説明

電動送風機とそれを用いた電気掃除機

【課題】低騒音で、しかも高性能な電動送風機を提供する。
【解決手段】回転軸61に界磁鉄心51と整流子64を備え、電機子巻線63を施してなる電機子6と、電機子6の外周に空隙を介して配置され、磁界を発生する界磁5とを、電機子6が回転可能となるようブラケットA12,B10に格納し、整流子64に電力を供給するブラシ66を具備して電動機4を構成し、回転軸61にはインペラ2を備え、インペラ2を内包するケーシング1をブラケットA12に固定し、インペラ2が発生する気流により、電動機4内部を冷却する電動送風機において、整流子64を除く電機子6の表面のうち、少なくとも電機子巻線63が露出した部分の一方の表面を絶縁部材8で覆い、絶縁部材8の表面に凹凸9を設けたもので、電機子巻線63表面からの放熱性が改善され、電動送風機の温度上昇の低減、性能の向上が図れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気掃除機等に使用される電動送風機と電気掃除機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の電動送風機として、図6、7に示すようなものがあった(例えば、特許文献1参照)。図6は、従来の電動送風機の断面図、図7は、同電動送風機の電機子の斜視図である。図6、7において、1は、中央に吸気口11を有するケーシング、2は、ケーシング1の中にあって回転支持され複数枚の羽根を有するインペラ、3は、インペラ2の外周から下部にかけて、拡大した通路を形成し、ブラケットA12に固着されたエアガイド、4は、インペラ2を高速回転させる電動機で、後述の界磁5と電機子6とで構成されている。
【0003】
51は、ブラケットB10に取り付けられた界磁鉄心、52は、界磁鉄心51に巻回された界磁巻線で、上記界磁5は、上記界磁鉄心51及び界磁巻線52とで構成されている。61は、電機子6の回転軸、62は、回転軸61に圧入固定された電機子鉄心、63は、電機子鉄心62に巻回された電機子巻線、64は、回転軸61に設けられた整流子で、上記電機子6は、上記回転軸61と、電機子鉄心62と、電機子巻線63及び整流子64とで構成されている。
【0004】
7は、ブラケットB10に固持されて電機子6を回転支持する軸受、35は、電機子6の外周面を平坦とする部材で、図から解るように、電機子6の各スロットに入り込み、スロットによる凹部(図示せず)をなくす構成となっており、その部材35のインペラ2側、および逆側は、電機子巻線63を覆うような曲面部となっている。この曲面部は、インペラ2側からの気流がスムーズに流れるようにしている。
【0005】
従来の電動送風機は、このように、電機子6のスロットによる凹部(図示せず)を無くし、電機子6の外周面を平坦とする部材35を設けることにより、大巾な騒音低減ができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭62−144549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の電動送風機では、電機子6の外周面を平坦とする部材35で電機子巻線63の表面や、電機子6のスロットの凹部を覆うため、電機子巻線63で生じる銅損あるいは、電機子鉄心62で生じる鉄損により発生した熱が逃げにくく、電機子6の温度上昇が高くなるという課題があった。
【0008】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、電機子巻線表面を絶縁部材で覆った場合に、電機子内部の温度上昇を低減し、その結果として効率が高く、高性能な電動送風機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記従来の課題を解決するために、本発明の電動送風機は、回転軸に鉄心と整流子を備え、電機子巻線を施してなる電機子と、前記電機子の外周に空隙を介して配置され、磁界
を発生する界磁とを、前記電機子が回転可能となるようブラケットに格納し、前記整流子に電力を供給するブラシを具備して電動機を構成し、前記回転軸にはインペラを備え、前記インペラを内包するケーシングを前記ブラケットに固定し、前記インペラが発生する気流により、前記電動機内部を冷却するようにした電動送風機において、前記整流子を除く前記電機子表面のうち、少なくとも前記電機子巻線が露出した部分の一方の表面を絶縁部材で覆い、前記絶縁部材の表面に凹凸を設けたもので、電機子巻線表面からの放熱性が改善され、電動送風機の温度上昇の低減、その結果として性能の向上につながるものである。
【0010】
また、本発明の電気掃除機は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の電動送風機を用いたもので、温度上昇が低く、高性能な電気掃除機が実現できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の電動送風機は、電機子巻線表面を絶縁部材で覆った場合に、電機子内部の温度上昇を低減し、その結果として効率が高く、高性能な電動送風機を実現するものであり、また本発明の電気掃除機は、温度上昇が低く、高性能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態1における電動送風機の断面図
【図2】同電動送風機の電機子の斜視図
【図3】本発明の実施の形態2における電動送風機の断面図
【図4】同電動送風機の電機子の斜視図
【図5】本発明の実施の形態3における電動送風機の電機子の斜視図
【図6】従来の電動送風機の断面図
【図7】同電動送風機の電機子の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0013】
第1の発明は、回転軸に鉄心と整流子を備え、電機子巻線を施してなる電機子と、前記電機子の外周に空隙を介して配置され、磁界を発生する界磁とを、前記電機子が回転可能となるようブラケットに格納し、前記整流子に電力を供給するブラシを具備して電動機を構成し、前記回転軸にはインペラを備え、前記インペラを内包するケーシングを前記ブラケットに固定し、前記インペラが発生する気流により、前記電動機内部を冷却するようにした電動送風機において、前記整流子を除く前記電機子表面のうち、少なくとも前記電機子巻線が露出した部分の一方の表面を絶縁部材で覆い、前記絶縁部材の表面に凹凸を設けたもので、電機子巻線表面からの放熱性が改善され、電動送風機の温度上昇の低減、その結果として性能の向上につながるものである。
【0014】
第2の発明は、特に、第1の発明の電動送風機において、環状の凹凸を、回転軸と同心円状に設けたもので、電機子の回転により発生する風損に対しては、絶縁部材の凹凸が空気抵抗になることはなく、電動送風機の温度上昇の低減、その結果として性能の向上につながるものである。
【0015】
第3の発明は、特に、第1又は第2の発明の電動送風機において、環状の凹凸を、回転軸に対して垂直な方向に設けたもので、回転方向に対しては、絶縁部材の凹凸が空気抵抗になることはなく、また、インペラからの冷却風に対しても、空気抵抗になることが少なく、電動送風機の温度上昇の低減、その結果、性能の向上につながるものである。
【0016】
第4の発明は、特に、第1の発明の絶縁部材の表面に、凹凸に代え、複数の半球状の凹部を設けたもので、電機子回転時の乱流による風損、インペラからの冷却風の剥離による損失を低減でき、電動送風機の温度上昇の低減、その結果、性能の向上につながるもので
ある。
【0017】
第5の発明の係る電気掃除機は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の電動送風機を用いたもので、温度上昇が低く、高性能な電気掃除機が実現できる。
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0019】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における電動送風機の断面図、図2は、同電動送風機の電機子の斜視図である。なお、上記従来の電動送風機と同一構成部品については同一符号を付して、その説明を省略する。
【0020】
図1および図2において、1は、中央に吸気口11を有するケーシング、2は、ケーシング1の中にあって回転支持され複数枚の羽根を有するインペラ、3は、インペラ2の外周から下部にかけて、拡大した通路を形成し、ブラケットA12に固着されたエアガイド、4は、インペラ2を高速回転させる電動機で、後述の界磁5と電機子6とで構成されている。
【0021】
51は、ブラケットB10に取り付けられた界磁鉄心、52は、界磁鉄心51に巻回された界磁巻線で、上記界磁5は、上記界磁鉄心51及び界磁巻線52とで構成されている。61は、電機子6の回転軸、62は、回転軸61に圧入固定された電機子鉄心、63は、電機子鉄心62に巻回された電機子巻線、64は、回転軸61に設けられた整流子で、上記電機子6は、上記回転軸61と、電機子鉄心62と、電機子巻線63及び整流子64とで構成されている。
【0022】
7は、ブラケットB10に固持されて電機子6を回転支持する軸受、8は、インペラ2側の電機子巻線63を覆う絶縁部材である。9は、その絶縁部材8に設けられた円環状の凹凸である。66は、整流子64に電力を供給するブラシである。
【0023】
上記のように構成された本実施の形態における電動送風機において、電動機4によりインペラ2が高速回転すると、ケーシング1の吸気口11から気流が流入し、風量と真空圧を発生させる。発生した風量は、気流としてエアガイド3により、電動機4の内部に流入する。この際、絶縁部材8上に設けられた凹凸9の作用により、電機子巻線63を覆う絶縁部材8の表面積が大幅に増え、放熱性が大きく改善される。しかも、凹凸9は回転軸61に対して同心円状に形成されているため、電機子6の回転方向に対しては、風損にならない。
【0024】
以上のように、本実施の形態においては、電機子6の表面を覆う絶縁部材8に意図的に凹凸9を設け、さらにその凹凸9を回転軸61と同心円状にしたことにより、電機子6の回転方向に対する風損をなくし、放熱効果を高め、温度上昇の低い電動送風機を提供することができる。
【0025】
(実施の形態2)
図3は、本発明の実施の形態2における電動送風機の断面図、図4は、同電動送風機の電機子の斜視図である。なお、上記実施の形態1における電動送風機と同一構成部品については同一符号を付して、その説明を省略する。
【0026】
本実施の形態における電動送風機は、図3、図4に示すように、絶縁部材8に、回転軸61と垂直な方向で、かつ同心円状に円環状の凹凸9を設けたものである。
【0027】
なお、本実施の形態では、電機子巻線63のインペラ2側と反インペラ2側のそれぞれを絶縁部材8で覆うと共に、それぞれの絶縁部材8に、図のように凹凸9を設けている。
【0028】
上記のように構成された本実施の形態における電動送風機においては、電動機4によりインペラ2が高速回転すると、ケーシング1の吸気口11から気流が流入し、風量と真空圧を発生させる。発生した風量は気流としてエアガイド3により、電動機4の内部に流入する。この際、絶縁部材8上に設けられた凹凸9の作用により、電機子巻線63を覆う絶縁部材の表面積が大幅に増えているため、効率よく熱が放熱される。
【0029】
しかも、凹凸9は、回転軸61に対して同心円状かつ垂直な方向に形成されているため、電機子6の回転方向に対しては、風損にならないのと同時に、電動機4に流入してきた気流が電機子巻線63の上部に当たった場合でも、凹凸9がその気流に対する妨げになることがなく、下流へと流れていく(図中矢印)。
【0030】
以上のように、本実施の形態によれば、電機子6の表面を覆う絶縁部材8に意図的に凹凸9を設け、さらにその凹凸9を回転軸61と同心円状かつ、垂直な方向に設けたことにより、インペラ2による冷却風を妨げることなく、電機子6の放熱効果を高め、温度上昇の低い電動送風機を提供することができる。
【0031】
(実施の形態3)
図5は、本発明の実施の形態3における電動送風機の電機子の斜視図である。なお、上記実施の形態における電動送風機と同一構成部品については同一符号を付して、その説明を省略する。
【0032】
本実施の形態における電動送風機は、図5に示すように、略半球状の凹部20(ディンプル)を、電機子巻線63の表面に施した絶縁部材8に複数、しかもランダムに設けたものである。
【0033】
上記のように構成された本実施の形態における電動送風機においては、電動機4によりインペラ2が高速回転すると、ケーシング1の吸気口11から気流が流入し、風量と真空圧を発生させる。発生した風量は気流としてエアガイド3により、電動機4の内部に流入する。
【0034】
この際、絶縁部材8上に設けられた略半球状の凹部20の作用により、電機子巻線63を覆う絶縁部材8の表面積が大幅に増えているため、効率よく熱が放熱される。また、電機子6が回転し、インペラ2から気流が流入し、電機子6の表面に達すると、凹部20の作用により、空気が剥離を起こすことなく、電機子6の表面に沿って流れるため、冷却効果が改善されるとともに、流体損失も減るので、結果として、電動送風機の効率が高まる。
【0035】
以上のように、本実施の形態においては、電機子6の表面を覆う絶縁部材8に意図的に凹部20を設けたことにより、インペラ2による冷却風が剥離なく電機子6の表面を流れ、電機子6の放熱効果を高めるとともに、電動送風機の高効率化につながるものである。
【0036】
また、上記実施の形態1〜3のいずれかにおける電動送風機を、電気掃除機に搭載すれば、温度上昇が低く、高性能な電気掃除機を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
以上のように、本発明にかかる電動送風機とそれを用いた電気掃除機は、電動送風機の
効率の向上、騒音の低減、ならびに電気掃除機の吸込仕事率の向上が図れるので、電動送風機を用いる家庭用電化機器、産業機器等の用途にも幅広く適用できる。
【符号の説明】
【0038】
1 ケーシング
2 インペラ
3 エアガイド
4 電動機
5 界磁
6 電機子
7 軸受
8 絶縁部材
9 凹凸
10 ブラケットB
11 吸気口
12 ブラケットA
20 凹部
35 部材
51 界磁鉄心
52 界磁巻線
61 回転軸
62 電機子鉄心(鉄心)
63 電機子巻線
64 整流子
65 スロット
66 ブラシ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸に鉄心と整流子を備え、電機子巻線を施してなる電機子と、前記電機子の外周に空隙を介して配置され、磁界を発生する界磁とを、前記電機子が回転可能となるようブラケットに格納し、前記整流子に電力を供給するブラシを具備して電動機を構成し、前記回転軸にはインペラを備え、前記インペラを内包するケーシングを前記ブラケットに固定し、前記インペラが発生する気流により、前記電動機内部を冷却するようにした電動送風機において、前記整流子を除く前記電機子表面のうち、少なくとも前記電機子巻線が露出した部分の一方の表面を絶縁部材で覆い、前記絶縁部材の表面に凹凸を設けたことを特徴とする電動送風機。
【請求項2】
環状の凹凸を、回転軸と同心円状に設けたことを特徴とする請求項1に記載の電動送風機。
【請求項3】
環状の凹凸を、回転軸に対して垂直な方向に設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の電動送風機。
【請求項4】
絶縁部材の表面に、凹凸に代え、複数の半球状の凹部を設けた請求項1に記載の電動送風機。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の電動送風機を用いた電気掃除機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−135130(P2012−135130A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−285585(P2010−285585)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】