナノサイズに調節された光触媒層を備えるので、優れた光分解能を有するうえ、多様な基板を用いて低廉に製造することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の酸化物系ナノ素材を含む光触媒によれば、体積対表面積比が従来の光触媒に比べて大きく増加するので、光触媒の効率が著しく増加するという利点を持つ。
【0022】
また、本発明の酸化物系ナノ素材を含む光触媒によれば、有機金属気相蒸着法を用いて多様な低価の大面積基板上に酸化物系ナノ素材を成長させる単純な工程で製造可能なので、その製造コストも低く、別途の金属触媒を使用しないため製造の際に金属触媒による不純物の汚染を防ぐことができるという効果がある。
【0023】
<発明を実施するための形態>
以下、本発明をより詳細に説明する。
本発明を説明するにおいて、関連の公知技術または構成に対する具体的な説明が、本発明の要旨を無駄なく乱すおそれがあると判断される場合には、その詳細な説明は省略する。
なお、後述する用語は、本発明における機能を考慮して定義された用語であって、これはユーザー、運用者の意図または慣例などによって異なることもある。よって、その定義は本明細書の全般にわたっての内容に基づいて定められるべきである。
【0024】
また、以下では、便宜上、本発明の酸化物系ナノ素材の代表的な例として、酸化亜鉛(ZnO)と酸化チタニウム(TiO2)を中心として説明しているが、本発明の適用される酸化物系ナノ素材はこれらに限定されない。
【0025】
本発明の光触媒は、基本的に、基板と、及びこの基板上に形成された酸化物系ナ材とからなる基材を含む構造を持つ。
前記基板は、一般に、基板上に形成される酸化物系ナノ素材との反応性がない素材であって、その非制限的な例にはシリコン基板、ガラス基板、石英基板、パイレックス(登録商標)基板、サファイア基板またはプラスチック基板などが含まれる。
前述したような基板上には、酸化物系ナノニードル、ナノロッドまたはナノチューブ形のナノ素材が形成されており、これらのナノニードル、ナノロッドまたはナノチューブ形のナノ素材は多重壁構造の形態を取ってもよい。
【0026】
このように基板、及び前記基板上に垂直配向されたナノニードル及びナノロッド形の酸化物系ナノ素材を含む光触媒の構造図は図1A及び図2Aにそれぞれ示されており、これらに対する実物の走査電子顕微鏡(SEM)写真は図1B及び図2Bにそれぞれ示されている。
【0027】
また、基板及び前記基板上に垂直配向されたナノチューブ形の酸化物系ナノ素材を含む光触媒の構造図は図3Aに示されており、その実物に対する透過電子顕微鏡(TEM)写真は図3B及び図3Cにそれぞれ示されている。図3Aに示したナノチューブ形のナノ素材は、外形が図2Aのナノロッド形と類似であるが、その内部は空の空間である外壁を持つ構造であって、前記外壁は単一壁、二重壁または多重壁構造であってもよい。
【0028】
図4は本発明に係る酸化物系多重壁構造のナノロッド光触媒の一実施例の構造図を示す図であって、酸化物系ナノ素材として、内側にはZnOナノロッドが、外側にはTiO2ナノロッドがそれぞれ成長している形態を示しているが、本発明が必ずしもこのような構造に限定されるのではない。
【0029】
図5は本発明に係る酸化物系ナノロッド異種接合構造光触媒の一実施例の構造図を示す図であって、金属/酸化物半導体の異種接合構造を持つナノロッドの製造工程を示している。
【0030】
一方、前述した図1A〜図5では基板上に酸化物系ナノ素材が垂直に配向されている形態の構造のみを示しているが、図6のSEM写真に示すように、本発明に係る光触媒としては、基板上に酸化物系ナノ素材が垂直に配向されていない形を取ってもよい。
【0031】
上述したような本発明のナノニードル、ナノロッドまたはナノチューブ形のナノ素材は、一般に、約5〜200nmの直径、0.5〜100μmの長さ及び1010個/cm2の密度を持つことができる。したがって、このようにナノサイズに調節された本発明のナノ素材は、ナノ素材が配置されている基板の表面積(すなわち、同一成分の光触媒層素材が薄膜型に製造されたときに持つことが可能な光触媒層の表面積)より数百倍増加した表面積を持つことができる。本発明の光触媒は、このような独特な構造の光触媒層を持つことにより、その性能が著しく向上した光触媒層を持つことができる。
【0032】
また、本発明のナノ素材光触媒層は、前述したような広い表面積の他にも、ナノ範囲に調節されたサイズを持つので、ナノサイズに調節されていない同一成分の光触媒層より優れた電子及び正孔形成能力を持つことができる。一般に、固体結晶質の化学的及び物理的性質は、結晶の大きさとは関係ないが、固体結晶の大きさが数ナノメートルの領域となる場合、その大きさは結晶質の化学的及び物理的性質、例えばバンドギャップ(band gap)などを左右する変数となれるのは、当業者にもよく知られている事実である。したがって、数十ナノメートルの大きさを持つように調節された本発明のナノ素材は、より効果的に電子及び正孔を形成し、究極的には光触媒の性能を向上させる役割をするものと分析される。
【0033】
また、前述した金属/酸化物半導体異種接合構造を用いると、受光して生成された電子を金属側に集まるようにすることができるので、電子と正孔の再結合速度を遅くすることができる。これにより、電子と正孔が外部の酸素または水と容易に結合し、結果として汚染物質を光分解する効率が増大するという効果を期待することができる。
【0034】
本発明のナノ素材は、有機金属気相蒸着法を含む化学気相蒸着法、スパッタリング法(sputtering)、熱または電子ビーム蒸発法(thermal or electron beam evaporation)、パルスレーザー蒸着法(pulse laser deposition)などの物理的成長方法だけでなく、例えば金などの金属触媒を用いる気相輸送法(vapor-phase transport process)、化学的合成法などによって多様な基板上に形成される。好ましくは、有機金属化学気相蒸着法(MOCVD)によって成長させることができる。
【0035】
本発明の光触媒製造方法の具体例において、酸化物系(ここでは、ZnOを例として説明する)ナノニードルは、次の工程によって基板上に形成される。まず、亜鉛含有有機金属及び酸素含有気体または酸素含有有機物を別個のラインを介してそれぞれ有機金属気相蒸着反応器に注入する。前記亜鉛含有有機金属の非制限的な例には、ジメチル亜鉛[Zn(CH32]、ジエチル亜鉛[Zn(C252]、酢酸亜鉛[Zn(OOCCH32・H2O]、無水酢酸亜鉛[Zn(OOCCH32]または亜鉛アセチルアセトナート[Zn(C5722]などが含まれ、前記酸素含有気体の非制限的な例にはO2、O3、NO2、水蒸気、CO2などが含まれる。酸素含有有機物の非制限的な例にはC48Oが含まれる。
【0036】
その後、10-5〜760mmHgの圧力及び200〜900℃の温度条件下で前記反応物を反応させ、基板上にZnOナノニードルを蒸着及び成長させる。前記反応圧力、温度及び反応物質の流れ速度を調節して、基板上に形成されるナノニードルの直径、長さ及び密度を調節することにより、所望の総表面積を持つナノ素材を基板上に形成することができる。
【0037】
一方、前述した金属/酸化物半導体の異種接合構造を持つナノロッドは、ZnOなどの酸化物半導体ナノロッド上に例えばAuなどの金属をスパッタリング法、或いは熱または電子蒸発法などを用いて蒸着することにより形成される。この場合、金属が主にナノロッドのチップ先端部位に選択的によく蒸着されるため、界面が綺麗な金属/酸化物半導体の異種接合構造が容易に形成される。酸化物半導体ナノロッドのチップ先端部位に蒸着される金属としては、様々な種類の金属が使用でき、特にNi、Pt、Pd、Au、Ag、W、Ti、Al、In、Cu、PtSi及びNiSiなどのシリサイド系列金属の少なくとも一つを使用することが好ましい。
【0038】
ここで、金属蒸発のための電子ビームの加速電圧と放出電流(emission current)はそれぞれ4〜20kVと40〜400mAとし、金属蒸着時の反応器の圧力は10-5mmHg前後、基材の温度は常温にそれぞれ維持することが好ましい。前記金属は、また、酸化物半導体ナノロッドの直径または形状に大きい変化を与えず、成長時間などの条件を調節することにより、異種接合構造のナノロッドにおいて金属層の厚さまたはナノロッドの直径及び長さを調節することが可能である。
【0039】
本発明に係る光触媒の酸化物系ナノ素材は、ナノ素材の電子及び正孔形成能力を向上させるために、ZnOナノ素材の場合、Mg、Cd、Ti、Li、Cu、Al、Ni、Y、Ag、Mn、V、Fe、La、Ta、Nb、Ga、In、S、Se、P、As、Co、Cr、B、N、Sb及びHよりなる群から選ばれた少なくとも一つの元素を不純物としてさらに含むことができる。このとき、前記不純物の濃度が高い場合には、酸化物半導体物質の合金と命名されることもある。前記元素を含有する有機金属などを亜鉛含有有機金属と共に有機金属気相蒸着反応器に供給することにより、本発明のナノ素材の成分に前記元素を含ませることができる。
【0040】
前述した不純物の中にはMgまたはCdを含むことが好ましく、例えばTiO2ナノ素材の場合には、前述した不純物としてTiの代わりにZnが使用できるのは勿論である。
【0041】
一方、本発明に係る光触媒のナノ素材は、MgO、CdO、GaN、AlN、InN、GaAs、GaP、InPまたはこれらの化合物よりなる群から選ばれた化合物でコートされている構造を持つことができる。図7Aには、基板上に垂直配向された酸化物系ナノニードルにGaNがコートされている構造のナノニードルが示されており、図7Bには、このような構造を持つナノニードルの透過電子顕微鏡写真が示されている。前記物質のコーティング層は、電子及び正孔形成能力を向上させ、ナノ素材の保護層を形成するなど、本発明の光触媒に対して様々な作用をすることができる。
【0042】
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明する。但し、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0043】
<実施例>
実施例1:ZnOナノニードルを含む光触媒の製造
【0044】
有機金属化学気相蒸着(MOCVD)反応器にガラス基板を入れた後、ジメチル亜鉛(Zn(CH32)及びO2気体それぞれを個別ラインを用いて前記反応器に0.1〜10sccm及び10〜100sccm範囲の流れ速度で注入した。この際、キャリアガスとしてアルゴン(Ar)を使用した。
前記反応器内を0.2torrの圧力及び500℃の温度で1時間維持しながら、前記ガラス基板上でジメチル亜鉛と酸素を化学反応させてZnOナノニードルを成長及び蒸着させた。
その結果、製造されたガラス基板上に垂直に配向されているZnOナノニードルは、直径が60nm、長さが1μm、密度が1010/cm2であった。
【0045】
評価例1
前記実施例1で製造されたZnOナノニードル光触媒(図1A及び図1B参照)の性能を染料の色相変化によって評価した。
本評価例において、「OrangeII」溶液を染料として使用し、比較例として、前記実施例で製造されたZnOナノニードルと同じ成分を持つZnO薄膜を使用した。前記ZnO薄膜は、前記実施例で製造したZnOナノニードルの成長変数である緩衝層を蒸着させず、2時間成長させて製造した。
【0046】
まず、5mLのOrangeII溶液が入った試験管を4つ準備した。各試験管に対する実験条件を、表1の記載通りに調整した後、OrangeII溶液の光分解実験A〜Dを行った。
【0047】
【表1】

【0048】
光分解実験A〜Dの結果を図8A及び図8Bのグラフで示した。図8Aは光分解実験A〜Dの結果を示す吸収スペクトルグラフであり、図8Bは分解された染料量を示すグラフである。
【0049】
図8Aを参照すると、本発明のZnOナノニードル光触媒を用いて5時間OrangeIIを光分解した実験Dの吸光度は、ZnO薄膜を光触媒として用いて5時間照射させながら光分解した実験Bの吸光度は勿論のこと、ZnO薄膜を光触媒として用いて15時間も照射させながら光分解した実験Cの吸光度よりも低いことが分かる。
【0050】
また、図8Bを参照すると、本発明のZnOナノニードル光触媒を用いた実験Dの分解された分解量は実験前の染料量の97%に達するが、ZnO薄膜を光触媒として用いて5時間光分解させた実験Bの分解された染料量は62%に過ぎないことが分かる。このような本発明の光触媒を用いて分解された染料量は、ZnO薄膜を光触媒として使用しながら、照射時間を15時間に増加させた実験Cの分解された染料量に匹敵するものであった。
【0051】
評価例2
前記実施例1と同様にして製造されたZnOナノロッド光触媒(図2A及び図2Bを参照)の性能を別の染料の色相変化によって評価した。本評価において、光分解対象溶液として、メチレンブルー(methylene blue)を水で希釈した染料を使用した。
【0052】
このように製造した光分解対象溶液を容器に入れ、一定の時間が経過した後、溶液を採取した。採取した溶液をさらに希釈させてUV VISスペクトロメーター(spectrometer)に入れて吸光度を測定した。メチレンブルーは、660nmに該当する光をよく吸収するため、溶液にあるメチレンブルーの量が減少すると、660nmに該当する光の吸光度が減少する。また、溶液中のメチレンブルーの量と吸光度間の関係は、線形的な関係である。したがって、吸光度を測定すると、メチレンブルーの量を計算することができる。これにより、ZnOナノロッドの光分解効率を測定することができる。
【0053】
このような光分解実験結果を図9A及び図9Bのグラフで示した。図9Aは光分解実験結果を示す吸収スペクトルグラフであり、図9Bは分解された染料量を示すグラフである。
【0054】
実施例2:TiO2ナノロッドの製造
有機金属化学気相蒸着(MOCVD)装置を用いて反応物質としてチタニウムイソプロポキシド(Titanium isopropoxide、TIP、Ti(OC37i4)及びO2を使用し、キャリアガスとしてアルゴン(Ar)を使用した。
分離されたラインを介してTIP及びO2をそれぞれ反応器内に注入した。この際、反応器内の圧力及び温度をそれぞれ0〜100mmHg、300〜700℃に一定に維持し、各反応物質の流量をそれぞれアルゴン40sccm、TIP20〜40sccm、O220〜40sccmの範囲に調節しながら約1時間にわたって成長させた。
【0055】
実施例3:MOCVDを用いたTiO2/ZnO二重壁構造ナノロッド(coaxial nanorod)の製造
まず、前記実施例1と同様にしてZnOナノロッドを製造した後(図8AのSEM写真を参照)、製造されたZnOナノロッドを有機金属化学気相蒸着(MOCVD)装置に装入し、分離されたラインを介してTIP及びO2をそれぞれ反応器内に注入した。
【0056】
この際、反応器内の圧力及び温度をそれぞれ0〜100mmHg、300〜700℃に一定に維持し、各反応物質の流量をそれぞれアルゴン40sccm、TIP20〜40sccm、O220〜40sccmの範囲に調節しながら約1〜10分間にわたってTiO2/ZnO二重壁構造ナノロッドを成長させた。このような結果物に対するSEM写真を図10B〜図10Dにそれぞれ示した。これらの写真より、成長時間を調節することにより、TiO2/ZnO二重壁構造ナノロッドの直径を調節することができることが分かった。
【0057】
実施例4:PLDを用いたTiO2/ZnO二重壁構造ナノロッドの製造
前記実施例1と同様にして成長させたZnOナノロッドをパルスレーザー蒸着(PLD)装置に装入し、パルスレーザーでTiO2ターゲットをアブレーション(ablation)し、個別的なラインによってO2気体を反応器内に0.1〜100sccm範囲の流れ速度で注入した。
【0058】
この際、圧力を10-9〜100mmHg、温度を20〜800℃にそれぞれ維持しながら、反応器内で前記反応前駆体を5分以上化学反応させ、ZnOナノロッド上にTiO2を蒸着することにより、TiO2/ZnO二重壁構造ナノロッドを製造した。
【0059】
実施例5:ドライエッチングを用いたTiO2ナノチューブの製造
前記実施例3及び実施例4と同様にしてTiO2/ZnO二重壁構造ナノロッドを製造した後、製造されたTiO2/ZnO二重壁構造ナノロッドを水素(H2)またはアンモニア(NH3)雰囲気のファーネスまたは有機金属化学気相蒸着(MOCVD)装置に装入し、分離されたラインを介してH2またはNH3を反応器内に注入した。
【0060】
この際、反応器内の圧力及び温度をそれぞれ100mmHg、600〜700℃に一定に維持しながら20分間ZnOナノロッドを除去することにより、TiO2ナノチューブを製造した。このとき、所要時間は、ZnOナノロッドの大きさに比例して増加する。
【0061】
実施例6:ウェットエッチングを用いたTiO2ナノチューブの製造
前記実施例3または実施例4と同様にしてTiO2/ZnO二重壁構造ナノロッドをまず製造した後、製造されたTiO/ZnO二重壁構造ナノロッドを、塩化水素(HCl)と水(H2O)とを混合して作った塩化水素溶液(pH4〜6)に入れて、1〜30分間ZnOを除去することにより、TiO2ナノチューブを製造した。この際、反応温度は常温〜80℃であった。
一方、実施例5と実施例6によって製造された酸化物系ナノチューブ結果物に対するSEM写真を図11A及び図11Bに示した。図11AはZnOが半分程度除去された状態、図11BはZnOが完全に除去された状態を示す。
【0062】
実施例7:電子ビーム蒸発法を用いたAu/ZnOナノロッド(異種接合構造)の製造
まず、前記実施例1と同様にしてZnOナノロッドを製造した後(図2A及び図2Bを参照)、製造されたZnOナノロッド上に電子ビーム蒸発法(e-beam evaporation)を用いて金(Au)を蒸着させる。
Au蒸発のための電子ビームの加速電圧と放出電流(emission current)はそれぞれ4〜20kVと40〜400mAであり、Au蒸着時の反応器の圧力は10-5mmHg前後、基材の温度は常温にそれぞれ維持した。
Auを蒸着する前と後のZnOナノロッドアレイを電子顕微鏡を用いて調査したところ、AuがZnOナノロッドのチップ上に選択的によく蒸着され、ZnOナノロッドの直径または形状に大きい変化が現れていないことが確認された。その上、ZnOナノロッドの成長時間及びAu蒸着時間を調節することにより、Au/ZnO異種接合構造を持つナノロッドにおいてAu層の厚さ及びZnOの直径と長さを調節することができることも確認された。
一方、本実施例によって製造されたAu/ZnOナノロッド異種接合構造結果物に対するSEM写真を図12Aに、同結果物に対するTEM写真を図12B及び図12Cにそれぞれ示した。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1A】本発明に係る酸化物系ナノニードル光触媒の一実施例の構造図である。
【図1B】本発明に係る酸化物系ナノニードル光触媒の一実施例の走査電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図2A】本発明に係る酸化物系ナノロッド光触媒の一実施例の構造図である。
【図2B】本発明に係る酸化物系ナノロッド光触媒の一実施例のSEM写真である。
【図3A】本発明に係る酸化物系ナノチューブ光触媒の一実施例の構造図である。
【図3B】本発明に係る酸化物系ナノチューブ光触媒の一実施例の透過電子顕微鏡(TEM)写真である。
【図3C】本発明に係る酸化物系ナノチューブ光触媒の一実施例の透過電子顕微鏡(TEM)写真である。
【図4】本発明に係る酸化物系多重壁構造ナノロッド光触媒の一実施例の構造図である。
【図5】本発明に係る酸化物系ナノロッド異種接合構造光触媒の一実施例の構造図である。
【図6】本発明に係る酸化物系光触媒の、ナノ素材が垂直に配向されていない状態を示すSEM写真である。
【図7A】本発明に係る酸化物系ナノニードル光触媒として、ナノニードル上にGaNがコートされた光触媒の一実施例を示す構造図である。
【図7B】本発明に係る酸化物系ナノニードル光触媒として、ナノニードル上にGaNがコートされた光触媒の一実施例を示すTEM写真である。
【図8A】本発明の具体的な実施例に係るZnOナノニードル光触媒とZnO薄膜のOrangeII溶液光分解結果を照射時間による吸収スペクトルと分解された染料量で示す図である。
【図8B】本発明の具体的な実施例に係るZnOナノニードル光触媒とZnO薄膜のOrangeII溶液光分解結果を照射時間による吸収スペクトルと分解された染料量で示す図である。
【図9A】本発明の具体的な実施例に係るZnOナノロッド光触媒のメチレンブルー溶液光分解結果を照射時間による吸収スペクトルと分解された染料量で示す図である。
【図9B】本発明の具体的な実施例に係るZnOナノロッド光触媒のメチレンブルー溶液光分解結果を照射時間による吸収スペクトルと分解された染料量で示す図である。
【図10A】本発明の具体的な実施例に係る酸化物系多重壁構造ナノロッド光触媒の製造工程による変化を示すSEM写真である。
【図10B】本発明の具体的な実施例に係る酸化物系多重壁構造ナノロッド光触媒の製造工程による変化を示すSEM写真である。
【図10C】本発明の具体的な実施例に係る酸化物系多重壁構造ナノロッド光触媒の製造工程による変化を示すSEM写真である。
【図10D】本発明の具体的な実施例に係る酸化物系多重壁構造ナノロッド光触媒の製造工程による変化を示すSEM写真である。
【図11A】本発明の具体的な実施例に係る酸化物系ナノチューブ光触媒のSEM写真である。
【図11B】本発明の具体的な実施例に係る酸化物系ナノチューブ光触媒のSEM写真である。
【図12A】本発明の具体的な実施例に係る酸化物系ナノロッド異種接合構造光触媒のSEM写真及びTEM写真である。
【図12B】本発明の具体的な実施例に係る酸化物系ナノロッド異種接合構造光触媒のSEM写真及びTEM写真である。
【図12C】本発明の具体的な実施例に係る酸化物系ナノロッド異種接合構造光触媒のSEM写真及びTEM写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に形成された酸化物系ナノ素材とからなる基材を含む、光触媒。
【請求項2】
前記基板は、シリコン基板、ガラス基板、石英基板、パイレックス(登録商標)基板、サファイア基板及びプラスチック基板よりなる群から選ばれることを特徴とする、請求項1に記載の光触媒。
【請求項3】
前記酸化物系ナノ素材は、ナノニードル、ナノロッドまたはナノチューブの形を持つことを特徴とする、請求項1に記載の光触媒。
【請求項4】
前記酸化物系ナノ素材は、多重壁構造の形態からなることを特徴とする、請求項3に記載の光触媒。
【請求項5】
前記多重壁構造の酸化物系ナノ素材は、ZnO及びTiO2をそれぞれ主成分とする二重壁構造からなることを特徴とする、請求項4に記載の光触媒。
【請求項6】
前記酸化物系ナノ素材は、酸化物半導体ナノロッド上に金属を蒸着して形成した金属/酸化物半導体の異種接合構造を持つことを特徴とする、請求項1に記載の光触媒。
【請求項7】
前記金属は、前記酸化物半導体ナノロッド上にスパッタリング法、或いは熱または電子ビーム蒸発法によって蒸着されることを特徴とする、請求項6に記載の光触媒。
【請求項8】
前記酸化物半導体は、ZnOを主成分とし、前記金属として、Ni、Pt、Pd、Au、Ag、W、Ti、Al、In、Cu、PtSi及びNiSiなどのシリサイド系列の金属よりなる群から選ばれた少なくとも一つの金属を使用することを特徴とする、請求項6に記載の光触媒。
【請求項9】
前記酸化物系ナノ素材は、前記基板上に垂直に配向されていることを特徴とする、請求項1に記載の光触媒。
【請求項10】
前記酸化物系ナノ素材は、有機金属化学気相蒸着法、スパッタリング法、熱または電子ビーム蒸発法、パルスレーザー蒸着法、気相輸送法、及び化学的合成法のいずれか一つによって前記基板上に形成されることを特徴とする、請求項1に記載の光触媒。
【請求項11】
前記酸化物系ナノ素材は、直径が5〜200nmであり、長さが0.5〜100μmであることを特徴とする、請求項1に記載の光触媒。
【請求項12】
前記酸化物系ナノ素材は、ZnOを主成分とすることを特徴とする、請求項1に記載の光触媒。
【請求項13】
前記酸化物系ナノ素材は、主成分であるZnOの他に、Mg、Cd、Ti、Li、Cu、Al、Ni、Y、Ag、Mn、V、Fe、La、Ta、Nb、Ga、In、S、Se、P、As、Co、Cr、B、N、Sb及びHよりなる群から選ばれた少なくとも一つの元素を不純物としてさらに含むことを特徴とする、請求項12に記載の光触媒。
【請求項14】
前記酸化物系ナノ素材は、MgO、CdO、GaN、AlN、InN、GaAs、GaP、InPまたはこれらの化合物よりなる群から選ばれた化合物でコートされていることを特徴とする、請求項12に記載の光触媒。
【請求項15】
前記酸化物系ナノ素材は、TiO2を主成分とすることを特徴とする、請求項1に記載の光触媒。
【請求項16】
前記酸化物系ナノ素材は、主成分であるTiO2の他に、Mg、Cd、Zn、Li、Cu、Al、Ni、Y、Ag、Mn、V、Fe、La、Ta、Nb、Ga、In、S、Se、P、As、Co、Cr、B、N、Sb及びHよりなる群から選ばれた少なくとも一つの元素を不純物としてさらに含むことを特徴とする、請求項15に記載の光触媒。
【請求項17】
前記酸化物系ナノ素材は、MgO、CdO、GaN、AlN、InN、GaAs、GaP、InPまたはこれらの化合物よりなる群から選ばれた化合物でコートされていることを特徴とする、請求項15に記載の光触媒。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図10D】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【公表番号】特表2007−528294(P2007−528294A)
【公表日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−502729(P2007−502729)
【出願日】平成17年3月11日(2005.3.11)
【国際出願番号】PCT/KR2005/000698
【国際公開番号】WO2006/004248
【国際公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【出願人】(506301047)ポステック ファウンデーション (2)
【氏名又は名称原語表記】POSTECH FOUNDATION
【Fターム(参考)】