説明

電力増幅器

【課題】異なる周波数、出力電力または変調方式において動作可能な電力増幅器および通信機器を提供できる。
【解決手段】入力端子および出力端子を有する第1増幅器PA2と、入力端子および出力端子を有する受動回路PC3と、単極端子と、2つの多投端子とを有する第1スイッチSW2と、を備えた電力増幅器であって、該第1スイッチSW2の該多投端子の一方は、該第1増幅器PA201の該入力端子に接続されており、該第1スイッチSW2の該多投端子の他方は、該受動回路PC3の該入力端子に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周波数、出力電力および変調方式のうちの少なくとも1つが異なる信号を扱う電力増幅器および通信機器に関しており、特に少なくとも1つのスイッチを備えた電力増幅器および通信機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、世界各国で携帯電話や携帯情報端末のように、様々な情報通信機器が実用化され、立上がろうとしている。これら情報通信機器は固有のシステムに基づいて動作し、システムにより周波数帯、出力電力、変調方式が異なっている。従って、それぞれのシステムに対応した送信用電力増幅器が開発され、端末に搭載されることになる。
【0003】
日本の自動車電話・携帯電話には、通信方法ではアナログ方式・FM(Frequency Modulation)変調方式とデジタル方式・π/4シフトDQPSK(Differential Quadrature Phase Shift Keying)変調方式があり、周波数帯800MHz帯には上記アナログ方式、デジタル方式の2方式、1.5GHz帯にはデジタル方式が割り当てられている。さらに簡易型携帯電話PHS(PersonalHandy-phone System)はデジタル方式・π/4シ
フトDQPSK方式、1.9GHz帯である。出力電力は自動車電話・携帯電話では約1W、簡易型携帯電話で10mWであり、前者はセル半径が数キロで、ハンドオーバ機能があるため自動車等での移動時でも通信が可能であるのに対して、後者はセル半径が数百メートルで、これまでの屋内コードレス電話を屋外で使用する位置づけである。また、世界的に工業、科学技術、医療用として割り当てられているISM(IndustrialScientificMedical)バンドの2.4GHz帯は、オフィス、工場、構内の無線LAN(Local Area Network)として、スペクトラム拡散(SS)方式で出力電力10mW/MHz(周波数帯域26MHz)の規格で使うことが検討されている。このように、いつでも、どこでも使える情報通信機器が日常生活の中に浸透するであろう。
【0004】
従来、これらの方式ごとに所望の周波数帯、出力電力を満たす送信用電力増幅器が端末に搭載されるため、国内でのサービスエリア、用途に応じて上記端末を別々に揃えるか、1つの端末で異種の方式を扱える場合でも、高価で、大型の端末を必要とした。
【0005】
図35は、従来例のブロック図である。従来例は、周波数帯および出力電力が異なる2種類の高周波信号を送信する多段電力増幅器であり、各周波数帯に対応した2系統の電力増幅器群を用いる。
【0006】
第1の電力増幅器PA1は、第1の入力整合回路PA104、第1のGaAsMESFET PA101、第1の段間整合回路PA105、第2のGaAsMESFET PA102、第2の段間整合回路PA106、第3のGaAsMESFET PA103、第1の出力整合回路PA107で構成される。
【0007】
第2の電力増幅器PA2は、第2の入力整合回路PA204、第4のGaAsMESFET PA201、第3の段間整合回路PA205、第5のGaAsMESFET PA202、第4の段間整合回路PA206、第6のGaAsMESFET PA203、第2の出力整合回路PA207で構成されている。
【0008】
この従来例の電力増幅器は、異なる出力電力、変調方式、周波数帯には対応できるが、電力増幅器を構成する際に部品が増えて端末の小型化と逆行するとともに、コストの増大を招くという問題点を有している。
【0009】
図36は、本願の優先日よりも後に公開された特開平8−88524号公報(公開日:1996年4月2日)に記載されている高周波集積回路の回路図を簡略化した図である。上記公報は、アナログ方式およびデジタル方式で動作を行う増幅器を備えた高周波集積回路に関する。図36に示すように、増幅器の最終段のFET3601のドレイン3604は、スイッチSW1を介してアナログ方式用出力整合回路PC1の入力端子と、デジタル方式用出力整合回路PC2の入力端子とに接続される。アナログ方式用出力整合回路PC1の出力端子と、デジタル方式用出力整合回路PC2の出力端子とは、スイッチSW2を介して出力端子3605に接続される。出力整合回路PC1およびPC2をスイッチで切り替えて選択することにより、それぞれの方式に対応した動作が可能である。
【0010】
図37は、図36の回路における、入力電力Pinに対する歪みDおよび電力付加効率η(増幅器の直流投入電力に対する入出力の高周波電力の差分の比率)の変化を示すグラフ(a)および入力電力Pinに対する出力電力Poutの変化を示すグラフ(b)である。
【0011】
図38は、出力整合回路PC1およびPC2の入力電力依存性を示すグラフである。横軸は、入力電力Pinを示し、縦軸は、出力電力Poutを示す。またPnは、定格出力電力を示す。出力電力が入力電力に対して線形領域では歪、電力付加効率は低く、入力電力が大きくなり非線形領域となると歪、電力付加効率は高くなる。このような特性を考慮して上記の電力増幅器のアナログ方式用であるPC1と、デジタル方式用であるPC2とを図38に示すような高周波電力の入出力特性となるように構成する。すなわちアナログ方式用であるPC1は、動作時において出力電力が入力電力に対して線形性を必要とせず、電力付加効率が高くなるように構成(つまり効率整合)される。デジタル方式用であるPC2は、動作時において増幅器を通過する高周波信号に歪みが生じないように出力電力が入力電力に対して線形性が確保されるように構成(つまり歪整合)される。このときアナログ方式用と比べて電力付加効率は低くなる。
【0012】
上述の特開平8−88524号公報に記載された集積回路は、その記載内容から、同一周波数帯(900MHz帯)、かつ同じ出力電力でアナログ/デジタル方式の信号に対応すると考えられる。したがって上述の集積回路では、その出力整合回路PC1,PC2は同一の周波数帯に対して伝達信号のロスを最小限になるようにインピーダンス整合がとられているため、異なる周波数帯の高周波信号を伝達する場合にはインピーダンスの不整合によるロスが大きくなり、所望の出力電力、歪を得ることができない問題がある。さらに、出力電力が異なる場合、例えば、1W級および100mW級の電力をそれぞれPC1およびPC2で扱う場合に、1W級の電力が出力できる能動素子を用いて100mW級の電力を出力させるためには、FETの入力電力を制御する機構が必須である。仮にこのような制御機構のもとで入力電力を下げて100mW級の動作をさせた場合には電力付加効率が1W級動作に比べて極端に低下するので、消費電力の増大を招く。その結果、情報通信機器が電池駆動の場合には電池寿命が短くなるという問題がある。また、このような電力増幅器では周波数および出力電力のいずれもが異なる高周波信号を扱うことができない。さらに、この電力増幅器を送受信機能を備えた情報通信機器に搭載して使用する場合には、電力増幅器の送信信号とアンテナからの受信信号を切り替える選択手段が必要となる。しかし上述の公報においては、この点が言及されていない。すなわち、アナログ方式とデジタル方式に対して出力整合回路を切り替えるという電力増幅器の送信機能と情報通信機器の送受信機能との関連性は上述の公報には述べられていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平8−88524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は上記課題を鑑み、様々な情報通信機器で用いられる異種の方式、すなわち周波数帯、送信出力電力、変調方式の異なる方式を共用でき、小型化と低コスト化が可能な電力増幅器、およびこれを用いることによる高付加価値な通信機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の電力増幅器は、単極端と2以上の多投端とを有し、第1周波数の信号と該第1周波数とは異なる第2周波数の信号を切り替えるスイッチと、前記スイッチの多投端の一つに接続された整合回路と、前記スイッチの多投端のうち前記整合回路が接続されたものとは異なる一つに接続された、第1のトランジスタを備えた第1増幅器と、前記スイッチの単極端に出力側が接続され、前記第1周波数の信号と前記第2周波数の信号とを通す、入力電流が前記第1のトランジスタよりも小さい第2の電界効果トランジスタを備えた第2増幅器と、前記スイッチの多投端が前記整合回路に接続されるのに連動して、前記整合回路から出力される前記第1周波数の信号が所定の出力となるよう前記第2増幅器の入力端子および出力端子に印加される電圧を制御するとともに前記第1増幅器が動作しないように前記第1増幅器の入力端子または出力端子に印加される電圧を制御し、前記スイッチの多投端が前記第1増幅器に接続されるのに連動して、前記第1増幅器から出力される前記第2周波数の信号が所定の出力となるよう前記第2増幅器の入力端子および出力端子に印加される電圧を制御し、かつ前記第1増幅器の入力端子または出力端子に印加される電圧を、前記第1増幅器がAB級動作をするように制御する電源制御回路と、を備え、そのことにより上記目的が達成される。
【0016】
ある実施形態では、前記第1および前記第2のトランジスタは、電界効果トランジスタであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、上記構成によって、異種の方式、すなわち周波数帯、送信出力電力、変調方式の異なる方式を共用でき、小型化と低コスト化が可能な電力増幅器、およびこれを用いることによる高付加価値な通信機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明によるスイッチ付き電力増幅器の第1の実施例を示す構成図である。
【図2】図2は、整合回路のインピーダンスを説明するための図である。
【図3】図3は、入力整合回路PC1またはPC2と第1のGaAsMESFET PA101との等価回路を示す図である。
【図4】図4は、上記本実施例のスイッチ付き電力増幅器の具体的な構成例を示す図である。
【図5】図5は、フィードバック制御部を有するスイッチ付き電力増幅器の構成例を示す図である。
【図6】図6は、フィードバック制御部を有するスイッチ付き電力増幅器の他の構成例を示す図である。
【図7】図7は、一般的な情報通信機器のブロック図である。
【図8】図8は、本発明によるスイッチ付き電力増幅器を用いた情報通信機器の構成図である。
【図9】図9は、図8の第1の単極2投スイッチ139および第2の単極2投スイッチ140をまとめた第1のDPDTスイッチ152の構成図である。
【図10】図10は、図8のモード2のアンテナ2本およびフィルタ2個を用いてダイバーシティ送受信を行う場合の送受信切り替えスイッチの構成図である。
【図11】図11は、本発明によるスイッチ付き電力増幅器を用いた通信機器の構成図である。
【図12】図12は、本発明の電力増幅器のなかでMMIC化する部分を示す図である。
【図13】図13は、本実施例のスイッチ付き電力増幅器109をMMICとハイブリッドICとによって実現した構成図である。
【図14】図14は、本発明のスイッチ付き電力増幅器の第2の実施例の構成図である。
【図15】図15は、スイッチSW1およびSW2の回路図である。
【図16】図16は、スイッチ3およびSW4の回路図である。
【図17】図17は、第2の実施例のスイッチ付き電力増幅器の構成図である。
【図18】図18は、本実施例のMMIC化の部分の範囲を示す図である。
【図19】図19は、3dB帯域幅を説明するための図である。
【図20】図20は、2つのピークを有する増幅器の3dB帯域幅を説明するための図である。
【図21】図21は、本発明のスイッチ付き電力増幅器の第3の実施例の構成図である。
【図22】図22は、電力増幅器の広帯域化を説明するための図である。
【図23】図23は、第3の実施例のスイッチ付き電力増幅器の構成図である。
【図24】図24は、第3の実施例のMMIC化する部分を示す図である。
【図25】図25は、本発明のスイッチ付き電力増幅器の第4の実施例の構成図である。
【図26】図26は、第4の実施例のスイッチ付き電力増幅器の構成図である。
【図27】図27は、第4の実施例のMMIC化する部分を示す図である。
【図28】図28は、本発明の第5の実施例のスイッチ付き電力増幅器の構成図である。
【図29】図29は、第5の実施例のスイッチ付き電力増幅器の構成図である。
【図30】図30は、第5の実施例のMMIC化された部分を示す図である。
【図31】図31は、本発明のスイッチ付き電力増幅器の第6の実施例の構成図である。
【図32】図32は、第6の実施例のスイッチ付き電力増幅器の構成図である。
【図33】図33は、第6の実施例のMMIC化する部分を示す図である。
【図34】図34は、図31の電力増幅器において、第1の単極2投スイッチSW1の2投端子に接続された第1の受動回路PC1と第2の受動回路PC2のそれぞれの出力端子に、第2の単極2投スイッチSW2を接続した構成図である。
【図35】図35は、従来例のブロック図である。
【図36】図36は、特開平第8−88524号公報に記載されている高周波集積回路の回路図を簡略化した図である。
【図37】図37は、図36の回路における、入力電力に対する歪みおよび電力付加効率の変化を示すグラフおよび入力電力に対する出力電力の変化を示すグラフである。
【図38】図38は、出力整合回路PC1およびPC2の入力電力依存性を示すグラフである。
【図39】図39は、本発明による電力増幅器および通信機器のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら本発明の実施例を説明する。同じ参照符号は、同じ構成要素を表す。
【0020】
本明細書において、単に「スイッチ」と言及する場合は、特に断らない限り、「単極多投スイッチ」を意味する。本明細書におけるスイッチは、単極端子と、2つの多投端子とを有する。また本明細書における「電力増幅器」および「通信機器」は、それぞれ、後述するスイッチ付きの電力増幅器および情報通信機器を含む。
【実施例1】
【0021】
本発明によるスイッチ付き電力増幅器は、2つのスイッチが時間的に同期して切り替わることにより、2種類の周波数、2種類の出力電力の高周波信号を送信する機能を有する。
【0022】
本実施例のスイッチ付き電力増幅器は、下表に示すモード1およびモード2の高周波信号を出力することができる。モード1においては、送信周波数f=f1、出力電力Pout=Pout1であり、モード2においては、送信周波数f=f2、出力電力Pout=Pout2である。モード1およびモード2における通信方式および変調方式は、表に示すとおりである。
【0023】
【表1】


図1は、本発明によるスイッチ付き電力増幅器の第1の実施例を示す構成図である。
【0024】
第1の電力増幅器PA1の入力側には第1の単極2投スイッチSW1とモード1用の第1の入力整合回路PC1とモード2用の第2の入力整合回路PC2が接続され、第1の電力増幅器PA1の出力側には第2の単極2投スイッチSW2とモード1用の第2の電力増幅器PA2とモード2用の第3の電力増幅器PA3が接続されている。
【0025】
モード1においては、スイッチSW1は、入力整合回路PC1の出力端子を電力増幅器PA1の入力端子に接続し、スイッチSW2は、電力増幅器PA1の出力端子を電力増幅器PA2の入力端子に接続する。またモード2においては、スイッチSW1は、入力整合回路PC2の出力端子を電力増幅器PA1の入力端子に接続し、スイッチSW2は、電力増幅器PA1の出力端子を電力増幅器PA3の入力端子に接続する。その結果、モード1の高周波信号は、入力端子Pin1で受け取られ、出力端子Pout1から出力され、またモード2の高周波信号は、入力端子Pin2で受け取られ、出力端子Pout2から出力される。
【0026】
第1の電力増幅器PA1は、第1のGaAsMESFET(GaAs Metal−Semiconductor FET)PA101を有する。第2の電力増幅器PA2は、第2のGaAsMESFET PA201と、第1の段間整合回路PA202と、第1の出力整合回路PA203とを有する。第3の電力増幅器PA3は、第3のGaAsMESFET PA301と、第2の段間整合回路PA302と、第2の出力整合回路PA303とを有する。
【0027】
第1の電力増幅器PA1と、第2の電力増幅器PA2と、第3の電力増幅器PA3とをそれぞれ構成する第1、第2、第3のGaAsMESFET PA101、PA201、PA301はデプレッション型であり、ゲート幅(Wg)がそれぞれ1mm、4mm、8mmである。
【0028】
Wgが1mm、4mmの第1、第2のGaAsMESFET PA101、PA201は、樹脂モールドパッケージに実装する。Wgが8mmの第3のGaAsMESFET PA301は、セラミックパッケージに実装する(つまりセラミックキャリア上に実装され樹脂封止される)。
【0029】
第1、第2の単極2投スイッチSW1、SW2は、PINダイオードを用いた回路(樹脂モールドされたPINダイオード、PINダイオードの周辺回路として用いられるDCカット用のキャパシタ、抵抗成分およびインダクタンス成分をもつチョークコイルなどを含む回路)によって実現してもよく、あるいはGaAsMESFETを用いた集積回路(GaAsMESFETとその周辺素子を一体化し、樹脂モールドした回路)によって実現してもよい。
【0030】
第1、第2、第3のGaAsMESFET PA101、PA201、PA301の動作電源電圧はドレイン電圧が約3.5V、ゲート電圧は負電圧(約−2.0V〜約−3.0V)である。第1のGaAsMESFET PA101では利得を重視し、第2、第3のGaAsMESFET PA201、PA301では入出力特性の線形性、デジタル歪特性を重視してAB級で動作(Idssの約10%のアイドル電流で動作)させている。ここで「Idss」とは、ゲート−ソース間がショートされた状態(つまりゼロ・バイアス時)のドレイン−ソース電流のことをいう。第1、第2、第3のGaAsMESFETのIdssはそれぞれ約250mA、900mA、1.7Aである。
【0031】
本実施例においては、第1、第2の単極2投スイッチSW1、SW2の制御電圧としては、PINダイオードを用いた回路の場合、0V/12Vの2つのレベルを、GaAsMESFETを用いた集積回路の場合、0V/−4.7Vの2つのレベルを用いる。
【0032】
上記の第1、第2、第3の電力増幅器PA1、PA2およびPA3を構成する入力整合回路、段間整合回路および出力整合回路は、周波数、出力電力および変調方式に応じて、所望の特性を満たすような機能や構成を有する。
【0033】
図2は、整合回路のインピーダンスを説明するための図である。周波数f1およびf2におけるGaAsMESFETの入力インピーダンスは、互いに異なる。したがって第1、第2の入力整合回路PC1、PC2は、それぞれ周波数f1(1.9GHz)、周波数f2(2.4GHz)において、信号源インピーダンス(ここでは外部に接続された送信ミキサ部等の送信RF部を、スイッチ付き電力増幅器からみたインピーダンスとする)Zsと、第1のGaAsMESFET PA101の入力インピーダンスZI1 とが等しくなるようにする(つまりインピーダンス整合をとる)。これにより、入力リターンロスが最適になる。リターンロスは、6dB以上であることが好ましい。
【0034】
第1の段間整合回路PA202は、周波数f1において第1のGaAsMESFET PA101の出力インピーダンスZ O1 と第2のGaAsMESFET PA201の入力インピーダンスZI2とが等しくなるように整合をとる。第1の出力整合回路PA203は、周波数f1において第2のGaAsMESFET PA201の出力インピーダンスZ O2 と、アンテナ側の負荷インピーダンスZ Lとが等しくなるように整合をとる。
【0035】
第2の段間整合回路PA302および第2の出力整合回路PA303も、周波数f2において上記と同様の整合をとる。第1の段間整合回路PA202と、第1の出力整合回路PA203とは、それぞれ周波数f1において第1、第2のGaAsMESFET PA101、PA201の負荷である。また、第2の段間整合回路PA302、第2の出力整合回路PA303は、それぞれ周波数f2において第1、第3のGaAsMESFET PA101、PA301の負荷である。これらの負荷は、第1のGaAsMESFET PA101、第2のGaAsMESFET PA201、第3のGaAsMESFET PA301の出力特性、つまり出力電力、飽和出力電力、1dB圧縮点出力電力、線形利得、電力付加効率、動作電流、歪(具体的には相互変調歪および隣接チャンネル漏洩電力)を決定する重要なパラメータである。
【0036】
本実施例のπ/4シフトDQPSK変調方式およびスペクトラム拡散(SS)・QPSK変調方式においては、歪特性が良好であることが重要であるので、電力増幅器としては、線形増幅器を使うことが必要となる。この観点からモード1(1.9GHz、22dBm、π/4シフトDQPSK変調信号)では、段間整合回路PA202は、GaAsMESFET PA101がGaAsMESFET PA201を駆動するのに十分な出力電力(つまり利得)を確保できるように整合をとる。また出力整合回路PA203は、出力電力Pout1=22dBmにおいて、搬送波出力に対する隣接チャンネル漏洩電力の比(搬送波周波数における出力電力に対する、隣接するチャンネル周波数において漏洩する電力の比)を抑制した上で、高い電力付加効率(消費された高周波電力に対する入力された直流電力の比)が得られるように整合をとる。
【0037】
モード2(2.4GHz、26dBm、スペクトラム拡散(SS)方式のQPSK変調信号)では、段間整合回路PA302は、GaAsMESFET PA101がGaAsMESFET PA301を駆動するのに十分な出力電力(つまり利得)を確保できるように整合をとる。また出力整合回路PA303は、出力電力Pout2=26dBmにおいて、隣接チャンネル漏洩電力および相互変調歪(IMD:異なる複数の信号を増幅する場合に生じるmfa±nfb[m、nは整数]の周波数成分)を抑制した上で、高い電力付加効率が得られるように整合をとる。
【0038】
このように本発明の電力増幅器の段間整合回路および出力整合回路は、高周波信号の周波数、出力電力および変調方式に応じて、所望の特性を満たすように構成可能である。
【0039】
図3は、入力整合回路PC1またはPC2と第1のGaAsMESFET PA101との等価回路を示す図である。第1のGaAsMESFET PA101は、ドレイン101、ソース102およびゲート103を有する。ドレイン101は、チョークインダクタ104を介して電源端子1011に接続される。ソース102は、ソースインダクタ105を介してグラウンドに接続される。高周波信号は、端子1031に入力され、端子1012において出力される。入力整合回路PC1は、集中定数素子成分である、直列インダクタンス106、直列キャパシタンス107および並列キャパシタンス108によって表現できる。なお、段間整合回路および出力整合回路の等価回路も、同様に集中定数素子成分で表すことができる。したがって入力整合回路、段間整合回路および出力整合回路は、図3に例示した回路に限らず、集中定数素子の組合わせにより構成できる。例えば本実施例では、上述の整合回路を構成する集中定数素子は、チップ部品であるチップインダクタ、チップコンデンサおよびチップ抵抗を用いて実現する。
【0040】
図4は、上記本実施例のスイッチ付き電力増幅器の具体的な構成例を示す図である。スイッチ付き電力増幅器109の構成要素は、第1、第2、第3のGaAsMESFET PA101、PA201、PA301へのドレイン電圧/ゲート電圧供給部110、111、112と、第1、第2の単極2投スイッチSW1、SW2の制御電圧供給部113、114と共にプリント基板115上に実装される。Vdd1/Vgg1、Vdd2/Vgg2、Vdd3/Vgg3は、それぞれ第1のGaAsMESFET PA101、第2のGaAsMESFET PA201、第3のGaAsMESFET PA301へ供給されるドレイン電圧/ゲート電圧である。Vc1およびVc2は、それぞれ第1および第2の単極2投スイッチSW1およびSW2へ供給される制御電圧である。
【0041】
ドレイン電圧/ゲート電圧供給部110は、第1のGaAsMESFET PA101のドレイン電圧およびゲート電圧のうちの少なくとも1つを制御することによって、PA101の動作が不要なときに、PA101の消費電力を低減する。これと同様に、ドレイン電圧/ゲート電圧供給部111および112も、それぞれ第2および第3のGaAsMESFET PA201およびPA301のドレイン電圧およびゲート電圧のうちの少なくとも1つを制御することによって、消費電力を低減する。
【0042】
GaAsMESFETの消費電力を低減する方法には、ドレイン電圧またはゲート電圧を制御することで、FETのドレイン電流Idを減少させる方法がある。例えば、デプレッション型のGaAsMESFETの場合、ドレイン電圧を通常動作時の約3.5Vから、非動作時の約0.0Vに下げることで、ドレイン電流Idを減少させる。あるいはゲート電圧を通常動作時の約−2.5Vから約−5.0Vに下げることで、ドレイン電流Idを減少させる。ドレイン電圧/ゲート電圧供給部110は、通常動作時のためのドレイン電圧Vdd1(例えば3.5V)および通常動作時のためのゲート電圧Vgg1(例えば−2.5V)のうちの少なくとも1つを外部の電源から受け取り、第1のGaAsMESFET PA101の動作・非動作に応じて、Vdd1またはVgg1の電圧を変化させてPA101に出力する。ドレイン電圧/ゲート電圧供給部111および112も、ドレイン電圧/ゲート電圧供給部110と同様に機能する。
【0043】
ドレイン電圧/ゲート電圧供給部110、111および112と、第1、第2の単極2投スイッチSW1、SW2の制御電圧供給部113、114の電源制御は連動しておこなわれる。具体的には、モード1のとき、つまり高周波信号を入力端子Pin1で受け取り、出力端子Pout1で出力するモードのとき、制御電圧供給部113および114は、それぞれ制御電圧Vc1およびVc2を受け取り、SW1はPin1を、SW2はPout1を選択するように、SW1およびSW2を制御する。またこのモード1では、PA301は動作する必要がないので、ドレイン電流Idを低減させることによって低消費電力化を実現する。
【0044】
上記ドレイン電圧/ゲート電圧供給部は、チョークとしてのチップインダクタとバイパスコンデンサ、あるいはスイッチ付き電力増幅器を実装するためのプリント基板上のマイクロストリップラインとバイパスコンデンサを用いて構成する。
【0045】
なお、本実施例のようにモード1とモード2で規定される出力電力が異なる場合や、高周波信号の送受信状況が変化している場合には、出力電力を変えたり、一定に保つ必要がある。このため、送信用の電力増幅器の機能として、一定の出力電力を保持し、安定化させるための利得制御機能は必須であり、アッテネータ、自動利得制御(AGC:Auto Gain ControlまたはALC:Auto LevelControl)機能を有する電力増幅器などを組み込み、モニタされた出力電力をフィードバックして制御する。出力電力のモニタは、コンデンサ結合、あるいは方向性結合器により行う。
【0046】
図5は、フィードバック制御部を有するスイッチ付き電力増幅器の構成例を示す図である。図5に示すように本実施例の第1の電力増幅器PA1の入力側に第1のアッテネータ117、あるいは本実施例のスイッチ付き電力増幅器109の外部入力側に第2のアッテネータ118を設け、これらの制御は出力電力をモニタして制御信号を出すフィードバック制御部116が行う。
【0047】
アッテネータとしては、チップ抵抗を用いた固定型アッテネータ(π型、T型アッテネータ)、電子アッテネータでは、アナログ式のPINダイオード、GaAsMESFETなどを用いたIC、デジタル式の単位アッテネータ(GaAsMESFETなどを用いたIC)を直列に接続しそれぞれを電子的に制御するICなどを用いる。「単位アッテネータ」は、1つのGaAsMESFETのドレイン・ソース間のインピーダンスを信号の減衰に用いる素子である。単位アッテネータのゲート電圧を制御すると、減衰量も変化する。単位アッテネータは、例えば約0.5dB〜約5.0dBの減衰量をもつので、さらに減衰するときは、複数の単位アッテネータを直列に接続すればよい。
【0048】
図6は、フィードバック制御部を有するスイッチ付き電力増幅器の他の構成例を示す図である。図6に示すように出力電力モニタに応じて、本実施例の第1の電力増幅器PA1、あるいは本実施例のスイッチ付き電力増幅器109の外部入力側に設けられる自動利得制御電力増幅器119の電源電圧を変更する(例えばドレイン電圧を下げたり、ゲート電圧を絞る)ことにより、利得、出力電力を調整する。
【0049】
図7は、一般的な情報通信機器のブロック図である。高周波信号の送受信と信号処理に関わる部分は、高周波(RF)部120、中間周波数(IF)信号処理部121、ベースバンド部122に分かれる。
【0050】
高周波部120は、送受信に用いられるアンテナ123、アンテナ共用器(デュプレクサ)あるいはスイッチ124、そしてフロントエンド部125から有しており、フロントエンド部125は、さらに送信部126、受信部127を有する。「フロントエンド部」といえば受信部をさす場合もあるが、本明細書では送信部も含める。
【0051】
送信部126は、変調器から送られてくる中間周波数(IF)信号を高周波信号に変換する送信ミキサ(アップコンバータ)とその電圧制御発振器(VCO)、そして高周波信号を増幅する電力増幅器(ここでは小信号の高周波増幅器も含める)で主に構成する。この部分に本実施例のスイッチ付き電力増幅器109が属する。
【0052】
受信部127は、アンテナ123から送られてくる高周波信号の増幅を行う低雑音増幅器(LNA)とICでの信号処理が行えるように高周波信号を低い周波数のIF信号に変換する受信ミキサ(ダウンコンバータ)で主に構成される。
【0053】
IF信号処理部121は、送信部のベースバンド信号の変調部、受信部のフロントエンド部からIF信号をさらに変換、増幅する部分(ミキサ、IF増幅器)で主に構成される。
【0054】
ベースバンド部は、デジタル方式では音声、データ、映像信号の符号・復号処理を行うコーデック、伝送の多重化方式(時分割、周波数分割、符号分割)に対するチャネルの選局などを行うためのコーデック、ベースバンド信号(音声、データ、映像信号)の変調部(送信側のIF信号への変調)とIF信号の復調部(受信側のベースバンド信号への復調)で主に構成され、アナログ方式では復調部(周波数弁別器:ディスクリミネータ)、変調部、音声、データ信号処理部で主に構成する。ベースバンド部では通信方式によりアナログ信号、デジタル信号のいずれかを扱うことになり、それぞれに応じてアナログ専用処理ICとデジタル専用処理ICを別々に用いるか、アナログ/デジタル信号処理の両方を行う一体型ICを用いる。
【0055】
この他に、上記各部を制御するためのCPU、メモリ部128と、電源部129がある。CPU、メモリ部128は所望の通信方式に応じて上記の高周波部120、中間周波数信号処理部121、ベースバンド部122の制御などを行う。電源部は電池、商用電源などからDC−DCコンバータ、レギュレータなどを用いて、各部の回路の動作電圧に応じて正電源あるいは負電源を発生させる。
【0056】
上記の高周波部120、中間周波数(IF)信号処理部121、ベースバンド部122が、少なくとも1つ以上のプリント基板(誘電体基板など)に集積化され、これらを情報通信機器きょう体にまとめて実装することにより、従来例に比べて小型化と低コスト化が可能であり、周波数帯、送信出力電力、変調方式の異なる方式を共用できる高付加価値な情報通信機器端末が得られる。
【0057】
図8は、本発明によるスイッチ付き電力増幅器を用いた情報通信機器の構成図である。図8に示す情報通信機器は、モード1、モード2のそれぞれに対する送信・受信の切り替え用スイッチを備えている。本発明のスイッチ付き電力増幅器138の出力側にモード1およびモード2にそれぞれ対応する第2の単極2投スイッチ140および第3の単極2投スイッチ141が接続される。スイッチ140およびスイッチ141は、送信および受信を切り替える役割(モード1;TX1 およびRX1の切り替え、モード2;TX2およびRX2の切り替え)を果たす。
【0058】
第2の単極2投スイッチ140の単極側には第1のアンテナ(モード1用)142と第1のフィルタ144が、第3の単極2投スイッチ141の単極側には第2のアンテナ(モード2用)143と第2のフィルタ1451が接続される。モード1用受信端RX1側には第1のローノイズアンプ146、第1のローカルアンプ147、第1のミキサ148が、モード2用受信端RX2側には第2のローノイズアンプ149、第2のローカルアンプ150、第2のミキサ151が接続される。
【0059】
図9の(a)および(b)は、図8において第1の単極2投スイッチ139および第2の単極2投スイッチ140の2つの単極2投スイッチをまとめた第1のDPDT(Dual-pole-dual-throw)スイッチ152の具体的構成例を示す図である。第1の単極2投スイッチ139の単極端P1、第2の単極2投スイッチ140の単極端P2、第1の単極2投スイッチ139の投端(モード2送信側)T1、第2の単極2投スイッチ140の投端(モード1受信側)T2が第1のDPDTスイッチ152の各ポートの相当し、各ポート間に第1〜4のスイッチング用トランジスタ(TSW1〜TSW4)と各ポート端子に並列に第5〜8のスイッチング用トランジスタ(TSW5〜TSW8)が接続されている(TSW5〜TSW8はポート間の所望のアイソーレーションに応じて接続する場合と、接続しない場合がある)。各ポート間はSPST(Single-pole-single-throw)スイッチにより接続されていることになる。これによりP1からの信号をP2とT1に切り替える役割と、P2において受信時にT2に切り替える役割とを果たすことができる。
【0060】
図10の(a)および(b)は、図8においてモード2のアンテナとして2本(第2のアンテナ143、第3のアンテナ154)、フィルタとして2個(第2のフィルタ1451、第3のフィルタ1452)を用いてダイバーシティ送受信を行う場合の送受信切り替えスイッチの具体的構成例を示す図である。このダイバーシティ方式は電波の反射、散乱により送受信の状況が変わる中で、送受信が良好なアンテナに切り替えるものである。送受信切り替えスイッチは第2のDPDTスイッチ153で構成でき、第2のDPDTスイッチ153のP1’(第2のアンテナ側:モード2用)、P2’(第3のアンテナ側:モード2用)、T1’(モード2送信側)、T2’(モード2受信側)が第2のDPDTスイッチ153の各ポートの相当し、各ポート間に第9〜12のスイッチング用トランジスタ(TSW9〜TSW12)と各ポート端子に並列に第13〜16のスイッチング用トランジスタ(TSW13〜TSW16)が接続されている(TSW13〜TSW16はポート間の所望のアイソーレーションに応じて接続する場合と、接続しない場合がある)。各ポート間はSPST(Single-pole-single-throw)スイッチにより接続されていることになる。これにより、アンテナ側のポート、すなわちP1'、P2’を選択して、送信、受信側のポート、すなわちT1'、T2’の切り替えを行うことができる。
【0061】
図11は、本発明によるスイッチ付き電力増幅器を用いた通信機器の構成図である。図8と異なりアンテナ部をモード1およびモード2で共用する。スイッチ付き電力増幅器のモード1およびモード2の出力の切り替え用スイッチ155と、送信および受信の切り替え用スイッチ156とを用いる。
【0062】
発明のスイッチ付き電力増幅器138の出力側にモード1、モード2を切り替えるための第1の単極2投スイッチ155が接続され、その後に送信と受信を切り替える役割(モード1;TX1とRX1の切り替え、モード2;TX2とRX2の切り替え)を果たす第2の単極2投スイッチ156が接続される。第2の単極2投スイッチ156の単極側にはフィルタ157(モード1、モード2共用)、アンテナ158(モード1、モード2共用)が接続される。
【0063】
なお、GaAsMESFET、単極2投スイッチ、入力、段間、出力整合回路を実現するには、上記で示した方法以外のハイブリッドICやMMICを用いた構成であってもよい。以下では、上記で説明した方法も含めて(1)ハイブリッドIC、および(2)MMICの構成および実装を説明する。
【0064】
なお、本明細書において「ディスクリート部品」とは、以下の(1)に述べるハイブリッドICを構成する部品を意味する。ディスクリート部品には、具体的には、チップキャパシタ、チップインダクタ、チップ抵抗、チップFETなどのチップ部品やMMICにパッケージされた部品などがある。このことは、以下の実施例についてもあてはまる。
【0065】
(1)ハイブリッドIC(HIC)
上記の部品を個別にプリント基板に実装する。ここで「プリント基板」は、高周波部、中間周波数信号処理部、またはベースバンド部が実装される基板(「マザーボード基板」ともいう)を意味する。以下にハイブリッド化を、(1.1)GaAsMESFET、(1.2)単極2投スイッチ、(1.3)受動回路、および(1.4)1.1〜1.3の組み合わせに分けて説明する。
【0066】
(1.1)GaAsMESFET
(a)樹脂モールドパッケージ、あるいはセラミックパッケージに実装する(セラミックキャリア上に実装され樹脂封止されている)。
【0067】
(b)ベアチップを用い、プリント基板にBack to face、つまりプリント基板の主面にチップの能動素子が形成されていない面を向けて銀ペーストなどを用いて実装する、あるいはface to face、つまりプリント基板の主面に、能動素子とパッドにマイクロバンプなどが形成されているチップの主面を向けて実装する。
【0068】
(1.2)単極2投スイッチ
(a)PINダイオードを用いた回路(樹脂モールドされたPINダイオードとそれの周辺回路)を使う。
【0069】
(b)GaAsMESFETを用いた集積回路(GaAsMESFETとその周辺素子を一体化し、樹脂モールドされた回路)を使う。
【0070】
(1.3)受動回路(入力、段間、出力整合回路を含めた受動回路)
(a)チップ部品(チップインダクタ、チップキャパシタ、チップ抵抗など)を用いる。
【0071】
(b)半導体基板を用いる。(狭義の意味でのMMIC化)通常、半導体基板(Si、GaAsなどの化合物半導体)上に、集中定数素子のうち、インダクタンス成分はマイクロストリップライン(高インピーダンスラインなど)、スパイラルインダクタなど、キャパシタンス成分はMIM(MetalInsulator Metal)キャパシタ、くし形キャパシタなど、抵抗成分は薄膜抵抗(NiCrなど)、イオン注入抵抗、能動素子を用いた抵抗などを形成して用いる。
【0072】
分布定数素子ではインダクタンス成分、容量成分を実現するために先端開放スタブ、先端短絡スタブなどをパターン形成して用いる。
【0073】
これらの素子は、ベアチップで実装する他に、GaAsMESFETチップを含めたマルチチップでパッケージに封止するなどして、プリント基板に実装する。
【0074】
(c)誘電体基板を用いる。プリント基板(ガラスエポキシ:ε r=4.9、ガラスフッ素・テフロン(登録商標):εr=2.6、ガラス熱硬化PPO樹脂εr=3.5、10.5など)、セラミック基板(アルミナなど)などの上に、ストリップライン、MIMキャパシタ、薄膜抵抗を形成する。
【0075】
上記のプリント基板のうちガラスエポキシ製基板は高周波部、中間周波数信号処理部、ベースバンド部が実装されるマザーボード基板として使う。ガラス熱硬化PPO樹脂製基板は多層基板として各層間にストリップライン、薄膜抵抗を作製して使うことも可能である。セラミック基板に関してはセラミックパッケージのキャリア部にパターン化して、他の部品とマルチチップで実装することも可能である。
【0076】
(1.4)上記(1.1)〜(1.3)の組合せ
例えば、整合回路を含めた受動回路において、半導体基板上に作製する部分、チップ部品を使う部分、プリント基板上でパターン化して使う部分に分けて構成する。上記の半導体基板上に作製された受動回路はGaAsMESFETチップなど他の部品とのマルチチップ化、あるいは後で述べるMMICとして一体化も行える。
【0077】
(2)MMIC
上記の個別部品をMMIC(Monolithic Microwave IC)化する。以下に、本実施例の構成に対応させて、MMICの構成を説明する。図12は、本発明の電力増幅器のなかでMMIC化する部分を示す図である。以下の説明は、図12に付された記号(A)、(B)−1〜(B)−9に対応する。図12において、点線で囲まれた部分がMMIC化される部分である。
【0078】
(A)本実施例のスイッチ付き電力増幅器全体をMMIC化する。本実施例のスイッチ付き電力増幅器の構成部品である第1、第2、第3の電力増幅器PA1、PA2、PA3、第1、第2の単極2投スイッチSW1、SW2、第1、第2の入力整合回路PC1、PC2、第1、第2の段間整合回路PA202、PA302、第1、第2の出力整合回路PA202、PA303をすべてMMIC化する。
【0079】
(B)本実施例のスイッチ付き電力増幅器において選択的にMMIC化する。第2の単極多投スイッチSW2と、第2の単極多投スイッチSW2の単極端子に接続された電力増幅器PA1と、第2の単極多投スイッチSW2の多投端子に接続された第2、第3の電力増幅器PA2、PA3の中からMMIC化する部品を選択し、同一半導体基板上で組み合わせる。以下には、主要な組み合わせを示したが、これに限定されるものではない。
【0080】
(B)−1:第2の単極多投スイッチSW2と、第1の電力増幅器PA1を組み合わせる。
【0081】
(B)−2:(B)−1の構成要素と、これを除く構成要素(第2、第3の電力増幅器PA2、PA3、第1、第2の入力整合回路PC1、PC2など)の少なくとも1つとを組み合わせる。
【0082】
(B)−3:第2の単極多投スイッチSW2と、第1の電力増幅器PA1を除く構成要素(第2、第3の電力増幅器PA2、PA3、第1、第2の入力整合回路PC1、PC2など)の少なくとも1つを組み合わせる。
【0083】
(B)−4:第1の単極多投スイッチSW1と、第1の電力増幅器PA1を組み合わせる。
【0084】
(B)−5:B−(4)の構成要素と、これを除く構成要素(第2、第3の電力増幅器PA2、PA3、第1、第2の入力整合回路PC1、PC2など)の少なくとも1つとを組み合わせる。
【0085】
(B)−6:第1の単極多投スイッチSW1と、第1の電力増幅器PA1を除く構成要素(第2、第3の電力増幅器PA2、PA3、第1、第2の入力整合回路PC1、PC2など)の少なくとも1つを組み合わせる((B)−3との重複部は除く)。
【0086】
(B)−7:第1の単極多投スイッチSW1と、第2の単極多投スイッチSW2と、第1の電力増幅器PA1とを組み合わせる。
【0087】
(B)−8:(B)−7の構成要素と、これ以外の構成要素(第2、第3の電力増幅器PA2、PA3、第1、第2の入力整合回路PC1、PC2など)の少なくとも1つとを組み合わせる。
【0088】
(B)−9:第1の電力増幅器PA1と、第1、第2の単極多投スイッチSW1、SW2を除いた構成要素(第2、第3の電力増幅器PA2、PA3、第1、第2の入力整合回路PC1、PC2など)の少なくとも1つとを組み合わせる。
【0089】
なお、MMIC化には第2、第3の電力増幅器PA2、PA3それぞれのMMIC化、さらに、第2、第3の電力増幅器PA2、PA3においてそれぞれの出力整合回路以外をMMIC化する場合のように、上記の各電力増幅器の構成素子 (能動素子、受動回路など)を選択してMMIC化することも含まれる。上記(B)−1〜(B)−9においてMMIC化されたチップは、樹脂モールドパッケージに封止するか、ベアチップ実装などの構成をとる。
【0090】
ここで、(A)および(B)においてMMIC化されない部品は(1)で述べたように個別に部品をプリント基板に実装する。MMICとハイブリッドICを並用することが実用上の低コスト、高性能化の観点から行われる。つまり、MMIC、ハイブリッドICのメリット、デメリットは逆関係にあり、相互補間されるためである。MMIC化では、各々機能する部品を一体化・集積化してさらなる高性能化、小型化、低コスト化が図られ、高付加価値が得られるメリットがある。いっぽうでデメリットとしては、前工程、後工程での歩留の低下によるコスト高、個別部品による調整が不可であることによる性能の低下、さらに扱う出力電力が1W以上に高くなると半導体基板の熱放散の限界から特性劣化(利得低下など)、信頼性上の問題(素子の熱暴走、素子破壊など)が生じることなどがある。これらの点の逆がハイブリッドICのメリットおよびデメリットとなる。
【0091】
図13は、本実施例のスイッチ付き電力増幅器109をMMICとハイブリッドICとによって実現した構成を示す図である。このスイッチ付き電力増幅器109は、上記の(B)−1、すなわち第2の単極多投スイッチSW2と第1の電力増幅器PA1とを同一半導体基板上に形成したスイッチ一体型電力増幅器131と、MMIC化した第2、第3の電力増幅器134、135と、第1の単極多投スイッチSW1と、ハイブリッドIC化した第1、第2の入力整合回路136、137で構成される。電源電圧および制御電圧は図4の説明に準ずる。
【0092】
なお、上記で電力増幅器の能動素子として用いたGaAsMESFET以外にも、エンハンスメント型のGaAsMESFETや他の半導体基板上に形成されたトランジスタ(MOSFET、HBT、HEMTなど)などの能動素子でもよい。
【0093】
また、現状、携帯機器の動作要求はNiCd電池3本、あるいはLiイオン電池1本に相当する3.0〜3.4Vの電圧を前提にしているため、本実施例のGaAsMESFETの動作電源電圧は3.5Vであるが、他のロジック用ICの動作電圧、あるいは情報通信機器の種類によってはこれ以外の電源電圧の設定も可能である。規定電圧で動作する最適な能動素子を使用すれば、3.5V以外の動作電圧でも本実施例は実現できる。
【0094】
さらに、本実施例ではGaAsMESFETのゲート電圧はDC−DCコンバータにより発生した負電圧を用いているが、単一正電源で動作する能動素子を選択すれば負電源が除去され、本実施例は実現できる。
【0095】
本実施例の第1の電力増幅器PA1、第2の電力増幅器PA2、第3の電力増幅器PA3は1段増幅器であるが、多段増幅器を用いてもよく、例えば、第1の電力増幅器の入力側に駆動用電力増幅器が付加されてもよい。
【0096】
本実施例では受動回路として電力増幅器を構成する整合回路を取り上げて説明したが、整合の役割を果たす受動素子に限らず、電源供給ラインのチョークインダクタ、バイパスコンデンサ、バイアス印加用分割抵抗、フィルタ、高調波トラップ回路、アッテネータなどの受動回路も含まれる。例えば、電源供給ラインのチョークインダクタ、バイパスコンデンサ、バイアス印加用分割抵抗がMMIC化した電力増幅器に含まれてもよく、フィルタに関して高周波信号の送受信の周波数が異なる場合には出力整合回路の後に、所定の通過帯域幅のバンドパスフィルタを挿入してもよく、出力整合回路に高調波トラップ回路を挿入してもよい。
【0097】
本実施例では、単極2投スイッチを用いて、2種類の方式に対応した高周波信号を送信するが、上記の切り換え用のスイッチとしては、3投以上の多投端子を有する単極多投スイッチ、あるいは2極以上の多極端子を有する多極2投スイッチ、まとめると多極多投スイッチであっても、所望の電力増幅器、および情報通信機器は構成できる。
【0098】
本実施例の電力増幅器の機能をまとめると、所望の送信周波数f1、f2に応じて第1、第2の単極2投スイッチSW1、SW2を同期して切り替えること、すなわち各周波数に対応して、第1、第2の入力整合回路PC1、PC2および第2、第3の電力増幅器PA2、PA3を切り替えることにより、f1、f2、Pout1、Pout2がそれぞれ異なる高周波信号を送信できることである。
【0099】
この他に送信可能な方式として、周波数f1、f2がほぼ同一帯域で、f1、f2の出力電力Pout1、Pout2が異なる高周波信号もある。一例を以下に表で示す。
【0100】
【表2】


上表において、モード2のアナログのFM変調方式では、電力増幅器としては非線形、飽和電力増幅器でも使用可能であり、第2の出力整合回路PA303に対しては、規定の出力電力31dBmにおいて高い電力付加効率と高い高調波成分抑圧比が得られるように整合がとられる。第1の出力整合回路PA203に対しては、規定の出力電力26dBmにおいて隣接チャンネル漏洩電力、相互変調歪(IMD:異なる複数の信号を増幅する場合に生じるmfa±nfb[m、nは整数]の周波数成分)を抑制した上で、高い電力付加効率が得られるように整合がとられる。
【0101】
また、Pout1、Pout2がほぼ同じで、f1、f2が異なる高周波信号を送信することもできる。一例を下表に示す。
【0102】
【表3】

【実施例2】
【0103】
図14〜18は、本発明のスイッチ付き電力増幅器の第2の実施例を説明するための図である。このスイッチ付き電力増幅器は4つのスイッチが時間的に同期して切り替わることにより、2種類の周波数、2種類の出力電力の高周波信号を送信する機能を有する。本実施例によれば、一例として下表に示すような周波数f、出力電力Poutの高周波信号を送信することができる。
【0104】
【表4】


図14は、本発明のスイッチ付き電力増幅器の第2の実施例の構成図である。
【0105】
第1の電力増幅器PA1の入力側には第1の単極2投スイッチSW1と、モード1用の第1の入力整合回路PC1と、モード2用の第2の入力整合回路PC2とが接続され、第1の電力増幅器PA1の出力側には第2の単極2投スイッチSW2と、モード1用の第1の出力整合回路PC3と、モード2用の第2の電力増幅器PA2とが接続されている。
【0106】
第1の電力増幅器PA1は、第1、第2のGaAsMESFET PA101、PA102と、第1、第2の段間整合回路PC4、PC5、第3、第4の単極2投スイッチSW3、SW4を有する。第2の電力増幅器PA2は、第3のGaAsMESFET PA201、第3の段間整合回路PA202、第2の出力整合回路PA203を有する。
【0107】
第1の電力増幅器PA1と、第2の電力増幅器PA2をそれぞれ構成する第1、第2のGaAsMESFET PA101、PA102、PA201は、デプレッション型であり、ゲート幅(Wg)がそれぞれ1mm、4mm、30mmである。Wgが1mmである第1のGaAsMESFET PA101と第1の単極2投スイッチSW1とをGaAs基板上に一体化(第1のスイッチ付き電力増幅器SWPA1)し、Wgが4mmである第2のGaAsMESFET PA102と第2の単極2投スイッチSW2とをGaAs基板上に一体化(第2のスイッチ付き電力増幅器SWPA2)し、それぞれ樹脂モールドパッケージに封止する。Wgが30mmである第3のGaAsMESFET PA201は、セラミックパッケージに実装する(セラミックキャリア上に実装され樹脂封止されている)。
【0108】
第1、第2の単極2投スイッチSW1、SW2は、GaAsMESFETを用いた集積回路を用いる。図15は、スイッチSW1およびSW2の回路図である。GaAsMESFETを用いた集積回路は、第1の並列GaAsMESFET1516、第1の直列GaAsMESFET1517、第2の並列GaAsMESFET1518、第2の直列GaAsMESFET1519、第1の抵抗1520、第2の抵抗1521、第3の抵抗1522、第4の抵抗1523を有しており、制御電圧VC1、VC2を印加することにより、第3の端子1503と、第1の端子1501、第2の端子1502とを切り換える。上記GaAsMESFETのWgは1.2mmである。
【0109】
第3、第4の単極2投スイッチSW3、SW4はPINダイオードを用いた回路(樹脂モールドされたPINダイオードとその周辺回路DCカットのC、チョークのRまたはL)、あるいはGaAsMESFETを用いた集積回路(GaAsMESFETとその周辺素子を一体化し、樹脂モールドされた回路)を用いる。
【0110】
図16は、スイッチ3およびSW4の回路図である。PINダイオードを用いた回路は、第1の並列PINダイオード1604、第1の直列PINダイオード1605、第2の並列PINダイオード1606、第2の直列PINダイオード1607、第1のチョークインダクタ1608、第2のチョークインダクタ1609、第3のチョークインダクタ1610、第1の直流阻止コンデンサ1611、第2の直流阻止コンデンサ1612、第3の直流阻止コンデンサ1613、第1のバイパスコンデンサ1614、第2のバイパスコンデンサ1615を有しており、制御電圧VC1、VC2を印加することにより、第3の端子1603と、第1の端子1601、第2の端子1602とを切り換える。
【0111】
第1、第2、第3のGaAsMESFET PA101、PA102、PA201の動作電源電圧はドレイン電圧が約3.5V、ゲート電圧は負電圧(約−2.0V〜−約3.0V)である。第1のGaAsMESFET PA101では利得を重視し、第2、第3のGaAsMESFET PA102、PA201では入出力特性の線形性、デジタル歪特性を重視してAB級(Idssの約10%のアイドル電流)で動作させている。第1、第2、第3のGaAsMESFETのIdssは、それぞれ約250mA、900mA、7.0Aである。
【0112】
第1、第2の単極2投スイッチSW1、SW2は、0.0V/−4.7Vの制御電圧、第3、第4の単極2投スイッチSW3、SW4は、PINダイオードを用いた回路では0V/12Vの制御電圧、GaAsMESFETを用いた集積回路では0V/−4.7Vの制御電圧で使用する。
【0113】
実施例1で説明した整合回路の実現手法に準じて、第1、第2の入力整合回路PC1、PC2と、第1、第2、第3の段間整合回路PC4、PC5、PA202と、第1、第2の出力整合回路PC3、PA203とのパラメータを決める。これにより、本実施例のπ/4シフトDQPSK変調方式で必要とされる歪特性が満たされる。各段のレベルダイヤは、入力電力が約0dBmに対して第1の電力増幅器PA1の出力電力は約22.5dBm、モード1では第1の出力整合回路PC3で約0.5dBロスし最終的に22dBm出力、モード2では第2の電力増幅器PA2により最終的に31dBm出力となる。
【0114】
上記の各整合回路において、その等価回路は集中定数素子成分の組合せにより表され、第1、第2の入力整合回路PC1、PC2と、第3の段間整合回路PA202、第1、第2の出力整合回路PC3、PA203は、チップ部品のチップインダクタ、チップコンデンサ、チップ抵抗を用いて実現する。
【0115】
図17は、第2の実施例のスイッチ付き電力増幅器の構成図である。上記で説明した本実施例のスイッチ付き電力増幅器124の構成要素と、第1、第2、第3のGaAsMESFET PA101、PA102、PA201へのドレイン電圧/ゲート電圧供給部125、126、127と、第1、第2、第3、第4の単極2投スイッチSW1、SW2、SW3、SW4の制御電圧供給部128、129、130、131とをプリント基板132上に実装している。
【0116】
Vdd1/Vgg1、Vdd2/Vgg2、Vdd3/Vgg3は第1、第2、第3のGaAsMESFET PA101、PA102、PA201へ供給されるドレイン電圧/ゲート電圧であり、Vc1、Vc2、Vc3、Vc4は第1、第2、第3、第4の単極2投スイッチSW1、SW2、SW3、SW4へ供給される制御電圧である。
【0117】
これらドレイン電圧/ゲート電圧供給部125、126、127(電源制御回路)と、第1、第2、第3、第4の単極2投スイッチSW1、SW2、SW3、SW4の制御電圧供給部128、129、130、131(給電回路)の電源制御は連動するよう構成する。例えば出力選択がPout1の場合には、SW1はPin1、SW3、SW4はPC4、SW2はPout1を選択するように給電回路を制御し、使用しないPA201は低消費電力化のため動作しないようにドレイン電圧/ゲート電圧供給部127を制御する。
【0118】
上記ドレイン電圧/ゲート電圧供給部は、チョークとしてのチップインダクタとバイパスコンデンサ、あるいは、スイッチ付き電力増幅器を実装するためのプリント基板上のマイクロストリップラインとバイパスコンデンサを用いて構成する。
【0119】
なお、本実施例のようにモード1、モード2で規定される出力電力が異なる場合や、高周波信号の送受信状況が変化している場合には、出力電力を変えたり、一定に保つ必要がある。このため、送信用の電力増幅器の機能として、一定の出力電力を保持し、安定化させるための利得制御機能は必須であり、アッテネータ、自動利得制御(AGC、ALC)機能を有する電力増幅器などを組み込み、出力電力モニタをフィードバックして制御する。出力電力のモニタは、コンデンサ結合、あるいは方向性結合器により行う(構成例は実施例1の図5および図6を参照)。
【0120】
上記の本実施例のスイッチ付き電力増幅器124を含めて、実施例1の図7の情報通信機器のブロック図で示した高周波部120、中間周波数信号処理部121、ベースバンド部122が少なくとも1つ以上のプリント基板(誘電体基板など)に集積化され、これらを情報通信機器きょう体に実装することにより、従来例に比べて小型化と低コスト化が可能で周波数帯、送信出力電力、変調方式の異なる方式を共用できる高付加価値な情報通信機器端末が得られる。
【0121】
具体的な情報通信機器の構成として、実施例1の図8〜10に示した構成が考えられる。スイッチ付き電力増幅器に、モード1、モード2に対して送信・受信の切り替え用スイッチを接続した場合と、ダイバーシティ送受信を行うためのスイッチを接続した場合であり、これらを用いることにより、モード1、モード2に対する送受信を行うことができる。
【0122】
さらに実施例1の図11のようにアンテナ部をモード1とモード2で共用し、スイッチ付き電力増幅器のモード1とモード2の出力の切り替え用スイッチと送信と受信の切り替え用スイッチを接続することによりモード1、モード2に対する送受信を行うことができる。
【0123】
なお、本実施例のスイッチ付き電力増幅器は、以下の構成であっても実現できる。図18は、本実施例のMMIC化の部分の範囲を示す図である。以下の説明の(182)〜(185)は、図18の点線部分に付された参照符号と対応する。下記(182)以降で示すMMIC化については、コスト、チップ製造歩留りなどの観点から実用的なものだけを示した。しかし、これに限定されたものではなく、実施例1で示したハイブリッドIC、MMICの構成、実装でもよい。
【0124】
(181):GaAsMESFET、単極2投スイッチ、整合回路、その他の周辺回路をハイブリッドICで構成する。Wgが1mm、4mmのGaAsMESFETは樹脂モールドパッケージに封止する。
【0125】
(182):第1のスイッチ付き電力増幅器SWPA1に、第3の単極2投スイッチSW3、第1、第2の入力整合回路PC1、PC2、第1、第2の段間整合回路PC4、PC5の少なくとも1つを組み込み、樹脂モールドする。
【0126】
(183):第2のスイッチ付き電力増幅器SWPA2に、第4の単極2投スイッチSW4、第1の出力整合回路PC3、第3の段間整合回路PA202のうち少なくとも1つを組み込み、樹脂モールドする。
【0127】
(184):第2の単極2投スイッチSW2と、第2の電力増幅器PA2をGaAs基板上に一体化し、樹脂モールドする。
【0128】
(185):第2のGaAsMESFET PA102と、第2の電力増幅器PA2をGaAs基板上に一体化し、樹脂モールドする。
【0129】
上述の(182)〜(185)において、MMIC化された整合回路は、GaAs基板上のマイクロストリップライン、スパイラルインダクタ、MIM(MetalInsulator Metal)キャパシタ、くし形キャパシタ、薄膜抵抗(NiCrなど、)などを組み合わせて有しており、MMIC化されない部品については個別に部品をプリント基板に実装する。
【0130】
なお、MMIC化には第1、第2の電力増幅器PA1、PA2それぞれのMMIC化に加えて、第2の電力増幅器PA2においてそれぞれの出力整合回路以外をMMIC化する場合のように、上記の各電力増幅器の構成素子(能動素子、受動回路など)を選択してMMIC化することも含まれる。
【0131】
なお、上記で電力増幅器の能動素子として用いたGaAsMESFET以外にも、エンハンスメント型のGaAsMESFETや他の半導体基板上に形成されたトランジスタ(MOSFET、HBT、HEMTなど)などの能動素子でもよい。
【0132】
また、現状、携帯機器の動作要求はNiCd電池3本、あるいはLiイオン電池1本に相当する3.0〜3.4Vの電圧を前提にしているため、本実施例のGaAsMESFETの動作電源電圧は3.5Vであるが、他のロジック用ICの動作電圧、あるいは情報通信機器の種類によってはこれ以外の電源電圧の設定も可能である。規定電圧で動作する最適な能動素子を使用すれば、3.5V以外の動作電圧でも本実施例は実現できる。
【0133】
さらに、本実施例ではGaAsMESFETのゲート電圧はDC−DCコンバータにより発生した負電圧を用いているが、単一正電源で動作する能動素子を選択すれば負電源が除去され、本実施例は実現できる。
【0134】
本実施例の第1の電力増幅器PA1、第2の電力増幅器PA2、第3の電力増幅器PA3は1段増幅器であるが、多段増幅器を用いてもよく、例えば、第1の電力増幅器の入力側に駆動用電力増幅器が付加されてもよい。
【0135】
本実施例では受動回路として電力増幅器を構成する整合回路を取り上げて説明したが、整合の役割を果たす受動素子に限らず、電源供給ラインのチョークインダクタ、バイパスコンデンサ、バイアス印加用分割抵抗、フィルタ、高調波トラップ回路、アッテネータなどの受動回路も含まれる。例えば、電源供給ラインのチョークインダクタ、バイパスコンデンサ、バイアス印加用分割抵抗がMMIC化した電力増幅器に含まれてもよく、フィルタに関して高周波信号の送受信の周波数が異なる場合には出力整合回路の後に、所定の通過帯域幅のバンドパスフィルタを挿入してもよく、出力整合回路に高調波トラップ回路を挿入してもよい。
【0136】
本実施例では、単極2投スイッチを用いて、2種類の方式に対応した高周波信号を送信するが、上記の切り換え用のスイッチとしては、3投以上の多投端子を有する単極多投スイッチ、あるいは2極以上の多極端子を有する多極2投スイッチ、まとめると多極多投スイッチであっても、所望の電力増幅器、および情報通信機器は構成できる。
【0137】
本実施例のスイッチ付き電力増幅器の仕様の他に、以下の仕様のものでも実現できる。
【0138】
【表5】

【0139】
【表6】


後者の仕様においてモード2のアナログのFM変調方式では、電力増幅器としては非線形、飽和電力増幅器でも使用可能であり、第2の出力整合回路PA203に対しては、規定の出力電力31dBmにおいて高い電力付加効率と、高い高調波成分抑圧比が得られるように整合がとられる。第1の出力整合回路PC3に対しては、規定の出力電力22dBmにおいて隣接チャンネル漏洩電力を抑制した上で、高い電力付加効率が得られるように整合がとられる。
【実施例3】
【0140】
図21〜24は、本発明によるスイッチ付き電力増幅器の第3の実施例を説明するための図である。このスイッチ付き電力増幅器は、最終出力段電力増幅器の駆動電力増幅器(ドライバアンプ)として、広帯域電力増幅器を用い、スイッチが時間的に同期して切り替わることにより、2種類の周波数、2種類の出力電力の高周波信号を送信する機能を有する。
【0141】
上記の広帯域電力増幅器は、一般的には所望の2種類以上の周波数帯を覆う周波数範囲で平坦な特性で、所望特性を満たすものを指し、図19は、3dB帯域幅を説明するための図である。図19に示すように利得の3dB帯域幅(△f)が所望の周波数範囲(周波数f1〜f2)を含むとして定義する。以降、利得の3dB帯域幅Δfは、約800MHzから約2.5GHzの周波数を含む。図19の周波数特性の平坦部に変動がある場合は、平坦部における平均値(通常、「Typ.値」とよばれる)を求めて、その値から−3dBの範囲をΔfとする。
【0142】
また、広帯域電力増幅器に準ずる電力増幅器として、利得特性で少なくとも所望の2種類以上の周波数帯でピークを含む電力増幅器も使用できる(いわゆる「多周波整合電力増幅器」)。図20は、2つのピークを有する増幅器の3dB帯域幅を説明するための図である。図20に示すように2周波整合電力増幅器の場合には利得特性で2つのピーク(第1ピークP1および第2ピークP2)における利得に対する3dB帯域(△f1および△f2)が所望の2つの周波数(f1およびf2)を含むとして定義する。
【0143】
上記の広帯域電力増幅器を用いることにより、実施例1と実施例2において必要であった入力整合回路と不要なスイッチが除去され、さらに小型化、高性能化されたスイッチ付き電力増幅器が得られる。
【0144】
下表に示すような周波数f、出力電力Poutの高周波信号を送信する場合を考える。
【0145】
【表7】


図21は、本発明のスイッチ付き電力増幅器の第3の実施例の構成図である。
【0146】
第1の電力増幅器PA1の出力側には、第1の単極2投スイッチSW1と、モード1用の第2の電力増幅器PA2と、モード2用の第3の電力増幅器PA3とが接続される。
【0147】
第1の電力増幅器PA1は、第1のGaAsMESFET PA101を有し、第2の電力増幅器PA2は、第2のGaAsMESFET PA201、第1の段間整合回路PA202、および第1の出力整合回路PA203を有し、第3の電力増幅器PA3は、第3のGaAsMESFET PA301、第2の段間整合回路PA302、第2の出力整合回路PA303を有する。
【0148】
第1の電力増幅器PA1、第2の電力増幅器PA2、第3の電力増幅器PA3をそれぞれ構成する第1、第2、第3のGaAsMESFET PA101、PA201、PA301は、デプレッション型であり、それぞれゲート幅(Wg)は、1mm、4mm、8mmである。
【0149】
Wgが1mmである第1のGaAsMESFET PA101と第1の単極2投スイッチSW1とをGaAs基板上に一体化(第1のスイッチ付き電力増幅器SWPA1)し、Wgが4mmである第2のGaAsMESFET PA201と、第1の段間整合回路PA202と、第1の出力整合回路PA203とをGaAs基板上に一体化(第1の一体型電力増幅器MMPA1)し、Wgが8mmである第3のGaAsMESFET PA301と、第2の段間整合回路PA302と、第2の出力整合回路PA303をGaAs基板上に一体化(第2の一体型電力増幅器MMPA2)し、それぞれ樹脂モールドパッケージに封止する。
【0150】
第1の単極2投スイッチSW1は、GaAsMESFETを用いた集積回路を用いる(回路例は、実施例2の図15を参照)。
【0151】
第1、第2、第3のGaAsMESFET PA101、PA201、PA301の動作電源電圧は、ドレイン電圧が3.5V、ゲート電圧は負電圧の約−2.0〜約−3.0Vである。第1のGaAsMESFET PA101では利得を重視し、第2、第3のGaAsMESFET PA201、PA301では入出力特性の線形性、デジタル歪特性を重視してAB級(Idssの約10%のアイドル電流)で動作させている。第1、第2および第3のGaAsMESFETのIdssは、それぞれ約250mA、約900mAおよび約1.7Aである。また第1の単極2投スイッチSW1は、0V/−4.7Vの制御電圧で使用する。
【0152】
本実施例のスイッチ付き電力増幅器では、第1の電力増幅器PA1として広帯域電力増幅器を用いることにより、入力整合回路と、実施例1および実施例2で必要であった入力整合回路を切り換えるスイッチが不要になる。一般的に、このような電力増幅器の広帯域動作化を実現するために、主に以下に示す方法を用いる。図22の(a)〜(d)は、電力増幅器の広帯域化を説明するための図である。図22において、2201は、能動素子MESFETを、2202は、出力端子を、2203は、入力端子をそれぞれ示す。
【0153】
(1)能動素子FET2201の出力端子(ドレイン端子)2202と入力端子(ゲート端子)2203との間に、抵抗2204およびキャパシタ2205の直列回路を負帰還回路βとして挿入する(図22の(a))。
【0154】
(2)能動素子2201の入力側に、π型、あるいはT型(第1、第2、第3の抵抗R1、R2、R3)などのアッテネータ2206を挿入する(図22の(b))。
【0155】
(3)能動素子2201の入力側に並列に抵抗2207(50Ω)を挿入する (図22の(c))。
【0156】
(4)能動素子の入力側および出力側に広帯域で整合が可能な第1および第2のインピーダンス変換回路2208および2209を挿入する。定抵抗回路であってもよい。
【0157】
本実施例では上記図22の(a)に示す広帯域電力増幅器を用いる。第1の電力増幅器PA1の負帰還回路の抵抗2204およびキャパシタ2205は、第1のスイッチ付き電力増幅器SWPA1とともに一体化され、樹脂モールドパッケージに封止する。
【0158】
整合回路のパラメータを決めるときには、第1、第2の段間整合回路PA202、PA302は、周波数f1、f2における第1のGaAsMESFET PA101の出力インピーダンスと、第2、第3のGaAsMESFET PA201、PA301の入力インピーダンスとの整合を考慮する。第1、第2の出力整合回路PA203、PA303のパラメータの最適化は、実施例1で説明した整合回路の手法に準じて行う。これにより、本実施例のπ/4シフトDQPSK変調方式、スペクトラム拡散/QPSK変調方式で必要とされる歪特性が満たされる。
【0159】
上記の各整合回路において、その等価回路は集中定数素子成分の組合せにより表され、第1、第2の段間整合回路PA202、PA302、第1、第2の出力整合回路PA203、PA303は、GaAs基板上のマイクロストリップライン、スパイラルインダクタ、MIM(MetalInsulator Metal)キャパシタ、くし形キャパシタ、薄膜抵抗(NiCrなど、)などを組み合わせて用いる。
【0160】
図23は、第3の実施例のスイッチ付き電力増幅器の構成図である。上記で説明した本実施例のスイッチ付き電力増幅器110の構成要素と、第1、第2、第3のGaAsMESFET PA101、PA201、PA301へのドレイン電圧/ゲート電圧供給部111、112、113と、第1の単極2投スイッチSW1の制御電圧供給部114とをプリント基板115上に実装している。
【0161】
Vdd1/Vgg1、Vdd2/Vgg2、Vdd3/Vgg3は、第1、第2、第3のGaAsMESFET PA101、PA201、PA301へ供給されるドレイン電圧/ゲート電圧であり、Vc1は第1の単極2投スイッチSW1へ供給される制御電圧である。
【0162】
これらドレイン電圧/ゲート電圧供給部111、112、113(電源制御回路)と、第1の単極2投スイッチSW1の制御電圧供絵部114(給電回路)の電源制御は連動するよう構成する。例えば出力選択がPout1の場合には、SW1はPout1を選択するように給電回路を制御し、使用しないPA301は低消費電力化のため動作しないようにドレイン電圧/ゲート電圧供絵部113を制御する。
【0163】
上記ドレイン電圧/ゲート電圧供給部は、チョークとしてのチップインダクタとバイパスコンデンサ、あるいはスイッチ付き電力増幅器を実装するためのプリント基板上のマイクロストリップラインとバイパスコンデンサを用いて構成する。
【0164】
なお、本実施例のようにモード1、モード2で規定される出力電力が異なる場合や、高周波信号の送受信状況が変化している場合には、出力電力を変えたり、一定に保つ必要がある。このため、送信用の電力増幅器の機能として、一定の出力電力を保持し、安定化させるための利得制御機能は必須であり、アッテネータ、自動利得制御(AGC、ALC)機能を有する電力増幅器などを組み込み、出力電力モニタをフィードバックして制御する。出力電力のモニタは、コンデンサ結合、あるいは方向性結合器により行う。(構成例は実施例1の図5および図6を参照)。
【0165】
上記の本実施例のスイッチ付き電力増幅器110を含めて、実施例1の図7の情報通信機器のブロック図で示した高周波部120、中間周波数信号処理部121、ベースバンド部122が少なくとも1つ以上のプリント基板(誘電体基板など)に集積化され、これらを情報通信機器きょう体に実装することにより、従来例に比べて小型化と低コスト化が可能で周波数帯、送信出力電力、変調方式の異なる方式を共用できる高付加価値な情報通信機器端末が得られる。
【0166】
具体的な情報通信機器の構成として、実施例1の図8〜図10に示した構成が考えられる。スイッチ付き電力増幅器に、モード1、モード2に対して送信・受信の切り替え用スイッチを接続した場合と、ダイバーシティ送受信を行うためのスイッチを接続した場合であり、これらを用いることにより、モード1、モード2に対する送受信を行うことができる。
【0167】
さらに実施例1の図11のようにアンテナ部をモード1とモード2で共用し、スイッチ付き電力増幅器のモード1とモード2の出力の切り替え用スイッチと送信と受信の切り替え用スイッチを接続することによりモード1、モード2に対する送受信を行うことができる。
【0168】
なお、本実施例のスイッチ付き電力増幅器の具体的構成例としては、以下の構成であっても実現できる。図24の(a)〜(d)は、第3の実施例のMMIC化する部分を示す図である。以下の説明の242〜245は、図24の点線に付された242〜245の参照符号と対応する。(242)以降で示すMMIC化については、コスト、チップ製造歩留りなどの観点から実用的なものだけを示した。しかし、これに限定されたものではなく、実施例1で示したハイブリッドIC、MMICの構成、実装でもよい。
【0169】
(241):GaAsMESFET、単極2投スイッチ、整合回路、その他の周辺回路をハイブリッドICで構成する。Wgが1mm、4mmのGaAsMESFETは樹脂モールドパッケージに封止し、Wgが8mmのGaAsMESFETはセラミックパッケージに実装する(セラミックキャリア上に実装され樹脂封止されている)。整合回路はチップ部品のチップインダクタ、チップコンデンサ、チップ抵抗を用いる。
【0170】
(242):第1のスイッチ付き電力増幅器SWPA1に、第1の一体化電力増幅器MMPA1、あるいは第2の一体化電力増幅器MMPA2の少なくとも1つを組み込む。
【0171】
(243):第1のスイッチ付き電力増幅器SWPA1に、第2の電力増幅器PA2の第1の出力整合回路PA203を除いた部分、あるいは第3の電力増幅器PA3の第2の出力整合回路PA303を除いた部分の少なくとも1つを組み込む。
【0172】
(244):第1の単極2投スイッチSW1と、第2の電力増幅器PA2、あるいは第3の電力増幅器PA3の少なくとも1つをGaAs基板上に一体化する。
【0173】
(245):第1の電力増幅器PA1と、第2の電力増幅器PA2、あるいは第3の電力増幅器PA3の少なくとも1つをGaAs基板上に一体化する。
【0174】
(242)〜(245)において、MMIC化されたチップは、樹脂モールドパッケージに封止するか、ベアチップ実装などの構成をとり、また、MMIC化された整合回路はGaAs基板上のマイクロストリップライン、スパイラルインダクタ、MIM(MetalInsulator Metal)キャパシタ、くし形キャパシタ、薄膜抵抗(NiCrなど、)などの組み合わせを有しており、MMIC化されない部品は個別に部品をプリント基板に実装する。
【0175】
なお、MMIC化には第1、第2、第3の電力増幅器PA1、PA2、PA3それぞれのMMIC化に加えて、例えば第1、第2の電力増幅器PA1、PA2においてそれぞれの出力整合回路以外をMMIC化する場合のように、上記の各電力増幅器の構成素子(能動素子、受動回路など)を選択してMMIC化することも含まれる。
【0176】
なお、上記で電力増幅器の能動素子として用いたGaAsMESFET以外にも、エンハンスメント型のGaAsMESFETや他の半導体基板上に形成されたトランジスタ(MOSFET、HBT、HEMTなど)などの能動素子でもよい。
【0177】
また、現状、携帯機器の動作要求はNiCd電池3本、あるいはLiイオン電池1本に相当する3.0〜3.4Vの電圧を前提にしているため、本実施例のGaAsMESFETの動作電源電圧は3.5Vであるが、他のロジック用ICの動作電圧、あるいは情報通信機器の種類によってはこれ以外の電源電圧の設定も可能である。規定電圧で動作する最適な能動素子を使用すれば、3.5V以外の動作電圧でも本実施例は実現できる。
【0178】
さらに、本実施例ではGaAsMESFETのゲート電圧はDC−DCコンバータにより発生した負電圧を用いているが、単一正電源で動作する能動素子を選択すれば負電源が除去され、本実施例は実現できる。
【0179】
本実施例の第1の電力増幅器PA1、第2の電力増幅器PA2、第3の電力増幅器PA3は1段増幅器であるが、多段増幅器を用いてもよく、例えば、第1の電力増幅器の入力側に駆動用電力増幅器が付加されてもよい。
【0180】
本実施例では受動回路として電力増幅器を構成する整合回路を取り上げて説明したが、整合の役割を果たす受動素子に限らず、電源供給ラインのチョークインダクタ、バイパスコンデンサ、バイアス印加用分割抵抗、フィルタ、高調波トラップ回路、アッテネータなどの受動回路も含まれる。例えば、電源供給ラインのチョークインダクタ、バイパスコンデンサ、バイアス印加用分割抵抗がMMIC化した電力増幅器に含まれてもよく、フィルタに関して高周波信号の送受信の周波数が異なる場合には出力整合回路の後に、所定の通過帯域幅のバンドパスフィルタを挿入してもよく、出力整合回路に高調波トラップ回路を挿入してもよい。
【0181】
本実施例では、単極2投スイッチを用いて、2種類の方式に対応した高周波信号を送信するが、上記の切り換え用のスイッチとしては、3投以上の多投端子を有する単極多投スイッチ、あるいは2極以上の多極端子を有する多極2投スイッチ、まとめると多極多投スイッチであっても、所望の電力増幅器、および情報通信機器は構成できる。
【実施例4】
【0182】
図25および図26は、本発明のスイッチ付き電力増幅器の第4の実施例を説明するための図である。このスイッチ付き電力増幅器は、最終出力段電力増幅器の駆動電力増幅器(ドライバアンプ)、前置駆動電力増幅器(プリドライバアンプ)として、広帯域電力増幅器を用い、スイッチが時間的に同期して切り替わることにより、2種類の周波数、2種類の出力電力の高周波信号を送信する機能を有する。広帯域電力増幅器(前述の多周波整合電力増幅器を含む)は、実施例3の図19および図20において定義したものを用いる。広帯域電力増幅器を用いることにより、実施例1および実施例2において必要であった入力整合回路と不要なスイッチが除去され、さらに小型化、高性能化されたスイッチ付き電力増幅器が得られる。
【0183】
本実施例の電力増幅器は、下表に示すような周波数f、出力電力Poutの高周波信号を送信する。
【0184】
【表8】


図25は、本発明のスイッチ付き電力増幅器の第4の実施例の構成図である。第1の電力増幅器PA1の出力側には、第1の単極2投スイッチSW1を介してモード1用の第2の電力増幅器PA2と、モード2用の第3の電力増幅器PA3とが接続されている。
【0185】
第1の電力増幅器PA1は、第1のGaAsMESFET PA101、第1の段間整合回路PA103、第2のGaAsMESFET PA102を有しており、第2の電力増幅器PA2は、第3のGaAsMESFET PA201、第2の段間整合回路PA202、第1の出力整合回路PA203を有しており、第3の電力増幅器PA3は、第4のGaAsMESFET PA301、第3の段間整合回路PA302、第2の出力整合回路PA303を有している。
【0186】
第1の電力増幅器PA1の第1および第2のGaAsMESFET PA101およびPA102と、第2の電力増幅器PA2の第3のGaAsMESFETPA201と、第3の電力増幅器PA3の第4のGaAsMESFET PA301とは、デプレッション型であり、それぞれゲート幅(Wg)が0.6mm、2mm、4mm、および8mmである。
【0187】
第1の電力増幅器PA1と、第1の単極2投スイッチSW1とは、GaAs基板上に一体化(第1のスイッチ付き電力増幅器SWPA1)され、第2の電力増幅器PA2を構成する素子である第3のGaAsMESFET PA201と、第2の段間整合回路PA202と、第1の出力整合回路PA203とは、GaAs基板上に一体化(第1の一体型電力増幅器MMPA1)され、第3の電力増幅器PA3を構成する素子である第4のGaAsMESFET PA301と、第3の段間整合回路PA302と、第2の出力整合回路PA303とは、GaAs基板上に一体化(第2の一体型電力増幅器MMPA2)され、それぞれ樹脂モールドパッケージに封止される。
【0188】
第1の単極2投スイッチSW1は、GaAsMESFETを用いた集積回路を用いる(回路例は、実施例2の図15参照)。
【0189】
第1、第2、第3、第4のGaAsMESFET PA101、PA102、PA201、PA301の動作電源電圧は、ドレイン電圧が約3.5V、ゲート電圧は負電圧の−2.0V〜−3.0Vである。第1のGaAsMESFET PA101およびPA102では利得を重視し、第2、第3のGaAsMESFET PA201およびPA301では入出力特性の線形性、デジタル歪特性を重視してAB級(Idssの約10%のアイドル電流)で動作させている。GaAsMESFET PA101、102、201および301のIdssは、それぞれ約160mA、約550mA、約900mA、約1.7Aである。
【0190】
第1の単極2投スイッチSW1は、0V/−4.7Vの制御電圧で使用する。
【0191】
本実施例のスイッチ付き電力増幅器では、第1、第2の電力増幅器PA1、PA2として広帯域電力増幅器を用いることにより、入力整合回路と、実施例1と実施例2で必要であった入力整合回路を切り換えるスイッチが不要になる。
【0192】
一般的に、このような電力増幅器の広帯域動作化を実現するために、実施例の図22の(a)〜(d)に示す4種類の方法を用いる。本実施例では、上記図22の(a)に示すGaAsMESFETの入出力間に、抵抗とキャパシタの直列回路からなる負帰還回路を挿入する方法を用いる。
【0193】
第1、第2のGaAsMESFET PA101、PA102の負帰還回路の抵抗とキャパシタは第1のスイッチ付き電力増幅器SWPA1とともに一体化され、樹脂モールドパッケージに封止する。
【0194】
整合回路のパラメータの決定するときには、第2、第3の段間整合回路PA202、PA302は、周波数f1、f2における第2のGaAsMESFET PA102の出力インピーダンスと、第3、第4のGaAsMESFET PA201、PA301の入力インピーダンスとの整合がとれるようにする。また、第1のスイッチ付き電力増幅器SWPA1の中の第1の段間整合回路PA103は結合キャパシタで構成し、各段の高周波的な結合を行う(直流成分を阻止する)。第1の段間整合回路PA103は集中定数素子で構成される受動回路でもよい。第1、第2の出力整合回路PA203、PA303のパラメータの決定は、実施例1で説明した整合回路の手法に準じて行う。これにより、本実施例のπ/4シフトDQPSK変調方式、スペクトラム拡散/QPSK変調方式で必要とされる歪特性が満たされる。
【0195】
上記の各整合回路において、その等価回路は集中定数素子成分の組合せにより表され、第1、第2の段間整合回路PA202、PA302、第1、第2の出力整合回路PA203、PA303は、GaAs基板上のマイクロストリップライン、スパイラルインダクタ、MIM(MetalInsulator Metal)キャパシタ、くし形キャパシタ、薄膜抵抗(NiCrなど、)などを組み合わせて構成する。
【0196】
図26は、第4の実施例のスイッチ付き電力増幅器の構成図である。上記で説明した本実施例のスイッチ付き電力増幅器101の構成要素と、第1および第2のGaAsMESFET PA101、PA102へのドレイン電圧/ゲート電圧供給部102と、第3、第4のGaAsMESFET PA201、PA301へのドレイン電圧/ゲート電圧供給部103、104と、第1の単極2投スイッチSW1の制御電圧供給部105とをプリント基板106上に実装している。
【0197】
Vdd1/Vgg1は、第1、第2のGaAsMESFET PA101、PA102へ供給されるドレイン電圧/ゲート電圧であり、Vdd2/Vgg2、Vdd3/Vgg3は、第3、第4のGaAsMESFET PA201、PA301へ供給されるドレイン電圧/ゲート電圧であり、VC1は、第1の単極2投スイッチSW1へ供給される制御電圧である。
【0198】
これらドレイン電圧/ゲート電圧供給部102、103、104(電源制御回路)と、第1の単極2投スイッチSW1の制御電圧供給部105(給電回路)の電源制御は連動するよう構成する。例えば出力選択がPout1の場合には、SW1はPout1を選択するように給電回路を制御し、使用しないPA301は低消費電力化のため動作しないようにドレイン電圧/ゲート電圧供給部104を制御する。
【0199】
上記ドレイン電圧/ゲート電圧供給部は、チョークとしてのチップインダクタとバイパスコンデンサ、あるいはスイッチ付き電力増幅器を実装するためのプリント基板上のマイクロストリップラインとバイパスコンデンサを用いて構成する。
【0200】
なお、本実施例のようにモード1、モード2で規定される出力電力が異なる場合や、高周波信号の送受信状況が変化している場合には、出力電力を変えたり、一定に保つ必要がある。このため、送信用の電力増幅器の機能として、一定の出力電力を保持し、安定化させるための利得制御機能は必須であり、アッテネータ、自動利得制御(AGC、ALC)機能を有する電力増幅器などを組み込み、出力電力モニタをフィードバックして制御する。出力電力のモニタは、コンデンサ結合、あるいは方向性結合器により行う。(構成例は実施例1の図5および図6を参照)。
【0201】
上記の本実施例のスイッチ付き電力増幅器101を含めて、実施例1の図7の情報通信機器のブロック図で示した高周波部120、中間周波数信号処理部121、ベースバンド部122が少なくとも1つ以上のプリント基板(誘電体基板など)に集積化され、これらを情報通信機器きょう体に実装することにより、従来例に比べて小型化と低コスト化が可能で周波数帯、送信出力電力、変調方式の異なる方式を共用できる高付加価値な通信機器が得られる。
【0202】
具体的な情報通信機器の構成として、実施例1の図8〜図10に示した構成が考えられる。スイッチ付き電力増幅器に、モード1、モード2に対して送信・受信の切り替え用スイッチを接続した場合と、ダイバーシティ送受信を行うためのスイッチを接続した場合であり、これらを用いることにより、モード1、モード2に対する送受信を行うことができる。
【0203】
さらに実施例1の図11のようにアンテナ部をモード1とモード2で共用し、スイッチ付き電力増幅器のモード1とモード2の出力の切り替え用スイッチと送信と受信の切り替え用スイッチを接続することによりモード1、モード2に対する送受信を行うことができる。
【0204】
なお、本実施例のスイッチ付き電力増幅器の具体的構成例としては、以下の構成であっても実現できる。以下の説明の(272)以降で示すMMIC化については、コスト、チップ製造歩留りなどの観点から実用的なものだけを示した。しかし、これに限定されたものではなく、実施例1で示したハイブリッドIC、MMICの構成、実装でもよい。図27の(a)〜(d)は、第4の実施例のMMIC化する部分を示す図である。以下の説明の(272)〜(276)は、図27の点線に付された参照符号と対応する。
【0205】
(271):GaAsMESFET、スイッチ、整合回路、その他の周辺回路をハイブリッドICで構成する。Wgが1mm、4mmのGaAsMESFETは樹脂モールドパッケージに封止し、Wgが8mmのGaAsMESFETはセラミックパッケージに実装する(セラミックキャリア上に実装され、樹脂封止されている)。整合回路はチップ部品のチップインダクタ、チップコンデンサ、チップ抵抗を用いる。
【0206】
(272):第1のスイッチ付き電力増幅器SWPA1に、第1の一体化電力増幅器MMPA1、あるいは第2の一体化電力増幅器MMPA2の少なくとも1つを組み込む。
【0207】
(273):第1のスイッチ付き電力増幅器SWPA1に、第2の電力増幅器PA2の第1の出力整合回路PA203を除いた部分、あるいは第3の電力増幅器PA3の第2の出力整合回路PA303を除いた部分の少なくとも1つを組み込む。
【0208】
(274):第1の単極2投スイッチSW1と、第2の電力増幅器PA2、あるいは第3の電力増幅器PA3の少なくとも1つとをGaAs基板上に一体化する。
【0209】
(275):第1の電力増幅器PA1に、第2の電力増幅器PA2、あるいは第3の電力増幅器PA3の少なくとも1つをGaAs基板上に一体化する。
【0210】
(276):第1の単極2投スイッチSW1と、第2の電力増幅器PA2、あるいは第3の電力増幅器PA3の少なくとも1つをGaAs基板上に一体化したチップと、第1の電力増幅器PA1をGaAs基板上に一体化したチップと、をマルチチップで構成する。実装はパッケージに入れるか、プリント基板上にベアチップで接続することなどを行う。
【0211】
上記(274)〜(276)において、MMIC化されたチップは、樹脂モールドパッケージに封止するか、ベアチップ実装などの構成が可能であり、MMIC化された整合回路はGaAs基板上のマイクロストリップライン、スパイラルインダクタ、MIM(MetalInsulator Metal)キャパシタ、くし形キャパシタ、薄膜抵抗(NiCrなど、)などの組み合わせを含み、MMIC化されない部品は個別に部品をプリント基板に実装する。
【0212】
なお、MMIC化には第1、第2、第3の電力増幅器PA1、PA2、PA3それぞれのMMIC化に加えて、例えば第1、第2の電力増幅器PA1、PA2においてそれぞれの出力整合回路以外をMMIC化する場合のように、上記の各電力増幅器の構成素子(能動素子、受動回路など)を選択してMMIC化することも含まれる。なお、上記で電力増幅器の能動素子として用いたGaAsMESFET以外にも、エンハンスメント型のGaAsMESFETや他の半導体基板上に形成されたトランジスタ(MOSFET、HBT、HEMTなど)などの能動素子でもよい。
【0213】
また、現状、携帯機器の動作要求はNiCd電池3本、あるいはLiイオン電池1本に相当する3.0〜3.4Vの電圧を前提にしているため、本実施例のGaAsMESFETの動作電源電圧は3.5Vであるが、他のロジック用ICの動作電圧、あるいは情報通信機器の種類によってはこれ以外の電源電圧の設定も可能である。規定電圧で動作する最適な能動素子を使用すれば、3.5V以外の動作電圧でも本実施例は実現できる。
【0214】
さらに、本実施例ではGaAsMESFETのゲート電圧はDC−DCコンバータにより発生した負電圧を用いているが、単一正電源で動作する能動素子を選択すれば負電源が除去され、本実施例は実現できる。
【0215】
本実施例の第2の電力増幅器PA2、第3の電力増幅器PA3は1段増幅器であるが、第1の電力増幅器PA1のように多段増幅器を用いてもよい。
【0216】
本実施例では受動回路として電力増幅器を構成する整合回路を取り上げて説明したが、整合の役割を果たす受動素子に限らず、電源供給ラインのチョークインダクタ、バイパスコンデンサ、バイアス印加用分割抵抗、フィルタ、高調波トラップ回路、アッテネータなどの受動回路も含まれる。例えば、電源供給ラインのチョークインダクタ、バイパスコンデンサ、バイアス印加用分割抵抗がMMIC化した電力増幅器に含まれてもよく、フィルタに関して高周波信号の送受信の周波数が異なる場合には出力整合回路の後に、所定の通過帯域幅のバンドパスフィルタを挿入してもよく、出力整合回路に高調波トラップ回路を挿入してもよい。
【0217】
本実施例では、単極2投スイッチを用いて、2種類の方式に対応した高周波信号を送信するが、上記の切り換え用のスイッチとしては、3投以上の多投端子を有する単極多投スイッチ、あるいは2極以上の多極端子を有する多極2投スイッチ、まとめると多極多投スイッチであっても、所望の電力増幅器、および情報通信機器は構成できる。
【0218】
本実施例の電力増幅器の仕様の他に、以下の仕様のものでも実現できる。
【0219】
【表9】


また、Pout1、Pout2がほぼ同じで、f1、f2が異なる高周波信号、例えば、以下の高周波信号を送信できる。
【0220】
【表10】

【実施例5】
【0221】
図28〜図30は、本発明のスイッチ付き電力増幅器の第5の実施例を説明するための図である。このスイッチ付き電力増幅器は、最終出力段電力増幅器の駆動電力増幅器(ドライバアンプ)、前置駆動電力増幅器(プリドライバアンプ)、初段前置駆動電力増幅器として、広帯域電力増幅器を用い、スイッチが時間的に同期して切り替わることにより、2種類の周波数、2種類の出力電力の高周波信号を送信する機能を有する。広帯域電力増幅器(多周波整合電力増幅器を含む)は、実施例3の図19および図20において定義したものを用いる。上記の広帯域電力増幅器を用いることにより、実施例1と実施例2において必要であった入力整合回路と不要なスイッチが除去され、さらに小型化、高性能化されたスイッチ付き電力増幅器が得られる。
【0222】
本実施例は、下表に示すような周波数f、出力電力Poutの高周波信号を送信する。
【0223】
【表11】


図28は、本発明の第5の実施例のスイッチ付き電力増幅器の構成図である。第1の電力増幅器PA1の出力側には、第1の単極2投スイッチSW1と、モード1用の第1の出力整合回路PC1と、モード2用の第2の電力増幅器PA2とが接続されている。第1の電力増幅器PA1は、第1のGaAsMESFET PA101と、第1の段間整合回路PA104と、第2のGaAsMESFET PA102と、第2の段間整合回路PA105と、第3のGaAsMESFET PA103とを有しており、第2の電力増幅器PA2は、第4のGaAsMESFET PA201、第3の段間整合回路PA202、第2の出力整合回路PA203を有している。
【0224】
第1の電力増幅器PA1の第1、第2、第3のGaAsMESFET PA101、PA102、PA103と、第2の電力増幅器PA2のPA201とは、デプレッション型であり、ゲート幅(Wg)は、それぞれ0.6mm、2.0mm、6.0mm、30mmである。
【0225】
第1の電力増幅器PA1を構成する素子の中で、第1のGaAsMESFETPA101、第1の段間整合回路PA104、第2のGaAsMESFET PA102、第2の段間整合回路PA105と、第1の単極2投スイッチSW1をGaAs基板上に一体化(第1のスイッチ付き電力増幅器SWPA1)し、第2の電力増幅器PA2を構成する素子である第4のGaAsMESFET PA201と、第3の段間整合回路PA202と、第2の出力整合回路PA203をGaAs基板上に一体化(第1の一体型電力増幅器MMPA1)し、樹脂モールドパッケージに封止する。Wgが30mmである第4のGaAsMESFET PA201はセラミックパッケージに実装する(セラミックキャリア上に実装され樹脂封止されている)。
【0226】
第1の単極2投スイッチSW1は、GaAsMESFETを用いた集積回路を用いる(回路例は、実施例2の図15を参照)。
【0227】
第1、第2、第3、第4のGaAsMESFET PA101、PA102、PA103、PA201の動作電源電圧は、ドレイン電圧が約3.5V、ゲート電圧は負電圧の約−2.0V〜約−3.0V)である。第1および第2のGaAsMESFET PA101およびPA102では利得を重視する。第3および第4のGaAsMESFET PA103およびPA201では入出力特性の線形性、デジタル歪特性を重視してAB級(Idssの約10%のアイドル電流)で動作させている。GaAsMESFET PA101、PA102、PA103およびPA201のIdssは、それぞれ約160mA、550mA、1.3A、7.0Aである。
【0228】
第1の単極2投スイッチSW1は、0V/−4.7Vの制御電圧で使用する。
【0229】
本実施例のスイッチ付き電力増幅器では、第1、第2、第3の電力増幅器PA1、PA2、PA3として広帯域電力増幅器を用いることにより、入力整合回路と、実施例1と実施例2で必要であった入力整合回路を切り換えるスイッチが不要になる。
【0230】
一般的に、このような電力増幅器の広帯域動作化を実現するために、実施例3の図22の(a)〜(d)に示す4種類の方法を用いる。本実施例では、上記図22の(a)のGaAsMESFETの入出力間に、抵抗とキャパシタの直列回路からなる負帰還回路を挿入する方法を用いる。
【0231】
第1、第2のGaAsMESFET PA101、PA102の負帰還回路の抵抗とキャパシタとは、第1のスイッチ付き電力増幅器SWPA1とともに一体化され、樹脂モールドパッケージに封止する。第3のGaAsMESFET PA103の負帰還回路101の抵抗とキャパシタとは、チップ部品を使って外付け回路とする。
【0232】
整合回路のパラメータの決定に関して、第3の段間整合回路PA202は、周波数f2において第3のGaAsMESFET PA103の出力インピーダンスと、第4のGaAsMESFET PA201の入力インピーダンスとの整合をとるように決める。
【0233】
また、第1のスイッチ付き電力増幅器SWPA1の中の第1、第2の段間整合回路PA104、PA105は結合キャパシタで構成し、各段の高周波的な結合を行う(直流成分を阻止する)。第1、第2の段間整合回路PA104、PA105は集中定数素子で構成される受動回路でもよい。
【0234】
第1、第2の出力整合回路PC1、PA203のパラメータの決定は、実施例1で説明した整合回路の手法に準じて行う。これにより、本実施例のπ/4シフトDQPSK変調方式で必要とされる歪特性が満たされる。
【0235】
上記の各整合回路において、その等価回路は集中定数素子成分の組合せにより表され、第1、第2の段間整合回路PA104、PA105はGaAs基板上のマイクロストリップライン、スパイラルインダクタ、MIM(MetalInsulator Metal)キャパシタ、くし形キャパシタ、薄膜抵抗(NiCrなど、)などを組み合わせて構成する。
【0236】
第1、第2の出力整合回路PC1、PA203と、第3の段間整合回路PA202は、チップ部品のチップインダクタ、チップコンデンサ、チップ抵抗を用いて構成する。
【0237】
図29は、第5の実施例のスイッチ付き電力増幅器の構成図である。上記で説明した本実施例のスイッチ付き電力増幅器102の構成要素と、第1と第2のGaAsMESFET PA101、PA102へのドレイン電圧/ゲート電圧供給部103と、第3、第4のGaAsMESFET PA103、PA201へのドレイン電圧/ゲート電圧供給部104、105と、第1の単極2投スイッチSW1の制御電圧供給部106とをプリント基板107上に実装している。
【0238】
Vdd1/Vgg1は、第1、第2のGaAsMESFET PA101、PA102へ供給されるドレイン電圧/ゲート電圧であり、Vdd2/Vgg2、Vdd3/Vgg3は、それぞれ第3、第4のGaAsMESFET PA103、PA201へ供給されるドレイン電圧/ゲート電圧であり、VC1は第1の単極2投スイッチSW1へ供給される制御電圧である。
【0239】
これらドレイン電圧/ゲート電圧供給部103、104、105(電源制御回路)と、第1の単極2投スイッチSW1の制御電圧供給部106(給電回路)の電源制御は連動するよう構成する。例えば出力選択がPout1の場合には、SW1はPout1を選択するように給電回路を制御し、使用しないPA201は低消費電力化のため動作しないようにドレイン電圧/ゲート電圧供給部105を制御する。
【0240】
上記ドレイン電圧/ゲート電圧供給部は、チョークとしてのチップインダクタとバイパスコンデンサ、あるいはスイッチ付き電力増幅器を実装するためのプリント基板上のマイクロストリップラインとバイパスコンデンサを用いて構成する。
【0241】
なお、本実施例のようにモード1、モード2で規定される出力電力が異なる場合や、高周波信号の送受信状況が変化している場合には、出力電力を変えたり、一定に保つ必要がある。このため、送信用の電力増幅器の機能として、一定の出力電力を保持し、安定化させるための利得制御機能は必須であり、アッテネータ、自動利得制御(AGC、ALC)機能を有する電力増幅器などを組み込み、出力電力モニタをフィードバックして制御する。出力電力のモニタは、コンデンサ結合、あるいは方向性結合器により行う。(構成例は実施例1の図5および図6を参照)。
【0242】
上記の本実施例のスイッチ付き電力増幅器102を含めて、実施例1の図7の情報通信機器のブロック図で示した高周波部120、中間周波数信号処理部121、ベースバンド部122が少なくとも1つ以上のプリント基板(誘電体基板など)に集積化され、これらを情報通信機器きょう体に実装することにより、従来例に比べて小型化と低コスト化が可能で周波数帯、送信出力電力、変調方式の異なる方式を共用できる高付加価値な通信機器が得られる。
【0243】
具体的な情報通信機器の構成として、実施例1の図8〜図10に示した構成が考えられる。スイッチ付き電力増幅器に、モード1、モード2に対して送信・受信の切り替え用スイッチを接続した場合と、ダイバーシティ送受信を行うためのスイッチを接続した場合であり、これらを用いることにより、モード1、モード2に対する送受信を行うことができる。
【0244】
さらに実施例1の図11のようにアンテナ部をモード1とモード2で共用し、スイッチ付き電力増幅器のモード1とモード2の出力の切り替え用スイッチと送信と受信の切り替え用スイッチを接続することによりモード1、モード2に対する送受信を行うことができる。
【0245】
なお、本実施例のスイッチ付き電力増幅器の具体的構成例としては、以下の構成であっても実現できる。以下の(302)以降で示すMMIC化については、コスト、チップ製造歩留りなどの観点から実用的なものだけを示した。しかし、これに限定されたものではなく、実施例1で示したハイブリッドIC、MMICの構成、実装でもよい。図30は、第5の実施例のMMIC化された部分を示す図である。説明の302〜305は、図30の点線に付された参照符号と対応する。
【0246】
(301):GaAsMESFET、スイッチ、整合回路、その他の周辺回路をハイブリッドICで構成する。Wgが0.6mm、2mm、6mmのGaAsMESFETは樹脂モールドパッケージに封止し、Wgが30mmのGaAsMESFETはセラミックパッケージに実装する(セラミックキャリア上に実装され樹脂封止されている)。整合回路、負帰還回路はチップ部品のチップインダクタ、チップコンデンサ、チップ抵抗を用いる。
【0247】
(302):第1のスイッチ付き電力増幅器SWPA1に、第1の出力整合回路PC1、あるいは第2の出力整合回路PA203を組み込み、樹脂モールドする。
【0248】
(303):第3のGaAsMESFET PA103と第1の単極2投スイッチSW1とをGaAs基板上に一体化(第2のスイッチ付き電力増幅器SWPA2)し、これに第1の出力整合回路PC1、あるいは第2の出力整合回路PA202を組み込み、樹脂モールドする。ただし、第3のGaAsMESFET PA103の負帰還回路101は一体化、外付けのどちらでもよい。
【0249】
(304):第1の電力増幅器PA1を構成する素子と、第1の出力整合回路PC1、あるいは第2の出力整合回路PA203の少なくとも1つをGaAs基板上に一体化し、樹脂モールドする。
【0250】
(305):第3のGaAsMESFET PA103と第1の単極2投スイッチSW1とをGaAs基板上に一体化(第2のスイッチ付き電力増幅器SWPA2)したチップと、第1、2のGaAsMESFET PA101、102と第1、2の段間整合回路PA104、PA105をGaAs基板上に一体化(第1の一体型電力増幅器MMPA1)したチップを、マルチチップで構成する。実装はパッケージに入れるか、プリント基板上にベアチップで接続することなどを行う。
【0251】
上記説明(302)、(303)、(304)および(305)において、MMIC化されたチップは、樹脂モールドパッケージに封止するか、ベアチップ実装などの構成が可能であり、また、MMIC化された整合回路はGaAs基板上のマイクロストリップライン、スパイラルインダクタ、MIM(MetalInsulator Meta l)キャパシタ、くし形キャパシタ、薄膜抵抗(NiCrなど、)などの組み合わせを有しており、MMIC化されない部品は個別に部品をプリント基板に実装する。
【0252】
なお、MMIC化には第1、第2の電力増幅器PA1、PA2それぞれのMMIC化に加えて、例えば第2の電力増幅器PA2において出力整合回路以外をMMIC化する場合のように、上記の各電力増幅器の構成素子(能動素子、受動回路など)を選択してMMIC化することも含まれる。
【0253】
なお、上記で電力増幅器の能動素子として用いたGaAsMESFET以外にも、エンハンスメント型のGaAsMESFETや他の半導体基板上に形成されたトランジスタ(MOSFET、HBT、HEMTなど)などの能動素子でもよい。
【0254】
また、現状、携帯機器の動作要求はNiCd電池3本、あるいはLiイオン電池1本に相当する3.0〜3.4Vの電圧を前提にしているため、本実施例のGaAsMESFETの動作電源電圧は3.5Vであるが、他のロジック用ICの動作電圧、あるいは情報通信機器の種類によってはこれ以外の電源電圧の設定も可能である。規定電圧で動作する最適な能動素子を使用すれば、3.5V以外の動作電圧でも本実施例は実現できる。
【0255】
さらに、本実施例ではGaAsMESFETのゲート電圧はDC−DCコンバータにより発生した負電圧を用いているが、単一正電源で動作する能動素子を選択すれば負電源が除去され、本実施例は実現できる。
【0256】
本実施例の第2の電力増幅器PA2は1段増幅器であるが、第1の電力増幅器PA1のように多段増幅器を用いてもよい。
【0257】
本実施例では受動回路として電力増幅器を構成する整合回路を取り上げて説明したが、整合の役割を果たす受動素子に限らず、電源供給ラインのチョークインダクタ、バイパスコンデンサ、バイアス印加用分割抵抗、フィルタ、高調波トラップ回路、アッテネータなどの受動回路も含まれる。例えば、電源供給ラインのチョークインダクタ、バイパスコンデンサ、バイアス印加用分割抵抗がMMIC化した電力増幅器に含まれてもよく、フィルタに関して高周波信号の送受信の周波数が異なる場合には出力整合回路の後に、所定の通過帯域幅のバンドパスフィルタを挿入してもよく、出力整合回路に高調波トラップ回路を挿入してもよい。
【0258】
本実施例では、単極2投スイッチを用いて、2種類の方式に対応した高周波信号を送信するが、上記の切り換え用のスイッチとしては、3投以上の多投端子を有する単極多投スイッチ、あるいは2極以上の多極端子を有する多極2投スイッチ、まとめると多極多投スイッチであっても、所望の電力増幅器、および情報通信機器は構成できる。
【0259】
本実施例の電力増幅器の仕様の他に、以下の仕様のものでも実現できる。
【0260】
【表12】

【0261】
【表13】


後者の仕様においてモード2のアナログのFM変調方式では、電力増幅器としては非線形、飽和電力増幅器でも使用可能であり、第2の出力整合回路PA203に対しては、規定の出力電力31dBmにおいて高い電力付加効率と、高い高調波成分抑圧比が得られるように整合がとられる。第1の出力整合回路PC1に対しては、規定の出力電力22dBmにおいて隣接チャンネル漏洩電力を抑制した上で、高い電力付加効率が得られるように整合がとられる。
【0262】
(実施例6)図31〜図34は、本発明のスイッチ付き電力増幅器の第6の実施例を説明するための図である。このスイッチ付き電力増幅器は、最終出力段電力増幅器の駆動電力増幅器(ドライバアンプ)、前置駆動電力増幅器(プリドライバアンプ)、初段前置駆動電力増幅器として、広帯域電力増幅器を用い、スイッチが時間的に同期して切り替わることにより、2種類の周波数、2種類の出力電力の高周波信号を送信する機能を有する。広帯域電力増幅器(多周波整合電力増幅器を含む)は、実施例3の図19および図20において定義したものを用いる。上記の広帯域電力増幅器を用いることにより、実施例1と実施例2において必要であった入力整合回路と不要なスイッチが除去され、さらに小型化、高性能化されたスイッチ付き電力増幅器が得られる。
【0263】
第6の実施例は、下表に示すような周波数f、出力電力Poutの高周波信号を送信する。
【0264】
【表14】


図31は、本発明のスイッチ付き電力増幅器の第6の実施例の構成図である。第1の電力増幅器PA1の出力側には、第1の単極2投スイッチSW1と、モード1用の第1の受動回路PC1と、モード2用の第2の受動回路PC2が接続されている。第1の電力増幅器PA1は、第1のGaAsMESFET PA101と、第1の段間整合回路PA104と、第2のGaAsMESFET PA102と、第2の段間整合回路PA105と、第3のGaAsMESFET PA103と有しており、第1の受動回路PC1は、第1の出力整合回路PC101と、第1のフィルタPC102とを有しており、第2の受動回路PC2は、第2の出力整合回路PC201と、第2のフィルタPC202とを有している。
【0265】
第1の電力増幅器PA1を構成する第1、第2、第3のGaAsMESFET PA101、PA102、PA103は、デプレッション型であり、ゲート幅(Wg)は、それぞれ1mm、6mm、30mmである。
【0266】
第1の電力増幅器PA1を構成する素子の中で、第1のGaAsMESFETPA101、第1の段間整合回路PA104と、第1の単極2投スイッチSW1をGaAs基板上に一体化(第1のスイッチ付き電力増幅器SWPA1)し、樹脂モールドパッケージに封止する。Wgが6mmである第2のGaAsMESFET PA102は樹脂モールドパッケージに、Wgが30mmである第3のGaAsMESFET PA103はセラミックパッケージに実装する(セラミックキャリア上に実装され樹脂封止されている)。
【0267】
第1の単極2投スイッチSW1は、GaAsMESFETを用いた集積回路を用いる(回路例は実施例2の図15を参照)。
【0268】
第1、第2、第3のGaAsMESFET PA101、PA102、PA103の動作電源電圧はドレイン電圧が3.5V、ゲート電圧は負電圧の−2.0V〜−3.0Vである。第1のGaAsMESFET PA101では利得を重視する。第2、第3のGaAsMESFET PA102、PA103では入出力特性の線形性、デジタル歪特性を重視してAB級(Idssの約10%のアイドル電流)で動作させている。GaAsMESFET PA101、PA102およびPA103のIdssはそれぞれ約250mA、約1.3A、約7.0Aである。
【0269】
第1の単極2投スイッチSW1は0V/−4.7Vの制御電圧で使用する。本実施例のスイッチ付き電力増幅器では、第1、第2、第3の電力増幅器PA1、PA2、PA3として広帯域電力増幅器を用いることにより、入力整合回路と、実施例1と実施例2で必要であった入力整合回路を切り換えるスイッチが不要になる。
【0270】
一般的に、このような電力増幅器の広帯域動作化を実現するために、実施例3の図22の(a)〜(d)に示す4種類の方法を用いる。本実施例では、上記図22の(a)のGaAsMESFETの入出力間に、抵抗とキャパシタの直列回路からなる負帰還回路を挿入する方法を用いる。
【0271】
第1のGaAsMESFET PA101の負帰還回路の抵抗とキャパシタは第1のスイッチ付き電力増幅器SWPA1とともに一体化され、樹脂モールドパッケージに封止する。第2のGaAsMESFET PA102の第1の負帰還回路101の抵抗とキャパシタはチップ部品を使って外付け回路とする。第3のGaAsMESFET PA103に関しては、第2の負帰還回路102を一体化するか、負帰還回路102を外付け回路とするか、第2の段間整合回路PA105として広帯域整合(周波数f1とf2、あるいはf1とf2を含む周波数帯域において、第2の電力増幅器PA102の出力インピーダンスと第3の電力増幅器PA103の入力インピーダンスとの整合をとること)が可能なインピーダンス変換回路を用いることなどを行う。
【0272】
整合回路のパラメータの決定に関して、第3の段間整合回路PA202は、周波数f2において第3のGaAsMESFET PA103の出力インピーダンスと、第4のGaAsMESFET PA201の入力インピーダンスと整合をとる。
【0273】
また、第1の段間整合回路PA104は結合キャパシタで構成し、各段の高周波的な結合を行う(直流成分を阻止する)。第1の段間整合回路PA104および第2の段間整合回路PA105は、集中定数素子で構成される受動回路でもよい。
【0274】
第1、第2の出力整合回路PC101、PC201のパラメータの決定は、実施例1で説明した整合回路の手法に準じて行う。これにより、本実施例のπ/4シフトDQPSK変調方式で必要とされる歪特性が満たされる。
【0275】
上記の各整合回路において、その等価回路は集中定数素子成分の組合せにより表され、第1、2の段間整合回路PA104、PA105、第1、2の出力整合回路PC101、PC201をGaAs基板上などに一体化する場合にはGaAs基板上のマイクロストリップライン、スパイラルインダクタ、MIM(MetalInsulator Metal)キャパシタ、くし形キャパシタ、薄膜抵抗(NiCrなど、)などを組み合わせて構成する。
【0276】
第1、第2の出力整合回路PC101、PC201と、第2の段間整合回路PA105とは、チップ部品のチップインダクタ、チップコンデンサ、チップ抵抗を用いて構成する。
【0277】
第1、第2のフィルタPC102、PC202は、周波数f1、f2に対して所定の通過帯域幅のバンドパスフィルタ、あるいは上記バンドパスフィルタとf1、f2を通過帯域にもつローパス、ハイパスフィルタの組合せで構成する。一般的に、フィルタはチップ部品の誘電体フィルタ、あるいは表面弾性波フィルタ(SAWフィルタ)などを用いる。
【0278】
図32は、第6の実施例のスイッチ付き電力増幅器の構成図である。上記で説明した本実施例のスイッチ付き電力増幅器103の構成要素と、第1のGaAsMESFET PA101へのドレイン電圧/ゲート電圧供給部104と、第2、第3のGaAsMESFET PA102、PA103へのドレイン電圧/ゲート電圧供給部105と、第1の単極2投スイッチSW1の制御電圧供給部106とをプリント基板107上に実装している。
【0279】
Vdd1/Vgg1は、第1のGaAsMESFET PA101へ供給されるドレイン電圧/ゲート電圧であり、Vdd2/Vgg2は、第2、第3のGaAsMESFET PA102、PA103へ供給されるドレイン電圧/ゲート電圧であり、VC1は第1の単極2投スイッチSW1へ供給される制御電圧である。
【0280】
これらドレイン電圧/ゲート電圧供給部104、105(電源制御回路)と、第1の単極2投スイッチSW1の制御電圧供給部106(給電回路)の電源制御は連動するよう構成する。例えば出力選択がPout1の場合には、SW1はPout1を選択するように給電回路を制御する。
【0281】
上記ドレイン電圧/ゲート電圧供給部は、チョークとしてのチップインダクタとバイパスコンデンサ、あるいはスイッチ付き電力増幅器を実装するためのプリント基板上のマイクロストリップラインとバイパスコンデンサを用いて構成する。
【0282】
上記の本実施例のスイッチ付き電力増幅器103を含めて、実施例1の図7の情報通信機器のブロック図で示した高周波部120、中間周波数信号処理部121、ベースバンド部122が少なくとも1つ以上のプリント基板(誘電体基板など)に集積化され、これらを情報通信機器きょう体に実装することにより、従来例に比べて小型化と低コスト化が可能で周波数帯、送信出力電力、変調方式の異なる方式を共用できる高付加価値な通信機器が得られる。
【0283】
具体的な情報通信機器の構成として、実施例1の図8〜図10に示した構成が考えられる。スイッチ付き電力増幅器に、モード1、モード2に対して送信・受信の切り替え用スイッチを接続した場合と、ダイバーシティ送受信を行うためのスイッチを接続した場合であり、これらを用いることにより、モード1、モード2に対する送受信を行うことができる。
【0284】
さらに実施例1の図11のようにアンテナ部をモード1とモード2で共用し、スイッチ付き電力増幅器のモード1とモード2の出力の切り替え用スイッチと送信と受信の切り替え用スイッチを接続することによりモード1、モード2に対する送受信を行うことができる。
【0285】
なお、本実施例のスイッチ付き電力増幅器の具体的構成例としては、以下の構成が考えられる。(1)、(2)はコスト、チップ製造歩留りなどの観点から実用的である。(3)、(4)、(5)に関して、Wgが30mmである第3のGaAsMESFET PA103は、実動作時の熱的環境からセラミックパッケージに実装することが望ましく、他チップとの一体化には馴染まないけれども、以下に構成例として示しておく。また、実施例1で示したハイブリッドICの構成、実装でもよい。図33は、第6の実施例のMMIC化する部分を示す図であり、以下の(2)の説明に対応する。図33の点線はMMIC化する部分を示す。
【0286】
(1)GaAsMESFET、スイッチ、整合回路、その他の周辺回路をハイブリッドICで構成する。Wgが1mm、6mmのGaAsMESFETは樹脂モールドパッケージに封止し、Wgが30mmのGaAsMESFETはセラミックパッケージに実装する(セラミックキャリア上に実装され樹脂封止されている)。整合回路、負帰還回路はチップ部品のチップインダクタ、チップコンデンサ、チップ抵抗を用い、フィルタはチップ部品の誘電体フィルタ、あるいは表面弾性波フィルタ(SAWフィルタ)などを用いる。
【0287】
(2)第1のスイッチ付き電力増幅器SWPA1に、第1の出力整合回路PC101、あるいは第2の出力整合回路PC201を組み込み、樹脂モールドする。
【0288】
(3)第3のGaAsMESFET PA103と第1の単極2投スイッチSW1とをGaAs基板上に一体化(第2のスイッチ付き電力増幅器SWPA2)し、これに第1の出力整合回路PC201、あるいは第2の出力整合回路PC202を組み込み、樹脂モールドする。ただし、第3のGaAsMESFET PA103の負帰還回路101は一体化、外付けのどちらでもよい。
【0289】
(4)第1の電力増幅器PA1を構成する素子と、第1の出力整合回路PC101、あるいは第2の出力整合回路PC201の少なくとも1つをGaAs基板上に一体化し、樹脂モールドする。
【0290】
(5)第3のGaAsMESFET PA103と第1の単極2投スイッチSW1とをGaAs基板上に一体化(第2のスイッチ付き電力増幅器SWPA2)したチップと、第1、2のGaAsMESFET PA101、102と第1、第2の段間整合回路PA104、PA105をGaAs基板上に一体化(第1の一体型電力増幅器MMPA1)したチップを、マルチチップで構成する。実装はパッケージに入れるか、プリント基板上にベアチップで接続することなどをおこなう。
【0291】
上記(2)〜(5)の説明において、MMIC化されたチップは、樹脂モールドパッケージに封止するか、ベアチップ実装などの構成をとり、また、MMIC化された整合回路はGaAs基板上のマイクロストリップライン、スパイラルインダクタ、MIM(MetalInsulator Metal)キャパシタ、くし形キャパシタ、薄膜抵抗(NiCrなど、)などの組み合わせを有しており、MMIC化されない部品は個別に部品をプリント基板に実装する。
【0292】
なお、MMIC化には第1、第2の電力増幅器PA1、PA2それぞれのMMIC化に加えて、例えば第2の電力増幅器PA2において出力整合回路以外をMMIC化する場合のように、上記の各電力増幅器の構成素子(能動素子、受動回路など)を選択してMMIC化することも含まれる。
【0293】
なお、上記で電力増幅器の能動素子として用いたGaAsMESFET以外にも、エンハンスメント型のGaAsMESFETや他の半導体基板上に形成されたトランジスタ(MOSFET、HBT、HEMTなど)などの能動素子でもよい。
【0294】
また、現状、携帯機器の動作要求はNiCd電池3本、あるいはLiイオン電池1本に相当する3.0〜3.4Vの電圧を前提にしているため、本実施例のGaAsMESFETの動作電源電圧は3.5Vであるが、他のロジック用ICの動作電圧、あるいは情報通信機器の種類によってはこれ以外の電源電圧の設定も可能である。規定電圧で動作する最適な能動素子を使用すれば、3.5V以外の動作電圧でも本実施例は実現できる。
【0295】
さらに、本実施例ではGaAsMESFETのゲート電圧はDC−DCコンバータにより発生した負電圧を用いているが、単一正電源で動作する能動素子を選択すれば負電源が除去され、本実施例は実現できる。
【0296】
本実施例では受動回路として電力増幅器を構成する整合回路を取り上げて説明したが、整合の役割を果たす受動素子に限らず、電源供給ラインのチョークインダクタ、バイパスコンデンサ、バイアス印加用分割抵抗、フィルタ、高調波トラップ回路、アッテネータなどの受動回路も含まれる。例えば、電源供給ラインのチョークインダクタ、バイパスコンデンサ、バイアス印加用分割抵抗がMMIC化した電力増幅器に含まれてもよく、フィルタに関して高周波信号の送受信の周波数が異なる場合には出力整合回路の後に、所定の通過帯域幅のバンドパスフィルタを挿入してもよく、出力整合回路に高調波トラップ回路を挿入してもよい。
【0297】
本実施例では、単極2投スイッチを用いて、2種類の方式に対応した高周波信号を送信するが、上記の切り換え用のスイッチとしては、3投以上の多投端子を有する単極多投スイッチ、あるいは2極以上の多極端子を有する多極2投スイッチ、まとめると多極多投スイッチであっても、所望の電力増幅器、および情報通信機器は構成できる。
【0298】
本実施例の電力増幅器の仕様の他に、以下の仕様のものでも実現できる。
【0299】
【表15】


モード1のアナログのFM変調方式では、電力増幅器としては非線形、飽和電力増幅器でも使用可能であり、出力整合回路に対しては、規定の出力電力31dBmにおいて高い電力付加効率と、高い高調波成分抑圧比が得られるように整合がとられる。第2の出力整合回路PC201に対しては、規定の出力電力22dBmにおいて隣接チャンネル漏洩電力を抑制した上で、高い電力付加効率が得られるように整合がとられる。
【0300】
また、本実施例では出力電力が同じ仕様であるが、実施例1の図5および図6に示すような利得制御機能を付けることにより、下表のモード1、モード2のように、規定の出力電力が異なる場合でも有効である。
【0301】
【表16】


図34は、図31の電力増幅器において、第1の単極2投スイッチSW1の2投端子に接続された第1の受動回路PC1と第2の受動回路PC2のそれぞれの出力端子に、第2の単極2投スイッチSW2を接続した構成図である。この第2の単極2投スイッチSW2が、第1の単極2投スイッチSW1と同期して切り換わることにより2種類の高周波信号を送信することができる。すなわち、アンテナへの接続方法としては、図21の構成で、第1の単極2投スイッチの2投端子に接続された第1の受動回路PC1と第2の受動回路PC2の出力が、アンテナ共用器あるいはスイッチなどを経て、それぞれのアンテナに至る場合と、図34の構成でアンテナ共用器あるいはスイッチなどを経て、アンテナに至る場合などがある。上記の例ではアンテナへ至る経路に、フィルタ等の部品が入ってもよい。
【0302】
なお、上記の図34の構成は、第1の実施例〜第5の実施例においても同様に適用できる。
【0303】
上述の第1の実施例〜第6の実施例における構成を組み合わせることもできる。図39は、本発明による電力増幅器および通信機器のブロック図である。入力端子Inから入力された高周波信号は、スイッチSW1を介して、入力整合回路PC1およびPC2のうちのいずれかに選択的に入力される。PC1およびPC2の出力は、スイッチSW2によって選択されて、増幅器PA1に入力される。増幅器PA1の出力は、スイッチSW3を介して、出力整合回路PC3およびPC4のうちのいずれかに選択的に入力される。PC3およびPC4の出力は、スイッチSW4によって選択されてスイッチSW5の端子TXに与えられる。スイッチSW5は、送信時には、端子TXをアンテナANTに接続し、受信時には、端子RXをアンテナANTに接続する。受信時には、アンテナANTからの入力信号は、スイッチSW5を介してフロントエンド回路FEに与えられる。
【0304】
図39に示す通信機器において、例えばスイッチSW5、アンテナANTおよびフロントエンド回路FEを省略することによって、スイッチ付き電力増幅器を実現することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0305】
以上のように本発明によれば、単極多投スイッチによって、異なる周波数帯の信号を増幅する2つの増幅器を切り替える。その結果、異なる周波数帯の高周波信号を増幅できる電力増幅器および通信機器を提供することができる。
【0306】
また本発明によれば、単極多投スイッチによって、異なる出力電力の信号を増幅する2つの増幅器を切り替える。その結果、異なる出力電力の高周波信号を増幅できる電力増幅器および通信機器を提供することができる。
【0307】
さらに本発明によれば、上記2つの増幅器の代わりに、受動回路および増幅器を切り替える。あるいは、上述の構成を組み合わせることによって、異なる周波数および/または出力電力の高周波信号を増幅できる電力増幅器および通信機器を提供することができる。
【0308】
さらに本発明によれば、電力増幅器の出力端子に、送受信の切り替え用のスイッチを設けることによって、異なる周波数の高周波信号の受信ができる通信機器を提供することができる。
【符号の説明】
【0309】
PA1 第1の電力増幅器
PA2 第2の電力増幅器
SW1 第1の単極2投スイッチ
SW2 第2の単極2投スイッチ
PC1 第1の電力増幅器
PC2 第2の電力増幅器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単極端と2以上の多投端とを有し、第1周波数の信号と該第1周波数とは異なる第2周波数の信号を切り替えるスイッチと、
前記スイッチの単極端に出力側が接続され、前記第1周波数の信号と前記第2周波数の信号とを通す第1の電界効果トランジスタを備えた第1増幅器と、
前記スイッチの多投端の一つに接続された、前記第1周波数の信号を通しかつドレイン・ソース間電流が前記第1のトランジスタよりも大きい第2のトランジスタを備えた第2増幅器と、
前記スイッチの多投端のうち前記第2増幅器が接続されたものとは異なる一つに接続された、前記第2周波数の信号を通しかつドレイン・ソース間電流が前記第2のトランジスタよりも大きい第3のトランジスタを備えた第3増幅器と、電源制御回路とを有し、
前記第1の周波数の信号、および前記第2の周波数の信号はともにデジタル変調方式の信号であり、
前記第1の周波数の信号に応じ前記スイッチは前記第2増幅器に接続され、
前記第2の周波数の信号に応じ前記スイッチは前記第3増幅器に接続され、
前記電源制御回路は、前記整合回路から出力される前記第1周波数および第2周波数の信号が所定の出力となるよう前記第1増幅器の入力端子および出力端子に印加される電圧を制御するとともに、前記第2増幅器または前記第3増幅器がAB級動作をするように前記第2増幅器または前記第3増幅器の入力端子または出力端子に印加される電圧を制御することを特徴とする電力増幅器。
【請求項2】
前記第1の周波数の信号と前記第2の周波数の信号とは互いに異なるデジタル変調方式の信号であることを特徴とする請求項1記載の電力増幅器。
【請求項3】
前記第2周波数の信号は、前記第1周波数の信号よりも周波数が大きいことを特徴とする請求項2記載の電力増幅器。
【請求項4】
前記第2周波数の信号は、スペクトラム拡散(SS)方式の信号であることを特徴とする請求項3記載の電力増幅器。
【請求項5】
前記第2周波数の信号は、QPSK変調信号であることを特徴とする請求項3記載の電力増幅器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【公開番号】特開2011−142692(P2011−142692A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−92519(P2011−92519)
【出願日】平成23年4月18日(2011.4.18)
【分割の表示】特願2008−195527(P2008−195527)の分割
【原出願日】平成8年9月25日(1996.9.25)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】