説明

電動車両の制御装置

【課題】発進時のクラッチスリップ締結状態からクラッチロックアップ締結、その後のアップシフト開始までの制御時間の短縮を図ることができる電動車両の制御装置を提供すること。
【解決手段】発進時、駆動源と駆動輪(左右後輪)RL,RRとの間に介装されたクラッチ(第2クラッチ)CL2のスリップ締結状態を維持するWSC走行制御を実行する発進制御手段(図7)を備えた電動車両の制御装置において、発進制御手段は、クラッチCL2をスリップ締結からロックアップ締結へと移行させるWSCロックアップ制御部(ステップS102)と、クラッチCL2のロックアップ締結完了までの時間を予測するロックアップ完了時間予測部(ステップS103)と、予測されたクラッチCL2のロックアップ締結完了のタイミングよりも、変速機ATのアップシフトの応答時間T分早めたタイミングで変速機のアップシフト制御を開始する繰上アップシフト制御部(ステップS108,109)と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発進時、駆動源と駆動輪との間に介装されたクラッチのスリップ締結状態を維持し、クラッチトルク容量をコントロールして走行する電動車両の制御装置。
【背景技術】
【0002】
従来、モータを有する駆動源の下流側に配置された変速機と、駆動源と駆動輪との間に介装されたクラッチと、を備え、特にバッテリSOCが低いときやエンジン水温が低いときに上記クラッチをスリップ締結させた状態で発進するWSC走行制御を実行する電動車両の制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-238836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、走行状況によっては、車両が発進した直後、時間をあけずにアップシフト(例えば1速段から2速段へのシフトアップ)されることがある。この場合、上記従来の電動車両の制御装置では、クラッチをスリップ締結させて発進した後に、このクラッチをロックアップ締結させるWSCロックアップ制御を行って1速段を実現し、その直後、1速段から2速段へのシフトアップ制御を行う。
すなわち、従来の電動車両の制御装置では、WSCロックアップ制御とアップシフト制御とが、一方の制御を完了させた後に他方の制御を開始するいわゆる完全排他の関係になっており、一連の制御終了までに時間がかかるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、発進時におけるクラッチのスリップ締結状態からロックアップ締結、その後のアップシフト開始までの制御時間の短縮を図ることができる電動車両の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明では、モータを有する駆動源の下流側に配置され、摩擦締結要素の掛け替えにより複数の変速段を達成する変速機と、発進時、駆動源と駆動輪との間に介装されたクラッチのスリップ締結状態を維持してクラッチトルク容量をコントロールするWSC走行制御を実行する発進制御手段と、を備えた電動車両の制御装置において、発進制御手段は、WSCロックアップ制御部と、ロックアップ完了時間予測部と、繰上アップシフト制御部と、を有する。そして、WSCロックアップ制御部は、クラッチをスリップ締結からロックアップ締結へと移行させるクラッチ締結制御を実行する。また、ロックアップ完了時間予測部は、クラッチのロックアップ締結完了までの時間を予測する。また、繰上アップシフト制御部は、予測されたクラッチのロックアップ締結完了のタイミングよりも、変速機のアップシフトの応答時間分早めたタイミングで変速機のアップシフト制御を開始する。
【発明の効果】
【0007】
よって、本発明の電動車両の制御装置にあっては、車両発進時にスリップ締結されるクラッチのロックアップ締結の完了を待たずにアップシフト制御を開始することができ、発進時におけるクラッチのスリップ締結状態からロックアップ締結、その後のアップシフト開始までの制御時間の短縮を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例1の電動車両の制御装置が適用された後輪駆動によるFRハイブリッド車両(電動車両の一例)を示す全体システム図である。
【図2】実施例1の電動車両の制御装置が適用されたFRハイブリッド車両の統合コントローラにて実行される演算処理を示す制御ブロック図である。
【図3】実施例1の電動車両の制御装置が適用されたFRハイブリッド車両の統合コントローラでのモード選択処理を行う際に用いられるEV-HEV選択マップを示す図である。
【図4】実施例1の電動車両の制御装置が適用されたFRハイブリッド車両の統合コントローラでバッテリ充電制御を行う際に用いられる目標充放電量マップを示す図である。
【図5】実施例1の電動車両の制御装置が適用されたFRハイブリッド車両に搭載された自動変速機の一例を示すスケルトン図である。
【図6】実施例1の電動車両の制御装置が適用されたFRハイブリッド車両に搭載された自動変速機での変速段ごとの各摩擦締結要素の締結状態を示す締結作動表である。
【図7】実施例1の統合コントローラにて実行される発進制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】WSCモードから1−2速アップシフトする際の通常WSCロックアップ制御作用を説明するアクセル開度・L/Uモード・1-2UPフラグ・AT出力回転数・WSC,L/U指令油圧・1-2UP指令油圧の各特性を示すタイムチャートである。
【図9】実施例1の統合コントローラにて実行される発進制御処理を行う際に用いられるWSCロックアップ開始マップを示す図である。
【図10】実施例1の統合コントローラにて実行される発進制御処理の際の第2クラッチ入力回転数と第2クラッチ出力回転数との関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の電動車両の制御装置を実施するための形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
【実施例1】
【0010】
まず、構成を説明する。
図1は、実施例1の制御装置が適用された後輪駆動によるFRハイブリッド車両(電動車両の一例)を示す全体システム図である。
【0011】
実施例1におけるFRハイブリッド車両の駆動系は、図1に示すように、エンジンEngと、フライホイールFWと、第1クラッチCL1と、モータ/ジェネレータMGと、第2クラッチCL2と、自動変速機ATと、プロペラシャフトPSと、ディファレンシャルDFと、左ドライブシャフトDSLと、右ドライブシャフトDSRと、左後輪RLと、右後輪RRと、を有する。なお、FLは左前輪、FRは右前輪である。
【0012】
前記エンジンEngは、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンであり、エンジンコントローラ1からのエンジン制御指令に基づいて、エンジン始動制御やエンジン停止制御やスロットルバルブのバルブ開度制御やフューエルカット制御等が行われる。なお、エンジン出力軸には、フライホイールFWが設けられている。
【0013】
前記第1クラッチCL1は、前記エンジンEngとモータ/ジェネレータMGの間に介装されたクラッチであり、第1クラッチコントローラ5からの第1クラッチ制御指令に基づいて、第1クラッチ油圧ユニット6により作り出された第1クラッチ制御油圧により、締結・スリップ締結(半クラッチ状態)・開放が制御される。この第1クラッチCL1としては、例えば、ダイアフラムスプリングによる付勢力にて完全締結を保ち、ピストン14aを有する油圧アクチュエータ14を用いたストローク制御により、スリップ締結から完全開放までが制御されるノーマルクローズの乾式単板クラッチが用いられる。
【0014】
前記モータ/ジェネレータMGは、ロータに永久磁石を埋設しステータにステータコイルが巻き付けられた同期型モータ/ジェネレータであり、モータコントローラ2からの制御指令に基づいて、インバータ3により作り出された三相交流を印加することにより制御される。このモータ/ジェネレータMGは、バッテリ4からの電力の供給を受けて回転駆動する電動機として動作することもできるし(以下、この動作状態を「力行」と呼ぶ)、ロータがエンジンEngや駆動輪から回転エネルギーを受ける場合には、ステータコイルの両端に起電力を生じさせる発電機として機能し、バッテリ4を充電することもできる(以下、この動作状態を「回生」と呼ぶ)。なお、このモータ/ジェネレータMGのロータは、ダンパーを介して自動変速機ATの変速機入力軸に連結されている。
【0015】
前記第2クラッチCL2は、前記モータ/ジェネレータMGと左右後輪RL,RRの間に介装されたクラッチであり、ATコントローラ7からの第2クラッチ制御指令に基づいて、第2クラッチ油圧ユニット8により作り出された制御油圧により、締結・スリップ締結・開放が制御される。この第2クラッチCL2としては、例えば、比例ソレノイドで油流量および油圧を連続的に制御できるノーマルオープンの湿式多板クラッチや湿式多板ブレーキが用いられる。なお、第1クラッチ油圧ユニット6と第2クラッチ油圧ユニット8は、自動変速機ATに付設されるAT油圧コントロールバルブユニットCVUに内蔵している。
【0016】
前記自動変速機ATは、例えば、前進7速/後退1速等の有段階の変速段を車速やアクセル開度等に応じて自動的に切り換える有段変速機であり、前記第2クラッチCL2は、専用クラッチとして新たに追加したものではなく、自動変速機ATの各変速段にて締結される複数の摩擦締結要素のうち、トルク伝達経路に配置される最適なクラッチやブレーキを選択している。そして、前記自動変速機ATの出力軸は、プロペラシャフトPS、ディファレンシャルDF、左ドライブシャフトDSL、右ドライブシャフトDSRを介して左右後輪RL,RRに連結されている。
【0017】
実施例1のハイブリッド駆動系は、電気車両走行モード(以下、「EVモード」という。)と、ハイブリッド車走行モード(以下、「HEVモード」という。)と、駆動トルクコントロール走行モード(以下、「WSCモード」という。)等の走行モードを有する。
【0018】
前記「EVモード」は、第1クラッチCL1を開放状態とし、モータ/ジェネレータMGの動力のみで走行するモードである。前記「HEVモード」は、第1クラッチCL1を締結状態とし、モータシスト走行モード・走行発電モード・エンジン走行モードの何れかにより走行するモードである。前記「WSCモード」は、「HEVモード」からのP,N→Dセレクト発進時、あるいは、「EVモード」や「HEVモード」からのDレンジ発進時等において、モータ/ジェネレータMGの回転数制御により第2クラッチCL2のスリップ締結状態を維持し、第2クラッチCL2を経過するクラッチ伝達トルクが、車両状態やドライバー操作に応じて決まる要求駆動トルクとなるようにクラッチトルク容量をコントロールしながら発進するモードである。なお、「WSC」とは「Wet Start clutch」の略である。
【0019】
次に、ハイブリッド車両の制御系を説明する。
実施例1におけるFRハイブリッド車両の制御系は、図1に示すように、エンジンコントローラ1と、モータコントローラ2と、インバータ3と、バッテリ4と、第1クラッチコントローラ5と、第1クラッチ油圧ユニット6と、ATコントローラ7と、第2クラッチ油圧ユニット8と、ブレーキコントローラ9と、統合コントローラ10と、を有して構成されている。なお、エンジンコントローラ1と、モータコントローラ2と、第1クラッチコントローラ5と、ATコントローラ7と、ブレーキコントローラ9と、統合コントローラ10とは、情報交換が互いに可能なCAN通信線11を介して接続されている。
【0020】
前記エンジンコントローラ1は、エンジン回転数センサ12からのエンジン回転数情報と、統合コントローラ10からの目標エンジントルク指令と、他の必要情報を入力する。そして、エンジン動作点(Ne,Te)を制御する指令を、エンジンEngのスロットルバルブアクチュエータ等へ出力する。
【0021】
前記モータコントローラ2は、モータ/ジェネレータMGのロータ回転位置を検出するレゾルバ13からの情報と、統合コントローラ10からの目標MGトルク指令および目標MG回転数指令と、他の必要情報を入力する。そして、モータ/ジェネレータMGのモータ動作点(Nm,Tm)を制御する指令をインバータ3へ出力する。なお、このモータコントローラ2では、バッテリ4の充電容量をあらわすバッテリSOCを監視していて、このバッテリSOC情報は、モータ/ジェネレータMGの制御情報に用いられると共に、CAN通信線11を介して統合コントローラ10へ供給される。
【0022】
前記第1クラッチコントローラ5は、油圧アクチュエータ14のピストン14aのストローク位置を検出する第1クラッチストロークセンサ15からのセンサ情報と、統合コントローラ10からの目標CL1トルク指令と、他の必要情報を入力する。そして、第1クラッチCL1の締結・スリップ締結・開放を制御する指令をAT油圧コントロールバルブユニットCVU内の第1クラッチ油圧ユニット6に出力する。
【0023】
前記ATコントローラ7は、アクセル開度センサ16と、車速センサ17と、他のセンサ類18(変速機入力回転数センサ、インヒビタースイッチ等)からの情報を入力する。そして、Dレンジを選択しての走行時、アクセル開度APOと車速VSPにより決まる運転点がシフトマップ上で存在する位置により最適な変速段を検索し、検索された変速段を得る制御指令をAT油圧コントロールバルブユニットCVUに出力する。なお、シフトマップとは、アクセル開度と車速に応じてアップシフト線とダウンシフト線を書き込んだマップをいう。上記自動変速制御に加えて、統合コントローラ10から目標CL2トルク指令を入力した場合、第2クラッチCL2のスリップ締結を制御する指令をAT油圧コントロールバルブユニットCVU内の第2クラッチ油圧ユニット8に出力する第2クラッチ制御を行う。また、統合コントローラ10から変速制御変更指令が出力された場合、通常に変速制御に代え、変速制御変更指令にしたがった変速制御を行う。
【0024】
前記ブレーキコントローラ9は、4輪の各車輪速を検出する車輪速センサ19と、ブレーキストロークセンサ20からのセンサ情報と、統合コントローラ10からの回生協調制御指令と、他の必要情報を入力する。そして、例えば、ブレーキ踏み込み制動時、ブレーキストロークBSから求められる要求制動力に対し回生制動力だけでは不足する場合、その不足分を機械制動力(液圧制動力やモータ制動力)で補うように、回生協調ブレーキ制御を行う。
【0025】
前記統合コントローラ10は、車両全体の消費エネルギーを管理し、最高効率で車両を走らせるための機能を担うもので、モータ回転数Nmを検出するモータ回転数センサ21、第2クラッチCL2の入力回転数NCL2inを検出する第2クラッチ入力回転数センサ22、第2クラッチCL2の出力回転数NCL2outを検出する第2クラッチ出力回転数センサ23や他のセンサ・スイッチ類24からの必要情報およびCAN通信線11を介して情報を入力する。そして、エンジンコントローラ1へ目標エンジントルク指令、モータコントローラ2へ目標MGトルク指令および目標MG回転数指令、第1クラッチコントローラ5へ目標CL1トルク指令、ATコントローラ7へ目標CL2トルク指令、ブレーキコントローラ9へ回生協調制御指令を出力する。
【0026】
図2は、実施例1の制御装置が適用されたFRハイブリッド車両の統合コントローラ10にて実行される演算処理を示す制御ブロック図である。図3は、実施例1の制御装置が適用されたFRハイブリッド車両の統合コントローラ10でのモード選択処理を行う際に用いられるEV-HEV選択マップを示す図である。図4は、実施例1の制御装置が適用されたFRハイブリッド車両の統合コントローラ10でバッテリ充電制御を行う際に用いられる目標充放電量マップを示す図である。以下、図2〜図4に基づき、実施例1の統合コントローラ10にて実行される演算処理を説明する。
【0027】
前記統合コントローラ10は、図2に示すように、目標駆動力演算部100と、モード選択部200と、目標充放電演算部300と、動作点指令部400とを有する。
【0028】
前記目標駆動力演算部100では、目標駆動力マップを用いて、アクセル開度APOと車速VSPとから、目標駆動力tFoOを演算する。
【0029】
前記モード選択部200では、図3に示すEV-HEV選択マップを用いて、アクセル開度APOと車速VSPとから、「EVモード」または「HEVモード」を目標走行モードとして選択する。但し、バッテリSOCが所定値以下であれば、強制的に「HEVモード」を目標走行モードとする。また、「HEVモード」からのP,N→Dセレクト発進時等においては、車速VSPが第1設定車速VSP1になるまで「WSCモード」を目標走行モードとして選択する。
【0030】
前記目標充放電演算部300では、図4に示す目標充放電量マップを用いて、バッテリSOCから目標充放電電力tPを演算する。
【0031】
前記動作点指令部400では、アクセル開度APOと、目標駆動力tFoOと、目標走行モードと、車速VSPと、目標充放電電力tP等の入力情報に基づき、動作点到達目標として、目標エンジントルクと目標MGトルクと目標MG回転数と目標CL1トルクと目標CL2トルクを演算する。そして、目標エンジントルク指令と目標MGトルク指令と目標MG回転数指令と目標CL1トルク指令と目標CL2トルク指令を、CAN通信線11を介して各コントローラ1,2,5,7に出力する。
【0032】
図5は、実施例1の制御装置が適用されたFRハイブリッド車両に搭載された自動変速機ATの一例を示すスケルトン図である。
【0033】
前記自動変速機ATは、前進7速後退1速の有段式自動変速機であり、エンジンEngとモータジェネレータMGのうち、少なくとも一方からの駆動力が変速機入力軸Inputから入力され、4つの遊星ギアと7つの摩擦締結要素とによって回転速度が変速されて変速機出力軸Outputから出力される。次に、変速機入力軸Inputと変速機出力軸Outputとの間の変速ギア機構について説明する。
【0034】
変速機入力軸Input側から変速機出力軸Output側までの軸上に、順に第1遊星ギアG1と第2遊星ギアG2による第1遊星ギアセットGS1及び第3遊星ギアG3と第4遊星ギアG4による第2遊星ギアセットGS2が配置されている。また、摩擦締結要素として第1クラッチC1、第2クラッチC2、第3クラッチC3及び第1ブレーキB1、第2ブレーキB2、第3ブレーキB3、第4ブレーキB4が配置されている。また、第1ワンウェイクラッチF1と第2ワンウェイクラッチF2が配置されている。
【0035】
前記第1遊星ギアG1は、第1サンギアS1と、第1リングギアR1と、両ギアS1,R1に噛み合う第1ピニオンP1を支持する第1キャリアPC1と、を有するシングルピニオン型遊星ギアである。
【0036】
前記第2遊星ギアG2は、第2サンギアS2と、第2リングギアR2と、両ギアS2,R2に噛み合う第2ピニオンP2を支持する第2キャリアPC2と、を有するシングルピニオン型遊星ギアである。
【0037】
前記第3遊星ギアG3は、第3サンギアS3と、第3リングギアR3と、両ギアS3,R3に噛み合う第3ピニオンP3を支持する第3キャリアPC3と、を有するシングルピニオン型遊星ギアである。
【0038】
前記第4遊星ギアG4は、第4サンギアS4と、第4リングギアR4と、両ギアS4,R4に噛み合う第4ピニオンP4を支持する第4キャリアPC4と、を有するシングルピニオン型遊星ギアである。
【0039】
前記変速機入力軸Inputは、第2リングギアR2に連結され、エンジンEngとモータジェネレータMGの少なくとも一方からの回転駆動力を入力する。前記変速機出力軸Outputは、第3キャリアPC3に連結され、出力回転駆動力を、ファイナルギア等を介して駆動輪(左右後輪RL,RR)に伝達する。
【0040】
前記第1リングギアR1と第2キャリアPC2と第4リングギアR4とは、第1連結メンバM1により一体的に連結される。前記第3リングギアR3と第4キャリアPC4とは、第2連結メンバM2により一体的に連結される。前記第1サンギアS1と第2サンギアS2とは、第3連結メンバM3により一体的に連結される。
【0041】
前記第1遊星ギアセットGS1は、第1遊星ギアG1と第2遊星ギアG2とを、第1連結メンバM1と第3連結メンバM3とによって連結することで、4つの回転要素を有して構成される。また、第2遊星ギアセットGS2は、第3遊星ギアG3と第4遊星ギアG4とを、第2連結メンバM2によって連結することで、5つの回転要素を有して構成される。
【0042】
前記第1遊星ギアセットGS1では、トルクが変速機入力軸Inputから第2リングギアR2に入力され、入力されたトルクは第1連結メンバM1を介して第2遊星ギアセットGS2に出力される。前記第2遊星ギアセットGS2では、トルクが変速機入力軸Inputから直接第2連結メンバM2に入力されると共に、第1連結メンバM1を介して第4リングギアR4に入力され、入力されたトルクは第3キャリアPC3から変速機出力軸Outputに出力される。
【0043】
前記第1クラッチC1(インプットクラッチI/C)は、変速機入力軸Inputと第2連結メンバM2とを選択的に断接するクラッチである。前記第2クラッチC2(ダイレクトクラッチD/C)は、第4サンギアS4と第4キャリアPC4とを選択的に断接するクラッチである。前記第3クラッチC3(H&LRクラッチH&LR/C)は、第3サンギアS3と第4サンギアS4とを選択的に断接するクラッチである。
【0044】
また、前記第2ワンウェイクラッチF2は、第3サンギアS3と第4サンギアS4の間に配置されている。これにより、第3クラッチC3が開放され、第3サンギアS3よりも第4サンギアS4の回転速度が大きい時、第3サンギアS3と第4サンギアS4とは独立した回転速度を発生する。よって、第3遊星ギアG3と第4遊星ギアG4が第2連結メンバM2を介して接続された構成となり、それぞれの遊星ギアが独立したギア比を達成する。
【0045】
前記第1ブレーキB1(フロントブレーキFr/B)は、第1キャリアPC1の回転をトランスミッションケースCaseに対し選択的に停止させるブレーキである。また、第1ワンウェイクラッチF1は、第1ブレーキB1と並列に配置されている。前記第2ブレーキB2(ローブレーキLOW/B)は、第3サンギアS3の回転をトランスミッションケースCaseに対し選択的に停止させるブレーキである。前記第3ブレーキB3(2346ブレーキ2346/B)は、第1サンギアS1及び第2サンギアS2を連結する第3連結メンバM3の回転をトランスミッションケースCaseに対し選択的に停止させるブレーキである。前記第4ブレーキB4(リバースブレーキR/B)は、第4キャリアPC3の回転をトランスミッションケースCaseに対し選択的に停止させるブレーキである。
【0046】
図6は、実施例1の制御装置が適用されたFRハイブリッド車両に搭載された自動変速機ATでの変速段ごとの各摩擦締結要素の締結状態を示す締結作動表である。なお、図6において、○印は当該摩擦締結要素が締結状態であることを示し、(○)印は少なくともエンジンブレーキ作動時に当該摩擦締結要素が締結状態であることを示し、無印は当該摩擦締結要素が開放状態であることを示す。
【0047】
上記のように構成された変速ギア機構に設けられた各摩擦締結要素のうち、締結していた1つの摩擦締結要素を開放し、開放していた1つの摩擦締結要素を締結するという掛け替え変速を行うことで、下記のように、前進7速で後退1速の変速段を実現することができる。
【0048】
すなわち、「1速段」では、第2ブレーキB2のみが締結状態となり、これにより第1ワンウェイクラッチF1及び第2ワンウェイクラッチF2が係合する。「2速段」では、第2ブレーキB2及び第3ブレーキB3が締結状態となり、第2ワンウェイクラッチF2が係合する。「3速段」では、第2ブレーキB2、第3ブレーキB3及び第2クラッチC2が締結状態となり、第1ワンウェイクラッチF1及び第2ワンウェイクラッチF2はいずれも係合しない。「4速段」では、第3ブレーキB3、第2クラッチC2及び第3クラッチC3が締結状態となる。「5速段」では、第1クラッチC1、第2クラッチC2及び第3クラッチC3が締結状態となる。「6速段」では、第3ブレーキB3、第1クラッチC1及び第3クラッチC3が締結状態となる。「7速段」では、第1ブレーキB1、第1クラッチC1及び第3クラッチC3が締結状態となり、第1ワンウェイクラッチF1が係合する。「後退速段」では、第4ブレーキB4、第1ブレーキB1及び第3クラッチC3が締結状態となる。
【0049】
ここで、図1に示す第2クラッチCL2としては、各変速段にて締結される摩擦締結要素を選択可能であるが、例えば、「1速段〜3速段」で第2ブレーキB2、「4速段」で第2クラッチC2、「5速段」で第3クラッチC3、「6速段と7速段」で第1クラッチC1が用いられる。
【0050】
図7は、実施例1の統合コントローラにて実行される発進制御処理の流れを示すフローチャートである(発進制御手段)。以下、図7に示す各ステップについて説明する。
【0051】
ステップS101では、WSCロックアップ(L/U)指令が出力されたか否かを判断し、YES(L/U指令あり)の場合はステップS102へ進み、NO(L/U指令なし)の場合はステップS101を繰り返す。なお、WSCロックアップ指令は、走行モードがWSCモードの時、図9に示すWSCロックアップ開始マップを用いて、車速VSPが第2設定車速VSP2以上になれば出力される。ここで、WSCモード時にスリップ締結される第2クラッチCL2は、締結されることで1速段を実現する第2ブレーキB2である。
【0052】
ステップS102では、ステップS101でのL/U指令ありとの判断に続き、WSCロックアップ(L/U)制御を開始し、ステップS103へ進む。このWSCロックアップ制御では、WSCモードにおいて維持された第2クラッチCL2のスリップ締結状態をロックアップ締結へと移行させ、第2クラッチCL2を通過するクラッチ伝達トルクがモータ/ジェネレータMGの出力トルクになるように第2クラッチCL2のトルク容量を最大にする。このとき、第2クラッチCL2トルク容量をステップ的に上昇させる指示を出すと共に、第2クラッチCL2の油圧をランプで上昇させる。なお、このステップS102が、第2クラッチCL2をスリップ締結からロックアップ締結させるWSCロックアップ制御部となる。
【0053】
ステップS103では、ステップS102でのWSCロックアップ制御開始に続き、WSCロックアップ完了時間の予測を行い、ステップS104へ進む。このWSCロックアップ完了時間の予測は、少なくとも第2クラッチCL2の入力回転数NCL2inと第2クラッチCL2のクラッチ出力回転数NCL2outとの差である第2クラッチ差回転数ΔNに基づいて実行される。ここでは、WSCロックアップ(L/U)指令が出力されてからのアクセル開度APO又は駆動力(モータ/ジェネレータMG回転数Nm)と第2クラッチ差回転数ΔNとによるテーブルから算出される。また、第2クラッチCL2のロックアップ締結完了のタイミングは、上記第2クラッチ差回転数ΔNがゼロになったタイミングとする。なお、このステップS103が、第2クラッチCL2のロックアップ締結完了までの時間を予測するロックアップ完了時間予測部となる。
【0054】
ステップS104では、ステップS103でのWSCロックアップ完了時間の予測に続き、強制ロックアップ(L/U)が必要であるか否かの判断を行い、YES(強制L/U必要)の場合にはステップS105へ進み、NO(強制L/U不要)の場合にはステップS107へ進む。なお、強制ロックアップ(L/U)が必要であるか否かの判断は、図9に示すWSCロックアップ開始マップを用いて、車速VSPが第3設定車速VSP3以上になってもWSCロックアップが完了していなければ必要と判断される。
【0055】
ステップS105では、ステップS104での強制L/U必要との判断に続き、完全排他ロックアップ(L/U)制御を行い、ステップS106へ進む。完全排他ロックアップ制御とは、アップシフト指令の有無に拘らず第2クラッチCL2のロックアップ締結を行って1速段を実現することである。
【0056】
ステップS106では、ステップS105での完全排他L/U制御に続き、WSCロックアップが完了したか否かを判断し、YES(L/U完了)の場合にはステップS109へ進み、NO(L/U未完了)の場合にはステップS105を繰り返す。ここで、WSCロックアップの完了は、第2クラッチ差回転数ΔNがゼロになったか否かにより判断する。なお、このステップS105及びステップS106が、第2クラッチCL2を強制的にロックアップ締結させる強制ロックアップ判断がなされた場合に、この第2クラッチCL2がロックアップ締結してから自動変速機ATのアップシフト制御を開始する完全排他制御部となる。
【0057】
ステップS107では、ステップS104での強制L/U不要との判断に続き、アップシフト指令が出力されたか否かを判断し、YES(アップシフト指令出力)の場合にはステップS108へ進み、NO(アップシフト指令未出力)の場合にはステップS104を繰り返す。なお、アップシフト指令は、アクセル開度APOと車速VSPにより決まるシフトマップ上での運転点が、アップシフト線を横切ったら出力される。
【0058】
ステップS108では、ステップS107でのアップシフト指令出力との判断に続き、アップシフト応答時間Tがロックアップ完了までの残り時間Δt未満であるか否かを判断し、YES(応答時間Tが残り時間Δt未満)の場合にはステップS109へ進み、NO(応答時間Tが残り時間Δt以上)の場合にはステップS104へ戻る。ここで、アップシフト応答時間Tとは、2速段を実現する摩擦締結要素の締結油圧を締結開始直前の状態にするまでの時間、いわゆるプリチャージ時間である。また、ロックアップ完了までの残り時間Δtとは、ステップS103において予測したWSCロックアップ完了時間と現在の時間との差である。
【0059】
ステップS109では、ステップS106でのWSCロックアップの完了との判断又はステップS108での応答時間Tが残り時間Δt以上との判断に続き、アップシフトフラグを立ててからアップシフト制御を開始し、エンドへ進む。なお、このステップS108及びステップS109が、第2クラッチCL2のロックアップ締結完了のタイミングよりも、自動変速機ATのアップシフト応答時間T分早めたタイミングでアップシフト制御を開始する繰上アップシフト制御部となる。
【0060】
次に、作用を説明する。
実施例1の電動車両の制御装置における作用を、「通常WSCロックアップ制御作用」、「強制WSCロックアップ制御作用」に分けて説明する。
【0061】
[通常WSCロックアップ制御作用]
図8は、WSCモードから1−2速アップシフトする際の通常WSCロックアップ制御作用を説明するアクセル開度・CL2トルク容量・1-2UPフラグ・AT出力回転数・WSC,L/U指令油圧・1-2UP指令油圧の各特性を示すタイムチャートである。
【0062】
車両発進がなされてWSCモードにて走行中、時刻t1にWSCロックアップ指令が出力されると、図7に示すフローチャートにおいて、ステップS101→ステップS102へと進み、WSCロックアップ制御を開始する。これにより、第2クラッチCL2のトルク容量をステップで上昇させる指示が出ると共に、第2クラッチCL2の指令油圧であるWSC,L/U指令油圧がランプで上昇する。これにより、AT出力回転数と1速目標回転数との差回転数が次第に小さくなる。なお、1速目標回転数とは、1速段を実現した場合のAT出力回転数の目標値である。また、このときアクセル開度は一定である。
【0063】
そして、ステップS102→ステップS103へと進み、WSCロックアップ完了時間の予測を行う。ここで、WSCロックアップ制御は、WSCモード時に第2クラッチCL2をスリップ締結状態に維持することで生じている第2クラッチ差回転数ΔNを次第に小さくする制御であり、図10において時刻taに開始されたWSCロックアップ制御は時刻tbに完了する。このとき、時刻taから時刻tb間の長さは、第2クラッチ入力回転数NCL2inに対する第2クラッチ出力回転数NCL2outの傾き、つまり少なくとも第2クラッチ差回転数ΔNによって決まるが、ここでは、アクセル開度APO又は駆動力(モータ/ジェネレータMGの回転数Nm)と、第2クラッチ差回転数ΔNとによるテーブルから算出される。すなわち、WSCロックアップ完了時間の予測は、少なくとも第2クラッチCL2の差回転数ΔNに基づいて行われ、ここではアクセル開度APO又は駆動力(モータ/ジェネレータMGの回転数Nm)と、第2クラッチCL2の差回転数ΔNとをパラメータとして実行される。これにより、より正確な時間予測を行うことができる。
【0064】
そして、第2クラッチCL2の差回転数ΔNが次第に小さくなると共に車速VSPが上がり、時刻t2においてアップシフト指令が出力されると、図7に示すフローチャートにおいて、ステップS104→ステップS107→ステップS108へと進み、ロックアップ締結完了までの残り時間Δtとアップシフトの応答時間Tとが比較される。
【0065】
そして、時刻t3においてロックアップ締結完了までの残り時間Δtがアップシフトの応答時間T未満になる、すなわちステップS108におけるYES条件が成立すると、アップシフトフラグ(1-2UPフラグ)を立てると共に、2速段を実現する自動変速機ATの摩擦締結要素の油圧(1-2UP指令油圧)をプリチャージ圧にする。このとき、第2クラッチCL2はロックアップ締結しておらず、AT出力回転数と1速目標回転数との間には差回転が生じている。
【0066】
その後、時刻t4において、第2クラッチCL2の差回転数ΔNがゼロになり、すなわちAT出力回転数と1速目標回転数とが一致すると、第2クラッチCL2トルク容量が最大になると共に、第2クラッチCL2の油圧であるWSC,L/U指令油圧がライン圧となる。このとき、2速段を実現する自動変速機ATの摩擦締結要素の油圧(1-2UP指令油圧)はプリチャージ圧に達しているため、無駄時間なくトルクフェーズに移行することができる。
【0067】
すなわち、第2クラッチCL2のロックアップ締結完了のタイミング(時刻t4)よりも、自動変速機ATのアップシフト応答時間T分早めたタイミング(時刻t3)において自動変速機ATのアップシフト制御を開始することにより、WSCロックアップ制御とアップシフト制御とが完全排他の関係にならず、無駄な時間を省いて第2クラッチCL2のスリップ締結状態からロックアップ締結、その後のアップシフト開始までの制御時間の短縮を図ることができる。
【0068】
[強制WSCロックアップ制御作用]
車両発進がなされてWSCモードにて走行中、WSCロックアップ指令が出力されると、図7に示すフローチャートにおいて、ステップS101→ステップS102へと進み、WSCロックアップ制御を開始した後にステップS103→ステップS104へと進み、WSCロックアップ完了時間の予測が実行されると共に、強制ロックアップ(L/U)の要否が判断される。
【0069】
そして、図9に示すWSCロックアップ開始マップを用いて、車速VSPが第3設定車速VSP3以上になってもWSCロックアップが完了していなければ強制ロックアップが必要と判断され、ステップS105へと進んで完全排他ロックアップ(L/U)制御が行われる。すなわち、アップシフト指令の有無に拘らず第2クラッチCL2のロックアップ締結を行って1速段が実現される。
【0070】
そして、ステップS106へ進みWSCロックアップが完了したと判断できれば、つまり第2クラッチ差回転数ΔNがゼロになったらステップS109へ進み、アップシフト制御が実行される。
【0071】
このように、第2クラッチCL2を強制的にロックアップ締結させる強制ロックアップ判断がなされた場合には、第2クラッチCL2がロックアップ締結した後に自動変速機ATのアップシフト制御を開始する。つまり、車速VSPがWSCロックアップ開始マップにおける第3設定車速VSP3以上になった場合には、この時点から所定時間後にアップシフト制御が開始されることとなる。
【0072】
これにより、強制ロックアップ判断がなされた場合にはWSCロックアップ制御とシフトアップ制御とが完全排他の関係になり、WSCロックアップ制御の完了時間が予測時間を超えてしまったとしても、WSCロックアップ制御とシフトアップ制御との干渉を防止することができる。
【0073】
次に、効果を説明する。
実施例1の電動車両の制御装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0074】
(1) モータ(モータ/ジェネレータ)MGを有する駆動源の下流側に配置され、摩擦締結要素の掛け替えにより複数の変速段を達成する変速機(自動変速機)ATと、発進時、前記駆動源と駆動輪(左右後輪)RL,RRとの間に介装されたクラッチ(第2クラッチ)CL2のスリップ締結状態を維持して該クラッチCL2のクラッチトルク容量をコントロールするWSC走行制御を実行する発進制御手段(図7)と、を備えた電動車両の制御装置において、前記発進制御手段は、前記クラッチCL2をスリップ締結からロックアップ締結へと移行させるWSCロックアップ制御を実行するWSCロックアップ制御部(ステップS102)と、前記クラッチCL2のロックアップ締結完了までの時間を予測するロックアップ完了時間予測部(ステップS103)と、前記ロックアップ完了時間予測部(ステップS103)により予測された前記クラッチCL2のロックアップ締結完了のタイミングよりも、前記変速機ATのアップシフト応答時間T分早めたタイミングで前記変速機ATのアップシフト制御を開始する繰上アップシフト制御部(ステップS108,109)と、を有する構成とした。このため、発進時におけるクラッチCL2のスリップ締結状態からロックアップ締結、その後のアップシフト開始までの制御時間の短縮を図ることができる。
【0075】
(2) 前記ロックアップ完了予測部(ステップS103)は、少なくとも前記クラッチCL2の差回転数ΔNに基づいて該クラッチのロックアップ締結完了までの時間を予測する構成とした。このため、予測時間を正確に把握することができる。
【0076】
(3) 前記ロックアップ完了予測部(ステップS103)は、アクセル開度APO又は駆動力(モータ/ジェネレータMG回転数Nm)と、前記クラッチCL2の差回転数ΔNとをパラメータとしてロックアップ締結完了までの時間を予測する構成とした。このため、予測時間を正確且つ容易に算出することができる。
【0077】
(4) 前記発進制御手段(図7)は、前記クラッチCL2を強制的にロックアップ締結させる強制ロックアップ判断がされた場合には、前記クラッチCL2がロックアップ締結した後に前記変速機ATのアップシフト制御を開始する完全排他制御部(ステップS105,106)を有する構成とした。このため、クラッチCL2のWSCロックアップ制御時間が予測以上に長くなった場合であっても、WSCロックアップ制御とシフトアップ制御との干渉を防止することができる。
【0078】
以上、本発明の電動車両の制御装置を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0079】
実施例1では、ロックアップ完了予測部(ステップS103)におけるロックアップ締結完了のタイミングを、第2クラッチCL2の差回転数ΔNがゼロになってときとしたが、この差回転数ΔNが予め定めた設定値以下になったタイミングをロックアップ締結完了としてもよい。これにより、制御時間のさらなる短縮を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
実施例1では、本発明の電動車両の制御装置を、FRハイブリッド車両用に適用する例を示したが、FFハイブリッド車両は勿論のこと、駆動源にモータのみ、あるいはモータ/ジェネレータのみを備えた電気自動車や燃料電池車等の電気自動車に適用することもできる。要するに、モータを有する駆動源の下流位置に有段の自動変速機を搭載すると共に駆動源と駆動輪との間にクラッチを介装し、発進時このクラッチをスリップ締結させてクラッチトルク容量をコントロールする電動車両であれば適用することができる。
【符号の説明】
【0081】
MG モータ/ジェネレータ(モータ)
Eng エンジン
AT 自動変速機
CL2 第2クラッチ(クラッチ)
RL,RR 左右後輪(駆動輪)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータを有する駆動源の下流側に配置され、摩擦締結要素の掛け替えにより複数の変速段を達成する変速機と、発進時、前記駆動源と駆動輪との間に介装されたクラッチのスリップ締結状態を維持して該クラッチのクラッチトルク容量をコントロールするWSC走行制御を実行する発進制御手段と、を備えた電動車両の制御装置において、
前記発進制御手段は、前記クラッチをスリップ締結からロックアップ締結へと移行させるWSCロックアップ制御を実行するWSCロックアップ制御部と、
前記クラッチのロックアップ締結完了までの時間を予測するロックアップ完了時間予測部と、
前記ロックアップ完了時間予測部により予測された前記クラッチのロックアップ締結完了のタイミングよりも、前記変速機のアップシフト応答時間分早めたタイミングで前記変速機のアップシフト制御を開始する繰上アップシフト制御部と、を有することを特徴とする電動車両の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載された電動車両の制御装置において、
前記ロックアップ完了予測部は、少なくとも前記クラッチの差回転数に基づいて該クラッチのロックアップ締結完了までの時間を予測することを特徴とする電動車両の制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載された電動車両の制御装置において、
前記ロックアップ完了予測部は、アクセル開度又は駆動力と、前記クラッチの差回転数とをパラメータとしてロックアップ締結完了までの時間を予測することを特徴とする電動車両の制御装置。
【請求項4】
請求項2に記載された電動車両の制御装置において、
前記ロックアップ完了予測部は、前記クラッチの差回転数が設定値以下になったタイミングを前記クラッチのロックアップ締結完了のタイミングとすることを特徴とする電動車両の制御装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載された電動車両の制御装置において、
前記発進制御手段は、前記クラッチを強制的にロックアップ締結させる強制ロックアップ判断がされた場合には、前記クラッチがロックアップ締結してから前記変速機のアップシフト制御を開始する完全排他制御部を有することを特徴とする電動車両の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−167797(P2010−167797A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−9451(P2009−9451)
【出願日】平成21年1月20日(2009.1.20)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】