説明

関節損壊の予防

【課題】関節または筋骨格疾患を患う対象における関節損壊を治療、予防、またはそのリスクを低減させるための薬学的組成物および方法の提供。
【解決手段】ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤またはその薬学的に許容される塩および薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物であり、HDAC阻害剤としては、ヒドロキサム酸誘導体、短鎖脂肪酸、環状テトラペプチド、ベンズアミド誘導体、または求電子性ケトン誘導体である。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
背景
本発明は、関節における軟骨および骨の分解および吸収を阻害することによって、関節または筋骨格疾患を患う対象における関節損壊を治療、予防、またはそのリスクを低減させるために、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤を、あるいは他の薬剤と共に用いることに関する。
【0002】
関節損壊は通常、脊椎関節症、関節リウマチ、変性関節疾患、痛風、感染症、癌、または外傷に伴って発生する。
【0003】
脊椎関節症は、未分化型脊椎関節症、強直性脊椎炎、若年性強直性脊椎炎、反応性関節炎、ライター症候群、乾癬性関節炎、ならびにクローン病および潰瘍性結腸炎に関連する脊椎関節症からなる一群の疾患である。脊椎関節症特有の特徴としては、非対称性関節炎、筋付着部の炎症(enthesitis)、生殖器および皮膚の病変、眼および腸の炎症、先行または現行の感染性障害との関連、ならびにヒト白血球抗原(HLA)B27との強い関連が挙げられる。脊椎関節症における末梢関節炎は、突然発症し、主に下肢、特に膝、足首、および足首よりも下の部分に起こる。これは典型的には非対称性であり、1〜3つの関節のみが冒されることが多い。ソーセージ指(指炎)、仙腸関節炎、および脊椎腱付着部症により、脊椎関節症と診断される。脊椎関節症の真の原因はまだ知られていない。脊椎関節症とは区別する必要がある別の損壊性関節症は、自己免疫疾患である関節リウマチである。小関節の対称的な多発性関節炎が、関節リウマチの特徴である。脊椎関節症の病因は関節リウマチのものとは異なるものの、罹患した関節の主要な病理は、共通して腱および靭帯などの滑膜および滑膜外構造の炎症、関節軟組織周囲の炎症細胞浸潤、マクロファージ、単球、および線維芽細胞からの炎症誘発性メディエータおよび酵素の産生、滑膜細胞増殖、ならびに軟骨および骨の分解および吸収からなり、これらは全て関節構造の損壊に寄与する。関節損壊は、関節包、靭帯、または腱の付着部位で起こる。この場所は非常に脈管が多いため、細菌の侵入および抗原沈着が起こりやすい。
【0004】
これまで、現在利用可能な治療法はすべて、関節の炎症および痛みの急激な悪化を抑制することを目的としているが、炎症または免疫反応を抑えるだけでは、関節損壊に至る軟骨および骨の分解および吸収の長期的なプロセスを止めるには不十分である(Lee, DM., et al., Lancet 358: 903-911, 2001)。脊椎関節症および関節リウマチの自然経過は、生涯にわたる再燃期および寛解期のいずれかであり、死に至るのは大抵、非ステロイド抗炎症薬(NSAID)の長期使用に関連する胃腸の出血、ならびにステロイド、免疫抑制剤、および他の疾患修飾抗リウマチ薬(DMARD)の長期使用に関連する感染症または肝腎毒性などの医療上の作用による。主要な炎症誘発性サイトカインである腫瘍壊死因子-α(TNF-α)を、TNF-αに対する抗体または可溶性TNF-α受容体のいずれかを注射して中和する臨床試験により、いくつかの治療的抗炎症効果が得られているが、主な懸念事項は、治療を継続的に行わなければならないこと、効力が持続する期間が反復投与により減少すると考えられること、中断すると疾患の活性が増加する可能性があること、長期適用により感染の機会が増えること、そして関節損壊のプロセスは止まらないことである(Moreland, LW., et al., N. Engl. J. Med. 337: 41-147, 1997)。このように、関節損壊を防ぎ、機能的な状態を維持するための効果的な治療法が緊急に必要である。
【発明の開示】
【0005】
概要
本発明により、驚くべきことに、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤の投与が、軟骨および骨の分解および吸収を阻害することにより関節損壊の予防に効果的であることが、明らかにされた。
【0006】
関節または筋骨格疾患を患う対象において関節損壊を治療、予防、またはそのリスクを低減するための、組成物および方法が提供される。この方法は、対象に、治療的有効量のHDAC阻害剤またはその薬学的に許容される塩を、あるいは他の薬剤と共に、薬学的に許容される担体と、関節における軟骨および骨の分解および吸収を阻害するために投与する工程を含む。
【0007】
本発明の化合物は、経口的、関節内、腹腔内、鞘内(intrathecally)、動脈内、鼻内、実質内、皮下、筋肉内、静脈内、皮内、直腸内、および局所的に投与することができる。投与量は、インビトロおよびインビボ試験で観察された有効濃度に基づく。本発明の化合物の様々な有効な実用性は、付随的に、順次、あるいは、第二のHDAC阻害剤、有機ビスホスホネート、化学療法剤、放射性薬剤、TNF-αアンタゴニスト、非ステロイド抗炎症薬、ステロイド、抗酸化剤、血管新生阻害剤、マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤、ビタミン、選択的エストロゲン受容体調節物質(SERM)、エストロゲン-プロゲスチン、アンドロゲン、カルシトニン、抗生物質、カテプシンK阻害剤、破骨細胞プロトンATPaseの阻害剤、HMG-CoA還元酵素の阻害剤、スタチン、インテグリン受容体アンタゴニスト、骨芽細胞同化剤、および選択的セロトニン再取り込み阻害剤などの薬剤、またはその薬学的に許容される塩もしくは混合物と組み合わせて、投与してもよいという発見によってさらに例証される。
【0008】
下記の本発明の説明および添付の図面を参照すると、本発明は、より全体的に理解され、さらなる特長が明らかとなるであろう。
【0009】
詳細な説明
本発明は好ましくは、関節リウマチ、脊椎関節症(特に、未分化型脊椎関節症、強直性脊椎炎、若年性強直性脊椎炎、反応性関節炎、ライター症候群、乾癬関節症、ならびにクローン病および潰瘍性結腸炎に関連する脊椎関節症)、または、骨損失、骨折、骨壊死、骨粗鬆症、骨減少症、グルココルチコイド誘導性骨粗鬆症、パジェット病、異常なほど増加した骨代謝回転、歯周疾患、歯損失、人工器官周囲の骨溶解、変性関節疾患、痛風性関節炎、敗血症性関節炎、骨形成不全症、骨癌、多発性骨髄腫、悪性の高カルシウム血症、転移性骨疾患、および新生物随伴症候群などの他の損壊性の関節もしくは筋骨格疾患を患う対象における関節損壊を治療、予防、またはそのリスクを低減するために使用される。骨粗鬆症または骨減少症は、不動化、骨形成異常、悪液質、神経性食欲不振、運動誘導性無月経、化学療法もしくは放射線療法誘導性無月経、アンドロゲン剥奪(deprivation)療法、ターナー症候群、嚢胞性線維症、糖尿病、甲状腺機能亢進症、副甲状腺機能亢進症、クッシング症候群、グルココルチコイド過剰、急性リンパ芽球性白血病、クラインフェルターおよびカルマン症候群、アルコール乱用、喫煙、結合組織疾患、または骨関節炎に続いて二次的に起こる。
【0010】
関節損壊は、関節の軟骨および骨における分解および吸収によって起こる。骨の吸収および付加は、それぞれ破骨細胞および骨芽細胞という2つの異なる細胞タイプにより制御されて均衡をとっている。これらの細胞は、細胞接触、サイトカイン、成長因子、およびホルモンにより密接に関係している。インターロイキン(IL)-6およびNF-κBリガンド活性化因子受容体(Receptor of Activator of NF-κB Ligand, RANK-L)が、骨芽細胞/破骨細胞コミュニケーションに関連しているとされる主要なサイトカインとして同定されている。RANK-Lは、間質細胞/骨芽細胞上に発現し、破骨細胞前駆体および成熟破骨細胞上に存在する受容体RANKと相互作用して、それらの分化および/または活性化を誘導する(Chambers, TJ., et al., J. Pathol. 192:4-13, 2000)。IL-6/RANK-L/RANK/NF-κBの機能的な均衡が乱されることで、骨内での骨溶解(分解)および吸収が起こる。例えば、関節損壊の病理発生機構は、炎症、免疫反応、感染症、または新形成から、骨芽細胞、マクロファージ、リンパ球、線維芽細胞、または癌細胞によるIL-6の過剰産生により破骨細胞が活性化されて骨吸収が増加し、IL-1βおよびTNF-αなどのマトリックス関連サイトカイン、ならびにTGF-βなどの成長因子、ならびにマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)などの酵素が放出されて軟骨および骨を分解することによって開始されうる。一方、これらサイトカインおよび成長因子はまた、IL-6産生をポジティブフィードバックループを介して増加させる。そして悪性サイクルが、軟骨および骨を分解および吸収するシグナルを増幅し始め、関節損壊が起こる。しかし、臨床試験において、TNF-αアンタゴニストによるサイトカイン活性およびMMP阻害剤による酵素活性のブロッキングまたはNSAIDもしくはステロイドによる炎症反応およびDMARDによる免疫反応の抑制のいずれも、関節炎症を緩和はしても、関節損壊のプロセスを停止させることには成功していない。その理由の1つの可能性として、間葉および線維芽細胞様滑膜細胞が炎症性サイトカイン環境に応答して変質し、局所的に浸潤性の悪性様になって、もし抑制されない場合、関節の軟骨および骨を直接分解し、IL-6/RANK-L/RANK/NF-κB経路を介して軟骨および骨を間接的に再吸収しうることが考えられる(Muller-Ladner, U., et al., Am. J. Pathol. 149:1607-1615, 1996)。
【0011】
脊椎関節症および関節リウマチなどの損壊性関節疾患を治療するために過去に用いられてきた薬は、対症的抗炎症治療または疾患修飾治療をベースにしている。対症的治療に関して主流の薬は、NSAID、全身性ステロイド、またはグルココルチコステロイドの関節内注射である。DMARDには、生体の免疫反応に影響を与えることにより関節の炎症を低減させる薬が含まれる。DMARDのと例しては、メトトレキセート、アザチオプリン、金の塩、シクロホスファミド、およびスルファサラジンが挙げられる。これら治療は全て、残念なことに、重篤な副作用を引き起こし、また、取り立てて効果的なわけではない。例えば、グルココルチコイド投与は一般的に、局所炎症に対して行われる、つまり、関節炎症部に存在する炎症細胞を直接処置するために使用されている。高用量のステロイドまたはDMARDの投与は、骨格および筋肉に対する作用を含む重篤な副作用および感染症を生体に引き起こす。TNF-αアンタゴニストは脊椎関節症および関節リウマチ患者の一部に抗炎症作用を示すかもしれないが、あくまでも関節損壊のプロセスを妨げることはできない。さらに、活動的な結核および脱髄中枢神経系疾患の発生が、抗TNF-α療法の深刻な有害作用として認められている(Baeten, D., et al., Ann. Rheum. Dis. 62:829, 2003)。
【0012】
このためHDAC阻害剤を、あるいは他の薬剤と共に、関節または筋骨格疾患における関節損壊を防ぐために用いることは、これまでに示唆も開示もされていない。本発明は、HDAC阻害剤を、あるいは他の薬剤と共に用いて、関節における軟骨および骨の分解および吸収を阻害することによって関節損壊を治療、予防、またはそのリスクを低減できることを明らかにするものである。
【0013】
HDAC阻害剤は、複数遺伝子調節能を持つ化合物のクラスとして、ヒストンアセチル化を増加させて特定の遺伝子セットの発現を調整し、転写に対するクロマチン構造および標的遺伝子の接近可能性を調節して疾患を治療することができる(Marks, PA., et al., J. Natl. Cancer Inst., 92: 1210-6, 2000)。HDAC阻害剤は、遺伝子発現に選択的に作用し、培養腫瘍細胞で発現される遺伝子の約2%のみの発現を変える。ヒストンの過剰アセチル化により、細胞周期阻害剤(p21Cip1、p27Kip1、およびp16INK4)はアップレギュレーションされ、癌遺伝子(MycおよびBcl-2)はダウンレギュレーションされ、炎症性サイトカイン(IL-1β、IL-8、TNF-α、およびTGF-β)は抑制され、または変化しない(GAPDHおよびγ-アクチン)(Lagger et al, EMBO J., 21: 2672-81, 2002; Richon et al, Clin. Cancer Res., 8: 662-667, 2002; Richon et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA., 97: 10014-9, 2000; Van Lint et al, Gene Expr., 5: 245-3, 1996; Huang et al, Cytokine, 9: 27-36, 1997; Mishra et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA., 98: 2628-33, 2001; Stockhammer et al, J. Neurosurg., 83: 672-81, 1995; Segain et al, Gut, 47: 397-403, 2000; Leoni et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 99: 2995-3000, 2002)。ヒストン過剰アセチル化の誘導に加えて、HDAC阻害剤はまた、リボソームS3、p53、またはNF-κBのRel-Aサブユニットなどの非ヒストンタンパク質の過剰アセチル化を引き起こし、タンパク質キナーゼC(PKC)活性を調整し、タンパク質イソプレニル化を阻害し、DNAメチル化を減少させ、核内受容体に結合する(Webb et al, J. Biol. Chem., 274: 14280-7, 1999; Chen et al, Science, 293: 1653-7, 2001)。より多くの異なるメカニズムもまた、HDAC阻害剤処理後のNF-κB転写活性の阻害を示している。HDAC阻害剤は、腫瘍細胞における細胞周期の停止、細胞分化、およびアポトーシス性細胞死を誘導し、炎症性疾患において炎症反応を減少させる特性を示す(Warrell et al, J. Natl. Cancer Inst., 90: 1621-5, 1998; Vigushin et al, Clin. Cancer Res., 7: 971-6, 2001; Saunders et al, Cancer Res., 59: 399-404, 1999; Gottlicher et al, EMBO J., 20: 6969-78, 2001; Rombouts et al, Acta Gastroenterol. Belg., 64: 239-46, 2001)。クロマチン構造およびNF-κB活性の調整能により、HDAC阻害剤は、癌だけでなく炎症性疾患に対しても治療用候補となりうることが示唆される。
【0014】
このように、HDAC阻害剤の作用に基づき、HDAC阻害剤を用いることにより、主要な炎症誘発性サイトカイン(TNF-αおよびIL-6)産生、NF-κB活性、および炎症細胞浸潤を抑制し、関節疾患において抗炎症作用を示すことが期待される。抗炎症または免疫抑制を目的としたNSAID、ステロイド、DMARD、およびTNF-αアンタゴニストなどの薬剤は全てこれまで関節損壊を防ぐ効果を示していないが、本発明において驚くべきことに、HDAC阻害剤の使用が、炎症を抑制することに加えて、関節の骨および軟骨の分解および吸収を阻害することによって関節損壊を効果的に予防できることが明らかになった。
【0015】
本発明を実施するために使用される活性化合物は概して、HDAC阻害剤などのヒストン過剰アセチル化剤である。このような化合物は数多く知られている。例えば、P. Dulski, Histone Deacetylase as Target for Antiprotozoal Agents、PCT出願国際公開公報第97/11366号(1997年3月27日)を参照されたい。このような化合物の例としては以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0016】
A. トリコスタチンAおよびそのアナログ、例えば:トリコスタチンA(TSA);およびトリコスタチンC(Koghe et al. 1998. Biochem. Pharmacol. 56:1359-1364)(トリコスタチンBは単離されてはいるが、HDAC阻害剤であることは示されていない)。
【0017】
B. ペプチド、例えば:オキサムフラチン(oxamflatin) [(2E)-5-[3-[(フェニルスフォニル) アミノフェニル]-ペント-2-エン-4-イノヒドロキサム酸(Kim et al. Oncogene, 18:2461-2470 (1999)); トラポキシン(Trapoxin)A (TPX)-環状テトラペプチド(シクロ-(L-フェニルアラニル-L-フェニルアラニル-D-ピペコリニル-L-2-アミノ-8-オキソ-9,10-エポキシ-デカノイル))(Kijima et al., J. Biol. Chem. 268, 22429-22435 (1993)); FR901228、デプシペプチド(Nakajima et al., Ex. Cell Res. 241, 126-133 (1998)); FR225497、環状テトラペプチド(H. Mori et al., PCT出願国際公開公報第00/08048号 (2000年2月17日)); アピシジン(Apicidin)、環状テトラペプチド[シクロ(N-O-メチル-L-トリプトファニル-L-イソロイシニル-D-ピペコリニル-L-2-アミノ-8-オキソデカノイル)](Darkin-Rattray et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93, 13143-13147 (1996)); アピシジン1a、アピシジンIb、アピシジンIc、アピシジンIIa、およびアピシジンIIb(P. Dulski et al.、PCT出願国際公開公報第97/11366号); HC-トキシン(HC-Toxin)、環状テトラペプチド(Bosch et al., Plant Cell 7, 1941-1950 (1995)); WF27082、環状テトラペプチド(PCT出願国際公開公報第98/48825号);ならびにクラミドシン(chlamydocin)(Bosch et al.、前記)。
【0018】
C. ヒドロキサム酸ベースのハイブリッド極性化合物(HPC)、例えば:サリチルヒドロキサム酸(SBHA)(Andrews et al., International J. Parasitology 30, 761-8 (2000)); スベロイルアニリドヒドロキサム酸(suberoylanilide hydroxamic acid, SAHA)(Richon et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95, 3003-7 (1998)); アゼライックビスヒドロキサム酸(azelaic bishydroxamic acid, ABHA)(Andrews et al.、前記); アゼライック-1-ヒドロキサメート-9-アニリド(azelaic-1-hydroxamate-9-anilide, AAHA)(Qiu et al., Mol. Biol Cell 11, 2069-83 (2000)); M-カルボキシケイ皮酸ビスヒドロキサミド(CBHA)(Ricon et al.、前記); 6-(3-クロロフェニルウレイド)カーポイックヒドロキサム酸(6-(3-chlorophenylureido)carpoic hydroxamic acid, 3-Cl-UCHA)(Richon et al.、前記); MW2796(Andrews et al.、前記);およびMW2996(Andrews et al.、前記)。以下のアナログはHDAC阻害剤として有効でないことに留意されたい:ヘキサメチレンビスアセトアミド(HBMA)(Richon et al. 1998, PNAS, 95:3003-7); ジエチルbix(ペンタメチレン-N,N-ジメチルカルボキサミド)マロネート(EMBA)(Richon et al. 1998, PNAS, 95:3003-7); ピロキサミド(pyroxamide)、スクリプタイド(scriptaid)、PXD-101、およびLAQ-824。
【0019】
D. 短鎖脂肪酸(SCFA)化合物、例えば:酪酸ナトリウム(Cousens et al., J. Biol. Chem. 254, 1716-23 (1979));イソバレレート(McBain et al., Biochem. Pharm. 53:1357-68 (1997));バルプロ酸;バレレート(McBain et al.、前記);4-フェニル酪酸(4-PBA)(Lea and Tulsyan, Anticancer Research, 15, 879-3 (1995));フェニル酪酸(PB)(Wang et al., Cancer Research, 59, 2766-99 (1999));プロピオネート(McBain et al.、前記); ブチルアミド(Lea and Tulsyan、前記); イソブチルアミド(Lea and Tulsyan、前記); フェニルアセテート(Lea and Tulsyan、前記);3-ブロモプロピオネート(Lea and Tulsyan、前記);トリブチリン(tributyrin)(Guan et al., Cancer Research, 60, 749-55 (2000));アルギニンブチレート; イソブチルアミド;およびバルプロエート。
【0020】
E. ベンズアミド誘導体、例えば:MS-27-275 [N-(2-アミノフェニル)-4-[N-(ピリジン-3-イル-メトキシカルボニル)アミノメチル]ベンズアミド](Saito et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96, 4592-7 (1999));およびMS-27-275の3'-アミノ誘導体(Saito et al.、前記);ならびにCI-994。
【0021】
F. 他の阻害剤、例えば:デプデシン(depudecin)[そのアナログ(モノ-MTM-デプデシンおよびデプデシン-ビスエーテル)はHDACを阻害しない](Kwon et al. 1998. PNAS 95:3356-61);およびスクリプタイド(Su et al. 2000 Cancer Research, 60:3137-42)。
【0022】
本明細書中に用いられる用語、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)とは、ヌクレオソームコアヒストンのアミノ端尾部におけるリジン残基からのアセチル基除去を触媒する酵素である。このように、HDACは、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HAT)と共にヒストンのアセチル化状態を調節する。ヒストンのアセチル化は遺伝子発現に影響を与え、ヒドロキサム酸ベースのハイブリッド極性化合物スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)などのHDACの阻害剤が、インビトロで形質転換細胞の成長停止、分化、および/またはアポトーシスを引き起こし、インビボで腫瘍成長を阻害する。HDACは、構造の相同性に基づいて3つのクラスに分けることができる。クラスI HDAC(HDAC1、2、3、および8)は、酵母RPD3タンパク質に類似し、核に局在し、転写コリプレッサーに関連する複合体に見られる。クラスII HDAC(HDAC4、5、6、7、および9)は、酵母HDA1タンパク質に類似し、細胞において核内にも細胞質内にも局在する。SAHAなどのヒドロキサム酸ベースのHDAC阻害剤は、クラスIおよびII HDACを共に阻害する。クラスIII HDACは、酵母SIR2タンパク質に関連するニコチンアミド(NAD)依存性酵素であり、ヒドロキサム酸ベースのHDAC阻害剤によって阻害されない、構造的に隔たったクラスを形成している。
【0023】
本明細書中に用いられる用語、HDAC阻害剤とは、インビボ、インビトロ、またはその両方で、ヒストンの脱アセチル化を阻害することができる化合物である。このように、HDAC阻害剤は、少なくとも1つのヒストンデアセチラーゼの活性を阻害する。少なくとも1つのヒストンの脱アセチル化が阻害される結果、アセチル化されたヒストンが増加し、アセチル化されたヒストンの蓄積が、HDAC阻害剤の活性を評価するために適した生物学的マーカーとなる。こうして、アセチル化されたヒストンの蓄積をアッセイすることができる手法を用いて、対象となる化合物のHDAC阻害活性を測定できる。ヒストンデアセチラーゼ活性を阻害できる化合物は、他の基質にも結合でき、酵素または非ヒストンタンパク質などの他の生物学的活性分子を阻害できることが理解される。
【0024】
HDAC阻害剤は、薬学的に許容される塩の形態にすることもできる。そのような薬学的に許容される塩は、化合物の所望の薬理学的効果に有害な影響を与えない限り使用されうる。選択および製造は、当業者であれば行うことが可能である。薬学的に許容される塩の例としては、ナトリウム塩もしくはカリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩もしくはマグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩などの有機塩基を有する塩、またはトリエチルアミン塩もしくはエタノールアミン塩などの有機塩基を有する塩が挙げられる。
【0025】
本発明のHDAC阻害剤は、経口的または非経口的に投与されうる。経口投与の場合、軟および硬カプセル、錠剤、顆粒剤、散剤、液剤、懸濁剤、洗口剤などの形態で投与されうる。非経口投与の場合、クリーム、軟膏、ジェル、ローション、パッチ、坐剤、リポソーム製剤、注射液、点滴製剤、浣腸などの形態で投与され、固体、粘性溶液、生体接着性物質、または懸濁剤の形態で継続的膜吸収を維持し続けることができる。これら製剤の調製方法、およびビヒクルもしくは担体、崩壊剤、または懸濁剤は、当業者であれば容易に選択することができる。本発明のビスホスホネートおよびHDAC阻害剤は、さらなる組成物または他の薬剤および薬学的に許容される担体またはその薬学的に許容される塩を含みうる。
【0026】
本発明の別の態様では、HDAC阻害剤を有機ビスホスホネートと組み合わせて、関節損壊を治療、予防、またはそのリスクを低減させる。ビスホスホネートは、骨粗鬆症の治療および予防に用いられる強力な骨吸収阻害剤である。全体的に、ビスホスホネートは共通して、天然ピロリン酸のP-O-P構造と類似のP-C-P構造を持つ。ビスホスホネートは互いに2つの「R」基だけが異なる。そのような化合物の例としては、アレンドロネート(alendronate)、シマドロネート(cimadronate)、クロドロネート(clodronate)、チルドロネート(tiludronate)、エチドロネート(etidronate)、イバンドロネート(ibandronate)、ネリドロネート(neridronate)、オルパンドロネート(olpandronate)、リセドロネート(risedronate)、ピリドロネート(piridronate)、パミドロネート(pamidronate)、およびゾレンドロネート(zolendronate)(Rodan, GA., et al., J. Clin. Nvest. 97:2692, 1996)が挙げられるが、それらに限定されない。ビスホスホネートは、エストロゲンなどの他の再吸収抑制剤のものとは異なるメカニズムを介して骨破壊性骨吸収を阻害する。ビスホスホネートは、体表面、特に積極的な吸収を受ける表面に付着する。破骨細胞が、ビスホスホネートで満たされた骨を再吸収し始めると、吸収中に放出されたビスホスホネートが、境目をギザギザにし、骨表面に接着し、骨吸収の継続に必要なプロトンを生じる破骨細胞の能力を低下させる(Colucci, S., et al., Calcif. Tissue Int. 63:230, 1998)。骨表面からビスホスホネートを吸収を介して放出することに加えて、破骨細胞活性化を低下させるビスホスホネートのメカニズムには、IL-6産生の阻害、骨芽細胞前駆体形成の促進、破骨細胞前駆体増殖の阻害、破骨細胞におけるアポトーシスの誘導、および酵素ファルネシルジホスフェートシンターゼの阻害を介した破骨細胞コレステロール合成の阻害(Reszka, AA., et al., J. Biol. Chem. 274:34967, 1999; Tokuda, H., et al., J. Cell Biochem. 69:252, 1998)も含まれる。このように、HDAC阻害剤とビスホスホネートを組み合わせて使用することは、関節リウマチ、変性、外傷、および癌などのさらに損壊性の疾患における関節損壊を防ぐための、本発明の他の態様に関する。
【0027】
当業者に認識されているように、効果的な用量は、投与経路、賦形剤の使用、および他の治療、例えば第二のHDAC阻害剤、有機ビスホスホネート、化学療法剤、放射性薬剤、TNF-αアンタゴニスト、非ステロイド抗炎症薬、ステロイド、抗酸化剤、血管新生阻害剤、マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤、ビタミン、選択的エストロゲン受容体調節物質(SERM)、エストロゲン-プロゲスチン、アンドロゲン、カルシトニン、抗生物質、カテプシンK阻害剤、破骨細胞プロトンATPaseの阻害剤、HMG-CoA還元酵素の阻害剤、スタチン、インテグリン受容体アンタゴニスト、骨芽細胞同化剤、もしくは選択的セロトニン再取り込み阻害剤、またはその薬学的に許容される塩もしくは混合物の使用などの併用の可能性によって異なる。任意の特定の対象(例えば、ヒト、イヌ、またはネコ)に対する有効量および治療計画もまた、使用する特定の化合物の活性、年齢、体重、全体的な健康状態、性別、食餌、投与時間、排出速度、疾患の重症度および経過、ならびに患者の疾患に対する素質を含む様々な他の因子に左右されるが、通常は、投与様式に関わらず組成物の重量の0.001%〜100%である。本発明の活性化合物は任意で、脊椎関節症、関節リウマチ、および外傷、変性、または癌から生じる他の損壊性関節疾患などの関節または筋骨格疾患を患う対象における関節損壊を治療、予防、またはそのリスクを低減させることに有用な他の化合物と共に投与してもよい。それら他の化合物は任意で、同時的にまたは順次投与してもよい。本明細書に用いられる用語「同時的」は、組み合わせ効果を生じるために時間的に十分に近いことを意味する(すなわち、同時的とは、同時であってもよく、またはそれぞれが短期間に前後して起こる2以上の事象であってもよい)。本明細書に用いられる、2以上の化合物の「同時的」または「組み合わせ」投与とは、2つの化合物が、片方の存在がもう一方の生物学的効果を変化させるほど時間的に十分に近く投与されることを意味する。それら2以上の化合物は、同時に投与してもよく、または順次投与してもよい。同時投与は、投与の前に化合物を混合することによって行ってもよく、または化合物を同じ時間に異なる解剖学的位置で、もしくは異なる投与経路を使って投与することによって行ってもよい。
【0028】
本明細書に記載の発明をさらに容易に理解しうるように、以下の実施例を示す。実施例は単に例示するためのものであり、いかなる方法であれ本発明を限定するものであると見なされるべきものではないことが理解されるべきである。本明細書に引用された文献は全て、その全体が参照として明確に組み入れられる。
【0029】
実施例
実施例1: 関節損壊の予防
損壊性関節疾患の動物モデルが作製され、よく特徴付けられている(Winter CA, et al., Arthritis Rheum. 9:394-404, 1966)。体重150±20gのLong Evansラットおよび体重22±2gのICR由来雄マウスを用いた。スペース割り当ては5匹のマウスに対して45×23×15cmであった。動物はAPEC(登録商標)(Allentown Gaging, Allentown, NJ, USA)ケージで飼育し、管理された温度(22〜24℃)および湿度(60〜80%)、12時間明/暗周期の衛生学的環境下で少なくとも1週間維持した。死滅結核菌の微粉末懸濁液(DIFCO, USA; 0.3mg、0.1mlの軽量(light)ミネラルオイル中; 完全フロイントアジュバント(CFA)を、初日(1日目とする)のHDAC阻害剤の初回投与直後に右後肢の足底内領域に投与した。HDAC阻害剤を含む局所製剤は、本発明者らにより以前に作製されていた(Chung, YL., et al., Mol. Cancer Ther. 3:317-325, 2004)。1%のフェニル酪酸ナトリウムクリーム(HDAC阻害剤)を用量200mg/肢で、または0.1%のトリコスタチンA(HDAC阻害剤)軟膏を用量10mg/肢で、右後肢表面全体に一日二回、18日間連続して局所的に塗布した。後肢容積をPlethsmometer(Cat. No. 7150, UGO BASILE, Italy)およびWater cell(直径25 mm, Cat. No. 7157, UGO BASILE, Italy)により、0日目(CFA処理前)、右肢のCFA後(CFAあり)1、5、10、および15日目に測定した。18日目に右後肢を、ブランクおよびビヒクル対照群ならびに処置群から取り出した。各群6匹づつであった。取り出したばかりの組織の一部を、関節におけるTNF-α発現レベルに関するノーザンブロット解析に供した。また、組織を10%リン酸緩衝ホルマリン(pH 7.4)で固定し、10%EDTAで脱灰して、パラフィンに包埋した。切片(厚さ3μm)を、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)で染色し、p16INK4の抗体で免疫染色して、関節構造を調べた。
【0030】
結果は以下の通りであった:
a. HDAC阻害剤は関節の腫脹を抑制する。
図1Aおよび1Bに示すとおり、HDAC阻害剤は、対照群と比較するとより大幅に足首の腫脹を抑制し、抗炎症作用があることが示唆される。
【0031】
b. HDAC阻害剤は、関節において炎症誘発性サイトカインTNF-αの発現をダウンレギュレートする。
図2に示すとおり、HDAC阻害剤が関節組織においてTNF-α発現を転写レベルでダウンレギュレートすることがノーザンブロットにより示され、これは抗炎症作用と互いに関係している。
【0032】
c. HDAC阻害剤は、関節包の内側をおおう細胞において細胞周期阻害剤をアップレギュレートする。
図3Bに示される、細胞周期阻害剤p16INK4の免疫組織化学的解析の代表例から、HDAC阻害剤が、関節包の内側をおおう滑膜においてp16INK4発現を選択的にアップレギュレートすることが示され、滑膜の増殖および侵入を阻害する効果があることが示唆される。図3Aは、関節腔のH&E染色である。
【0033】
d. HDAC阻害剤は、軟骨および骨の分解および吸収を減少させて関節損壊を防ぐ。
図4Bに示すように、肉眼的切片により、図4Aに示されるブランク対照と比較して、HDAC阻害剤で処置された群において右後肢の関節全体が良好に保存されることがわかる。さらに図5Bおよび6Bにおける病理学的所見から、それぞれ図5Aおよび6Aに示されるブランク対照と比較して、HDAC阻害剤が、炎症細胞浸潤、滑膜の侵入、軟骨分解、および骨吸収から関節損壊を防ぐことが確認される。
【0034】
実施例2: 軟骨吸収の予防
IL-1αおよびオンコスタチンM(OSM、IL-6型サイトカイン)の組み合わせによって軟骨損壊が促進されることが示されている(Cawston TE., et al., Arthritis Rheum. 41:1760-1771, 1998)。IL-1αおよびOSMにより誘導される軟骨吸収を減少させるHDAC阻害剤の能力を示すために、ウシの鼻軟骨体外移植片アッセイを行った。軟骨体外移植片をIL-1α(5ng/ml)およびOSM(10ng/ml)と共に培養し、フェニル酪酸ナトリウム(0〜8mM)またはトリコスタチンA(0〜400ng/ml)で12時間処理した。軟骨体外移植片から調整培地へのコラーゲン放出の割合が、軟骨吸収の程度を示す。図7に示すとおり、HDAC阻害剤であるフェニル酪酸ナトリウムおよびトリコスタチンAは、軟骨からのコラーゲン損失を抑制する。この結果は、HDAC阻害剤が軟骨の不可逆的吸収を予防できることを示している。
【0035】
他の態様
上記より、当業者は本発明の本質的な特徴を容易に確認することができ、その精神および範囲から逸脱することなく、様々な使用および条件に適合させるために本発明の様々な変更および修飾をすることができる。例えば、上記HDAC阻害剤に構造的および機能的に類似する化合物も、本発明を実施するために用いることができる。このように、他の態様もまた特許請求の範囲に含まれる。
【0036】
本発明を実施例により好ましい態様に関して記載してきたが、本発明はそれらに限定されないことが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】図1Aおよび1Bは、HDAC阻害剤による、損壊性関節疾患の動物モデルにおける関節腫脹の抑制における効果を示す図である。図1Aは、様々な日でのブランク対照、クリームビヒクル、およびフェニル酪酸クリーム処理の、肢容積の正味の腫脹を示し、図1Bは、様々な日での軟膏対照およびトリコスタチンA軟膏処理のものを示す。
【図2】HDAC阻害剤で処置した関節において、主要な炎症誘発性サイトカインTNF-αの発現が転写レベルで大幅に抑制されることを示すノーザンブロットの結果である。
【図3】図3Aおよび3Bは、HDAC阻害剤が、関節包の内側をおおう細胞において細胞周期阻害剤をアップレギュレートすることを示す組織学的染色結果である。図3AはH&E染色を示し、図3Bはp16INK4免疫組織化学的解析の結果を示す。図3Aおよび3Bは200倍視野である。
【図4】図4Aおよび4Bは、HDAC阻害剤が関節構造を保存することを示す肢関節の肉眼的切片である。図4Aは対照群であり、図4BはHDAC阻害剤処理群である。黒矢印は、対照群における損壊した足首関節を示す。
【図5】図5Aおよび5Bは、HDAC阻害剤が関節損壊を防ぐことを示す組織学的染色結果である。図5Aは対照群であり、図5BはHDAC阻害剤処理群である。黒矢印は、対照群における増殖滑膜侵入による関節の軟骨および骨における分解および吸収を示す。図5Aおよび5Bは40倍視野である。
【図6】図6Aおよび6Bは、関節包がHDAC阻害剤によって良好に保護されることを示す組織学的染色結果である。図6Aは対照群であり、図6BはHDAC阻害剤処理群である。黒矢印は、対照群における損壊関節内の炎症細胞浸潤および骨分解の場所を示す。図6Aおよび6Bは100倍視野である。
【図7】HDAC阻害剤であるフェニル酪酸ナトリウムおよびトリコスタチンAが、ウシ鼻軟骨体外移植片培養においてIL-αおよびオンコスタチンM(OSM、IL-6型サイトカイン)誘導性コラーゲン放出を減少させ、HDAC阻害剤が軟骨吸収を防ぐ可能性が示唆されたことを示す図である。
【図1A】

【図1B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤またはその薬学的に許容される塩および薬学的に許容される担体を含む、関節の軟骨および骨の分解および吸収を阻害する必要のある対象において関節または筋骨格疾患の関節損壊を防ぐための薬学的組成物。
【請求項2】
HDAC阻害剤が、ヒドロキサム酸誘導体、短鎖脂肪酸(SCFA)、環状テトラペプチド、ベンズアミド誘導体、または求電子性ケトン誘導体である、請求項1記載の薬学的組成物。
【請求項3】
ヒドロキサム酸誘導体が、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)、ピロキサミド、M-カルボキシケイ皮酸ビスヒドロキサミド(CBHA)、トリコスタチンA(TSA)、トリコスタチンC、サリチルヒドロキサム酸(SBHA)、アゼライックビスヒドロキサム酸(ABHA)、アゼライック-1-ヒドロキサメート-9-アニリド(AAHA)、6-(3-クロロフェニルウレイド)カーポイックヒドロキサム酸(3Cl-UCHA)、オキサムフラチン、A-161906、スクリプタイド、PXD-101、LAQ-824、環状ヒドロキサム酸含有ペプチド(CHAP)、MW2796、およびMW2996からなる群より選択される、請求項2記載の薬学的組成物。
【請求項4】
環状テトラペプチドが、トラポキシンA、FR901228(FK 228またはデプシペプチド)、FR225497、アピシジン、CHAP、HC-トキシン、WF27082、およびクラミドシンからなる群より選択される、請求項2記載の薬学的組成物。
【請求項5】
短鎖脂肪酸(SCFA)が、酪酸ナトリウム、イソバレレート、バレレート、4-フェニル酪酸(4-PBA)、4-フェニル酪酸ナトリウム(PBS)、アルギニンブチレート、プロピオネート、ブチルアミド、イソブチルアミド、フェニルアセテート、3-ブロモプロピオネート、トリブチリン、バルプロ酸、およびバルプロエートからなる群より選択される、請求項2記載の薬学的組成物。
【請求項6】
ベンズアミド誘導体が、CI-994、MS-27-275(MS-275)、およびMS-27-275の3'-アミノ誘導体からなる群より選択される、請求項2記載の薬学的組成物。
【請求項7】
求電子性ケトン誘導体がトリフルオロメチルケトンまたはアルファ-ケトアミドである、請求項2記載の薬学的組成物。
【請求項8】
HDAC阻害剤がデプデシンである、請求項1記載の薬学的組成物。
【請求項9】
関節疾患が脊椎関節症である、請求項1記載の薬学的組成物。
【請求項10】
脊椎関節症が、未分化型脊椎関節症、強直性脊椎炎、若年性強直性脊椎炎、反応性関節炎、ライター症候群、乾癬関節症、ならびにクローン病および潰瘍性結腸炎に関連する脊椎関節症からなる群より選択される、請求項9記載の薬学的組成物。
【請求項11】
関節疾患が、末梢少関節炎(peripheral oligoarthritis)、腱炎、HLA-B27関連反応性関節炎、滑膜炎、または滑膜外炎である、請求項1記載の薬学的組成物。
【請求項12】
関節疾患が関節リウマチである、請求項1記載の薬学的組成物。
【請求項13】
関節疾患が、骨損失、骨折、骨壊死、骨粗鬆症、骨減少症、グルココルチコイド誘導性骨粗鬆症、パジェット病、ゴシェ病、鎌状赤血球貧血、骨髄炎、異常なほど増加した骨代謝回転、骨砕き術、歯周疾患、人工器官周囲の骨溶解、変性関節疾患、骨関節炎、痛風性関節炎、敗血症性関節炎、および骨形成不全症からなる群より選択される、請求項1記載の薬学的組成物。
【請求項14】
骨粗鬆症または骨減少症が、不動化、骨形成異常、悪液質、神経性食欲不振、運動誘導性無月経、化学療法もしくは放射線療法誘導性無月経、アンドロゲン剥奪(deprivation)療法、ターナー症候群、嚢胞性線維症、糖尿病、甲状腺機能亢進症、副甲状腺機能亢進症、クッシング症候群、グルココルチコイド過剰、急性リンパ芽球性白血病、クラインフェルターおよびカルマン症候群、アルコール乱用、喫煙、結合組織疾患、または骨関節炎に続いて二次的に起こる、請求項13記載の薬学的組成物。
【請求項15】
関節疾患が、骨癌、多発性骨髄腫、悪性の高カルシウム血症、転移性骨疾患、新生物随伴症候群、外傷、手術、化学療法、または放射線療法から引き起こされる関節損傷である、請求項1記載の薬学的組成物。
【請求項16】
第二のHDAC阻害剤、有機ビスホスホネート、化学療法剤、放射性薬剤、TNF-αアンタゴニスト、非ステロイド抗炎症薬、ステロイド、抗酸化剤、血管新生阻害剤、マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤、ビタミン、選択的エストロゲン受容体調節物質(SERM)、エストロゲン-プロゲスチン、アンドロゲン、カルシトニン、抗生物質、カテプシンK阻害剤、破骨細胞プロトンATPaseの阻害剤、HMG-CoA還元酵素の阻害剤、スタチン、インテグリン受容体アンタゴニスト、骨芽細胞同化剤、または選択的セロトニン再取り込み阻害剤、およびその薬学的に許容される塩または混合物からなる群より選択される薬剤をさらに含む、請求項1記載の薬学的組成物。
【請求項17】
ビタミンが、ニコチンアミド、ビタミンB複合体、ビタミンC、ビタミンD、およびビタミンEからなる群より選択される、請求項16記載の薬学的組成物。
【請求項18】
薬剤がHDAC阻害剤よりも前に供給される、請求項16記載の薬学的組成物。
【請求項19】
薬剤がHDAC阻害剤よりも後に供給される、請求項16記載の薬学的組成物。
【請求項20】
薬剤がHDAC阻害剤と同時に供給される、請求項16記載の薬学的組成物。
【請求項21】
薬剤が、経口的、関節内、腹腔内、鞘内(intrathecally)、動脈内、鼻内、実質内、皮下、筋肉内、静脈内、皮内、直腸内、または局所的に投与される、請求項16記載の薬学的組成物。
【請求項22】
ヒストンデアセチラーゼ阻害剤またはその薬学的に許容される塩および薬学的に許容される担体が、クリーム、ジェル、軟膏、ペースト、洗口剤、散剤、錠剤、丸剤、顆粒剤、カプセル、ローション、懸濁剤、リポソーム製剤、ナノ粒子、パッチ、坐剤、浣腸、点滴、または注射液として処方される、請求項16記載の薬学的組成物。
【請求項23】
薬剤がHDAC阻害剤とは異なる経路で供給される、請求項16記載の薬学的組成物。
【請求項24】
ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤、有機ビスホスホネート、またはその薬学的に許容される塩、および薬学的に許容される担体を含む、関節または筋骨格疾患における関節損壊を治療、予防、またはそのリスクを低減させるための薬学的組成物。
【請求項25】
ビスホスホネートが、アレンドロネート、シマドロネート、クロドロネート、チルドロネート、エチドロネート、イバンドロネート、ネリドロネート、オルパンドロネート、リセドロネート、ピリドロネート、パミドロネート、ゾレンドロネート、およびその薬学的に許容される塩または混合物からなる群より選択される、請求項24記載の薬学的組成物。
【請求項26】
関節疾患が、脊椎関節症、関節リウマチ、骨損失、骨折、骨壊死、骨粗鬆症、骨減少症、グルココルチコイド誘導性骨粗鬆症、パジェット病、ゴシェ病、鎌状赤血球貧血、骨髄炎、異常なほど増加した骨代謝回転、骨砕き術、歯周疾患、人工器官周囲の骨溶解、変性関節疾患、骨関節炎、痛風性関節炎、敗血症性関節炎、骨形成不全症、骨癌、多発性骨髄腫、悪性の高カルシウム血症、転移性骨疾患、または新生物随伴症候群である、請求項24記載の薬学的組成物。
【請求項27】
骨粗鬆症または骨減少症が、不動化、骨形成異常、悪液質、神経性食欲不振、運動誘導性無月経、化学療法もしくは放射線療法誘導性無月経、アンドロゲン剥奪療法、ターナー症候群、嚢胞性線維症、糖尿病、甲状腺機能亢進症、副甲状腺機能亢進症、クッシング症候群、グルココルチコイド過剰、急性リンパ芽球性白血病、クラインフェルターおよびカルマン症候群、アルコール乱用、喫煙、結合組織疾患、または骨関節炎に続いて二次的に起こる、請求項26記載の薬学的組成物。
【請求項28】
関節疾患が、外傷、手術、化学療法、または放射線療法から引き起こされる関節損傷である、請求項24記載の薬学的組成物。
【請求項29】
第二のHDAC阻害剤、第二のビスホスホネート、化学療法剤、放射性薬剤、TNF-αアンタゴニスト、非ステロイド抗炎症薬、ステロイド、抗酸化剤、血管新生阻害剤、マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤、ビタミン、選択的エストロゲン受容体調節物質(SERM)、エストロゲン-プロゲスチン、アンドロゲン、カルシトニン、抗生物質、カテプシンK阻害剤、破骨細胞プロトンATPaseの阻害剤、HMG-CoA還元酵素の阻害剤、スタチン、インテグリン受容体アンタゴニスト、骨芽細胞同化剤、または選択的セロトニン再取り込み阻害剤、およびその薬学的に許容される塩または混合物からなる群より選択される薬剤をさらに含む、請求項24記載の薬学的組成物。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−335666(P2006−335666A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−160257(P2005−160257)
【出願日】平成17年5月31日(2005.5.31)
【出願人】(505203151)安成製藥科技股▲分▼有限公司 (1)
【Fターム(参考)】