説明

電子装置の製造方法

【課題】簡単なプロセスで、かつデバイスへのダメージも少なく、微細化されたパターンの形状および膜厚を高精度に制御できる電子装置の製造方法を提供する。
【解決手段】電子装置の製造方法は、凹凸の形状が設けられた版と仮基板を、インク30を介して貼り合わせる工程と、版を剥離し、インクに凹凸の形状を設けてインク層を形成する工程と、インクの凸部と基板50を貼り合わせる工程と、仮基板を剥離し、インク層を基板に転写する工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子デバイスの作製方法として、インクジェット法、スクリーン印刷法、凸版印刷、凹版印刷、ナノインプリント法等の印刷法が用いられている。特に、凹版印刷は、他の印刷法と比較してパターンの形状制御および膜厚制御に優れているため、電子部品における回路用エッチング・レジストのパターン形成、精密電子部品における導電性回路の形成等に応用されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、近年更なる精度の向上が要求されており、凹版印刷によって形成されたパターンは、詳細に観察すると、必ずしも一定の高さに形成されているわけではなく、不均一な形状に印刷されることが少なくなかった。また、凹版印刷は、基板上に段差がある場合には、均一なコンタクトが得られにくいため適用できない。
【特許文献1】特開平5−283846号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、簡単なプロセスで、かつデバイスへのダメージも少なく、微細化されたパターンの形状および膜厚を高精度に制御できる電子装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明に係る電子装置の製造方法は、凹凸の形状が設けられた版と仮基板を、インクを介して貼り合わせる工程と、前記版を剥離し、前記インクに凹凸の形状を設けてインク層を形成する工程と、前記インクの凸部と基板を貼り合わせる工程と、前記仮基板を剥離し、前記インク層を前記基板に転写する工程と、を含む。
【0005】
本発明に係る電子装置の製造方法において、前記版は、前記仮基板よりも表面自由エネルギーの低い材質からなることができる。
【0006】
本発明に係る電子装置の製造方法において、前記版の材質は、ポリジメチルシロキサンまたはアクリル系樹脂であることができる。
【0007】
本発明に係る電子装置の製造方法において、前記版の表面に、表面自由エネルギーを低下させる層を設けることができる。
【0008】
本発明に係る電子装置の製造方法において、前記層は、フッ化アルキルシランからなることができる。
【0009】
本発明に係る電子装置の製造方法において、さらに、前記版を剥離する前に、前記インクを仮硬化する工程を含むことができる。
【0010】
本発明に係る電子装置の製造方法において、前記仮基板は、少なくとも表面が樹脂からなることができる。
【0011】
本発明に係る電子装置の製造方法において、前記仮基板は、前記基板よりも表面自由エネルギーの低い材質からなることができる。
【0012】
本発明に係る電子装置の製造方法は、凹凸の形状が設けられた版と仮基板を、インクを介して貼り合わせる工程と、前記版を剥離し、前記インクに凹凸の形状を設けてインク層を形成する工程と、前記インク層の凸部と半導体層が設けられた基板を貼り合わせる工程と、前記仮基板を剥離し、前記インク層を前記基板に転写する工程と、前記インク層を焼成し、ソースドレイン電極を形成する工程と、前記半導体層の上方に、ゲート絶縁膜、およびゲート電極を順次形成する工程と、を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0014】
1.電子装置の製造方法
1.1 第1の実施形態
図1〜図6は、本発明の第1の実施形態に係る電子装置の製造方法を模式的に示す断面図である。
【0015】
以下に、第1の実施形態に係る電子装置の製造方法の一例について説明する。
【0016】
(1)図1に示すように、原板となるマスター版10を作製する。マスター版10に用いる基板としては、加工しやすい材料が望ましく、例えば、シリコン、ガラス等を用いることができる。マスター版10の加工方法として、例えば、フォトリソグラフィーを適用することができる。
【0017】
(2)図2に示すように、マスター版10の形状をパターン形成に使用する版20に転写する。
【0018】
版20は、仮基板40よりも表面自由エネルギーの低い材質を用いることにより、工程(4)において、版20をインク30から剥離しやすくすることができる。
【0019】
版20の材質としては、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、アクリル等の熱可塑性樹脂;エポキシ、シリコン、ポリイミド等の熱硬化性樹脂;ウレタン系、エポキシ系等の光硬化性樹脂;ガラス等を挙げることができる。マスター版10の形状を転写しやすい材料が望ましく、例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、アクリル樹脂、ガラスをより好ましく用いることができる。ポリジメチルシロキサンは、表面自由エネルギーが低いため、特に好ましく用いることができる。ガラスは、相対的に表面自由エネルギーが高い材料であるが、その表面に自己組織化単分子膜(以下、「SAMs」という。)を形成し、表面自由エネルギーを低くして用いることができる。SAMsとして、例えば、フッ化アルキルシラン(FAS)を用いることができる。
【0020】
版20への転写方法は、例えば、ナノインプリント法を適用することができる。ナノインプリント法とは、ナノスケールの凹凸パターンが形成されたマスター版を、樹脂または樹脂薄膜が塗布された基板に押し当てて、該樹脂に凹凸パターンを転写する技術である。
ナノインプリント法を適用すると、版20の高精度加工および高スループットを実現することができる。
【0021】
具体的には、版20の材質が熱可塑性樹脂の場合、版20をホットプレート等を用いて、ガラス転移温度以上まで加熱する。次いで、マスター版10を版20にプレスし、冷却することにより版20を硬化させる。最後にマスター版10を剥離すると、マスター版10の形状を版20へ転写することができる。
【0022】
版20の材質が熱硬化性樹脂の場合、版20をホットプレート等を用いて加熱する。次いで、マスター版10を版20にプレスし、さらに加熱することにより架橋反応を促進させ、版20を硬化させる。版20を硬化させた後、マスター版10を剥離すると、マスター版10の形状を版20へ転写することができる。
【0023】
版20の材質が光硬化性樹脂の場合、マスター版10を版20にプレスし、光を照射することによって、樹脂を硬化させる。最後にマスター版10を剥離すると、マスター版10の形状を版20へ転写することができる。
【0024】
(3)図3に示すように、版20と仮基板40を、インク30を介して貼り合わせる。
【0025】
インク30は、目的とする電子部材に合わせて適宜選択することができる。例えば、配線を形成する場合には、金属インクまたは導電性高分子インク等を用いることができる。絶縁材料を形成する場合には、液体シリコンインク等を用いることができる。
【0026】
仮基板40は、少なくともインク30と接触する面を、樹脂40aで形成するのが好ましい。樹脂40aとして、例えば、PDMS、アクリルゴム、ウレタンゴム等の柔軟性に富む樹脂を好ましく用いることができる。PDMS、アクリルゴム、ウレタンゴム等のような柔軟性に富む材質は、インク30を追従させやすく、均一なコンタクトが得られやすい。また、仮基板40として、版20よりも表面自由エネルギーの高い材質を用いるか、若しくは、表面自由エネルギーを高める層を設けるか、若しくは、表面自由エネルギーを高める処理を行うことにより、工程(4)において、版20をインク30から剥離しやすくすることができる。高い精度が要求される場合には、樹脂40aを支持するための補強板40bを用いることができる。補強板40bとしては、樹脂40aを支持できる程度の硬さを有するものであればよい。
【0027】
(4)図4に示すように、版20を剥離する。仮基板40よりも版20の方が表面自由エネルギーが低いため、インク30は仮基板40側に残り、版20の形状を転写することができる。ここで、インク30の粘度が低いため、版20の形状が保持されにくい場合には、版20を剥離する前に仮硬化させることが望ましい。仮硬化させる方法としては、例えば、大気雰囲気下でホットプレート等を用いて熱処理を行う方法、または光を照射することによりインク30を高分子量化する方法等を挙げることができる。
【0028】
また、版20は、繰り返し使用することができるため、材料の無駄も少ない。
【0029】
(5)図5に示すように、仮基板40と基板50を、インク30を介して貼り合わせる。インク30の凸部を基板50と接合させて貼り合わせるため、基板50に段差があるなど平坦な面を有していない場合や曲率を有する場合においても、均一なコンタクトが得られやすい。
【0030】
基板50は、仮基板40よりも表面自由エネルギーの高い材質を用いることで、工程(6)において、仮基板40をインク30から剥離しやすくすることができる。基板50として、仮基板40よりも表面自由エネルギーの低い材質を用いた場合には、基板50の表面に仮基板40よりも表面自由エネルギーの高い材料膜を形成するとよい。
【0031】
(6)図6に示すように、仮基板40を剥離する。仮基板40を剥離する方法として、機械的方法、剥離力を弱めるためにレーザーアブレーション法等を併用する方法を適用することができる。基板50よりも仮基板40の方が表面自由エネルギーが低いため、インク30を基板50側に残すことができる。
【0032】
第1の実施形態に係る方法は、従来のフォトリソグラフィーを主体とした微細加工技術に比べて、版20の形状により形成されるパターンの形状および膜厚を制御することができるので、いろいろなパターンに対応可能な製造プロセスを提供することができる。しかも、プロセスを簡略化することができ、かつデバイスへのダメージも少ない。したがって、この方法は、表示デバイス、半導体デバイス、および光学デバイス等の高精細なパターニングを要するデバイスだけでなく、有機デバイス、強誘電体デバイス、およびフレキシブルデバイスのようなダメージに弱いデバイスに対しても適用することができる。
【0033】
1.2 第2の実施形態
図7〜図14は、本発明の第2の実施形態に係る電子装置の製造方法を模式的に示す断面図である。
【0034】
第2の実施形態は、段差を有する基板上にパターンを形成するための方法であり、例えば、薄膜トランジスタの作製等に適用することができる。
【0035】
以下に、第2の実施形態に係る電子装置の製造方法の一例について説明する。
【0036】
(1)図7に示すように、原板となるマスター版12を作製する。マスター版12の材質、加工方法等は、第1の実施形態と同様なので説明を省略する。
【0037】
(2)図8に示すように、マスター版12の形状をパターン形成に使用する版22に転写する。版22への転写方法、材質等は、第1の実施形態と同様なので説明を省略する。
【0038】
(3)図9に示すように、版22と仮基板42を、インク32を介して貼り合わせる。
【0039】
インク32は、例えば、ソースドレイン電極(以下、「SD電極」ともいう。)を形成するための金属インクまたは導電性高分子インクを用いることができる。
【0040】
(4)図10に示すように、版22を剥離する。その他は、第1の実施形態と同様なので説明を省略する。
【0041】
(5)図11に示すように、仮基板42と基板52を、インク32を介して貼り合わせる。仮基板42の上に形成されたインク32および基板52の上に形成された半導体層60は、いずれも凸状に形成されているため、均一なコンタクトが得られやすい。
【0042】
(6)図12に示すように、仮基板42を剥離し、インク32を焼成してSD電極を形成する。
【0043】
(7)図13に示すように、半導体層60の上にゲート絶縁膜70を形成する。ゲート絶縁膜70についても、本発明に係る方法を用いて形成することができる。絶縁膜の材料としては、ポリアクリロニトリル、ポリビニルフェノール、パリレン、エポキシ樹脂、エポキシ・シリコーンハイブリッド樹脂等を用いることができる。
【0044】
(8)図14に示すように、ゲート絶縁膜70の上にゲート電極80を形成する。ゲート電極80についても、本発明に係る方法を用いて形成することができる。電極の材料としては、Au、Ag、Cu、PEDOT/PSS、ポリアニリン等を用いることができる。
【0045】
第2の実施形態に係る方法では、形成されたパターンの形状および膜厚は、マスター版12の形状および膜厚をそのまま反映させることができるため、形状および膜厚を制御しやすく、いろいろなパターンに対応可能なプロセスを提供することができる。仮基板42の上に形成されたインク32および基板52の上に形成された半導体層60は、いずれも凸状に形成されているため、均一なコンタクトが得られやすい。したがって、この方法は、段差を有する表示デバイス、半導体デバイス、および光学デバイス等に対して適用することができる。
【0046】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】第1の実施形態に係る電子装置の製造方法を模式的に示す断面図。
【図2】第1の実施形態に係る電子装置の製造方法を模式的に示す断面図。
【図3】第1の実施形態に係る電子装置の製造方法を模式的に示す断面図。
【図4】第1の実施形態に係る電子装置の製造方法を模式的に示す断面図。
【図5】第1の実施形態に係る電子装置の製造方法を模式的に示す断面図。
【図6】第1の実施形態に係る電子装置の製造方法を模式的に示す断面図。
【図7】第2の実施形態に係る電子装置の製造方法を模式的に示す断面図。
【図8】第2の実施形態に係る電子装置の製造方法を模式的に示す断面図。
【図9】第2の実施形態に係る電子装置の製造方法を模式的に示す断面図。
【図10】第2の実施形態に係る電子装置の製造方法を模式的に示す断面図。
【図11】第2の実施形態に係る電子装置の製造方法を模式的に示す断面図。
【図12】第2の実施形態に係る電子装置の製造方法を模式的に示す断面図。
【図13】第2の実施形態に係る電子装置の製造方法を模式的に示す断面図。
【図14】第2の実施形態に係る電子装置の製造方法を模式的に示す断面図。
【符号の説明】
【0048】
10・12…マスター板、20・22…版、30・32…インク、40・42…仮基板、40a…樹脂、40b…補強板、50・52…基板、60…半導体層、70…ゲート絶縁膜、80…ゲート電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹凸の形状が設けられた版と仮基板を、インクを介して貼り合わせる工程と、
前記版を剥離し、前記インクに凹凸の形状を設けてインク層を形成する工程と、
前記インク層の凸部と基板を貼り合わせる工程と、
前記仮基板を剥離し、前記インク層を前記基板に転写する工程と、
を含む、電子装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記版は、前記仮基板よりも表面自由エネルギーの低い材質からなる、電子装置の製造方法。
【請求項3】
請求項2において、
前記版の材質は、ポリジメチルシロキサンまたはアクリル系樹脂である、電子装置の製造方法。
【請求項4】
請求項1において、
前記版の表面に、表面自由エネルギーを低下させる層を設けた、電子装置の製造方法。
【請求項5】
請求項4において、
前記層は、フッ化アルキルシランからなる、電子装置の製造方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかにおいて、
さらに、前記版を剥離する前に、前記インクを仮硬化する工程を含む、電子装置の製造方法。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかにおいて、
前記仮基板は、少なくとも表面が樹脂からなる、電子装置の製造方法。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかにおいて、
前記仮基板は、前記基板よりも表面自由エネルギーの低い材質からなる、電子装置の製造方法。
【請求項9】
凹凸の形状が設けられた版と仮基板を、インクを介して貼り合わせる工程と、
前記版を剥離し、前記インクに凹凸の形状を設けてインク層を形成する工程と、
前記インク層の凸部と半導体層が設けられた基板を貼り合わせる工程と、
前記仮基板を剥離し、前記インク層を前記基板に転写する工程と、
前記インク層を焼成し、ソースドレイン電極を形成する工程と、
前記半導体層の上方に、ゲート絶縁膜、およびゲート電極を順次形成する工程と、
を含む、電子装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−226878(P2008−226878A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−58381(P2007−58381)
【出願日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成18年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「超フレキシブディスプレイ部材技術開発」委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】