説明

電子装置

【課題】ダイパッドの一面上に、接着剤を介してセラミック基板を接続してなる電子装置において、接着剤の材料に制約を設けたり、接着後の洗浄処理を行ったりすることなく、接着剤の加熱硬化時に接着剤から発生する飛散物がダイパッドやセラミック基板へ付着するのを防止する。
【解決手段】ダイパッド10とセラミック基板20との間において接着剤30の周囲に、接着剤30と接着剤30の外側とを区画する障壁層40を設け、この障壁層40によって、加熱時における飛散物の接着剤30の外側への漏れを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイパッドなどの第1の部材上に接着剤を介してセラミック基板などの第2の部材を接続してなる電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電子装置としては、たとえば第1の部材としての金属製のダイパッドの一面上に、ダイボンド剤としての接着剤を介して、第2の部材としてのセラミック基板を搭載し、この接着剤を加熱して硬化させることにより、ダイパッドとセラミック基板とを接続してなるものが提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
ここで、上記接着剤を加熱・硬化させるとき、この加熱により生成されるガスなどが飛散物、いわゆるヒュームとして空中に発生する。具体的には、接着剤は、シリコーン樹脂などよりなる接着剤であり、飛散物としてはたとえばシロキサンなどが発生する。そして、この飛散物が発生すると、接着剤による接着部以外のところでダイパッドやセラミック基板に当該飛散物が付着することがある。
【0004】
そうなると、飛散物が付着した部分が、当該飛散物により汚染された状態となり、たとえば、後工程でワイヤボンディングやモールド封止を行う場合に、ワイヤボンディングの接合性やモールド樹脂の密着性などを低下させたり、また、飛散物が付着した部分が摺動接点などである場合には、接点障害を引き起こしたりする懸念がある。
【特許文献1】特開平6−21317号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したような飛散物の付着を防止するためには、たとえば、シリコーン系接着剤において低分子シロキサン成分を除去することで、飛散物の発生量を抑制するが考えられるが、特殊な接着剤を用いることになるので、接着剤の組成に制約が生じ、汎用性に劣る恐れがある。
【0006】
また、接着剤を加熱・硬化してダイパッドとセラミック基板とを接続した後、UV照射やプラズマクリーニング等の洗浄処理を実施することにより、付着した飛散物を除去してモールド樹脂の密着性の確保を行うことも考えられるが、工程数の増加につながる。
【0007】
なお、上記した問題は、ダイパッドとセラミック基板とを接着剤を介して接続する電子装置以外にも、第1の部材の一面上に、接着剤を介して第2の部材を搭載し、接着剤を加熱して硬化させることにより、これら両部材を接着してなる電子装置であれば、共通の問題として発生すると考えられる。
【0008】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、第1の部材の一面上に、接着剤を介して第2の部材を接続してなる電子装置において、接着剤の材料に制約を設けたり、接着後の洗浄処理を行ったりすることなく、飛散物の両部材への付着を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明においては、第1の部材(10)と第2の部材(20)との間において接着剤(30)の周囲に、接着剤(30)と接着剤(30)の外側とを区画する障壁層(40)を設け、この障壁層(40)によって、加熱の時における飛散物の接着剤(30)の外側への漏れを防止するようにしたことを特徴としている。
【0010】
それによれば、障壁層(40)によって加熱時における飛散物の接着剤(30)の外側への漏れが防止されるので、接着剤(30)の材料に制約を設けたり、接着後の洗浄処理を行ったりすることなく、当該飛散物の両部材(10、20)への付着を防止することができる。
【0011】
ここで、請求項2に記載の発明のように、第1の部材(10)の一面(11)に、当該一面(11)より凹んだ凹部(13)を形成し、接着剤(30)を凹部(13)内に配置し、第2の部材(20)を、凹部(13)を塞ぐように配置し、障壁層(40)を、凹部(13)の内側から凹部(13)の段差部(13a)を跨ぎ凹部(13)の外側に位置するように凹部(13)の開口縁部に沿って配置し、さらに障壁層(40)が第2の部材(20)に押さえ付けられることにより、段差部(13a)にて、障壁層(40)を当該段差部(13a)に対応した形状に変形するようにしてもよい。
【0012】
それによれば、障壁層(40)が凹部(13)の段差部(13a)にて当該段差部(13)に対応した形状に変形されるので、障壁層(40)と両部材(10、20)との密着性の向上が図れ、当該飛散物の漏れ防止の点で好ましい。
【0013】
また、請求項3に記載の発明のように、第1の部材(10)の一面(11)に、当該一面(11)より凹んだ凹部(13)を形成し、第2の部材(20)を、凹部(13)を塞ぐように配置し、凹部(13)の底面のうち凹部(13)の側面から離れた位置に、当該底面より突出する凸部(13b)を設け、障壁層(40)が第2の部材(20)に押さえつけられることにより、凹部(13)の底面における凹部(13)の側面と凸部(13b)との隙間に障壁層(40)をはめ込み、接着剤(30)を凹部(13)内にて凸部(13b)よりも中央よりの部位に配置してもよい。
【0014】
それによれば、接着剤(30)の外側への拡がりが、凸部(13b)によって防止されるとともに、凸部(13b)により障壁層(40)の位置決めが容易になる。
【0015】
また、請求項4に記載の発明のように、接着剤(30)により接続された第1の部材(10)および第2の部材(20)を、モールド樹脂(70)により封止し、障壁層(40)のうちモールド樹脂(70)と接する面に、凹凸を設けてもよい。
【0016】
それによれば、障壁層(40)とモールド樹脂(70)との密着力の向上が図れ、障壁層(40)の部分における樹脂剥離の低減が可能となる。
【0017】
なお、特許請求の範囲およびこの欄で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、説明の簡略化を図るべく、図中、同一符号を付してある。
【0019】
(第1実施形態)
図1(a)は、本発明の第1実施形態に係る電子装置S1の概略断面図であり、図1(b)は、同電子装置S1におけるセラミック基板20を(a)中の上方から視た概略平面図である。
【0020】
本実施形態の電子装置S1は、大きくは、第1の部材としてのダイパッド10と、このダイパッド10の一面11上に接着剤30を介して搭載され接続された第2の部材としてのセラミック基板20とを備えて構成されている。
【0021】
第1の部材としてのダイパッド10は板状のものであり、銅や42アロイなどよりなるリードフレームのアイランドとして構成されている。また、第2の部材としてのセラミック基板20は、アルミナなどのよりなる配線基板であり、単層でも多層でもよい。また、第2の部材としては、プリント基板やガラスエポキシ基板などでもよい。
【0022】
接着剤30は、この種の電子装置における一般的なものであり、たとえば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂などよりなる。この接着剤30は、液状態で塗布された後、加熱されることで硬化し、それによって接着力を発現するものであり、当該加熱により反応あるいは発生したガスなどを、空中に飛散物(いわゆるヒューム)として発生するものである、たとえば、シリコーン樹脂の場合には、飛散物は、低分子シロキサンなどである。
【0023】
さらに、本電子装置S1においては、ダイパッド10とセラミック基板20との間において、接着剤30の周囲には、障壁層40が設けられている。そして、接着剤30と接着剤30の外側とは、この障壁層40を挟んで互いに区画されている。
【0024】
言い換えれば、障壁層40は、ダイパッド10とセラミック基板20とが対向する隙間領域の周辺部に設けられ、当該隙間領域の内部に充填されている接着剤30と当該隙間領域の外部とは、障壁層40により区画されている。
【0025】
ここでは、図1に示されるように、障壁層40の平面形状は、矩形板状をなすセラミック基板20に対して、当該基板20の周辺部に沿って配置された矩形枠状(つまり額縁形状)をなしており、接着剤30は、この障壁層40によって取り囲まれている。
【0026】
この障壁層40は、後述する接着剤30の硬化工程にて接着剤30を加熱する時に、接着剤30から発生する上記飛散物が透過しない材料よりなる。具体的には、上記したような接着剤30から発生するガスが透過しないものであればよく、エポキシ樹脂やポリアミド樹脂などの樹脂、セラミック、繊維質の材料、金属などが挙げられる。そして、障壁層40は、これらの材料をプレスや型成形などにより当該障壁層40の形状(ここでは矩形枠状)に成形したものである。
【0027】
そして、障壁層40は、セラミック基板20およびダイパッド10の間に挟み付けられ、押さえられることによって、セラミック基板20、ダイパッド10のそれぞれに対して接着剤などを介さずに直接、接触している。
【0028】
ここで、障壁層40とダイパッド10の一面11との接触部、および、障壁層40とセラミック基板20との接触部においては、ダイパッド10とセラミック基板20の上記隙間領域の外部へ上記飛散物が漏れない程度に、接触する部材同士が密着している。それにより、当該加熱時において、上記飛散物が接着剤30の外側へ漏れることが障壁層40によって防止されている。
【0029】
また、この障壁層40のヤング率は、接着剤30のヤング率に対し,0.1〜10倍程度であることが望ましい。これは、セラミック基板20の下部の変位差による当該基板20への応力集中を避けるためである。
【0030】
また、本実施形態の電子装置S1では、セラミック基板20の外側、ここでは、セラミック基板20の端面の側方に、銅や42アロイなどの導電性材料よりなるリード50が配置されている。
【0031】
このリード50は、ここではダイパッド10をアイランドとしたリードフレームのリードから形成されるが、ダイパッド10とは別体のものであってもかまわない。たとえば、リード50はリードフレームよりなり、ダイパッド10は当該リードフレームとは別体のヒートシンクよりなる場合、これら両者10、50が、かしめや接着などで一体に固定されたものを用いればよい。
【0032】
そして、このリード50とセラミック基板20とは、金やアルミニウムなどよりなるワイヤ60により結線されている。このワイヤ60は、一般的なワイヤボンディングにより形成されるものであり、このワイヤ60を介してリード50とセラミック基板20とは電気的に接続されている。
【0033】
そして、これらダイパッド10、セラミック基板20、接着剤30、障壁層40、リード50およびワイヤ60は、モールド樹脂70により封止されている。このモールド樹脂70は、エポキシ樹脂などの一般的なモールド材料よりなり、たとえばトランスファーモールド法などにより成形されるものである。
【0034】
ここでは、リード50のアウターリード部およびダイパッド10の他面12が、モールド樹脂70より露出している。これは、リード50のアウターリード部にて外部との電気的な接続を行い、また、ダイパッド10の他面12にて放熱を行うためである。
【0035】
このような電子装置S1の製造方法について、図2を参照して述べておく。図2は、本電子装置S1の製造方法を示す工程図であり、(a)はダイパッド10、障壁層40およびセラミック基板20を分解した状態を示す概略平面図、(b)はダイパッド10、障壁層40およびセラミック基板20を組み付けた状態を示す概略断面図である。
【0036】
まず、ダイパッド10の一面11上に、あらかじめ成形された障壁層40を搭載する。この時点で、ダイパッド10とリード50とは一体に連結されたリードフレームを構成している。なお、ダイパッド10とリード50とが別体の場合には、この時点では、互いに接着やかしめなどにより一体に連結された状態とされている。
【0037】
次に、ダイパッド10の一面11のうち障壁層40で取り囲まれた部位に、液状の接着剤30を塗布する。または、ダイパッド10側ではなくセラミック基板20側にて、障壁層40の内周部に対向する部位に、液状の接着剤30を塗布しておいてもよい。
【0038】
続いて、ダイパッド10の一面11上に、障壁層40および障壁層40の内周に位置する接着剤30を介在させた状態で、セラミック基板20を搭載する。このとき、セラミック基板20をダイパッド10に押し付けることにより、障壁層40とダイパッド10の一面11との接触部、および、障壁層40とセラミック基板20との接触部の密着性を確保し、これら接触部における上記飛散物の漏れ防止を実現する。
【0039】
その後、接着剤30を加熱して硬化させる(接着剤の硬化工程)。ここで、上述したように、ダイパッド10とリード50とは一体に連結されているので、この硬化工程においては、図2(b)に示されるように、ダイパッド10の近傍にリード50が位置した形となっている。
【0040】
ここで、従来では、硬化工程を行うと、接着剤30の加熱によって接着剤30から上記飛散物が発生し、図2(b)中の破線の矢印に示されるように、当該飛散物は、セラミック基板20や上記ダイパッド10とセラミック基板20との隙間領域、すなわち、接着剤30の内部から外部へ飛散し、接着部以外でダイパッド10やセラミック基板20に付着したり、リード50に付着したりする。
【0041】
しかし、本実施形態においては、障壁層40は、接着剤30の周囲に位置しつつダイパッド10とセラミック基板20との間に介在しており、ダイパッド10とセラミック基板20に挟み付けられている。そして、障壁層40は、飛散物を透過させない材料であり、また、障壁層40はダイパッド10およびセラミック基板20にそれぞれ密着しており、この密着する部位においても飛散物の透過が防止されている。
【0042】
そのため、この硬化工程においては、当該飛散物は、障壁層40の内部に留められて接着剤30の内部から外部へ飛散することなく、ダイパッド10やセラミック基板20、さらにはリード50に付着することは防止される。
【0043】
こうして、接着剤30の硬化が終了すると、ダイパッド10とセラミック基板20とが接着される。その後は、セラミック基板20とリード50との間でワイヤボンディングを行ってワイヤ60を形成し、このものを図示しない金型に投入し、モールド樹脂70による封止を行う。こうして、本実施形態の電子装置S1ができあがる。
【0044】
以上述べてきたように、本実施形態によれば、接着剤30の材料に制約を設けたり、接着後の洗浄処理を行ったりすることなく、障壁層40を設けることによって、接着剤30の外部にて当該飛散物がダイパッド10やセラミック基板20に付着するのを防止することができる。
【0045】
(第2実施形態)
図3は、本発明の第2実施形態に係る電子装置の要部を示す図であり、(a)はダイパッド10、障壁層40およびセラミック基板20を分解した状態を示す概略平面図、(b)はダイパッド10、障壁層40およびセラミック基板20を組み付けた状態を示す概略平面図、(c)は(b)の概略断面図である。
【0046】
本実施形態は、上記第1実施形態に比べて、ダイパッド10の一面11のうちセラミック基板20および障壁層40が設置される部位に凹部13を設けたことが相違するものであり、ここでは、その相違点を中心に述べることとする。
【0047】
図3に示されるように、本実施形態では、ダイパッド10の一面に、当該一面11より凹んだ凹部13が形成されている。この凹部13は、プレス加工やエッチングなどにより形成されるもので、ここでは、凹部13は開口縁部から内部に向かって段差部13aを有して凹んでいる。
【0048】
そして、接着剤30は凹部13内に配置されている。また、凹部13の開口部はセラミック基板20よりも小さく、セラミック基板20の外形の内部に収まる大きさである。そして、セラミック基板20は、凹部13の開口部を覆い、凹部13を塞ぐように配置されている。
【0049】
また、本実施形態では、障壁層40は矩形枠状であり、凹部13の開口形状は、障壁層40と相似形状をなす矩形枠状である。そして、障壁層40は、ダイパッド10の一面11上にて凹部13の開口縁部に沿って配置されているが、この障壁層40においては、枠の内周部が凹部13の内側に位置し、枠の外周部が凹部13の外側に位置しているとともに、障壁層40は、枠の幅方向に沿って段差部13aを跨いでいる。
【0050】
なお、この様子は、図3(b)に示されており、図3(b)に示される4個の矩形は、内側から順に、障壁層40の内周部、凹部13の段差部13a、障壁層40の外周部およびセラミック基板20の外周部、ダイパッド10の外周部に相当する。
【0051】
そして、障壁層40はセラミック基板20に押し付けられることにより、段差部13aにて当該段差部13aに対応した形状に変形している。ここでは、図3(c)に示されるように、段差部13aは角張った形状の角部であり、障壁層40においては枠の幅方向の断面が、この段差部13aに対応して当該断面L字状に屈曲して変形している。
【0052】
本実施形態によれば、障壁層40が凹部13の段差部13aにて当該段差部13に対応して屈曲した形状に変形されるので、障壁層40とダイパッド10との密着性の向上、および、障壁層40とセラミック基板20との密着性が向上する。そのため、当該飛散物の漏れ防止の点で好ましいものとなる。
【0053】
図4は、本第2実施形態の他の例に係る電子装置の要部を示す図であり、ダイパッド10、障壁層40およびセラミック基板20を組み付けた状態を示す概略断面図である。
【0054】
この図4に示される例では、凹部13の段差部13aを構成する凹部13の側面が、凹部13の底部から開口部に向かって広がるテーパ面である。そして、障壁層40は、その枠の幅方向の断面がこのテーパ面に対応したテーパ形状とされている。この場合も、障壁層40とダイパッド10およびセラミック基板20との密着性が向上するため、当該飛散物の漏れ防止の点で好ましい。
【0055】
(第3実施形態)
図5は、本発明の第3実施形態に係る電子装置の要部を示す図であり、(a)はダイパッド10、障壁層40およびセラミック基板20を分解した状態を示す概略平面図、(b)はダイパッド10、障壁層40およびセラミック基板20を組み付けた状態を示す概略断面図である。
【0056】
上記第1実施形態では、障壁層40は矩形枠状をなし、連続した環状とされていたが、本実施形態では、図5に示されるように、障壁層40は不連続な環状のもの、すなわち、複数個のものが環状に断続的に配置された構成とされている。この場合、ダイパッド10、セラミック基板20やリード50のうち特に飛散物が付着すると問題になる部位に対して、当該部位に通じる接着剤30の外側に、障壁層40を設ければよい。
【0057】
この場合、特に飛散物の付着が問題となる部分の接着剤30の周囲が障壁層40により取り囲まれているので、障壁層40を持たない従来の構成に比べて、上記飛散物の漏れを大幅に抑制できる。なお、本実施形態においても、上記第2実施形態に示したような凹部13を持つ構成を採用してもよいことはもちろんである。
【0058】
(第4実施形態)
図6は、本発明の第4実施形態に係る電子装置の要部を示す図であり、(a)はダイパッド10の一面11上における障壁層40の配置状態を示す概略平面図、(b)はダイパッド10、障壁層40およびセラミック基板20を組み付けた状態を示す概略断面図である。本実施形態では、上記第1実施形態との相違点を中心に述べることとする。
【0059】
図6に示されるように、本実施形態では、ダイパッド10の一面に、当該一面11より凹んだ凹部13が形成されている。この凹部13は、上記図3に示されるものと同様である。そして、ここにおいても、セラミック基板20は、凹部13を塞ぐようにダイパッド10の一面11上に配置されている。
【0060】
さらに、本実施形態では、凹部13の底面のうち凹部13の側面から離れた位置に、当該底面より突出する凸部13bが設けられている。この凸部13bの平面配置パターンは、図6(a)に示されるように、凹部13の底面において環状に設けられている。ここでは、凸部13bの平面配置パターンは、開口形状が矩形である凹部13に対して相似形の矩形をなしている。
【0061】
そして、障壁層40は、凹部13の底面における凹部13の側面と凸部13bとの隙間にはめ込まれており、セラミック基板20により押さえつけられている。そして、接着剤30は、凹部13内にて凸部13bよりも中央寄りの部位に配置されている。
【0062】
このような本実施形態によれば、接着剤30の外側への拡がりが、凸部13bによってせき止められて防止される。また、障壁層40をダイパッド10の一面11に配置するときに、凹部13の側面と凸部13bとの隙間に障壁層40をはめ込めばよいので、障壁層40の位置ずれが抑制され、当該位置決めが容易になる。
【0063】
(第5実施形態)
図7は、本発明の第5実施形態に係る電子装置を示す概略断面図である。本実施形態では、上記第1実施形態との相違点を中心に述べることとする。
【0064】
図7に示されるように、本実施形態では、障壁層40のうちモールド樹脂70と接する面に、凹凸が設けられている。このような凹凸は、たとえば化学的または物理的なエッチングなどによって当該部位を粗くすることにより形成される。そして、本実施形態によれば、障壁層40とモールド樹脂70との密着力の向上が図れ、障壁層40の部分における樹脂剥離が低減される。
【0065】
(他の実施形態)
なお、上記各実施形態では、第1の部材としてダイパッドを採用し、第2の部材としてセラミック基板を採用した例を挙げたが、第1の部材および第2の部材としては、これらダイパッドやセラミック基板以外にも、プリント基板、リードフレームなど種々の基板、あるいはICチップやフリップチップなど種々の電子部品などの中から選択されたものを適用してもよい。
【0066】
また、上記各実施形態では、障壁層40の平面パターンは、連続的もしくは断続的な矩形枠状であったが、これに限定するものではなく、円形の枠形状、四角形以外の多角形枠状などであってもよい。
【0067】
また、電子装置としては、第1の部材上に接着剤を介して第2の部材を接続してなるものであればよく、上記したようにモールド樹脂70による封止が行われていないもの、つまりモールド樹脂を省略した構成であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】(a)は本発明の第1実施形態に係る電子装置の概略断面図であり、(b)は、同電子装置におけるセラミック基板の(a)中の上視概略平面図である。
【図2】第1実施形態における電子装置の製造方法を示す工程図であり、(a)はダイパッド、障壁層およびセラミック基板の分解状態を示す概略平面図、(b)はこれら部材の組み付け状態を示す概略断面図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る電子装置の要部を示す図であり、(a)はダイパッド、障壁層およびセラミック基板の分解状態を示す概略平面図、(b)はこれら部材の組み付け状態を示す概略平面図、(c)は(b)の概略断面図である。
【図4】第2実施形態の他の例に係る電子装置の要部を示す概略断面図である。
【図5】本発明の第3実施形態に係る電子装置の要部を示す図であり、(a)はダイパッド、障壁層およびセラミック基板の分解状態を示す概略平面図、(b)はこれら部材の組み付け状態を示す概略断面図である。
【図6】本発明の第4実施形態に係る電子装置の要部を示す図であり、(a)はダイパッド、障壁層およびセラミック基板の分解状態を示す概略平面図、(b)はこれら部材の組み付け状態を示す概略断面図である。
【図7】本発明の第5実施形態に係る電子装置を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0069】
10 第1の部材としてのダイパッド
11 ダイパッドの一面
13 凹部
13a 段差部
13b 凸部
20 第2の基板としてのセラミック基板
30 接着剤
40 障壁層
70 モールド樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の部材(10)の一面(11)上に、接着剤(30)を介して第2の部材(20)を搭載し、前記接着剤(30)を加熱して硬化させることにより、前記第1の部材(10)と前記第2の部材(20)とを前記接着剤(30)により接続してなり、前記接着剤(30)は前記加熱により空中に飛散物を発生するものである電子装置において、
前記第1の部材(10)と前記第2の部材(20)との間において前記接着剤(30)の周囲には、前記接着剤(30)と前記接着剤(30)の外側とを区画する障壁層(40)が設けられており、この障壁層(40)によって、前記加熱の時における前記飛散物の前記接着剤(30)の外側への漏れが防止されていることを特徴とする電子装置。
【請求項2】
前記第1の部材(10)の一面(11)には、当該一面(11)より凹んだ凹部(13)が形成されており、
前記接着剤(30)は前記凹部(13)内に配置され、前記第2の部材(20)は前記凹部(13)を塞ぐように配置されており、
前記障壁層(40)は、前記凹部(13)の内側から前記凹部(13)の段差部(13a)を跨ぎ前記凹部(13)の外側に位置するように前記凹部(13)の開口縁部に沿って配置されており、
さらに前記障壁層(40)は前記第2の部材(20)に押し付けられることにより、前記段差部(13a)にて当該段差部(13a)に対応した形状に変形されていることを特徴とする請求項1に記載の電子装置。
【請求項3】
前記第1の部材(10)の一面(11)には、当該一面(11)より凹んだ凹部(13)が形成されており、
前記第2の部材(20)は前記凹部(13)を塞ぐように配置されており、
前記凹部(13)の底面のうち前記凹部(13)の側面から離れた位置に、当該底面より突出する凸部(13b)が設けられており、
前記障壁層(40)は、前記第2の部材(20)に押さえつけられることにより、前記凹部(13)の底面における前記凹部(13)の側面と前記凸部(13b)との隙間にはめ込まれており、
前記接着剤(30)は前記凹部(13)内にて前記凸部(13b)よりも中央よりの部位に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の電子装置。
【請求項4】
前記接着剤(30)により接続された前記第1の部材(10)および前記第2の部材(20)は、モールド樹脂(70)により封止されており、
前記障壁層(40)のうち前記モールド樹脂(70)と接する面には、凹凸が設けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の電子装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−141159(P2010−141159A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−316515(P2008−316515)
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】