説明

難燃性エポキシ樹脂組成物

【課題】ハロゲン化合物を必須成分としないエポキシ樹脂組成物でありながら、その硬化物が高い難燃性と高ガラス転移温度とを有するプリント配線板用エポキシ樹脂組成物、並びにそれを用いた樹脂ワニス、プリプレグ、及び金属張積層板を提供する。
【解決手段】特定のホスファゼン化合物を10〜50質量部含有するエポキシ樹脂(a)、及びトリフェニルメタン型フェノール樹脂を5〜40質量部含有する硬化剤(b)を含有するエポキシ樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ樹脂組成物、及びこれを用いた樹脂ワニス、プリプレグ及び金属張積層板に関する。
【背景技術】
【0002】
電気電子製品などに用いられる金属張積層板には、高い難燃性(UL−94燃焼試験でV0、V1、V2のいずれか)が求められている。これまで、このような高い難燃性を実現するためには、臭素などのハロゲン化合物を含有するエポキシ樹脂組成物を原料とするのが一般的であった。
しかしながら、ハロゲン化合物を含有したエポキシ樹脂組成物は、燃焼時にダイオキシンを発生する。このため、環境への影響が懸念されている。
【0003】
ハロゲン化合物に代わる難燃剤としては、窒素化合物やリン化合物などの難燃剤の利用が種々検討されている。
しかしながら、電気電子製品の小型化に伴いプリント配線板材料には、より高い寸法安定性と接続信頼性が要求されるために高いガラス転移温度が必要であるものの、窒素化合物やリン化合物などの難燃剤は金属張積層板のガラス転移温度を大幅に低下させてしまう。例えば、特許文献1における実施例1および2では、フェノキシシクロホスファゼンを用いた樹脂組成の例が示されているが、フェノキシシクロホスファゼンは反応性官能基を持たず、硬化反応時にエポキシ樹脂や硬化剤と高密度架橋構造を形成することができないために、硬化物が高い難燃性と高いガラス転移温度とを併せ持つことは困難である。
【0004】
【特許文献1】特開2000−336252号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ハロゲン化合物を必須成分としないエポキシ樹脂組成物でありながら、その硬化物が高い難燃性と高ガラス転移温度とを有するプリント配線板用エポキシ樹脂組成物、並びにそれを用いた樹脂ワニス、プリプレグ、及び金属張積層板の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、前記課題を解決するため、特定のホスファゼン化合物を含有するエポキシ樹脂と特定の硬化剤を含有するエポキシ樹脂組成物を検討したところ、その硬化物が高い難燃性と高いガラス転移温度とを併せ持つことを見出し、本発明をなすに至った。
すなわち本発明は、以下のとおりである。
1.エポキシ樹脂(a)及び硬化剤(b)を含有するエポキシ樹脂組成物において、
エポキシ樹脂(a)が、下記一般式(I)で表されるホスファゼン化合物をエポキシ樹脂(a)及び硬化剤(b)の100質量部に対して、10〜50質量部含むものであり、
硬化剤(b)が、下記一般式(II)で表されるトリフェニルメタン型フェノール樹脂をエポキシ樹脂(a)及び硬化剤(b)の100質量部に対して、5〜40質量部含むものであることを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
【0007】
【化1】

【0008】
【化2】

【0009】
2.エポキシ樹脂(a)及び硬化剤(b)の合計100質量部に対して、組成物中の全リン含有量がリンの原子量換算で0.1〜8質量部であることを特徴とする上記1.記載のエポキシ樹脂組成物。
3.硬化剤(b)が、さらに1−シアノグアニジンを含有することを特徴とする上記1.又は2.に記載のエポキシ樹脂組成物。
4.さらに、無機充填剤(c)を含むことを特徴とする上記1.〜3.のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物。
5.上記無機充填剤(c)として、シリカ及び/又は水酸化アルミニウムを用いることを特徴とする上記4.記載のエポキシ樹脂組成物。
6.上記1.〜5.のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物を、有機溶剤に溶解又は分散させて得られる樹脂ワニス。
7.上記6.記載の樹脂ワニスをガラス織布またはガラス不織布または有機繊維織布に含浸し、加熱して得られるプリプレグ。
8.上記7.記載のプリプレグを1枚以上積層し、その片面または両面に金属箔を重ね、加熱加圧して得られる金属張積層板。
9.熱機械分析(DMA)により決定した金属張積層板のガラス転移温度が、160〜250℃である上記8.記載の金属張積層板。
【発明の効果】
【0010】
本発明のエポキシ樹脂組成物、ワニス、プリプレグ又は金属銅張積層板を用いることによって、高い難燃性と高いガラス転移温度を有する硬化物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明について具体的に説明する。
(エポキシ樹脂組成物)
本発明のエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂(a)が、下記一般式(I)で表されるホスファゼン化合物をエポキシ樹脂(a)及び硬化剤(b)の100質量部に対して、10〜50質量部含むものであり、硬化剤(b)が、下記一般式(II)で表されるトリフェニルメタン型フェノール樹脂をエポキシ樹脂(a)及び硬化剤(b)の100質量部に対して、5〜40質量部含むものである。
【0012】
【化3】

【0013】
【化4】

【0014】
上記一般式(I)で表されるホスファゼン化合物は、一般式(I)中、R1及びR2は、同一又は異なってもよく、グリシジルオキシ基置換フェニル基又はフェニル基を示し、n個のR1及びR2のうち少なくとも1つはグリシジルオキシ基置換フェニル基であり、nは3〜10の任意の整数を表すことを必須とする。例えば旭化成ケミカルズ株式会社から商品名「LSA−4308」として供されるものが使用できる。
上記一般式(I)で表されるホスファゼン化合物は、例えば、式(III)のヒドロキシホスファゼン化合物とエピクロロヒドリンとを無溶媒下またはジメチルホルムアミド等の適当な溶媒中にて、テトラメチルアンモニウムクロリド等の第4級アンモニウム塩、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物の存在下で反応させることにより製造できる。
【0015】
【化5】

【0016】
また、リン系難燃剤の配合量やホスファゼン化合物の配合量を調整することで、難燃効果を有するリンの原子量換算での含有量を調整することが可能で、本発明のエポキシ樹脂組成物の難燃性を設定することが可能となる。エポキシ樹脂(a)、及び硬化剤(b)の合計100質量部に対する組成物中の全リン含有量がリンの原子量換算で示すと、例えば、0.1〜8質量部であることが好ましく、1〜5質量部であることがより好ましく、2〜3.5質量部であることが更に好ましい。
【0017】
エポキシ樹脂(a)には、上記のホスファゼン化合物以外のエポキシ樹脂成分として、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型2官能エポキシ樹脂、ビフェニル変性ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ナフトール―クレゾール共縮合ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール―フェノール共縮合ノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン―フェノール付加反応型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂を挙げることができ、又、これらは単独又は二種以上混合して含有することができる。
特に、上記のホスファゼン化合物以外のエポキシ樹脂成分としてノボラック型エポキシ樹脂を用いた場合には、高いガラス転移温度を得ることができる。
【0018】
エポキシ樹脂(a)の一部または全ては、例えばエポキシ当量が100〜1000g/eqであることが好ましく、エポキシ当量が150〜500g/eqであることがより好ましく、エポキシ当量が200〜400g/eqであることが更に好ましい。エポキシ当量が大きすぎると、ガラス転移温度が低下してしまうので好ましくない。エポキシ当量が小さすぎると、吸湿性が悪化するので好ましくない。
【0019】
硬化剤(b)における、上記一般式(II)で表される化合物は、一般式(II)中のqが平均値を表し、1〜10の任意の正数であることを特徴とするトリフェニルメタン型フェノール樹脂である。qの平均値は、1〜10が好ましい。プリプレグの保存安定性の観点から、1以上が好ましく、高いガラス転移温度を発現するという観点から、10以下が好ましい。より好ましくは、1〜3である。
【0020】
上記一般式(I)で表されるホスファゼン化合物と上記一般式(II)で表される化合物とを組み合わせることにより、硬化後に、特に高い難燃性と高いガラス転移温度を有するエポキシ樹脂組成物を得ることができる。
硬化剤(b)には、上記の一般式(II)で表される化合物以外の硬化剤として、アミン類、フェノール類、酸無水物等が揚げられる。一般的なエポキシ樹脂の硬化剤に通常用
いられるものであれば、特に制約はない。アミン類としては、キシリレンジアミン、1−シアノグアニジン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォン、メチレンジアニリン、メタフェニレンジアミン等が挙げられる。フェノール類としては、ビフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ビスフェノールAノボラック、及びこれらのアルキル基置換体等がある。酸無水物としては、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ピロメリット酸、無水クロレンド酸、無水ナディック酸、無水メチルナディック酸、無水ドデシルニルコハク酸、無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水マレイン酸などがある。これらは単独又は二種以上混合して含有することができる。
【0021】
特に、硬化剤として1−シアノグアニジンを用いた場合には、金属張積層板の引き剥がし強度を改善する効果をえることができる。1−シアノグアニジンのエポキシ樹脂組成物100質量部に対する含有量は、1〜5質量部が好ましい。1質量部未満では1−シアノグアニジンによる引き剥がし強度改善効果を発現させることが困難で、5質量部より多い含有量では、トリフェニルメタン型フェノール樹脂の含有量が相対的に少なくなり、高いガラス転移温度がえられにくくなるで好ましくない。より好ましくは、2〜4質量部である。
硬化剤(b)のエポキシ樹脂組成物含有量は、高いガラス転移温度を発現させるために、使用する硬化剤の水酸基当量に対し、エポキシ樹脂(a)のエポキシ当量が、水酸基当量/エポキシ当量=0.8〜1.2/1.0となるように配合するのが好ましい。より好ましくは、水酸基当量/エポキシ当量=0.9〜1.0/1.0である。
【0022】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、無機充填剤(c)を含有することができる。無機充填剤(c)としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、Eガラス粉末、アルミナ、酸化マグネシウム、二酸化チタン、チタン酸カリウム、ケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム、クレイ、タルク等があげられ、これらは単独又は二種以上混合して使用することができる。また、無機充填剤(c)はシランカップリング剤等で表面処理することもできる。
【0023】
無機充填剤(c)としてシリカを用いることで、本発明のエポキシ樹脂組成物の金属張積層板成形後における寸法安定性、低熱膨張性を改善することができる。シリカを含有する場合の含有量は、エポキシ樹脂(a)、及び硬化剤(b)の合計100質量部に対して70〜250質量部が好ましい。また、無機充填剤(c)として水酸化アルミニウムを用いることで、本発明のエポキシ樹脂組成物を成形後に難燃性をさらに改善することができる。水酸化アルミニウムを含有する場合の含有量は、エポキシ樹脂(a)、及び硬化剤(b)の合計100質量部に対して5〜150質量部が好ましい。
また、本発明のエポキシ樹脂組成物には、難燃性を補強する目的で、必要に応じて難燃剤を含有することができる。難燃剤としては、例えば、シリコーン系難燃剤、窒素系難燃剤、有機金属塩系難燃剤、上記一般式(I)以外のリン系難燃剤等のハロゲンを含有しない難燃剤が挙げられ、これらは単独又は二種以上混合して含有することができる。
【0024】
また、本発明のエポキシ樹脂組成物には、エポキシ樹脂と硬化剤の反応を促進する硬化促進剤を添加してもよい。硬化促進剤としては、イミダゾール化合物、アミン類、3ふっ化ほう素類、有機ホスフィン類があげられる。イミダゾール化合物としては、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−イソプロピルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテート、1−シアノエチル−
2−エチル−4−メチルイミダゾールトリメリテート、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾールトリメリテート、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾールトリメリテート、1−シアノエチル−2−フェニル−4,5−ジ(シアノエトキシメチル)イミダゾール等が挙げられる。アミン類としては、ジメチルアミノメチルフェノール−2,4,6−トリ(ジメチルアミノメチル)フェノール、トリ(ジメチルアミノメチル)フェノールのトリ−2−エチルヘキサン塩等が挙げられる。3ふっ化ほう素類としては、3ふっ化ほう素・モノエチルアミン錯化合物、3ふっ化ほう素・トリエチルアミン錯化合物、3ふっ化ほう素・ピペリジン錯化合物、3ふっ化ほう素・n−ブチルエーテル錯化合物、3ふっ化ほう素・アミン錯化合物等が挙げられる。有機ホスフィン類としては、トリフェニルホスフィン、ジフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン等が挙げられる。
硬化促進剤は、エポキシ樹脂(a)、及び硬化剤(b)の合計100質量部に対して0.1〜5質量部配合することが好ましい。プリプレグの保存安定性の観点から、0.1質量部が好ましく、高ガラス転移温度を発現させる観点から、5質量部が好ましい。より好ましくは、0.15〜1質量部である。
さらに、本発明のエポキシ樹脂組成物には、シランカップリング剤を加えることも可能である。
【0025】
(樹脂ワニス・プリプレグ)
本発明のプリプレグは、ガラスクロスに本発明のエポキシ樹脂組成物を有機溶剤に溶解、又は分散させた樹脂溶液(以下、「樹脂ワニス」という。)を含浸させた後、加熱により樹脂ワニス中の溶剤を乾燥し、該組成物をBステ−ジ化することでつくることができる。
【0026】
樹脂ワニスを作るための有機溶剤としては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、等のケトン系溶剤、トルエン、キシレン等の芳香族溶剤、2−メトキシエタノ−ル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルモノアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル系溶剤、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルイミダゾリジノン、N−メチルピロリドン、γ−ブチロラクトン等の非プロトン含窒素系溶剤が例示される。これらは単独であっても、2種以上の混合溶剤であってもよい。樹脂ワニス中の有機溶剤の含有量は、ガラスクロスへの樹脂ワニス含浸を考慮して、25質量%以上75質量%未満が好ましい。
【0027】
ガラスクロスに樹脂ワニスを含浸させる方法としては、(ア)樹脂ワニスをバスに溜め、ガラスクロスを浸漬させながら通過させた後、ガラスクロスに樹脂ワニスが所定量含浸されるようにスリット、又はマングルで余剰樹脂ワニスを掻き落とす方法、(イ)ロ−ルコ−ター、ダイコーター、グラビアコーター等でガラスクロスに直接所定量の樹脂ワニスを塗工することで含浸させる方法等が好ましい。
【0028】
また、ガラスクロスに上記樹脂ワニスを含浸させた後、溶剤を加熱乾燥させ、及び樹脂をBステ−ジ状態化させる方法としては、熱風、電磁波等公知の方法が可能である。加熱乾燥時の温度は、110℃以上で加熱乾燥することが好ましく、組成物の蒸発、揮発、熱分解、熱劣化を抑制するため、200℃以下にする事が好ましい。また、その加熱時間は20秒以上20分未満が好ましく、より好ましくは30秒以上15分未満である。また、一連の工程で作ったプリプレグの流動性を調整するために、プリプレグをバッチ式オーブンなどで加熱することや、再度連続加熱装置で連続的に加熱することも可能である。また、樹脂ワニスをガラスクロスに含浸させる前に有機溶剤をガラスクロスにあらかじめ含浸する方法等の前処理を行うことも可能である。
【0029】
プリプレグの状態でプリプレグ中のガラスクロスの質量含有量(以下、「ガラスコンテント」という)は80質量%以下が好ましく、より好ましくは75質量%以下である。その下限は積層板の寸法安定性の観点から制限され、通常には20質量%以上が良い。プリプレグのガラスコンテントが80質量%を越えるとガラス繊維織物の糸束部分にしか樹脂が存在しないプリプレグとなり積層板にすることが困難になる。
【0030】
本発明のプリプレグに使用するガラスクロスは、Eガラス、Cガラス、Dガラス、Sガラス等のいずれのガラスクロスでも良い。また、ガラスクロスとしては、織り密度は10〜200本/25mm、好ましくは15〜100本/25mmであり、質量は5〜400g/m、好ましくは8〜300g/mであり、織り方は平織り、朱子織り、綾織り、ななこ織り等が使用できる。また、たて糸とよこ糸の双方または一方がテクスチャード加工を施されたガラス糸で製織されたガラスクロスであっても良い。また、製織に必要な集束剤が付着している段階のガラスクロスや集束剤を除去した段階のガラスクロス、あるいは公知の表面処理法でシランカップリング剤などが既に処理されている段階のガラスクロスのいずれでも良い。また、柱状流、高周波振動法による水流で開繊、扁平化等の物理加工を施したガラスクロスであっても良い。
【0031】
(金属張積層板)
エポキシ樹脂組成物を硬化させて作製する金属張積層板の、熱機械分析(DMA)により決定したガラス転移温度は150〜250℃であることが好ましく、より好ましくは170〜240℃、更に好ましくは180〜240℃である。
金属張積層板作製時に用いられる金属箔としては、例えば銅箔、銀箔、金箔、アルミニウム箔などが挙げられる。このようにして得られる金属張積層板は、複数枚重ね合わせて多層積層板として用いてもよい。
次に、実施例及び参考例により本発明を説明する。
【実施例】
【0032】
[実施例1]
上記一般式(I)で示される化合物であるホスファゼン化合物「LSA−4308」(旭化成ケミカルズ株式会社製商品名、エポキシ当量323)25質量部、ナフタレン骨格を含むノボラック型エポキシ樹脂「NC−7000L」(日本化薬株式会社製商品名、エポキシ当量230)48質量部、上記一般式(II)で示される化合物であるトリスフェノールメタンノボラック型硬化剤「MEH−7500」(明和化成株式会社製商品名、水酸基当量98)27質量部、及び2−エチル−4−メチルイミダゾール0.2質量部からなる混合物に溶剤としてメチルエチルケトン57質量部、2−メトキシエタノール10質量部を加えて樹脂ワニスを調整した。樹脂ワニスを、厚さ20μmのガラス織布に塗布、含浸させ、125℃の温度で加熱し、プリプレグを作製した。得られたプリプレグを8枚重ね合わせ、その上下面に厚さ12μmの銅箔を重ねて、200℃、20kg/cmの条件で2時間加熱加圧することで銅張積層板を作製した。得られた銅張積層板についての特性評価を表1に示す。
【0033】
[実施例2]
上記一般式(I)で示される化合物であるホスファゼン化合物「LSA−4308」(旭化成ケミカルズ株式会社製商品名、エポキシ当量323)25質量部、ナフタレン骨格を含むノボラック型エポキシ樹脂「NC−7000L」(日本化薬株式会社製商品名、エポキシ当量230)60質量部、上記一般式(II)で示される化合物であるトリスフェノールメタンノボラック型硬化剤「MEH−7500」(明和化成株式会社製商品名、水酸基当量98)12質量部、1−シアノグアニジン(和光株式会社製商品名)3質量部、及び2−エチル−4−メチルイミダゾール0.2質量部からなる混合物に溶剤としてメチルエチルケトン20質量部、2−メトキシエタノール47質量部を加えて樹脂ワニスを調
整した。樹脂ワニスを、厚さ20μmのガラス織布に塗布、含浸させ、125℃の温度で加熱し、プリプレグを作製した。得られたプリプレグを8枚重ね合わせ、その上下面に厚さ12μmの銅箔を重ねて、200℃、20kg/cmの条件で2時間加熱加圧することで銅張積層板を作製した。得られた銅張積層板についての特性評価を表1に示す。
【0034】
[実施例3]
上記一般式(I)で示される化合物であるホスファゼン化合物「LSA−4308」(旭化成ケミカルズ株式会社製商品名、エポキシ当量323)25質量部、ナフタレン骨格を含むノボラック型エポキシ樹脂「NC−7000L」(日本化薬株式会社製商品名、エポキシ当量230)48質量部、上記一般式(II)で示される化合物であるトリスフェノールメタンノボラック型硬化剤「MEH−7500」(明和化成株式会社製商品名)27質量部、水酸化アルミニウム「C−301」(住友化学株式会社製商品名)32質量部、及び2−エチル−4−メチルイミダゾール0.2質量部からなる混合物に溶剤としてメチルエチルケトン65質量部、及び2−メトキシエタノール10質量部を加えて樹脂ワニスを調整した。樹脂ワニスを、厚さ20μmのガラス織布に塗布、含浸させ、125℃の温度で加熱し、プリプレグを作製した。得られたプリプレグを8枚重ね合わせ、その上下面に厚さ12μmの銅箔を重ねて、200℃、80kg/cmの条件で2時間加熱加圧することで銅張積層板を作製した。得られた銅張積層板についての特性評価を表1に示す。
【0035】
[実施例4]
上記一般式(I)で示される化合物であるホスファゼン化合物「LSA−4308」(旭化成ケミカルズ株式会社製商品名、エポキシ当量323)10質量部、トリスフェノールメタンノボラック型エポキシ樹脂「EPPN−502H」(日本化薬株式会社製商品名、エポキシ当量165)56質量部、上記一般式(II)で示される化合物であるトリスフェノールメタンノボラック型硬化剤「MEH−7500」(明和化成株式会社製商品名、水酸基当量98)34質量部、水酸化アルミニウム「C−301」(住友化学株式会社製商品名)32質量部、及び2−エチル−4−メチルイミダゾール0.2質量部からなる混合物に溶剤としてメチルエチルケトン77質量部、2−メトキシエタノール10質量部を加えて樹脂ワニスを調整した。樹脂ワニスを、厚さ20μmのガラス織布に塗布、含浸させ、140℃の温度で加熱し、プリプレグを作製した。得られたプリプレグを8枚重ね合わせ、その上下面に厚さ12μmの銅箔を重ねて、200℃、20kg/cmの条件で2時間加熱加圧することで銅張積層板を作製した。得られた銅張積層板についての特性評価を表1に示す。
【0036】
[実施例5]
上記一般式(I)で示される化合物であるホスファゼン化合物「LSA−4308」(旭化成ケミカルズ株式会社製商品名、エポキシ当量323)25質量部、トリスフェノールメタンノボラック型エポキシ樹脂「EPPN−502H」(日本化薬株式会社製商品名、エポキシ当量165)44質量部、上記一般式(II)で示される化合物であるトリスフェノールメタンノボラック型硬化剤「MEH−7500」(明和化成株式会社製商品名、水酸基当量98)31質量部、水酸化アルミニウム「C−301」(住友化学株式会社製商品名)32質量部、及び2−エチル−4−メチルイミダゾール0.2質量部からなる混合物に溶剤としてメチルエチルケトン77質量部、2−メトキシエタノール10質量部を加えて樹脂ワニスを調整した。樹脂ワニスを、厚さ20μmのガラス織布に塗布、含浸させ、140℃の温度で加熱し、プリプレグを作製した。得られたプリプレグを8枚重ね合わせ、その上下面に厚さ12μmの銅箔を重ねて、200℃、20kg/cmの条件で2時間加熱加圧することで銅張積層板を作製した。得られた銅張積層板についての特性評価を表1に示す。
【0037】
[実施例6]
上記一般式(I)で示される化合物であるホスファゼン化合物「LSA−4308」(旭化成ケミカルズ株式会社製商品名、エポキシ当量323)50質量部、トリスフェノールメタンノボラック型エポキシ樹脂「EPPN−502H」(日本化薬株式会社製商品名、エポキシ当量165)23質量部、上記一般式(II)で示される化合物であるトリスフェノールメタンノボラック型硬化剤「MEH−7500」(明和化成株式会社製商品名、水酸基当量98)27質量部、水酸化アルミニウム「C−301」(住友化学株式会社製商品名)32質量部、及び2−エチル−4−メチルイミダゾール0.2質量部からなる混合物に溶剤としてメチルエチルケトン77質量部、2−メトキシエタノール10質量部を加えて樹脂ワニスを調整した。樹脂ワニスを、厚さ20μmのガラス織布に塗布、含浸させ、140℃の温度で加熱し、プリプレグを作製した。得られたプリプレグを8枚重ね合わせ、その上下面に厚さ12μmの銅箔を重ねて、200℃、20kg/cmの条件で2時間加熱加圧することで銅張積層板を作製した。得られた銅張積層板についての特性評価を表1に示す。
【0038】
[実施例7]
上記一般式(I)で示される化合物であるホスファゼン化合物「LSA−4308」(旭化成ケミカルズ株式会社製商品名、エポキシ当量323)25質量部、トリスフェノールメタンノボラック型エポキシ樹脂「EPPN−502H」(日本化薬株式会社製商品名、エポキシ当量165)44質量部、上記一般式(II)で示される化合物であるトリスフェノールメタンノボラック型硬化剤「MEH−7500」(明和化成株式会社製商品名、水酸基当量98)31質量部、球状溶融シリカ「SFP−30M」(電気化学工業株式会社製商品名)78質量部、及び2−エチル−4−メチルイミダゾール0.2質量部からなる混合物に溶剤としてメチルエチルケトン77質量部、2−メトキシエタノール10質量部を加えて樹脂ワニスを調整した。樹脂ワニスを、厚さ20μmのガラス織布に塗布、含浸させ、130℃の温度で加熱し、プリプレグを作製した。得られたプリプレグを8枚重ね合わせ、その上下面に厚さ12μmの銅箔を重ねて、200℃、40kg/cmの条件で2時間加熱加圧することで銅張積層板を作製した。得られた銅張積層板についての特性評価を表1に示す。
【0039】
[比較例1]
反応性置換基を持たないホスファゼン化合物「SPB−100」(大塚化学株式会社製商品名)19質量部、ナフタレン骨格を含むノボラック型エポキシ樹脂「NC−7000L」(日本化薬株式会社製商品名、エポキシ当量230)54質量部、上記一般式(II)で示される化合物であるトリスフェノールメタンノボラック型硬化剤「MEH−7500」(明和化成株式会社製商品名、水酸基当量98)27質量部、及び2−エチル−4−メチルイミダゾール0.2質量部からなる混合物に溶剤としてメチルエチルケトン57質量部、2−メトキシエタノール10質量部を加えて樹脂ワニスを調整した。樹脂ワニスを、厚さ20μmのガラス織布に塗布、含浸させ、125℃の温度で加熱し、プリプレグを作製した。得られたプリプレグを8枚重ね合わせ、その上下面に厚さ12μmの銅箔を重ねて、200℃、20kg/cmの条件で2時間加熱加圧することで銅張積層板を作製した。得られた銅張積層板についての特性評価を表1に示す。
【0040】
[比較例2]
上記一般式(I)で示される化合物であるホスファゼン化合物「LSA−4308」(旭化成ケミカルズ株式会社製商品名、エポキシ当量323)25質量部、ナフタレン骨格を含むノボラック型エポキシ樹脂「NC−7000L」(日本化薬株式会社製商品名、エポキシ当量230)43質量部、トリアジン環含有フェノールノボラック型硬化剤「LA−3018−50P」(大日本インキ株式会社製商品名、硬化反応性基当量151)32質量部、及び2−エチル−4−メチルイミダゾール0.2質量部からなる混合物に溶剤と
してメチルエチルケトン57質量部、及び2−メトキシエタノール10質量部を加えて樹脂ワニスを調整した。樹脂ワニスを、厚さ20μmのガラス織布に塗布、含浸させ、120℃の温度で加熱し、プリプレグを作製した。得られたプリプレグを8枚重ね合わせ、その上下面に厚さ12μmの銅箔を重ねて、200℃、20kg/cmの条件で2時間加熱加圧することで銅張積層板を作製した。得られた銅張積層板についての特性評価を表1に示す。
【0041】
(特性評価)
[難燃性(UL−94)]
銅張積層板の表面の銅箔をエッチング処理にて除去し、UL−94の垂直燃焼試験及び水平燃焼試験を実施し、その結果、合格した難燃性のグレードをV0、V1、V2、HBのいずれかで表記した。
【0042】
[ガラス転移温度]
銅張積層板の表面の銅箔をエッチング処理にて除去し、水洗、風乾した後、ガラスクロスのよこ糸方向(幅)1.265cm×たて糸方向(長さ)4.5cmに切断した。その試験片を用い、熱機械分析(DMA)(レオメトリック社製、品番RDAII)を使用して、昇温速度3℃/分で粘弾性挙動を測定し、tanδのピークが現れる温度をガラス転移温度として求めた。
【0043】
[引き剥がし強さ]
積層板をガラスクロスのよこ糸方向(幅)1cm×たて糸方向(長さ)15cmに切断した。この試験片のマトリックス樹脂と銅箔の間を、カッターナイフを用いて長さ方向に1cm剥離させた。オートグラフ(島津製作所株式会社製 登録商標)を用いて、5.0cm/分の速度で90度方向に、銅箔を5.0cm剥離させた際の引っ張り強度を測定した。出力強度は、高低のピークを有する波形状を示すため、最低点からの5点と、最高点からの5点のピークの平均値とした。
【0044】
【表1】

【0045】
上記実施例、比較例から明らかなように、本願発明は一般式(I)で表されるホスファゼン化合物及び一般式(II)で表される硬化剤を特定量使用することにより、高度の難燃性と高いガラス転移温度を併せ持つプリント配線板に好適なエポキシ樹脂組成物等を得ることができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、難燃性エポキシ樹脂組成物、樹脂ワニス、プリプレグ及び金属張積層板の分野で有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂(a)及び硬化剤(b)を含有するエポキシ樹脂組成物において、
エポキシ樹脂(a)が、下記一般式(I)で表されるホスファゼン化合物をエポキシ樹脂(a)及び硬化剤(b)の100質量部に対して、10〜50質量部含むものであり、
硬化剤(b)が、下記一般式(II)で表されるトリフェニルメタン型フェノール樹脂をエポキシ樹脂(a)及び硬化剤(b)の100質量部に対して、5〜40質量部含むものであることを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
【化1】

【化2】

【請求項2】
エポキシ樹脂(a)及び硬化剤(b)の合計100質量部に対して、組成物中の全リン含有量がリンの原子量換算で0.1〜8質量部であることを特徴とする請求項1記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
硬化剤(b)が、さらに1−シアノグアニジンを含有することを特徴とする請求項1又は2に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
さらに、無機充填剤(c)を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
上記無機充填剤(c)として、シリカ及び/又は水酸化アルミニウムを用いることを特徴とする請求項4記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物を、有機溶剤に溶解又は分散
させて得られる樹脂ワニス。
【請求項7】
請求項6記載の樹脂ワニスをガラス織布またはガラス不織布または有機繊維織布に含浸し、加熱して得られるプリプレグ。
【請求項8】
請求項7記載のプリプレグを1枚以上積層し、その片面または両面に金属箔を重ね、加熱加圧して得られる金属張積層板。
【請求項9】
熱機械分析(DMA)により決定した金属張積層板のガラス転移温度が、160〜250℃である請求項8記載の金属張積層板。

【公開番号】特開2009−173765(P2009−173765A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−13574(P2008−13574)
【出願日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願人】(309002329)旭化成イーマテリアルズ株式会社 (771)
【Fターム(参考)】