説明

金属含有膜の形成方法

【課題】熱処理を行わずに、金属を含有した連続膜を形成する金属含有膜の形成方法を提供する。
【解決手段】水素化アルミニウムリチウムとシクロペンタシランとを含有する液体12をセル11内に充填し、液体12とセル11の内壁面11aとを接触させる。次いで、セル11の外壁面11bの一領域11b’にスポットUV照射器14を密着させて紫外線Vを照射することで、領域11b’の裏面側となる内壁面11aの一領域11a’にシリコン膜21aと金属膜21bとが順次積層された金属含有膜21を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属含有膜の形成方法に関し、特に、アルミニウム化合物を含有する液体を用いたアルミニウム膜の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウムは多くの電子デバイスの配線材料として用いられている。アルミニウム膜の形成方法としては、スパッタリング法、真空蒸着法、CVD法等の真空プロセスが知られている。真空プロセスには大掛かりな真空装置が必要であるだけでなく、莫大な消費エネルギーを必要とするため、消費エネルギー上も不利である。
【0003】
また、真空プロセスを必要としない成膜方法として、電解メッキや無電解メッキ等の成膜方法もあるが、特に、アルミニウム膜は酸化されやすいため、メッキ法により成膜することは難しい。
【0004】
これに対して、近年、アルミニウム等の金属粒子を含有する塗布液を基体上に成膜し、200℃以下の加熱処理と光照射を同時に行うことで、残留有機物を除去した金属膜を形成する方法が報告されている(例えば、特許文献1参照)。この方法によれば、塗布により金属膜が形成できるため、上述した真空プロセスと比較して、コスト的に安価であり、消費エネルギーを低く抑えられるという利点がある。
【0005】
【特許文献1】特開2004−207143号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載された金属膜の形成方法では、加熱処理と光照射とを同時に行うため、工程的に煩雑である。また、この方法により形成される金属膜は金属粒子膜となるため、金属の連続膜と比較して配線として用いた場合の抵抗値が高くなる。さらに、上記金属粒子膜を連続膜にするためには高温での熱処理が必要であり、プラスチック基板への形成は難しい。
【0007】
本発明は、熱処理を行わずに、金属を含有する連続膜を形成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述したような課題を解決するために、本発明における金属含有膜の形成方法は、基体の表面に金属含有膜を形成する方法において、金属化合物を含有する液体と前記基体の表面とを接触させた状態で、光を照射することで、当該基体の当該液体との接触面の光照射領域に金属含有膜を形成することを特徴としている。
【0009】
このような金属含有膜の形成方法によれば、上記金属化合物を含有する液体と基体とを接触させた状態で、光を照射することで、熱処理工程を行わなくても析出された金属を含む連続膜が形成される。また、光照射のみで金属含有膜を形成可能であることから、金属含有膜の形成工程が簡略化される。
【発明の効果】
【0010】
以上、説明したように、本発明の金属含有膜の形成方法によれば、熱処理工程を行わなくても金属含有膜を形成できることから、耐熱性の低いプラスチックの基体の表面にも金属含有膜を形成することができる。また、金属含有膜の形成工程が簡略化されるため、生産性に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の金属含有膜の形成方法における実施の形態の一例について詳細に説明する。
【0012】
(第1実施形態)
まず、本発明に用いる金属化合物を含有する液体を用意する。本実施形態では、金属化合物の他にシリコン化合物を含有する液体を用いて、シリコン含有膜と金属膜とが積層された金属含有膜を形成する。
【0013】
ここで、金属化合物には、後述する溶媒中に完全に溶解せずに、分散した状態で維持されるものを用いることが好ましい。これは、後工程で、金属化合物が分散された液体と基体の表面とを接触させた状態で、光を照射する際に、基体の液体との接触面の光照射領域に金属結晶が析出し易くなるためである。
【0014】
本実施形態では、金属化合物として、例えば水素化アルミニウムリチウムからなるアルミニウム化合物を用いることとする。なお、ここでは、アルミニウム化合物からなる金属化合物を用いてアルミニウム膜を形成する例について説明するが、銅、金、銀等の他の金属を含有する化合物を用いて、その金属の含有膜を形成する場合であっても、本発明は適用可能である。
【0015】
また、シリコン化合物は、主鎖はシリコンで構成され、さらにシリコンとシリコン以外の原子または置換基との結合を含む化合物であることとする。シリコンに結合される原子としては、水素、炭素、酸素、窒素、硫黄、りん、ホウ素、ハロゲン等が挙げられ、シリコンに結合される置換基としては、上記原子を含む置換基、すなわち、ヒドロキシル基、カルボニル基、エステル基、アルキル基、アルケニル基、アルコキシル基、アリール基、複素環基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アミド基、チオール基等が挙げられる。
【0016】
上記シリコン化合物は、後述する溶媒中に溶解させることが好ましい。そして、上述したような金属化合物とシリコン化合物とを、後述するように液体に含有させて、この液体と基体とを接触させた状態で光を照射することで、基体における液体との接触面の光照射領域に、金属膜とシリコン−シリコン結合を主体とし、上記シリコン以外の原子または置換基を含むシリコン含有膜との積層膜が形成される。
【0017】
ここでは、上記シリコン化合物として例えば水素化珪素を用い、後工程では、金属膜とシリコン膜との積層膜を形成することとする。水素化珪素としては、環状水素化珪素、直鎖状および分岐鎖状水素化珪素のいずれであってもよく、環状水素化珪素には、単環水素化珪素だけでなく、環状水素化珪素が二つ以上のシリコン原子を共有する状態で連結されたはしご状の環状水素化珪素、また、水素化珪素の単環構造が3次元的に連結されたかご状の環状水素化珪素等も含まれることとする。上述した中でも、特に、Sin2n(ただし、n≧4の整数)の化学式で表される単環水素化珪素またはSin2n+2で表される直鎖状および分岐鎖状水素化珪素(ただし、n≧3の整数)を用いることが、汎用性が高く好ましい。
【0018】
具体的には、Sin2nとしては、シクロテトラシラン(Si48)、シクロペンタシラン(Si510)、シクロヘキサシラン(Si612)、シクロヘプタシラン(Si714)等が挙げられる。また、Sin2n+2としては、トリシラン(Si38)、ノーマルテトラシラン(Si410)、イソテトラシラン(Si410)、ノーマルペンタシラン(Si512)、イソペンタシラン(Si512)、ネオペンタシラン(Si512)、ノーマルヘキサシラン(Si614)、ノーマルヘプタシラン(Si716)、ノーマルオクタシラン(Si818)、ノーマルノナシラン(Si920)またはこれらの異性体が挙げられる。さらに、Sin2n+2として、シクロペンタシランにシリル基が結合した状態のシリルシクロペンタシランを用いてもよい。これらは単独で用いても、複数の水素化珪素を混合して用いてもよい。また、上記nが3未満のモノシラン(SiH4)、ジシラン(Si26)が混在していてもよい。ここでは、式(1)に示すシクロペンタシラン(Si510)を単独で用いることとする。
【0019】
【化1】

【0020】
このシクロペンタシランは、合成したものをそのまま用いても、予め単離されたものを用いてもよい。シクロペンタシランを合成する場合には、例えばフェニルジクロロシランをテトラヒドロフラン中、金属リチウムで環化させてデカフェニルシクロペンタシランを生成する。次いで、塩化アルミニウムの存在下、塩化水素で処理し、さらに水素化アルミニウムリチウム、シリカゲルで処理することにより製造することができる。
【0021】
そして、上記水素化アルミニウムリチウムからなる金属化合物と上記シクロペンタシランからなるシリコン化合物とを適当な溶媒に添加し、金属化合物を分散させるとともにシリコン化合物を溶解させることで、金属化合物とシリコン化合物とを含有する液体を生成する。上記溶媒としては、金属化合物を分散させて、シリコン化合物を溶解し、これらと反応しないものであれば、特に限定されるものではない。
【0022】
このような溶媒として、例えば、n−ヘプタン、n−オクタン、デカン、トルエン、キシレン、シメン、デュレン、インデン、ジペンテン、テトラヒドロナフタレン、デカヒドロナフタレン、シクロヘキシルベンゼン等の炭化水素系溶媒、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、p−ジオキサン等のエーテル系溶媒、さらに、プロピレンカーボネート、γ−ブチルラクトン、n−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルスルホキシド、シクロヘキサノンなどの非プロトン性極性溶媒を好ましいものとして挙げることができる。これらの溶媒は、単独でもまたは2種以上の混合物としても使用できる。ここでは、例えばトルエンを用いることとする。
【0023】
また、金属化合物とシリコン化合物とを含有する液体中には、ラジカル発生剤が含有されていてもよい。このようなラジカル発生剤としては、ビイミダゾール系化合物、ベンゾイン系化合物、トリアジン系化合物、アセトフェノン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、α−ジケトン系化合物、多核キノン系化合物、キサントン系化合物、アゾ系化合物等が挙げられる。
【0024】
次に、金属含有膜を形成する基体に上述した金属化合物とシリコン化合物を含有する液体を接触させる。この場合には、例えば図1に示すように、石英からなるセル11(基体)内に上記液体12を充填することで、セル11の内壁面11aと液体12とを接触させた状態とする。そして、後述するように、光照射を行うことで、内壁面11aにシリコン膜と金属膜とが積層された金属含有膜を形成する。ここで、セル11内に上記液体12を充填する工程は、アルゴン(Ar)等の不活性ガス雰囲気下で行い、充填後は、キャップ13により蓋をして密閉状態とする。これは、後工程で形成する金属含有膜中に酸素等が取り込まれることを防ぐためである。
【0025】
なお、ここでは、金属含有膜を形成するセル11(基体)の材質が石英であることとするが、基体の材質としては、石英の他にガラスやプラスチックであってもよい。特に、耐熱性の低いプラスチックである場合には、熱処理工程を経ることなく金属含有膜を形成することができるため、本発明を好適に用いることができる。ただし、本実施形態のように、基体を介して光を照射する場合には、基体の材質は照射する光に対して透過性の高いものであることが好ましい。
【0026】
ここでは、後述するように、200nm以上450nm以下の光を透過させることから、上記波長範囲の光の透過率が高い材質の基体を用いることが好ましく、例えば図2に示すように、ガラスセルと石英セルとを比較した場合には、200nm以上450nm以下の光の透過率が高い石英セルを用いることが好ましい。また、プラスチックであれば、上記波長の範囲で透過性を有するポリオレフィン系フィルム等を用いることが好ましい。
【0027】
次いで、再び図1に示すように、液体12が充填された状態のセル11に光を照射する。具体的には、セル11と液体12との接触面付近の液体12に光が照射されるようにする。ここでは、例えばスポットUV照射器14をセル11の外壁面11bの一領域11b’に密着させて、光を照射することで、光がセル11の壁を透過して、領域11b’の裏面側となる内壁面11aの一領域11a’付近の液体12に照射される。これにより、液体12中のシクロペンタシランの結合が切断され、再結合して、領域11a’に選択的にa−Siからなるシリコン膜21aが形成される。また、液体中の水素化アルミニウムリチウムが分解されて、シリコン膜21a上にアルミニウム結晶が析出し、アルミニウムからなる連続した金属膜21bが形成される。これにより、シリコン膜21aと金属膜21bとが順次積層された金属含有膜21が形成される。
【0028】
上記光の照射波長範囲としては、紫外波長域を主波長域とする波長200nm以上450nm以下であることが好ましく、200nm以上320nmよりも小さい波長の光と、320nm以上450nm以下の波長の光の両方を照射することが、さらに好ましい。上述した2つの光の波長を照射することで、シクロペンタシランのSi−Si結合およびSi−H結合を切断し、再結合させてシリコン膜21aを確実に形成することが可能となるとともに、シリコン膜21aの形成速度を速めることができる。さらに、上記範囲の光を照射することで、シリコン膜21a上にアルミニウム結晶を析出し、アルミニウムからなる金属膜21bを確実に形成することが可能となる。
【0029】
ここでは、UV照射器14の光源として、例えば水銀キセノンランプを用い、フィルターを用いて、290nm付近、325nm付近、365nm付近にピーク波長を有する紫外線Vを照射する。なお、照射する光の波長範囲は、用いるシリコン化合物および金属化合物の種類によって、適宜設定するが、シリコン化合物中の結合を切断し、再結合させるには、紫外線Vを照射することが、汎用性も高く、好ましい。
【0030】
なお、紫外線Vの光源としては、上記以外にも低圧または高圧の水銀ランプ、重水素ランプ、アルゴン、クリプトン、キセノン等の希ガスの放電光の他、YAGレーザー、アルゴンレーザー、炭酸ガスレーザー、XeF、XeCl、XeBr、KrF、KrCl、ArF、ArClなどのエキシマレーザーなどを使用することができる。
【0031】
また、上記紫外線Vの照射エネルギーは、UV照射器14の出力と照射時間により調整し、照射エネルギーを変化させることで、上記金属含有膜21の膜厚が規定されることとする。
【0032】
また、紫外線Vの照射エネルギーが十分に高い場合には、上述した内壁面11aの一領域11a’に金属含有膜21が形成されるのと同時に、この領域11a’に液体12を介して対向する内壁面11aの対向領域11a’’にも紫外線Vが照射されるため、金属含有膜が形成される。ただし、対向領域11a’’付近の液体12に照射される紫外線Vの照射エネルギーは、領域11a’付近の液体12に照射される紫外線Vの照射エネルギーよりも低くなるため、対向領域11a’’に形成される金属含有膜は、上記金属含有膜21よりも薄くなる。
【0033】
このような金属含有膜の形成方法によれば、熱処理工程を行わずに、シリコン膜21aと金属膜21bとが順次積層された金属含有膜21を形成できることから、耐熱性の低いプラスチックからなる基体の表面にも金属含有膜21を形成することができる。また、紫外線Vを照射するだけで金属含有膜21を形成可能であることから、金属含有膜21の形成工程が簡略化されるため、生産性にも優れている。
【0034】
特に、本実施形態では、シリコン膜21aと金属膜21bとが積層された金属含有膜21を同一工程で形成することができ、例えば半導体デバイスを製造する場合には、半導体層と配線層とを同一工程で成膜することができるため、製造工程を大幅に簡略化することができる。また、形成される金属膜21bは、金属粒子膜ではなく、アルミニウム結晶が析出して形成された連続膜であることから、配線層として用いた場合に金属粒子膜よりも抵抗値を低く抑えることができる。
【0035】
また、光照射領域にのみ金属含有膜21を形成することが可能であるため、光照射領域の位置および形状を制御することで、任意の位置に任意の形状のシリコン膜をパターン形成することができる。これにより、成膜とパターンニングを同時に行うことができる。
【0036】
なお、本実施形態では、セル11の内壁面11aの一領域11a’に選択的に金属含有膜21を形成する例について説明したが、セル11の内壁面11aの全域に金属含有膜21を形成する場合には、液体12が充填された部分のセル11の外壁面11bに全体的に紫外線Vを照射すれば、セル11の内壁面11aの全域にシリコン膜21を形成することが可能である。
【0037】
(第2実施形態)
本実施形態では、例えば平板からなる基体に金属含有膜を形成する場合について、図2を用いて説明する。なお、第1実施形態と同様の構成には同一の番号を付して説明する。
【0038】
まず、図3(a)に示すように、容器15に水素化アルミニウムリチウムからなる金属化合物とシクロペンタシランからなるシリコン化合物を含有した液体12を充填する。次いで、例えば石英からなる基板16の一主面側のみ上記液体12に浸漬させた状態で基板16を保持する。続いて、基板16の液体12との接触面16aとは反対側の面側から基板16の全域に向けて紫外線Vを照射することで、紫外線Vが基板16を透過して基板16と液体12との接触面付近の液体12に照射される。なお、上述した工程はAr等の不活性ガス雰囲気下で行われることとする。
【0039】
これにより、図3(b)の要部拡大断面図に示すように、基板16の液体12との接触面16a全域に、a-Siからなるシリコン膜21aとアルミニウムからなる金属膜21bとが順次積層された金属含有膜21が形成される。
【0040】
なお、ここでは、基板16の液体12との接触面16aとは反対側の面側から紫外線Vを照射したが、上記接触面16a側に、直接、紫外線Vを照射してもよい。この場合には、液体12が充填された容器15の底面にシリコン膜21を形成する面を上方に向けた状態で基板16を配置する。次いで、上方側から基板16の全域に向けて紫外線Vを照射する。これにより、基板16と液体12との接触面16aに金属含有膜21が形成される。
【0041】
また、基板16の液体12との接触面16a側に、直接、紫外線Vを照射する場合には、上述したような浸漬法以外にも、例えばスピンコート法、ディップコート法、スプレー法等により基板16の表面に液体12を塗布した後、塗布面側から紫外線Vを照射してもよい。
【0042】
なお、ここでは、基板16の表面全域に金属含有膜21を形成する例について説明したが、光照射領域の位置および形状を制御することで、任意の位置に任意の形状の金属含有膜21をパターン形成することが可能である。この場合には、例えばパターンが形成されたマスクを介して光照射を行うことにより、基板16の表面に金属含有膜21をパターン形成してもよく、また、スポットUV照射器を用いて、描写的に金属含有膜21をパターン形成してもよい。これにより、シリコン膜21aと金属膜21bとが順次積層された金属含有膜21の形成とパターンニングを同一工程で行うことが可能となる。
【0043】
このような金属含有膜の形成方法によれば、熱処理工程を行わずに、光照射のみで金属含有膜を形成可能であることから、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0044】
(第3実施形態)
本実施形態では、金属の単層膜を形成する例について、図4を用いて説明する。なお、第1実施形態と同様の構成には同一の番号を付して説明する。この場合には、例えば水素化アルミニウムリチウムからなる金属化合物を例えばトルエンからなる溶媒に分散させた液体12’を、第1実施形態と同様に、Ar雰囲気下でセル11に充填することで、セル11の内壁面11aと液体12’とを接触させた状態とし、キャップ13により蓋をして密閉状態とする。
【0045】
次いで、スポットUV照射器14をセル11の外壁面11bの一領域11b’に密着させて紫外線Vを照射する。これにより、紫外線Vがセル11の壁を透過して領域11b’の裏面側となる内壁面11aの一領域11a’付近の液体12’に照射される。これにより、液体12’中の水素化アルミニウムリチウムからアルミニウム結晶が析出され、領域11a’に選択的にアルミニウムからなる連続した金属膜22が形成される。この際、紫外線Vの照射条件等により、酸化アルミニウム膜が形成されたり、形成された金属膜22の表面側が酸化して、酸化アルミニウム膜になる場合もある。
【0046】
このような金属含有膜の形成方法によっても、熱処理工程を行わずに、光照射のみで金属膜22を形成可能であることから、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【実施例】
【0047】
上述した実施形態の実施例について、具体的に説明する。
(実施例1)
図1を用いて説明した第1実施形態と同様に、Ar雰囲気下で、20mlのトルエン中にシクロペンタシランを1mmol、水素化アルミニウムリチウムを10mmol、塩化アルミニウム0.56mmolの濃度で含有する液体12を用意した。この液体12をAr雰囲気下で2mlスクリューキャップ付石英セル11に充填した。次いで、スポットUV照射器(浜松ホトニクス製 LC−5(03−typeフィルター付き))14を、上記石英セル11の外壁面11bの一領域11b’に密着させて、3.6W/cm2の出力で光を照射した。このスポットUV照射器14からの照射光は、図5のグラフの放射スペクトルを示すように、照射波長範囲が200nm〜450nmであり、200nm以上320nmより小さい波長範囲で、290nmと305nmにピーク(A,B)を有するとともに、320nm以上450nm以下の波長範囲で、365nmに最大ピーク(C)を有し、325nmにもピーク(D)を有している。この光を6分間照射したところ、領域11a’に光沢をもつ析出膜が観察された。
【0048】
この析出膜について、TEM像および電子回折画像を確認するとともに、エネルギー分散X線(EDX)スペクトルを測定した。この結果、図6に示すTEM像では、セル11の表面に100nm程度の均一なa−Si膜上に、100nm程度の金属膜が形成されていることが確認された。このうち、表面側の金属膜については、図7に示す電子回折画像により、アルミニウム膜であることが確認された。また、図8に示すEDXスペクトルでは、膜内の成分として、顕著なSiとAlのピークが確認された。なお、このスペクトルでは酸素(O)のピークも検出されたが、これについては、分析前にアルミニウム膜の表面側が酸化されたことによる酸素由来であることが確認された。
【0049】
(実施例2)
図4を用いて説明した第3実施形態と同様に、Ar雰囲気下で、20mlのトルエン中に、水素化アルミニウムリチウムを12mmol、塩化アルミニウム0.56mmolの濃度で含有させた液体12’を用意した。この液体12’をAr雰囲気下で2mlスクリューキャップ付石英セル11に充填した。次いで、スポットUV照射器(浜松ホトニクス製 LC−5(03−typeフィルター付き))14を、上記石英セル11の外壁面11bの一領域11b’に密着させた状態で、実施例1と同様の放射スペクトルを有する光を3.6W/cm2の出力で、6分間照射した。これにより、領域11a’に黒色光沢をもつ析出膜が観察された。この析出膜について、TEM像(図示省略)および電子回折画像(図示省略)を確認したところ、100nm程度の酸化アルミニウム膜の中に10nm程度のアルミニウム微結晶ができていることが確認された。
【0050】
(比較例1)
実施例1、2に対する比較例1として、実施例1と同様に、20mlのトルエン中にシクロペンタシランを1mmol、水素化アルミニウムリチウムを10mmol、塩化アルミニウム0.56mmolの濃度で含有する液体12を用意し、Ar雰囲気下で2mlスクリューキャップ付石英セル11に充填した。次いで、バンドパスフィルター(365nm)を介して、スポットUV照射器(浜松ホトニクス製 LC−5(03−typeフィルター付き))14を、上記石英セル11の外壁面11bの一領域11b’に密着させた状態で、3.6W/cm2の出力で光を照射した。この光を20分間照射したところ、析出膜は確認されなかった。したがって、波長365nmのみの光の照射では、シリコン膜とアルミニウム膜とが順次積層された金属含有膜が形成されないことが確認された。
【0051】
(比較例2)
実施例1、2に対する比較例2として、20mlのトルエン中に塩化アルミニウム0.56mmolを塩化水素バブリングを行うことでトルエン中に溶解させた後、この溶液を2mlスクリューキャップ付石英セル11に充填した。次いで、スポットUV照射器(浜松ホトニクス製 LC−5(03−typeフィルター付き))14を、上記石英セル11の外壁面11bの一領域11b’に密着させて、実施例1と同様の放射スペクトルを有する光を3.6W/cm2の出力で、10分間照射した。この結果、析出膜は確認されず、塩化アルミニウムのトルエン溶液を用いた場合には、アルミニウム膜は形成されないことが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の金属含有膜の形成方法に係る第1実施形態を説明するための断面図である。
【図2】石英セルおよびガラスセルの透過率を示すグラフである。
【図3】本発明の金属含有膜の形成方法に係る第2実施形態を説明するための構成図(a)、要部拡大図(b)である。
【図4】本発明の金属含有膜の形成方法に係る第3実施形態を説明するための断面図である。
【図5】実施例1に用いるスポットUV照射器の放射スペクトルである。
【図6】実施例1で生成された析出膜のTEM像である。
【図7】実施例1で生成された析出膜の電子回折図形である。
【図8】実施例1で生成された析出膜のEDXスペクトルである。
【符号の説明】
【0053】
11…セル、12、12’…液体、16…基板、21…金属含有膜、21a…シリコン膜、21b…金属膜、V…紫外線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体の表面に金属含有膜を形成する方法において、
金属化合物を含有する液体と前記基体の表面とを接触させた状態で、光を照射することで、当該基体の当該液体との接触面の光照射領域に金属含有膜を形成する
ことを特徴とする金属含有膜の形成方法。
【請求項2】
請求項1記載の金属含有膜の形成方法において、
前記液体は前記金属化合物とシリコン化合物とを含有しており、
前記金属含有膜は金属膜とシリコン含有膜との積層膜である
ことを特徴とする金属含有膜の形成方法。
【請求項3】
請求項2記載の金属含有膜の形成方法において、
前記シリコン化合物は水素化珪素であるとともに、前記シリコン含有膜はシリコン膜である
ことを特徴とする金属含有膜の形成方法。
【請求項4】
請求項2記載の金属含有膜の形成方法において、
前記金属化合物はアルミニウム化合物であるとともに、前記金属膜はアルミニウム膜である
ことを特徴とする金属含有膜の形成方法。
【請求項5】
請求項4記載の金属含有膜の形成方法において、
前記アルミニウム化合物は水素化アルミニウムリチウムである
ことを特徴とする金属含有膜の形成方法。
【請求項6】
請求項1記載の金属含有膜の形成方法において、
前記金属含有膜は金属膜である
ことを特徴とする金属含有膜の形成方法。
【請求項7】
請求項6記載の金属含有膜の形成方法において、
前記金属化合物はアルミニウム化合物であり、前記金属膜はアルミニウム膜である
ことを特徴とする金属含有膜の形成方法。
【請求項8】
請求項7記載の金属含有膜の形成方法において、
前記アルミニウム化合物は水素化アルミニウムリチウムである
ことを特徴とする金属含有膜の形成方法。
【請求項9】
請求項1記載の金属含有膜の形成方法において、
前記金属化合物は前記液体中に分散されている
ことを特徴とする金属含有膜の形成方法。
【請求項10】
請求項1記載の金属含有膜の形成方法において、
前記基体の前記液体との接触面とは反対側から、前記基体を介して前記光を照射することで、当該接触面の光照射領域に前記金属含有膜を形成する
ことを特徴とする金属含有膜の形成方法。
【請求項11】
請求項1記載の金属含有膜の形成方法において、
前記光照射領域の位置および形状を制御することで、前記金属含有膜を任意の位置および任意の形状にパターン形成する
ことを特徴とする金属含有膜の形成方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2007−154276(P2007−154276A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−352888(P2005−352888)
【出願日】平成17年12月7日(2005.12.7)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】