説明

電力制御方法、電力制御装置及び定着装置

加熱ローラ(61)の表面温度に基づいてヒータランプ(64)に供給する電力の設定電力値を制御する第1電力制御部(81)(第1電力制御モード)と、ヒータランプ(64)を第1電力制御モードの設定電力値より大きい電力で強制駆動するためにヒータランプ(64)に供給する電力の設定電力値を制御する第2電力制御部(82)(第2電力制御モード)と、を備える。また、切換制御手段(84)によって、画像形成装置(100)を構成する各構成部の動作状態に応じて第1電力制御モード及び第2電力制御モードを切り換える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電熱器やオーブンレンジ、湿式電子写真器やインクジェットプリンタ等の乾燥装置、乾式電子写真器の定着装置等のように加熱手段を備えた装置における加熱手段の電力制御方法及び電力制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
加熱手段を備えた装置として、例えば、用紙等の被加熱体に画像を形成する複写機等の画像形成装置に用いられる定着装置は、単一又は複数の加熱手段を内部に有する加熱ローラ(加熱部材とも言う。)及び加熱ローラに当接する加圧ローラ(加圧部材とも言う。)等から構成され、加熱手段を発熱させて加熱ローラの表面温度を目標温度(定着温度)に設定し、未定着トナーが転写された用紙等の被加熱体をその未定着トナー転写面を加熱ローラ側にして、加熱ローラと加圧ローラとの当接部(定着ニップ部)を通過させて未定着トナーを熱圧着させる。
【0003】
また、加熱手段を発熱させるのに供給する電力の設定電力値は、温度検知手段により検知された加熱ローラの表面温度に基づいて画像形成装置全体の動作を制御する制御部によって制御される。
【0004】
一方、画像形成装置を構成する原稿読取部や駆動部等の各構成部においても電力の供給が必要である。商用電源から画像形成装置に供給される電力は一定であるので、画像形成装置全体が適切に動作するために画像形成装置の各構成部の動作状態に応じて各構成部に供給される電力が、定格電力値以下の許容電力値までに制限される。そのため、加熱ローラ内部に設けられた加熱手段は、許容電力値以下で且つ加熱ローラの表面温度に基づいて上記設定電力値が設定される。
【0005】
また、近年の画像形成装置には、備えられた原稿読取部が稼動している場合は、原稿読取部の露光ランプと定着装置の加熱ローラのランプとが直列回路を構成して通電されるようにし、原稿読取部が稼動していない時には、露光ランプと加熱ローラのランプとを並列回路に構成して露光ランプへの通電を遮断し、加熱ローラのランプのみに通電する電力制御手段を備えたものがある(例えば、特許文献1参照。)。また、特許文献1の構成は、画像形成装置の駆動装置が稼動していない時には、直列回路を解除して並列回路を構成するとともに露光ランプと加熱ローラのランプとへの電力供給量を増加させるようにする。
【特許文献1】特開平8−286554号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の許容電力値以下で加熱手段に電力を供給する構成では、加熱ローラの表面を加熱するのに十分な電力が常に供給されていない可能性があり、加熱ローラの表面が十分に加熱されず、定着性能が低下する虞がある。また許容電力値以上の電力値を設定電力値として加熱手段に供給しようとすれば、他の構成部で電力不足が生じ、画像形成装置が適切に機能しなくなってしまう場合がある。
【0007】
一方、上述の特許文献1の構成では、原稿読み取り装置及び駆動装置が稼動していない時には加熱ローラのランプへの電力供給量が増加されるが、それ以外の場合においては加熱ローラの表面を加熱するのに十分な電力が常に供給されていない可能性がある。
【0008】
また、商用電源から供給される電力を大きくすることも可能であるが、供給電力値の大きな商用電源に対応しているオフィスや家庭は極一部に限られ、また供給電力値の大きな商用電源をオフィスや家庭にて対応させるには更にコストがかかってしまう。
【0009】
この発明の目的は、許容電力値に制限されずにできるだけ必要な電力を加熱手段に供給して被加熱体を加熱する性能を維持するための電力制御方法及び電力制御装置、更に上記電力制御装置を備えた定着装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、上記の課題を解決するために、以下の構成を備えている。
【0011】
(1)加熱対象物を介して被加熱体を加熱する単一又は複数の加熱手段を含む装置の各構成部に供給する電力の設定電力値を許容電力値以下に制御する電力制御方法において、
前記加熱対象物の温度に基づいて加熱手段の全てに供給する電力の設定電力値を制御する第1電力制御モードと、前記加熱手段の少なくとも一つを設定電力値より大きい電力で強制駆動する第2電力制御モードと、を装置の各構成部の動作状態に応じて切り換えることを特徴とする。
【0012】
この構成においては、許容電力値以下で加熱対象物の温度に基づいて加熱手段に供給する電力の設定電力値が制御される第1電力制御モードと、加熱手段のうちの少なくとも1つが設定電力値より大きい電力で強制駆動される第2電力制御モードと、が装置を構成する各構成部の動作状態に応じて切り換えられる。
【0013】
したがって、各構成部の消費電力が減少して装置に供給される電力に余りが生じる場合に、加熱手段に第1電力制御モードにおいて出力可能な許容電力値を超える電力の供給が必要な時は、第2電力制御モードに切り換えて余りの電力も加熱手段に供給するように強制駆動することで、加熱手段に必要な電力のうちの不足分が補われる。そのため、加熱対象物を介して被加熱体を加熱する性能が低下することが防止される。
【0014】
(2)前記強制駆動は、バースト駆動であることを特徴とする。
【0015】
この構成においては、第2電力制御モードにおいて所定の間隔を設けて一定時間だけ加熱手段に電力が供給されるバースト駆動が行われる。したがって、加熱手段に所定の間隔を設けて電力を供給する毎に突入電圧が発生するので、設定電力値よりも実際に加熱手段に供給される電力の平均の方が大きくなる。これにより、各構成部が多くの電力の供給を必要とし、各構成部の消費電力が多いため装置に供給される電力に余りがない場合に、第2電力制御モードにおいて第1電力制御モードで出力可能な許容電力値と同じ設定電力値が設定されても、突入電圧によって実際に加熱手段に供給される電力は設定電力値より高くなるので、必要な電力のうちの不足分が補われる。そのため、加熱対象物を介して被加熱体を加熱する性能が低下することが防止される。
【0016】
(3)前記バースト駆動する際の加熱手段に供給する電力の設定電力値は、装置の各構成部の動作状態に応じて制御されることを特徴とする。
【0017】
この構成においては、バースト駆動する際に加熱手段に供給される電力の設定電力値が、装置の各構成部の動作状態に応じて制御されるので、各構成部が必要な電力が不足することがなく、各構成部の機能が維持されつつ加熱手段がバースト駆動される。
【0018】
(4)前記第1電力制御モードと第2電力制御モードとの切換は、前記第1電力制御モードの制御周期である第1制御周期よりも長い第2電力制御モードの制御周期である第2制御周期に合わせて行い、
前記第2電力制御モードの実行中、前記第2制御周期の1周期あたりの所定の時間だけ電力を供給して前記単一又は複数の加熱手段を強制駆動することを特徴とする。
【0019】
この構成においては、加熱対象物の温度に基づく設定電力値の制御が行われる第1電力制御モードの制御周期である第1制御周期に比べ、強制駆動が行われる第2電力制御モードの制御周期である第2制御周期が長く設定され、第1電力制御モードと第2電力制御モードとの切換のタイミングが第2制御周期に合わせて行われる。また、第2電力制御モードの実行中、第2制御周期に合わせて加熱手段の強制駆動が行われる。
【0020】
したがって、第1制御周期よりも長い第2制御周期に合わせて電力制御モードの切換が行われるので、第2電力制御モードの実行が第2制御周期の途中から開始及び終了されることがなく、制御が中途半端に行われることがない。そのため、適切なタイミングで強制駆動が開始、終了される。また、第1制御周期は第2制御周期よりも短いので、第1制御周期の途中から第1電力制御モードに切り換わってもすぐに次の周期が開始されるので、適切に制御が行われる。
【0021】
(5)前記第2制御周期は、前記第1制御周期の整数倍であり、
前記第1電力制御モードの実行中に用いられる前記加熱対象物の温度の値を更新する更新周期は、前記単一又は複数の加熱手段の第1制御周期の整数倍であることを特徴とする。
【0022】
この構成においては、第2制御周期及び加熱対象物の温度の値を更新する更新周期が第1制御周期の整数倍であるので、第1電力制御モード、第2電力制御モード、加熱対象物の温度の値の更新が同期して実行され、それぞれの実行タイミングがずれることがない。そのため、第1電力制御モードと第2電力制御モードとの切換もそれぞれの制御周期が同期しているので周期の途中で制御モードが切り換わらず、より適切なタイミングで制御モードが実行される。また、第1電力制御モードにおける加熱対象物の温度に基づく設定電力値の制御においても、温度の値の更新周期が第1制御周期に同期しているので、更新された温度の値が用いられる。
【0023】
更に、各周期が同期することで周期を管理するタイマ手段の数が低減されるので、タイマ手段の構成がコンパクトになり、またコストが低減される。
【0024】
(6)前記加熱対象物の温度の更新周期の1周期の時間内において、前記複数の加熱手段の各制御モードを互いに異なるタイミングで開始することを特徴とする。
【0025】
この構成においては、複数の加熱手段の第1電力制御モード及び第2電力制御モードの制御開始タイミングが、加熱対象物の温度の更新周期の1周期の時間の範囲内でずらされる。したがって、複数の加熱手段は、各制御モードの制御開始タイミングが異なるので、複数の加熱手段が同時に制御開始されることがなく、複数の加熱手段が同時に制御開始した場合に生じる大きな電力変動やノイズの増加が低減されるので、第2電力制御モードにおける強制駆動のために必要な電力が不足することが抑制される。
【0026】
(7)前記複数の加熱手段の各制御モードの互いに異なる開始のタイミングは、前記第1制御周期の1周期の時間内であることを特徴とする。
【0027】
この構成においては、複数の加熱手段の第1電力制御モード及び第2電力制御モードの制御開始タイミングが、加熱対象物の温度の更新周期の1周期の時間の範囲内で且つ第1制御周期の1周期の時間の範囲内でずらされる。したがって、第2制御周期及び加熱対象物の温度の更新周期は第1制御周期の整数倍であり、また第1制御周期、第2制御周期及び加熱対象物の温度の更新周期のうち第1制御周期が最も短い周期であるので、第1電力制御モード、第2電力制御モード及び加熱対象物の温度の値の更新が同期して実行される場合、複数の加熱手段のそれぞれが異なる制御モードで実行されていても、制御開始タイミングが重なることがない。
【0028】
(8)前記複数の加熱手段のうち少なくとも1つは、第2電力制御モード中、前記第2制御周期の1周期毎における電力の供給の開始から所定の禁止時間が経過するまで電力の供給を禁止することを特徴とする。
【0029】
この構成においては、複数の加熱手段のうちの少なくとも1つについて、第2電力制御モード中に本来電力が供給される所定の時間の開始から所定の禁止時間だけ電力の供給が禁止される。そのため、第2電力制御モードにおける複数の加熱手段の電力供給の開始のタイミングの間隔が大きくなる。
【0030】
(9)前記複数の加熱手段のうち少なくとも1つは、前記所定の時間に応じて第2電力制御モードを開始した時から前記加熱対象物の温度の値が1回〜3回更新される間まで電力の供給を禁止することを特徴とする。
【0031】
この構成においては、複数の加熱手段のうちの少なくとも1つについて、第2電力制御モードの所定の時間に応じて1回〜3回のうちから加熱対象物の温度の値の更新回数が決定され、第2電力制御モード中に本来電力が供給される所定の時間の開始から加熱対象物の温度の値が決定された更新回数だけ更新される間まで電力の供給が禁止される。そのため、第2電力制御モードにおける複数の加熱手段の電力供給の開始のタイミングの間隔が大きくなる。
【0032】
1回〜3回としたのは、加熱対象物の温度を更新する時間は、適切な温度制御を行うために第2電力制御モードの所定の時間よりも短いが、1〜3回に設定しなければ実際に第2電力制御モードで電力供給をしている時間が極端に短くなり、第2電力制御モードを実行する効果がなくなるからである。
【0033】
(10)前記複数の加熱手段において、第2電力制御モードの電力供給の開始から次の第2電力制御モードの電力供給が開始されるまでの間において、供給する電力の電力値を前記設定電力値まで複数段階に分けて徐々に増加させていくことを特徴とする。
【0034】
この構成においては、第2電力制御モード中の複数の加熱手段において、電力の供給開始直後から設定電力値の電力の供給が開始されるのではなく、1の加熱手段の電力供給の開始から他の加熱手段の電力供給が開始されるまでの間に、1の加熱手段に供給される電力の電力値が複数段階の段階毎に上昇していき最終的に設定電力値となる。
【0035】
(11)前記複数段階は、前記設定電力値の15〜30%の前記電力値で前記複数の加熱手段のそれぞれに電力を供給する第1段階と、前記複数の加熱手段のそれぞれに前記設定電力値の65〜85%の前記電力値で電力を供給する第2段階と、を含むことを特徴とする。
【0036】
この構成においては、第2電力制御モード中の複数の加熱手段において、1の加熱手段の電力供給の開始から他の加熱手段の電力供給が開始されるまでの間、1の加熱手段に最初の第1段階において設定電力値の15〜30%の電力値の電力が供給され、次の第2段階で設定電力値の65〜85%の電力値の電力が供給され、最終的に設定電力値の電力が供給される。
【0037】
(12)前記複数段階は、前記設定電力値の10〜25%の前記電力値で前記複数の加熱手段のそれぞれに電力を供給する第1段階と、前記設定電力値の40〜65%の前記電力値で前記複数の加熱手段のそれぞれに電力を供給する第2段階と、前記設定電力値の70〜90%の前記電力値で前記複数の加熱手段のそれぞれに電力を供給する第3段階と、を含むことを特徴とする。
【0038】
この構成においては、第2電力制御モード中の複数の加熱手段において、1の加熱手段の電力供給の開始から他の加熱手段の電力供給が開始されるまでの間、1の加熱手段に最初の第1段階において設定電力値の10〜25%の電力値の電力が供給され、次の第2段階で設定電力値の40〜65%の電力値の電力が供給され、次の第3段階で設定電力値の70〜90%の電力値の電力が供給され、最終的に設定電力値の電力が供給される。
【0039】
(13)前記第2電力制御モード開始の際、前記設定電力値に基づいて前記第2制御周期及び前記所定の時間を制御することを特徴とする。
【0040】
この構成においては、第2電力制御モードに切り換えられた際、加熱手段を強制駆動するために供給される設定電力値に基づいて第2制御周期及び1周期あたりの所定の時間が制御される。したがって、第2制御周期及び1周期あたりの所定の時間の変更によって、一定時間に加熱手段を強制駆動する回数、加熱手段に電力が供給される1回あたりの時間が変更されるので、加熱手段に実際に供給される平均の電力が変わる。これにより、設定電力値に対して加熱手段に実際に供給される電力の平均が最大になるように第2制御周期及び所定の時間を制御することによって、加熱手段に必要な電力のうちの不足分がより補われる。そのため、加熱対象物を介して被加熱体を加熱する性能が低下することがより防止される。
【0041】
(14)前記第1電力制御モードと第2電力制御モードとの切換を行う際、前記加熱対象物の温度の変化状態又は前記被加熱体を加熱する処理条件に基づいて第2電力制御モードへの切換の可否の判定を行うことを特徴とする。
【0042】
この構成においては、第2電力制御モードへの切換の可否の判定が、加熱対象物の表面温度の変化率等の加熱対象物の温度の変化状態又は被加熱体のサイズ等の被加熱体を加熱する処理条件に基づいて行われる。したがって、必要のない場合に第2電力制御モードに切り換わることが禁止されて第1電力制御モードのみで加熱手段の設定電力値が制御されるので、加熱対象物の表面温度が過昇温することがなく、無駄な電力消費が抑制される。
【0043】
(15)前記第2電力制御モードの実行中に前記単一又は複数の加熱手段を強制駆動する際、前記加熱対象物の温度の変化状態又は前記被加熱体を加熱する処理条件に基づいて前記第2制御周期の1周期あたりの所定の時間を設定することを特徴とする。
【0044】
この構成においては、第2制御周期の1周期あたりの所定の時間が、加熱対象物の温度の変化率等の加熱対象物の温度の変化状態又は被加熱体のサイズ等の被加熱体を加熱する処理条件に基づいて制御される。したがって、加熱対象物の温度の変化状態や被加熱体を加熱する処理条件による第2制御周期の1周期あたりの所定の時間の制御によって、加熱手段に供給される実際の電力が制御されるので、必要以上に加熱手段に供給される実際の電力が大きくなりすぎることがないので、加熱対象物の表面温度が過昇温することがなく、無駄な電力の消費が抑制される。
【0045】
(16)前記加熱対象物の温度の変化状態又は前記被加熱体を加熱する処理条件に基づいて前記複数の加熱手段のうちから第2電力制御モードに切り換える加熱手段を選択することを特徴とする。
【0046】
この構成においては、複数の加熱手段のうち、第2電力制御モードで制御される加熱手段が加熱対象物の温度の変化率等の加熱対象物の温度の変化状態又は被加熱体のサイズ等の被加熱体を加熱する処理条件に基づいて選択される。したがって、加熱対象物の温度の変化率等の変化状態又は被加熱体を加熱する際に必要な被加熱体のサイズ等の処理条件に基づいて第2電力制御モードに切り換えるべき加熱手段が選択されるので、必要のない加熱手段が強制駆動されることがなく、適切な加熱手段に対して強制駆動が行われるので、加熱対象物を介して被加熱体を加熱する性能が低下することが防止される。
【0047】
(17)前記加熱対象物が被加熱体を加熱する処理の実行開始から一定時間経過するまで又は加熱処理された被加熱体の数が所定の値を超えるまでは第2電力制御モードへの切換の可否の判定における禁止の判定を無効とすることを特徴とする。
【0048】
この構成においては、第2電力制御モードへの切換の禁止の判定が、加熱対象物が被加熱体を加熱する処理の開始から一定時間経過するまで又は加熱処理された被加熱体の数が所定の値を超えるまでは無効とされる。したがって、上記の判定の無効が解除されるまでは第1電力制御モードと第2電力制御モードとの切換が行われる。これによって、加熱対象物の表面温度が不安定になる被加熱体を加熱する処理の開始当初に第2電力制御モードへの切換が禁止されるのが防止されるので、第1電力制御モードと第2電力制御モードとの切換を行いつつ適切に加熱対象物の表面温度が維持される。
【0049】
(18)前記第2制御モードに切り換える際、前記複数の加熱手段のうち少なくとも定格電力値が最大の加熱手段は切り換えないことを特徴とする。
【0050】
この構成においては、複数の加熱手段のうち少なくとも定格電力値の最大の加熱手段が第2電力制御モードに切り換えられないので、第2電力制御モードのおける電力消費が抑制され、第2電力制御モードにおける強制駆動のために必要な電力が不足することが低減される。
【0051】
(19)前記第1電力制御モードの実行中、第1電力制御モードの設定電力値の制御に用いられる予め定められた複数の設定電力値からなる第1電力設定値群から前記単一又は複数の加熱手段に供給する電力の設定電力値を求め、
前記第2電力制御モードの実行中、第2電力制御モードの設定電力値の制御に用いられる予め定められた複数の設定電力値からなる第2電力設定値群から単一又は複数の加熱手段に供給する電力の設定電力値を求めることを特徴とする。
【0052】
この構成においては、第1電力制御モードで複数の設定電力値からなる第1電力設定値群から設定電力値が求められ、第2電力制御モードで複数の設定電力値からなる第2電力設定値群から設定電力値が求められる。したがって、予め定められた第1電力設定値群及び第2電力設定値群から第1電力制御モード及び第2電力制御モードにおける設定電力値が求められるので、設定電力値の制御が複雑にならず、設定電力値を求める処理時間が短縮される。
【0053】
(20)n個(n≧1)の前記加熱手段において、前記第1電力制御モードにおけるm(m=1,2,・・,n)番目の加熱手段に供給する電力の前記設定電力値をW1m(W)、前記第2電力制御モードにおけるm番目の加熱手段に供給する電力の前記設定電力値をW2m(W)、前記第2制御周期をT1(ms)、第2電力制御モードにおける第2制御周期の1周期のm番目の加熱手段に電力を供給する時間をT2m(ms)、m番目の加熱手段の第1電力制御モードと第2電力制御モードとの切り換えに伴う係数をK1m、m番目の加熱手段の制御モードの切り換えによる電力増加分をΔWm(W)とした時の関係式が、
ΔWm=(1/T1)×{(T1×K1m−1)×W1m+
(W2m−W1m)×T2m×K1m}
であることを特徴とする。
【0054】
この構成においては、第1電力制御モードの実行時に比べて第2電力制御モードの実行時の加熱手段の供給に必要な電力の増加分ΔWm(W)から第2電力制御モードの1周期における電力を加熱手段に供給する所定の時間T2m(ms)が求められる。したがって、容易に上記所定の時間T2m(ms)が求められる。
【0055】
(21)前記第2制御モードの実行中、前記複数の加熱手段のうち少なくも1つの加熱手段に供給する電力の設定電力値を定格電力値とすることを特徴とする。
【0056】
この構成においては、複数の加熱手段のうち少なくとも1つの加熱手段の第2電力制御モードでの設定電力値が定格電力値に設定される。したがって、定格電力値の高い加熱手段の第2電力制御モードにおける設定電力値を定格電力値とした場合には発熱量が多いため、より早く加熱対象物の表面温度が上昇する。
【0057】
(22)本体装置に備えられ、加熱対象物を介して被加熱体を加熱する単一又は複数の加熱手段を含む本体装置の各構成部に供給する電力の設定電力値を許容電力値以下に制御する電力制御装置において、
前記加熱対象物の温度に基づいて前記加熱手段の全てに供給する電力の設定電力値を制御する第1電力制御モードと、前記加熱手段のうち少なくとも1つを設定電力値より大きい電力で強制駆動する第2電力制御モードと、を本体装置の各構成部の動作状態に応じて切り換える切換制御手段を備えたことを特徴とする。
【0058】
この構成においては、切換制御手段によって、許容電力値以下で加熱対象物の温度に基づいて加熱手段に供給する電力の設定電力値が制御される第1電力制御モードと、加熱手段のうちの少なくとも1つが設定電力値より大きい電力で強制駆動される第2電力制御モードと、が本体装置を構成する各構成部の動作状態に応じて切り換えられる。
【0059】
したがって、各構成部の消費電力が減少して装置に供給される電力に余りが生じる場合に、加熱手段に第1電力制御モードにおいて出力可能な許容電力値を超える電力の供給が必要な時は、第2電力制御モードに切り換えて余りの電力も加熱手段に供給するように強制駆動することで、加熱手段に必要な電力のうちの不足分が補われる。そのため、加熱対象物を介して被加熱体を加熱する性能が低下することが防止される。
【0060】
(23)画像形成装置に備えられ、温度検知手段により検知された検知温度に基づいて単一又は複数の加熱手段によって加熱される加熱部材と該加熱部材の表面に圧接配置される加圧部材とを有し、加熱部材の検知温度が目標温度以上になってウォームアップ動作が終了した以降に画像形成装置が印字動作を実行し、内部に加熱手段を有する加熱部材と加圧部材とのニップ部に被加熱体を通過させて加熱する定着装置において、
(22)に記載の電力制御装置を備え、
前記電力制御装置を用いて前記加熱部材に備えられる加熱手段に供給する電力の設定電力値を制御することを特徴とする。
【0061】
この構成においては、画像形成装置に適用された定着装置に(22)に記載されている電力制御装置が備えられ、電力制御装置によって温度検知手段により検知された加熱部材の検知温度に基づいて加熱部材を加熱する加熱手段に供給される電力の設定電力値が制御される。したがって、切換制御手段によって、許容電力値以下で加熱部材の検知温度に基づいて加熱部材を加熱する加熱手段に供給する電力の設定電力値が制御される第1電力制御モードと、加熱部材を加熱する加熱手段のうちの少なくとも1つが設定電力値より大きい電力で強制駆動される第2電力制御モードと、が画像形成装置を構成する各構成部の動作状態に応じて切り換えられる。
【0062】
これにより、各構成部の消費電力が減少して画像形成装置に供給される電力に余りが生じる場合に、加熱手段に第1電力制御モードの設定電力値を超える電力の供給が必要な時は、第2電力制御モードに切り換えて余りの電力を加熱手段に供給するように強制駆動することで、加熱手段に必要な電力のうちの不足分が補われる。そのため、加熱部材を介して被加熱体を加熱する性能が低下することが防止される。
【0063】
また、ウォームアップ動作においても第2電力制御モードに切り換えられるので、加熱手段に必要な電力のうちの不足分が補われて加熱部材がより早く加熱され、加熱部材の検知温度がより素早く目標温度に到達するので、ウォームアップ動作時間が短縮される。更に、加熱部材の表面から加圧部材の表面に熱が付与されるので、ウォームアップ動作において加圧部材の温度も素早く上昇する。
【0064】
(24)表面を加熱する単一又は複数の加熱手段を備えて前記加圧部材の表面に当接する伝達部材と、該伝達部材の温度を検知する温度検知手段と、を備え、
前記電力制御装置を用いて前記伝達部材に備えられる加熱手段に供給する電力の設定電力値を制御することを特徴とする。
【0065】
この構成においては、第1電力制御モードにおいて伝達部材の温度に基づいて伝達部材を加熱する加熱手段に供給される電力の設定電力値が制御され、第2電力制御モードにおいて伝達部材を加熱する加熱手段を強制駆動するための電力の設定電力値が制御される。また、切換制御手段によって第1電力制御モード及び第2電力制御モードの切換が行われる。したがって、伝達部材は加圧部材の表面に当接しているので加圧部材の表面が適切に加熱され、被加熱体が加圧部材からも十分に加熱されるので、被加熱体を加熱する性能が低下することが防止される。
【0066】
また、ウォームアップ動作においても第2電力制御モードに切り換えられ、伝達部材の表面から加圧部材の表面に熱が付与されるので、ウォームアップ動作においても加圧部材の温度が素早く上昇する。
【0067】
(25)加圧部材の温度を検知する温度検知手段を備え、
前記切換制御手段は、前記温度検知手段によって検知された前記加圧部材の検知温度に基づいて前記伝達部材を加熱する単一又は複数の加熱手段の第2電力制御モードへの切換の可否の判定を行うことを特徴とする。
【0068】
この構成においては、加圧部材の温度に基づいて伝達部材を加熱する加熱手段の設定電力値を制御する切換制御手段による第2電力制御モードへの切換の可否が判定される。したがって、伝達部材は、加圧部材の温度を適切に維持するために加圧部材を加熱するので、加圧部材の検知温度に基づいて伝達部材を加熱する加熱手段の第2電力制御モードの切換の可否が正確に判定されることで、必要のない場合に第2電力制御モードに切り換わることが禁止されて第1電力制御モードのみで伝達部材に備えられる加熱手段の設定電力値が制御されるので、加熱対象物の表面温度が過昇温することがなく、無駄な電力消費が抑制される。
【0069】
(26)前記第1電力制御モードにおいて、前記温度検知手段によって検知された前記伝達部材の温度から前記加圧部材の温度を推定するとともに推定した加圧部材の推定温度に基づいて前記伝達部材を加熱する単一又は複数の加熱手段の第2電力制御モードへの切換の可否の判定を行うことを特徴とする。
【0070】
この構成においては、第1電力制御モードで伝達部材の検知温度から推定された加圧部材の推定温度に基づいて伝達部材を加熱する加熱手段の第2電力制御モードの切換の可否が判定される。したがって、新たに温度検知手段を設けることなく、加圧部材の推定温度に基づいて加圧部材の表面を加熱する伝達部材の加熱手段の第2電力制御モードへの切換の可否が正確に判定されることで、必要のない場合に第2電力制御モードに切り換わることが禁止されて第1電力制御モードのみで伝達部材に備えられる加熱手段の設定電力値が制御されるので、加圧部材の温度が過昇温することがなく、無駄な電力消費が抑制される。
【0071】
また、加圧部材の温度を検知するための温度検知手段を新たに設ける必要がなく、コストアップが抑制される。
【0072】
(27)前記切換制御手段は、前記ウォームアップ動作終了直後の印字動作開始から所定の強制駆動時間が経過するまで第2電力制御モードに切り換えることを特徴とする。
【0073】
この構成においては、ウォームアップ動作中に加熱部材の検知温度が目標温度以上になってウォームアップ動作終了直後から印字動作を実行する場合、印字動作開始から所定の強制駆動時間が経過するまでは第2電力制御モードに強制的に切り換えられる。加圧部材は、加熱部材に比べて熱容量が大きいので、加熱部材が目標温度に到達しても所定の温度に到達せず、また印字動作が開始されると被加熱体に熱が奪われるためにウォームアップ動作終了直後の加圧部材の温度は上昇し難くなる。そのため、ウォームアップ動作終了直後から第2電力制御モードに切り換えられて加熱部材が加熱されることで、ニップ部から加圧部材の表面に熱が伝達される。また、伝達部材を備える場合は、伝達部材に備えられる加熱手段の制御モードも第2電力制御モードに切り換えられて加圧部材が加熱される。
【0074】
したがって、ウォームアップ動作終了直後に印字動作が開始されても加圧部材の温度が素早く上昇し、加圧部材が適切な温度に維持されるので、被加熱体が加圧部材からも十分に加熱され、被加熱体を加熱する性能が低下することが防止される。
【0075】
(28)前記所定の強制駆動時間の経過前又は経過直後に前記加熱部材の検知温度が前記目標温度よりも低い所定の設定温度を下回る間、第2制御周期及び所定の時間を変更して前記第2電力制御モードを実行することを特徴とする。
【0076】
この構成においては、強制駆動時間経過前のウォームアップ動作終了直後の印字動作開始時から強制的に切り換えられた第2電力制御モードの実行中又は強制駆動時間経過直後における加熱部材の検知温度が所定の設定温度を下回る間、加熱部材の検知温度が所定の設定温度以上になるまで、現在実行されている第2電力制御モードの第2制御周期及び所定の時間から新たな第2制御周期及び所定の時間に繰り返し変更して第2電力制御モードが実行される。
【0077】
上記のように加熱部材の検知温度が所定の設定温度を下回るのは、第2電力制御モードで加熱部材を加熱する加熱手段を強制駆動しているが、元々想定していたよりも印字動作における被加熱体等への熱伝導や熱放散あるいは周囲環境の変化等が激しいため、加熱部材の温度制御を適切に行うことができずに加熱部材が十分に加熱されないからである。
【0078】
したがって、加熱部材を加熱する加熱手段に、現在実行されている第2電力制御モードにおいて供給されていた電力よりも高い電力を供給して加熱部材の検知温度を目標温度に漸近させるため、現在の第2制御周期及び所定の時間が変更されて第2電力制御モードが実行されることで、元々想定していない周囲環境の変化等が生じた場合であって強制的に第2電力制御モードへの切り換えを行っていても対応できない状態が改善され、加熱部材を介して被加熱体を加熱する性能が低下することがより防止される。
【0079】
(29)前記単一の加熱手段の定格電力値又は複数の加熱手段の定格電力値の和であるトータル定格電力値をW0(W)、前記単一の加熱手段の設定電力値又は複数の加熱手段の設定電力値の和であるトータル設定電力値をW1(W)、前記画像形成装置全体の定格電力値をW2(W)、画像形成装置全体の動作を制御する制御部の駆動電力値をW3(W)、画像形成装置の機構部分の駆動に用いられる駆動電力値をW4(W)、画像形成装置に装着されるオプション部の定格電力値をW5(W)とした時の関係式が、
W1≦W2−(W3+W4+W5)
且つW1≦W0であることを特徴とする。
【0080】
この構成においては、加熱手段の設定電力値W1は、画像形成装置の定格電力値W2から画像形成装置を構成する構成部である制御部及び機構部分の駆動電力値W3,W4、オプション部の定格電力値W5を除いた値以下になる。そして、より第2電力制御モードでの加熱の効果を高くする為に定格電力値W0は設定電力値W1よりも大きくすることが望ましくW1≦W0とする。したがって、上記関係式から加熱手段の定格電力値が容易に設定でき、定着装置に配置すべき適切な加熱手段の選択が容易になる。
【0081】
(30)第2電力制御モード中において、前記印字動作の開始から、所定枚数の用紙を印字する間、又は、所定の補正時間が経過する間は、前記目標温度を補正することを特徴とする。
【0082】
この構成においては、第2電力制御モード中の加熱部材の目標温度が、印字動作の開始から、所定枚数の用紙を印字する間、又は、所定の補正時間が経過する間だけ変更される。したがって、目標温度を通常よりも高く変更することで、設定電力値が増加、電力を供給する所定の時間が長くなる等し、加熱手段に供給される電力が一時的に増加する。
【0083】
ここで、印刷動作開始から所定枚数の用紙を印字する間、又は、所定の補正時間が経過する間だけ目標温度を変更するのは、印刷動作開始当初は、できるだけ早く加熱部材の表面温度を目標温度に到達させて安定させたいためであり、また長時間目標温度を高くして多くの電力を加熱手段に供給することが難しいためである。
【発明の効果】
【0084】
この発明によれば、以下の効果を奏することができる。
【0085】
(1)加熱手段の設定電力値を制御する第1電力制御モード及び第2電力制御モードを装置の各構成部の動作状態に応じて切り換えることによって、各構成部の消費電力が減少して装置に供給される電力に余りが生じる場合に、加熱手段に許容電力値を超える電力の供給が必要な時は、第2電力制御モードに切り換えて余りの電力も加熱手段に供給するように強制駆動することができ、加熱手段に必要な電力のうちの不足分を補うことができる。これにより、加熱対象物を介して被加熱体を加熱する性能の低下を防止できる。
【0086】
(2)所定お間隔を設けて電力を供給して加熱手段をバースト駆動することによって、加熱手段に電力を供給する毎に突入電圧が発生するので、実際に加熱手段に供給される電力の平均を設定電力値よりも大きくすることができる。これにより、各構成部の消費電力が多いため装置に供給される電力に余りが生じない場合、第2電力制御モードにおいて第1電力制御モードで出力可能な許容電力値と同じ設定電力値が設定されても、実際に加熱手段に供給される電力は設定電力値より高くなるので、必要な電力のうちの不足分を補うことができる。これにより、加熱対象物を介して被加熱体を加熱する性能の低下をより防止できる。
【0087】
(3)バースト駆動するために加熱手段に供給する電力の設定電力値を装置の各構成部の動作状態に応じて制御することによって、各構成部が必要な電力が不足することを防止して各構成部の機能を維持しつつ加熱手段を適切にバースト駆動することができる。
【0088】
(4)第1電力制御モードと第2電力制御モードとの切換タイミングを第2制御周期に合わせて行うことによって、第2電力制御モードの実行開始及び終了を第2制御周期に合わせることができ、適切なタイミングで強制駆動を開始、終了できる。
【0089】
(5)第2制御周期及び加熱対象物の検知温度の更新周期を第1制御周期の整数倍にすることによって、第1電力制御モードと第2電力制御モードの切換を第1制御周期及び第2制御周期に合わせて切り換えることができ、より適切なタイミングで制御モードを実行することができる。また、第1電力制御モードにおける加熱対象物の温度に基づく設定電力値の制御においても、温度の値の更新周期が第1制御周期に同期しているので、更新された値に基づいて正確に行うことができる。
【0090】
更に、各周期が同期することで周期を管理するタイマ手段の数を低減することができるので、タイマ手段の構成をコンパクトにでき、またコストを低減できる
(6)複数の加熱手段の第1電力制御モード及び第2電力制御モードの制御開始タイミングを加熱対象物の温度の更新周期の1周期の時間の範囲内でずらすことによって、複数の加熱手段を同時に制御開始した場合の大きな電力変動の発生やノイズの増加を低減できるので、第2電力制御モードにおける強制駆動のために必要な電力が不足することを抑制できる。
【0091】
(7)複数の加熱手段の第1電力制御モード及び第2電力制御モードの制御開始タイミングを第1制御周期の1周期の時間内でずらすことによって、各制御モードでの複数の加熱手段の制御開始のタイミングが重なることをより確実に防止できる。これにより、複数の加熱手段を同時に制御開始した場合の大きな電力変動の発生やノイズの増加をより低減できるので、第2電力制御モードにおける強制駆動のために必要な電力が不足することをより抑制できる。
【0092】
(8)複数の加熱手段のうちの少なくとも1つについて、所定の時間の開始から所定の禁止時間又は加熱対象物の温度の値の1回〜3回の間だけ電力の供給を禁止し、複数の加熱手段の第2電力制御モードにおける電力供給の開始のタイミングのずれを大きくすることによって、第2電力制御モードにおける電力付与の効果の低下を最小限に抑えつつ、突入電流発生時における複数の加熱手段に供給される電力の合計のピークが大きくなることを効果的に抑制することができる。
【0093】
これは、第2電力制御モード中、加熱手段に電力を供給を開始した当初に発生する突入電流が非常に大きいため、第1制御周期の1周期の時間内で第2電力制御モードの制御開始タイミングをずらしただけでは、突入電流が発生した後設定電力値の電力量に下がり切る前に次の加熱手段のバースト駆動が開始されてしまうことがあるからである。
【0094】
これにより、複数の加熱手段を同時に制御開始した場合の大きな電力変動の発生やノイズの増加をより低減できるので、第2電力制御モードにおける強制駆動のために必要な電力が不足することをより抑制できる。
【0095】
(9)第2電力制御モード中の複数の加熱手段において、1の加熱手段の電力供給の開始から他の加熱手段の電力供給を開始するまでの間に、1の加熱手段に供給する電力の電力値を前記設定電力値まで複数段階に分けて増加させることによって、電力の供給開始直後から設定電力値の電力を供給した場合の強制駆動よりも、突入電流の発生量を抑制でき、突入電流発生時の複数の加熱手段の電力の合計のピークを抑制できる。これにより、複数の加熱手段を同時に制御開始した場合の大きな電力変動の発生やノイズの増加を低減できるので、第2電力制御モードにおける強制駆動のために必要な電力が不足することを抑制できる。
【0096】
(10)第2電力制御モード中の複数の加熱手段において、1の加熱手段の電力供給の開始から他の加熱手段の電力供給を開始するまでの間に、1の加熱手段に最初の第1段階において設定電力値の15〜30%の電力値の電力を供給し、次の第2段階で設定電力値の65〜85%の電力値の電力を供給し、最終的に設定電力値の電力を供給することによって、第1段階及び第2段階で電力を供給する時に発生する電力変動を効果的に抑制できる。
【0097】
(11)第2電力制御モード中の複数の加熱手段において、1の加熱手段の電力供給の開始から他の加熱手段の電力供給を開始するまでの間に、1の加熱手段に最初の第1段階において設定電力値の10〜25%の電力値の電力を供給し、次の第2段階で設定電力値の40〜65%の電力値の電力を供給し、次の第3段階で設定電力値の70〜90%の電力値の電力を供給し、最終的に設定電力値の電力を供給することによって、第1段階〜第3段階で電力を供給する時に発生する電力変動を効果的に抑制できる。
【0098】
(12)加熱手段をバースト駆動するために供給される設定電力値に基づいて第2制御周期及び1周期あたりの所定の時間を制御することによって、設定電力値に対して加熱手段に実際に供給する電力の平均を最大にでき、加熱手段に必要な電力のうちの不足分をより補うことができる。これにより、加熱対象物を介して被加熱体を加熱する性能の低下をより防止できる。
【0099】
(13)加熱対象物の温度の変化状態又は被加熱体を加熱する処理条件に基づいて第2電力制御モードへの切換の可否の判定を行うことによって、必要のない場合に第2電力制御モードに切り換わることを禁止して第1電力制御モードのみで加熱手段の設定電力値を制御させることができるので、加熱対象物の表面温度が過昇温することを防止して加熱対象物の表面温度を適切に維持することができ、第2電力制御モードにおける電力消費を抑制できる。
【0100】
(14)加熱対象物の温度の変化状態又は前記被加熱体を加熱する処理条件に基づいて第2制御周期の1周期あたりの所定の時間を設定することによって、加熱手段に供給される実際の電力を適切に制御できるので、加熱対象物の表面温度が過昇温することを防止でき、また第2電力制御モードにおける電力消費を抑制できる。
【0101】
(15)加熱対象物の温度の変化状態又は前記被加熱体を加熱する処理条件に基づいて複数の加熱手段のうちから第2電力制御モードで制御される加熱手段を選択することによって、第2電力制御モードを実行するのに適切な加熱手段を選択することができるので、被加熱体を加熱する性能が低下することを防止しつつ第2電力制御モードにおける電力消費を抑制することができる。
【0102】
(16)加熱対象物が被加熱体を加熱する処理の実行開始から一定時間経過するまで又は加熱処理された被加熱体の数が所定の値を超えるまでは、第2電力制御モードへの切換の禁止の判定を無効とすることによって、加熱対象物の表面温度が不安定になる被加熱体を加熱する処理の開始当初に第2電力制御モードへの切換が禁止されるのを防止できるので、第1電力制御モードと第2電力制御モードとの切換を行いつつ加熱対象物の表面温度を適切に維持できる。
【0103】
(17)複数の加熱手段のうち少なくとも定格電力値の最大の加熱手段を第2電力制御モードに切り換えないことによって、第2電力制御モードにおける電力消費を抑制し、第2電力制御モードにおけるその他の加熱手段の強制駆動のために必要な電力が不足することを低減することができる。
【0104】
(18)予め定められた第1電力設定値群及び第2電力設定値群から第1電力制御モード及び第2電力制御モードにおける加熱手段に供給する電力の設定電力値を求めることによって、設定電力値の制御が複雑にならず、設定電力値を求める処理時間を短縮することができる。
【0105】
(19)上記関係式に基づいて第2電力制御モードの1周期における電力を加熱手段に供給する所定の時間T2m(ms)を求めることによって、正確な所定の時間T2m(ms)を容易に求めることができる。
【0106】
(20)複数の加熱手段のうち少なくとも1つの加熱手段の第2電力制御モードでの設定電力値を定格電力値に設定することによって、定格電力値の高い加熱手段の第2電力制御モードにおける設定電力値を定格電力値とした場合には発熱量が多いため、より早く加熱対象物の表面温度を上昇させることができる。
【0107】
(21)加熱手段の設定電力値を制御する第1電力制御モード及び第2電力制御モードを装置の各構成部の動作状態に応じて切り換えることによって、各構成部の消費電力が減少して装置に供給される電力に余りが生じる場合に、加熱手段に許容電力値を超える電力の供給が必要な時は、第2電力制御モードに切り換えて余りの電力も加熱手段に供給するように強制駆動することができ、加熱手段に必要な電力のうちの不足分を補うことができる。これにより、加熱対象物を介して被加熱体を加熱する性能の低下を防止できる。
【0108】
(22)加熱部材を加熱する加熱手段の設定電力値を制御する第1電力制御モード及び第2電力制御モードを画像形成装置を構成する各構成部の動作状態に応じて切り換えることによって、各構成部の消費電力が減少して装置に供給される電力に余りが生じる場合に、加熱手段に許容電力値を超える電力の供給が必要な時は、第2電力制御モードに切り換えて余りの電力も加熱手段に供給するように強制駆動することができ、加熱手段に必要な電力のうちの不足分を補うことができる。これにより、加熱部材を介して被加熱体を加熱する性能の低下を防止できる。
【0109】
また、ウォームアップ動作においても第2電力制御モードの切換を行うので、ウォームアップ動作時間を大幅に短縮することができ、ウォームアップ動作終了までの待ち時間を大幅に短縮することができる。更に、加熱部材の表面から加圧部材の表面に熱が付与されるので、ウォームアップ動作において加圧部材の表面温度も素早く上昇させることができる。
【0110】
(23)伝達部材を加熱する加熱手段に供給する設定電力値を電力制御装置を用いて制御することによって、加圧部材の表面を適切に加熱できるので、被加熱体を加圧部材からも十分に加熱でき、被加熱体を加熱する性能の低下を防止できる。
【0111】
また、ウォームアップ動作においても第2電力制御モードに切り換えられ、伝達部材の表面から加圧部材の表面に熱が付与されるので、ウォームアップ動作においても加圧部材の温度を素早く上昇させることができる。
【0112】
(24)加圧部材の表面温度に基づいて伝達部材を加熱する加熱手段の設定電力値を制御する切換制御手段による第2電力制御モードへの切換の可否を判定することによって、第2電力制御モードへの切換の可否の判定を正確に判定でき、必要のない場合に第2電力制御モードに切り換わることを禁止して第1電力制御モードのみで伝達部材に備えられる加熱手段の設定電力値を制御させることができるので、加圧部材の温度が過昇温することを防止して加圧部材の温度を適切に維持することができ、第2電力制御モードにおける電力消費を抑制できる。
【0113】
(25)第1電力制御モードで伝達部材の温度から推定された加圧部材の表面温度に基づいて伝達部材を加熱する加熱手段の第2電力制御モードの切換の可否を判定することによって、新たに温度検知手段を設けることなく、伝達部材を加熱する加熱手段の第2電力制御モードへの切換の可否をより正確に判定することができ、必要のない場合に第2電力制御モードに切り換わりを禁止して第1電力制御モードのみで伝達部材を加熱する加熱手段の設定電力値を制御させることができるので、加圧部材の温度が過昇温することを防止して加圧部材の温度を適切に維持することができ、第2電力制御モードにおける電力消費を抑制できる。
【0114】
(26)ウォームアップ動作終了直後の印字動作開始から所定の強制駆動時間が終了するまでは強制的に第2電力制御モードに切り換えることによって、ウォームアップ動作終了直後に印字動作が開始されても加圧部材や伝達部材の温度を素早く上昇させることができ、素早く加圧部材の温度を適切に維持できるので、被加熱体が加圧部材からも十分に加熱でき、被加熱体を加熱する性能の低下を防止できる。
【0115】
(27)所定の強制駆動時間の経過前又は経過直後に前記加熱部材の検知温度が所定の設定温度を下回る間、加熱部材を加熱する加熱手段に、現在実行している第2電力制御モード中に供給していた電力よりも高い電力を供給するため、現在の第2制御周期及び所定の時間を変更して第2電力制御モードを実行することによって、加熱部材の検知温度を目標温度に漸近させることができ、元々想定していない周囲環境の変化等が生じた場合であって強制的に第2電力制御モードへの切換を行っていても対応できない状態を改善でき、加熱部材を介して被加熱体を加熱する性能の低下をより防止できる。
【0116】
(28)加熱手段の設定電力値W1を、画像形成装置の定格電力値W2から画像形成装置を構成する構成部である制御部及び機構部分の駆動電力値W3,W4、オプション部の定格電力値W5を除いた値以下とし、定格電力値W0を設定電力値W1以上に大きくすることによって、第2電力制御モードにおいてより効率的に加熱することができるように関係式から加熱手段の定格電力値を容易に設定することができるので、定着装置に配置すべき適切な加熱手段の選択を容易にできる。
【0117】
(29)第2電力制御モード中の加熱部材の目標温度を、印字動作の開始から、所定枚数の用紙を印字する間、又は、所定の補正時間が経過する間だけ補正することによって、加熱手段に供給する電力を一時的に増加させることができ、より素早く加熱部材の表面温度を上昇させることができ、印刷開始から被加熱体を加熱する性能を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】この発明の実施形態に係る定着装置を適用した画像形成装置の概略の構成を示す断面図である。
【図2】この発明の実施形態に係る定着装置の概略の構成を示す断面図である。
【図3】同定着装置に備えられる電力制御部の構成を示すブロック図である。
【図4】バースト駆動の説明図である。
【図5】この発明の実施形態に係る定着装置のヒータランプの電力制御のタイミングチャートである。
【図6】同定着装置の概略の構成を示す断面図である。
【図7】同定着装置に備えられる電力制御部の構成を示すブロック図である。
【図8】同定着装置のヒータランプの電力制御のタイミングチャートである。
【図9】同定着装置の概略の構成を示す断面図である。
【図10】同定着装置に備えられる電力制御部の構成を示すブロック図である。
【図11】同定着装置のヒータランプの電力制御のタイミングチャートである。
【図12】同定着装置に備えられる電力制御部の構成を示すブロック図である。
【図13】同定着装置に備えられる加熱ローラ及び加圧ローラ62の表面温度の推移を示す図である。
【図14】同定着装置に備えられる電力制御部の構成を示すブロック図である。
【図15】同定着装置に備えられる電力制御部の構成を示すブロック図である。
【図16】同定着装置のヒータランプの電力制御のタイミングチャートである。
【図17】同定着装置に備えられる加熱ローラの表面温度及び外部加熱ローラの表面温度の印刷動作時の推移を示す説明図である。
【図18】同定着装置の概略の構成を示す断面図である。
【図19】同定着装置に備えられる電力制御部の構成を示すブロック図である。
【図20】同定着装置のヒータランプの電力制御のタイミングチャートである。
【図21】スローアップ制御の各段階で供給する電流値とピーク電流との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0119】
36定着装置
61−加熱ローラ
62−加圧ローラ
63−外部加熱ローラ
64−ヒータランプ
66−サーミスタ
80−電力制御部
81−第1電力制御部
82−第2電力制御部
83−バースト駆動タイミング制御
84−切換制御手段
84a〜84c−スイッチング素子
85−切換条件判定手段
86−表面温度推定手段
100−画像形成装置
101−制御部
110−加圧ベルト
111−加圧加熱ローラ
115−ヒータランプ
【発明を実施するための最良の形態】
【0120】
図1は、この発明の実施形態に係る定着装置を適用した画像形成装置の概略の構成を示す断面図である。この発明の本体装置である画像形成装置100は、用紙(OHP等の記録媒体を含む。)に画像を形成する画像形成モードとしてコピアモード、プリンタモード、FAXモードを有し、各モードはユーザによって選択され、また両面印字が可能である。
【0121】
また、画像形成装置100は、原稿読取部10、給紙部20、画像形成部30、排紙部40、図示しない操作パネル部及び制御部等から構成される。原稿読取部10は、装置本体の上部に配置され、プラテンガラス11、原稿載置トレイ12及びスキャナ光学系13等から構成される。スキャナ光学系13は、光源14、反射ミラー15a〜15c、光学レンズ16及びCCD(Charge Coupled Device)17を有する。光源14は、プラテンガラス11に載置された原稿又は原稿載置トレイ12から原稿搬送路R上を搬送される原稿に光を照射する。複数の反射ミラー15a〜15cは、原稿からの反射光を反射させて光学レンズ16に導く。光学レンズ16は、反射ミラー15a〜15cによって導かれた反射光を集光してCCD17に導く。CCD17は、集光された反射光を光電変換する。
【0122】
給紙部20は、装置本体の下部に配置され、給紙トレイ21、手差トレイ22及びピックアップローラ23等から構成される。給紙トレイ21及び手差トレイ22は、画像形成時に用紙搬送路Sに給紙される用紙を載置する。ピックアップローラ23は、回転して各トレイ21、22に載置された用紙を用紙搬送路Sに給紙する。
【0123】
画像形成部30は、原稿読取部10の下方の手差トレイ22側に配置され、レーザスキャニングユニット(以下、LSUと言う。)37、感光体ドラム31及び定着装置36を有し、感光体ドラム31の周囲に、帯電器32、現像装置33、転写装置34及びクリーナユニット35が感光体ドラム31の回転方向である図1に示す矢印の方向に沿ってこの順に配置して構成されている。
【0124】
排紙部40は、給紙トレイ21の上方に配置され、排紙ローラ41及び排紙トレイ42等から構成される。排紙ローラ41は、用紙搬送路S上を搬送されてきた用紙を排紙トレイ42に排出する。また、排紙ローラ42は、この発明の駆動源である駆動モータ70からピニオンギヤ71及び排紙ローラ駆動ギヤ72を介して伝達された回転力によって回転駆動する。更に、排紙ローラ41は、可逆回転が可能であり、用紙の両面に画像形成を行う際、用紙搬送路S上を搬送されてきた表面の画像形成が終了した用紙をチャックした後、上記用紙を排出する回転方向とは逆方向に回転して用紙搬送路S′に搬送する。これにより、用紙の表裏面を反転させて裏面が感光体ドラム31に対向し、裏面にトナー画像の転写が行われる。排紙トレイ42は、排紙ローラ41から排出された画像形成の終了した用紙を収納する。
【0125】
また、制御部は、上記の画像形成装置100の全体の動作を制御する。
【0126】
コピアモードにおいて原稿の画像を用紙にコピーする際、原稿読取部10のプラテンガラス11又は原稿載置トレイ12にコピーしたい原稿を載置した後、操作パネル部に設けられた各入力キーを押下して印字枚数、印字倍率等の設定入力を行い、図示しないスタートキーを押下してコピー動作を開始する。
【0127】
スタートキーが押下されると、画像形成装置100は、ピックアップローラ23が回転して用紙搬送路Sに用紙が給紙される。給紙された用紙は、用紙搬送路S上に設けられたレジストローラ51に搬送される。
【0128】
レジストローラ51に搬送された用紙における搬送方向の先端部は、用紙に転写されるべき感光体ドラム31上に形成されるトナー画像との位置合わせを行うため、レジストローラ51の軸方向と平行になるようにレジストローラ51にチャックされる。
【0129】
原稿読取部10によって読み取られた画像データは、入力キー等を用いて入力された条件で画像処理が施された後、LSU37にプリントデータとして送信される。LSU37は、帯電器32によって所定の電位に帯電された感光体ドラム31表面に、図示しないポリゴンミラー及び各種レンズを介して上記画像データに基づいたレーザ光を照射して静電潜像を形成する。その後、現像装置33に設けられたMGローラ33a表面に付着しているトナーが、感光体ドラム31表面上の電位ギャップに応じて感光体ドラム31表面に引き寄せられて付着し、静電潜像が顕像化される。
【0130】
その後、レジストローラ51によって、レジストローラ51にチャックされている用紙と、感光体ドラム31表面に形成されたトナー画像との位置が合わせられ、用紙を感光体ドラム31と転写装置34との間に搬送する。次に、転写装置34に設けられた転写ローラ34aを用いて感光体ドラム31表面のトナー画像を上記用紙に転写する。トナー画像の転写が終了した用紙は、定着装置36を通過することで熱と圧力が加えられるとともにトナー画像が溶融・固着され、排紙ローラ41によって排紙トレイ42に排出される。
【0131】
感光体ドラム31上に残留したトナーは、図示しないドラムユニットのクリーニングブレードによって掻き取られ、クリーナユニット35によって回収される。
【実施例1】
【0132】
図2は、この発明の実施形態に係る定着装置の概略の構成を示す断面図である。図2に示すように、定着装置36は、定着カバー60(上定着カバー60a、下定着カバー60b)、加熱ローラ61、加圧ローラ62、ヒータランプ64、サーミスタ66、クリーニングローラ67及び後述する電力制御装置等から構成されている。
【0133】
この発明の加熱手段であるヒータランプ64は、加熱ローラ61の内部に配置されている。また、ヒータランプ64は、ハロゲンランプであり、ガラス管内部にハロゲン系の不活性ガスが封入され、図示しないタングステンのフィラメントが配置されている。このフィラメントを通電することで加熱ローラ61の内周面を介して表面を加熱する。また、本実施例のヒータランプ64の定格電力値は1000Wである。また、ガラス管内部における上記フィラメントの配置位置や大きさで、主に軸方向の中央部の発熱が大きい中央高、主に軸方向の端部の発熱が大きい端部高等の配熱を行うことができる。
【0134】
この発明の加熱部材である加熱ローラ61は、時計方向に回転自在であり、表面がヒータランプ64により一定温度(本実施例では200℃。)に加熱される。また加熱ローラ61は、未定着トナー画像の転写されたこの発明の被加熱体である用紙Pが後述する定着ニップ部を通過する際、用紙Pの未定着トナー転写面を加熱する。更に、加熱ローラ61は、本体部分である中空円筒形状の芯金61a及び芯金61aの外周面に形成された離型層61b等から構成されている。
【0135】
芯金61aには、例えば、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、銅等の金属あるいはそれらの合金が用いられる。尚、本実施例の芯金61aとして外径30mm、肉厚1.3mmのアルミ合金製を用いる。離型層61bには、PFA(テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体)やPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素樹脂、シリコンゴム、フッ素ゴム等が適している。尚、本実施例の離型層61bにはPFAとPTFEの混合物を芯金61aの外周面に厚さ25μmに塗布焼成したものを用いる。
【0136】
また、加熱ローラ61は、中央が両端よりも小径になるよう逆クラウン形状に構成されている。
【0137】
この発明の加圧部材である加圧ローラ62は、反時計回りに回転自在であり、鉄鋼、ステンレス鋼、アルミニウム等の中空円筒形状の芯金62a及び芯金62aの外周面に形成されたシリコンゴム等からなる耐熱弾性体層62b等から構成される。尚、耐熱弾性体層62bの外周面に加熱ローラ61の構成と同様にフッ素樹脂による離型層を形成してもよい。
【0138】
また、本実施例の加圧ローラ62には、外径14mmのステンレス製芯金62aの外周面にシリコンゴムからなる耐熱弾性体層62bを形成したものを用いる。加圧ローラの外径として30mmに構成している。更に、加圧ローラ62は、図示しないばね等の当接部材により加熱ローラ61に当接してこの発明のニップ部である定着ニップ部Yを形成し、定着ニップ部Yを用紙Pが通過する際に用紙Pを加熱ローラ61に当接する。
【0139】
クリーニングローラ67は、加圧ローラ62に付着したトナー、紙粉等を事前に除去し、加圧ローラ62の汚損を防止する。すなわち、加熱ニップ部Zよりも加圧ローラ62の反時計回り方向の上流側で所定の押圧力をもって加圧ローラ62に当接し、加圧ローラ62の回転に従動して回転する。また、クリーニングローラ67は、アルミニウムや鉄系材料等からなる中空円筒形状の金属製芯材67a等から構成されている。尚、本実施例に係る金属製芯材67aには、ステンレス系材料を使用する。
【0140】
この発明の温度検知手段であるサーミスタ66は、加熱ローラ61の表面上に配置され、加熱ローラ61の表面温度を検知する。尚、本実施例では、温度検知手段は加熱ローラ61の表面に当接した状態で表面温度を検知しているが、表面の温度検知に限定されるものではなく、内面あるいは接触/非接触を問わずに設けることができる。
【0141】
図3は、この発明の実施形態に係る定着装置に備えられる電力制御部の構成を示すブロック図である。図3に示すように、この発明の電力制御装置である電力制御部80は、第1電力制御部81、第2電力制御部82、バースト駆動タイミング発生手段83及び切換制御手段84等から構成され、画像形成装置の動作全体を制御する制御部101に接続されている。また、第1電力制御部80は、画像形成装置100を構成する制御部101や駆動部等の各構成部に接続され、サーミスタ66を含む各構成部に供給する電力の設定電力値を制御する。設定電力値は、各構成部に供給する電力の出力指令値であり、設定電力値に基づいて各構成部への電力の出力が行われる。
【0142】
第1電力制御部81は、A/D変換回路90を介してサーミスタ66に接続され、また切換制御手段84及びドライバ91を介してヒータランプ64に接続されている。また、第1電力制御部81は、サーミスタ66から出力された加熱ローラ62の表面温度の値を受け取り、その値に基づいてヒータランプ62に供給する電力の設定電力値を制御し、ヒータランプ64に設定電力値の電力を供給する第1電力制御モードを実行する。通常は、第1電力制御部81を用いて加熱ローラ61の表面温度を一定温度に保持する。尚、本実施例に係るヒータランプ64の定格電力値は1000Wであるが、第1電力制御部84において実際にヒータランプ64に供給できる許容電力値は700Wに制限している。これは、通常、商用電源から画像形成装置100に供給される電力が1500Wで、また画像形成装置100を構成する他の構成部も電力供給が必要であるので、ヒータランプ64に1000Wを供給すると他の構成部が正常に機能しない虞があるためである。
【0143】
第2電力制御部82は、切換制御手段84及びドライバ91を介してヒータランプ64に接続され、またバースト駆動タイミング発生手段83に接続されている。また、第2電力制御部82は、画像形成装置100の各構成部の動作状態に基づいてヒータランプ64に供給する電力の設定電力値を制御する第2電力制御モードを実行する。
【0144】
更に、第2電力制御部82は、受け取ったバースト駆動タイミング発生手段83から出力される信号に基づいて所定の時間だけヒータランプ64に設定電力値の電力を供給してヒータランプ64をバースト駆動(強制駆動)する。バースト駆動タイミング発生手段83は、第2電力制御部82の制御周期である第2制御周期に同期したタイミングで第2電力制御部82に信号を出力する。
【0145】
しかも、第2電力制御部82は、画像形成装置100の各構成部の動作状態に基づいてヒータランプ64に対して許容電力値以上の設定電力値を設定してヒータランプ64をバースト駆動する。つまり、商用電源から画像形成装置100に供給される電力から各構成部が使用する電力を除いた設定電力をヒータランプ64に所定の時間だけ供給する。これにより、各構成部が必要な電力が不足することを防止して、各構成部の機能を維持しつつヒータランプ64を適切にバースト駆動することができる。
【0146】
尚、第1電力制御モード及び第2電力制御モードそれぞれに対応した複数の設定電力値からなる第1設定電力値群及び第2設定電力値群を予め図示しない記憶手段に記憶させておき、各モードの切り換え時や実行中に記憶手段から設定値群の中から該当する値を読み出すようにしてもよい。これにより、設定電力値の制御が複雑にならず、設定電力値を求める処理時間を短縮することができる。例えば、ウォームアップ動作、画像形成処理等の画像形成装置の各動作に応じて予め第1電力設定値群及び第2電力設定値群を記憶手段に記憶しておく。
【0147】
また、単一のヒータランプ64の設定電力値又は複数のヒータランプ64のトータル設定電力値W1(W)は、画像形成装置100全体の定格電力値をW2(W)、画像形成装置100全体の動作を制御する制御部の駆動電力値をW3(W)、画像形成装置100の原稿読取装置等の機構部分の駆動に用いられる駆動電力値をW4(W)、画像形成装置100に装着されるオプション部の定格電力値をW5(W)とした時、
W1≦W2−(W3+W4+W5)・・・(1)
となり、また単一のヒータランプ64の設定電力値又は複数のヒータランプ64のトータル定格電力値W0(W)は、W1に対してW1≦W0であり、最低限与えられる許容電力値を基にして、上記(1)式からヒータランプ64の定格電力値を容易に設定することができるので、定着装置36に配置すべき適切なヒータランプ61の選択を容易にできる。例えば、画像形成装置100の定格電力値W2=1500W、制御部の駆動電力値W3=50W、機構部分に用いられる駆動電力値W4=250W、オプション部の定格電力値をW5=100Wとすると、設定電力値が1100W以下でヒータランプ64を用いることができ、定格電力値としては、1100Wから1700Wというようにバースト駆動時に供給する電力値を自由に設定できる(通常の第1電力制御モードでは、このような電力値は供給しない)。
【0148】
一方、バースト駆動は、第2制御周期の1周期のうちのバースト駆動タイミング発生手段83に基づく所定の時間だけ設定電力値をヒータランプ64に供給する。しかも、所定の時間だけ定期的に電力を供給してヒータランプ64をバースト駆動することで、電力の供給開始の度に突入電圧が発生する。そのため、平均的には設定電力値より大きい電力がヒータランプ64に供給されることとなり、不足する電力をより補うことができる。例えば、図4に示すように、300Wの電力でヒータランプ64をバースト駆動した場合、300Wの電力値よりも非常に大きい電力に相当する突入電圧が一瞬発生する。そのため、バースト駆動を繰り返して行うことで、平均的には300Wよりも大きな電力値の電力がヒータランプ64に供給されていることになる。
【0149】
尚、n個(n≧1)のヒータランプ64において、第1電力制御モードにおけるm(m=1,2,・・,n)番目のヒータランプ64の制御モードの切り換えによる電力増加分ΔWm(W)は、m番目のヒータランプ64に供給する電力の設定電力値をW1m(W)、第2電力制御モードにおけるm番目のヒータランプ64に供給する電力の設定電力値をW2m(W)、第2制御周期をT1(ms)、第2電力制御モードにおける第2制御周期の1周期のm番目のヒータランプ64に電力を供給する所定の時間をT2m(ms)、m番目のヒータランプ64の第1電力制御モードと第2電力制御モードとの切り換えに伴う係数をK1mとした時、
ΔWm=(1/T1)×{(T1×K1m−1)×W1m+
(W2m−W1m)×T2m×K1m}・・・(2)
となる。
【0150】
また、本実施例では単一のヒータランプ64を用いているのでm=1であり、例えば加熱ローラ61の表面温度に基づいて求められる実際にヒータランプ64に供給したい電力値を1000Wとした場合、第1電力制御モードにおける許容電力値は700Wなので、電力増加分ΔW1=1000−700=300Wとなる。また、バースト駆動することで第1電力制御モードでの設定電力値以上の電力をヒータランプ64に供給するため、第1電力制御モードの設定電力値W11は許容電力値になり、第2電力制御モードの設定電力値W21=900W、第2制御周期T1=1500ms、K11=0.35とした場合、
T21={T1×ΔW1−(T1×K11−1)×W11}/
{(W21−W11)×K11}
となり、
T21={1500×300−(1500×0.35−1)×
700}/{(900−700)×0.35}
となって、T21=1188.6(ms)
と求められるので、ヒータランプ64に供給する設定電力値W21=900Wに対する正確な所定の時間T21を容易に求めることができる。
【0151】
更に、設定電力値W21=900Wに基づいてヒータランプ64に設定電力値W21を供給する所定の時間T21及び第2制御周期T1を変更してもよい。上記所定の時間T21及び第2制御周期T1を設定電力値W21に基づいて変更することによって、設定電力値W21に対して電力をヒータランプ64に供給する電力の平均を最大にでき、ヒータランプ64に必要な電力のうちの不足分をより補うことができ、用紙Pを加熱する性能の低下を防止できる。
【0152】
尚、m番目のヒータランプ64の第1電力制御モードと第2電力制御モードとの切り換えに伴う係数K1mは、ヒータランプ64の定格電力値に対する製造時のバラツキや本発明のようなバースト駆動時のヒータランプ64の電流特性や発光効率及び熱変換効率、加熱ローラ61の肉厚バラツキ、周囲温度や湿度などの環境指数、用紙Pの材質や吸水率などを考慮して、例えば、
(1)バースト駆動において理論的に求められる投入電力と、実際に投入したヒータランプ64への投入電力との比から得られる加熱効率ηや、
(2)バースト駆動において理論的に求められる投入電力の増加電力分と実際にバースト駆動した時に印字中の最初に目標温度に到達するまでに投入した投入電力の増加電力分との比から得られるバースト駆動効率ηB
(3)バースト駆動において理論的に求められる投入電力の増加電力分と実際にバースト駆動した時に印字中全てにおいてバースト駆動による投入した投入電力の増加電力分との比から得られるバースト駆動効率ηBA
等から求められる。前記第1電力制御モードと第2電力制御モードとの切り換えに伴う係数K1mは、条件にもよるが、例えば、本実施例においては、0.3程度であり、以下に示すような種々のパラメータ(定格電力値、設定電力値、第2制御周期、その所定の時間、使用するヒータランプの種類や本数、制御方式やその特性、ローラの構成など)にもよるが、概ね、0.1〜0.45程度である。
【0153】
切換制御手段84は、リレー等のスイッチング素子84a等から構成され、画像形成装置100を構成する各構成部の動作状態に基づいてスイッチング素子84aを切り換えることで第1電力制御モードと第2電力制御モードとの切り換えを行う。具体的には、連続印字により加熱ローラ61の表面温度が一定温度よりも低くなり、第1電力制御モードでのヒータランプ64に供給可能な許容電力値では加熱ローラ61表面を素早く昇温できない状態であって、各構成部が消費する駆動電力が少なくて許容電力値以上の電力がヒータランプ64に供給可能な場合等に切り換える。
【0154】
尚、第1電力制御モードと第2電力制御モードとの制御の同期を取るため、図5に示すように第2電力制御部(第2電力制御モード)の制御周期である第2制御周期は、第1電力制御部(第1電力制御モード)の制御周期である第1制御周期に対して整数倍に設定する。例えば、本実施例では第1電力制御モードを150ms周期、第2電力制御モードを1.5s周期とする。
【0155】
また、第1電力制御モード及び第2電力制御モードの切換タイミングは、図5に示すように第2制御周期に合わせて行う。これにより、第1制御周期よりも長い第2制御周期に合わせて電力制御モードの切換が行われるので、第2電力制御モードの実行が第2制御周期の途中から開始及び終了されることがなく、制御が中途半端に行われることがない。そのため、適切なタイミングでバースト駆動を開始、終了できる。ここで、第1制御周期は第2制御周期よりも短いので第1制御周期の途中から第1電力制御モードに切り換わった場合であっても、すぐに次の周期から開始されるので、適切に制御を行うことができる。
【0156】
更に、サーミスタ66から受け取る加熱ローラ61の表面温度の値を更新する更新周期も第1電力制御モードの制御に同期させるため、図5に示すように第1制御周期の整数倍に設定する。例えば、本実施形態では第1制御周期が150msに対して加熱ローラ61の表面温度の値の更新周期は、300msに設定する。
【0157】
これにより、第2制御周期及び加熱ローラ61の表面温度の値の更新周期が第1制御周期の整数倍であるので、第1電力制御モード、第2電力制御モード、加熱対象物の表面温度の値の更新が同期して実行され、それぞれの実行開始タイミングがずれることがない。そのため、正確に第1電力制御モードと第2電力制御モードとの切換もそれぞれの制御周期が同期しているので、より適切なタイミングで制御モードを実行することができる。また、第1電力制御モードにおける加熱ローラ61の表面温度に基づく設定電力値の制御においても、表面温度の値の更新周期が第1制御周期に同期しているので、表面温度の値の更新がずれることがなく、更新された値に基づいて正確に行うことができる。
【0158】
更に、各周期が同期することで周期を管理する図示しないタイマ手段の数を低減することができるので、タイマ手段の構成をコンパクトにでき、またコストを低減できる。
【0159】
上記構成によって、各構成部の消費電力が減少し、画像形成装置100に供給される電力に余りが生じる場合に、加熱ローラ61に許容電力値を超える電力の供給が必要な時は、第2電力制御モードに切り換えて余りの電力もヒータランプ64に供給するようにバースト駆動(強制駆動)することで、ヒータランプ64に必要な電力のうちの不足分を補うことができる。そのため、加熱ローラ61を介して用紙Pを加熱する性能の低下を防止し、画像品質の低下を防止できる。
【0160】
しかも、所定の間隔を設けて電力を供給してヒータランプ64をバースト駆動することによって、ヒータランプ64に電力を供給する毎に突入電圧が発生するので、実際にヒータランプ64に供給される電力の平均を設定電力値よりも大きくすることができる。これにより、各構成部の消費電力が多いため画像形成装置100に供給される電力に余りが生じない場合、第2電力制御モードにおいて第1電力制御モードで出力可能な許容電力値と同じ設定電力値が設定されても、実際に加熱ローラ61に供給される電力は設定電力値より高くなるので、必要な電力のうちの不足分を補うことができる。これにより、加熱ローラ61を介して用紙Pを加熱する性能の低下をより防止できる。
【実施例2】
【0161】
図6は、この発明の実施形態に係る定着装置の概略の構成を示す断面図である。図6に示すように、本実施例における定着装置36の主要な構成は実施例1と同様であるが、本実施例では、加熱ローラ61の内部に加熱ローラ61を加熱する配熱位置の異なる2本のヒータランプ64a,64bを備えている。ヒータランプ64aは、定格電力が740Wであり、中央高の配熱を行う。ヒータランプ64bは、定格電力が445Wで端部高の配熱を行う。また、各ヒータランプ64a,64bに対応するため、サーミスタ66a,66bを加熱ローラ61表面の軸方向の中央部と端部とにそれぞれ配置する。
【0162】
更に、加熱ローラ61及び加圧ローラ62の動作、機能等は、同様であるが2本のヒータランプ64a,64bの配置等から実施例1と比べて構成が少し異なる。加熱ローラ61は、芯材61aに肉厚が0.15〜2mm程度でSTKM又は高張力鋼を用いて形成されたものを用いる。また、芯材61aは、外径40mm、軸方向の両端部を外径30mmに絞って形成されている。
【0163】
一方、加圧ローラ62は、STKMを用い外径が28mmに形成された芯材62a、芯材62aの外周面上に熱伝導率の低い低熱伝導率シリコンゴムにより形成された耐熱弾性体層62b、耐熱弾性体層62bの外周面上にカーボンを分散させて抵抗率が調整された導電性を有するPFAチューブを被覆して離型層62c等から構成され、加圧ローラ全体として、外径40mmにしている。
【0164】
図7は、この発明の実施形態に係る定着装置に備えられる電力制御部の構成を示すブロック図である。上述の実施例1と同様に電力制御部80は、A/D変換回路90a,90bそれぞれを介してサーミスタ66a,66bから加熱ローラ61の表面温度の値を取得する。取得した加熱ローラ61の表面温度のそれぞれの値に基づいてヒータランプ64a,64bに供給する電力の設定電力値を求め、ドライバ91a,91bを介してそれぞれのヒータランプ64a,64bに電力を供給する。第2電力制御手段82は、切換制御手段84及びドライバ91a,91bを介してヒータランプ64a,64bに接続され、実施例1における上記式(1)を用いて設定電力値を求め、バースト駆動タイミング発生手段83に基づく所定の時間だけ設定電力値をヒータランプ64a,64bに供給する。
【0165】
ここで、バースト駆動タイミング発生手段83は、A/D変換回路90a,90bを介してサーミスタ66a,66bに接続され、設定電力値を出力する所定の時間を加熱ローラ61の表面温度の変化状態又は用紙Pを加熱する処理条件に基づいて求める。例えば、各サーミスタ66a,66bから検知された加熱ローラ61の表面温度の変化率に基づいて上記所定の時間を求める。具体的には、加熱ローラ61の表面温度の上昇率が低い場合には所定の時間を長く、上昇率が高い場合には所定の時間を短くする。
【0166】
また、上記例以外にも、加熱ローラ61の表面温度の変化状態の例として、各サーミスタ66a,66bから検知された加熱ローラ61の表面温度、異なる領域に配置された各サーミスタ66a、66bから検知されたそれぞれの加熱ローラ61の表面温度から求められる温度差、また用紙Pを加熱する処理条件の例として、加熱ローラ61が加熱する用紙Pへの加熱処理を開始してからの経過時間、用紙サイズの条件に基づいて上記所定の時間を求めてもよく、また定着装置36の構成に応じて上記例を複数組み合わせてもよい。これにより、加熱手段に供給される実際の電力を適切に制御できるので、必要以上にヒータランプ64a,64bに供給される実際の電力が大きくなりすぎることがないので、加熱ローラ61の表面温度が過昇温することを防止でき、また第2電力制御モードにおける電力消費を抑制できる。
【0167】
また、図8のタイミングチャートに示すようにヒータランプ64a,64b毎に上記所定の時間を求めてもよい。これによって、ヒータランプ64a,64b毎にバースト駆動をより適切に行うことができ、また第2電力制御モードにおける無駄な電力消費をより抑制できる。
【0168】
しかも、切換制御手段84をA/D変換回路90a,90bを介してサーミスタ66a,66bに接続し、上記所定の時間を求める条件を第1電力制御モード及び第2電力制御モードの切換の可否の判定に用いてもよい。これにより、例えば、用紙サイズが小さい場合は、図8のタイミングチャートに示すように端部高の配熱を行うヒータランプ64bを第2電力制御モードに切り換えないようにする。これは、用紙サイズが小さい場合、用紙Pは加熱ローラ61の軸方向の端部を通過せず、加熱ローラ61の軸方向の中央部を通過するので、ヒータランプ64bを第2電力制御モードでバースト駆動しなくても、中央高の配熱を行うヒータランプ64aのみ第2電力制御モードに切り換えれば画像品質の低下を防止ができるからである。これにより、第2電力制御モードを実行するのに適切なヒータランプ64を選択することができるので、用紙Pを加熱する性能が低下することを防止しつつ第2電力制御モードにおける電力消費を抑制することができる。
【0169】
また、定格電力値の大きいヒータランプ64aにおいて、第2電力制御モード時の設定電力値を定格電力値の740Wに固定してもよい。つまり、定格電力値の低いヒータランプ64bよりも定格電力値の高いヒータランプ64aの方が発熱量が多いため、ヒータランプ64aの第2電力制御モード時の設定電力値を定格電力値として発熱量を多くすることで、より早く加熱ローラ61の表面温度を上昇させることができる。尚、画像形成装置100の各構成部に電力不足による影響が生じないように、ヒータランプ64bの設定電力値を調整する必要がある。
【0170】
なお、実施例1と同様に温度検知は、加熱ローラ61の表面に限定されるものではなく、また直接/間接、接触/非接触に限定されるものではない。
【実施例3】
【0171】
図9は、この発明の実施形態に係る定着装置の概略の構成を示す断面図である。図9に示すように、本実施例における定着装置36の主要な構成は実施例2と同様であるが、本実施例では、この発明の伝達部材である外部加熱ローラ63及び外部加熱ローラ63の表面温度を検知するサーミスタ66cを備えている。外部加熱ローラ63は、中空円筒形状を呈し、内部にヒータランプ64cを備え、加圧ローラ62を加熱する。また、外部加熱ローラ63は、加圧ローラ62の反時計方向の定着ニップ部Yよりも上流側に所定の押圧力をもって加圧ローラ62の表面に当接し、加圧ローラ62との当接部分に加熱ニップ部Z(本実施例における加熱ニップ部Zのニップ幅は1mm。)を形成する。
【0172】
更に、外部加熱ローラ63は、アルミニウムや鉄系材料等からなる中空円筒状の金属製芯材63a及び金属製芯材63aの外周面に形成された耐熱性及び離型性に優れた合成樹脂材料からなる耐熱離型層63b等から構成される。また、耐熱離型層63bに用いられる合成樹脂は、例えばシリコンゴムやフッ素ゴム等から形成されるエラストマー、PFAやPTFE等から構成されるフッ素樹脂がある。
【0173】
上記構成に伴って、図10に示すようにサーミスタ66cがA/D変換回路90cを介して第1電力制御部81及びバースト駆動タイミング制御手段83に接続され、またヒータランプ64cがドライバ91c及び切換制御手段84を介して第2電力制御部82に接続されている。また、ヒータランプ64cは、第1電力制御モードにおいて第1電力制御部によってA/D変換回路90cを介して取得した外部加熱ローラ63の表面温度に基づいて設定電力値が制御される。更に、ヒータランプ64cは、ヒータランプ64a,64bと同様に切換制御手段84によって第1電力制御モード及び第2電力制御モードの切換を行う。これにより、外部加熱ローラ63の表面温度を適切に維持できるので、加圧ローラ62の表面を適切に加熱することができ、用紙Pを加圧ローラ62からも十分に加熱できる。したがって、用紙Pを加熱する性能の低下を防止し、画像品質の低下をより防止することができる。
【0174】
尚、本実施例の金属製芯材63aには、直径15mm、肉厚0.5mmのアルミ合金製ローラを用いる。また、耐熱離型層63bを構成する合成樹脂には、PFAとPTFEとの混合物を金属製芯材63aの外周面に25μmの厚さに塗布焼成したものを用いる。また、ヒータランプ64cは、ローラ表面の全体を均一に配熱するフラットの配熱であり、定格出力は400Wである。
【0175】
また、本実施例では、定格電力値の最も大きい中央高のヒータランプ64aについては第2電力制御モードに切り換えずに第1電力制御モードのみで制御し、2本のヒータランプ64b、64cについてのみ第1電力制御モード及び第2電力制御モードの切換を行う。これは、定格電力値の最も大きいヒータランプ64aが第2電力制御モードに切り換わらないことで、第2電力制御モードにおける電力消費を抑え、第2電力制御モードにおけるその他のヒータランプ64a,64bのバースト駆動のために必要な電力が不足することを低減するためである。
【0176】
しかも、本実施例では、図11に示すようにヒータランプ64cを基準として順に他のヒータランプ64a,64bの制御モードにおける制御開始タイミングを100msずつずらす。具体的には、サーミスタ66a〜66cによって検知される加熱ローラ61の表面温度及び外部加熱ローラ63の表面温度の値の更新周期は300msであるので、第1電力制御モードにおいて、ヒータランプ64cの制御が開始されてから100ms後にヒータランプ64bの制御を開始し、200ms後にヒータランプ64bの制御を開始する。但し、サーミスタ66a〜66cによって検知される加熱ローラ61の表面温度及び外部加熱ローラ63の表面温度の値の更新周期の1周期の時間内で2つのヒータランプ64a,64bの制御開始タイミングをずらさなければならない。これは、更新周期の1周期の時間を越えるとそれぞれのヒータランプ64a〜64cの各制御モードにおいて異なる更新時期に取得した加熱ローラ61及び外部加熱ローラ63の表面温度に基づいて制御が行われるのを防止するためである。したがって、上記表面温度の更新周期の1周期の時間内であれば特に本実施例の100msに限定されない。
【0177】
これによって、複数のヒータランプ64a〜64cは、各制御モードの制御開始タイミングが異なるので、複数のヒータランプ64a〜64cが同時に制御開始した場合の大きな電力変動の発生やノイズの増加を低減できるので、第2電力制御モードにおけるバースト駆動のために必要な電力が不足することを抑制できる。尚、図11において制御開始タイミングがわかるように各ヒータランプ64a〜64cの制御モード切換タイミングチャートにおいて制御開始タイミングを記述している。
【実施例4】
【0178】
本実施例は、図9に示す実施例3の定着装置36と同様の構成であり、また電力制御部80の構成も略同様であるが、本実施例の電力制御部80は、図12に示すように切換条件判定手段85を備えている。切換条件判定手段85は、切換制御手段84及びA/D変換回路90a〜90cを介してサーミスタ66a〜66cに接続され、第2電力制御モードへの切換の可否の判定を行う。また、切換条件判定手段85は、種々のパラメータをモニタ(本実施例では、サーミスタ66a〜66cによって検知される加熱ローラ61及び外部加熱ローラ63の表面温度)し、第2電力制御モードの切換の可否の判定である切換動作停止条件及び切換動作再開条件に合致するか否かを判定し、判定した結果を切換制御手段84に出力する。
【0179】
切換条件判定手段85が切換動作停止条件に合致したと判定した場合は、切換制御手段84は、第1電力制御モードから第2電力制御モードへの切換を禁止し、また第2電力制御モード実行中の場合は、現在実行中の周期の終了後に第1電力制御モードに強制的に切り換える。
【0180】
一方、切換動作停止条件により第2電力制御モードへの切換が禁止されている際に切換判定手段85が切換動作再開条件に合致したと判定した場合は、第2電力制御モードへの切換の禁止を解除する。
【0181】
本実施例では、加熱ローラ61及び外部加熱ローラ63の表面温度の目標温度を190℃とし、ヒータランプ64a〜64cそれぞれの切換動作停止条件は、各サーミスタ66a〜66cによって検知される加熱ローラ61及び外部加熱ローラ63の表面温度が186℃以上とする。また、切換動作再開条件は、各サーミスタ66a〜66cによって検知される加熱ローラ61及び外部加熱ローラ63の表面温度が184℃以下の時とする。
【0182】
尚、切換動作停止条件及び切換動作再開条件の加熱ローラ61及び外部加熱ローラ63の表面温度を同じ温度条件にしてもよい。
【0183】
また、切換動作停止条件及び切換動作再開条件は、上述の条件のみに限らず加熱ローラ61及び外部加熱ローラ63の表面温度の変化状態又は用紙Pを加熱する処理条件に基づいて判定してもよい。加熱ローラ61及び外部加熱ローラ63の表面温度の変化状態の例として、各サーミスタ64a〜64cによって検知される温度から求められる温度差、各サーミスタ64a〜64cによって検知される各温度の変化率、また用紙Pを加熱する処理条件の例として加熱ローラ61が用紙Pを加熱する処理を開始してからの経過時間、用紙Pのサイズがある。また、上記例を複数組み合わせてもよい。
【0184】
これによって、必要のない場合に第2電力制御モードに切り換わらずに第1電力制御モードのみで制御させることができるので、加熱ローラ61及び外部加熱ローラ63の表面温度が過昇温することを防止でき、加熱ローラ61及び外部加熱ローラ63の表面温度を維持することができ、第2電力制御モードにおける電力消費を抑制することができる。
【0185】
更に、加圧ローラ62の表面上にサーミスタを新たに設け、加圧ローラ62の表面温度を切換動作停止条件及び切換動作再開条件としてもよい。外部加熱ローラ63は、加圧ローラ62の表面温度を適切に維持するために加熱ローラ61表面を加熱するので、加圧ローラ62の表面温度を切換動作停止条件及び切換動作再開条件とすることで、第2電力制御モードへの切換の可否の判定を正確に判定でき、必要のない場合に第2電力制御モードに切り換えずに第1電力制御モードのみでヒータランプ64cの設定電力値を制御させることができるので、加圧ローラ62の表面温度が過昇温することを防止して加圧ローラ62の表面温度を適切に維持することができ、第2電力制御モードにおける電力消費を抑制できる。
【0186】
尚、加熱ローラ61が用紙Pを加熱する処理の実行開始から一定時間経過するまで、又は加熱処理された用紙Pの枚数が所定の枚数を超えるまでは、第2電力制御モードへの切換の可否の判定を無効にする。これにより、加熱ローラ61及び外部加熱ローラ63の表面温度が不安定になる用紙Pを加熱する処理の開始当初に第2電力制御モードへの切換が禁止されるのを防止できるので、第1電力制御モードと第2電力制御モードとの切換を行いつつ適切に加熱ローラ61及び外部加熱ローラ63の表面温度を適切に維持できる。
【0187】
図13は、この発明の実施形態に係る定着装置に備えられる加熱ローラ及び加圧ローラ62の表面温度の推移を示す図である。画像形成装置100の起動時や待機中の省電力モード時から印字可能状態に移るために加熱ローラ61及び加圧ローラ62を加熱するウォームアップ動作が実行される。ウォームアップ動作についても第1電力制御モード及び第2電力制御モードの切り換えを行ってヒータランプ64a〜64cに電力を供給する。また、ウォームアップ動作は、図13に示すように加熱ローラ61の表面温度が目標温度に到達した時点で終了する。切換制御手段84は、図13(a)に示すようにウォームアップ動作終了直後に印字動作の開始した時、所定の強制駆動時間が経過するまで第2電力制御モードに強制的に切り換えてヒータランプ64a〜64cをバースト駆動する。
【0188】
通常、薄肉の加熱ローラ61(肉厚0.1〜2.0mm程度)は、薄肉のため熱容量が少なくウォームアップ動作によってすぐに目標温度に達してしまうが、加圧ローラ62は、通常加熱ローラ61に比べて肉厚であることから熱容量が大きいために第1電力制御モードによるウォームアップ動作による加熱だけでは、図13(a)に示すようにあまり温度上昇しない。また、印字動作が開始されると被加熱体に熱が奪われるためにウォームアップ動作終了直後の加圧部材の表面温度は上昇し難くなる。
【0189】
そのため、ウォームアップ動作中に第2電力制御モードへの切り換えを実行することによって、加熱ローラ61の表面温度を素早く上昇させることができ、ウォームアップ動作時間を大幅に短縮することができるので、ウォームアップ動作終了までの待ち時間が大幅に短縮される。また、加熱ローラ61の表面及び外部加熱ローラ63の表面から加圧ローラ62にも熱が付与されるので、加圧ローラ62の表面温度も素早く上昇させることができる。
【0190】
更に、ウォームアップ動作終了直後の印字動作開始から強制駆動時間が経過するまで強制的に第2電力制御モードに切り換えることによって、印字動作が開始されても加熱ローラ61や外部加熱ローラ63から熱を付与して加圧ローラ62の表面温度を素早く上昇させることができ、加圧ローラ62の表面を適切な温度に維持できるので、用紙Pが加圧ローラ62からも十分に加熱でき、用紙Pを加熱する性能が低下することをより防止できる。
【0191】
尚、図13(b)に示すように、上記の所定の強制駆動時間の経過前又は経過直後に、加熱ローラ61の表面温度が所定の設定温度を下回る間、加熱ローラ61の表面温度が所定の設定温度以上になるまで、加熱ローラ61を加熱するヒータランプ64a,64bに、現在実行されている第2電力制御モードにおいて供給されている電力よりも高い電力を供給するために第2制御周期及び所定の時間を変更して第2電力制御モードを実行する。
【0192】
所定の強制駆動時間が経過前又は経過直後に加熱ローラ61の表面温度が所定の設定温度を下回るような場合は、元々想定していた用紙P等への熱伝導や大気中への熱放散あるいは周囲環境の変化等が激しいため、加熱ローラ61が十分に加熱されずにいる。そのような場合、所定の強制駆動時間中や経過直後でも第2電力制御モードへ切り換えているが、十分な熱が供給されていない為に、この時の用紙Pを加熱する能力が低下し、適切な温度制御が行なわれないので、定着性能が著しく低下して、所望の性能が維持できないことになる。
【0193】
そこで、現在実行されている第2電力制御モードの第2制御周期及び所定の時間から新たに設定した第2制御周期及び所定の時間に変更して、現在実行されている第2電力制御モードにおいて供給されている電力よりも高い電力をヒータランプ64a,64bに供給することで加熱ローラ61への加熱特性を一時的に高くして、加熱ローラ61の温度を適切に維持するようにする。この動作を、加熱ローラ61が所定の設定温度を超えるかほぼ等しくなるまで1回あるいは複数回繰り返して行なう。尚、本実施例では、ヒータランプ64a,64bの第2制御周期及び所定の時間を変更しているが、どちらか一方でもよい。
【0194】
これによって、加熱ローラ61の表面温度を目標温度に漸近させることができ、元々想定していない周囲環境の変化等が生じた場合であって強制的に第2電力制御モードへの切換を行っていても対応できない状態を改善でき、加熱ローラ61を介して用紙Pを加熱する性能の低下をより防止できる。
【0195】
尚、第2電力制御モードの第2制御周期及び所定の時間についても、予め記憶手段に記憶させておき、設定値を変更する必要が生じたときは適宜読み出して、用いても良く、また、記憶手段に記憶させたり、動作プログラム等に記述された数式等を、現在の表面温度や環境指数(室温、湿度等)、動作時間や強制駆動時間などの時間、印字枚数、用紙のサイズや方向といったパラメータを用いてその都度求めて用いても良い。
【実施例5】
【0196】
本実施例は上述した実施例4と略同様の構成であるが、本実施例では図14に示すように電力制御部80に表面温度推定手段86を設けている。表面温度推定手段86は、切換条件判定手段85及びA/D変換回路90cを介してサーミスタ66cに接続され、外部加熱ローラ63の表面温度から加圧ローラ62の表面温度を推定する。また、表面温度推定手段86は、加圧ローラ62の表面の推定温度の値を切換条件判定手段85に出力する。切換条件判定手段85は、受け取った加圧ローラ62の表面の推定温度に基づいてヒータランプ64cの切換動作停止条件及び切換動作再開条件について合致しているか否かを判定する。つまり、外部加熱ローラ63の表面温度を用いる実施例4と異なり、ヒータランプ64cの切換動作停止条件及び切換動作再開条件に加圧ローラ62の表面温度を用いる。
【0197】
加圧ローラ62は、外部加熱ローラ63に当接され、当接部分から外部加熱ローラ63の表面の熱が伝達される。また、ヒータランプ64cの駆動を停止しておくと、加圧ローラ62の表面温度は、加圧部材の表面温度に略等しくなる。更に、通常加圧ローラ62の表面温度は、ヒータランプ64cを有する外部加熱ローラ63の表面温度以下になり、外部加熱ローラ63の表面温度と差があるので、ヒータランプ64cの駆動を停止した後、外部加熱ローラ63の表面温度は、徐々に降下していく。この時、外部加熱ローラ63の表面温度の降下率は、加圧ローラ62の表面温度と外部加熱ローラ63との表面温度の温度差によって異なる。
【0198】
したがって、ヒータランプ64cの駆動を停止して十分な時間が経過した後に検知した外部加熱ローラ63の表面温度は、加圧ローラ62の表面温度と同様と考えられ、また十分な時間が経過した後でなくてもヒータランプ64cの駆動停止後の外部加熱ローラ63の表面温度の降下状態から加圧ローラ62の表面温度を推定できる。
【0199】
これによって、新たに温度検知手段を設けることなく、ヒータランプ64cの第2電力制御モードへの切換の可否を正確に判定することができ、外部加熱ローラ63の表面温度を用いるよりも適切に加圧ローラ62の表面温度を維持できるので、用紙Pを加圧ローラ62からも十分に加熱でき、用紙Pを加熱する性能の低下を防止できる。
【0200】
また、ヒータランプ64cの駆動停止から一定時間経過後に検知した外部加熱ローラ63の表面温度と加圧ローラ62の表面温度との相関を予め求めておき、図示しない記憶手段にテーブルとして記憶しておいてもよい。同様に、外部加熱ローラ63の表面温度の降下率と加圧ローラ62との相関を求めて記憶手段にテーブルとして記憶しておいてもよい。これによって、加圧ローラ62の表面温度の推定処理を単純にできる。
【実施例6】
【0201】
本実施例は、上述した実施例4の定着装置36と略同様の構成であるが、図15に示すようにヒータランプ64aにスイッチング素子84cを含む切換制御手段84を介して第1電力制御部81及び第2電力制御部82が接続されている。つまり、本実施例では、ヒータランプ64a〜64cについて第1電力制御モード及び第2電力制御モードで電力制御を行う。
【0202】
それに伴って外部加熱ローラ63の金属製芯材63aを肉厚0.75mmとし、また耐熱離型層63bをフッ素樹脂系で形成する。
【0203】
第1電力制御モードは、第1電力制御周期がサーミスタ66a〜66cによって検知される加熱ローラ61の表面温度及び外部加熱ローラ61の表面温度の値の更新周期と等しい300msである。また、図16(A)に示すように、ヒータランプ64cを基準として順に他のヒータランプ64a,64bの各制御モードにおける制御開始のタイミングを100msずつずらす。
【0204】
したがって、第1制御周期の時間内において全てのヒータランプ64a〜64cの制御が開始されるので、第1電力制御モード及び第2電力制御モードにおける全てのヒータランプ64a〜64cの制御開始のタイミングが重なることがなく、複数のヒータランプ64a〜64cが同時に制御開始した場合の大きな電力変動の発生やノイズの増加をより低減できる。これにより、第2電力制御モードにおけるバースト駆動のために必要な電力が不足することをより防止できる。
【0205】
また、本実施例では、第2電力制御周期が1.2sであり、第2電力制御モード時にヒータランプ64aの設定電力値を定格電力値に固定する。
【0206】
更に本実施例では、各ヒータランプ64b,64cについて、第2電力制御モードにおける各ヒータランプ64c,64bの電力供給の開始から次にヒータランプ64b,64aに電力供給が開始されるまでの100ms間だけ電力供給をスローアップ制御で行っている。例えば、ヒータランプ64cについて電力供給を開始する時、ヒータランプ64bに電力供給が開始されるまでの100ms間のうち、最初の第1段階において設定電力値の15〜30%の電力値で電力を供給し、第2段階で設定電力値の65〜85%の電力値で電力を供給し、100ms経過する時に設定電力値の電力を供給する。
【0207】
尚、ヒータランプ64aについては、第1電力制御モードから第2電力制御モードに切り換わった最初の電力供給の開始時から100ms間のみ上述のスローアップ制御を行う。
【0208】
これによって、電流の供給開始直後から設定電力値に基づいて求められる電流値の電流を供給した場合のバースト駆動よりも、突入電流の発生量を抑制でき、突入電流発生時にヒータランプ64a〜64cの電力の合計のピークを抑制できる。これにより、ヒータランプ64a〜64cを同時に制御開始した場合の大きな電力変動の発生やノイズの増加をより低減できるので、第2電力制御モードにおけるバースト駆動のために必要な電力が不足することをより抑制できる。
【0209】
尚、スローアップ制御は、上述のように第1段階及び第2段階で行うことに限定されず、複数段階で行えばよいが、上述の構成、又は、最初の第1段階で設定電力値の10〜25%の電力値で複数のヒータランプのそれぞれに電力を供給し、次の第2段階で設定電力値の40〜65%の電力値で複数のヒータランプのそれぞれに電力を供給し、さらに第3段階で設定電力値の70〜90%の電力値で複数のヒータランプのそれぞれに電力を供給し、100ms経過する時に設定電力値の電力を供給する構成が望ましい。
【0210】
上記数値に基づいてスローアップ制御を行うことによって、各段階で電力を供給する時に発生する電力変動を効果的に抑制できた。
なお、上述した各段階の数値は、図21に示す周波数50Hzの電源を使用した場合での検討結果、周波数60Hzの電源を使用した場合での図21と同様の検討結果、ヒータランプ64の定格電力値及び誤差に基づいて求められた数値である。
【0211】
図21は、周波数50Hzの電源を使用した本実施例について、スローアップ制御を行わない1段階で行った場合と、各条件下で2段階及び3段階のスローアップ制御を行った場合のピーク電流とノイズ、電圧降下の項目について検討した結果である。
【0212】
図21に示すように、設定電力値を電力の供給開始から供給する1段階で行った場合は3つの項目全てで不具合が生じる(不可判定となる)が、2段階及び3段階で行った場合には、各段階で適切な電力値にして最終の電力設定値に電力を供給することで、ピーク電流も小さくすることができ、ノイズや電圧降下を抑制する効果が大きい。また、ピーク電流や電圧降下が小さいと、ヒータランプでの加熱効率も良くなり、寿命の短縮も生じ難くなる。
【0213】
図21に示すように最も適切な構成としては、2段階では、最初の第1段階で設定電力値の20%の電力値を供給し、第2段階で設定電力値の80%の電力値を供給し、最後に設定電力値を供給する構成となる。また、3段階では、第1段階で設定電力値の20%の電力値の電力を供給し、第2段階で設定電力値の50%の電力値の電力を供給し、第3段階で設定電力値の80%の電力値の電力を供給し、最終的に設定電力値の電力を供給する構成となる。
【0214】
これ以外の条件では、ピーク電流、ノイズ、電圧降下のどれか1つが不具合を及ぼすので、上述の最適値が、最良の組合わせである。
【0215】
しかも、本実施例では、図16(B)に示すようにヒータランプ64bへの第2電力制御モードにおける電力(ここでは電流)の供給を所定の時間の開始から所定の禁止時間である300msを経過するまで禁止している。これにより、第2電力制御モードにおける電力付与の効果の低下を最小限に抑えつつ、突入電流発生時における複数のヒータランプ64a〜64cに供給される電力の合計のピークが大きくなることをより効果的に抑制できる。
【0216】
これは、所定の禁止時間だけ電力の供給が禁止されないと、図16(C)に示すように、第2電力制御モード中、ヒータランプ64a〜64cがバースト駆動した際に発生する突入電流が非常に大きいために、ヒータランプ64b,64cの第2電力制御モードの制御開始タイミングを100msずつずらしただけでは、突入電流が発生した後設定電力値の電力量に下がりきる前に次のヒータランプ64b又は64cのバースト駆動が開始され、この瞬間のヒータランプ64a〜64cに供給される電力の合計のピークが大きくなってしまうからである。
【0217】
本実施例では、所定の禁止時間を300msとしているが特にこれに限定されることはなく、ヒータランプ64a〜64cの電力の合計のピークを所望のレベルに抑制できるような時間であればよい。但し、所定の禁止時間を長くしすぎると第2電力制御モードでの電力付与の効果がなくなるため注意が必要である。
【0218】
尚、本実施例では、ヒータランプ64a〜64cの電力の合計のピークの増加を抑制するためにスローアップ制御を行っているが、スローアップ制御を長い時間かけて行うと、第2電力制御モードで殆ど電力を供給できなくなってしまうためにあまり長く設定できない。したがって、所定の禁止時間だけ電力の供給を禁止することは、スローアップ制御を行ってもヒータランプ64a〜64cに供給される電力の合計のピークが所望のレベルにまで抑制できないような場合に非常に有効である。
【0219】
また、本実施例では、目標温度を補正する制御を行っている。本実施例の加熱ローラ61の表面温度の目標温度は185℃であるが、印刷動作の開始直後のウォームアップ時に210℃、また通紙開始から所定枚数である25枚の用紙が通過するまで195℃に設定(補正)される。
【0220】
これにより、ヒータランプ64a〜64cに供給する電力を一時的に増加させることができ、素早く加熱ローラ61の表面温度を上昇させることができる。尚、所定枚数は25枚に限定されるものではなく、また所定枚数ではなく印刷動作開始からの所定の補正時間だけ補正を行ってもよい。
【0221】
ここで、印刷動作開始から所定枚数の用紙を印字する間、又は、所定の補正時間が経過する間だけ目標温度を変更するのは、印刷動作開始当初は、できるだけ早く加熱部材の表面温度を目標温度に到達させて安定させたいためであり、また長時間目標温度を高くして多くの電力を加熱手段に供給することが難しいためである。
【0222】
また、第2電力制御モードにおけるヒータランプ64a〜64cの電力の合計のピークの増加を抑制しているため発生する突入電流量が低下し、第2電力制御モードにおけるヒータランプ64bへの電力の供給量が低下して加熱ローラ61の表面温度が素早く上昇しない場合があるので、本実施例において目標温度を補正する構成は、第2電力制御モードでヒータランプ64a〜64cに供給する設定電力値を上昇させるのに有効である。
【0223】
これらによって、ヒータランプ64a〜64cの合計の電力のピークを効果的に抑制しつつ、図17に示すように加熱ローラ61の表面温度を適切に維持することができる。尚、図17は、本実施例の画像形成装置100において毎分の印刷速度が毎分62枚で200枚の印刷を行った際の加熱ローラ61の表面温度及び外部加熱ローラ63の表面温度の推移を示す説明図である。
【0224】
尚、本実施例は、3つのローラ61〜63及び3つのヒータランプ64a〜64cを用いているが特にこれに限定されるものではなく、2ローラ及び1ハロゲンランプ等の構成でもよく、また定着部材(加熱ローラ61)や加圧部材(加圧ローラ62)がベルト形状であってもよい。
【実施例7】
【0225】
本実施例は、実施例6と略同様の構成であるが、図18に示すように加圧部材に加圧ローラではなく、加圧ベルト110を用いている。それに伴って、加熱ローラ61の構成を変更している。
【0226】
加熱ローラ61は、外径50mm形成され、芯金61a、ゴム層61c、離型層61bの3層で形成されている。芯金61aは前述してきたものと同様のアルミ合金製であるが肉厚は平均して1.5mmである。ゴム層61cは、芯金61aの外周面を肉厚1mmのシリコンゴムで被覆する。離型層61bは、ゴム層61cの外周面をフッ素樹脂チューブ(PFAチューブ)で被覆する。また、加熱ローラ61に内包するヒータランプ64a及び64bは実施例6と略同様の構成であるが、本実施例では定格電力が820W及び450Wである。
【0227】
加圧ベルト110は、幅335mm、外周φ60mmで、厚み100μmのポリイミドをベースに、離型層として表面をフッ素樹脂(本実施例ではPFA)を外周面にコーティングして構成されている。
【0228】
また、加圧ベルト110は、図19に示すように加圧加熱ローラ111、駆動ローラ112及びテンションローラ113によって張架され、加熱ローラ61の外周面の一部に圧接して加熱ローラ61とで広いニップ部Yを形成する。このニップ部Yにてトナーを溶融して用紙P上に定着させる。
【0229】
加圧加熱ローラ111は、実施例6の外部加熱ローラ63と略同様の構成であるが外経20mm、肉厚1mmである。また、加圧加熱ローラ111は、外部加熱ローラ63と同様にヒータランプ115(本実施例では、300W)を内包し、ニップ部Yよりも図18に示す矢印方向の用紙搬送方向の上流側で加圧ベルト110を加熱し、トナーの溶融を促進させて定着性能を向上を図っている。ヒータランプ115は、ドライバ91dを介して第1電力制御部81のみに接続されて電力制御が行われる。また、本実施例は、実施例6と異なりヒータランプ64a,64bについてのみ第1電力制御モード及び第2電力制御モードで電力制御を行う。
【0230】
駆動ローラ112(外径20mm)は、加熱ローラ61と加圧ベルト110との間に周速差を発生させるために、加圧ベルト110を加熱ローラ61の回転速度よりも2〜10%程度遅くした回転速度で回転させる。また、駆動ローラ112には、駆動力を効率よく付与するために芯金112aの外周面に耐熱性を有するゴム層112b(厚み1mm)、例えばシリコンゴムが被覆されている。
【0231】
テンションローラ113は、加圧ベルト110の弛みをなくして、円滑に回転するように20Nの力で加圧ベルト110を引っ張る。
【0232】
尚、本実施例では、ヒータランプ115を内包した加圧加熱ローラ111を用いているが、駆動ローラ112にもヒータランプを内包してもよい。また、加圧加熱ローラ111にヒータランプ115を内包しなくてもよい。あるいは、加熱ローラ61や加圧ベルト110を外周面から加熱する外部加熱体を用いてもよい。
【0233】
図20は、本実施例のヒータランプ64a,64bの電力制御のタイミングチャートである。図20(A)に示すように、本実施例の第1電力制御モードにおける第1制御周期は200msであり、ヒータランプ64aを基準としてヒータランプ64bの各制御モードにおける制御開始タイミングを100msずらす。尚、図20は、ヒータランプ115が動作していない状態でのタイミングチャートである。
【0234】
これにより、第1制御周期の時間内においてヒータランプ64a,64bの制御が開始されるので、実施例6と同様の効果を得ることができる。
【0235】
尚、ヒータランプ115は、第1電力制御部84によってヒータランプ64a及びヒータランプ64bが消灯している間のみ点灯するように制御される。また、ヒータランプ115は、第1電力制御部84に接続された図示しない低温環境検出器から画像形成装置100が低温環境にあると検出された際、第1電力制御部84によってウォームアップ時間を短縮する等の定着性能を向上させるための補助的な目的で所定のタイミングで電力供給される。
【0236】
本実施例では、加熱ローラ61の表面温度の値の更新周期は200msであり、また第2電力制御モード時にヒータランプ64aの設定電力値を定格電力値に固定する。
【0237】
また、本実例では、実施例6と同様にヒータランプ64bについて、図20(B)に示すようにヒータランプ64bへの第2電力制御モードにおける電力(ここでは電流)の供給を、所定の時間の開始から加熱ローラ61の表面温度の値が1回更新される間まで禁止し、実施例6と同様に突入電流発生時のヒータランプ64a,64bの電力の合計のピークが大きくなるのを抑制している。
【0238】
尚、本実施例では、加熱ローラ61の表面温度の値が1回更新される間まで電力の供給を禁止しているが、加熱ローラ61の表面温度の値の更新回数は、1回〜3回のうちから所定の時間に応じて決定する。例えば、所定の時間が長い定着装置36であれば加熱ローラ61の表面温度の値が2回更新される間まで電力の供給を禁止する。
【0239】
ここで、1回〜3回としたのは、加熱ローラ61の表面温度を更新する時間は、適切な温度制御を行うために第2電力制御モードの所定の時間よりも短いが、1〜3回に設定しなければ実際に第2電力制御モードで電力供給をしている時間が極端に短くなり、第2電力制御モードを実行する効果がなくなるからである。
【0240】
例えば、加熱ローラ61の表面温度の更新周期の1の時間が200ms〜500msであると、通常第2電力制御モードでの所定の時間は、突入電流の大きさや、許容電力の大きさの制約で1秒以下に設定することが多く、このような場合に4回以上に設定しても、実際にヒータランプ64が強制駆動されて電力が供給される時間が短く、損失も大きいことから、第2電力制御モードが全く意味を持たないことになる。
【0241】
したがって、所定の強制駆動時間の大きさに応じて、1〜3回の電力の供給を禁止することで、第2電力制御モードでの電力付与の効果の低下を最小限に抑えながら、突入電流による悪影響を抑制することができる。
【0242】
本実施例では、実施例6と同様に目標温度を補正する制御を行っているが、本実施例では加熱ローラ61の表面温度の目標温度は、通常170℃であり、印字動作開始から所定枚数(本実施例では50枚)の用紙を通紙するまでは175℃に設定される。これにより、実施例6と同様の効果を得ることができる。
【0243】
尚、本実施例1〜7では、モノクロ画像用の画像形成装置に備えられる定着装置について説明したが、特にこれに限定されるものではなく、カラー画像用の画像形成装置100でもよい。
【0244】
また、本実施例1〜7では、ヒータランプ64及び115をこの発明の加熱手段として用いる定着装置について説明したが、特にこれに限定されるものではなく、例えば抵抗発熱方式や誘導加熱方式の加熱手段を用いてもよい。また、本実施例1〜7における構成で所定の時間や温度の具体的数値を用いたが特にこれに限定されるものではない。
【0245】
一方、この発明の電力制御装置について、本実施例1〜7では、この発明の電力制御装置である電力制御部80を用いた定着装置について説明しているが、特にこれに限定されるものではなく、複写機やインクジェットプリンタ等に用いられる乾燥装置、電熱器やオーブンレンジ、エアコン等の加熱手段を用いる機器に適用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱対象物を介して被加熱体を加熱する単一又は複数の加熱手段を含む装置の各構成部に供給する電力の設定電力値を許容電力値以下に制御する電力制御方法において、
前記加熱対象物の温度に基づいて加熱手段の全てに供給する電力の設定電力値を制御する第1電力制御モードと、前記加熱手段の少なくとも一つを設定電力値より大きい電力で強制駆動する第2電力制御モードと、を装置の各構成部の動作状態に応じて切り換えることを特徴とする電力制御方法。
【請求項2】
前記強制駆動は、バースト駆動であることを特徴とする請求項1に記載の電力制御方法。
【請求項3】
前記バースト駆動する際の加熱手段に供給する電力の設定電力値は、装置の各構成部の動作状態に応じて制御されることを特徴とする請求項2に記載の電力制御方法。
【請求項4】
前記第1電力制御モードと第2電力制御モードとの切換は、前記第1電力制御モードの制御周期である第1制御周期よりも長い第2電力制御モードの制御周期である第2制御周期に合わせて行い、
前記第2電力制御モードの実行中、前記第2制御周期の1周期あたりの所定の時間だけ電力を供給して前記単一又は複数の加熱手段を強制駆動することを特徴とする請求項1に記載の電力制御方法。
【請求項5】
前記第2制御周期は、前記第1制御周期の整数倍であり、
前記第1電力制御モードの実行中に用いられる前記加熱対象物の温度の値を更新する更新周期は、前記単一又は複数の加熱手段の第1制御周期の整数倍であることを特徴とする請求項4に記載の電力制御方法。
【請求項6】
前記加熱対象物の温度の更新周期の1周期の時間内において、前記複数の加熱手段の各制御モードを互いに異なるタイミングで開始することを特徴とする請求項5に記載の電力制御方法。
【請求項7】
前記複数の加熱手段の各制御モードの互いに異なる開始のタイミングは、前記第1制御周期の1周期の時間内であることを特徴とする請求項6に記載の電力制御方法。
【請求項8】
前記複数の加熱手段のうち少なくとも1つは、第2電力制御モードを開始した時から所定の禁止時間が経過するまで電力の供給を禁止することを特徴とする請求項6に記載の電力制御方法。
【請求項9】
前記複数の加熱手段のうち少なくとも1つは、前記所定の時間に応じて第2電力制御モードを開始した時から前記加熱対象物の温度の値が1回〜3回更新される間まで電力の供給を禁止することを特徴とする請求項6に記載の電力制御方法。
【請求項10】
前記複数の加熱手段において、第2電力制御モードの電力供給の開始から次の第2電力制御モードの電力供給が開始されるまでの間において、供給する電力の電力値を前記設定電力値まで複数段階に分けて徐々に増加させていくことを特徴とする請求項7に記載の電力制御方法。
【請求項11】
前記複数段階は、前記設定電力値の15〜30%の前記電力値で前記複数の加熱手段のそれぞれに電力を供給する第1段階と、前記複数の加熱手段のそれぞれに前記設定電力値の65〜85%の前記電力値で電力を供給する第2段階と、を含むことを特徴とする請求項10に記載の電力制御方法。
【請求項12】
前記複数段階は、前記設定電力値の10〜25%の前記電力値で前記複数の加熱手段のそれぞれに電力を供給する第1段階と、前記設定電力値の40〜65%の前記電力値で前記複数の加熱手段のそれぞれに電力を供給する第2段階と、前記設定電力値の70〜90%の前記電力値で前記複数の加熱手段のそれぞれに電力を供給する第3段階と、を含むことを特徴とする請求項10に記載の電力制御方法。
【請求項13】
前記第2電力制御モード開始の際、前記設定電力値に基づいて前記第2制御周期及び前記所定の時間を制御することを特徴とする請求項4に記載の電力制御方法。
【請求項14】
前記第1電力制御モードと第2電力制御モードとの切換を行う際、前記加熱対象物の温度の変化状態又は前記被加熱体を加熱する処理条件に基づいて第2電力制御モードへの切換の可否の判定を行うことを特徴とする請求項1に記載の電力制御方法。
【請求項15】
前記第2電力制御モードの実行中に前記単一又は複数の加熱手段を強制駆動する際、前記加熱対象物の温度の変化状態又は前記被加熱体を加熱する処理条件に基づいて前記第2制御周期の1周期あたりの所定の時間を設定することを特徴とする請求項4に記載の電力制御方法。
【請求項16】
前記加熱対象物の温度の変化状態又は前記被加熱体を加熱する処理条件に基づいて前記複数の加熱手段のうちから第2電力制御モードに切り換える加熱手段を選択することを特徴とする請求項1に記載の電力制御方法。
【請求項17】
前記加熱対象物が被加熱体を加熱する処理の実行開始から一定時間経過するまで又は加熱処理された被加熱体の数が所定の値を超えるまでは第2電力制御モードへの切換の可否の判定を無効とすることを特徴とする請求項14に記載の電力制御方法。
【請求項18】
前記第2制御モードに切り換える際、前記複数の加熱手段のうち少なくとも定格電力値が最大の加熱手段は切り換えないことを特徴とする請求項1に記載の電力制御方法。
【請求項19】
前記第1電力制御モードの実行中、第1電力制御モードの設定電力値の制御に用いられる予め定められた複数の設定電力値からなる第1電力設定値群から前記単一又は複数の加熱手段に供給する電力の設定電力値を求め、
前記第2電力制御モードの実行中、第2電力制御モードの設定電力値の制御に用いられる予め定められた複数の設定電力値からなる第2電力設定値群から単一又は複数の加熱手段に供給する電力の設定電力値を求めることを特徴とする請求項1に記載の電力制御方法。
【請求項20】
n個(n≧1)の前記加熱手段において、前記第1電力制御モードにおけるm(m=1,2,・・,n)番目の加熱手段に供給する電力の前記設定電力値をW1m(W)、前記第2電力制御モードにおけるm番目の加熱手段に供給する電力の前記設定電力値をW2m(W)、前記第2制御周期をT1(ms)、第2電力制御モードにおける第2制御周期の1周期のm番目の加熱手段に電力を供給する時間をT2m(ms)、m番目の加熱手段の第1電力制御モードと第2電力制御モードとの切り換えに伴う係数をK1m、m番目の加熱手段の制御モードの切り換えによる電力増加分をΔWm(W)とした時の関係式が、
ΔWm=(1/T1)×{(T1×K1m−1)×W1m+
(W2m−W1m)×T2m×K1m}
であることを特徴とする請求項1に記載の電力制御方法。
【請求項21】
前記第2制御モードの実行中、前記複数の加熱手段のうち少なくも1つの加熱手段に供給する電力の設定電力値を定格電力値とすることを特徴とする請求項1に記載の電力制御方法。
【請求項22】
本体装置に備えられ、加熱対象物を介して被加熱体を加熱する単一又は複数の加熱手段を含む本体装置の各構成部に供給する電力の設定電力値を許容電力値以下に制御する電力制御装置において、
前記加熱対象物の温度に基づいて前記加熱手段の全てに供給する電力の設定電力値を制御する第1電力制御モードと、前記加熱手段のうち少なくとも1つを設定電力値より大きい電力で強制駆動する第2電力制御モードと、を本体装置の各構成部の動作状態に応じて切り換える切換制御手段を備えたことを特徴とする電力制御装置。
【請求項23】
画像形成装置に備えられ、温度検知手段により検知された検知温度に基づいて単一又は複数の加熱手段によって加熱される加熱部材と該加熱部材の表面に圧接配置される加圧部材とを有し、加熱部材の検知温度が目標温度以上になってウォームアップ動作が終了した以降に画像形成装置が印字動作を実行し、内部に加熱手段を有する加熱部材と加圧部材とのニップ部に被加熱体を通過させて加熱する定着装置において、
請求項22に記載の電力制御装置を備え、
前記電力制御装置を用いて前記加熱部材に備えられる加熱手段に供給する電力の設定電力値を制御することを特徴とする定着装置。
【請求項24】
表面を加熱する単一又は複数の加熱手段を備えて前記加圧部材の表面に当接する伝達部材と、該伝達部材の温度を検知する温度検知手段と、を備え、
前記電力制御装置を用いて前記伝達部材に備えられる加熱手段に供給する電力の設定電力値を制御することを特徴とする請求項23に記載の定着装置。
【請求項25】
加圧部材の温度を検知する温度検知手段を備え、
前記切換制御手段は、前記温度検知手段によって検知された前記加圧部材の検知温度に基づいて前記伝達部材を加熱する単一又は複数の加熱手段の第2電力制御モードへの切換の可否の判定を行うことを特徴とする請求項24に記載の定着装置。
【請求項26】
前記第1電力制御モードにおいて、前記温度検知手段によって検知された前記伝達部材の温度から前記加圧部材の温度を推定するとともに推定した加圧部材の推定温度に基づいて前記伝達部材を加熱する単一又は複数の加熱手段の第2電力制御モードへの切換の可否の判定を行うことを特徴とする請求項24に記載の定着装置。
【請求項27】
前記切換制御手段は、前記ウォームアップ動作終了直後の印字動作開始から所定の強制駆動時間が経過するまで第2電力制御モードに切り換えることを特徴とする請求項23に記載の定着装置。
【請求項28】
前記所定の強制駆動時間の経過前又は経過直後に前記加熱部材の検知温度が前記目標温度よりも低い所定の設定温度を下回る間、第2制御周期及び所定の時間を変更して前記第2電力制御モードを実行することを特徴とする請求項27に記載の定着装置。
【請求項29】
前記単一の加熱手段の定格電力値又は複数の加熱手段の定格電力値の和であるトータル定格電力値をW0(W)、前記単一の加熱手段の設定電力値又は複数の加熱手段の設定電力値の和であるトータル設定電力値をW1(W)、前記画像形成装置全体の定格電力値をW2(W)、画像形成装置全体の動作を制御する制御部の駆動電力値をW3(W)、画像形成装置の機構部分の駆動に用いられる駆動電力値をW4(W)、画像形成装置に装着されるオプション部の定格電力値をW5(W)とした時の関係式が、
W1≦W2−(W3+W4+W5)
且つW1≦W0であることを特徴とする請求項23に記載の定着装置。
【請求項30】
第2電力制御モード中において、前記印字動作の開始から、所定枚数の用紙を印字する間、又は、所定の補正時間が経過する間は、前記目標温度を補正することを特徴とする請求項23に記載の定着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【国際公開番号】WO2005/025271
【国際公開日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【発行日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−513682(P2005−513682)
【国際出願番号】PCT/JP2004/012853
【国際出願日】平成16年9月3日(2004.9.3)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】