説明

重合性含フッ素単量体および含フッ素重合体ならびにレジストパターン形成方法

【課題】半導体装置の製造等における微細パターンを形成するためのレジスト積層体のレジスト層や保護層などに好適で、さらには水を液状媒体に用いる液浸リソグラフィーにおいて特に有用な重合性含フッ素単量体および含フッ素重合体ならびにレジストパターン形成方法を提供する。
【解決手段】式(1):


(式中、R1は水素原子または酸素原子、窒素原子、硫黄原子もしくはハロゲン原子を含んでいてもよい鎖状もしくは環状の飽和もしくは不飽和の1価の炭素数1〜15の炭化水素基)で示される重合性含フッ素単量体、その単独または共重合体、これらを用いた液浸リソグラフィー法によるレジストパターン形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合性含フッ素単量体および含フッ素重合体ならびにレジストパターン形成方法に関し、特に半導体装置の製造等における微細パターンを形成するためのレジスト積層体のレジスト層や保護層などに好適で、さらには水を液状媒体に用いる液浸リソグラフィーにおいて特に有用な重合性含フッ素単量体および含フッ素重合体ならびにレジストパターン形成方法に関するものである。
【0002】
本発明の単量体や重合体は液浸リソグラフィーの分野に限らず、各種の光学材料、例えば反射防止膜、発光素子材料、レンズ用材料、光デバイス用材料、表示用材料、光学記録材料、光信号伝送用材料(光伝送媒体)、またそれらの封止部材用材料等があげられる。また、例えば医用材料として各種医用デバイス接液部やフィルターのコーティング材料として使用できる。
【背景技術】
【0003】
半導体集積回路をはじめとする各種の電子部品は超微細加工が必要とされ、その加工技術にはレジストが広く用いられている。また、電子部品の多機能化、高密度化に伴い、形成されるレジストパターンの超微細化が求められている。
【0004】
現状、レジストパターンを形成するフォトリソグラフィー技術は、ArFエキシマレーザーにより発せられる波長193nmの紫外光を用いて露光する、ArFリソグラフィープロセスが先端技術として実用化されつつある。
【0005】
次世代の、より微細パターンの要求に対し、露光波長をさらに短波長化した、F2レーザーにより発せられる波長157nmの紫外光を用いて露光する、F2リソグラフィープロセスの開発が行われる一方で、実用化されつつあるArFリソグラフィーで用いるArF露光装置を用いて、更なる微細化に対応するリソグラフィー技術の提案も行われている。
【0006】
その一つとして、ArF露光装置における、縮小投影レンズとレジスト被膜を設けたウェハの間を、純水で満たす液浸露光技術が検討されている(非特許文献1)。
【0007】
従来のプロセス(ドライ法)では屈折率1の空気中に光を通過させていたのを、屈折率1.44の純水中を通過させることで、同一の露光光の入射角度においては、理論上、最小解像寸法(最小パターン線幅)を1/1.44にすることが可能となるものである。
【0008】
これら液浸露光技術を用いたArF露光は、開発済みの各種プロセスや装置を大幅に変更することなく、更なる微細パターン形成が可能となり期待されている。
【0009】
例えば、レジスト材料についても、波長193nmに対して透明な、従来のArFレジスト、つまり脂肪族環状構造を有する炭化水素系樹脂を主成分としたレジスト材料がそのまま検討されてきている。
【0010】
また、一般的なレジストパターン形成法に使用できるレジスト材料や反射防止膜などの材料として、
【化1】

(式中、R1は水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、含フッ素アルキル基を表し、R2は直鎖または分岐を有してもよいアルキル基、環状構造を有するアルキル基、芳香環、またはそれらの複合置換基であって、その一部がフッ素化されていてもよい。R3は水素原子、及び分岐を含んでもよい炭化水素基、含フッ素アルキル基、芳香族や脂肪環を有する環状体であって、酸素、カルボニル等の結合を含んでもよい。また、nは1〜2の整数を表す)で表される重合性単量体およびその重合体が記載されている(特許文献1)。
【0011】
しかし、特許文献1ではR1はハロゲン原子という記載はあるものの、R1がハロゲン原子である具体的な単量体および重合体についてはそれらの製造の仕方、特性も含めまったく記載されていない。
【0012】
【非特許文献1】“Immersion Optical Lithography at 193nm”(7/11/2003)Future Fab Intl. Volume 15 by Bruce W. Smith, Rochester Institute of Technology
【特許文献1】特開2003−40840号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで液浸露光時は、縮小投影レンズとレジスト被膜または保護層の間を純水で満たすため、つまり、レジスト被膜または保護層が純水と接触するため、静的および動的対水接触角が大きいことが望まれ、また、露光後は速やかに現像液に溶解することが要求される。
【0014】
本発明は、このような従来の要求を満たすべく鋭意研究を重ねた結果、完成されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
すなわち本発明は、
式(1):
【化2】

(式中、R1は水素原子または酸素原子、窒素原子、硫黄原子もしくはハロゲン原子を含んでいてもよい鎖状もしくは環状の飽和もしくは不飽和の1価の炭素数1〜15の炭化水素基)で示される重合性含フッ素単量体に関する。
【0016】
また本発明は、式(I):
−(M)−(N)− (I)
(式中、Mは前記式(1)で示される重合性単量体由来の構造単位;Nは式(1)で示される単量体と共重合可能な単量体由来の構造単位)で示され、構造単位Mを1〜100モル%、構造単位Nを0〜99モル%含む含フッ素重合体にも関する。
【0017】
さらには、
(I)基板および該基板上に形成されるフォトレジスト層を有する液浸リソグラフィー用のレジスト積層体を形成する工程、
(II)該レジスト積層体に所望のパターンを有するフォトマスクおよび縮小投影レンズを介し、該縮小投影レンズとレジスト積層体間を液体で満たした状態でエネルギー線を照射し、フォトレジスト層のフォトマスクパターンに対応した特定領域を選択的に露光する液浸露光工程、および
(III)該露光されたレジスト積層体を現像液で処理する工程
を含む液浸リソグラフィー法によるレジストパターン形成方法であって、
該フォトレジスト層が本発明の重合体を含むことを特徴とするレジストパターン形成方法、または
(Ia)基板、該基板上に形成されるフォトレジスト層、および該フォトレジスト層上に形成される保護層を有する液浸リソグラフィー用のレジスト積層体を形成する工程、
(IIa)該レジスト積層体に所望のパターンを有するフォトマスクおよび縮小投影レンズを介し、該縮小投影レンズとレジスト積層体間を液体で満たした状態でエネルギー線を照射し、フォトレジスト層のフォトマスクパターンに対応した特定領域を選択的に露光する液浸露光工程、および
(IIIa)該露光されたレジスト積層体を現像液で処理する工程
を含む液浸リソグラフィー法によるレジストパターン形成方法であって、
該フォトレジスト層および/または保護層が本発明の重合体を含むことを特徴とするレジストパターン形成方法にも関する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、静的および動的対水接触角が大きく、かつ現像液への溶解速度が大幅に向上した含フッ素重合体、およびその重合体を与える単量体、ならびに含フッ素重合体を用いた液浸リソグラフィーによるレジストパターン形成方法を提供することができる。
【0019】
また各種の光学材料、例えば反射防止膜、発光素子材料、レンズ用材料、光デバイス用材料、表示用材料、光学記録材料、光信号伝送用材料(光伝送媒体)、またそれらの封止部材用材料に適用できる重合体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の重合性含フッ素単量体は、式(1):
【化3】

(式中、R1は水素原子または酸素原子、窒素原子、硫黄原子もしくはハロゲン原子を含んでいてもよい鎖状もしくは環状の飽和もしくは不飽和の1価の炭素数1〜15の炭化水素基)で示される重合性含フッ素単量体である。
【0021】
この単量体の特徴の1つは、アクリロイル基のα位がフッ素原子で置換されている点にある。このα−フルオロアクリロイル基にすることにより、特許文献1に具体的に記載されているメタクリロイル基やα−フルオロアルキルアクリロイル基に比べて、現像液への溶解速度が格段に向上する。
【0022】
1としては、水素原子、すなわち−OR1がOHであるほか、酸素原子、窒素原子、硫黄原子もしくはハロゲン原子を含んでいてもよい鎖状もしくは環状の飽和もしくは不飽和の1価の炭素数1〜15の炭化水素基である。
【0023】
鎖状の飽和または不飽和の1価の炭化水素基としては、直鎖状または分岐鎖状の炭素数1〜15のアルキル基、直鎖状または分岐鎖状の炭素数1〜10の含フッ素アルキル基があげられる。これらの炭化水素基は、鎖中または末端に酸素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、カルボニル基、水酸基、エポキシ基、カルボキシル基、アミド基、シアノ基、ウレタン基、アミノ基、ニトロ基、チオール基、スルフィド基、スルフィン基、スルホキサイド基、スルホン酸アミド基などを含んでもよい。
【0024】
酸素原子、窒素原子、硫黄原子またはハロゲン原子(フッ素原子以外)を含んでいてもよい直鎖状または分岐鎖状の炭素数1〜15のアルキル基としては、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、ペンチル、
【化4】

などがあげられる。これらのうち、光酸発生剤での脱保護反応が良好な点から、
【化5】

が好ましく、また、架橋性が良好であることから、
【化6】

が好ましい。
【0025】
酸素原子、窒素原子または硫黄原子を含んでいてもよい直鎖状または分岐鎖状の炭素数1〜10の含フッ素アルキル基としては、例えば
【化7】

などがあげられる。これらのうち、溶解性を損なわずに撥水ならびに撥液性が向上できる点から、
【化8】

が好ましい。
【0026】
環状の1価の炭化水素基としては、フッ素原子を含んでいてもよい芳香族環構造や脂肪族環構造を有する炭素数3〜15の炭化水素基などがあげられ、これらは鎖中または末端に酸素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、カルボニル基、水酸基、エポキシ基、カルボキシル基、アミド基、シアノ基、ウレタン基、アミノ基、ニトロ基、チオール基、スルフィド基、スルフィン基、スルホキサイド基、スルホン酸アミド基などを含んでもよい。
【0027】
具体例としては、例えば
【化9】

などがあげられる。これらのうち、真空紫外領域で透明性が高くドライエッチング耐性が良好な点から、
【化10】

が好ましい。
【0028】
1は、特に好ましくは現像液への溶解性が特に優れる点から水素原子である。
【0029】
式(1)の単量体は例えば、α−フルオロアクリル酸(またはα−フルオロアクリル酸フルオライドまたはクロライド、アルキルエステル)と式(3):
【化11】

(式中、R1は式(1)と同じ)で示されるアルコールとを反応させる方法などが採用できる。
【0030】
反応条件などは、例えば特許文献1や実験化学講座第5版16巻P35〜38、P42〜43などに記載の反応条件が採用できる。
【0031】
本発明はまた、式(I):
−(M)−(N)− (I)
(式中、Mは、式(1):
【化12】

(式中、R1は水素原子または酸素原子、窒素原子、硫黄原子もしくはハロゲン原子を含んでいてもよい鎖状もしくは環状の飽和もしくは不飽和の1価の炭素数1〜15の炭化水素基)で示される重合性単量体(m)由来の構造単位;Nは式(1)で示される単量体と共重合可能な単量体(n)由来の構造単位)で示され、構造単位Mを1〜100モル%、構造単位Nを0〜99モル%含む含フッ素重合体にも関する。
【0032】
本発明の重合体は重合性単量体(m)の単独重合体でもよく、共重合可能な単量体(n)の1種または2種以上との共重合体でもよい。
【0033】
重合性単量体(m)については、上記の本発明の単量体が採用される。
【0034】
共重合可能な単量体(n)としては、使用する用途、目的に合わせて付加する機能によって適宜選択すればよい。
【0035】
例えば液浸レジスト積層体の保護層用材料としては、特開2007−204385号公報に記載された式(22)で示される単量体(ただし、R5はH、CH3、FまたはCl)が例示でき、なかでも
【化13】

【化14】

で示される単量体、または
【化15】

で示される構造単位を与える単量体が好ましく例示できる。特に本発明で好ましい具体例としては、
【化16】

【化17】

【0036】
さらにはR5がFである化合物が重合性が良好な点から好ましくあげられる。
【0037】
例えば液浸レジスト積層体のレジスト層用材料としては、特開2007−204385号公報に記載された式(19)〜(21)で示される単量体(ただし、R5はH、CH3、FまたはCl)が例示でき、なかでも
【化18】

で示される単量体、または
【化19】

【化20】

【化21】

【化22】

で示される構造単位を与える単量体がその具体例と共に好ましく例示できる。特に本発明で好ましい具体例としては、
【化23】

がドライエッチング耐性が良好な点からあげられる。
【0038】
共重合割合は、構造単位Mを10モル%以上、さらには30モル%以上含むことが、溶解性を良好に保つことから好ましい。構造単位Nの上限は99モル%である。
【0039】
重量平均分子量は、1000〜1000000の範囲が好ましく、溶解性の点から500000以下、さらには300000以下、さらには100000以下が好ましい。一方、下限は製膜性の点から2000、さらには4000が好ましい。
【0040】
重合は、通常のラジカル重合法、イオン重合法、ヨウ素移動重合法、メタセシス重合などで行うことができる。
【0041】
本発明の重合体は、液浸レジスト積層体の保護層用材料、液浸レジスト積層体のレジスト層用材料、反射防止膜用材料などの液浸レジスト積層体材料、他の反射防止膜用材料、発光素子材料、レンズ用材料、光デバイス用材料、表示デバイス用材料、光学記録材料、光信号伝送用材料(光伝送媒体)、またそれらの封止部材用材料などがあげられる。また、例えば医用材料として各種医用デバイス接液部やフィルターのコーティング材料などにも好適に使用できる。
【0042】
発光素子としては、例えばEL素子、ポリマー発光ダイオード、発光ダイオード、光ファイバーレーザー、レーザー素子、光ファイバー、液晶バックライト、光検知器などがあげられ、大型ディスプレイ、照明、液晶、光ディスクシステム、レーザープリンター、医療用レーザー、レーザー加工、印刷、コピー機器などに応用される。本発明の重合体は、透明性、成形加工性、耐光性に優れ、これらの用途に好適である。
【0043】
また、レンズ用材料としては集光レンズ、ピックアップレンズ、めがね用レンズ、カメ
ラ用レンズ、プロジェクター用フレネルレンズ、コンタクトレンズなどがあげられる。本発明の重合体は、透明性、耐熱性、成形加工性に優れ、これらの用途に好適である。
【0044】
光デバイス用光学材料としては、光増幅素子、光スイッチ、光フィルター、光分岐素子、波長変換素子などの光導波路素子をあげることができる。またN分岐導波路(Nは2以上の整数)を含む光分岐素子と上記素子を組み合わせた光回路は今後の高度情報通信社会においては極めて有用である。これらの素子を組み合わせることにより、光ルーター、ONU、OADM、メディアコンバーター等に利用できる。光導波路素子の形式は、平面型、ストリップ型、リッジ型、埋込み型などの適宜の形式をとることができる。本発明の重合体は、広い波長範囲にわたって透明性が高く、成形加工性に優れ、また、屈折率も低いためこれらの用途に好適である。
【0045】
表示デバイス用の光学材料としては、反射防止材、照明器具のカバー材、ディスプレイ保護板、透明ケース、表示板、自動車用部品などがあげられる。本発明の重合体は、広い波長範囲にわたって透明性が高く、成形加工性に優れ、また、屈折率も低いため、これらの用途に好適である。
【0046】
光学記録材料としては、光ディスク基板、体積型ホログラム記録材料のマトリックス材料などに用いることができる。本発明の重合体は、広い波長範囲にわたって透明性が高く、成形加工性に優れ、また、屈折率も低いため、これらの用途に好適である。
【0047】
光信号伝送用材料(光伝送媒体)としては、耐熱性の光伝送媒体、コアとクラッドで形成されるプラスチック光ファイバーのコアおよび/またはクラッド材などがあげられる。本発明の重合体はガラス転移温度が高いため、これらの用途に好適である。
【0048】
また、水に不溶で高い動的ならびに静的接触角を示すにも拘わらずアルカリ水溶液可溶性を示すような表面濡れ性をもつので、蛋白質など生体関連物質の吸着を抑えながら生体適合性を示す用途に利用する道があり、医用材料として各種医用デバイス接液部やフィルターのコーティング材料として利用できる。
【0049】
以下に液浸レジスト積層体の保護層用材料、液浸レジスト積層体のレジスト層用材料に用いる場合について、それらの材料を用いたレジストパターン形成方法に焦点を当てて具体的に説明する。
【0050】
本発明の重合体を液浸レジスト積層体の保護層用材料として用いて、レジストパターンを形成する方法は、
(I)基板および該基板上に形成されるフォトレジスト層を有する液浸リソグラフィー用のレジスト積層体を形成する工程、
(II)該レジスト積層体に所望のパターンを有するフォトマスクおよび縮小投影レンズを介し、該縮小投影レンズとレジスト積層体間を液体で満たした状態でエネルギー線を照射し、フォトレジスト層のフォトマスクパターンに対応した特定領域を選択的に露光する液浸露光工程、および
(III)該露光されたレジスト積層体を現像液で処理する工程
を含む液浸リソグラフィー法によるレジストパターン形成方法であって、
該フォトレジスト層が本発明の重合体を含むことを特徴とする。
【0051】
本発明の重合体を保護層中に含むレジスト積層体(以下、「第一のレジスト積層体」ということもある)は、波長193nm以上の紫外光で露光する、純水を液状媒体として用いる液浸リソグラフィーの露光工程で特に効果的である。
【0052】
つまり、第一のレジスト積層体は、ArFレジスト、KrFレジストなど、従来のレジスト材料を含むフォトレジスト層(L1)を有するレジスト被膜の最表面に、さらに、保護層(L2)を形成したものであり、保護層(L2)に本発明の重合体を使用することで、現像液溶解性を格段に改善でき、良好な撥水性、光透過性、耐水性を有するものである。
【0053】
第一のレジスト積層体において、最外層を形成する保護層(L2)は、波長193nm以上の光線に対して透明であることが必要である。
【0054】
それによって、例えば、193nm波長を用いるArFリソグラフィー、248nm波長を用いるKrFリソグラフィーにおいても純水を用いる液浸露光プロセスが利用できる。
【0055】
具体的には、193nm以上の波長において、吸光係数で1.0μm-1以下、好ましくは、0.8μm-1以下、より好ましくは、0.5μm-1以下、最も好ましくは0.3μm-1以下である。
【0056】
保護層(L2)の吸光係数が大きすぎると、レジスト積層体全体の透明性を低下させるため微細パターン形成時の解像度を低下させたり、パターン形状を悪化させたりするため好ましくない。
【0057】
また保護層(L2)は、現像液、例えば2.38%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(2.38%TMAH水溶液)に対して良好な溶解性を有しながら、純水に対して溶解しにくい、または溶解速度が遅い性質のものが好ましい。
【0058】
具体的には、現像液に対する溶解速度は、後述するQCM測定法で測定した2.38%TMAH水溶液に対する溶解速度で1nm/sec以上の層であり、好ましくは10nm/sec以上、より好ましくは100nm/sec以上である。
【0059】
現像液に対する溶解速度が低すぎると、微細パターン形成時の解像度を低下させたり、パターン形状がT−トップ状などになりやすく目的のものが得られにくく、好ましくない。
【0060】
一方、保護層(L2)は純水に対して、逆に溶解しにくいことが好ましく、QCM測定法で測定した、純水に対する溶解速度で10nm/min以下の層であり、好ましくは8nm/min以下、より好ましくは5nm/min以下、特に好ましくは2nm/min以下である。
【0061】
純水に対する溶解速度が、大きすぎると、保護層(L2)による保護効果が不十分となり、前述の問題点の改善効果が不十分となるため好ましくない。
【0062】
純水に対する溶解速度の測定には通常のイオン交換膜により得られるイオン交換水を純水として使用する。
【0063】
また、保護層(L2)は、現像液溶解速度を著しく低下させない範囲で、撥水性が高い方が好ましい。
【0064】
例えば、好ましくは対水接触角で70°以上、より好ましくは75°以上、特に好ましくは80°以上であり、上限の好ましくは100°以下、より好ましくは95°以下、特に好ましくは90°以下である。
【0065】
保護層(L2)表面の対水接触角が低すぎると、純水との接触後、水の浸透速度が早くなり、フォトレジスト層(L1)へ水が達しやすく、保護層(L2)による保護効果が不十分となるため好ましくない。
【0066】
また、保護層(L2)表面の対水接触角が高すぎると、逆に現像液溶解速度が著しく低下するため好ましくない。
【0067】
また、さらに、保護層(L2)は吸水性(吸水速度)の低いものが好ましい。
【0068】
吸水性(吸水速度)が高すぎると純水との接触後、水の浸透速度が早くなり、フォトレジスト層(L1)へ水が達しやすく、保護層(L2)による保護効果が不十分となるため好ましくない。
【0069】
例えば、吸水性(吸水速度)は、QCM法により測定でき、吸水による重量増加速度(吸水速度)として算出可能である。
【0070】
これらの性質を有する保護層(L2)として、本発明の重合体を用いる。
【0071】
本発明の第一のレジスト積層体は、予め形成されたフォトレジスト層(L1)上に保護層(L2)が、本発明の重合体を含むコーティング組成物を塗布することで形成される。
【0072】
保護層(L2)を形成するコーティング組成物は、本発明の重合体と溶剤とからなるものである。
【0073】
溶剤は、本発明の重合体を均一に溶解させるものから選ばれることが好ましく、成膜性の良好な溶剤を適宜選択し、利用される。
【0074】
具体的には、セロソルブ系溶剤、エステル系溶剤、プロピレングリコール系溶剤、ケトン系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤、アルコール系溶剤、水またはこれらの混合溶剤が好ましくあげられる。さらに本発明の重合体の溶解性、成膜性を高めるために、CH3CCl2F(HCFC−141b)などの含フッ素炭化水素系溶剤やフッ素アルコール類などのフッ素系溶剤を併用してもよい。
【0075】
コーティング組成物を塗布したとき、予め形成された下層のフォトレジスト被膜(L1)を再溶解させない溶剤から選ばれることが好ましく、その点からも水および/またはアルコール類であることが好ましい。
【0076】
これらの溶剤の量は、溶解させる固形分の種類や塗布する基材、目標の膜厚、などによって選択されるが、塗布のし易さという観点から、フォトレジスト組成物の全固形分濃度が0.5〜70重量%、好ましくは1〜50重量%となるように使用するのが好ましい。
【0077】
溶剤のうち、水は、水であれば特に制限されないが、蒸留水、イオン交換水、フィルター処理水、各種吸着処理などにより有機不純物や金属イオンなどを除去したものが好ましい。
【0078】
アルコール類は、フォトレジスト層(L1)を再溶解させないものから選ばれ、下層のフォトレジスト層(L1)の種類に応じて適宜選択されるが、一般に低級アルコール類が好ましく、具体的にはメタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノールなどが好ましい。
【0079】
なお、これら溶剤に加えて、フォトレジスト層(L1)を再溶解させない範囲内で、塗布性等の改善を目的として、水に可溶な有機溶媒を併用してもよい。
【0080】
水に可溶な有機溶媒としては、水に対して1質量%以上溶解するものであればとくに制限されない。例えば、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;酢酸メチル、酢酸エチルなどの酢酸エステル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルセロソルブ、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブ、ブチルカルビトール、カルビトールアセテートなどといった極性溶媒などが好ましく挙げられる。
【0081】
水またはアルコール類に加えて添加される水溶性の有機溶媒の添加量は、溶剤全体量に対し、0.1〜50質量%、好ましくは0.5〜30質量%、より好ましくは1〜20質量%、特に好ましくは1〜10質量%である。
【0082】
本発明の保護層(L2)を形成するコーティング組成物は、必要に応じて、塩基性の物質、例えばアンモニアまたは有機アミン類から選ばれる少なくとも1種を添加してもよい。この場合、コーティング組成物中でpKaが11以下の酸性OH基は、例えばアンモニウム塩、アミン塩などの形で親水性誘導体部位になっていることもある。
【0083】
有機アミン類は水溶性の有機アミン化合物が好ましく、例えばメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミンなどの第一級アミン類;ジメチルアミン、ジエチルアミンなどの第二級アミン類;トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジンなどの第三級アミン類;モノエタノールアミン、プロパノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンなどのヒドロキシルアミン類;水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウムなどの第四級アンモニウム化合物などが好ましく挙げられる。
【0084】
なかでも、現像液溶解速度の向上という面で、モノエタノールアミン、プロパノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンなどのヒドロキシルアミン類であることが好ましく、なかでも特にモノエタノールアミンが好ましい。
【0085】
またさらに、本発明の保護層(L2)を形成するコーティング組成物には、必要に応じて、消泡剤、吸光剤、保存安定剤、防腐剤、接着助剤、光酸発生剤などを添加してもよい。
【0086】
本発明の保護層(L2)を形成するコーティング組成物において、本発明の重合体の含有率は、重合体の種類、分子量、添加物の種類、量、溶剤の種類などによって異なり、薄層被膜を形成可能となる適切な粘度となるように適宜選択される。例えばコーティング組成物全体に対し0.1〜50質量%、好ましくは0.5〜30質量%、より好ましくは1〜20質量%、特には2〜10質量%である。
【0087】
コーティング組成物はフォトレジスト層(L1)上に塗布され、保護層(L2)を形成しレジスト積層体の最外層を形成する。
【0088】
塗布方法としては従来公知の方法が採用され、特に回転塗布法、流延塗布法、ロール塗布法などが好適に例示でき、なかでも回転塗布法(スピンコート法)が好ましい。
【0089】
保護層の膜厚は、液浸露光条件、水との接触時間などによって異なり、適宜選択されるが、通常1〜500nm、好ましくは10〜300nm、より好ましくは20〜200nm、特には30〜100nmである。
【0090】
本発明の重合体は、透明性が高いため、保護層を厚く施しても良好な微細パターン形成が可能となる。
【0091】
第一のレジスト積層体において、フォトレジスト層(L1)は従来のフォトレジスト組成物を用いて形成される層であり、後述するウェハなどの基板上に形成される。
【0092】
例えばノボラック樹脂とジアゾナフトキノンを主成分とするポジ型フォトレジスト(g線、i線リソグラフィー)、ポリヒドロキシスチレンをバインダー樹脂に用いた化学増幅型ポジ型またはネガ型レジスト(KrFリソグラフィー)、側鎖に脂環式構造を有するアクリル系ポリマーやポリノルボルネン構造を有する脂環式重合体などを用いた化学増幅型ポジ型フォトレジスト(ArFリソグラフィー)を成膜して得られる層である。
【0093】
フォトレジスト層(L1)の膜厚は、作製するデバイスの種類や目的、それを得るためのエッチングなどのプロセス条件、レジスト層の種類(透明性やドライエッチング耐性の程度など)によって異なり、適宜選択されるが、通常10〜5000nm、好ましくは50〜1000nm、より好ましくは100〜500nmである。
【0094】
本発明における保護層(L2)は、純水を用いた液浸露光時、従来のフォトレジスト層を最外層に持つもの、または従来のレジスト用反射防止層を最外層にもつものなどに比べ、撥水性、耐水性、防水性の少なくとも1つについて優れているため、特に側鎖に脂環式構造を有するアクリル系ポリマーやポリノルボルネン構造を有する脂環式重合体などを用いた化学増幅型ポジ型フォトレジスト(ArFリソグラフィー)を用いた液浸フォトリソグラフィープロセスにおいて特に好ましく適用でき、精密なパターン形状やパターンの高寸法精度、さらにはそれらの再現性において効果的に目的を達成するものである。
【0095】
第一のレジスト積層体における基板としては、例えばシリコンウェハ;ガラス基板;有機系または無機系反射防止膜が設けられたシリコンウェハやガラス基板;表面に各種の絶縁膜、電極および配線などが形成された段差を有するシリコンウェハ;マスクブランクス;GaAs、AlGaAs等のIII−V族化合物半導体ウェハやII−VI族化合物半導体ウェハ;水晶、石英またはリチウムタンタレイト等の圧電体ウェハなどがあげられる。
【0096】
また、いわゆる基板の上にて限定されるものではなく、基板上の導電膜あるいは絶縁膜など所定の層の上に形成されてよい。また、かかる基板上に例えばBrewer Science社製のDUV−30、DUV−32、DUV−42、DUV−44などの反射防止膜(下層反射防止層)を施すことも可能であるし、基板を密着性向上剤によって処理してもよい。
【0097】
つぎに第一のレジスト積層体の製造法、つまりフォトレジスト層(L1)上に保護層(L2)を設けてレジスト積層体を形成する方法、さらにはそのフォトレジスト積層体を用いて液浸露光により微細パターンを形成する方法の一例を図面を参照して説明する。
【0098】
図1は、本発明の第一のレジスト積層体の形成方法、および液浸露光微細パターン形成方法の各工程(a)〜(e)を説明するための概略図である。
【0099】
(a)フォトレジスト層(L1)の形成工程:
まず、図1(a)に示すように基板(L0)にフォトレジスト組成物を回転塗布法等によって10〜5000nm、好ましくは50〜1000nm、より好ましくは100〜500nmの膜厚で塗布する。
【0100】
ついで150℃以下、好ましくは80〜130℃の所定の温度でプリベーク処理を行って、フォトレジスト層(L1)を形成する。
【0101】
(b)保護層(L2)の形成工程:
図1(b)に示すように、乾燥後のフォトレジスト層(L1)上に、本発明の重合体を含むコーティング組成物を回転塗布法等によって塗布する。ついで、必要に応じてプリベークを行ない、保護層(L2)を形成する。
【0102】
プリベークは、保護層(L2)中の残留溶剤を蒸発させ、さらに均質な薄層被膜を形成するために適宜、条件選択される。例えばプリベーク温度は室温〜150℃の範囲内から選ばれ、好ましくは40〜120℃、より好ましくは60〜100℃である。
【0103】
(c)液浸露光工程:
つぎに図1(c)に示すように、レジスト積層体(L1+L2)に、所望のパターンを有するマスク11および縮小投影レンズ14を介して、矢印13で示すようにエネルギー線を照射し、特定の領域12を選択的に露光することによってパターン描画を行なう。
【0104】
本発明においては、縮小投影レンズ14とレジスト積層体の間に純水15を満たした状態で露光するものである。
【0105】
第一のレジスト積層体は、これら純水で満たした状態において、保護層(L2)の効果により、精密なパターン形状やパターンの高寸法精度、さらにはそれらの再現性において目的を達成するものである。
【0106】
このときエネルギー線(あるいは化学放射線)としては、例えばg線(436nm波長)、i線(365nm波長)、KrFエキシマレーザー光(248nm波長)、ArFエキシマレーザー光(193nm波長)などが使用可能であり、それぞれのプロセスにおいて解像度を向上させることができる。
【0107】
なかでもArFエキシマレーザー光(193nm波長)において、液浸露光の高解像化効果がより発揮される。
【0108】
続いて、70〜160℃、好ましくは90〜140℃で30秒間〜10分間程度の露光後ベーキング(PEB工程)を行うことによって、図1(d)に示すように、フォトレジスト層(L1)の露光領域12に潜像を形成させる。このとき、露光によって生じた酸が触媒として作用して、フォトレジスト層(L1)中の溶解抑止基(保護基)が分解されるため現像液溶解性が向上し、レジスト膜の露光部分が現像液に可溶化する。
【0109】
(d)現像工程:
ついで露光後ベーキングを行ったフォトレジスト層(L1)に対して現像液で現像処理を行うと、フォトレジスト層(L1)の未露光部分は現像液に対する溶解性が低いため基板上に残存するが、一方、上述したように露光領域12は現像液に溶解する。
【0110】
一方、上層の保護層(L2)は、露光部、未露光部に関わらず現像液溶解性に優れているため、現像工程で露光部と同時に除去される。
【0111】
現像液としては2.38重量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液が好ましく用いられる。保護層(L2)表面、フォトレジスト層(L1)表面との濡れ性を調整するため、2.38重量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液中に界面活性剤やメタノール、エタノール、プロパノールまたはブタノールなどのアルコール類を添加したものを用いてもよい。
【0112】
ついで、純水、低級アルコールまたはそれらの混合物などで前記現像液を洗い流したあと、基板を乾燥させることにより、図1(e)に示すような所望のレジストパターンを形成することができる。
【0113】
また、このように形成した微細レジストパターンをマスクとして、その下の所定の層をエッチングして導電膜あるいは絶縁膜の所望の微細パターンを形成し、さらに他の工程を重ねて半導体装置など電子装置を製造することができる。これらの工程はよく知られているところであるから、説明は省略する。
【0114】
本発明の重合体を液浸レジスト積層体のレジスト層用材料として用いて、レジストパターンを形成する方法は、
(Ia)基板、該基板上に形成されるフォトレジスト層、および該フォトレジスト層上に形成される保護層を有する液浸リソグラフィー用のレジスト積層体を形成する工程、
(IIa)該レジスト積層体に所望のパターンを有するフォトマスクおよび縮小投影レンズを介し、該縮小投影レンズとレジスト積層体間を液体で満たした状態でエネルギー線を照射し、フォトレジスト層のフォトマスクパターンに対応した特定領域を選択的に露光する液浸露光工程、および
(IIIa)該露光されたレジスト積層体を現像液で処理する工程
を含む液浸リソグラフィー法によるレジストパターン形成方法であって、
該フォトレジスト層および/または保護層が本発明の重合体を含むことを特徴とする。
【0115】
この方法のレジスト積層体は、基材上にフォトレジスト層(L3)を有するレジスト積層体であって、該フォトレジスト層(L3)が該積層体の最表面に形成されており、該フォトレジスト層(L3)が本発明の重合体に酸で解離してアルカリ可溶性基に変換可能な保護基Y2を持たせた重合体と光酸発生剤を含むことを特徴とする露光紫外光が波長193nm以上である液浸リソグラフィー用レジスト積層体(以下、「第二のレジスト積層体」ということもある)である。
【0116】
本発明者らは、これらフォトレジスト層(L3)を最表面に有する第二のレジスト積層体を、純水を液状媒体として用いる液浸フォトリソグラフィープロセスに用いることで、従来のArFレジストやKrFレジストからなる被膜表面では解決困難であった液浸露光プロセスによるパターンの欠陥、不良を改善できることを見出した。
【0117】
本発明において、酸解離性重合体からなるフォトレジスト層(L3)は、それ自体、最表面に使用し純水に接触させても、撥水性、耐水性、防水性の少なくとも1つに優れるため、フォトレジスト層(L3)に含まれる光酸発生剤の拡散や溶出、クェンチャ−の拡散や溶出などを抑制することができると考えられる。
【0118】
第二のレジスト積層体は前記酸解離性重合体からなるフォトレジスト層(L3)を基材に直接施したものであってもよいし、従来のArFレジストやKrFレジストからなるフォトレジスト層(L3−1)上に、前述と同様保護の役割を有する層として施したものであってもよい。
【0119】
なかでも最外層を形成するフォトレジスト層(L3)は、露光後の現像特性を著しく低下させない範囲で、撥水性が高い方が好ましい。
【0120】
例えば、好ましくは対水接触角で70°以上、より好ましくは75°以上、特に好ましくは80°以上であり、上限の好ましくは110°以下、より好ましくは100°以下、特に好ましくは90°以下である。
【0121】
フォトレジスト層(L3)表面の対水接触角が低すぎると、純水との接触後、水の浸透速度が早くなり、フォトレジスト層(L3)自体の吸水や膨潤が大きくなったり、または、フォトレジスト層(L3)に含まれる光酸発生剤やアミン類などの添加物が溶出し、解像度や微細パターンの形状に悪影響を与えるため好ましくない。また、従来のフォトレジスト層(L3−1)上に本発明の最外層を形成するフォトレジスト層(L3)を積層させる場合、下層のフォトレジスト層(L3−1)へ水が達しやすくなり、上記と同様、解像度や微細パターンの形状に悪影響を与えるため好ましくない。
【0122】
また、フォトレジスト層(L3)表面の対水接触角が高すぎると、露光後、現像時の照射部分の現像液溶解速度が低下し、解像度や微細パターンの形状に悪影響を与えるため好ましくない。
【0123】
また、さらに、最表面のフォトレジスト層(L3)は吸水性(吸水速度)の低いものが好ましい。
【0124】
吸水性(吸水速度)が高すぎると純水との接触後、水の浸透速度が早くなり、フォトレジスト層(L3)への水の浸透速度が速くなるため好ましくない。
【0125】
フォトレジスト層(L3)の吸水性(吸水速度)が高すぎる、純水との接触後、フォトレジスト層(L3)に含まれる光酸発生剤やアミン類などの添加物が溶出し、解像度や微細パターンの形状に悪影響を与えるため好ましくない。また、従来のフォトレジスト層(L3−1)上に本発明の最外層を形成するフォトレジスト層(L3)を積層させる場合、下層のフォトレジスト層(L3−1)へ水が達しやすくなり、上記と同様、解像度や微細パターンの形状に悪影響を与えるため好ましくない。
【0126】
例えば、吸水性(吸水速度)は、QCM法により測定でき、吸水による重量増加速度(吸水速度)として算出可能である。
【0127】
また第二のレジスト積層体において最外層を形成するフォトレジスト層(L3)は、波長193nm以上の光線に対して透明であることが必要である。
【0128】
それによって、例えば、193nm波長を用いるArFリソグラフィー、248nm波長を用いるKrFリソグラフィーにおいても純水を用いる液浸露光プロセスが有用に利用できる。
【0129】
具体的には、193nm以上の波長において、吸光係数で1.0μm-1以下、好ましくは0.8μm-1以下、より好ましくは0.5μm-1以下、最も好ましくは0.3μm-1以下である。
【0130】
フォトレジスト層(L3)の吸光係数が大きすぎると、レジスト積層体全体の透明性を低下させるため微細パターン形成時の解像度を低下させたり、パターン形状を悪化させたりするため好ましくない。
【0131】
第二のレジスト積層体のフォトレジスト層(L3)に含まれる酸解離性重合体は、酸で解離してアルカリ可溶性基に変換可能な保護基Y2を有することが重要であり、つまりポジ型のレジストとして動作可能なものである。したがって、フォトレジスト層(L3)はさらに光酸発生剤を必須成分として含み、必要に応じて、アミン類やその他レジストとして必要な添加物を含んでなる。
【0132】
酸解離性重合体に含まれる保護基Y2は、酸と反応する前はアルカリに不溶または難溶であるが酸の作用により、アルカリに可溶化させることができる官能基(−OR)である。このアルカリへの溶解性の変化により、ポジ型のレジストのベース重合体として利用できるものになる。
【0133】
具体的には、
【化24】

(式中、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R14、R18、R19、R20、R21、R22、R24、R25、R26、R27、R28、R29は同じかまたは異なり、炭素数1〜10の炭化水素基;R13、R15、R16は同じかまたは異なり、Hまたは炭素数1〜10の炭化水素基;R17、R23は同じかまたは異なり、炭素数2〜10の2価の炭化水素基)
が好ましく利用でき、さらに具体的には
【化25】

などが好ましく例示される。
【0134】
以上の保護基Y2のなかでも、酸でOH基に変換できる保護基Y3の少なくとも1種が好ましい。
【0135】
酸でOH基に変換できる保護基Y3としては、
【化26】

(式中、R31、R32、R33およびR34は同じかまたは異なり、いずれも炭素数1〜5のアルキル基)で示される基が好ましくあげられる。
【0136】
より具体的には、
【化27】

が好ましく例示でき、なかでも酸反応性が良好な点で、
【化28】

が好ましく、さらに透明性が良好な点で、−OC(CH33、−OCH2OCH3、−OCH2OC25が好ましい。
【0137】
また、酸でOH基に変換できる保護基Y3は、なかでも、酸によりpKa=11以下の酸性を示すOHに変換可能なものが好ましく、さらにはpKa=10以下、特にはpKa=9以下のOH基に変換可能ものが好ましい。
【0138】
それによって露光後の現像特性が良好となり、高解像度の微細パターンが可能となるため好ましい。
【0139】
具体的には、OH基に変換可能な保護基Y3が直接結合する炭素原子に、含フッ素アルキル基または含フッ素アルキレン基が結合したものが好ましく、下式:
【化29】

(式中、Rf3は炭素数1〜10のエーテル結合を有していてもよい含フッ素アルキル基;R2は水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基および炭素数1〜10のエーテル結合を有していてもよい含フッ素アルキル基から選ばれるもの)で表される部位を有することが好ましい。
【0140】
2はなかでも炭素数1〜10のエーテル結合を有していてもよい含フッ素アルキル基であることが好ましい。
【0141】
さらには、Rf3、R2は共にパーフルオロアルキル基であることが好ましく、具体的には、
【化30】

などの部位が好ましい。
【0142】
またさらには、下式:
【化31】

(式中、Rf3は炭素数1〜10のエーテル結合を有していてもよい含フッ素アルキル基;R2は水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基および炭素数1〜10のエーテル結合を有していてもよい含フッ素アルキル基から選ばれるもの)で表される部位を有するものが、水溶性、現像液溶解性の面でより好ましく、具体的には、
【化32】

などの部位を有するものが好ましい。
【0143】
保護基Y2を有する酸解離性含フッ素重合体は、フッ素含有率で30質量%以上であることが好ましく、より好ましくは40質量%以上、特に好ましくは50質量%以上である。
【0144】
フッ素含有率が低くなりすぎると、撥水性が低くなったり、吸水性が大きくなりすぎるため好ましくない。
【0145】
一方、フッ素含有率の上限は75質量%であり、好ましくは70質量%、より好ましくは65質量%である。
【0146】
フッ素含有率が高すぎると、被膜の撥水性が高くなり過ぎて、現像液溶解速度を低下させたり、現像液溶解速度の再現性を悪くしたりするため好ましくない。
【0147】
第二のレジスト積層体で最表面のフォトレジスト層(L3)に用いる保護基Y2を有する酸解離性重合体は、前述の本発明の重合体の−OR1を前述の保護基Y2の少なくとも1種に置き換えたものであって、その結果ポジ型レジストとしての動作を可能とするものである。本発明の重合体に保護基Y2を導入する方法としては定法が採用できる。
【0148】
第二のレジスト積層体において、フォトレジスト層(L3)は前記酸解離性重合体に加えて、光酸発生剤を含んでなる。
【0149】
光酸発生剤は国際公開公報第01/74916号パンフレットに記載の光酸発生剤(b)と同様のものが同様に好ましく例示でき、本発明でも有効に使用できる。
【0150】
具体的には、光を照射することによって酸またはカチオンを発生する化合物であって、例えば有機ハロゲン化合物、スルホン酸エステル、オニウム塩(特に中心元素がヨウ素、イオウ、セレン、テルル、窒素またはリンであるフルオロアルキルオニウム塩など)、ジアゾニウム塩、ジスルホン化合物、スルホンジアジド類など、またはこれらの混合物があげられる。
【0151】
より好ましい具体例としては、つぎのものがあげられる。
【0152】
(1)TPS系:
【化33】

(式中、X-はPF6-、SbF6-、CF3SO3-、C49SO3-など;R1a、R1b、R1cは同じかまたは異なり、CH3O、H、t−Bu、CH3、OHなど)
【0153】
(2)DPI系:
【化34】

(式中、X-はCF3SO3-、C49SO3-、CH3−φ−SO3-、SbF6-
【化35】

など;R2a、R2bは同じかまたは異なり、H、OH、CH3、CH3O、t−Buなど)
【0154】
(3)スルホネート系:
【化36】

(式中、R4a
【化37】

など)
【0155】
通常、フォトレジスト層(L3)は、例えば酸解離性重合体と前記光酸発生剤からなるものを溶剤に溶解させたレジスト組成物を作成し、塗布することによって形成される。
【0156】
第二の積層体でフォトレジスト層(L3)を形成するためのレジスト組成物における光酸発生剤の含有量は、酸解離性重合体100重量部に対して0.1〜30重量部が好ましく、さらには0.2〜20重量部が好ましく、最も好ましくは0.5〜10重量部である。
【0157】
光酸発生剤の含有量が0.1重量部より少なくなると感度が低くなり、30重量部より多く使用すると光酸発生剤が光を吸収する量が多くなり、光が基板まで充分に届かなくなって解像度が低下しやすくなる。
【0158】
フォトレジスト層(L3)を形成するためのレジスト組成物には、上記の光酸発生剤から生じた酸に対して塩基として作用できる有機塩基を添加してもよい。有機塩基は国際公開第01/74916号パンフレットに記載のものと同様のものが好ましく例示でき、本発明でも有効に使用できる。
【0159】
具体的には、含窒素化合物から選ばれる有機アミン化合物であり、例えばピリジン化合物類、ピリミジン化合物類、炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基で置換されたアミン類、アミノフェノール類などがあげられ、特にヒドロキシル基含有アミン類が好ましい。
【0160】
具体例としては、ブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリアミルアミン、ピリジンなどが好ましくあげられる。
【0161】
フォトレジスト層(L3)を形成するためのレジスト組成物における有機塩基の含有量は、光酸発生剤の含有量に対して0.1〜100モル%が好ましく、さらに好ましくは、1〜50モル%である。0.1モル%より少ない場合は解像性が低くなり、100モル%よりも多い場合は低感度になる傾向にある。
【0162】
その他、レジスト組成物に、必要に応じて国際公開第01/74916号パンフレットに記載の添加物、例えば、溶解抑制剤、増感剤、染料、接着性改良剤、保水剤などこの分野で慣用されている各種の添加剤を含有させることもできる。
【0163】
また、第二のレジスト積層体におけるフォトレジスト層(L3)を形成するためのレジスト組成物において、溶剤は、国際公開公報第01/74916号パンフレットに記載の溶剤と同様のものが同様に好ましく例示でき、本発明でも有効に使用できる。
【0164】
具体的には、セロソルブ系溶剤、エステル系溶剤、プロピレングリコール系溶剤、ケトン系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤、またはこれらの混合溶剤が好ましくあげられる。さらに酸解離性重合体の溶解性を高めるために、CH3CCl2F(HCFC−141b)などの含フッ素炭化水素系溶剤やフッ素アルコール類などのフッ素系溶剤を併用してもよい。
【0165】
これらの溶剤の量は、溶解させる固形分の種類や塗布する基材、目標の膜厚、などによって選択されるが、塗布のし易さという観点から、フォトレジスト組成物の全固形分濃度が0.5〜70重量%、好ましくは1〜50重量%となるように使用するのが好ましい。
【0166】
第二のレジスト積層体において、その層構成の好ましい第一は、基板上に、酸解離性重合体を含むフォトレジスト層(L3)を形成されてなるレジスト積層体(X1)である。
【0167】
これらのレジスト積層体(X1)は、基板上に、本質的にフォトレジスト層(L3)のみを積層したもので、フォトレジスト層(L3)自体、波長193nm以上の紫外線に対して透明性が高く、それらの紫外光を用いるリソグラフィープロセスにおいてポジ型レジストとして働き、良好なパターン形成が可能なものである。さらに液浸リソグラフィーにおいて用いられる水による悪影響を最小限にできる点で好ましい。
【0168】
レジスト積層体(X1)において、フォトレジスト層(L3)の膜厚は、作製するデバイスの種類や目的、それを得るためのエッチングなどのプロセス条件、レジスト層の種類(透明性やドライエッチング耐性の程度など)によって異なり、適宜選択されるが、通常10〜5000nm、好ましくは50〜1000nm、より好ましくは100〜500nmである。
【0169】
第二のレジスト積層体において、その層構成の好ましい第二は、基材上にあらかじめ形成されたフォトレジスト層(L3−1)上に、酸解離性重合体を含むフォトレジスト層(L3)が形成されてなるレジスト積層体(X2)である。
【0170】
これらのレジスト積層体(X2)は、従来のレジスト材料からなるフォトレジスト層(L3−1)上に、水に対する保護層の役割で酸解離性重合体を含むフォトレジスト層(L3)を積層したもので、フォトレジスト層(L3−1)、(L3)の両層が露光および現像工程によって、同時にパターン形成されるものである。
【0171】
これらのレジスト積層体におけるフォトレジスト層(L3−1)は、従来のフォトレジスト組成物を用いて形成される層であり、例えばノボラック樹脂とジアゾナフトキノンを主成分とするポジ型フォトレジスト(g線、i線リソグラフィー)、ポリヒドロキシスチレンをバインダー樹脂に用いた化学増幅型ポジ型またはネガ型レジスト(KrFリソグラフィー)、側鎖に脂環式構造を有するアクリル系ポリマーやポリノルボルネン構造を有する脂環式重合体などを用いた化学増幅型ポジ型フォトレジスト(ArFリソグラフィー)を成膜して得られる層である。
【0172】
なかでも、本発明の液浸リソグラフィーに用いる場合は、ポリヒドロキシスチレンをバインダー樹脂に用いた化学増幅型ポジ型レジスト、側鎖に脂環式構造を有するアクリル系ポリマーやポリノルボルネン構造を有する脂環式重合体などを用いた化学増幅型ポジ型フォトレジスト、特には側鎖に脂環式構造を有するアクリル系ポリマーやポリノルボルネン構造を有する脂環式重合体などを用いた化学増幅型ポジ型フォトレジストであることが好ましい。
【0173】
レジスト積層体(X2)において、フォトレジスト層(L3)の膜厚は、酸解離性重合体の種類、液浸露光条件、水との接触時間などによって異なり、適宜選択されるが、通常1〜500nm、好ましくは10〜300nm、より好ましくは20〜200nm、特には30〜100nmである。
【0174】
レジスト積層体(X2)において、フォトレジスト層(L3−1)の膜厚は、作製するデバイスの種類や目的、それを得るためのエッチングなどのプロセス条件、レジスト層の種類(透明性やドライエッチング耐性の程度など)によって異なり、適宜選択されるが、通常10〜5000nm、好ましくは50〜1000nm、より好ましくは100〜500nmである。
【0175】
このレジスト積層体(X2)は下層のフォトレジスト層(L3−1)が有するリソグラフィー性能(例えば成膜性、感度、解像度、パターン形状)およびドライエッチング耐性などを利用しながら、フォトレジスト層(L3−1)では不十分であった液浸露光時の水に対する問題点を解決できるものである。
【0176】
なお、最表面の酸解離性重合体からなるフォトレジスト層(L3)自体も同様の形状でパターン形成可能であるため、現像後のパターン表面の形態やラフネスなどを向上できる点で好ましい。
【0177】
第二のレジスト積層体(X1)、(X2)における基板としては、例えばシリコンウェハ;ガラス基板;有機系または無機系反射防止膜が設けられたシリコンウェハやガラス基板;表面に各種の絶縁膜、電極および配線などが形成された段差を有するシリコンウェハ;マスクブランクス;GaAs、AlGaAs等のIII−V族化合物半導体ウェハやII−VI族化合物半導体ウェハ;水晶、石英またはリチウムタンタレイト等の圧電体ウェハなどがあげられる。
【0178】
また、いわゆる基板の上にて限定されるものではなく、基板上の導電膜あるいは絶縁膜など所定の層の上に形成されてよい。また、かかる基板上に例えばBrewer Science社製のDUV−30、DUV−32、DUV−42、DUV−44などの反射防止膜(下層反射防止層)を施すことも可能であるし、基板を密着性向上剤によって処理してもよい。
【0179】
基材にフォトレジスト層(L3)を形成する方法、フォトレジスト層(L3−1)上にフォトレジスト層(L3)を設けてレジスト積層体を形成する方法、さらにはそのフォトレジスト積層体(X1)、(X2)を用いて液浸露光により微細パターンを形成する方法については、前述のフォトレジスト層(L1)上に保護層(L2)を設けてレジスト積層体を形成する方法、さらにはそのフォトレジスト積層体を用いて液浸露光により微細パターンを形成する方法が同様に採用できる。
【0180】
例えばレジスト積層体(X1)については、従来のレジスト層形成法および液浸露光を含む工程を行うことにより微細パターンが形成可能である。
【0181】
またレジスト積層体(X2)については、前述のフォトレジスト層(L1)の代わりにフォトレジスト層(L3−1)を、保護層(L2)の代わりにフォトレジスト層(L3)を用い、同様にしてレジスト積層体を形成でき、それらレジスト積層体を用い、同様にして、液浸露光を含む工程を行うことにより微細パターンが形成可能である。
【実施例】
【0182】
つぎに実施例をあげて本発明を具体的に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0183】
なお、物性の評価に使用した装置および測定条件は以下のとおりである。
【0184】
(1)NMR
NMR測定装置:BRUKER社製
1H−NMR測定条件:400MHz(テトラメチルシラン=0ppm)
19F−NMR測定条件:376MHz(トリクロロフルオロメタン=0ppm)
【0185】
(2)数平均(重量平均)分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により、東ソー(株)製のGPC HLC−8020を用い、Shodex社製のカラム(GPC KF−801を1本、GPC KF−802を1本、GPC KF−806Mを2本直列に接続)を使用し、溶媒としてテトラハイドロフラン(THF)を流速1ml/分で流して測定したデータより算出する。
【0186】
実施例1
(2−フルオロアクリル酸5,5,5−トリフルオロ−4−ヒドロキシ−4−(トリフルオロメチル)ペンタン−2−イルの合成)
窒素導入管、滴下漏斗、温度計、シリカゲル乾燥管、セプタムラバーキャップ、スタラーチップを装着した四つ口フラスコを乾燥し、5,5,5−トリフルオロ−4−ヒドロキシ−4−(トリフルオロメチル)ペンタン−2−オール(5,5,5−trifluoro−4−hydroxy−4−(trifluoromethyl)pentan−2−ol)22.5g(100mmol)、ピリジン79g(100mmol)、THF50mlを加え氷−水浴で冷却した。攪拌しながら2−フルオロアクリル酸フルオライド10g(110mmol)を内温5℃以下でゆっくりと滴下した。その後窒素下室温で一夜間攪拌した。反応混合物に水100mlとジイソプロピルエーテル50mlを加え分液した。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液2回、希塩酸水溶液1回、飽和食塩水2回でそれぞれ洗浄し無水硫酸マグネシウム上で乾燥した。得られた溶液を濃縮し、ハイドロキノン存在下、減圧にて蒸留することにより無色透明の液体を得た。構造はIR、19F−NMR、1H−NMRにて調べ、2−フルオロアクリル酸5,5,5−トリフルオロ−4−ヒドロキシ−4−(トリフルオロメチル)ペンタン−2−イルと同定した。収量19.5g(収率65.7%)、沸点57〜65℃(1.0mmHg)。
19F−NMR(アセトン−d6、ppm):−75.7(3F)、−76.9(3F)、−117.4(1F)
1H−NMR(アセトン−d6、ppm):1.41(3H、CH3)、2.29(1H、CH2)、2.54(1H、CH2)、5.44(2H、H2C=)、5.71(1H、CH)、6.92(1H、OH)
【0187】
実施例2
(2−フルオロアクリル酸5,5,5−トリフルオロ−4−ヒドロキシ−4−(トリフルオロメチル)ペンタン−2−イルの単独重合体の合成)
窒素導入管、減圧ライン、温度計、セプタムラバーキャップ、スタラーチップを装着した三つ口フラスコを乾燥し、実施例1で合成した2−フルオロアクリル酸5,5,5−トリフルオロ−4−ヒドロキシ−4−(トリフルオロメチル)ペンタン−2−イル3.0g(10mmol)、THF15mlを加えドライアイス−アセトン浴で冷却する。AIBN60mg(0.4mmol)を加えた後、攪拌しながら減圧して脱酸素を行った。窒素で置換した後水浴にて60℃に加温し3時間攪拌した、室温に戻して20時間攪拌した後、反応混合物をn−ヘキサン300mlに攪拌しながら投入し再沈殿にて目的とする樹脂を得た。構造は19F−NMR、1H−NMRにて調べ、2−フルオロアクリル酸5,5,5−トリフルオロ−4−ヒドロキシ−4−(トリフルオロメチル)ペンタン−2−イルの単独重合体と同定した。GPCで測定したスチレン標準の数平均分子量は27580、重量平均分子量は30880であった。収量2.7g(収率90%)。
19F−NMR(アセトン−d6、ppm):−75.6(3F)、−76.9(3F)、−161.2〜−167.8(1F)
1H−NMR(アセトン−d6、ppm):1.42(3H、CH3)、2.24(1H、CH2)、2.47(3H、CH2)、5.22(1H、CH)、6.72(1H、OH)
【0188】
比較例1
(メタクリル酸5,5,5−トリフルオロ−4−ヒドロキシ−4−(トリフルオロメチル)ペンタン−2−イルの単独重合体の合成)
2−フルオロアクリル酸フルオライドに代えてメタクリル酸フルオライドを用いたほかは実施例1と同様の方法でメタクリル酸5,5,5−トリフルオロ−4−ヒドロキシ−4−(トリフルオロメチル)ペンタン−2−イルを得た。この単量体3.0g(10mmol)にTHF15mlを加えドライアイス−アセトン浴で冷却し、AIBN60mg(0.4mmol)を加えた後、攪拌しながら減圧して脱酸素を行った。窒素で置換した後水浴にて55℃に加温し2時間攪拌した、室温に戻して20時間攪拌した後、反応混合物をn−ヘキサン300mlに攪拌しながら投入し再沈殿にて目的とする樹脂を得た。構造は19F−NMR、1H−NMRにて調べ、メタクリル酸5,5,5−トリフルオロ−4−ヒドロキシ−4−(トリフルオロメチル)ペンタン−2−イルの単独重合体と同定した。GPCで測定したスチレン標準の数平均分子量は18300、重量平均分子量は23130であった。収量0.84g(収率28%)。
【0189】
比較例2
溶媒(THF)を用いなかったほかは比較例1と同じ反応条件でメタクリル酸5,5,5−トリフルオロ−4−ヒドロキシ−4−(トリフルオロメチル)ペンタン−2−イルの単独重合体を得た。GPCで測定したスチレン標準の数平均分子量は207120、重量平均分子量は295720であった。収量2.1g(収率70%)。
【0190】
試験例1
実施例2ならびに比較例1および2でそれぞれ得た重合体について、つぎの方法で静的接触角、前進接触角、後退接触角、転落角を調べた。結果を表1に示す。
【0191】
試料の作製:
ガラス基板に実施例2ならびに比較例1および2でそれぞれ得た重合体の10質量%メチルアミルケトン(MAK)溶液をスピンコート(300rpm、3秒;2000rpm、25秒)し、110℃で180秒乾燥して、試料を作製する。
【0192】
静的接触角:
水平に置いた試料の重合体膜表面にマイクロシリンジから水、n−ヘキサデカンを2μl滴下し、滴下1秒後の静止画をビデオマイクロスコープで撮影することにより求める。
【0193】
前進接触角、後退接触角、転落角:
水平に置いた試料の重合体膜表面にマイクロシリンジから、水の場合は20μl、n−ヘキサデカンの場合は5μl滴下し、試料基板を毎秒2°の速度で傾斜させ、液滴が転落し始めるまでを、ビデオマイクロスコープで動画として記録する。その動画を再生し、液滴が転落し始める角度を転落角とし、転落角における液滴の進行方向側の接触角を前進接触角、進行方向と反対側を後退接触角とする。
【0194】
試験例2
実施例2ならびに比較例1および2でそれぞれ得た重合体について、つぎの方法で標準現像液に対する溶解速度を調べた。結果を表1に示す。
【0195】
試料の作製:
金で被覆された直径24mmの水晶振動子板に実施例2ならびに比較例1および2でそれぞれ得た重合体10質量%MAK溶液をスピンコート(300rpm、5秒;2000rpm、30秒)し、110℃で90秒乾燥して、厚さ約100nmの重合体被膜を作製する。
【0196】
標準現像液に対する溶解速度の測定:
標準現像液として2.38%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用い、水晶振動子法(QCM法)により水に対する溶解速度を測定する。膜厚は水晶振動子板の振動数から換算して算出し測定する。
【0197】
上記で作製した試料の水晶振動子板を純水に浸し、浸漬させた時点から時間に対する被膜の膜厚変化を振動数の変化により測定し、単位時間あたりの溶解速度(nm/sec)を算出する(参考文献:Advances in Resist Technology and Proceedings of SPIE Vol. 4690, 904(2002))。
【0198】
試験例3
実施例2ならびに比較例1および2でそれぞれ得た重合体について、ガラス転移温度(Tg)および熱分解温度(Td)を測定した。結果を表1に示す。
【0199】
ガラス転移温度(Tg):
示差走査熱量計(SEIKO社製、RTG220)を用いて、30℃から150℃までの温度範囲を10℃/分の条件で昇温−降温−昇温(2回目の昇温をセカンドランと呼ぶ)させて得られるセカンドランにおける吸熱曲線の中間点をTg(℃)とする。
【0200】
熱分解温度(Td):
島津製作所製TGA−50型熱天秤を用い、10℃/分の昇温速度で5%質量減少の始まる温度を測定する。
【0201】
試験例4
実施例2ならびに比較例1および2でそれぞれ得た重合体について、つぎの方法により透過率ならびに屈折率を測定した。結果を表1に示す。
【0202】
試料の作製:
8インチのシリコンウェハ基板に、実施例2ならびに比較例1および2でそれぞれ得た重合体10質量%MAK溶液のそれぞれを、スピンコーターを用いて、はじめに300rpmで3秒間、ついで4000rpmで20秒間ウェハを回転させながら塗布し、乾燥後約100nmの膜厚になるように調整しながら被膜を形成した。
【0203】
屈折率の測定:
分光エリプソメーター(J.A.Woollam社製のVASE ellipsometer)を用いて各波長光におけるk値、屈折率および膜厚を測定する。
【0204】
【表1】

【0205】
実施例3(レジスト積層体の形成)
(1)フォトレジスト層(L1)の形成
ArFリソグラフィー用フォトレジストTArF−P6071(東京応化工業(株)製)を、スピンコーターにて、8インチのシリコン基板上に回転数を変えながら200〜300nmの膜厚に調整して塗布した後、130℃で60秒間プリベークしてフォトレジスト層(L1)を形成した。
【0206】
(2)保護層(L2)の形成
上記(1)で形成したフォトレジスト層(L1)上に、実施例2で得た単独重合体を含む塗布用組成物を、スピンコーターで、初めに300rpmで3秒間、ついで4000rpmで20秒間ウェハを回転させ膜厚約100nmに調整しながら保護層(L2)を形成し、フォトレジスト積層体を形成した。
【0207】
(3)現像
上記(2)で得たレジスト積層体について、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド2.38質量%の標準現像液で温度23℃、時間60秒間で静止パドル現像を行った後純水リンスを行った。
【0208】
その結果、保護層(L2)が完全に除去されたことが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0209】
【図1】本発明の第一のレジスト積層体の形成方法および液浸露光微細パターン形成方法の各工程(a)〜(e)を説明するための概略図である。
【符号の説明】
【0210】
L0 基板
L1 フォトレジスト層
L2 保護層
11 マスク
12 露光領域
13 エネルギー線
14 縮小投影レンズ
15 純水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1):
【化1】

(式中、R1は水素原子または酸素原子、窒素原子、硫黄原子もしくはハロゲン原子を含んでいてもよい鎖状もしくは環状の飽和もしくは不飽和の1価の炭素数1〜15の炭化水素基)で示される重合性含フッ素単量体。
【請求項2】
式(I):
−(M)−(N)− (I)
(式中、Mは、式(1):
【化2】

(式中、R1は水素原子または酸素原子、窒素原子、硫黄原子もしくはハロゲン原子を含んでいてもよい鎖状もしくは環状の飽和もしくは不飽和の1価の炭素数1〜15の炭化水素基)で示される重合性単量体由来の構造単位;Nは式(1)で示される単量体と共重合可能な単量体由来の構造単位)で示され、構造単位Mを1〜100モル%、構造単位Nを0〜99モル%含む含フッ素重合体。
【請求項3】
(I)基板および該基板上に形成されるフォトレジスト層を有する液浸リソグラフィー用のレジスト積層体を形成する工程、
(II)該レジスト積層体に所望のパターンを有するフォトマスクおよび縮小投影レンズを介し、該縮小投影レンズとレジスト積層体間を液体で満たした状態でエネルギー線を照射し、フォトレジスト層のフォトマスクパターンに対応した特定領域を選択的に露光する液浸露光工程、および
(III)該露光されたレジスト積層体を現像液で処理する工程
を含む液浸リソグラフィー法によるレジストパターン形成方法であって、
該フォトレジスト層が請求項2記載の重合体を含むことを特徴とするレジストパターン形成方法。
【請求項4】
(Ia)基板、該基板上に形成されるフォトレジスト層、および該フォトレジスト層上に形成される保護層を有する液浸リソグラフィー用のレジスト積層体を形成する工程、
(IIa)該レジスト積層体に所望のパターンを有するフォトマスクおよび縮小投影レンズを介し、該縮小投影レンズとレジスト積層体間を液体で満たした状態でエネルギー線を照射し、フォトレジスト層のフォトマスクパターンに対応した特定領域を選択的に露光する液浸露光工程、および
(IIIa)該露光されたレジスト積層体を現像液で処理する工程
を含む液浸リソグラフィー法によるレジストパターン形成方法であって、
該フォトレジスト層および/または保護層が請求項2記載の重合体を含むことを特徴とするレジストパターン形成方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−167258(P2009−167258A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−4932(P2008−4932)
【出願日】平成20年1月11日(2008.1.11)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】