説明

酸化膜厚計測方法及びその装置

【課題】直火加熱炉入側での溶剤の塗布量と、直火加熱炉出側での鋼板表面の酸化膜厚とを計測することが可能であり、且つ、高精度な計測を実施することができる鋼板表面の酸化膜厚計測方法及びその装置を得る。
【解決手段】直火加熱炉の入側で、鋼板1に赤外光を照射し、その反射光の強度を測定し、直火加熱炉の出側で、鋼板1から自発放射される放射光の強度を測定し、鋼板1に赤外光を照射し、鋼板1から自発放射される放射光と、照射した光の反射光とが合成された反射・放射光の強度を測定し、反射光の強度と、反射光の強度が測定された鋼板1の同位置の放射光の強度及び反射・放射光の強度とに基づき、鋼板1の表面に生成される鉄系酸化物の膜厚d及び鋼板1に塗布された溶剤の塗布量Wの少なくとも1つを求めるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶剤が塗布された鋼板を加熱する直火加熱炉を備えた連続溶融亜鉛めっきプロセスにおける鋼板表面の酸化膜厚計測方法及びその装置に関し、特に、酸化膜厚の計測に関する。
【背景技術】
【0002】
溶融亜鉛めっき鋼板は優れた耐食性、加工性、表面美観などの特性を有し、例えば自動車用鋼板として大量に使用されている。一方、自動車の外板、内板などに使用される際には衝突安全特性の向上や軽量化などの目的から同一の鋼板板厚でも高い強度が要求されてきている。このような要求を満足させるために近年では高張力鋼板を原板に使用した溶融亜鉛めっき鋼板(以下ではハイテンGA鋼板と称する)が自動車用部材の一部に使用されてきており、その使用比率は今後高まる傾向にある。また、使用される部材によっても様々な高張力鋼板、即ち強度値の異なる鋼板が選択されて部材に適したハイテンGA鋼板が使用されている。ハイテンGA鋼板の製造においては、鋼板強度を向上させるために鋼板中に添加されているSi、Mn等の易酸化性元素が焼鈍中に鋼板表面で選択的に酸化され、後工程であるめっき段階でのめっき特性を劣化させる傾向がある。即ち、表面に濃化したSi、Mn成分が不めっき等の原因となることがある。
【0003】
一方、直火加熱炉は設備のコンパクト性、鋼板の通板性向上、熱応答特性等に優れ、経済的なメリットが大きい上に良好なめっき性を確保できるSi、Mnの添加限界を高められる利点がある。このために、鋼板の成分設計の自由度を広げ、より優れた材質特性を有する鋼板の製造を可能にできる特徴がある。直火加熱炉は複数のゾーンに分かれ、負荷に応じた燃焼パターンが設定可能である。分割されたゾーンでは酸化促進加熱、還元加熱が連続して行われるが負荷に応じてゾーン単位で燃焼条件が制御され、加熱炉出側では鋼板温度として数百℃以上までの加熱が達成される。短時間で急速加熱された鋼板は次工程の輻射管加熱炉にて焼鈍された後にめっき工程に導かれる。
【0004】
前述したようにハイテンGA鋼板の製造ではSi、Mnの表面濃化をいかに防ぐかが重要なポイントの1つになるが、590〜980MPa級のハイテンGA材ではSi、Mnの添加量も多くなるので表面濃化の防止はめっき性向上のためには必須である。
【0005】
この課題に対処するためにも直火加熱は有効な手段であることがわかってきている。即ち、直火加熱炉の酸化ゾーンで鋼板表面に鉄系酸化物層を形成させ、Si、Mn等を内部に留めて表面濃化を防ぐとともに後段ゾーン以降の還元工程にて酸化物層を純鉄層に変化させることでめっき特性を向上させるというものである。一方、Si、Mnの表面濃化を抑えて鉄系酸化物層を形成を促進させる手段として直火加熱炉より前工程に特殊溶剤塗布・乾燥プロセスを設置して表面の酸化を促進させる方法も有効である。
【0006】
この方法を直火加熱炉での酸化処理と組合せることでより高いSi添加量においても良好なめっき特性、高速な合金化が可能である。以上の観点から、最終的なめっき特性向上のためには直火加熱炉後に生成されている酸化物層の特性把握が重要になる。また、ハイテンGA材の強度など材質特性に応じて添加されているSi、Mnの量が異なるので生成される酸化物層の適正条件も異なるため鋼種ごとの把握の必要となる。
【0007】
従来から行われてきた解析方法としては、めっき特性と直火加熱条件との関係をSi、Mn添加量ごとに詳細に調査して加熱条件の変化量である空気比やバーナー火炎強度、燃焼ガス組成などを適正化するものであった。しかし、この方法では実際の製造工程においてプロセス量の変動が激しいこと、バーナー詰りや火炎異常などの発生、ガス組成変動などの影響で実際に直火加熱炉出側において最適な酸化物層形成がなされていることを確認することが困難であった。
【0008】
このため、酸化物層の膜厚を直接測定することが有用であり、これまでにも多くの方法が提案されてきている。通常、膜厚をオンラインで測定する方法としては蛍光X線を用いる方法や偏光解析法(エリプソメトリー法)、反射・吸収法などが応用されているが、直火加熱炉の出側で測定する場合には、鋼板が数百℃以上に加熱されているため鋼板自体からの熱放射があることから温度変化が誤差要因になること、さらに設置上の熱対策が複雑になり設置コストが高くなるなどの経済的な観点からも適用が難しいという問題点があった。
【0009】
そこで、新たな方式としてカラーセンサを応用した方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この方法では酸化膜厚値と鋼板の明度や色相の値が関係することからそれらの関係を事前に求めておいて膜厚を推定するものである。
【0010】
また、別の方法として、異なる測定条件で測定される2つの分光放射輝度間の関係と測定対象の放射率変化との関係式を予め求めておいて放射率を推定した上で酸化物の膜厚を測定する方式が提案されている(例えば、特許文献2参照)。この場合の異なる測定条件としては、2つの波長での測定であるケース、2つの異なる測定角度での測定であるケースや2つの偏光成分での測定であるケースなどがあり、放射率変動条件下で温度を測定するTrace温度計の応用である。
【0011】
【特許文献1】特開平4−43905号公報
【特許文献2】特開平7−18341号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、従来の酸化膜厚計測方法は、鋼板表面の酸化膜厚測定に限定して適用することは可能であるが、より適切に酸化膜を生成させるために、直火加熱炉の前工程に、鋼板に溶剤が塗布される特殊溶剤塗布・乾燥プロセスを有する製造プロセスにおいて適用する際には、溶剤の塗布量の測定ができないという問題点があった。また、鋼板の下地表面反射特性が、連続する鋼帯内の長手方向の場所において変動するため、酸化膜厚の測定精度が低下するという問題点があった。
【0013】
本発明は、上記のような問題点を解決するべくなされたもので、直火加熱炉入側での溶剤の塗布量と、直火加熱炉出側での鋼板表面の酸化膜厚とを計測することが可能であり、且つ、高精度な計測を実施することができる鋼板表面の酸化膜厚計測方法及びその装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の酸化膜厚計測方法は、溶剤が塗布された鋼板を加熱する直火加熱炉を備えた連続溶融亜鉛めっきプロセスにおいて、直火加熱炉の入側で、鋼板に所定の波長域を含む光を照射し、照射した光の反射光の強度を測定し、直火加熱炉の出側で、鋼板から自発放射される放射光の強度を測定し、鋼板に所定の波長域を含む光を照射して、鋼板から自発放射される放射光と、照射した光の反射光とが合成された反射・放射光の強度を測定し、反射光の強度と、反射光の強度が測定された鋼板の同位置の放射光の強度及び反射・放射光の強度とに基づき、鋼板の表面に生成される鉄系酸化物の膜厚及び鋼板に塗布された溶剤の塗布量の少なくとも1つを求めるものである。
【0015】
また、本発明の酸化膜厚測定装置は、溶剤が塗布された鋼板を加熱する直火加熱炉を備えた連続溶融亜鉛めっき設備の酸化膜厚計測装置において、直火加熱炉の入側に設置され、鋼板に所定の波長域を含む光を照射し、照射した光の反射光の強度を測定する反射光強度測定手段と、直火加熱炉の出側に設置され、鋼板から自発放射される放射光の強度を測定し、鋼板に所定の波長域を含む光を照射して、鋼板から自発放射される放射光と、照射した光の反射光とが合成された反射・放射光の強度を測定する反射・放射光強度測定手段と、反射光強度測定手段及び反射・放射光強度測定手段により測定された測定値の情報がそれぞれ入力される演算処理手段とを備え、演算処理手段は、反射光の強度と、反射光の強度が測定された鋼板の同位置の放射光の強度及び反射・放射光の強度とに基づき、鋼板の表面に生成される鉄系酸化物の膜厚及び鋼板に塗布された溶剤の塗布量の少なくとも1つを求めるものである。
【0016】
また、反射・放射光強度測定手段は、放射光及び反射・放射光の内、波長がそれぞれ異なる第1の波長(λ1)及び第2の波長(λ2)での強度をそれぞれ測定し、反射光強度測定手段は、反射光の内、第1の波長(λ1)での強度と、第1の波長及び第2の波長と波長が異なる第3の波長(λ3)での強度をそれぞれ測定し、演算処理手段は、放射光の第1の波長(λ1)での強度と、放射光の第2の波長(λ2)での強度と、反射・放射光の第1の波長(λ1)での強度と、反射・放射光の第2の波長(λ2)での強度とに基づき第1の反射率比を求め、放射光の第1の波長(λ1)での強度に基づき反射率を求め、第1の反射率比と反射率とに基づき鉄系酸化物の膜厚を求め、反射光の第1の波長(λ1)での強度と、反射光の第3の波長(λ3)での強度とに基づき第2の反射率比を求め、第2の反射率比に基づき溶剤の塗布量を求めるものである。
【0017】
また、第1の波長(λ1)は、溶剤が光を吸収する吸収波長帯域以外の波長とし、第3の波長(λ3)は、溶剤が光を吸収する吸収波長帯域の波長とするものである。
【0018】
また、鋼板の走行速度を測定し、測定した情報を演算処理手段に入力する速度測定手段を備え、演算処理手段は、鋼板の走行速度に基づき、鋼板が、反射強度測定手段の設置位置から反射・放射光強度測定手段の設置位置まで走行する時間を算出し、反射強度測定手段から入力された測定値の情報と、算出した時間経過後に入力された反射・放射光強度測定手段の測定値の情報とが鋼板の同位置の測定値の情報とするものである。
【0019】
また、反射・放射光強度測定手段は、赤外波長域の光を放射する赤外光源と、赤外光源から鋼板に照射される光を間欠的に遮断する光遮断手段とを備えたものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、直火加熱炉の入側で、鋼板に所定の波長域を含む光を照射し、その反射光の強度を測定し、直火加熱炉の出側で、鋼板から自発放射される放射光の強度及び鋼板に所定の波長域を含む光を照射したときの放射光と反射光とが合成された反射・放射光の強度を測定し、測定した光の強度に基づき、鋼板の表面に生成される鉄系酸化物の膜厚と鋼板に塗布された溶剤の塗布量とを求めることにより、鋼板に塗布された溶剤の塗布量を測定することができ、直火加熱炉出側での鋼板表面の鉄系酸化物の膜厚の測定精度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
実施の形態1.
図1は実施の形態1に係る連続溶融亜鉛めっき設備の構成を示す図である。図1において、連続溶融亜鉛めっき設備は、走行する鋼板1を連続的に予熱するための予熱帯2、鋼板1を連続的に直火加熱するための直火加熱炉3を備え、鋼板1は予熱帯2内にて予熱された後に直火加熱炉3に装入され、直火バーナーにより所定の条件の燃焼パターンに従って加熱されて連続的に酸化・還元された後、次工程の輻射管加熱炉(図示せず)にて焼鈍された後にめっき工程に導かれる。直火加熱炉3内部は空気比やガス組成、バーナー火炎条件等を変えた複数のゾーンに分離され、直列に配置されている。さらに、鋼板1が予熱帯2に装入される前に、その表面に特殊溶剤を塗布して乾燥するための溶剤塗布・乾燥設備4と、溶剤塗布・乾燥設備4の出側に設置され反射光の強度を測定する反射光強度測定手段である反射光強度測定部5と、直火加熱炉3の出側に設置され反射光及び放射光の強度を測定する反射・放射光強度測定手段である反射・放射光強度測定部6とが設置されている。この反射光強度測定部5及び反射・放射光強度測定部6は、酸化膜厚計測装置9の構成部であり、走行する鋼板1対して垂直方向から測定するように配置される。酸化膜厚計測装置9は、後述する動作により鋼板の表面に生成される鉄系酸化物の膜厚及び鋼板1に塗布された溶剤の塗布量を求める。さらに、反射・放射光強度測定部6は、炉内の壁からの輻射熱を除去するための水冷式遮光管7の中に設置され、炉壁からの背光雑音を遮蔽されている。また、鋼板1の前後、上下方向のバタツキや振動を抑えるためにロール8が配置されている。尚、反射光強度測定部5及び反射・放射光強度測定部6は、ロール8の裏面や直上面で測定することが好ましい。
このような構成による鋼板表面の酸化膜厚計測に用いる特定波長の反射率と酸化膜厚との関係について次に説明する。
【0022】
図2は表面に生成された酸化膜厚が異なる鋼板での反射スペクトルを表す概要図である。前述した通り、直火加熱の条件、例えば空気比や燃焼温度・時間を変化させることで鋼板表面に生成される鉄系酸化物層の膜厚が変化する。このようにして膜厚が異なる鋼板サンプルの赤外光の反射スペクトルを被膜が生成されていない下地鋼板に対する相対反射率として測定した結果、図2に示すような結果を得た。この鋼板の場合はSi含有量が0.25%であり、膜厚水準としては5段階のサンプルを使用した。尚、図中の数字が大きいほど酸化膜厚が厚いサンプルである。鋼板上の酸化膜厚の実測としては標準サンプルの化学分析結果とグロー放電分析装置(GDS)による分析結果との対比から検量線を作成しておき、任意の鋼板サンプルの膜厚値をGDS分析により破壊測定した結果を用いた。膜厚の単位としては、化学分析で得られるg/m2であり、単位面積当たりに換算した鉄系酸化物、例えばFe23,Fe34,FeOなどの総量(重量換算)である。
【0023】
図2の結果から酸化膜厚が増加するのに応じて特定の赤外波長領域で反射率が低下する傾向が見られる。また、Si含有量が0.8%以上の鋼種や下地鋼板に特殊溶剤を塗布・乾燥させた後に加熱条件を変化させて鉄系酸化物層の膜厚を変えた鋼板での赤外反射スペクトルを同様に調べると、上述の図2と別の特定赤外波長領域で反射率が低下する傾向が見られる(図示せず)。これらの結果からある特定波長を選択すると酸化膜厚と反射率とは鋼種や特殊溶剤塗布条件ごとに一応の関係が得られた。
【0024】
従って、特定波長の反射率を測定することで膜厚の推定可能性があることがわかる。このような反射率測定を膜厚測定に利用する方式は一般的であり、反射・吸収法としてよく採用されている。例えば、金属表面の樹脂膜厚測定に樹脂被膜物質の吸収波長での反射強度測定値を用いる方式が実用化されている。また、オンラインでの測定に際して対象の振動、バタツキの影響を除去したり、照射光源変動の影響を少なくする目的から特定の2つの波長での反射率比(反射光強度比)を利用する方式や膜形成前の下地での反射特性を同時に測定して膜形成前後での測定結果からの演算を行うことで下地の特性変化による影響を少なくする方式も一般的である。これら利点を考慮すると前記の鋼板表面の酸化膜厚測定に対しても2波長反射率比を膜厚測定に利用することが可能である。即ち、測定される2波長反射率比から酸化膜厚を推定することが可能である。
【0025】
上述の反射率測定は、鋼板の表面温度が高くない予熱帯前での測定では問題がないが、直火加熱炉出側での鋼板の反射率測定に利用するためには、次に説明する鋼板からの自発光放射の影響を除去した反射率測定が対策が必要となる。即ち、膜厚測定を想定しているプロセス内の場所では、鋼板自体が数百℃以上に加熱されているために赤外波長域で熱を放射している。従って、反射赤外光を測定するとその光には光源光の反射光に加えて自発光分に相当するエネルギーも加わっていることになる。そこで、自発光強度を除去した反射光強度測定が必要となるが、このことを実現するためには赤外光を間欠的に鋼板に照射し、赤外光を照射する際には、鋼板からの自発光放射エネルギーと照射した赤外光の鋼板からの反射光エネルギーとが合成されたエネルギーを測定し、赤外光が遮断される際には、鋼板からの自発光放射エネルギーのみを測定し、赤外光照射時と遮断時での測定エネルギーの差をもとに反射率を測定するものである。この測定について、以下に式を用いて説明する。
【0026】
測定波長帯域として、波長がそれぞれ異なる第1の波長である波長λ1と、第2の波長である波長λ2を使用することとする。ここで、λ2<λ1である。このとき、赤外光光源にて鋼板を照射した場合の反射光と放射光とが合成された光(以下、反射・放射光と言う)の強度である測定強度(Ire)及び、赤外光光源を遮断した場合の放射光の強度である鋼板からの自発光輝度の測定強度(Ira)は以下のように表される。
【0027】
Ire(λ1,T)=ε(λ1)・Lb(λ1,T)+I0(λ1)・R(λ1)・・・(1)
Ire(λ2,T)=ε(λ2)・Lb(λ2,T)+I0(λ2)・R(λ2)・・・(2)
【0028】
Ira(λ1,T)=ε(λ1)・Lb(λ1,T)・・・(3)
Ira(λ2,T)=ε(λ2)・Lb(λ2,T)・・・(4)
【0029】
ここで、
Ire(λ,T):光源にて対象を照射した場合の波長λでの測定強度(温度;T)
Ira(λ,T):波長λでの自発光輝度強度(温度;T)
R(λ):波長λでの反射率
ε(λ):波長λでの放射率
0(λ):波長λでの光源照射強度
である。
【0030】
ここで、プランクの法則からLbは以下で表される。
【数1】

【0031】
上記(1)式から(4)式を用いることで、第1の反射率比である反射率比R(λ2)/R(λ1)は以下の(5)式のようになる。
【0032】
【数2】

【0033】
このようにして測定される反射率比をR1とする。即ち、以下の(6)式となる。
【0034】
R(λ2)/R(λ1)=R1・・・(6)
【0035】
R1の値と酸化膜厚dとの関係は前述したように、Si含有量の量に応じてある程度の鋼種に分類すると特定の一価の関数によって表現できる関係が得られるので、ある鋼種に対しての関係式をf1なる関数とすれば、
【0036】
d=f1(R1)・・・(7)
【0037】
と表現できる。従って、(7)式の関係から酸化膜厚dが測定可能となる。また、別の鋼種に対しては同様にして関係式を表す関数を選択することで酸化膜厚の測定が可能となる。
【0038】
ここで、本実施の形態1では溶剤塗布後の下地鋼板の反射特性を測定することで下地鋼種の違いに影響を受けずに酸化膜厚測定を行うものである。つまり、鋼種が異なると被膜物性(屈折率等)が異なり、下地鋼板に特殊溶剤の塗布を行うプロセスでは塗布条件にて膜生成特性が変化して赤外反射スペクトルも異なるため膜形成前後での反射特性を測定してそれらの演算から膜厚推定を高精度化することが必要になる。また、特殊溶剤塗布後に測定を行うことで塗布状態も同時に測定することが可能になり、塗布条件の最適化に活用することが可能になる。即ち、下地鋼板の反射特性の違いを特殊溶剤が塗布された下地鋼板の反射率測定情報から推測して補正に利用する。一方、特殊溶剤は水に溶解されて塗布されるので、水の吸収帯域波長である波長にて同時に反射率測定を行い、その波長帯域での吸収状態から溶剤塗布状態(塗布量)が推定されることになる。
【0039】
溶剤塗布後の鋼板の温度は高温ではないために上述した鋼板からの自発光放射エネルギーを除去を必要としない反射測定が可能になる。光源から赤外光を照射してその反射光強度を波長λ1で測定し、あらかじめ得られている光源強度値との比から反射率R(λ1)が測定される。この値をR2とする。波長λ1としては溶剤の塗布量の違いに影響を受けない波長帯域、即ち、水の吸収帯域とは異なる波長帯域で測定することとする。その結果、この値R2は下地鋼板の反射特性を反映した値となるので前述の測定値R1と組合せることで酸化膜厚の測定精度向上が可能になる。
ただし、R1とR2の測定は同じ位置で行う必要があるため、鋼板走行速度情報をもとにして測定位置の同期化を測る必要がある。このため後述するような鋼板測定速度検出として走行鋼板直下の回転ロールの回転情報を高精度のパルスジェネレータ40(後述)を利用して検出し、2ケ所の測定場所同士の距離情報を組合せることでプロセス前段にて測定した位置の鋼板が走行して後段での測定場所に到達する時間を演算し、遅れ時間を持たせて測定位置を同じにする。
【0040】
以上に説明した連続する走行鋼板の2ケ所での測定値、第1の反射率比であるR1と、直火加熱炉入側の波長λ1での反射率R2とを組合せて演算することで鉄系酸化物の膜厚である酸化膜厚dの高精度測定が可能になる。このことを式で表すと、複数の異なる鋼種や表面特性の異なる鋼板に対して、関係式f2なる関数を用いることにより、以下の(8)式のように表現することができる。
【0041】
d=f2(R1,R2) ・・・(8)
【0042】
高張力鋼板の鋼種としてはSi、Mnの成分含有量に応じて複数存在するが、事前に膜厚や鋼板温度、鋼種を変えて反射率測定を行うことで(8)式の関係式を導くことが可能である。ここで、関数式、f2としては、例えば2次関数などが用いられる。
【0043】
また、溶剤塗布後の鋼板に対して溶剤の主成分である水の吸収波長帯域であり第3の波長である波長λ3で反射光強度を測定し、先に説明した溶剤塗布工程直後に測定される反射率R(λ1)との比率である第2の反射率比のR3は以下の(9)式のようになり、特殊な溶剤の溶解量は一定であり、溶剤の塗布量は水膜厚さとほぼ同じであるため、このR3の値は溶剤の塗布量と相関を持つ。
【0044】
R(λ3)/R(λ1)=R3 ・・・(9)
【0045】
溶剤の塗布量をWと表すと、一定の関係式、f3を定義することで、以下の(10)式のように表現することができる。
【0046】
W=f3(R3) ・・・(10)
【0047】
このように、連続するプロセスの2ケ所において、それぞれ2つの波長帯域での反射測定を行い、それらの測定値の組合せからプロセス前段では溶剤の塗布量Wが測定でき、プロセス後段では前段での測定値情報も利用して酸化膜厚値dの測定ができる。
【0048】
また、放射率εと酸化膜厚dとは鋼種毎にほぼ一定の関係があるので、f4をその関係を表す関数とすることにより、例えば、λ2での放射率は以下の(11)式から求めることが可能になる。
【0049】
ε(λ2)=f4(d) ・・・(11)
【0050】
さらに、放射率が同定されれば、(4)式などと同様で実測されるIra(λ2,T)と同定されたε(λ2)とから温度Tが求められる。従って、本発明による方式では、溶剤の塗布量、酸化膜厚と同時に直火加熱炉出側での鋼板温度の測定も可能となる利点もある。酸化膜厚と鋼板温度との情報が得られるので直火加熱炉の燃焼制御をより厳密に行うことができ、より適切な条件で酸化被膜生成が可能になる。
このような、溶剤の塗布量及び酸化膜厚の測定を行う本実施の形態1の酸化膜厚計測装置の構成を次に説明する。
【0051】
図3は実施の形態1に係る酸化膜厚計測装置の構成図である。図3において、酸化膜厚計測装置9は、増幅処理部10、演算処理手段である演算処理部20、出力部30、速度測定手段であるパルスジェネレータ40、反射光強度測定部5の光検出部50、反射・放射光強度測定部6の光検出部60により構成されている。反射光強度測定部5の光検出部50は、集光レンズ系51と、ハーフミラー52と、分光素子53,55と、光検出素子54,56を備え、光検出素子54,56にて測定された光強度信号をそれぞれ増幅処理部10に入力する。反射・放射光強度測定部6の光検出部60は、集光レンズ系61と、ハーフミラー62と、分光素子63,65と、光検出素子64,66とを備え、光検出素子64,66にて測定された光強度信号をそれぞれ増幅処理部10に入力する。増幅処理部10は、入力された光強度信号を増幅し、光強度信号の情報を演算処理部20に出力する。演算処理部20は、後述する動作により入力された光強度信号の情報から塗布量W、酸化膜厚d及び温度Tを求め出力部30に出力する。また、演算処理部20は、鋼板1の速度を測定するためのパルスジェネレータ40による測定信号が入力される。
【0052】
図4は実施の形態1に係る反射・放射光強度測定部の構成図である。図4において、反射・放射光強度測定部6は、光検出部60、赤外光源67、光遮断手段である回転チョッパー68、回転タイミング検出部69を備え、回転チョッパー68には赤外光が通過する窓部68aが形成されている。赤外光源67は所定の波長域を含む赤外光を照射し、照射された赤外光は、回転チョッパー68の窓部68aを経て測定対象である鋼板1に一定の入射角度(例えば、10°の角度)にて照射される。回転チョッパー68は、所定の速度で回転し、赤外光源67から照射された光を遮断又は通過させる。尚、窓部68aは回転チョッパー68に一定の角度ごとに複数個形成してもかまわない。回転タイミング検出部69は、赤外光が窓部68aを通過するタイミングを検出し、検出信号を増幅処理部10に出力する。
【0053】
このような構成による酸化膜厚計測装置の動作の詳細を次に説明する。
まず、鋼板1は、予熱帯2に装入される前に、溶剤塗布・乾燥設備4により特殊溶剤が塗布される。次に反射光強度測定部5の赤外光源(図示せず)より赤外光が鋼板1に照射され、反射光が集光レンズ系51を透過して2つの受光素子に導かれる。ハーフミラー52により、2つの経路に分けられた光は、1つの経路では干渉フィルター等の分光素子53を透過して第1の波長λ1(例えば、12μm)用検出素子である光検出素子54により光強度が測定される。もう1つの経路を経て、分光素子55を透過して第3の波長λ3(例えば、3μm)用検出素子である光検出素子56にて光強度が測定され、測定された光強度信号は増幅処理部10に入力される。
【0054】
次に鋼板1は、予熱帯2及び直火加熱炉3により加熱された後、反射・放射光強度測定部6の赤外光源67から照射された赤外光が、回転チョッパー68を経て鋼板1に照射され、赤外光源67から投光された赤外光は、回転チョッパー68を経て測定対象である鋼板1に一定の入射角度(例えば、10°の角度)にて照射される。照射光が回転チョッパー68の窓部68aを通過する際には赤外光が鋼板1に照射されるが、窓部68aの無い部分に赤外光が当たる際には赤外光が遮断されて鋼板1に光が照射されないことになる。従って、赤外光が一定の時間毎に窓部68aを通過するために鋼板1への赤外光の照射は一定間隔毎に間欠的に行われる。鋼板1からの反射光は屈折角(例えば、10°の角度)で戻り、反射・放射光強度測定部6の光検出部60により、反射・放射光又は、放射光のみの赤外光エネルギーが交互かつ連続的に測定されることになる。尚、このような光の照射をオン/オフして測定することは一種のロックイン計測であるとも言える。
【0055】
反射・放射光強度測定部6の光検出部60に入射した反射・放射光又は、放射光のみの赤外光は、集光レンズ系61を透過して2つの受光素子に導かれる。ハーフミラー62により、2つの経路に分けられた光は、1つの経路では干渉フィルター等の分光素子63を透過してλ1用検出素子である光検出素子64により光強度が測定される。もう1つの経路を経て、分光素子65を透過してλ2(例えば、7μm)用検出素子である光検出素子66にて光強度が測定される。以上の2組の分光素子と検出素子にて測定された光強度信号は増幅処理部10に入力される。
【0056】
増幅処理部10は、入力された光強度信号を増幅し、光強度信号の情報を演算処理部20に出力する。パルスジェネレータ40は、走行する鋼板1の速度を測定し、測定信号を演算処理部20に出力する。演算処理部20は、入力された鋼板1の走行速度に基づき、鋼板1が反射光強度測定部5の設置位置から反射・放射光強度測定部6の設置位置まで走行する時間を算出し、反射光強度測定部5から入力された測定値の情報と、算出した時間経過後に入力された反射・放射光強度測定部6の測定値の情報とが鋼板1の同位置の測定値の情報として、反射光強度測定部5と反射・放射光強度測定部6との異なる2ケ所での測定タイミングを同期化する。演算処理部20は、入力された測定値の情報に基づき、前述した酸化膜厚dとR1、R2との関係式f2、溶剤の塗布量WとR3との関係式f3及び、放射率εと酸化膜厚dとの関係式f4の関係式とから塗布量W、膜厚d及び温度Tの値を算出し、算出した結果を出力部30に出力する。
【0057】
尚、本実施の形態1では、輻射熱を除去するための水冷式遮光管7を設置したが、光照射系や受光系に赤外波長域での透過特性に優れた光ファイバを使用し、高温の鋼板に近づける光学機器までの距離を遠ざけることも可能である。
【0058】
また、本実施の形態1では、集光レンズ系51と、ハーフミラー52とを用いて光路を分岐させ、4つの光強度を測定したが、本発明はこれに限らず、単一の光路での測定も可能である。例えば、FT−IR分光器を用いて遠隔でスペクトルを連続測定して必要な波長情報を取り出す方法、連続式分光フィルターを回転させスペクトルを順じ測定する方法又は、検出波長帯の透過型干渉フィルターを複数個装着した回転板を回転させて各検出波長帯での測定を順次行う方式などがある、ただし、鋼板が走行しているため、測定の応答性や厳密には同一場所での測定が不可能であること等が欠点である。酸化膜厚の変動が緩やかである場合には適用可能である。
【0059】
尚、上述説明においては、出側に設置される反射・放射光強度測定部6は、回転チョッパー68を用いて間欠的に照射する光源67と光検出部60とを用いて、光照射をオン/オフして、放射光のみ又は、反射光と放射光とが合成された光の測定値を得る構成で説明したが、本発明はこの構成に限定されず、例えば、常時、光が照射されない位置で放射光のみを測定するための光検出部を配置し、常時、光を照射する位置での反射光と放射光とが合成された光を測定するための光検出部とを1つずつ計2つ設置するような構成にしても良く、同様の作用効果が得られることは言うまでも無い。
【0060】
次に本実施の形態1による測定結果の例を以下に示す。
図5は従来の酸化膜厚計測方法に係る酸化膜厚の推定値と実測値との関係を示す図、図6は実施の形態1に係る酸化膜厚の推定値と実測値との関係を示す図である。図5においては、ほぼ同一のSi含有量の鋼板で下地表面反射特性が異なるサンプルに対して、従来の酸化膜厚計測方法である2つの波長λ1、λ2で算出した膜厚推定値とGDSにて実測した膜厚との関係を示している。これらのサンプルに対しては表面反射特性の違いにより影響を受けるため、酸化膜厚の推定値と実測値の対応では推定誤差が大きくなり、実用上問題である。図6においては、本発明の実施の形態1の酸化膜計測装置を用いて、下地表面反射特性を同じ波長λ1、λ2にて測定し、酸化膜生成前後での測定結果から算出される2つの反射強度比を用いて演算した結果から酸化膜厚を推定した結果と分析値との対応を示している。図6に示すように、酸化膜厚の推定値と実測値の対応は図5に示した従来の酸化膜厚計測方法の場合より良好であり、酸化膜厚推定が高い精度にて可能であることがわかる。
【0061】
尚、以上の解析では、Si含有量がほぼ0.6%である鋼板についての事例であり、Si含有量だけでなくMn成分についても複数の条件があるので図2に示した反射スペクトルは成分の異なる鋼種毎にそれぞれ異なる。ある程度近いSiやMnの各成分量で区分けをして分類し、各区分け毎に下地及び酸化膜生成後に測定される反射強度比から酸化膜厚を演算する際の関係式や係数を設定することで更に高精度での膜厚推定が可能になる。
【0062】
以上のように、直火加熱炉の入側の鋼板1に赤外光を照射し、その反射光の強度を測定し、直火加熱炉の出側の鋼板1に赤外光を間欠的に照射し、鋼板1から自発放射される放射光の強度及び放射光と反射光とが合成された反射・放射光の強度を測定し、測定した光の強度に基づき、鋼板1の表面に生成される鉄系酸化物の酸化膜厚dと鋼板1に塗布された溶剤の塗布量Wとを求めることにより、鋼板1に塗布された溶剤の塗布量Wを測定することができ、直火加熱炉出側での鋼板1表面の鉄系酸化物の膜厚dの測定精度を向上させることができる。
【0063】
また、直火加熱炉出側での鋼板1表面の酸化膜厚dが高精度に得られることにより、従来から使用されていた直火加熱条件の管理・制御によるめっき鋼板製造に代わって実測された酸化状態の監視による直火燃焼制御が可能になる。
【0064】
また、同時に最適な特殊溶剤塗布条件が監視できることになるため最終的な酸化膜厚の確保がより確実に行われめっき特性の向上、高速合金化処理にも有効となる。本発明を実際の溶融亜鉛めっき製造プロセスに適用することにより、めっき処理される鋼板の成分の違い、鋼板速度の違い等に応じて目標とする酸化膜生成に適した特殊溶剤塗布、直火燃焼パターンを実現することができるため、鋼板1の走行速度を抑制する場合も少なくなり生産性が上がるばかりではなく、良好なめっき特性も得られ不めっき等の不良低減も実現できる。
【0065】
また、生成される酸化膜厚dの情報から鋼板1の放射率を推定することも可能になるため、直火過熱後の鋼板温度Tも同時に推定することも可能になり最適な膜厚生成監視だけでなくより正確な直火燃焼制御が実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
主として金属工業プロセスでの膜厚計測への適用が可能である。特に、鉄鋼プロセスでは加熱処理炉内での鋼板の膜厚や温度の測定に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】実施の形態1に係る直火加熱炉設備の構成図である。
【図2】表面に生成された酸化膜厚が異なる鋼板での反射スペクトルを表す概要図である。
【図3】実施の形態1に係る酸化膜厚計測装置の構成図である。
【図4】実施の形態1に係る反射・放射光強度測定部の構成図である。
【図5】従来の酸化膜厚計測方法に係る酸化膜厚の推定値と実測値との関係を示す図である。
【図6】実施の形態1に係る酸化膜厚の推定値と実測値との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0068】
1 鋼板、2 予熱帯、3 直火加熱炉、4 溶剤塗布・乾燥設備、5 反射光強度測定部、6 反射・放射光強度測定部、7 水冷式遮光管、8 ロール、9 酸化膜厚計測装置、10 増幅処理部、20 演算処理部、30 出力部、40 パルスジェネレータ、50 光検出部、51 集光レンズ系、52 ハーフミラー、53 分光素子、54 光検出素子、55 分光素子、56 光検出素子、60 光検出部、61 集光レンズ系、62 ハーフミラー、63 分光素子、64 光検出素子、65 分光素子、66 光検出素子、67 赤外光源、68 回転チョッパー、68a 窓部、69 回転タイミング検出部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶剤が塗布された鋼板を加熱する直火加熱炉を備えた連続溶融亜鉛めっきプロセスにおいて、
前記直火加熱炉の入側で、前記鋼板に所定の波長域を含む光を照射し、照射した前記光の反射光の強度を測定し、
前記直火加熱炉の出側で、前記鋼板から自発放射される放射光の強度を測定し、
前記鋼板に所定の波長域を含む光を照射して、前記鋼板から自発放射される放射光と、照射した前記光の反射光とが合成された反射・放射光の強度を測定し、
前記反射光の強度と、
前記反射光の強度が測定された前記鋼板の同位置の前記放射光の強度及び前記反射・放射光の強度とに基づき、
前記鋼板の表面に生成される鉄系酸化物の膜厚及び前記鋼板に塗布された溶剤の塗布量の少なくとも1つを求めることを特徴とする酸化膜厚計測方法。
【請求項2】
溶剤が塗布された鋼板を加熱する直火加熱炉を備えた連続溶融亜鉛めっき設備の酸化膜厚計測装置において、
前記直火加熱炉の入側に設置され、前記鋼板に所定の波長域を含む光を照射し、照射した前記光の反射光の強度を測定する反射光強度測定手段と、
前記直火加熱炉の出側に設置され、前記鋼板から自発放射される放射光の強度を測定し、前記鋼板に所定の波長域を含む光を照射して、前記鋼板から自発放射される放射光と、照射した前記光の反射光とが合成された反射・放射光の強度を測定する反射・放射光強度測定手段と、
前記反射光強度測定手段及び前記反射・放射光強度測定手段により測定された測定値の情報がそれぞれ入力される演算処理手段とを備え、
前記演算処理手段は、
前記反射光の強度と、
前記反射光の強度が測定された前記鋼板の同位置の前記放射光の強度及び前記反射・放射光の強度とに基づき、
前記鋼板の表面に生成される鉄系酸化物の膜厚及び前記鋼板に塗布された溶剤の塗布量の少なくとも1つを求めることを特徴とする酸化膜厚計測装置。
【請求項3】
前記反射・放射光強度測定手段は、前記放射光及び前記反射・放射光の内、波長がそれぞれ異なる第1の波長(λ1)及び第2の波長(λ2)での強度をそれぞれ測定し、
前記反射光強度測定手段は、前記反射光の内、前記第1の波長(λ1)での強度と、前記第1の波長及び前記第2の波長と波長が異なる第3の波長(λ3)での強度をそれぞれ測定し、
前記演算処理手段は、
前記放射光の前記第1の波長(λ1)での強度と、
前記放射光の前記第2の波長(λ2)での強度と、
前記反射・放射光の前記第1の波長(λ1)での強度と、
前記反射・放射光の前記第2の波長(λ2)での強度と
に基づき第1の反射率比を求め、
前記反射光の前記第1の波長(λ1)での強度に基づき反射率を求め、
前記第1の反射率比と前記反射率とに基づき前記鉄系酸化物の膜厚を求め、
前記反射光の前記第1の波長(λ1)での強度と、
前記反射光の前記第3の波長(λ3)での強度と
に基づき第2の反射率比を求め、前記第2の反射率比に基づき前記溶剤の塗布量を求めることを特徴とする請求項2記載の酸化膜厚計測装置。
【請求項4】
前記第1の波長(λ1)は、前記溶剤が光を吸収する吸収波長帯域以外の波長とし、
前記第3の波長(λ3)は、前記溶剤が光を吸収する吸収波長帯域の波長とすることを特徴とする請求項3記載の酸化膜厚計測装置。
【請求項5】
前記鋼板の走行速度を測定し、測定した情報を前記演算処理手段に入力する速度測定手段を備え、
前記演算処理手段は、前記鋼板の走行速度に基づき、前記鋼板が、前記反射強度測定手段の設置位置から前記反射・放射光強度測定手段の設置位置まで走行する時間を算出し、
前記反射強度測定手段から入力された測定値の情報と、前記算出した時間経過後に入力された前記反射・放射光強度測定手段の測定値の情報とが前記鋼板の同位置の測定値の情報とすることを特徴とする請求項2〜4の何れかに記載の酸化膜厚計測装置。
【請求項6】
前記反射・放射光強度測定手段は、赤外波長域の光を放射する赤外光源と、前記赤外光源から前記鋼板に照射される光を間欠的に遮断する光遮断手段とを備えたことを特徴とする請求項2〜5の何れかに記載の酸化膜厚計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−292498(P2007−292498A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−118128(P2006−118128)
【出願日】平成18年4月21日(2006.4.21)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】