説明

防災システムおよび防災システムの制御方法

【課題】事故や災害などの異常事態の発生を報知する防災システムおよび防災システムの制御方法を提供する。
【解決手段】台数計測部100が基地局20のセル内にある移動局10の台数を計測し、異常判定部102が計測した台数の所定時間あたりの減少幅が閾値よりも大きいときには、そのセル内で異常事態が生じていると判定し、さらに制御部106は基地局20を制御して移動局10に対して異常を通知するための同報通信を実行させ、この同報通信がなされた移動局10に所定の警報処理を実行させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は防災システムおよび防災システムの制御方法に関し、特に、移動体通信網を用いた防災システムおよびこうした防災システムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、日本国内において、移動局の一つである携帯電話機の人口普及率は、8割超と、非常に高い水準に達している。また、携帯電話機は持ち歩くことができるので、通常、所有者の身近なところに置かれているはずである。このため、事故や自然災害などの生命にかかわる緊急事態が生じたときに報知を行なうシステムとして、携帯電話機を用いた防災システムを構築できれば、きわめて有益であると考えられている。
【0003】
そこで、あるエリアにて地震が起きることが予測されたときに、このエリア内にある無線通信端末に対して警報を行なう警報システムが開示されている(たとえば、特許文献1参照)。この警報システムでは、地震が起きることが予測されるエリアを特定した後、この特定したエリアを管轄する無線基地局に対して、この無線基地局が管轄するエリア内にある無線通信端末へ警報を行なうよう指示する。これにより、無線通信端末が行なう警報を認識した所有者は、近くにある避難場所に向かうなどの措置をとることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−297592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されている警報システムでは、地震の警報をすることはできたとしても、事故や火災,水害,土砂崩れなど、地震以外の他の種類の災害の警報をすることはできない。また、実際に災害などの異常事態が生じてしまったときに、周辺にいる移動局の所有者に対して災害に関する情報を提供しなければ、実際に起きた災害がさらに拡大し、二次災害が生じてしまう恐れがある。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、事故や災害などの異常事態の発生を報知する防災システムおよび防災システムの制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る防災システムは、基地局の管轄セル内にある移動局の台数を計測する台数計測手段と、前記計測された台数の所定時間あたりの減少幅が閾値を超えるか否かを判定する判定手段と、前記減少幅が前記閾値を超えるときには、前記管轄セル内にある移動局に所定の警報処理を実行させる制御手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る防災システムの制御方法は、複数の移動局と、これら複数の移動局のうち管轄セル内にあるものと電波を授受する少なくとも一つの基地局とを含む防災システムの制御方法であって、前記基地局の管轄セル内にある前記移動局の台数を計測し、前記計測した台数の所定時間あたりの減少幅が閾値を超えるか否かを判定し、前記減少幅が前記閾値を超えると判定したときには、前記管轄セル内にある移動局に所定の警報処理を実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る防災システムおよび防災システムの制御方法によれば、基地局の管轄セル内にある前記移動局の台数を計測し、前記計測した台数の所定時間あたりの減少幅が閾値を超えるときには、その管轄セルで異常事態が生じていると判定し、前記異常事態が生じていると判定した管轄セル内にある移動局に所定の警報処理を実行させるので、その異常事態が生じていると判定した管轄セルにいる移動局の所有者に対して異常事態の発生を報知することができる。
この結果、事故や災害などの異常事態が生じたときに、さらに二次災害が生じてしまうことを防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態1に係る防災システムの一構成例を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る防災システムで計測される移動局の台数の時間変化を示すタイムチャートである。
【図3】本発明の実施の形態2に係る防災システムに含まれる移動局の一構成例を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態2に係る防災システムに含まれる基地局の一構成例を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態3に係る防災システムに含まれる基地局の一構成例を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態3に係る防災システムに含まれる基地局が管轄するセルの構成を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態3に係る防災システムで用いられる位置情報テーブルの一例を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態4に係る防災システムに含まれる基地局の一構成例を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態4に係る防災システムに含まれる制御局の一構成例を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態4に係る防災システムで用いられる位置情報テーブルの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[実施の形態1]
以下、本発明を図面に基づいて詳細に説明する。実施の形態1は、既存の移動体通信網を用いた防災システムに関するものである。
【0012】
まず、本発明の実施の形態1に係る防災システムの構成について図1を参照して説明する。
図1は、本発明の実施の形態1に係る防災システムの一構成例を示す図である。
本発明の実施の形態1に係る防災システムは、図1に示すように、移動局12と、移動局12と電波の授受を行なう基地局20と、台数計測部100と、異常判定部102と、制御部104とにより構成されている。移動局10は携帯電話機やPHS端末機などの移動体通信端末であり、基地局20は移動局10と電波の授受を行なうものであり、両者とも既存の移動体通信網の構成要素である。台数計測部100は所定時間毎(たとえば、数十秒毎など)に移動局10からの電波に基づいてセル内にある移動局10の台数を計測するものである。異常判定部102は台数計測部100により計測された移動局10の台数に基づいて異常を判定するものである。制御部104は異常判定部102により異常が判定されたときに基地局20に所定の処理を実行させるものである。
なお、台数計測部100と、異常判定部102と、制御部104とは、それぞれ基地局20が実装していてもよく、また、複数の基地局20を制御する図示しない制御局が実装するものとしてもよい。
【0013】
次に、本発明の実施の形態1に係る防災システムの動作、特に、基地局20が管轄するセル内で異常が起きたときの動作を説明する。
基地局20が管轄するセル内で火災や水害などの災害が生じた場合、基地局20が管轄するセル内にある移動局10の多くが故障し、基地局20との間で電波の授受を行なうことができなくなる。このため、台数計測部100が所定時間毎に計測している基地局20の管轄するセル内にある移動局10の台数も、図2に示すように、災害が生じた時刻tから大幅に減少する。
異常判定部102は、台数計測部100が計測した移動局10の台数を一時的に記憶しておき、前回(すなわち、数十秒前などの所定時間前に)計測された台数から現在計測された台数を減じて得られる差分を算出し、その算出した差分が閾値(たとえば、前回計測された台数の5%や10%などに相当する台数)より大きいとき、すなわち計測した台数の所定時間あたりの減少幅が閾値よりも大きいときには、セル内にて異常が生じていると判定し、この結果を制御部104に通知する。
制御部104は、異常判定部102によって異常が生じていると判定されたときには、基地局20を制御して、基地局20が管轄するセル内にある移動局10の全てに対して異常を通知するための同報通信を実行させる。移動局10は、この同報通信を受信すると、画面に異常を報知する表示をするとともに、警報を鳴らしたり、振動を生成することによって、所有者に対して異常を報知することができる。したがって、移動局10の所有者は、異常を察知して付近にある避難所に向かうなどして災害に備えることができる。この結果、火事や水害などの災害が生じたときに、さらに二次災害が生じてしまうことを防止することが可能となる。
【0014】
以上説明した本発明の実施の形態1に係る防災システムによれば、台数計測部100が基地局20のセル内にある移動局10の台数を計測し、異常判定部102が計測した台数の所定時間あたりの減少幅が閾値よりも大きいときには、そのセル内で異常事態が生じていると判定し、さらに制御部106は基地局20を制御して移動局10に対して異常を通知するための同報通信を実行させ、この同報通信がなされた移動局10に所定の警報処理を実行させるので、その異常事態が生じていると判定したセル内にいる移動局10の所有者に対して異常事態を発生を報知することが可能となる。
この結果、自己や災害などの異常事態が生じたときに、さらに二次災害が生じてしまうことを防止することが可能となる。
【0015】
[実施の形態2]
次に、本発明の実施の形態2に係る防災システムについて説明する。
本発明の実施の形態2に係る防災システムも既存の移動体通信網を用いたものである。
【0016】
まず、本発明の実施の形態2に係る防災システムの構成を図3および図4を参照して説明する。
図3は、本発明の実施の形態2に係る防災システムに含まれる移動局12の一構成例を示すブロック図である。
移動局12は、図3に示すように、全体としての制御を司る制御部110と、基地局22との間で電波の授受を行なう無線通信部112と、所有者が行なったキー操作を制御部110に入力するキー操作部114と、制御部120からの指令に応じて画面表示を行なう画面表示部116と、現在地を含む所定の情報を格納するメモリ部118と、制御部110からの指令に応じてアラーム音を生成するアラーム生成部120と、制御部110からの指令に応じて振動を生成する振動生成部122とから構成されている。
【0017】
図4は、本発明の実施の形態2に係る防災システムに含まれる基地局22の一構成例を示すブロック図である。
基地局22は、図4に示すように、全体としての制御を司る制御部130と、移動局12との間で電波の授受を行なう無線通信部132と、無線通信部132が移動局12から受信した電波に基づいて端末識別番号や受信した電波の強度などのデータを格納するデータベース134と、データベース134に格納された端末識別番号などのデータに基づいて所定時間毎(たとえば、数十秒毎など)に管轄するセル内にある移動局12の台数を計測する台数計測部136と、台数計測部136が計測した移動局12の台数に基づいて異常を判定する異常判定部138とから構成されている。
【0018】
次に、本発明の実施の形態2に係る防災システムの動作、特に、基地局22が管轄するセル内で、火事や水害などの災害が起きた場合の動作を説明する。
基地局22が管轄するセル内で火事や水害などの災害が起きた場合、セル内にある移動局12の多くが故障し、電波の授受を行なうことができなくなるので、基地局22の無線通信部132が受信する電波が減少し、データベース134が格納する基地局22の支配下にある移動局12のデータも減少する。このため、台数計測部136がデータベース134が格納するデータに基づいて計測する移動局12の台数も短期間のうちに著しく減少してしまうことが想定される。
異常判定部138は、台数計測部136が計測した移動局12の台数を一時的に記憶しておき、前回(すなわち、数十秒前などの所定時間前)計測された台数から現在計測された台数を減じた差分を算出し、その算出した差分が閾値(たとえば、前回計測された台数の5%や10%などに相当する台数)より大きいとき、すなわち計測した台数の所定時間あたりの減少幅が閾値よりも大きいときには、セル内にて異常が生じていると判定し、この結果を制御部130に通知する。
【0019】
このように、異常判定部138によって異常が生じていると判定されたときには、制御部130は、セル内にある移動局12の全てに対して異常を通知するために、無線通信部132を制御して同報通信をおこなう。ここで、セル内にある移動局12の全てに対して同報通信を行なう技術としては、たとえば、BCMCS(Broadcast/Multicast Services)などの技術を用いることができる。
【0020】
基地局22から異常を通知する電波を移動局12の無線通信部112が受信したときには、移動局12の制御部110は、画面表示部118を制御して異常を報知するための画面を表示させるとともに、アラーム生成部120を制御してアラーム音を生成させ、さらに、振動生成部122を制御して振動を生成させる。
移動局12の制御部110がこうした制御を行なうことにより、移動局12の所有者は、周辺にて何らかの異常が生じていることを把握することができ、付近にある避難所に向かうなどして二次災害に備えることができる。
【0021】
以上説明した本発明の実施の形態2に係る防災システムによれば、基地局22の管轄するセル内にある移動局12の台数を計測し、計測した台数の所定時間あたりの減少幅が閾値をこえるときには、そのセル内で異常事態が生じていると判定し、そのセル内にある移動局12に所定の警報処理を実行させるので、その異常事態が生じていると判定したセル内にいる移動局12の所有者に対して異常事態を発生を報知することが可能となる。
この結果、事故や災害などの異常事態が生じたときに、さらに二次災害が生じてしまうことを防止することが可能となる。
【0022】
[実施の形態3]
次に、本発明の実施の形態3に係る防災システムについて説明する。
本発明の実施の形態3に係る防災システムも既存の移動体通信網を用いたものである。
なお、本発明の実施の形態3に係る防災システムの構成要素のうち、移動局12については、実施の形態2と共通するので、同一の符号を用いるとともに、詳しい説明は省略する。
【0023】
まず、本発明の実施の形態3に係る防災システムの構成を図5を参照して説明する。
図5は、本発明の実施の形態3に係る防災システムに含まれる基地局24の一構成例を示すブロック図である。
本発明の実施の形態3に係る基地局24は、図5に示すように、全体としての制御を司る制御部131と、移動局12との間で電波の授受を行なう6つの無線通信部133(133−1〜133−6)と、無線通信部133が移動局12から受信した電波に基づいて端末識別番号や受信した電波の強度などのデータを格納するデータベース135と、データベース135が格納するデータに基づいて所定時間毎(たとえば、数十秒毎など)に管轄するセル内にある移動局12の台数を計測する台数計測部137と、台数計測部137が計測した移動局12の台数に基づいて異常を判定する異常判定部139とから構成されている。
【0024】
ここで、無線通信部133が6つ設けられているのは、基地局26に指向性を有する6つのアンテナを設けられていることに基づいている。基地局24が管轄するセルは、図6に示すように、60°毎に区切られた6つのセクタに分割されており、無線通信部133の各々が各セクタを管轄している。
データベース135は、無線通信部133−1〜133−6が移動局12から受信した電波に基づいて支配下にある移動局12の端末識別番号や受信した電波の強度などのデータをセクタ毎に区別して格納する。
台数計測部137は、データベース135が格納するデータに基づいて所定時間毎(たとえば、数十秒毎など)に各セクタにある移動局12の台数を計測する。
異常判定部139は、台数計測部137によって計測された各セクタにある移動局12の台数に基づいてセクタ毎に異常を判定する。
【0025】
次に、本発明の実施の形態3に係る防災システムの動作、特に、この基地局24の管轄するセルの一セクタ内で、火事や水害などの災害が起きた場合の動作を説明する。
この場合、災害があったセクタ内にある移動局12の多くが故障し、電波の授受を行なうことができなくなるので、基地局24の無線通信部133(133−1〜133−6)のうち対応するセクタを管轄するものが受信する電波が減少し、データベース135が格納する移動局12のデータも対応するセクタ内にあるものだけ著しく減少する。このため、台数計測部25がデータベース135の格納するデータに基づいて計測する移動局12の台数も、無線通信部133のうち対応するセクタを管轄するもののみ短期間のうちに著しく減少してしまうことが想定される。
異常判定部139は、台数計測部137が計測したセクタ毎の移動局12の台数をそれぞれ一時的に記憶しておき、それぞれ、前回(すなわち、数十秒前などの所定時間前)計測された台数から現在計測された台数を減じて得られる差分を算出し、その算出した差分が閾値(たとえば、前回計測された台数の5%や10%などに相当する台数)より大きいとき、すなわち計測した台数の所定時間あたりの減少幅が閾値よりも大きいときには、対応するセクタ内にて異常が生じていると判定し、制御部131にこの結果を通知する。
【0026】
次いで、異常が生じていると判定したセクタの具体的な位置を特定する処理を行なう。
図7は、データベース135が格納している位置情報テーブルの一例を示す図である。 位置情報テーブルは、「セクタID」および「位置情報」という二つの列を含んでいる。ここで、「セクタID」は無線通信部133−1〜133−6の各々に割り振られている固有の番号を表わし、「位置情報」は無線通信部133−1〜133−6の各々に対応するセクタの位置を表わしている。
異常判定部139が一のセクタで異常が起きていると判定したときには、制御部131は、位置情報テーブルのなかから、対応するセクタの「セクタID」と紐付けされた「位置情報」を参照することにより、異常が生じた具体的な位置を特定することができる。
【0027】
続いて、制御部131は無線通信部133−1〜133−6を制御してセル内にある移動局12の全てに対して異常を通知するための同報通信を行なう。この際、データベース135に格納された位置情報テーブルから参照した「位置情報」を同時に通知する。
【0028】
こうして、移動局12は、基地局24から同報通信により異常を通知する電波を無線通信部112にて受信したときには、制御部110は、画面表示部118を制御して異常を報知するための画面を表示させ、アラーム生成部120を制御してアラーム音を生成させ、さらに、振動生成部122を制御して振動を生成させる制御を行なう。この際、画面表示部118を制御して「位置情報」を画面に表示させる。
こうした制御を行なうことにより、移動局12の所有者は、画面表示部118に表示された「位置情報」に基づいて、異常が生じている詳細な位置情報を察知することができ、誤って被災地に向かって移動して二次災害を招いてしまうことを防止できる。
【0029】
以上説明した、本発明の実施の形態3に係る防災システムによれば、セルを複数のセクタに分割し、各セクタにある移動局12の台数を計測し、計測した台数の所定時間あたりの減少幅が閾値より大きいときには、そのセクタ内で異常事態が生じていると判定し、セル内にある移動局12に所定の警報処理を実行させるので、その異常事態が生じていると判定したセル内にいる移動局12の所有者に対して異常事態を発生を報知することが可能となる。
また、警報処理として、異常事態が生じているセクタに対応する位置を移動局12の所有者に報知するので、移動局12の所有者が誤って被災地にむかって移動して二次災害を招いてしまうことを防止できる。
【0030】
[実施の形態4]
次に、本発明の実施の形態4に係る防災システムについて説明する。
本発明の実施の形態4に係る防災システムも既存の移動体通信網を用いたものである。
なお、本発明の実施の形態4に係る防災システムの構成要素のうち、移動局12など、実施の形態2と共通するものについては、同一の符号を用いるとともに、詳しい説明は省略する。
【0031】
まず、本発明の実施の形態4に係る防災システムの構成を図8および図9を参照して説明する。
図8は、本発明の実施の形態4に係る防災システムに含まれる基地局26の一構成例を示すブロック図である。
本発明の実施の形態4で用いられる基地局26は、後述する制御局30との間で有線による通信を行なう制御局通信部140が設けられている点や、台数計測部136や異常判定部138が設けられていない点で、実施の形態2に係る基地局22とは異なっている。
【0032】
図9は、本発明の実施の形態4に係る防災システムに含まれる制御局30の一構成例を示すブロック図である。
本発明の実施の形態4で用いられる制御局30は、図9に示すように、全体としての制御を司る制御部150と、制御局30の支配下にあるn個の基地局26(26−1〜26−n)の各々と有線により通信を行なうn個の基地局通信部152(152−1〜152−n)と、基地局通信部152の各々が受信した信号に基づいて基地局26の各々の支配下にある移動局12の端末識別番号や電波の強度などのデータを基地局26毎に区別して格納するデータベース154と、データベース154に格納されたデータに基づいて所定時間毎(たとえば、数十秒毎など)に基地局26の各々の支配下にある移動局12の台数を計測する台数計測部156と、台数計測部156が計測した移動局12の台数に基づいて基地局26の各々における異常を判定する異常判定部158とから構成されている。
【0033】
次に、実施の形態4に係る防災システムの動作、特に、基地局26(26−1〜26−n)のうち基地局26−xが管轄するセル内で火事や水害などの災害が起きた場合の動作を説明する。
基地局26(26−1〜26−n)は、それぞれ、管轄するセル内にある移動局12から受信した電波に載せられた情報を非同期転送モード(ATM: Asynchronous Transfer Mode)によって、制御局通信部140および制御局30の基地局通信部152(152−1〜152−n)を介して制御局30の制御部150へと伝達している。
ところが、基地局26−xが管轄するセル内で火事や水害などの災害が生じた場合、基地局26−xのセル内にある移動局12の多くが故障し、電波の授受を行なうことができなくなるので、制御局30の基地局通信部152(152−1〜152−n)のうち基地局26−xに対応する基地局通信部152−xが受信する情報のみ減少する。このため、データベース154が格納するデータも、基地局26−xの支配下にあるものだけ著しく減少すし、台数計測部156がデータベース154の格納するデータに基づいて計測する移動局12の台数も、基地局26−xの支配下にある移動局12の台数のみが著しく減少する。
異常判定部158は、台数計測部156が計測した基地局26−1〜26−nの各々の支配下にある移動局12の台数を一時的に記憶しておき、それぞれ、前回(すなわち、数十秒前などの所定時間前)計測された台数から現在計測された台数を減じた減少台数を算出し、その算出した減少台数が閾値(たとえば、前回計測された台数の5%や10%などに相当する台数)より大きいときには、対応する基地局26の管轄するセル内にて異常が生じていると判定し、この結果を制御部150に通知する。ここでは、基地局26−xが管轄するセル内にて災害が起きているので基地局26−xの支配下にある移動局12の台数の減少幅が閾値より大きいと判定され、この結果を制御部150に通知することになる。
【0034】
続いて、異常が生じた被災地を特定し、かつ、基地局26−1〜26−nのうち、この異常を同報通信により通知する制御を実行させるものを特定する処理を行なう。
図10は、データベース154が格納している位置情報テーブルの一例を示す図である。
位置情報テーブルは、図10に示すように、「基地局ID」、「グループID」、および「位置情報」という三つの列を含んでいる。ここで、「基地局ID」の列は基地局26−1〜26−nの各々に割り振っている固有の番号を表わし、「グループID」の列は隣接する複数の基地局をまとめて一つのグループとしたときに、基地局26−1〜26−nの各々が属するグループに割り振った固有の番号を表わし、「位置情報」の列は基地局26−1〜26−nの各々が管轄しているセルの具体的な位置を表わすものである。
制御部150は、異常判定部158から基地局26−xが管轄するセル内で異常が起きている旨が通知されると、位置情報テーブルのなかから、基地局26−xに対応する「基地局ID」をもつレコードを抽出し、この抽出したレコードの「位置情報」を参照することにより、異常が生じた位置を具体的に特定する。そして、抽出したレコードの「グループID」を参照し、これと同じ「グループID」を有するレコードをさらに抽出することにより、被災地の周辺にある基地局26の「基地局ID」を特定することができる。
【0035】
次いで、制御部30は基地局通信部152(152−1〜152−n)により、基地局26−1〜26−nのうち先ほど特定した「基地局ID」と対応するものに対し、管轄するセル内にある全ての移動局12に対して異常を通知する同報通信を行なうよう指示する信号を送信する。このとき、上述した処理にて特定した「位置情報」も同時に送信する。
【0036】
続いて、基地局26の各々では、制御局30から送信された信号を制御局通信部140により受信した後、制御部130は無線通信部132を制御してセル内にある移動局12の全てに対して異常を通知するための同報通信を行なう。このとき、制御局30から受信した「位置情報」をあわせて通知する。
【0037】
移動局12では、基地局20から同報通信により異常を通知する電波を無線通信部112にて受信したときには、本発明の実施の形態2,3と同様、制御部110は、画面表示部118を制御して異常を報知するための画面を表示させ、アラーム生成部120を制御してアラーム音を生成させ、さらに、振動生成部122を制御して振動を生成させる制御を行なう。この際、画面表示部118には制御局30から受信した「位置情報」を表示する。
こうした制御を行なうことにより、移動局12の所有者は、画面表示部118に表示された「位置情報」に基づいて、異常が生じている詳細な位置情報を察知することができ、誤って被災地に向かって移動して二次災害を招いてしまうことを防止できる。
【0038】
以上説明した、本発明の実施の形態4に係る防災システムによれば、基地局26−1〜26−nの各々の支配下にある移動局12の台数を計測し、計測した台数の所定時間あたりの減少幅が閾値をこえるときには、その基地局26が管轄するセル内で異常事態が生じていると判定し、基地局26−1〜26−nのうち異常事態が生じていると判定したセルを管轄するものや周辺にあるものに対し、管轄するセル内にある移動局12の全てに所定の警報処理を実行させるための同報通信を実行させるので、その異常事態が生じていると判定したセル内にいる移動局12の所有者に対して異常事態を発生を報知することが可能となる。
また、警報処理として、異常事態が生じているセルに対応する位置を移動局12の所有者に報知するので、移動局12の所有者が誤って被災地にむかって移動して二次災害を招いてしまうことを防止できる。
【0039】
[変形例]
なお、上述した本発明の実施の形態3では、一つのセルが6つのセクタに分割されるものとして説明したが、セクタの数は6つに限られず、たとえば、3つなどであっても構わない。
【0040】
また、上述した本発明の実施の形態4では、基地局26−1〜26−nのうちが一つが管轄するセルで異常事態が生じていると判定したときには、図10で示すエリア情報テーブルを参照し、基地局26−1〜26−nのうち「グループID」の列の値が同一であるものに対し、管轄するセル内にある移動局10の全てに対して異常を通知するための同報通信を実行させるものとして説明したが、たとえば、基地局26−1〜26−nの全てに対しこの同報通信を実行させるものとしても構わない。
【0041】
さらに、上述した本発明の実施の形態1〜4では、基地局20,22,24や制御局30にて移動局10の台数を計測し、計測した台数の所定時間あたりの減少幅に基づいて異常事態の発生を判定するものとして説明したが、こうした処理は複数の制御局30を制御する交換局が実行するものとしても構わない。
【0042】
また、上述した本発明の実施の形態1〜4では、移動体通信網を用いた防災システムとして説明したが、こうした防災システムの制御方法の形態としても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、防災システムの製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0044】
10,12…移動局、20,22,24,26…基地局、30…制御局、100…台数計測部、102…異常判定部、104…制御部、110…制御部、112…無線通信部、114…キー操作部、116…メモリ部、118…画面表示部、120…アラーム生成部、122…振動生成部、130,131…制御部、132,133…無線通信部、134,135…データベース、136,137…台数計測部、138,139…異常判定部、140…制御局通信部、150…制御部、152…基地局通信部、154…データベース、156…台数計測部、158…異常判定部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局の管轄セル内にある移動局の台数を計測する台数計測手段と、
前記計測された台数の所定時間あたりの減少幅が閾値を超えるか否かを判定する判定手段と、
前記減少幅が前記閾値を超えるときには、前記管轄セル内にある移動局に所定の警報処理を実行させる制御手段と
を備えることを特徴とする防災システム。
【請求項2】
請求項1記載の防災システムにおいて、
前記減少幅が前記閾値を超えたときに、この異常事態が生じている被災地を特定する被災地特定手段
をさらに備えることを特徴とする防災システム。
【請求項3】
請求項2記載の防災システムにおいて、
前記所定の警報処理は、前記特定された被災地を通知する処理が含まれる
ことを特徴とする防災システム。
【請求項4】
請求項2または3記載の防災システムにおいて、
前記制御手段は、さらに前記特定された被災地と隣接する他の管轄セル内にある移動局に所定の警報処理を実行させる
ことを特徴とする防災システム。
【請求項5】
複数の移動局と、これら複数の移動局のうち管轄セル内にあるものと電波を授受する少なくとも一つの基地局とを含む防災システムの制御方法であって、
前記基地局の管轄セル内にある前記移動局の台数を計測し、
前記計測した台数の所定時間あたりの減少幅が閾値を超えるか否かを判定し、
前記減少幅が前記閾値を超えると判定したときには、前記管轄セル内にある移動局に所定の警報処理を実行させる
ことを特徴とする防災システムの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−70492(P2011−70492A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−222253(P2009−222253)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】