説明

電子部品、誘電体磁器組成物およびその製造方法

【課題】誘電体層を薄層化しても、誘電率と容量温度特性とを両立できる誘電体磁器組成物およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】式ABO(AはBaまたはBaおよびCa、BはTiまたはTiおよびZr)で表されるペロブスカイト構造を有する化合物を含む主成分と、Rの酸化物(RはY,La,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,YbおよびLuから選ばれる少なくとも1種)を含む第4副成分とを含有する誘電体磁器組成物の製造方法であって、主成分原料を第1および第2主成分原料とに分け、第1主成分原料と第4副成分原料の一部とを予め反応させ、反応済原料を得る工程と、反応済原料に、第2主成分および残りの第4副成分原料を添加する工程とを有し、第1および第2主成分のモル数をn1、n2モルとした場合に、0.5≦n1/(n1+n2)≦1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば積層セラミックコンデンサなどの電子部品の誘電体層などとして用いられる誘電体磁器組成物およびその製造方法と、この誘電体磁器組成物を誘電体層として有する電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品の一例である積層セラミックコンデンサは、たとえば、所定の誘電体磁器組成物からなるセラミックグリーンシートに、所定パターンの内部電極を印刷し、それらを複数枚交互に重ね、その後一体化して得られるグリーンチップを、同時焼成して製造される。積層セラミックコンデンサの内部電極層は、焼成によりセラミック誘電体と一体化されるために、セラミック誘電体と反応しないような材料を選択する必要がある。このため、内部電極層を構成する材料として、従来では白金やパラジウムなどの高価な貴金属を用いることを余儀なくされていた。
【0003】
しかしながら、近年ではニッケルや銅などの安価な卑金属を用いることができる誘電体磁器組成物が開発され、大幅なコストダウンが実現した。
【0004】
また、近年、電子回路の高密度化に伴う電子部品の小型化に対する要求は高く、積層セラミックコンデンサの小型化、大容量化が急速に進んでいる。積層セラミックコンデンサを小型、大容量化するためには、一般に誘電体層を薄層化する方法や、誘電体層に含有される誘電体磁器組成物の比誘電率を増加させる方法などがとられている。しかしながら、誘電体層を薄くすると、直流電圧を印加したときに誘電体層にかかる電界が強くなるため、比誘電率の経時変化、すなわち容量の経時変化が著しく大きくなってしまうという問題があった。
【0005】
直流電界下での容量の経時変化を改良するために、誘電体層に含有される誘電体粒子として、小さな平均結晶粒径を有する誘電体粒子を使用する方法が提案されている(たとえば、特許文献1)。この特許文献1には、特定組成を有し、誘電体粒子の平均結晶粒径が0.45μm以下である誘電体磁器組成物が開示されている。しかしながら、この文献記載の誘電体磁器組成物では、比誘電率が低すぎるため、小型化、大容量化に対応することは困難であった。
【0006】
また、本出願人は、特許文献2において、希土類元素を9配位時の有効イオン半径の値により、2つのグループに分け、2つのグループのうち、一方のグループに属する元素の添加量と、他方のグループに属する元素の添加量とを、特定の範囲内とし、さらにこれらの添加量の比を特定の範囲内とすることで、比誘電率と、絶縁抵抗(IR)の加速寿命とを、向上させた積層セラミックコンデンサ等の電子部品を開示している。
【0007】
しかしながら、電子部品の小型化が急速に進むにつれ、積層セラミックコンデンサについても、さらなる小型化、大容量化に対応する必要が生じている。上述したように、積層セラミックコンデンサの小型化、大容量化に対応する方法として、誘電体層を薄層化する方法や比誘電率を向上させる方法が用いられる。誘電体層を薄層化する場合には、比誘電率の経時変化やその他の特性(静電容量の温度特性、IR加速寿命等)を、薄層化前と同等もしくはそれ以上とすることが求められる。したがって、積層セラミックコンデンサの小型化、大容量化に対応するには、諸特性(比誘電率の経時変化、静電容量の温度特性、IR加速寿命等)を維持しつつ誘電体層をさらに薄層化し、かつ、比誘電率を向上させることが要求される。
【0008】
また、積層セラミックコンデンサの用途は多岐に渡るため、求められる特性も幅広い。したがって、誘電体層を構成する誘電体磁器組成物について、高特性を維持しつつ求められる特定の特性に応じるための組成設計が要求されている。しかしながら、特許文献2に開示されている誘電体磁器組成物では、良好とすることができる特性が限られる場合があるため、用途に応じた特性を得ようとする際には、柔軟性に欠ける傾向にあった。
【特許文献1】特開平8−124785号公報
【特許文献2】特開2005−29423号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、誘電体磁器組成物の主成分を種々のものとした場合であっても、誘電体層を薄層化が可能であり、高い比誘電率と良好な静電容量の温度特性とが得られ、信頼性を向上させることができる誘電体磁器組成物およびその製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、このような誘電体磁器組成物で構成してある誘電体層を有する積層セラミックコンデンサ等の電子部品を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、種々のペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を主成分とした場合に、主成分の原料を、第1主成分の原料と、第2主成分の原料とに分け、第1主成分の原料のみと、副成分として添加される希土類元素の酸化物の原料とを、反応させ、反応済み原料とし、この反応済み原料に、第2主成分の原料および残りの副成分の原料を添加する方法を採用した。また、上記の添加方法において、主成分全体に対する第1主成分の比を特定の範囲とした。その結果、比誘電率や静電容量の温度特性を維持しつつ、特定の特性(誘電損失やCR積等)を良好にすることができることを見出した。
さらに、本発明者等は、上記の希土類元素を9配位時の有効イオン半径により2つのグループに分け、2つのグループのうちいずれか一方または両方から選ばれる元素の酸化物の添加方法を上記のものとし、最終的に得られる誘電体磁器組成物中において、上記の2つのグループのうち、一方のグループに属する元素のモル数と、他方のグループに属する元素のモル数との比を特定の範囲内とすることで、上記の効果をさらに大きくできることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、第1の観点に係る誘電体磁器組成物を製造する方法は、一般式ABO(ただし、Aは、Ba単独またはBaおよびCaの複合であり、Bは、Ti単独またはTiおよびZrの複合である)で表されるペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を含む主成分と、
Rの酸化物(ただし、Rは、Y,La,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,YbおよびLuから選ばれる少なくとも1種)を含む第4副成分と、を含有する誘電体磁器組成物を製造する方法であって、
前記主成分の原料を、第1主成分の原料と、第2主成分の原料と、の2つに分ける工程と、
前記第1主成分の原料と、前記誘電体磁器組成物に含有されることとなる前記第4副成分の原料の一部と、を予め反応させ、反応済み原料を得る工程と、
前記反応済み原料に、前記第2主成分および前記誘電体磁器組成物に含有されることとなる残りの前記第4副成分の原料を添加する工程と、を有し、
前記第1主成分のモル数をn1モル、前記第2主成分のモル数をn2モルとした場合に、前記第1主成分および前記第2主成分の合計モル数に対する前記第1主成分の比が、0.5≦n1/(n1+n2)≦1、好ましくは、0.75≦n1/(n1+n2)≦0.90であることを特徴とする。
【0012】
第1の観点においては、前記主成分の原料を第1主成分の原料と第2主成分の原料と、に分け、前記第1主成分の原料のみと、前記第4副成分の原料の一部とを、予め反応させることを特徴とし、さらに、前記主成分全体に対する第1主成分の割合を上記の範囲とする。主成分の原料と第4副成分の原料の一部とを反応させた場合に、多くの特性を向上させることができるが、反応させることで、若干悪化してしまう特性もみられる。そのため、主成分の原料すべてを第4副成分の原料と反応させるのではなく、主成分の原料の一部(第1主成分)と、第4副成分の原料とを反応させて、反応済み原料を得る。この反応済み原料に、主成分に由来する特性を維持している第2主成分の原料を添加することで、求められる特性を実現でき、さらに、特定の特性をも良好とすることができる。
なお、前記第1主成分と前記第4副成分の一部とを、反応させることで、少なくとも、前記第1主成分の粒子の内部に前記第4副成分を存在させた反応済み原料を得ることができる。
【0013】
第1の観点では、得られた前記反応済み原料において、少なくとも、第4副成分が主成分の粒子の内部に存在していれば良い。つまり、たとえば、主成分の粒子の内部において、第4副成分が偏在していても良いし、均一に存在していても良いし、また、その含有割合が徐々に変化する態様であっても良い。
その後、得られた前記反応済み原料に、前記第2主成分と、誘電体磁器組成物に含まれることとなる残りの前記第4副成分と、を添加する。このようにすることで、比誘電率や静電容量の温度特性等の特性を良好にしつつ、その他の特性、たとえば、誘電損失やCR積を良好とすることができる。
しかも、主成分の原料として、上記した種々のペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を使用できる。その結果、求められる特性に柔軟に対応できる誘電体磁器組成物を製造することができる。
【0014】
第1の観点において、好ましくは、前記第1主成分の原料と、前記第4副成分の原料の少なくとも一部とを予め固溶させ、前記反応済み原料を用いる。このようにすることにより、前記主成分に前記第4副成分を均一に固溶させることも可能となり、上記の特性をさらに向上させることができる。
【0015】
第1の観点において、反応とは、固溶、コーティングなどを含めた概念で用い、第1主成分の内部に第4副成分が存在するような状態を作り出すための方法を含む。
【0016】
第1の観点において、最終的に得られる前記誘電体磁器組成物中における前記第4副成分の含有量を、前記主成分100モルに対して、R換算で、好ましくは0.1〜10モル、より好ましくは0.2〜6モルとする。
【0017】
誘電体磁器組成物に含有される第4副成分の含有量を上記範囲とすることにより、静電容量の温度特性を向上させることができる。第4副成分の含有量が少なすぎると、第4副成分の添加効果が得られなくなり、静電容量の温度特性が悪化してしまう傾向にあり、一方、含有量が多すぎると、焼結性が悪化する傾向にある。
【0018】
第1の観点において、前記第1主成分の原料と予め反応させておく前記第4副成分を、前記主成分100モルに対して、R換算で、0〜0.5モル(ただし、0は含まない)とすることが好ましい。
【0019】
あるいは、本発明において、前記第1主成分の原料と予め反応させておく前記第4副成分の比率を、R換算で、前記誘電体磁器組成物に最終的に含有されることとなる前記第4副成分の総量100モル%に対して、0〜50モル%(ただし、0は含まない)とすることが好ましく、0〜25モル%(ただし、0は含まない)とすることがより好ましい。
【0020】
前記第1主成分の原料と、予め反応させる前記第4副成分の原料の量が多すぎると、焼成後に得られる焼結体の結晶粒径が大きくなり過ぎてしまい、温度特性が悪化したり、絶縁抵抗(IR)が低下してしまう傾向にある。
【0021】
第2の観点に係る誘電体磁器組成物を製造する方法は、
一般式ABO(ただし、Aは、Ba単独またはBaおよびCaの複合であり、Bは、Ti単独またはTiおよびZrの複合である)で表されるペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を含む主成分と、
前記Rの酸化物に含まれるR1の酸化物(ただし、R1は、9配位時の有効イオン半径が108pm未満の希土類元素で構成される第1元素群から選ばれる少なくとも1種)を含む第4a副成分と、
前記Rの酸化物に含まれるR2の酸化物(ただし、R2は、9配位時の有効イオン半径が108pm〜113pmの希土類元素で構成される第2元素群から選ばれる少なくとも1種)を含む第4b副成分と、を含有する誘電体磁器組成物を製造する方法であって、
前記主成分の原料を、第1主成分の原料と、第2主成分の原料と、の2つに分ける工程と、
前記主成分の原料と、前記誘電体磁器組成物に含有されることとなる前記第4a副成分の原料の一部および/または前記第4b副成分の原料の一部と、を予め反応させ、反応済み原料を得る工程と、
前記反応済み原料に、前記誘電体磁器組成物に含有されることとなる残りの前記第4a副成分の原料および前記第4b副成分の原料を添加する工程と、を有し、
最終的に得られる前記誘電体磁器組成物中における前記第4a副成分のR1のモル数M1に対する前記第4b副成分のR2のモル数M2の比(M2/M1)が、0≦M2/M1≦0.25であり、
前記第1主成分のモル数をn1モル、前記第2主成分のモル数をn2モルとした場合に、前記第1主成分および前記第2主成分の合計モル数に対する前記第1主成分の比が、0.5≦n1/(n1+n2)≦1、好ましくは、0.75≦n1/(n1+n2)≦0.90であることを特徴とする。
【0022】
第2の観点では、R元素の9配位時の有効イオン半径の値により、第1の観点におけるRの酸化物をR1とR2とに分け、R1の酸化物を含む副成分を第4a副成分とし、R2の酸化物を含む副成分を第4b副成分とする。そして、第1の観点と同様に、前記主成分の原料を、第1主成分の原料と第2主成分の原料と、に分け、前記第1主成分の原料のみと、前記第4a副成分の原料の一部および/または前記第4b副成分の原料の一部とを、予め反応させることに特徴とする。さらに、前記主成分全体に対する第1主成分の割合を上記の範囲とすることで、高い比誘電率や良好な温度特性、IR寿命等を実現しつつ、その他の特性、たとえば、誘電損失やCR積を良好とすることができる。
【0023】
第1の観点と同様に、第1主成分の原料と前記第4a副成分の原料の一部および/または第4b副成分の原料の一部とを反応させた場合に、多くの特性を向上させることができるが、反応させることで、若干悪化してしまう特性もみられる。したがって、第4a副成分および/または第4b副成分と反応させた第1主成分と、反応させない第2主成分とを併用することで、悪化してしまう特性を最小限とすることができる。
なお、前記第1主成分の原料と、前記第4a副成分の原料の一部および/または前記第4b副成分の原料の一部とを、予め反応させることにより、少なくとも、前記第1主成分の粒子の内部に前記第4a副成分および/または前記第4b副成分を存在させた反応済み原料を得ることができる。
【0024】
第2の観点では、得られた前記反応済み原料において、少なくとも、第4a副成分および/または第4b副成分が第1主成分の粒子の内部に存在していれば良い。つまり、第1の観点と同様に、たとえば、第1主成分の粒子の内部において、第4a副成分および/または第4b副成分が偏在していても良いし、均一に存在していても良いし、また、その含有割合が徐々に変化する態様であっても良い。
その後、得られた前記反応済み原料に、前記第2主成分の原料と、誘電体磁器組成物に含まれることとなる残りの前記第4a副成分および第4b副成分の原料と、を添加し、最終的に得られる誘電体磁器組成物中における前記第4a副成分のR1のモル数M1に対する前記第4b副成分のR2のモル数M2の比(M2/M1)を上記の範囲内とする。
上記のようにすることで、比誘電率を向上させ、静電容量の温度特性を良好としつつ、その他の特性、たとえば、誘電損失を低下させ、CR積を良好とすることができる。
しかも、主成分の原料として、上記した種々のペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を使用できる。その結果、求められる特性に柔軟に対応できる誘電体磁器組成物を製造することができる。
【0025】
第2の観点において、好ましくは、前記第1主成分の原料と、前記第4a副成分の原料の一部および/または前記第4b副成分の原料の一部とを、予め固溶させる。このようにすることにより、前記第1主成分に前記第4a副成分および/または前記第4b副成分を均一に固溶させることも可能となり、上記の特性をさらに向上させることができる。
【0026】
第2の観点において、反応とは、固溶、コーティングなどを含めた概念で用い、第1主成分の内部に第4a副成分および/または第4b副成分が存在するような状態を作り出すための方法を含む。
【0027】
第2の観点においては、最終的に得られる前記誘電体磁器組成物中における前記第4a副成分の含有量を、前記主成分100モルに対して、R1換算で、好ましくは0〜10モル(ただし、0は含まない)とする。前記第4a副成分の含有量の下限値として、R1換算で、より好ましくは、0.1モル以上、さらに好ましくは0.2モル以上とする。また、前記第4a副成分の含有量の上限値として、R1換算で、より好ましくは、6モル以下、さらに好ましくは5モル以下とする。
また、最終的に得られる前記誘電体磁器組成物中における前記第4b副成分の含有量を、前記主成分100モルに対して、R2換算で、好ましくは0〜2モル(ただし、0は含まない)、より好ましくは0〜1モル(ただし、0は含まない)とする。
【0028】
第2の観点においては、最終的に得られる誘電体磁器組成物に含有される第4a副成分および第4b副成分の含有量を上記範囲内とすることにより、比誘電率と、静電容量の温度特性とを両立でき、さらにIR加速寿命を良好にすることができる。第4a副成分の含有量が少なすぎると、静電容量の温度特性を改善する効果が得られなくなり、一方、第4a副成分の含有量が多すぎると、焼結性が悪化する傾向にある。また、第4b副成分の含有量が少なすぎると、IRおよびIR加速寿命の改善効果が得られなくなり、一方、第4b副成分の含有量が多すぎると、静電容量の温度特性が悪化する傾向にある。
【0029】
第2の観点において、前記第1主成分の原料と予め反応させておく前記第4a副成分および/または前記第4b副成分を、前記主成分100モルに対して、R1および/またはR2換算で、0〜0.5モル(ただし、0は含まない)とすることが好ましく、より好ましくは、0〜0.4モル(ただし、0は含まない)とする。
【0030】
前記第1主成分の原料と予め反応させる前記第4a副成分および/または前記第4b副成分の原料の量が多すぎると、焼成後に得られる焼結体の結晶粒径が大きくなり過ぎてしまい、静電容量の温度特性が悪化したり、IR加速寿命が低下してしまう傾向にある。
【0031】
第2の観点において、好ましくは、前記第1元素群を構成する希土類元素の9配位時の有効イオン半径をr1とし、前記第2元素群を構成する希土類元素の9配位時の有効イオン半径をr2とした場合に、r1とr2との比(r2/r1)が、1.007<r2/r1<1.06の関係を満足するように、前記第1元素群および前記第2元素群が構成されている。
【0032】
第2の観点において、好ましくは、前記R1が、Y、Ho、Er、Tm、YbおよびLuから選ばれる少なくとも1種である。
【0033】
第2の観点において、好ましくは、前記R2が、Dy、Tb、GdおよびEuから選ばれる少なくとも1種である。
【0034】
R1およびR2の9配位時の有効イオン半径の比を上記の範囲内とし、R1およびR2を上記の構成とすることで、本発明の効果をより大きくすることができる。
【0035】
なお、本明細書に記載の有効イオン半径は、文献「R.D.Shannon,Acta Crystallogr.,A32,751(1976)」に基づく値である。
【0036】
第1および第2のいずれの観点においても、好ましくは、前記主成分が、チタン酸バリウムを含む。
【0037】
第1および第2のいずれの観点においても、好ましくは、前記誘電体磁器組成物は、
MgO、CaO、BaOおよびSrOから選ばれる少なくとも1種を含む第1副成分と、
SiOを主として含有し、MO(ただし、MはMg、Ca、BaおよびSrから選ばれる少なくとも1種)、LiOおよびBから選ばれる少なくとも1種を含む第2副成分と、
、MoOおよびWOから選ばれる少なくとも1種を含む第3副成分と、をさらに含有し、
前記主成分100モルに対する各副成分の比率を、
第1副成分:0.1〜5モル、
第2副成分:0.1〜12モル、
第3副成分:0〜0.3モル(ただし、0は含まない)、
とする。
【0038】
第1および第2のいずれの観点においても、好ましくは、前記誘電体磁器組成物は、MnOおよび/またはCrを含む第5副成分を、さらに含有し、前記主成分100モルに対する第5副成分の比率を、0.05〜1.0モルとする。
【0039】
第1の観点においては、前記第4副成分とともに、前記第1〜第3副成分(より好ましくは、さらに第5副成分)を含有させることにより、静電容量の温度特性を向上させることができ、特に、EIA規格のX7R特性(−55〜125℃、ΔC=±15%以内)を満足させることができる。
第2の観点においては、前記第4a副成分および前記第4b副成分とともに、前記第1〜第3副成分(より好ましくは、さらに第5副成分)を含有させることにより、静電容量の温度特性を向上させることができ、特に、EIA規格のX7R特性(−55〜125℃、ΔC=±15%以内)を満足させることができる。なお、前記第1〜第3、第5副成分の添加時期については、特に限定されないが、前記第1〜第3、第5副成分は、予め反応させた後の反応済み原料に添加することが好ましい。
【0040】
第1および第2のいずれの観点においても、前記主成分の原料として、平均粒径が好ましくは0.05〜0.5μm、より好ましくは0.1〜0.4μmである原料を使用する。平均粒径が上記範囲内である主成分の原料を使用することにより、焼結後の誘電体粒子の平均結晶粒径を、好ましくは0.1〜0.3μmと微細化することができるため、比誘電率の経時変化を低減することができる。
【0041】
本発明に係る誘電体磁器組成物は、上記のいずれかに記載の方法で製造される誘電体磁器組成物である。
【0042】
本発明に係る電子部品は、上記記載の誘電体磁器組成物で構成してある誘電体層を有する。電子部品としては、特に限定されないが、積層セラミックコンデンサ、圧電素子、チップインダクタ、チップバリスタ、チップサーミスタ、チップ抵抗、その他の表面実装(SMD)チップ型電子部品が例示される。
【発明の効果】
【0043】
本発明によると、上記の主成分の原料を、第1主成分原料と第2主成分原料とに分け、第1主成分および第2主成分の合計モル数に対する第1主成分の比を上記の範囲とし、第1主成分の原料のみを、副成分である希土類元素の酸化物(第4副成分)の原料と反応させ、反応済み原料とする。その反応済み原料に、第2主成分および残りの副成分を添加し、反応済み原料と第2主成分の原料とを併用することで、比誘電率やIR寿命等の特性を良好に維持しつつ、その他の特定の特性(誘電損失、CR積等)も良好である誘電体磁器組成物およびその製造方法を提供することができる。
さらに、上記の希土類元素の9配位時の有効イオン半径により希土類元素をR1とR2とに分け、R1の酸化物を含む副成分を第4a副成分とし、R2の酸化物を含む副成分を第4b副成分とする。そして、第4a副成分および第4b副成分のうちいずれか一方または両方から選ばれる元素の酸化物の添加方法を上記の方法とし、最終的に得られる誘電体磁器組成物中において、第4a副成分のR1のモル数M1に対する前記第4b副成分のR2のモル数M2の比(M2/M1)を上記の範囲内とすることで、上記の効果をさらに大きくできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサの断面図である。
【0045】
積層セラミックコンデンサ1
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサ1は、誘電体層2と内部電極層3とが交互に積層された構成のコンデンサ素子本体10を有する。このコンデンサ素子本体10の両端部には、素子本体10の内部で交互に配置された内部電極層3と各々導通する一対の外部電極4が形成してある。コンデンサ素子本体10の形状に特に制限はないが、通常、直方体状とされる。また、その寸法にも特に制限はなく、用途に応じて適当な寸法とすればよい。
【0046】
内部電極層3は、各端面がコンデンサ素子本体10の対向する2端部の表面に交互に露出するように積層してある。一対の外部電極4は、コンデンサ素子本体10の両端部に形成され、交互に配置された内部電極層3の露出端面に接続されて、コンデンサ回路を構成する。
【0047】
誘電体層2
誘電体層2は、本発明の第1の観点および第2の観点に係る誘電体磁器組成物を含有する。
第1の観点に係る誘電体磁器組成物は、一般式ABO(ただし、Aは、Ba単独またはBaおよびCaの複合であり、Bは、Ti単独またはTiおよびZrの複合である)で表されるペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を含む主成分と、Rの酸化物(ただし、RはY,La,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,YbおよびLuから選択される少なくとも1種)を含む第4副成分を少なくとも有している。この際、酸素(O)量は、上記式の化学量論組成から若干偏倚してもよい。
【0048】
第1の観点では、第4副成分を含有させ、後述する製造方法において所定の添加方法を採用することで、諸特性、特に、比誘電率、IR寿命等を良好とすることができる。以下に、主成分および第4副成分について詳細に述べる。
【0049】
主成分は、具体的には、組成式(Ba1−xCa)(Ti1−yZr)Oで表されるペロブスカイト型結晶構造を有する化合物である。好ましくは、主成分にチタン酸バリウムが含まれている。
【0050】
本実施形態では、上記式中、xは、0≦x≦0.2、好ましくは0≦x≦0.15、より好ましくは、0≦x≦0.10である。xはCa原子数を表し、xを上記範囲とすることにより、容量温度係数や比誘電率を任意に制御することができる。xが大きすぎると、比誘電率が低くなってしまう傾向にある。一方、xが小さすぎると容量温度特性が悪化する傾向にある。ただし、本発明においては、必ずしもCaを含まなくてもよく、Baだけを含有するものであってもよい。
【0051】
本実施形態では、上記式中、yは、0≦y≦0.2、好ましくは、0≦y≦0.15、より好ましくは、0≦y≦0.10である。である。yはZr原子数を表すが、TiOに比べ還元されにくいZrOを置換していくことにより耐還元性がさらに増していく傾向がある。ただし、本発明においては、必ずしもZrを含まなくてもよく、Tiだけを含有するものであってもよい。
【0052】
なお、第1主成分と第2主成分とが、異なるものであってもよい。たとえば、第1主成分がBaTiOであり、第2主成分が、(Ba0.9Ca0.1)(Ti0.9Zr0.1)Oであってもよく、所望の特性により適宜決定すればよい。
【0053】
第4副成分は、Rの酸化物を含有する副成分である。Rの酸化物のR元素は、RはY,La,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,YbおよびLuから選択される少なくとも1種の元素であり、これらのなかでも、Y,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Luが好ましく、さらに好ましくは、Y,Tb,Ybである。
【0054】
第4副成分は、IR加速寿命特性を向上させる効果がある。第4副成分の含有量は、R換算で0.1〜10モルであることが好ましく、より好ましくは0.2〜6モルである。含有量が少なすぎると、第4副成分の添加効果が得られなくなり、容量温度特性が悪くなってしまう。一方、含有量が多すぎると、焼結性が悪化する傾向にある。なお、後に詳述するように、本実施形態の製造方法においては、上記第4副成分の原料の一部を、第1主成分の原料と予め反応させる工程を採用している。
【0055】
第2の観点に係る誘電体磁器組成物は、一般式ABO(ただし、Aは、Ba単独またはBaおよびCaの複合であり、Bは、Ti単独またはTiおよびZrの複合である)で表されるペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を含む主成分と、前記Rの酸化物に含まれるR1の酸化物(ただし、R1は、9配位時の有効イオン半径が108pm未満の希土類元素で構成される第1元素群から選ばれる少なくとも1種)を含む第4a副成分と、前記Rの酸化物に含まれるR2の酸化物(ただし、R2は、9配位時の有効イオン半径が108pm〜113pmの希土類元素で構成される第2元素群から選ばれる少なくとも1種)を含む第4b副成分と、を少なくとも含有する。この際、酸素(O)量は、上記式の化学量論組成から若干偏倚してもよい。
【0056】
第2の観点では、第4a副成分と第4b副成分とを含有させ、後述する所定の添加方法を採用し、さらに、R1(第4a副成分)とR2(第4b副成分)とのモル比を特定の範囲とすることで、諸特性、特に、比誘電率、IR寿命等を良好とすることができる。主成分の詳細は、第1の観点に準ずる。以下に、第4a副成分および第4b副成分について詳細に述べる。
【0057】
第4a副成分は、第4副成分に含まれ、R1の酸化物を含有する副成分である。R1は、第1元素群から選ばれる少なくとも1種であり、第1元素群には、Y(107.5pm)、Ho(107.2pm)、Er(106.2pm)、Tm(105.2pm)、Yb(104.2pm)およびLu(103.2pm)が含まれる。これらの中でも、Y、Yb、Erが好ましく、Y、Ybがより好ましい。
【0058】
第4a副成分は、静電容量の温度特性を平坦化させる効果がある。第4a副成分の含有量は、R1換算で、0〜10モル(ただし、0は含まない)であることが好ましい。含有量の下限値として、R1換算で、より好ましくは、0.1モル以上、さらに好ましくは0.2モル以上とする。また、含有量の上限値として、R1換算で、より好ましくは、6モル以下、さらに好ましくは5モル以下とする。含有量が少なすぎると、第4a副成分の添加効果が得られなくなり、静電容量の温度特性が悪くなってしまう。一方、含有量が多すぎると、焼結性が悪化する傾向にある。
【0059】
第4b副成分は、第4副成分に含まれ、R2の酸化物を含有する副成分である。R2は、第2元素群から選ばれる少なくとも1種であり、第2元素群には、Dy(108.3pm)、Tb(109.5pm)、Gd(110.7pm)およびEu(112pm)が含まれる。これらの中でも、Tb、Gd、Euが好ましく、Tb、Gdがより好ましい。
【0060】
第4b副成分は、IR、IR加速寿命を改善する効果がある。第4b副成分の含有量は、R2換算で、0〜2モル(ただし、0は含まない)であることが好ましく、より好ましくは0〜1モル(ただし、0は含まない)、さらに好ましくは、0〜0.5モル(ただし、0は含まない)である。含有量が少なすぎると、IRおよびIR寿命の改善効果が得られなくなり、一方、含有量が多すぎると、容量温度特性が悪化する傾向にある。なお、後に詳述するように、本実施形態の製造方法においては、上記第4a副成分の原料の一部および/または上記第4b副成分の原料の一部を、第1主成分の原料と予め反応させる工程を採用している。
【0061】
第2の観点においては、第4a副成分におけるR1のモル数M1と、第4b副成分におけるR2のモル数M2との比(M2/M1)が、0≦M2/M1≦0.25、より好ましくは0≦M2/M1≦0.20、さらに好ましくは0≦M2/M1≦0.15である。
【0062】
第2の観点においては、上記第1元素群を構成する希土類元素の9配位時の有効イオン半径をr1とし、上記第2元素群を構成する希土類元素の9配位時の有効イオン半径をr2とした場合に、r1とr2との比(r2/r1)が、1.007<r2/r1<1.06の関係を満足するように、前記第1元素群および前記第2元素群が構成されていることが好ましい。たとえば、好ましい組み合わせとして、Y(R1)およびGd(R2)の組み合わせが挙げられる。
【0063】
第1の観点および第2の観点に係る誘電体磁器組成物は、さらに、以下の第1〜第3、第5副成分を、さらに含有することが好ましい。
【0064】
すなわち、MgO、CaO、BaOおよびSrOから選ばれる少なくとも1種を含む第1副成分と、SiOを主として含有し、MO(ただし、MはMg、Ca、BaおよびSrから選ばれる少なくとも1種)、LiOおよびBから選ばれる少なくとも1種を含む第2副成分と、V、MoOおよびWOから選ばれる少なくとも1種を含む第3副成分と、MnOおよび/またはCrを含む第5副成分と、をさらに含有することが好ましい。
【0065】
前記主成分に対する上記各副成分の比率は、各酸化物換算で、前記主成分100モルに対し、
第1副成分:0.1〜5モル、
第2副成分:0.1〜12モル、
第3副成分:0〜0.3モル(ただし、0は含まない)、
第5副成分:0.05〜1.0モル
であり、好ましくは、
第1副成分:0.2〜4モル、
第2副成分:0.5〜6モル、
第3副成分:0〜0.25モル(ただし、0は含まない)、
第5副成分:0.05〜0.4モル
である。
【0066】
第1の観点および第2の観点に係る誘電体磁器組成物に、さらに上記第1〜第3、第5副成分を含有させることにより、静電容量の温度特性を向上させることができ、好ましくはEIA規格のX7R特性(−55〜125℃、ΔC=±15%以内)を満足させることができる。
【0067】
なお、本明細書では、主成分および各副成分を構成する各酸化物を化学量論組成で表しているが、各酸化物の酸化状態は、化学量論組成から外れるものであってもよい。ただし、各副成分の上記比率は、各副成分を構成する酸化物に含有される金属量から上記化学量論組成の酸化物に換算して求める。
【0068】
上記各副成分の含有量の限定理由は以下のとおりである。
第1副成分(MgO、CaO、BaOおよびSrO)の含有量が少なすぎると、静電容量の温度変化率が大きくなってしまう。一方、含有量が多すぎると、焼結性が悪化すると共に、IR加速寿命が悪化する傾向にある。なお、第1副成分中における各酸化物の構成比率は任意である。
【0069】
第2副成分は、主成分としてSiOを含み、かつ、MO(ただし、MはMg、Ca、BaおよびSrから選ばれる少なくとも1種)、LiOおよびBから選ばれる少なくとも1種を含む。この第2副成分は、主として焼結助剤として作用する。MO(ただし、MはMg、Ca、BaおよびSrから選ばれる少なくとも1種)は、第1副成分にも含まれるが、SiOとの複合酸化物とし、組成式MSiO2+x で表される化合物とすることにより、融点を低くすることができる。そして、融点を低くすることができるため、主成分に対する反応性を向上させることができる。なお、上記MOとして、たとえば、BaOおよびCaOを使用した場合には、上記複合酸化物は、組成式(Ba,Ca)SiO2+x で表される化合物とすることが好ましい。組成式(Ba,Ca)SiO2+x におけるxは、好ましくは0.8〜1.2であり、より好ましくは0.9〜1.1である。xが小さすぎると、すなわちSiOが多すぎると、主成分のBaTiO2+m と反応して誘電体特性を悪化させてしまう。一方、xが大きすぎると、融点が高くなって焼結性を悪化させるため、好ましくない。
【0070】
第3副成分(V、MoOおよびWO)は、キュリー温度以上での静電容量の温度特性を平坦化する効果と、IR加速寿命を向上させる効果とを示す。第3副成分の含有量が少なすぎると、このような効果が不十分となる。一方、含有量が多すぎると、IRが著しく低下する。なお、第3副成分中における各酸化物の構成比率は任意である。
【0071】
第5副成分(MnOおよびCr)は、キュリー温度を高温側にシフトさせるほか、静電容量の温度特性の平坦化、絶縁抵抗(IR)の向上、破壊電圧の向上、焼成温度を低下させる、などの効果を有する。
【0072】
誘電体磁器組成物に含まれる誘電体粒子の平均結晶粒径は、特に限定されないが、好ましくは0.1〜0.3μmである。平均結晶粒径が、小さすぎると、比誘電率が低くなってしまう傾向にあり、大きすぎると、比誘電率の経時変化が大きくなってしまう傾向にある。誘電体粒子の平均結晶粒径は、たとえば、誘電体粒子のSEM像より、誘電体粒子の形状を球と仮定して平均粒子径を測定するコード法により測定することができる。
【0073】
誘電体層2の厚みは、特に限定されないが、一層あたり10μm以下であることが好ましく、より好ましくは6μm以下、さらに好ましくは4.5μm以下である。厚さの下限は、特に限定されないが、たとえば0.5μm程度である。
【0074】
誘電体層2の積層数は、特に限定されないが、20以上であることが好ましく、より好ましくは50以上、特に好ましくは、100以上である。積層数の上限は、特に限定されないが、たとえば2000程度である。
【0075】
内部電極層3
内部電極層3に含有される導電材は特に限定されないが、誘電体層2の構成材料が耐還元性を有するため、比較的安価な卑金属を用いることができる。導電材として用いる卑金属としては、NiまたはNi合金が好ましい。Ni合金としては、Mn,Cr,CoおよびAlから選ばれる1種以上の元素とNiとの合金が好ましく、合金中のNi含有量は95重量%以上であることが好ましい。なお、NiまたはNi合金中には、P等の各種微量成分が0.1重量%程度以下含まれていてもよい。内部電極層3の厚さは用途等に応じて適宜決定すればよいが、通常、0.1〜3μm、特に0.2〜2.0μm程度であることが好ましい。
【0076】
外部電極4
外部電極4に含有される導電材は特に限定されないが、本発明では安価なNi,Cuや、これらの合金を用いることができる。外部電極4の厚さは用途等に応じて適宜決定すればよいが、通常、10〜50μm程度であることが好ましい。
【0077】
積層セラミックコンデンサの製造方法
本実施形態の積層セラミックコンデンサは、従来の積層セラミックコンデンサと同様に、ペーストを用いた通常の印刷法やシート法によりグリーンチップを作製し、これを焼成した後、外部電極を印刷または塗布して焼成することにより製造される。以下、第1の観点に係る誘電体磁器組成物の製造方法について具体的に説明する。
【0078】
まず、誘電体層用ペーストに含まれる誘電体磁器組成物粉末を調製する。
第1の観点においては、上記誘電体磁器組成物粉末の調製は、次のように行う。まず、上記主成分の原料を第1主成分の原料と第2主成分の原料とに分ける。
【0079】
ここで、前記第1主成分のモル数をn1モル、前記第2主成分のモル数をn2モルとした場合に、前記第1主成分および前記第2主成分の合計モル数に対する前記第1主成分の比が、0.5≦n1/(n1+n2)≦1、好ましくは、0.75≦n1/(n1+n2)≦0.90、さらに好ましくは、0.80≦n1/(n1+n2)≦0.90である。n1/(n1+n2)が小さすぎると、比誘電率やIR寿命が悪化する傾向にある。n1/(n1+n2)を好ましい範囲内とすることで、CR積を良好とすることができる。
【0080】
そして、第1主成分の原料のみと、上記第4副成分の原料の一部(誘電体磁器組成物に含有されることとなる第4副成分のうち一部に相当する原料)とを、予め反応、好ましくは固溶させ、反応済み原料を得る。次いで、この反応済み原料に、前記第2主成分の原料と、残りの第4副成分の原料(誘電体磁器組成物を構成することとなる第4副成分のうち残りの原料)と、上記第1〜第3、第5副成分の原料とを添加し、必要に応じて仮焼きすることにより、誘電体磁器組成物粉末は調製される。
【0081】
上記主成分の原料としては、BaTiO、CaTiO、BaZrOおよびCaZrOの粉末あるいは、焼成により上記の酸化物となる化合物の粉末が使用でき、好ましくは、BaTiOの粉末あるいは、焼成により上記の酸化物となる化合物の粉末である。主成分の原料の平均粒径は、好ましくは0.05〜0.5μm、より好ましくは0.1〜0.4μmである。主成分の原料の平均粒径が大きすぎると、焼結後の誘電体粒子の平均結晶粒径が大きくなりすぎてしまい、温度特性が悪化したり、絶縁抵抗(IR)が低下してしまう傾向にある。一方、平均粒径が小さすぎると、主成分原料へのRの酸化物の固溶が不均一となる傾向にある。なお、本実施形態において、平均粒径は、体積基準累積50%径(D50径)を意味し、レーザー回折法などの光散乱を利用した方法により測定することができる。
【0082】
上記第1主成分の原料と、予め反応させる第4副成分の原料としては、上述のRの酸化物や、焼成によりRの酸化物となる種々の化合物を使用することができる。Rの酸化物や、焼成によりRの酸化物となる化合物としては、平均粒径が0.01〜0.1μm程度の粉末状の原料あるいは、以下に例示するゾル状の原料などが使用できる。
【0083】
ゾル状の原料としては、特に限定されず、たとえば、水酸化物ゾルや酸化物ゾルなどが挙げられる。また、ゾル状の原料のゾル粒径は、通常1〜100nm程度であり、溶媒としては、水、あるいは、メタノールやエタノールなどのアルコール類、キシレンやトルエンなどの芳香族溶媒、メチルエチルケトンなどのケトン類などの有機系溶媒が例示される。
【0084】
上記焼成によりRの酸化物となる化合物としては特に限定されないが、Rのアルコキシド、Rの無機酸塩などが例示される。上記Rのアルコキシドとは、アルコールとR元素との化合物であり、具体的には、アルコールの水酸基の水素をR元素で置換した化合物をいう。Rのアルコキシドとしては、特に限定されないが、一般式C2n+1 OR(nは、1〜9の整数)で表される各種化合物が使用でき、たとえば、CHOR、COR、n−COR、i−CORなどが挙げられる。
【0085】
第1主成分の原料と予め反応させる第4副成分の原料は、前記主成分100モルに対して、R換算で、0〜0.5モル(ただし、0は含まない)とすることが好ましく、より好ましくは0.01〜0.2モルとする。あるいは、予め反応させる第4副成分の原料の比率を、R換算で、誘電体磁器組成物に最終的に含有されることとなる第4副成分の総量100モル%に対して、0〜50モル%(ただし、0は含まない)とすることが好ましく、より好ましくは0〜25モル%(ただし、0は含まない)、さらに好ましくは0〜15モル%(ただし、0は含まない)とする。
【0086】
第1主成分の原料と予め反応させる第4副成分の原料の量が多すぎると、焼成後に得られる焼結体の結晶粒径が大きくなり過ぎてしまい、温度特性が悪化したり、絶縁抵抗(IR)が低下してしまう傾向にある。
【0087】
上記第1主成分の原料と上記第4副成分の原料の一部とを、予め反応させて反応済み原料を得る方法としては、第1主成分の原料と第4副成分の原料とを、溶媒などを使用して混合し、溶媒を蒸発させて、仮焼きする方法や、混合溶液に沈殿剤などを加え、第4副成分を主成分上に析出させ、仮焼きする方法などが挙げられる。なお、仮焼きする際の温度は、好ましくは500〜700℃程度である。
【0088】
次いで、得られた反応済み原料に、第2主成分の原料と、残りの第4副成分の原料(誘電体磁器組成物を構成することとなる第4副成分のうち残りの原料)と、上記第1〜第3、第5副成分の原料とを添加して、その後、混合して、必要に応じて仮焼きすることにより、誘電体磁器組成物粉末を得る。
【0089】
上記のようにして、予め第4副成分と反応させて諸特性を向上させた反応済み原料(第1主成分+第4副成分)と、主成分に由来する特性を高く維持している第2主成分とを、併用することで、比誘電率、IR寿命等の特性を良好に維持しつつ、特定の特性、たとえば、誘電損失やCR積等を向上させることができる。その結果、種々のペロブスカイト型結晶構造を有している化合物を主成分とした場合であっても、良好な特性を維持することができる。
【0090】
残りの第4副成分の原料、第1〜第3、第5副成分の原料としては、上記した酸化物やその混合物、複合酸化物や、焼成により上記した酸化物や複合酸化物となる各種化合物が使用できる。
【0091】
次いで、得られた誘電体磁器組成物粉末を用いて、誘電体層用ペーストを製造する。誘電体層用ペーストは、誘電体磁器組成物粉末と有機ビヒクルとを混練した有機系の塗料であってもよく、水系の塗料であってもよい。
【0092】
有機ビヒクルとは、バインダを有機溶剤中に溶解したものである。有機ビヒクルに用いるバインダは特に限定されず、エチルセルロース、ポリビニルブチラール等の通常の各種バインダから適宜選択すればよい。また、用いる有機溶剤も特に限定されず、印刷法やシート法など、利用する方法に応じて、テルピネオール、ブチルカルビトール、アセトン、トルエン等の各種有機溶剤から適宜選択すればよい。
【0093】
また、誘電体層用ペーストを水系の塗料とする場合には、水溶性のバインダや分散剤などを水に溶解させた水系ビヒクルと、誘電体原料とを混練すればよい。水系ビヒクルに用いる水溶性バインダは特に限定されず、例えば、ポリビニルアルコール、セルロース、水溶性アクリル樹脂などを用いればよい。
【0094】
内部電極層用ペーストは、上記した各種導電性金属や合金からなる導電材、あるいは焼成後に上記した導電材となる各種酸化物、有機金属化合物、レジネート等と、上記した有機ビヒクルとを混練して調製する。
【0095】
外部電極用ペーストは、上記した内部電極層用ペーストと同様にして調製すればよい。
【0096】
上記した各ペースト中の有機ビヒクルの含有量に特に制限はなく、通常の含有量、たとえば、バインダは1〜5重量%程度、溶剤は10〜50重量%程度とすればよい。また、各ペースト中には、必要に応じて各種分散剤、可塑剤、誘電体、絶縁体等から選ばれる添加物が含有されていてもよい。これらの総含有量は、10重量%以下とすることが好ましい。
【0097】
印刷法を用いる場合、誘電体層用ペーストおよび内部電極層用ペーストを、PET等の基板上に積層印刷し、所定形状に切断した後、基板から剥離してグリーンチップとする。
【0098】
また、シート法を用いる場合、誘電体層用ペーストを用いてグリーンシートを形成し、この上に内部電極層用ペーストを印刷した後、これらを積層してグリーン積層体とし、所定のサイズに切断して、グリーンチップとする。
【0099】
焼成前に、グリーンチップに脱バインダ処理を施す。脱バインダ条件としては、昇温速度を好ましくは5〜300℃/時間、より好ましくは10〜100℃/時間、保持温度を好ましくは180〜400℃、より好ましくは200〜300℃、温度保持時間を好ましくは0.5〜24時間、より好ましくは5〜20時間とする。また、脱バインダ雰囲気は、空気中とすることが好ましい。
【0100】
次いで、脱バインダ処理を施したグリーンチップを焼成する。グリーンチップ焼成時の雰囲気は、内部電極層用ペースト中の導電材の種類に応じて適宜決定されればよいが、導電材としてNiやNi合金等の卑金属を用いる場合、焼成雰囲気中の酸素分圧は、10−14〜10−9気圧とすることが好ましい。酸素分圧が上記範囲未満であると、内部電極層の導電材が異常焼結を起こし、途切れてしまうことがある。また、酸素分圧が前記範囲を超えると、内部電極層が酸化する傾向にある。
【0101】
また、焼成時の保持温度は、好ましくは1000〜1400℃、より好ましくは1100〜1350℃である。保持温度が上記範囲未満であると緻密化が不十分となり、前記範囲を超えると、内部電極層の異常焼結による電極の途切れや、内部電極層構成材料の拡散による容量温度特性の悪化、誘電体磁器組成物の還元が生じやすくなる。
【0102】
これ以外の焼成条件としては、昇温速度を好ましくは100〜900℃/時間、より好ましくは200〜900℃/時間、温度保持時間を好ましくは0.5〜8時間、より好ましくは1〜3時間、冷却速度を好ましくは50〜500℃/時間、より好ましくは200〜300℃/時間とする。また、焼成雰囲気は還元性雰囲気とすることが好ましく、雰囲気ガスとしてはたとえば、NとHとの混合ガスを加湿して用いることが好ましい。
【0103】
還元性雰囲気中で焼成した場合、コンデンサ素子本体にはアニールを施すことが好ましい。アニールは、誘電体層を再酸化するための処理であり、これによりIR寿命を著しく長くすることができるので、信頼性が向上する。
【0104】
アニール雰囲気中の酸素分圧は、10−8気圧以上、特に10−7〜10−4気圧とすることが好ましい。酸素分圧が前記範囲未満であると誘電体層の再酸化が困難であり、前記範囲を超えると内部電極層が酸化する傾向にある。
【0105】
アニールの際の保持温度は、1200℃以下、特に500〜1200℃とすることが好ましい。保持温度が上記範囲未満であると誘電体層の再酸化が不十分となるので、IRが低く、また、IR加速寿命が短くなりやすい。一方、保持温度が前記範囲を超えると、内部電極層が酸化して容量が低下するだけでなく、内部電極層が誘電体素地と反応してしまい、容量温度特性の悪化、IRの低下、IR加速寿命の低下が生じやすくなる。
【0106】
これ以外のアニール条件としては、昇温速度を好ましくは100〜900℃/時間、より好ましくは200〜900℃/時間、温度保持時間を好ましくは0.5〜12時間、より好ましくは1〜10時間、冷却速度を好ましくは50〜600℃/時間、より好ましくは100〜300℃/時間とする。また、アニールの雰囲気ガスとしては、たとえば、加湿したNガス等を用いることが好ましい。
【0107】
上記した脱バインダ処理、焼成およびアニールにおいて、Nガスや混合ガス等を加湿するには、例えばウェッター等を使用すればよい。この場合、水温は5〜75℃程度が好ましい。なお、脱バインダ処理、焼成およびアニールは、連続して行なっても、独立に行なってもよい。
【0108】
上記のようにして得られたコンデンサ素子本体に、例えばバレル研磨やサンドブラストなどにより端面研磨を施し、外部電極用ペーストを印刷または塗布して焼成し、外部電極4を形成する。外部電極用ペーストの焼成条件は、例えば、加湿したNとHとの混合ガス中で600〜800℃にて10分間〜1時間程度とすることが好ましい。そして、必要に応じ、外部電極4表面に、めっき等により被覆層を形成する。
【0109】
第2の観点に係る誘電体磁器組成物の製造方法についての具体的な説明は、次に述べる工程以外は、第1の観点に係る誘電体磁器組成物の製造方法の説明に準ずる。
【0110】
第2の観点に係る誘電体磁器組成物の製造方法において、まず、誘電体層用ペーストに含まれる誘電体磁器組成物粉末を調製する。
第2の観点においては、上記誘電体磁器組成物粉末の調製は、次のように行う。まず、前記主成分の原料と、前記第4a副成分の原料の一部および/または前記第4b副成分の原料の一部(誘電体磁器組成物に含有されることとなる第4a副成分および第4b副成分のうち、一部に相当する原料)とを、予め反応、好ましくは固溶させ、反応済み原料を得る(副成分の前添加工程)。次いで、この反応済み原料に、残りの第4a副成分の原料および第4b副成分の原料(誘電体磁器組成物を構成することとなる第4a副成分および第4b副成分のうち、残りの原料)と、上記第1〜第3、第5副成分の原料とを添加する(副成分の後添加工程)。その後、必要に応じて仮焼きすることにより、誘電体磁器組成物粉末は調製される。
【0111】
上記の工程において用いる主成分の原料については、第1の観点に準ずる。また、上記の工程において用いる予め反応させる副成分の原料としては、R1またはR2の酸化物や、焼成によりR1またはR2の酸化物となる種々の化合物を使用することができる。たとえば、R1の酸化物の一部を予め反応させても良いし、R2の酸化物の一部を予め反応させても良いし、また、R1の酸化物の一部およびR2の酸化物の一部を予め反応させても良い。R1またはR2の酸化物や、焼成によりR1またはR2の酸化物となる化合物としては、平均粒径が0.01〜0.1μm程度の粉末状の原料あるいは、以下に例示するゾル状の原料などが使用できる。
【0112】
第1主成分の原料と予め反応させる第4a副成分および/または第4b副成分の原料は、前記主成分100モルに対して、R1および/またはR2換算で、0〜0.5モル(ただし、0は含まない)とすることが好ましく、より好ましくは0〜0.4モル、さらに好ましくは、0〜0.25モルとする。
【0113】
第1主成分の原料と予め反応させる第4a副成分および/または第4b副成分の原料の量が多すぎると、焼成後に得られる焼結体の結晶粒径が大きくなり過ぎてしまい、静電容量の温度特性が悪化したり、IRが低下してしまう傾向にある。
【0114】
上記第1主成分の原料と、上記第4a副成分の原料の一部および/または上記第4b副成分の原料の一部とを、予め反応させて反応済み原料を得る方法としては、第1の観点と同様に、第1主成分の原料と上記副成分の原料とを、溶媒などを使用して混合し、溶媒を蒸発させて、仮焼きする方法や、混合溶液に沈殿剤などを加え、上記副成分を主成分上に析出させ、仮焼きする方法などが挙げられる。なお、仮焼きする際の温度は、好ましくは500〜700℃程度である。
【0115】
次いで、得られた反応済み原料に、残りの第4a副成分および第4b副成分の原料(誘電体磁器組成物を構成することとなる第4a副成分および第4b副成分のうち、残りの原料)と、上記第1〜第3、第5副成分の原料とを添加して、その後、混合して、必要に応じて仮焼きすることにより、誘電体磁器組成物粉末を得る。残りの第4a副成分および第4b副成分の原料、第1〜第3、第5副成分の原料としては、上記した酸化物やその混合物、複合酸化物や、焼成により上記した酸化物や複合酸化物となる各種化合物が使用できる。
【0116】
以降の工程は、第1の観点に係る誘電体磁器組成物の製造方法の説明に準ずる。
【0117】
このようにして製造された本発明の積層セラミックコンデンサは、ハンダ付等によりプリント基板上などに実装され、各種電子機器等に使用される。
【0118】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々に改変することができる。
【0119】
たとえば、上述した実施形態では、本発明に係る電子部品として積層セラミックコンデンサを例示したが、本発明に係る電子部品としては、積層セラミックコンデンサに限定されず、上記組成の誘電体磁器組成物で構成してある誘電体層を有するものであれば何でも良い。
【実施例】
【0120】
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
【0121】
実施例1
まず、主成分の原料として、平均粒径0.35μmのBaTiO粉末を準備し、第1主成分と第2主成分との合計モル数に対する第1主成分の比であるn1/(n1+n2)が表1に示す値となるように、第1主成分の原料と第2主成分の原料とを分割した。次に、予め反応させる第4副成分原料(前添加原料)として、Y粉末を準備し、第1主成分と予め反応させるY粉末の量を表1に示す量に秤量した。上記の第1主成分の原料(BaTiO粉末)とY粉末とをボールミルにより湿式混合粉砕してスラリー化し、このスラリーを乾燥後、仮焼・粉砕して、反応済み原料を得た。なお、仮焼き条件は、昇温速度:200℃/時間、保持温度:500℃、温度保持時間:2時間、雰囲気:空気中とした。すなわち、試料1では、主成分の原料として、BaTiO粉末のみを用い、また、予め反応させたY量は、主成分100モルに対して、Y原子換算(本願明細書の試料において、以下同じ)で、0.05モルとした(Y換算では、0.025モル)。
【0122】
次いで、得られた反応済み原料に添加する第4副成分原料(後添加原料)として、Yを使用し、Yの添加量は、主成分100モルに対して、Y原子換算で表1に示す量とした。すなわち、試料1では、Y原子換算で、0.35モル(Y換算の添加量は0.175モル)とした。また、得られた反応済み原料に添加する第1〜3、5副成分の原料および各副成分の添加量は、以下の通りとした。すなわち、MgO(第1副成分)を1.2モル、(Ba,Ca)SiO(第2副成分)を0.75モル、V(第3副成分)を0.03モル、MnO(第5副成分)を0.1モルとした。第2主成分の原料(BaTiO粉末)および上記の副成分の原料を反応済み原料に添加し、ボールミルにより湿式混合粉砕してスラリー化した。このスラリーを乾燥後、仮焼・粉砕することにより誘電体磁器組成物粉末を得た。なお、各副成分の添加量は、主成分100モルに対する、各酸化物換算での添加量である(ただし、Yは、Y原子換算の添加量とした)。
なお、実施例1において、予め反応させた(前添加)Y量および反応済み原料に添加した(後添加)Y量の合計量は、最終的に得られる誘電体磁器組成物に含有されるY量となる。
【0123】
上記にて得られた誘電体磁器組成物粉末100重量部と、アクリル樹脂4.8重量部と、酢酸エチル100重量部と、ミネラルスピリット6重量部と、トルエン4重量部とをボールミルで混合してペースト化し、誘電体層用ペーストを得た。
【0124】
次に、Ni粒子44.6重量部と、テルピネオール52重量部と、エチルセルロース3重量部と、ベンゾトリアゾール0.4重量部とを、3本ロールにより混練し、スラリー化して内部電極層用ペーストを得た。
【0125】
これらのペーストを用い、以下のようにして、図1に示される積層セラミックチップコンデンサ1を製造した。
【0126】
まず、得られた誘電体層用ペーストを用いてPETフィルム上にグリーンシートを形成した。この上に内部電極用ペーストを印刷した後、PETフィルムからシートを剥離した。次いで、これらのグリーンシートと保護用グリーンシート(内部電極層用ペーストを印刷しないもの)とを積層、圧着して、グリーン積層体を得た。次いで、グリーン積層体を所定サイズに切断してグリーンチップとし、脱バインダ処理、焼成およびアニールを下記条件にて行って、積層セラミック焼成体を得た。
【0127】
脱バインダ処理条件は、昇温速度:32.5℃/時間、保持温度:260℃、温度保持時間:8時間、雰囲気:空気中とした。
焼成条件は、昇温速度:200℃/時間、保持温度:1260〜1280℃、温度保持時間:2時間、冷却速度:200℃/時間、雰囲気ガス:加湿したN+H混合ガス(酸素分圧:10−12気圧)とした。
アニール条件は、昇温速度:200℃/時間、保持温度:1050℃、温度保持時間:2時間、冷却速度:200℃/時間、雰囲気ガス:加湿したNガス(酸素分圧:10−5気圧)とした。
なお、焼成およびアニールの際の雰囲気ガスの加湿には、水温を20℃としたウエッターを用いた。
【0128】
次いで、得られた積層セラミック焼成体の端面をサンドブラストにて研磨した後、外部電極としてIn−Ga合金を塗布し、図1に示す実施例1の積層セラミックコンデンサの試料を得た。
【0129】
得られたコンデンサ試料のサイズは、3.2mm×1.6mm×0.6mmであり、内部電極層に挟まれた誘電体層の数は4とし、1層あたりの誘電体層の厚み(層間厚み)は3.5μm、内部電極層の厚みは1.2μmとした。次いで、得られたコンデンサ試料について、以下に示す方法により、誘電体粒子の平均結晶粒径、比誘電率ε、誘電損失tanδ、絶縁抵抗IR、CR積、静電容量の温度特性およびIR加速寿命の評価を行った。また、第1主成分(BaTiO)とYとを反応させた上記反応済み原料について、XPS測定を行った結果、Ba、Ti、Yの各元素が、粒子内部に均一に分布していることが確認できた。
【0130】
誘電体粒子の平均結晶粒径
誘電体粒子の平均結晶粒径の測定方法としては、まず、得られたコンデンサ試料を内部電極に垂直な面で切断し、その切断面を研磨した。そして、その研磨面にケミカルエッチングもしくはサーマルエッチングを施し、その後、走査型電子顕微鏡(SEM)により観察を行い、コード法により誘電体粒子の形状を球と仮定して算出した。結果を表1に示す。
【0131】
比誘電率ε
コンデンサ試料に対し、基準温度20℃において、デジタルLCRメータ(横河電機(株)製 YHP4274A)にて、周波数120Hz,入力信号レベル(測定電圧)0.5Vrms/μmの条件下で、静電容量Cを測定した。そして、得られた静電容量、積層セラミックコンデンサの誘電体厚みおよび内部電極同士の重なり面積から、比誘電率(単位なし)を算出した。比誘電率は、高いほど好ましい。結果を表1に示す。
【0132】
誘電損失tanδ
コンデンサ試料に対し、基準温度20℃において、デジタルLCRメータ(横河電機(株)製 YHP4274A)にて、周波数120Hz,入力信号レベル(測定電圧)0.5Vrms/μmの条件下で、誘電損失tanδを測定した。誘電損失は、小さいほど好ましい。結果を表1に示す。
【0133】
絶縁抵抗IR
コンデンサ試料に対し、絶縁抵抗計(アドバンテスト社製R8340A)を用いて、20℃において4V/μmの直流電圧を、コンデンサ試料に1分間印加した後の絶縁抵抗IRを測定した。絶縁抵抗IRは、大きいほど好ましい。結果を表1に示す。
【0134】
CR積
CR積は、上記にて測定した静電容量C(単位はμF)と、絶縁抵抗IR(単位はMΩ)との積を求めることにより測定した。CR積は、大きいほど好ましい。結果を表1に示す。
【0135】
静電容量の温度特性
コンデンサ試料に対し、−55〜125℃における静電容量を測定し、静電容量の変化率ΔCを算出し、EIA規格のX7R特性を満足するか否かについて評価した。すなわち、−55〜125℃において、変化率ΔCが、±15%以内であるか否かを評価した。結果を表1に示す。なお、表1中、X7R特性を満足した試料は「○」とし、満足しなかった試料は「×」とした。
【0136】
IR加速寿命
コンデンサ試料に対し、180℃にて12V/μmの電界下で加速試験を行い、絶縁抵抗IRが10Ω以下になるまでの時間(単位は時間)を算出した。IR加速寿命は、長いほうが好ましい。結果を表1に示す。
【0137】
【表1】

【0138】
評価1
表1より、第1主成分と第2主成分との合計モル数に対する第1主成分の比であるn1/(n1+n2)を0.5以上とした、試料1、5〜7は、比誘電率が4000以上となり、IR寿命も良好となっていることが確認できる。
一方、第1主成分の原料とY粉末とを予め反応させなかった試料2およびn1/(n1+n2)の値が0.5よりも小さい試料3、4では、比誘電率がかなり低下し、IR寿命も悪化していることが確認できる。
上記の結果より、n1/(n1+n2)の値を0.5以上とし、第1主成分の原料と第4副成分(Y)の原料の一部とを予め反応させることにより、その他の電気特性(誘電損失tanδ、絶縁抵抗IR、CR積)を良好に保ちつつ、高い比誘電率および良好なIR寿命を実現できることが確認できる。
【0139】
実施例2
第1主成分の原料と予め反応させるY(第4副成分)の量および反応済み原料に添加するY(第4副成分)の量を、Y原子換算で、表2に示す値とした以外は、試料1と同様にして、各コンデンサ試料を得た。得られた各コンデンサ試料について、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示す。
【0140】
【表2】

【0141】
評価2
表2より、第1主成分の原料と予め反応させるY(第4副成分)の量および反応済み原料に添加するY(第4副成分)の量を変更した場合であっても、実施例1と同様の結果が得られることが確認できる。
【0142】
実施例3
予め反応させる原料として、Y(第4a副成分)の代わりにTb(第4b副成分)を使用した。また、第1主成分の原料と予め反応させるTb(第4b副成分)の量および反応済み原料に添加するY(第4a副成分)の量を、Y原子およびTb原子換算で、表3に示す量とした。以外は、実施例1と同様にして、各コンデンサ試料を得た。得られた各コンデンサ試料について、実施例1と同様の評価を行った。結果を表3に示す。
なお、実施例3において、最終的に得られる誘電体磁器組成物中における第4a副成分のR1のモル数M1と、第4b副成分のR2のモル数M2との比M2/M1は、0.14である。
【0143】
【表3】

【0144】
評価3
表3より、第1主成分原料と予め反応させる原料として、Y(第4a副成分)の代わりにTb(第4b副成分)を使用した場合であっても、実施例1と同様の結果が得られることが確認できる。
【0145】
実施例4
主成分の原料として、平均粒径0.30μmのBaTiO粉末を使用し、第1主成分と第2主成分との合計モル数に対する第1主成分の比であるn1/(n1+n2)の値を1とし、予め反応させる原料として、Y(第4a副成分)を使用した。すなわち、主成分の原料すべてをY(第4a副成分)と反応させた。また、反応済み原料に添加する原料として、Y(第4a副成分)およびGd(第4b副成分)を使用した。予め反応させる原料の量および反応済み原料に添加する原料の量を、R1およびR2換算で、表4に示す量とした。さらに、得られた反応済み原料に添加する第1〜3、5副成分の原料および各副成分の添加量は、以下の通りとした。すなわち、MgO(第1副成分)を0.75モル、(Ba,Ca)SiO(第2副成分)を0.875モル、V(第3副成分)を0.074モル、MnO(第5副成分)を0.1モルとした。上記のようにした以外は、実施例1と同様にして、各コンデンサ試料を得た。得られた各コンデンサ試料について、実施例1と同様の評価を行った。結果を表4に示す。
なお、表5において、最終的に得られる誘電体磁器組成物中における第4a副成分のR1のモル数M1と、第4b副成分のR2のモル数M2との比M2/M1は、0.08〜0.42の範囲内であった。
【0146】
【表4】

【0147】
評価4
表4より、主成分の原料すべてと予め反応させる原料とを反応させた場合において、反応済み原料に添加するGd(第4b副成分)の量を増やし、R1のモル数M1とR2のモル数M2との比であるM2/M1が本発明の範囲内とすることで、IR寿命を良好とすることができることが確認できた。
【0148】
実施例5
主成分の原料として、平均粒径0.30μmのBaTiO粉末を使用した。試料41〜46においては、第1主成分と第2主成分との合計モル数に対する第1主成分の比であるn1/(n1+n2)を0.25とし、試料47〜52においては、n1/(n1+n2)を0.75とし、試料53〜58においては、n1/(n1+n2)を1とした。また、第1主成分の原料と予め反応させる原料として、Y(第4a副成分)を使用し、反応済み原料に添加する原料として、Y(第4a副成分)およびGd(第4b副成分)を使用した。n1/(n1+n2)の値を0.25、0.75および1としたときに、予め反応させるY(第4a副成分)の量および反応済み原料に添加するY(第4a副成分)およびGd(第4b副成分)の量を、R1およびR2換算で、表5に示す量とした。さらに、得られた反応済み原料に添加する第1〜3、5副成分の原料および各副成分の添加量は、以下の通りとした。すなわち、MgO(第1副成分)を1.00モル、(Ba,Ca)SiO(第2副成分)を0.875モル、V(第3副成分)を0.044モル、MnO(第5副成分)を0.1モルとした。上記のようにした以外は、実施例1と同様に各コンデンサ試料を得た。得られた各コンデンサ試料について、実施例1と同様の評価を行った。
なお、実施例5において、最終的に得られる誘電体磁器組成物中における第4a副成分のR1のモル数M1と、第4b副成分のR2のモル数M2との比M2/M1は、0.1であった。結果を表5に示す。
【0149】
【表5】

【0150】
評価5
表5より、n1/(n1+n2)の値を0.75および1とした場合には、比誘電率、誘電損失、IR、CR積、静電容量の温度特性、IR寿命等の特性が両立できていることが確認できる。なお、第1主成分の原料と予め反応させる原料(Y)の量が、本発明の好ましい範囲(0モル超0.5モル未満)を外れる場合には、比誘電率は比較的高いものの、誘電損失、CR積、IR寿命が悪化する傾向にあった。したがって、第1主成分の原料と予め反応させる原料(Y)の量は、本発明の好ましい範囲とすることが好ましいことが確認できる。
一方、n1/(n1+n2)の値を0.25とした場合には、比誘電率や静電容量の温度特性、IR寿命等が悪化していることが確認できる。
上記の結果より、n1/(n1+n2)の値が本発明の範囲を外れている場合には、予め反応させる原料の添加量や、R1のモル数M1とR2のモル数M2との比M2/M1の値が本発明の範囲内であっても、良好な特性を実現することができないことが確認できる。
【0151】
実施例6
予め反応させる原料をY(第4a副成分)の代わりにYb(第4a副成分)とし、その添加量をYb原子換算で、表6に示す値とした以外は、実施例5と同様にして、各コンデンサ試料を得た。得られた各コンデンサ試料について、実施例1と同様の評価を行った。結果を表6に示す。
【0152】
【表6】

【0153】
評価6
表6より、予め反応させる原料をYbにした場合であっても、実施例5と同様の結果が得られることが確認できる。
【図面の簡単な説明】
【0154】
【図1】図1は本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサの断面図である。
【符号の説明】
【0155】
1… 積層セラミックコンデンサ
10… コンデンサ素子本体
2… 誘電体層
3… 内部電極層
4… 外部電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式ABO(ただし、Aは、Ba単独またはBaおよびCaの複合であり、Bは、Ti単独またはTiおよびZrの複合である)で表されるペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を含む主成分と、
Rの酸化物(ただし、RはY,La,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,YbおよびLuから選ばれる少なくとも1種)を含む第4副成分と、を含有する誘電体磁器組成物を製造する方法であって、
前記主成分の原料を、第1主成分の原料と、第2主成分の原料と、の2つに分ける工程と、
前記第1主成分の原料と、前記誘電体磁器組成物に含有されることとなる前記第4副成分の原料の一部と、を予め反応させ、反応済み原料を得る工程と、
前記反応済み原料に、前記第2主成分および前記誘電体磁器組成物に含有されることとなる残りの前記第4副成分の原料を添加する工程と、を有し、
前記第1主成分のモル数をn1モル、前記第2主成分のモル数をn2モルとした場合に、前記第1主成分および前記第2主成分の合計モル数に対する前記第1主成分の比が、0.5≦n1/(n1+n2)≦1であることを特徴とする誘電体磁器組成物の製造方法。
【請求項2】
前記反応済み原料を得る工程が、前記第1主成分の原料と、前記第4副成分の原料の一部とを予め固溶させ、前記反応済み原料を得る工程である請求項1に記載の誘電体磁器組成物の製造方法。
【請求項3】
最終的に得られる前記誘電体磁器組成物中における前記第4副成分の含有量を、前記主成分100モルに対して、R換算で、0.1〜10モルとする請求項1または2に記載の誘電体磁器組成物の製造方法。
【請求項4】
前記第1主成分の原料と予め反応させておく前記第4副成分を、前記主成分100モルに対して、R換算で、0〜0.5モル(ただし、0および0.5は含まない)とする請求項1〜3のいずれかに記載の誘電体磁器組成物の製造方法。
【請求項5】
前記第1主成分の原料と予め反応させておく前記第4副成分の比率を、R換算で、前記誘電体磁器組成物に最終的に含有されることとなる前記第4副成分の総量100モル%に対して、0〜50モル%(ただし、0および50は含まない)とする請求項1〜4のいずれかに記載の誘電体磁器組成物の製造方法。
【請求項6】
一般式ABO(ただし、Aは、Ba単独またはBaおよびCaの複合であり、Bは、Ti単独またはTiおよびZrの複合である)で表されるペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を含む主成分と、
前記Rの酸化物に含まれるR1の酸化物(ただし、R1は、9配位時の有効イオン半径が108pm未満の希土類元素で構成される第1元素群から選ばれる少なくとも1種)を含む第4a副成分と、
前記Rの酸化物に含まれるR2の酸化物(ただし、R2は、9配位時の有効イオン半径が108pm〜113pmの希土類元素で構成される第2元素群から選ばれる少なくとも1種)を含む第4b副成分と、を含有する誘電体磁器組成物を製造する方法であって、
前記主成分の原料を、第1主成分の原料と、第2主成分の原料と、の2つに分ける工程と、
前記主成分の原料と、前記誘電体磁器組成物に含有されることとなる前記第4a副成分の原料の一部および/または前記第4b副成分の原料の一部と、を予め反応させ、反応済み原料を得る工程と、
前記反応済み原料に、前記誘電体磁器組成物に含有されることとなる残りの前記第4a副成分の原料および前記第4b副成分の原料を添加する工程と、を有し、
最終的に得られる前記誘電体磁器組成物中における前記第4a副成分のR1のモル数M1に対する前記第4b副成分のR2のモル数M2の比(M2/M1)が、0≦M2/M1≦0.25であり、
前記第1主成分のモル数をn1モル、前記第2主成分のモル数をn2モルとした場合に、前記第1主成分および前記第2主成分の合計モル数に対する前記第1主成分の比が、0.5≦n1/(n1+n2)≦1であることを特徴とする誘電体磁器組成物の製造方法。
【請求項7】
前記反応済み原料を得る工程が、前記第1主成分の原料と、前記誘電体磁器組成物に含有されることとなる前記第4a副成分の原料の一部および/または前記第4b副成分の原料の一部と、を予め固溶させ、反応済み原料を得る工程である請求項6に記載の誘電体磁器組成物の製造方法。
【請求項8】
最終的に得られる前記誘電体磁器組成物中における前記第4a副成分の含有量を、前記主成分100モルに対して、R1換算で、0〜10モル(ただし、0は含まない)とし、
最終的に得られる前記誘電体磁器組成物中における前記第4b副成分の含有量を、前記主成分100モルに対して、R2換算で、0〜2モル(ただし、0は含まない)とする請求項6または7に記載の誘電体磁器組成物の製造方法。
【請求項9】
前記第1主成分の原料と予め反応させておく前記第4a副成分および/または前記第4b副成分を、前記主成分100モルに対して、R1および/またはR2換算で、0〜0.5モル(ただし、0および0.5は含まない)とする請求項6〜8のいずれかに記載の誘電体磁器組成物の製造方法。
【請求項10】
前記第1元素群を構成する希土類元素の9配位時の有効イオン半径をr1とし、前記第2元素群を構成する希土類元素の9配位時の有効イオン半径をr2とした場合に、r1とr2との比(r2/r1)が、1.007<r2/r1<1.06の関係を満足するように、前記第1元素群および前記第2元素群が構成されている請求項6〜9のいずれかに記載の誘電体磁器組成物の製造方法。
【請求項11】
前記R1が、Y、Ho、Er、Tm、YbおよびLuから選ばれる少なくとも1種である請求項6〜10のいずれかに記載の誘電体磁器組成物の製造方法。
【請求項12】
前記R2が、Dy、Tb、GdおよびEuから選ばれる少なくとも1種である請求項6〜11のいずれかに記載の誘電体磁器組成物の製造方法。
【請求項13】
前記主成分が、チタン酸バリウムを含む請求項1〜12のいずれかに記載の誘電体磁器組成物の製造方法。
【請求項14】
前記誘電体磁器組成物は、
MgO、CaO、BaOおよびSrOから選ばれる少なくとも1種を含む第1副成分と、
SiOを主として含有し、MO(ただし、Mは、Mg、Ca、BaおよびSrから選ばれる少なくとも1種)、LiOおよびBから選ばれる少なくとも1種を含む第2副成分と、
、MoOおよびWOから選ばれる少なくとも1種を含む第3副成分と、をさらに含有し、
前記主成分100モルに対する各副成分の比率を、
第1副成分:0.1〜5モル、
第2副成分:0.1〜12モル、
第3副成分:0〜0.3モル(ただし、0は含まない)、
とする請求項1〜13のいずれかに記載の誘電体磁器組成物の製造方法。
【請求項15】
前記誘電体磁器組成物は、MnOおよび/またはCrを含む第5副成分を、さらに含有し、
前記主成分100モルに対する第5副成分の比率を、0.05〜1.0モルとする請求項14に記載の誘電体磁器組成物の製造方法。
【請求項16】
前記主成分の原料として、平均粒径が0.05〜0.5μmである原料を使用する請求項1〜15のいずれかに記載の誘電体磁器組成物の製造方法。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれかに記載の方法により製造される誘電体磁器組成物。
【請求項18】
請求項17に記載の誘電体磁器組成物で構成してある誘電体層を有する電子部品。

【図1】
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【公開番号】特開2007−331958(P2007−331958A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−162796(P2006−162796)
【出願日】平成18年6月12日(2006.6.12)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】