説明

電子デバイス

【課題】グラフェン層を備えた電子デバイスの高性能化を図る。
【解決手段】電子デバイス100は、結晶性材料からなる下層108と、結晶性材料からなる上層110と、下層108と上層110との間に位置するn−グラフェン層102とを含み、下層108及び/又は上層110が4以上の比誘電率を有する高比誘電率材料からなる電子デバイスである。n−グラフェン層102は、グラフェンの単層構造、又は複数のグラフェン単層の積層構造である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラフェン層を備えた電子デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
マイクロ電子デバイスにおいては、小型化、高密度化、及びスイッチングの高速化が絶えず推し進められる中、キャリア移動度の高い、より小型の電荷キャリアの構築が常に探究されている。
グラフェンは、かかるマイクロ電子用途に極めて魅力的な材料であるため、有望とされている。例えば、グラフェンは10m/Vs程度の固有移動度、室温で1012/cm程度の二次元の電荷キャリア濃度、及び10m/sのキャリア速度を示し、これによりTHz速度でのトランジスタ動作が可能となり得る。
【0003】
グラフェンは、ハニカム格子状に配列された黒鉛状炭素原子の一枚の原子シートである。グラフェンは、巨大な二次元のフラーレン分子、広げられた単一壁カーボンナノチューブ、又は単に層状グラファイト結晶の単層などである。
グラフェンを用いたデバイスは例えば、以下に挙げる特許文献に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−205272号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2009/0020764号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2008/0191196号明細書
【特許文献4】米国特許第7385262号明細書
【特許文献5】米国特許第7342277号明細書
【特許文献6】米国特許第7262991号明細書
【特許文献7】米国特許第7170120号明細書
【特許文献8】米国特許第7015142号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、支持体と上層と環境との相互作用が、グラフェンの電荷輸送特性に悪影響を及ぼすことが知られている。
グラフェンの固有移動度はその格子中の縦波音響フォノンによる散乱によって制約を受け、従来製造されているデバイスではさらなる散乱源にもさらされている。
主な外部散乱源は、その表面上又は表面近傍にある荷電不純物などの長距離の散乱中心、及び支持体又は上層から生じる遠隔の界面フォノンである。他に散乱の一因となるものが、格子の点欠陥及び波形などの短距離の散乱中心である。
従って、グラフェンのような材料の実用化を可能とすると同時に、散乱効果によって生じる上述の課題及びグラフェンの使用に固有の他の問題を軽減し得る構造が必要とされている。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、グラフェン層を備えた電子デバイスの高性能化を図ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電子デバイスは、
結晶性材料からなる下層と、
結晶性材料からなる上層と、
前記下層と前記上層との間に位置するn−グラフェン層とを含み、
前記下層及び/又は前記上層が4以上の比誘電率を有する高比誘電率材料からなる電子デバイスである。
【0008】
本発明の電子デバイスにおいては、
さらに、
前記下層と前記n−グラフェン層との間に形成され、非極性の誘電材料を含む第1の二面間層と、
前記n−グラフェン層と前記上層との間に形成され、非極性の誘電材料を含む第2の二面間層とを含むことができる。
【発明の効果】
【0009】
グラフェン層を挟む下層及び/又は上層に4以上の比誘電率を有する高比誘電率材料を用いることにより、下層及び/又は上層内の残留電荷が遮蔽され、電荷キャリアの散乱が低減される。その結果、電荷キャリアの伝導経路として可能な範囲で最良のグラフェン層性能がもたらされる。
以上の効果により、本発明によれば、グラフェン層を備えた電子デバイスの高性能化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1実施形態に係る電子デバイスの概略断面図である。
【図2】第2実施形態に係る電子デバイスの概略断面図である。
【図3】電界効果トランジスタの概略断面図である。
【図4】図3の線4−4から見たときの図3の上面図である。
【図5】ローレンツ磁気抵抗センサの概略断面図である。
【図6】図5の線6−6から見たときの横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の説明は、本発明を実施するために本明細書で企図される最良の実施形態である。この説明は本発明の一般的原理を示すことを目的として行われ、これによって特許請求される本発明の構想を限定することは意図しない。
なお、図の中で、全体を通して同一の参照符号は同一の構成要素を示す。また、添付の図面の尺度は一定ではない。
【0012】
「第1実施形態」
図1には、電荷キャリアの伝導にn−グラフェン層102が用いられた電子デバイス100が示されている。
上述したとおり、グラフェンはハニカム格子状に配列された黒鉛状炭素原子の一枚の原子シートである。グラフェンは、巨大な二次元のフラーレン分子、広げられた単一壁カーボンナノチューブ、又は単に層状グラファイト結晶の単層などである。
グラフェンは優れた電荷輸送特性を示し、10m/Vs程度の固有移動度を有する。n−グラフェン層102は、グラフェンの単層構造でも複数のグラフェン単層の積層構造でもよい。好ましくは、n−グラフェン層102はn層(ここで、n=1〜10)のグラフェン単層からなる。
【0013】
グラフェン単層はわずか炭素原子1個分の厚さしかない。そのため、グラフェンの単層構造又は複数のグラフェン単層の積層構造からなるn−グラフェン層102は、二次元電子ガス2DEG、又はそこを通って流れる電荷キャリアが電子でなく正孔であるならば二次元正孔ガスと見なすことができる。
【0014】
図1を参照すると、n−グラフェン層102の両端には、n−グラフェン層102に電荷キャリアを提供するための一対の導電性コンタクト(導電性リード)104、106を必要に応じて設けることができる。
【0015】
n−グラフェン層102は、下層108と上層110との間に挟まれている。
層102、104、106、108、110は、基材112上に形成することができる。この基材112の材料はデバイス100の用途に応じて異なり得る。層102、104、106、108、110は必要に応じて保護膜114で被覆することができ、この保護膜114もまた、材料は様々であり得る。
【0016】
グラフェンの固有移動度は、その格子中の縦波音響フォノンによる散乱によって制約を受け、従来提案されているデバイスではさらなる散乱源にさらされている。主な外部散乱源は、その表面上又は表面近傍にある荷電不純物などの長距離の散乱中心、及び支持体又は上層から生じる遠隔の界面フォノンである。さらに散乱の一因となるものが、格子の点欠陥及び波形などの短距離の散乱中心である。
【0017】
下層108及び上層110の材料を好適に選択すれば、強い散乱を抑制又は排除し、グラフェン固有の限界に近い移動度を有するデバイスを製造することが可能となる。さらに、下層108と上層110との間にn−グラフェン層102を封入することで、n−グラフェン層102は環境からの汚染作用が低減されるとともに物理的損傷から保護され、従ってデバイスの信頼性が確保される。
【0018】
これまで製造されているほとんどのデバイスは、グラフェン層の支持体としてSiの熱酸化によって得られるSiOが用いられている。この材料は電荷を有し得るため、荷電不純物の散乱源を提供し得るという欠点を含むことが知られている。同様に、一般的に使用されるバンドギャップの高い材料、例えば、化学気相成長法、蒸着法、又はスパッタ法等により形成された酸化物や非晶質材料もまた、同様の制約を被る。荷電不純物のさらなる供給源が、表面汚染又は吸着気体分子である。従って、本発明者は、荷電不純物の存在を最小限に抑えるか、又はその散乱効果を低減するための、下記の手法を提案する。
【0019】
荷電不純物の存在を最小限に抑えるため、下層108及び上層110は、結晶秩序の高い誘電材料で作製されることが好ましい。これにより、電荷トラップとして作用する欠陥の存在が減少する。さらに、荷電不純物からの散乱効果を低減するよう、高比誘電率の材料を選択する。これによって不純物からの電界を遮蔽し、ひいてはそのn−グラフェン層102内の電荷キャリアとの結合が減少し得る。
【0020】
遠隔の界面フォノン散乱は、支持体の極性の光学フォノンモードがn−グラフェン層102内の電荷キャリアと結合することによって生じる。下層108及び上層110の材料を慎重に選ぶことにより、フォノンモードの散乱強度及びそれらのn−グラフェン層102内の電荷キャリアとの結合を低減することができる。これは、層108、110に、n−グラフェン層102内の電荷キャリアと効率的に結合しない、より高エネルギーのフォノンモードの材料を選択することにより達成することができる。
【0021】
従って、図1を参照すると、下層108及び上層110は各々、比誘電率が高く、且つ高秩序の結晶構造を有する材料で作製され、それによりn−グラフェン層102の電子特性を低下させる外的効果が最小限に抑えられる。
比誘電率が大きい層108、110の役割は、n−グラフェン層102の上又はその近傍にある荷電不純物のクーロン散乱の役割を軽減することである。高比誘電率により、荷電不純物から発生する電界の大部分が不純物及びn−グラフェン層を貫通せずに不純物内で終結することが可能となり、それにより荷電不純物とn−グラフェン層102内の電荷キャリアとの間のクーロン力の相互作用が低下する。
【0022】
層108、110には、高比誘電率を有し、且つ結晶の欠陥が少ない様々な高品質の絶縁材料を用いることができる。比誘電率が大きいほど、電荷不純物における散乱効果を低減できる可能性が高くなる。
層108、110の比誘電率はいずれも4以上が好ましい。
上記目的上、層108、110に用いられる好適な材料としては、SiO、HfO、Al、Si、Y、Pr、Gd、La、TiO、ZrO、AlN、BN、SiC、Ta、(BaSr1−x)TiO(ここで、0≦x≦1)、及びPb(ZrTi1−y)O(ここで、0≦y≦1)が挙げられる。層108、110は、これらの材料を1種又は2種以上含むことができる。
下層108と上層110とは同一組成でも非同一組成でもよい。
【0023】
なお、下層108及び上層110をいずれも比誘電率4以上の高比誘電率材料により構成することが好ましいが、少なくとも一方をかかる材料により構成することで、電荷不純物における散乱効果を低減する効果が得られる。
【0024】
下層108のn−グラフェン層102側の表面116及び上層110のn−グラフェン層102側の表面118は、n−グラフェン層102の波形(ひいては短距離の散乱源)を低減するよう、可能な限り原子レベルで平坦に近いものでなければならない。
下層108のn−グラフェン層102側の表面116及び上層110のn−グラフェン層102側の表面118は、二乗平均平方根粗さが0.5nm未満の、実質的に原子的に平坦な表面であることが好ましい。
【0025】
図1に示される構造は、n−グラフェン層102の性能を最大限に引き出すため、好適な下層108と上層110との間にいかにn−グラフェン層102が置かれ得るかについてのやや一般的な例を示している。構造の他の要素の数、配置、及び材料の選択は、n−グラフェン層102が用いられる用途に依存する。
例えば、導電性コンタクト(導電性リード)104、106のサイズ、材料選択、及び数は、どのようなタイプのデバイスを作製するかに依存する。
同様に、基材112の材料は作製されるデバイスに依存し、限定はされないが、Si、SiO、Al、GaAs、SiC、ガラス、N58、例示した以外の他のセラミックス、ポリマーなどの材料、又は電子基板での使用に好適な任意の他の材料を挙げることができる。
【0026】
「第2実施形態」
図2は、本発明の別の実施形態を示す。
図2は図1と同様の構造を有するデバイス200を示し、下層108と上層110との間にn−グラフェン層102が位置している。デバイス200はまた、下層108とn−グラフェン層102との間に形成された非極性の誘電材料を含む第1の二面間層202、及びn−グラフェン層102と上層110との間に形成された非極性の誘電材料を含む第2の二面間層204も備える。
【0027】
先述の実施形態と同様に、層108、110は各々、SiO、HfO、Al、Si、Y、Pr、Gd、La、TiO、ZrO、AlN、BN、SiC、Ta、SrTiO、(BaSr1−x)TiO(ここで、0<x<1)、及びPb(ZrTi1−x)O(ここで、0≦y≦1)などの、高誘電性で結晶秩序の高い材料で作製され得る。層108、110はこれらの材料を1種又は2種以上含むことができる。
【0028】
層108、110に用いられる上述の材料の多くは高極性でもあり、極性基がグラフェン層と近接していることにより、遠隔の界面散乱として公知の散乱機構がもたらされ得る。遠隔の界面散乱機構を通じた散乱率は、誘電体の表面光学フォノンモードのエネルギーと、誘電体とn−グラフェン層102との間の離隔距離とに従う関数である。上述の材料のうち、AlN、SiC、BN、TiO、ZrO、及びSrTiOは高周波の光学フォノンモードを有し、こうしたモードはn−グラフェン層102内の電荷キャリアとそれほど効率的に結合しないため、散乱効果を低減することができる。
【0029】
遠隔の界面散乱効果を軽減し、しかし層108、110の荷電不純物のクーロン遮蔽は保持するよう、二面間層202、204は好ましくは以下の特性を有する。
【0030】
層108、202、102、204、110を含む積層全体の有効比誘電率が、二面間層202及び204の追加によって大幅に低下することがないよう、二面間層202、204は厚さが小さいものでなければならない。具体的には、二面間層202、204がいずれも10nm厚以下であることが好ましい。
【0031】
また、遠隔の界面散乱効果がさらに導入されることを避けるため、二面間層202、204の材料は、その比誘電率(誘電関数)の周波数依存性が小さいものであることが好ましい。
二面間層202、204として好適な膜の例としては、18−フェノキシオクタデシル−トリクロルシラン、オクタデシルトリクロルシラン、及びポリ(a−メチルスチレン)等の自己組織化単分子膜、又は、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリスチレン等のナノメートル厚の層状ポリマー膜が挙げられる。二面間層202、204は、これらの材料を1種又は2種以上含むことができる。
【0032】
さらに、二面間層202、204を使用することに代えて、又はそれに加えて、下層108及び/又は上層110をアロイ化するか、又はそのバルク特性に関する改質を行って、遠隔の界面散乱をもたらす表面光学モードのエネルギーを上昇させてもよい。
これは例えば、結晶歪みの操作又はアロイ化により達成することができる。また、二面間層202、204の追加により、層108及び110として利用されるSiOにより発生する遠隔の界面フォノン散乱の有害な作用を低減できることも注記される。
【0033】
「適用例」
図3及び図4は、本発明の適用例を示す。
図3は、n−グラフェン層102を備えた電界効果トランジスタ300の概略断面図を示す。図4は、図3の線4−4から見たときの上面図である。
【0034】
n−グラフェン層102は下層108と上層110との間に位置し、下層108及び上層110は双方とも、上記に示される材料で作製され得る。任意選択の二面間層202、204が、それぞれ下層108及び上層110とn−グラフェン層102との間に位置し得る(図2を参照して上記に説明したとおり)。
【0035】
ソース電極302及びドレイン電極304が、n−グラフェン層102の両側に各々接続されている。n−グラフェン層102、二面間層204、及び上層110の上側にトップゲート電極306が形成されている。必要であれば、他の追加的な誘電体層(図示せず)が、トップゲート電極306と層102、104、110との間に介挿され得る。これらの層は全て、実際のFETデバイスにおいて、基材と保護膜とからなる被覆材308により取り囲まれ得る。
【0036】
上記の説明は、単に本発明の適用例に過ぎない。下層108、上層110、及び二面間層202、204を用いることを当業者が着想し得る他のトランジスタ構造、又は他の電子デバイス全てが、同様に本発明の範囲内に含まれる。
【0037】
「他の適用例」
図5及び図6は、本発明の他の適用例を示す。図5及び図6は、電荷キャリアに対するローレンツ力の効果を利用して磁界の存在を検出する磁気抵抗センサ500を示す。かかる磁気抵抗センサは、ローレンツ磁気抵抗センサと称し得る。
【0038】
図5を参照すると、センサ500は、互いに対向する第1の側面504と第2の側面506とを有するメサ構造502を備えている。
メサ構造502の一方の側面504には、複数の導電性リードI1(508)、V1(510)、I2(512)、及びV2(514)が形成されており(図6を参照)、図5にはそのうち1つのみが示されている。
メサ構造502の反対側の側面506には、非磁性の導電性材料、例えばCu又はAuで作製され得る導電性のシャント516が形成されている。
【0039】
メサ構造502はn−グラフェン層518を備え、これは上記のとおり、グラフェンの単層構造でも、複数のグラフェン単層の積層構造であってもよい。n−グラフェン層518は好ましくは、n層(ここで、n=1〜10)のグラフェン単層からなる。
【0040】
図1及び図2を参照して説明したのと同様に、n−グラフェン層518は、下層520と上層522との間、及び任意選択の二面間層524、526との間に位置する。二面間層524、526が存在する場合、それらは各々、n−グラフェン層518と、下層520及び上層522の一方との間に位置する。
場合により、下層520の下側に何らかの基材層528を設けてもよく、これは、非磁性の電気絶縁材料、例えばアルミナあるいはSiO等で作製され得る。
また、メサ構造502の最上部に、他の層を保護するためのキャップ層530を設けてもよく、これもまたアルミナあるいはSiO等の様々な材料で作製され得る。
【0041】
n−グラフェン層518は磁気的に活性な層であり、二面間層524、526が存在する場合にはそれらの二面間層524、526の間に挟まれる。
上記のとおり、二面間層524、526は、18−フェノキシオクタデシル−トリクロルシラン、オクタデシルトリクロルシラン、及びポリ(a−メチルスチレン)等の自己組織化単分子膜、又は、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリスチレンなどのナノメートル厚の層状のポリマー膜等である。
【0042】
グラフェン層518及び任意選択の二面間層524、526は、下層520と上層522との間に挟まれ、これらの下層520及び上層522は、上記のとおり、SiO、HfO、Al、Si、Y、Pr、Gd、La、TiO、ZrO、AlN、BN、SiC、Ta、SrTiO、(BaSr1−x)TiO(ここで、0<x<1)、及びPb(ZrTi1−x)O(ここで、0≦y≦1)などの材料で作製され得る。
【0043】
図6は、図5の線6−6から見たときの横断面図を示し、これを参照してセンサ500の動作を説明する。
電流リードI1 508及び電流リードI2 512が、n−グラフェン層518に電流を供給する。磁界がないとき、一方の電流リード508からの電流はほとんどがシャント516に流れ、電流はそこで比較的低い抵抗で流れた後、他方のリード512に戻る。この電流路は、点線602によって示されている。
しかしながら、層の平面と垂直な方向、すなわち図6の面と垂直な方向の磁界が存在すると、点線604によって示されるとおり、電荷キャリアに対して作用するローレンツ力により、より多くの電流が偏向してシャント516から外れる。その結果、全体の抵抗が増加し、それが電圧リード510、514によって検出されることで、磁界の存在が検知される。
【0044】
図5及び図6は、単にn−グラフェン層518を使用し得るデバイス例を示すものである。これはあくまでも例に過ぎない。上層522と下層520との間、及び任意選択の二面間層524と526との間に挟まれたグラフェン層518を使用することによって、同様の効果が得られるであろう他の多くのタイプのローレンツ磁気抵抗デバイスを同様に作製することができる。加えて、磁気抵抗デバイス以外の他の多くのデバイスもまた、層520、522、及び任意選択の層524、526に挟まれたn−グラフェン層518の使用を含み得る。
【0045】
様々な実施形態を上記に説明したが、それらは単に例として提供されているに過ぎず、限定として提供されるものではないことが理解されなければならない。本発明の範囲内に含まれる他の実施形態もまた、当業者には明らかとなり得る。従って、本発明の幅及び範囲は、上述の例示的実施形態のいずれによっても限定されるものではなく、以下の特許請求の範囲及びその等価物によってのみ定義されるものとする。
【符号の説明】
【0046】
100 電子デバイス
102 n−グラフェン層
104、106 導電性コンタクト(導電性リード)
108 下層
110 上層
112 基材
114 保護膜
116 下層のグラフェン層側の表面
118 上層のグラフェン層側の表面
200 電子デバイス
202 第1の二面間層
204 第2の二面間層
300 電界効果トランジスタ
302 ソース電極
304 ドレイン電極
306 トップゲート電極
308 被覆材
500 磁気抵抗センサ
502 メサ構造
504 第1の側面
506 第2の側面
508 電流リードI1
510 電圧リードV1
512 電流リードI2
514 電圧リードV2
516 シャント
518 n−グラフェン層
520 下層
522 上層
524、526 第1の二面間層
524、526 第2の二面間層
528 基材層
530 キャップ層
602、604 電流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶性材料からなる下層と、
結晶性材料からなる上層と、
前記下層と前記上層との間に位置するn−グラフェン層とを含み、
前記下層及び/又は前記上層が4以上の比誘電率を有する高比誘電率材料からなる電子デバイス。
【請求項2】
前記n−グラフェン層が、グラフェンの単層構造、又は複数のグラフェン単層の積層構造である請求項1に記載の電子デバイス。
【請求項3】
前記n−グラフェン層が、1〜10層のグラフェン単層からなる請求項2に記載の電子デバイス。
【請求項4】
前記高比誘電率材料からなる前記下層及び/又は前記上層が、SiO、HfO、Al、Si、Y、Pr、Gd、La、TiO、ZrO、AlN、BN、SiC、Ta、(BaSr1−x)TiO(ここで、0≦x≦1)、及びPb(ZrTi1−y)O(ここで、0≦y≦1)からなる群より選択される少なくとも1種を含む請求項1〜3のいずれかに記載の電子デバイス。
【請求項5】
前記n−グラフェン層が、前記高比誘電率材料からなる前記下層及び/又は前記上層と接触した請求項1〜4のいずれかに記載の電子デバイス。
【請求項6】
前記n−グラフェン層に接した前記下層及び/又は前記上層の前記n−グラフェン層側の表面が、二乗平均平方根粗さが0.5nm未満の、実質的に原子的に平坦な表面である請求項5に記載の電子デバイス。
【請求項7】
前記グラフェン層に電荷キャリアを供給するための、前記n−グラフェン層に接続された複数の導電性リードをさらに含む請求項1〜6のいずれかに記載の電子デバイス。
【請求項8】
さらに、
前記下層と前記n−グラフェン層との間に形成され、非極性の誘電材料を含む第1の二面間層と、
前記n−グラフェン層と前記上層との間に形成され、非極性の誘電材料を含む第2の二面間層とを含む請求項1〜4のいずれかに記載の電子デバイス。
【請求項9】
前記第1の二面間層と前記第2の二面間層の各々が10nm厚以下である請求項8に記載の電子デバイス。
【請求項10】
前記第1の二面間層及び前記第2の二面間層が各々、自己組織化単分子膜である請求項8又は9に記載の電子デバイス。
【請求項11】
前記第1の二面間層及び前記第2の二面間層が各々、18−フェノキシオクタデシル−トリクロルシラン、オクタデシルトリクロルシラン、及びポリ(a−メチルスチレン)からなる群より選択される少なくとも1種を含む自己組織化単分子膜である請求項10に記載の電子デバイス。
【請求項12】
前記第1の二面間層及び前記第2の二面間層が各々、ナノメートル厚の層状ポリマー膜である請求項8又は9に記載の電子デバイス。
【請求項13】
前記第1の二面間層及び前記第2の二面間層が各々、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリスチレンからなる群より選択される少なくとも1種を含む層状ポリマー膜である請求項12に記載の電子デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−66427(P2011−66427A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−209748(P2010−209748)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(503116280)ヒタチグローバルストレージテクノロジーズネザーランドビーブイ (1,121)
【Fターム(参考)】