電子部品の製造方法
【課題】 必要なめっき膜と隣接する厚いダミーめっき膜であっても、短時間に確実に除去可能な電子部品の製造方法を提供する。
【解決手段】 前記ダミーめっき用電極パターンの電極22として低融点金属膜を用い、めっきをした後に前記低融点金属膜の融点以上に加熱した状態で、加圧した窒素を吹き付けたり、全体を振動させる等の物理的な刺激を与え、ダミーめっき用電極パターン上に形成されたダミーめっき膜45を除去し、残留している低融点金属膜及び不要なめっき用電極パターン20をエッチング、イオンミリング等の手法で除去する。
【解決手段】 前記ダミーめっき用電極パターンの電極22として低融点金属膜を用い、めっきをした後に前記低融点金属膜の融点以上に加熱した状態で、加圧した窒素を吹き付けたり、全体を振動させる等の物理的な刺激を与え、ダミーめっき用電極パターン上に形成されたダミーめっき膜45を除去し、残留している低融点金属膜及び不要なめっき用電極パターン20をエッチング、イオンミリング等の手法で除去する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、めっき法により作製される電子部品の製造方法、例えば、めっきバンプを有する電子部品、めっき膜をコイルとして用いるインダクタ、あるいはめっき配線板等の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
めっき法は安価な設備で高速成膜が可能なことから多くの電子部品の製造に活用されている。例えば、半導体その他の電子素子の引き出し電極と外部端子とを電気的に接続するためのバンプ接合は、半導体電極と位置的に整列した外部端子を直接接合する方法であり、めっき法により作製されることが多い。
【0003】
素子の実装密度向上のためには、バンプ高とバンプ幅の比であるアスペクト比をより大きくすることが望まれている。また素子検査用のプローブ素子の接点部も高アスペクト比のめっきバンプが必要である。
【0004】
このような要求に応えるべく、本出願に係る発明者は、すでに日本国特許第3349656号として、めっき膜の異方性成長を利用しためっきバンプおよびその製造方法を提案している。すなわち、パターニングされた下地導電体上に電気めっき法によりめっき形成されるバンプの側面をフォトレジストにより制限しないで作製された微細バンプにおいて、下地導電体から水平方向のめっき厚をL1、垂直方向のめっき厚をL2とした時にL2/L1>2であることを特徴とする電気めっき法により作製されたすず、鉛、ニッケル、金、銅のいずれかを主成分とするバンプに関する発明を提示している。
【0005】
しかしながら、上記提案の方法によると、バンプ群の最外周に位置するバンプは、バンプ群の内部のバンプとは電流密度分布、液の流れによる金属イオンの拡散速度等が異なるため、外側に大きく張り出した形状となってしまう。このため、BGA(Ball Grid Array)等のバンプマトリックス群の場合には、バンプ群の最外周に位置するバンプのさらに外側に、また、孤立バンプでは、その周囲にいわゆるダミーパターンを設けることが必要となる。
【0006】
このダミーパターン上に形成されためっき膜は、本来の素子機能上は不要な物であるため、最終的には除去する必要がある。不要なめっき膜を除去する方法としては、必要なバンプをフォトレジスト等でカバーした後にエッチング処理する方法が一般的である。しかしながら、フォトレジスト等のカバーの作製は工程が複雑であり、かつ、めっき膜厚が厚い場合には十分にカバーできないことがあった。特に、前述の方法による、高アスペクト比バンプではバンプ間の間隔が短いことから特に困難であった。さらに厚いめっき膜の除去には長時間を要していた。
【0007】
ところで、高アスペクト比のめっき膜をコイルとして用いる方法も知られているが(例えば、特開平11−204361号公報)、やはり上記と同様にダミーパターンを設けた場合には、その除去が問題であった。
【0008】
【特許文献1】特許第3349656号公報
【特許文献2】特開平11−204361号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このような実状のもとに本発明は創案されたものであって、その目的は、必要なめっき膜と隣接する厚いダミーめっき膜であっても、短時間に確実に除去可能な電子部品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような課題を解決するために、本発明は、めっき用電極パターンの周囲にダミーめっき用電極パターンを設け、これらの電極パターンの上にめっきを行った後に、ダミーめっき用電極パターンの上に形成されたダミーめっき膜を除去してなる、めっき膜を有する電子部品の製造方法であって、前記ダミーめっき用電極パターンの電極として低融点金属膜を用い、めっきをした後に前記低融点金属膜の融点以上に加熱した状態でダミーめっき用電極パターン上に形成されたダミーめっき膜を除去するように構成される。
【0011】
また、本発明の好ましい態様として、前記低融点金属膜は、その融点が400℃以下であるように構成される。
【0012】
また、本発明の好ましい態様として、前記低融点金属膜が、Sn、Pb、Bi、In、Cdのいずれかの金属、あるいはいずれかを主成分とする合金からなるように構成される。
【0013】
また、本発明の好ましい態様として、前記形成されるめっき膜は、下地である導電体膜から水平方向のめっき膜厚をL1、垂直方向のめっき膜厚をL2とした時に、L2/L1>2となるように構成される。
【0014】
また、本発明の好ましい態様として、前記めっき膜によりバンプまたはコイルが形成されるように構成される。
【0015】
また、本発明の好ましい態様として、前記ダミーめっき用電極パターンである低融点金属膜と、めっき膜との融点の差は、100℃以上となるように構成される。
【発明の効果】
【0016】
本発明のめっき膜を有する電子部品の製造方法は、ダミーめっき用電極パターンの電極として低融点金属膜を用い、めっきをした後に前記低融点金属膜の融点以上に加熱した状態でダミーめっき用電極パターン上に形成されたダミーめっき膜を除去するように構成しているので、必要なめっき膜と隣接する厚いダミーめっき膜であっても、短時間に確実に除去することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の具体的構成について詳細に説明する。
【0018】
本発明の電子部品の製造方法は、めっき用電極パターンの周囲にダミーめっき用電極パターンを設け、これらの電極パターンの上にめっきを行った後に、ダミーめっき用電極パターンの上に形成されたダミーめっき膜を除去してなる、めっき膜を有する電子部品の製造方法であって、特に、本発明の要部は、ダミーめっき用電極パターンの電極に低融点の材料を用い、めっき形成後に融点以上に加熱した状態でダミーめっき用電極上のめっき膜を除去するようにしている点にある。
【0019】
以下、具体的な構成について詳細に説明する。
【0020】
本発明のめっき用電極パターンの周囲には、ダミーパターン(ダミーめっき用電極パターン)が設けられる。ダミーパターンとは、機能上必要なめっきパターン(本来形成しようとしているめっき形成パターンであり、「本パターン」ともいう)の周囲に設けられ、ダミーパターン上にもめっき膜が成長することで、本パターン上のめっき成長速度、形状等を改善することを目的として形成されたパターンである。このようなダミーパターンの形状、配置は、個々の本パターン、めっき条件により決定される。例えば、本パターンがマトリックス状のバンプ群の場合には、最外周のバンプのさらに外側にバンプ列を設ける。バンプ列の替わりにバンプ群を取り囲む矩形形状等も可能である。
【0021】
本発明においては、ダミーパターンの膜(ダミーめっき用電極パターンの膜)として融点が400℃以下、好ましくは、安価なPbの融点(327℃)以下の低融点金属膜が用いられる。具体的には、Sn、Pb、Bi、In、Cdのいずれかの金属、あるいはこれらのいずれかを主成分とする合金や、ニュートン合金、オニオン合金、ウッド合金およびリポウィッツ合金が特に好ましい。上記の金属や合金の融点は、例えばSn(232℃)、Pb(327℃)、SnPb(182℃)、Bi(271℃)、Cd(321℃)、In(156℃)、ニュートン合金(50%Bi 31%Pb 19%Sn 95℃)、オニオン合金(50%Bi 30%Pb 20%Sn 95℃)、ウッド合金(50%Bi 24%Pb 14%Sn 12%Cd 70℃)、リポウィッツ合金(50%Bi 27%Pb 13%Sn 10%Cd 70℃)である。
【0022】
また、ダミーパターン膜の膜厚は、0.01〜500μm、好ましくは0.05〜50μm、特に好ましくは0.05〜10μmである。この膜厚が0.01μm未満となると、その膜上に形成されためっき膜の除去が困難となり、また、500μmを超えると低融点金属が必要なめっき膜に付着してしまい短絡等の問題が発生することがある。
【0023】
また、前記金属から選ばれる1種を主成分とし、副成分として前記金属から選ばれる1種以上の金属を含むようにした合金や、Ag、Cu、Zn、Ni等の高融点金属やP、C、S等の非金属をさらに10wt%以下含有するよう合金組成であっても、その合金としての融点が上記温度以下、すなわち400℃以下であれば問題はない。なお、融点の下限は実用上利用可能な低融点合金の下限であるが、特に好ましくは、安価なSnPb共晶合金の融点(182℃)以上である。
【0024】
また、上記低融点の金属膜として、価格、安全性の観点からSnが好ましく、SnまたはSn合金めっき膜とする場合には、公知の各種のめっき浴、めっき条件を使用することが可能である。
【0025】
また、ダミーパターン膜(ダミーめっき用電極パターンの膜)は、低融点金属の単層膜である必要はなく、下地電極膜として少なくとも低融点金属膜を1層有する多層膜であっても差し支えない。すなわち、密着層としてTi膜を用い、その上に低融点金属層としてSnBi膜を成膜し、さらにCu膜、そしてAu膜を用いた4層多層膜等も好ましく用いることが可能である。この場合には実質的なダミーパターンとしての機能、すなわちめっき下地導体としての機能は主としてCu膜がはたす。Au膜はCu膜の酸化防止のためである。さらには、本パターンの下地導体電極膜と共通の膜に加えて、ダミーパターンのみに低融点金属膜を積層する構成も好ましく用いることができる。
【0026】
なお、ダミーめっき用電極パターンである低融点金属膜と、めっき膜(低融点金属膜の上や、本パターンの上に形成されるめっき膜)との融点の差は、100℃以上、好ましくは200℃以上であり、めっき膜は、ニッケル、金、銅いずれかの金属、あるいはいずれかを主成分とする合金からなることが好ましい。融点の差が100℃未満であると、低融点金属膜の融点以上の温度でダミーパターン膜上のめっき膜を除去する際に、めっき膜も軟質化して、傷が付き易くなるからである。
【0027】
本発明においては、めっきを行った後に低融点金属膜の融点以上、好ましくは融点より10〜50℃高い温度に加熱しダミーパターン上に形成されためっき膜を除去する。10℃未満では除去が困難であり、50℃を超えると加熱のためのコストが高くなる傾向にある。
【0028】
以下、図1(a),(b)〜図7(a),(b)を用いて、本発明の電子部品の製造方法、特に、本発明の電気めっき法によりバンプ群を作製する過程を経時的に説明する。これら各図面において、(a)は本発明の電子部品の製造方法を説明するためのめっき対象物の平面図を模式的に示したものであり、(b)は(a)の断面図を模式的に示したものである。なお、図は説明のために下地導電膜、低融点金属膜等を厚く表現する等デフォルメや簡略化されたものであり、基体10の表面、内部に設けられている回路は表示していない。
【0029】
図1に示されるように、基体10上に導電体膜20が形成される。
【0030】
次いで、図2に示されるように、ダミーパターン形成部周辺のみに、さらに低融点金属膜パターン22が形成される。なお図では簡略化のため、低融点金属膜パターン22が導電体膜20の中に埋め込まれたように表現されている。
【0031】
次いで、図3に示されるようにフォトレジスト30でパターニングを行いフォトレジスト30に開口部を形成する。この開口部がめっき用電極パターン36、およびダミーめっき用電極パターン35となる。すなわち、導電体膜20の上にパターン化された開口部がめっき用電極パターン36を構成し、低融点金属膜パターン22の上にパターン化された開口部がダミーめっき用電極パターン35を構成する。図3(a)の最外周位置を取り巻く開口部はダミーめっき用電極パターン35を構成している。
【0032】
ここで、導電体膜20はめっき法として電気めっきを用いる場合には通電のために不可欠であり、金、銅等の金属をスパッタ等の真空成膜法や無電解めっき法で成膜することが好ましい。通電を確保するのが目的のため膜厚は0.05〜5μm程度の薄膜で十分である。パターニングはフォトレジストを塗布し、マスクを通じて露光、現像することで行う。本発明においてはフォトレジストの厚さは薄くて構わないため、0.1〜5μm程度で十分である。このため汎用の安価なフォトレジストを使用し、露光、現像等のプロセス時間も短い。
【0033】
このように、ダミーめっき用電極パターン35は、レジストパターンにより形成することが好ましいが、低融点金属膜パターン22形成時に作製しておくことも可能である。
【0034】
次いで、図4に示されるように、めっきにより、バンプを形成する。
【0035】
本発明では、めっき成膜時の撹拌速度vが0.01〜0.1m/s、電流密度iが5〜10A/dm2、金属イオン濃度Mが0.01〜0.4モル/リットルであることが好ましい。上記の条件は、本来は水平方向も垂直方向も同じ速度で成膜されるめっき膜を、垂直方向に異方性成長させるために必要となる。撹拌速度vが0.01m/s未満では金属イオンの析出面への拡散が不十分でヤケを起こし、撹拌速度vが0.1m/sを超えると水平方向への成長が早くなってしまう。また電流密度iが5A/dm2未満では水平方向への成長が早くなってしまい、電流密度iが10A/dm2を超えるとヤケ現象が起こる。金属イオン濃度Mが0.01モル/リットル未満では金属イオンの析出面への拡散が不十分でヤケを起こし、金属イオン濃度Mが0.4モル/リットルを超えると水平方向への成長が早くなってしまう。すなわち、この3つの条件は異方性成長のために同じように寄与する。この3つの条件が全て前記範囲になければならない。特に注意すべきは、必要上ある条件が上限、または下限に近い場合には、他の条件が、それを補うようにやはり上限または下限に近い条件に設定する必要があることである。
【0036】
図4に示されるように、めっき用電極パターン36の上に成長したバンプ46は、バンプ高とバンプ幅の比であるアスペクト比が大きく、しかも、形状も揃っている。これに対して、ダミーめっき用電極パターン35上に成長したダミーバンプ45は、バンプ群の内部のバンプとは電流密度分布、液の流れによる金属イオンの拡散速度等が異なるため、外側に大きく張り出した形状となる。
【0037】
次いで、図5に示されるようにパターニングされたフォトレジスト30をめっき成膜後に剥離する。
【0038】
次いで、図6に示されるように、低融点金属膜パターン22である低融点金属膜の融点以上に加熱した状態で、ダミーめっき用電極パターン35(低融点金属膜パターン22)上に形成されためっき膜(ダミーバンプ45)を除去する。めっき膜(ダミーバンプ45)の除去は加圧した窒素を吹き付けたり、全体を振動させる等の物理的な刺激を与えることで容易に行える。ダミーめっき用電極パターン35(低融点金属膜パターン22)上のめっき膜を除去する際に、多くの低融点金属膜は共に除去されるが、一部は残留する(例えば、図6(b)の符号22a)。
【0039】
次いで、残留している低融点金属膜および不要なめっき用電極パターンは、エッチング、イオンミリング等の公知の手法で除去され、図7の状態に至る。図7(a),(b)は、本発明の一例であるめっき法により作製されたバンプ群の平面図、および断面図である。
【0040】
なお、本発明の方法で形成されるめっき膜は、下地である導電体膜から水平方向のめっき膜厚をL1、垂直方向のめっき膜厚をL2とした時に、L2/L1>2となるように構成されることが望ましい。
【0041】
また、上記の説明では、めっき膜によりバンプを形成する製造例を示したが、コイルを形成する製造例も好ましい態様である。コイル形成については、下記の具体的実施例を参照されたい。
【実施例】
【0042】
以下、本発明の具体的実施例挙げて本発明をさらに詳細に説明する。
【0043】
〔実施例1〕
BGA用マトリックスバンプの形成例
図7に示されるような構造のBGA用マトリックスバンプを製作した。
【0044】
すなわち、基体を構成するシリコンウエハー10上に、アルミニウム(10nm)、クロム(10nm)、金(200nm)の順に下地の導電体膜20として全面にスパッタ成膜した。
【0045】
さらに、メタルマスクを用いて、スズ(500nm)を下地導電膜の一部に所定パターンで形成した(低融点金属膜の形成)。
【0046】
その後、フォトレジストをスピンコートし、膜厚1μmのフォトレジスト30を設けた。そして、バンプ形成のために、直径W1=40μmの円形バンプパターンが中心距離100μmの間隔で多数配置されているフォトマスクを用いてパターニングを行った。このパターンの内、最外周のバンプには、下地膜としてスズが形成されており、ダミーパターンである。
【0047】
このウエハーをパドル攪拌を行いながら電気めっきを行い、めっき厚50μmの金バンプを作製した。使用した金めっき液は日本エレクトロプレーティングエンジニアーズ社製テンペレックス707であり、撹拌速度は0.03m/s、電流密度は7.5A/dm2、金イオン濃度は0.1モル/Lとした。
【0048】
めっき後に、酸素プラズマアッシング処理を行い、フォトレジストを剥離した。そして、アルゴン雰囲気下、バンプ形成面を下側にしランプ加熱により260℃に加熱し軽く揺動したところ、ダミーめっき膜は全て剥落し、所望のめっきバンプのみが基板上に残った。そして、イオンミリングにより下地電極膜を除去することで、所望のバンプ群を有する基板を完成させた。
【0049】
〔実施例2〕
コイルの形成例
図8(a),(b)〜図11(a),(b)に示される手順にて、コイルを作製した。
これら各図面において、(a)はめっき対象物の平面図を模式的に示したものであり、(b)は(a)の断面図を模式的に示したものである。
【0050】
図8に示されるように3インチ径のフェライト基板10(厚さ500μm)の片面にメタルマスクを用いて、低融点金属膜22であるインジウム膜を、200nmの厚さに成膜した。
【0051】
低融点金属膜22の成膜パターンは図8に示されるように、ダミーめっき膜が成膜される部分とその周囲である。
【0052】
次に、図9に示されるようにチタンを10nm、銅を200nmを全面に成膜し、下地導電体膜20とした。そして、ポジ型ホトレジスト(東京応化工業社製、商品名「PMER P−AR900」)を乾燥膜厚5μmになるようにスピンコートし、常法に従って露光及び現像処理することによりパターン幅90μm、パターン間隔20μmのレジストパターン30を形成させた。このようにして得たレジストパターン30はその除去された部分がスパイラル状である。
【0053】
次いで、このパターンに、硫酸銅濃度70グラム/リットルのめっき液を用い、小孔を有するパイプをカソード近傍に配置し、25℃において、これからめっき液を20mm/秒の割合で噴出させることによって、カソード近傍での攪拌速度を0.07m/sとし、電流密度6A/dm2の条件下で光沢硫酸銅めっきを行い膜厚150μmの断面マッシュルーム状のコイル導体めっき層55,56を形成させた。符号55がダミーのめっき部分である。
【0054】
その後、全面をイオンミリングにて処理し(基板角度80度)、めっき下地膜として成膜した銅、チタン膜を除去した。しかる後、窒素置換下、200℃ホットプレートにて基板下面から加熱し、その直後に基板を上下反転したところ、図11に示されるようにダミーパターン上のめっき膜55は基板から脱落分離した。なお、インジウムは大部分が脱離した銅ダミーパターンに付着したため、基板面にはわずかのインジウムが残存したのみであった。その後、コイルの両端部に別途、準備した細線を接続し、平面コイル56を製造した。
【0055】
以上の実施例からもわかるように、本発明によれば、高密度実装に適した高アスペクト比のめっき膜を均一に形成するために、不可欠なダミーめっき膜部分を容易に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】図1(a),(b)は本発明のめっき法によりバンプ群を作製する過程を経時的に説明するための図面であって、(a)は、めっき対象物の平面図を模式的に示したものであり、(b)は(a)の断面図を模式的に示したものである。
【図2】図2(a),(b)は本発明のめっき法によりバンプ群を作製する過程を経時的に説明するための図面であって、(a)は、めっき対象物の平面図を模式的に示したものであり、(b)は(a)の断面図を模式的に示したものである。
【図3】図3(a),(b)は本発明のめっき法によりバンプ群を作製する過程を経時的に説明するための図面であって、(a)は、めっき対象物の平面図を模式的に示したものであり、(b)は(a)の断面図を模式的に示したものである。
【図4】図4(a),(b)は本発明のめっき法によりバンプ群を作製する過程を経時的に説明するための図面であって、(a)は、めっき対象物の平面図を模式的に示したものであり、(b)は(a)の断面図を模式的に示したものである。
【図5】図5(a),(b)は本発明のめっき法によりバンプ群を作製する過程を経時的に説明するための図面であって、(a)は、めっき対象物の平面図を模式的に示したものであり、(b)は(a)の断面図を模式的に示したものである。
【図6】図6(a),(b)は本発明のめっき法によりバンプ群を作製する過程を経時的に説明するための図面であって、(a)は、めっき対象物の平面図を模式的に示したものであり、(b)は(a)の断面図を模式的に示したものである。
【図7】図7(a),(b)は本発明のめっき法によりバンプ群を作製する過程を経時的に説明するための図面であって、(a)は、めっき対象物の平面図を模式的に示したものであり、(b)は(a)の断面図を模式的に示したものである。
【図8】図8(a),(b)は本発明のめっき法によりコイルを作製する過程を経時的に説明するための図面であって、(a)は、めっき対象物の平面図を模式的に示したものであり、(b)は(a)の断面図を模式的に示したものである。
【図9】図9(a),(b)は本発明のめっき法によりコイルを作製する過程を経時的に説明するための図面であって、(a)は、めっき対象物の平面図を模式的に示したものであり、(b)は(a)の断面図を模式的に示したものである。
【図10】図10(a),(b)は本発明のめっき法によりコイルを作製する過程を経時的に説明するための図面であって、(a)は、めっき対象物の平面図を模式的に示したものであり、(b)は(a)の断面図を模式的に示したものである。
【図11】図11(a),(b)は本発明のめっき法によりコイルを作製する過程を経時的に説明するための図面であって、(a)は、めっき対象物の平面図を模式的に示したものであり、(b)は(a)の断面図を模式的に示したものである。
【符号の説明】
【0057】
10…基体
20…導電体膜
22…低融点金属膜
30…パターニングされたフォトレジスト
【技術分野】
【0001】
本発明は、めっき法により作製される電子部品の製造方法、例えば、めっきバンプを有する電子部品、めっき膜をコイルとして用いるインダクタ、あるいはめっき配線板等の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
めっき法は安価な設備で高速成膜が可能なことから多くの電子部品の製造に活用されている。例えば、半導体その他の電子素子の引き出し電極と外部端子とを電気的に接続するためのバンプ接合は、半導体電極と位置的に整列した外部端子を直接接合する方法であり、めっき法により作製されることが多い。
【0003】
素子の実装密度向上のためには、バンプ高とバンプ幅の比であるアスペクト比をより大きくすることが望まれている。また素子検査用のプローブ素子の接点部も高アスペクト比のめっきバンプが必要である。
【0004】
このような要求に応えるべく、本出願に係る発明者は、すでに日本国特許第3349656号として、めっき膜の異方性成長を利用しためっきバンプおよびその製造方法を提案している。すなわち、パターニングされた下地導電体上に電気めっき法によりめっき形成されるバンプの側面をフォトレジストにより制限しないで作製された微細バンプにおいて、下地導電体から水平方向のめっき厚をL1、垂直方向のめっき厚をL2とした時にL2/L1>2であることを特徴とする電気めっき法により作製されたすず、鉛、ニッケル、金、銅のいずれかを主成分とするバンプに関する発明を提示している。
【0005】
しかしながら、上記提案の方法によると、バンプ群の最外周に位置するバンプは、バンプ群の内部のバンプとは電流密度分布、液の流れによる金属イオンの拡散速度等が異なるため、外側に大きく張り出した形状となってしまう。このため、BGA(Ball Grid Array)等のバンプマトリックス群の場合には、バンプ群の最外周に位置するバンプのさらに外側に、また、孤立バンプでは、その周囲にいわゆるダミーパターンを設けることが必要となる。
【0006】
このダミーパターン上に形成されためっき膜は、本来の素子機能上は不要な物であるため、最終的には除去する必要がある。不要なめっき膜を除去する方法としては、必要なバンプをフォトレジスト等でカバーした後にエッチング処理する方法が一般的である。しかしながら、フォトレジスト等のカバーの作製は工程が複雑であり、かつ、めっき膜厚が厚い場合には十分にカバーできないことがあった。特に、前述の方法による、高アスペクト比バンプではバンプ間の間隔が短いことから特に困難であった。さらに厚いめっき膜の除去には長時間を要していた。
【0007】
ところで、高アスペクト比のめっき膜をコイルとして用いる方法も知られているが(例えば、特開平11−204361号公報)、やはり上記と同様にダミーパターンを設けた場合には、その除去が問題であった。
【0008】
【特許文献1】特許第3349656号公報
【特許文献2】特開平11−204361号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このような実状のもとに本発明は創案されたものであって、その目的は、必要なめっき膜と隣接する厚いダミーめっき膜であっても、短時間に確実に除去可能な電子部品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような課題を解決するために、本発明は、めっき用電極パターンの周囲にダミーめっき用電極パターンを設け、これらの電極パターンの上にめっきを行った後に、ダミーめっき用電極パターンの上に形成されたダミーめっき膜を除去してなる、めっき膜を有する電子部品の製造方法であって、前記ダミーめっき用電極パターンの電極として低融点金属膜を用い、めっきをした後に前記低融点金属膜の融点以上に加熱した状態でダミーめっき用電極パターン上に形成されたダミーめっき膜を除去するように構成される。
【0011】
また、本発明の好ましい態様として、前記低融点金属膜は、その融点が400℃以下であるように構成される。
【0012】
また、本発明の好ましい態様として、前記低融点金属膜が、Sn、Pb、Bi、In、Cdのいずれかの金属、あるいはいずれかを主成分とする合金からなるように構成される。
【0013】
また、本発明の好ましい態様として、前記形成されるめっき膜は、下地である導電体膜から水平方向のめっき膜厚をL1、垂直方向のめっき膜厚をL2とした時に、L2/L1>2となるように構成される。
【0014】
また、本発明の好ましい態様として、前記めっき膜によりバンプまたはコイルが形成されるように構成される。
【0015】
また、本発明の好ましい態様として、前記ダミーめっき用電極パターンである低融点金属膜と、めっき膜との融点の差は、100℃以上となるように構成される。
【発明の効果】
【0016】
本発明のめっき膜を有する電子部品の製造方法は、ダミーめっき用電極パターンの電極として低融点金属膜を用い、めっきをした後に前記低融点金属膜の融点以上に加熱した状態でダミーめっき用電極パターン上に形成されたダミーめっき膜を除去するように構成しているので、必要なめっき膜と隣接する厚いダミーめっき膜であっても、短時間に確実に除去することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の具体的構成について詳細に説明する。
【0018】
本発明の電子部品の製造方法は、めっき用電極パターンの周囲にダミーめっき用電極パターンを設け、これらの電極パターンの上にめっきを行った後に、ダミーめっき用電極パターンの上に形成されたダミーめっき膜を除去してなる、めっき膜を有する電子部品の製造方法であって、特に、本発明の要部は、ダミーめっき用電極パターンの電極に低融点の材料を用い、めっき形成後に融点以上に加熱した状態でダミーめっき用電極上のめっき膜を除去するようにしている点にある。
【0019】
以下、具体的な構成について詳細に説明する。
【0020】
本発明のめっき用電極パターンの周囲には、ダミーパターン(ダミーめっき用電極パターン)が設けられる。ダミーパターンとは、機能上必要なめっきパターン(本来形成しようとしているめっき形成パターンであり、「本パターン」ともいう)の周囲に設けられ、ダミーパターン上にもめっき膜が成長することで、本パターン上のめっき成長速度、形状等を改善することを目的として形成されたパターンである。このようなダミーパターンの形状、配置は、個々の本パターン、めっき条件により決定される。例えば、本パターンがマトリックス状のバンプ群の場合には、最外周のバンプのさらに外側にバンプ列を設ける。バンプ列の替わりにバンプ群を取り囲む矩形形状等も可能である。
【0021】
本発明においては、ダミーパターンの膜(ダミーめっき用電極パターンの膜)として融点が400℃以下、好ましくは、安価なPbの融点(327℃)以下の低融点金属膜が用いられる。具体的には、Sn、Pb、Bi、In、Cdのいずれかの金属、あるいはこれらのいずれかを主成分とする合金や、ニュートン合金、オニオン合金、ウッド合金およびリポウィッツ合金が特に好ましい。上記の金属や合金の融点は、例えばSn(232℃)、Pb(327℃)、SnPb(182℃)、Bi(271℃)、Cd(321℃)、In(156℃)、ニュートン合金(50%Bi 31%Pb 19%Sn 95℃)、オニオン合金(50%Bi 30%Pb 20%Sn 95℃)、ウッド合金(50%Bi 24%Pb 14%Sn 12%Cd 70℃)、リポウィッツ合金(50%Bi 27%Pb 13%Sn 10%Cd 70℃)である。
【0022】
また、ダミーパターン膜の膜厚は、0.01〜500μm、好ましくは0.05〜50μm、特に好ましくは0.05〜10μmである。この膜厚が0.01μm未満となると、その膜上に形成されためっき膜の除去が困難となり、また、500μmを超えると低融点金属が必要なめっき膜に付着してしまい短絡等の問題が発生することがある。
【0023】
また、前記金属から選ばれる1種を主成分とし、副成分として前記金属から選ばれる1種以上の金属を含むようにした合金や、Ag、Cu、Zn、Ni等の高融点金属やP、C、S等の非金属をさらに10wt%以下含有するよう合金組成であっても、その合金としての融点が上記温度以下、すなわち400℃以下であれば問題はない。なお、融点の下限は実用上利用可能な低融点合金の下限であるが、特に好ましくは、安価なSnPb共晶合金の融点(182℃)以上である。
【0024】
また、上記低融点の金属膜として、価格、安全性の観点からSnが好ましく、SnまたはSn合金めっき膜とする場合には、公知の各種のめっき浴、めっき条件を使用することが可能である。
【0025】
また、ダミーパターン膜(ダミーめっき用電極パターンの膜)は、低融点金属の単層膜である必要はなく、下地電極膜として少なくとも低融点金属膜を1層有する多層膜であっても差し支えない。すなわち、密着層としてTi膜を用い、その上に低融点金属層としてSnBi膜を成膜し、さらにCu膜、そしてAu膜を用いた4層多層膜等も好ましく用いることが可能である。この場合には実質的なダミーパターンとしての機能、すなわちめっき下地導体としての機能は主としてCu膜がはたす。Au膜はCu膜の酸化防止のためである。さらには、本パターンの下地導体電極膜と共通の膜に加えて、ダミーパターンのみに低融点金属膜を積層する構成も好ましく用いることができる。
【0026】
なお、ダミーめっき用電極パターンである低融点金属膜と、めっき膜(低融点金属膜の上や、本パターンの上に形成されるめっき膜)との融点の差は、100℃以上、好ましくは200℃以上であり、めっき膜は、ニッケル、金、銅いずれかの金属、あるいはいずれかを主成分とする合金からなることが好ましい。融点の差が100℃未満であると、低融点金属膜の融点以上の温度でダミーパターン膜上のめっき膜を除去する際に、めっき膜も軟質化して、傷が付き易くなるからである。
【0027】
本発明においては、めっきを行った後に低融点金属膜の融点以上、好ましくは融点より10〜50℃高い温度に加熱しダミーパターン上に形成されためっき膜を除去する。10℃未満では除去が困難であり、50℃を超えると加熱のためのコストが高くなる傾向にある。
【0028】
以下、図1(a),(b)〜図7(a),(b)を用いて、本発明の電子部品の製造方法、特に、本発明の電気めっき法によりバンプ群を作製する過程を経時的に説明する。これら各図面において、(a)は本発明の電子部品の製造方法を説明するためのめっき対象物の平面図を模式的に示したものであり、(b)は(a)の断面図を模式的に示したものである。なお、図は説明のために下地導電膜、低融点金属膜等を厚く表現する等デフォルメや簡略化されたものであり、基体10の表面、内部に設けられている回路は表示していない。
【0029】
図1に示されるように、基体10上に導電体膜20が形成される。
【0030】
次いで、図2に示されるように、ダミーパターン形成部周辺のみに、さらに低融点金属膜パターン22が形成される。なお図では簡略化のため、低融点金属膜パターン22が導電体膜20の中に埋め込まれたように表現されている。
【0031】
次いで、図3に示されるようにフォトレジスト30でパターニングを行いフォトレジスト30に開口部を形成する。この開口部がめっき用電極パターン36、およびダミーめっき用電極パターン35となる。すなわち、導電体膜20の上にパターン化された開口部がめっき用電極パターン36を構成し、低融点金属膜パターン22の上にパターン化された開口部がダミーめっき用電極パターン35を構成する。図3(a)の最外周位置を取り巻く開口部はダミーめっき用電極パターン35を構成している。
【0032】
ここで、導電体膜20はめっき法として電気めっきを用いる場合には通電のために不可欠であり、金、銅等の金属をスパッタ等の真空成膜法や無電解めっき法で成膜することが好ましい。通電を確保するのが目的のため膜厚は0.05〜5μm程度の薄膜で十分である。パターニングはフォトレジストを塗布し、マスクを通じて露光、現像することで行う。本発明においてはフォトレジストの厚さは薄くて構わないため、0.1〜5μm程度で十分である。このため汎用の安価なフォトレジストを使用し、露光、現像等のプロセス時間も短い。
【0033】
このように、ダミーめっき用電極パターン35は、レジストパターンにより形成することが好ましいが、低融点金属膜パターン22形成時に作製しておくことも可能である。
【0034】
次いで、図4に示されるように、めっきにより、バンプを形成する。
【0035】
本発明では、めっき成膜時の撹拌速度vが0.01〜0.1m/s、電流密度iが5〜10A/dm2、金属イオン濃度Mが0.01〜0.4モル/リットルであることが好ましい。上記の条件は、本来は水平方向も垂直方向も同じ速度で成膜されるめっき膜を、垂直方向に異方性成長させるために必要となる。撹拌速度vが0.01m/s未満では金属イオンの析出面への拡散が不十分でヤケを起こし、撹拌速度vが0.1m/sを超えると水平方向への成長が早くなってしまう。また電流密度iが5A/dm2未満では水平方向への成長が早くなってしまい、電流密度iが10A/dm2を超えるとヤケ現象が起こる。金属イオン濃度Mが0.01モル/リットル未満では金属イオンの析出面への拡散が不十分でヤケを起こし、金属イオン濃度Mが0.4モル/リットルを超えると水平方向への成長が早くなってしまう。すなわち、この3つの条件は異方性成長のために同じように寄与する。この3つの条件が全て前記範囲になければならない。特に注意すべきは、必要上ある条件が上限、または下限に近い場合には、他の条件が、それを補うようにやはり上限または下限に近い条件に設定する必要があることである。
【0036】
図4に示されるように、めっき用電極パターン36の上に成長したバンプ46は、バンプ高とバンプ幅の比であるアスペクト比が大きく、しかも、形状も揃っている。これに対して、ダミーめっき用電極パターン35上に成長したダミーバンプ45は、バンプ群の内部のバンプとは電流密度分布、液の流れによる金属イオンの拡散速度等が異なるため、外側に大きく張り出した形状となる。
【0037】
次いで、図5に示されるようにパターニングされたフォトレジスト30をめっき成膜後に剥離する。
【0038】
次いで、図6に示されるように、低融点金属膜パターン22である低融点金属膜の融点以上に加熱した状態で、ダミーめっき用電極パターン35(低融点金属膜パターン22)上に形成されためっき膜(ダミーバンプ45)を除去する。めっき膜(ダミーバンプ45)の除去は加圧した窒素を吹き付けたり、全体を振動させる等の物理的な刺激を与えることで容易に行える。ダミーめっき用電極パターン35(低融点金属膜パターン22)上のめっき膜を除去する際に、多くの低融点金属膜は共に除去されるが、一部は残留する(例えば、図6(b)の符号22a)。
【0039】
次いで、残留している低融点金属膜および不要なめっき用電極パターンは、エッチング、イオンミリング等の公知の手法で除去され、図7の状態に至る。図7(a),(b)は、本発明の一例であるめっき法により作製されたバンプ群の平面図、および断面図である。
【0040】
なお、本発明の方法で形成されるめっき膜は、下地である導電体膜から水平方向のめっき膜厚をL1、垂直方向のめっき膜厚をL2とした時に、L2/L1>2となるように構成されることが望ましい。
【0041】
また、上記の説明では、めっき膜によりバンプを形成する製造例を示したが、コイルを形成する製造例も好ましい態様である。コイル形成については、下記の具体的実施例を参照されたい。
【実施例】
【0042】
以下、本発明の具体的実施例挙げて本発明をさらに詳細に説明する。
【0043】
〔実施例1〕
BGA用マトリックスバンプの形成例
図7に示されるような構造のBGA用マトリックスバンプを製作した。
【0044】
すなわち、基体を構成するシリコンウエハー10上に、アルミニウム(10nm)、クロム(10nm)、金(200nm)の順に下地の導電体膜20として全面にスパッタ成膜した。
【0045】
さらに、メタルマスクを用いて、スズ(500nm)を下地導電膜の一部に所定パターンで形成した(低融点金属膜の形成)。
【0046】
その後、フォトレジストをスピンコートし、膜厚1μmのフォトレジスト30を設けた。そして、バンプ形成のために、直径W1=40μmの円形バンプパターンが中心距離100μmの間隔で多数配置されているフォトマスクを用いてパターニングを行った。このパターンの内、最外周のバンプには、下地膜としてスズが形成されており、ダミーパターンである。
【0047】
このウエハーをパドル攪拌を行いながら電気めっきを行い、めっき厚50μmの金バンプを作製した。使用した金めっき液は日本エレクトロプレーティングエンジニアーズ社製テンペレックス707であり、撹拌速度は0.03m/s、電流密度は7.5A/dm2、金イオン濃度は0.1モル/Lとした。
【0048】
めっき後に、酸素プラズマアッシング処理を行い、フォトレジストを剥離した。そして、アルゴン雰囲気下、バンプ形成面を下側にしランプ加熱により260℃に加熱し軽く揺動したところ、ダミーめっき膜は全て剥落し、所望のめっきバンプのみが基板上に残った。そして、イオンミリングにより下地電極膜を除去することで、所望のバンプ群を有する基板を完成させた。
【0049】
〔実施例2〕
コイルの形成例
図8(a),(b)〜図11(a),(b)に示される手順にて、コイルを作製した。
これら各図面において、(a)はめっき対象物の平面図を模式的に示したものであり、(b)は(a)の断面図を模式的に示したものである。
【0050】
図8に示されるように3インチ径のフェライト基板10(厚さ500μm)の片面にメタルマスクを用いて、低融点金属膜22であるインジウム膜を、200nmの厚さに成膜した。
【0051】
低融点金属膜22の成膜パターンは図8に示されるように、ダミーめっき膜が成膜される部分とその周囲である。
【0052】
次に、図9に示されるようにチタンを10nm、銅を200nmを全面に成膜し、下地導電体膜20とした。そして、ポジ型ホトレジスト(東京応化工業社製、商品名「PMER P−AR900」)を乾燥膜厚5μmになるようにスピンコートし、常法に従って露光及び現像処理することによりパターン幅90μm、パターン間隔20μmのレジストパターン30を形成させた。このようにして得たレジストパターン30はその除去された部分がスパイラル状である。
【0053】
次いで、このパターンに、硫酸銅濃度70グラム/リットルのめっき液を用い、小孔を有するパイプをカソード近傍に配置し、25℃において、これからめっき液を20mm/秒の割合で噴出させることによって、カソード近傍での攪拌速度を0.07m/sとし、電流密度6A/dm2の条件下で光沢硫酸銅めっきを行い膜厚150μmの断面マッシュルーム状のコイル導体めっき層55,56を形成させた。符号55がダミーのめっき部分である。
【0054】
その後、全面をイオンミリングにて処理し(基板角度80度)、めっき下地膜として成膜した銅、チタン膜を除去した。しかる後、窒素置換下、200℃ホットプレートにて基板下面から加熱し、その直後に基板を上下反転したところ、図11に示されるようにダミーパターン上のめっき膜55は基板から脱落分離した。なお、インジウムは大部分が脱離した銅ダミーパターンに付着したため、基板面にはわずかのインジウムが残存したのみであった。その後、コイルの両端部に別途、準備した細線を接続し、平面コイル56を製造した。
【0055】
以上の実施例からもわかるように、本発明によれば、高密度実装に適した高アスペクト比のめっき膜を均一に形成するために、不可欠なダミーめっき膜部分を容易に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】図1(a),(b)は本発明のめっき法によりバンプ群を作製する過程を経時的に説明するための図面であって、(a)は、めっき対象物の平面図を模式的に示したものであり、(b)は(a)の断面図を模式的に示したものである。
【図2】図2(a),(b)は本発明のめっき法によりバンプ群を作製する過程を経時的に説明するための図面であって、(a)は、めっき対象物の平面図を模式的に示したものであり、(b)は(a)の断面図を模式的に示したものである。
【図3】図3(a),(b)は本発明のめっき法によりバンプ群を作製する過程を経時的に説明するための図面であって、(a)は、めっき対象物の平面図を模式的に示したものであり、(b)は(a)の断面図を模式的に示したものである。
【図4】図4(a),(b)は本発明のめっき法によりバンプ群を作製する過程を経時的に説明するための図面であって、(a)は、めっき対象物の平面図を模式的に示したものであり、(b)は(a)の断面図を模式的に示したものである。
【図5】図5(a),(b)は本発明のめっき法によりバンプ群を作製する過程を経時的に説明するための図面であって、(a)は、めっき対象物の平面図を模式的に示したものであり、(b)は(a)の断面図を模式的に示したものである。
【図6】図6(a),(b)は本発明のめっき法によりバンプ群を作製する過程を経時的に説明するための図面であって、(a)は、めっき対象物の平面図を模式的に示したものであり、(b)は(a)の断面図を模式的に示したものである。
【図7】図7(a),(b)は本発明のめっき法によりバンプ群を作製する過程を経時的に説明するための図面であって、(a)は、めっき対象物の平面図を模式的に示したものであり、(b)は(a)の断面図を模式的に示したものである。
【図8】図8(a),(b)は本発明のめっき法によりコイルを作製する過程を経時的に説明するための図面であって、(a)は、めっき対象物の平面図を模式的に示したものであり、(b)は(a)の断面図を模式的に示したものである。
【図9】図9(a),(b)は本発明のめっき法によりコイルを作製する過程を経時的に説明するための図面であって、(a)は、めっき対象物の平面図を模式的に示したものであり、(b)は(a)の断面図を模式的に示したものである。
【図10】図10(a),(b)は本発明のめっき法によりコイルを作製する過程を経時的に説明するための図面であって、(a)は、めっき対象物の平面図を模式的に示したものであり、(b)は(a)の断面図を模式的に示したものである。
【図11】図11(a),(b)は本発明のめっき法によりコイルを作製する過程を経時的に説明するための図面であって、(a)は、めっき対象物の平面図を模式的に示したものであり、(b)は(a)の断面図を模式的に示したものである。
【符号の説明】
【0057】
10…基体
20…導電体膜
22…低融点金属膜
30…パターニングされたフォトレジスト
【特許請求の範囲】
【請求項1】
めっき用電極パターンの周囲にダミーめっき用電極パターンを設け、これらの電極パターンの上にめっきを行った後に、ダミーめっき用電極パターンの上に形成されたダミーめっき膜を除去してなる、めっき膜を有する電子部品の製造方法であって、
前記ダミーめっき用電極パターンの電極として低融点金属膜を用い、めっきをした後に前記低融点金属膜の融点以上に加熱した状態でダミーめっき用電極パターン上に形成されたダミーめっき膜を除去することを特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項2】
前記低融点金属膜は、その融点が400℃以下である請求項1に記載の電子部品の製造方法。
【請求項3】
前記低融点金属膜が、Sn、Pb、Bi、In、Cdのいずれかの金属、あるいはいずれかを主成分とする合金からなる請求項1または請求項2に記載の電子部品の製造方法。
【請求項4】
前記形成されるめっき膜は、下地である導電体膜から水平方向のめっき膜厚をL1、垂直方向のめっき膜厚をL2とした時に、L2/L1>2である請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の電子部品の製造方法。
【請求項5】
前記めっき膜によりバンプまたはコイルが形成されてなる請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の電子部品の製造方法。
【請求項6】
前記ダミーめっき用電極パターンである低融点金属膜と、めっき膜との融点の差は、100℃以上である請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の電子部品の製造方法。
【請求項1】
めっき用電極パターンの周囲にダミーめっき用電極パターンを設け、これらの電極パターンの上にめっきを行った後に、ダミーめっき用電極パターンの上に形成されたダミーめっき膜を除去してなる、めっき膜を有する電子部品の製造方法であって、
前記ダミーめっき用電極パターンの電極として低融点金属膜を用い、めっきをした後に前記低融点金属膜の融点以上に加熱した状態でダミーめっき用電極パターン上に形成されたダミーめっき膜を除去することを特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項2】
前記低融点金属膜は、その融点が400℃以下である請求項1に記載の電子部品の製造方法。
【請求項3】
前記低融点金属膜が、Sn、Pb、Bi、In、Cdのいずれかの金属、あるいはいずれかを主成分とする合金からなる請求項1または請求項2に記載の電子部品の製造方法。
【請求項4】
前記形成されるめっき膜は、下地である導電体膜から水平方向のめっき膜厚をL1、垂直方向のめっき膜厚をL2とした時に、L2/L1>2である請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の電子部品の製造方法。
【請求項5】
前記めっき膜によりバンプまたはコイルが形成されてなる請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の電子部品の製造方法。
【請求項6】
前記ダミーめっき用電極パターンである低融点金属膜と、めっき膜との融点の差は、100℃以上である請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の電子部品の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−294891(P2006−294891A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−114223(P2005−114223)
【出願日】平成17年4月12日(2005.4.12)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年4月12日(2005.4.12)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
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