説明

電子部品用ベース

【課題】 気密封止時のベース内の温度勾配を抑制でき、低背化にも対応したベースを用いることによって、信頼性の高い気密封止を行うことができる圧電振動デバイスを提供することを目的とする。
【解決手段】 凹部3を囲繞し、上面に金属封止部材が周状に形成された環状の堤部2を具備する平面視矩形状のベース1であって、前記ベース1は絶縁材料からなる複数の層の積層体であり、前記積層体の積層間には放熱用導体41、42が形成されている。さらに、凹部内底面12には、放熱用導体43が敷設されている。そして、前記堤部2の少なくとも一辺の外側面、内部、内側面のいずれか1つ、または2つ以上を組み合わせた位置には、堤部上面11から前記堤部2の深さ方向に伸長するとともに、前記放熱用導体41、42と接続した熱伝導部5が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器等に用いられる電子部品用ベースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
表面実装型の圧電振動デバイスの封止工程では、上面に金属膜層が形成された環状の堤部を有するセラミック積層体からなる容器体(ベース)と、金属からなる矩形状の蓋体とが、シーム溶接法などの封止手段によって気密接合される。(従来ベースについては図12乃至図13参照)
【0003】
前記シーム溶接時は、金属性の蓋体が高温状態になるため、当該蓋体に接触しているベースの温度も熱伝導により上昇する。しかし、前記蓋体と前記ベースの熱膨張率(線膨張係数)の違いから、前記シーム溶接が完了して常温まで温度が低下する際に、蓋体およびベースに引張応力等の各種応力が発生する。特に図13に示すように厚肉部分となる段部7付近では熱容量が大きいため、ベース内部の温度勾配が大きくなっていた。このように温度勾配が大きい状態にあると、熱応力の影響が大きくなり、ベースの側面などに割れやクラックが発生しやすくなる(図14参照)。割れやクラックが発生すると、気密不良やベース内部応力の増大による発振周波数のズレなどの不具合が発生する。
【0004】
前記応力を緩和するために、上記金属膜層と前記蓋体との間に緩衝材として金属枠体を介在させた構成のベースがあるが、圧電振動デバイスの小型化によって、堤部の幅が狭くなり、前記金属膜層のベース基体に対する接合強度が低下し、シーム溶接後の冷却過程で蓋体と金属枠体とが収縮することによって発生する応力が前記金属膜層に加わり、ベース基体から金属膜層が剥離してしまう問題点があった。このような問題点を解決するために、導体が充填された溝状の切り欠きをベース側面の上端から中央部にかけて形成した電子部品収納用パッケージが特許文献1に開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2005−183724号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のパッケージ(ベース)は、前記溝状の切り欠きによって、金属枠体と金属膜層とを接合するロウ材が、金属枠体と金属膜層との接合面から、溝状の切り欠きに充填された導体の露出表面にかけてフィレットを形成するので接合力の向上は望めるものの、金属枠体の厚みが加わるため圧電振動デバイスの低背化は望めない。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、気密封止時のベース内の温度勾配を抑制でき、低背化にも対応したベースを用いることによって、信頼性の高い気密封止を行うことができる圧電振動デバイスを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1によると、凹部と、当該凹部を囲繞し、上面に金属封止部材が周状に形成された環状の堤部とを具備する平面視矩形状のベースであって、前記ベースは絶縁材料からなる複数の層の積層体であり、前記積層体の積層間または前記凹部の内底面には放熱用導体が敷設されているとともに、前記堤部の少なくとも一辺の外側面、内部、内側面のいずれか1つ、または2つ以上を組み合わせた位置に、前記堤部上面から前記堤部の深さ方向に伸長し、前記放熱用導体と接続した熱伝導部が形成されている。このような構成により、蓋体で前記凹部を封止する際に高温になったベース上部の熱を、前記熱伝導部を介して前記放熱用導体に伝導することによって、ベース内部の温度勾配を抑制することができる。つまり、前記熱伝導部によってベース上部の熱を、ベースの鉛直方向(下方向)に伝導させるとともに、当該熱伝導部と熱伝導性の良い状態(例えば電気的に接続されている状態)で接続された放熱用導体によって、ベースの水平方向にも伝導させることができるので、ベース全体の温度分布を効率的に均一化させることができる。以上により、熱膨張率の異なる異種材料である蓋体とベースの温度差を緩和することができる。
【0009】
上記構成において、前記放熱用導体が凹部の内底面に形成されている場合、ベース上部の熱の一部を、ベース基体(セラミックス等の絶縁体層)に蓄熱させるだけでなく、ベースの内部キャビティ(蓋体とベースとの接合によって形成される内部空間)にも放熱させることができる。特に前記内部キャビティの雰囲気を窒素などの不活性ガスとした場合は気体の熱伝導によって、ベース内部の温度勾配を抑制することができる。なお、前記放熱用導体は、例えばベース内壁面の4角上下に形成したビアホール(導体が充填された円筒状の孔)を介して、ベース堤部の上面に形成される金属封止部材と接続することが可能である。
【0010】
さらに上記構成によって、シーム溶接等の局所加熱による封止方法において、ベースの内部の温度勾配を緩和することが可能となり、ベースに加わる各種応力をベース内部に分散させることができ、ベースのクラック発生を抑制することができる。
【0011】
前記放熱用導体がベースの積層間に形成されている場合、例えば堤部における積層間に放熱用導体が形成されていれば、シーム溶接時のベース上部の熱を、熱伝導部によってベース上下方向へ伝導すると同時に、前記熱伝導部と接続された前記放熱用導体によってベース水平方向へも伝導することができるので、ベース内温度の均一化に有効に機能する。
【0012】
矩形状のベースと蓋体とをシーム溶接によって接合する時には、辺長の長い長辺側の方が、シームローラーの接触時間が長くなるため、ベース上面の温度もベースの長辺側の方が短辺側よりも高くなる。したがってベース内の温度勾配は長辺側の方が大きくなると考えられる。また、ベースの製造ばらつきによって、ベースの構造的に脆弱な部分にはクラックが発生することがある。しかし、本発明の構成によると、堤部の少なくとも一辺の外側面、内部、内側面のいずれか1つ、または2つ以上を組み合わせた位置に、前記堤部上面から前記堤部の深さ方向に伸長し、前記放熱用導体と接続した熱伝導部が形成されているため、例えば2つ長辺の堤部に熱伝導部を形成した場合、前記ベース上部の熱がベース下部方向および水平方向に急速に伝導され、ベースの温度勾配を抑制することができる。つまり、前記熱伝導部と前記放熱用導体によって、ベース温度を均一化させてベースのクラックの発生を抑制することができる。
【0013】
前記熱伝導部がベースの堤部の内部に形成されている場合は、当該熱伝導部がベース絶縁材料に包囲されているため、ベース上部の熱の放熱を抑制することができるとともに、ベース下部方向へ伝導されるので熱伝導効率に優れる。
【0014】
前記熱伝導部がベースの堤部の内側面に形成されている場合は、放熱による熱損失を伴うものの、前記放熱は外部空間に対してではなく、ベースの内部キャビティへの放熱であるため熱損失を抑制でき、ベースの温度勾配を抑制することができる。この場合、熱伝導部を堤部の内側面に複数形成するか、あるいは堤部の内周の全面に亘って形成してもよい。全面に形成すると、より多くの熱量を積層間に形成された放熱用導体を介してベース下部方向へ伝導させることができるので、ベースの温度勾配抑制に効果が期待できる。なお、前記熱伝導部の形成位置は堤部の内部、または内側面に限定されるものではなく、堤部の外側に形成されていてもよい。
【0015】
前記熱伝導部の配設は、堤部の少なくとも一辺の外側面、内部、内側面のいずれか1つに形成するだけでなく、2つ以上を組み合わせた位置にも形成することによって、より多くの熱容量を確保することができる。したがってベース温度の均一化により効果が期待できる。また、前記熱伝導部の配設は、長辺側の2辺に対して行うと、前述のようにベースの温度勾配抑制に好適である。
【0016】
なお、前記熱伝導部の配設は前記ベース長辺側の堤部だけでなく、短辺側の堤部にも形成されていてもよい。この場合、前記温度勾配を2方向から抑制することができるので、ベース温度の均一化により効果的である。
【0017】
また、上記目的を達成するために、本発明の請求項2によると、前記熱伝導部は複数形成され、隣接する熱伝導部の間隔が広い部位と、狭い部位とが形成されるように配置されている。例えば、2長辺の中央付近に形成される複数の熱伝導部の間隔を狭くし、長辺端部付近に形成される複数の熱伝導部の間隔を広くするようにして配置した場合、長辺中央付近では熱伝導部の形成密度が高い“密”の状態となり、逆に長辺端部付近は熱伝導部の形成密度が低い“疎”の状態になる。このように、ベース内の温度勾配が大きくなると考えられる長辺側で、長辺中心付近に集中的に熱伝導部を配置することによって、ベース上部の熱をより多くベース下方へ伝導させることができる。したがって、長辺方向における温度勾配を効果的に抑制することができるので、ベースのクラック発生を抑制することができる。
【0018】
さらに、上記目的を達成するために、本発明の請求項3によると、凹部と、当該凹部を囲繞し、上面に金属封止部材が周状に形成された環状の堤部とを具備する、平面視矩形状で絶縁材料からなるベースであって、前記凹部内には段部が形成され、前記堤部の少なくとも一辺の外側面、内部、内側面のいずれか1つ、または2つ以上を組み合わせた位置には、前記堤部上面から前記堤部の深さ方向に伸長した熱伝導部が複数形成されており、前記複数の熱伝導部は、前記段部および前記段部以外の部位に形成されているとともに、前記段部における単位面積あたりの熱伝導部の形成数が、前記段部以外の部位における単位面積あたりの熱伝導部の形成数よりも多くなっている。すなわち、熱伝導部の形成密度は段部の方が、段部以外の部位よりも、つまり段部の下方に位置する凹空間(内底部)よりも高くなるように、熱伝導部が配設されている。
【0019】
このような構成にすることによって、段部により多くの熱量を伝導させて放熱効果を高めることができる。つまり、厚肉部となる前記段部は熱容量が大きいためベース上部の熱のベース下部方向への伝導が他の薄肉部よりも遅くなる。また、前記段部は熱容量が大きいことから熱伝導によって一旦昇温すると、他の部位に比べて降温に時間を要することにもなる。したがって、前記段部に集中的に熱伝導部を配置することによって、当該段部へ早くベース上部の熱が伝導される。これに加え、例えばシーム溶接による封止方法の場合、シ−ムローラーの転接を、厚肉部である段部が形成された一短辺側を起点として、段部が形成されていない他短辺側へ向って行うと、最終的にシーム溶接が完了する時点では、段部における温度降下量を最大化させることができるので温度勾配抑制に、より効果が期待できる。
【0020】
前述のように、前記熱伝導部を形成することによって、ベースの温度勾配を抑制することができるので、ベース堤部の幅を縮小することが可能となり、ベースの外形寸法に対するキャビティの容積をより大きく確保することができる。さらに、ベースのキャビティ容積を大きくすることができるため、同一外形寸法のベースにおいて、従来よりもキャビティ内に搭載される圧電振動素子のサイズを拡大することが可能となり、設計の余裕度が増すことになる。また、更なる小型化要求にも対応した設計が可能となる。
【0021】
また、本発明の請求項4によると、前記凹部内には段部が形成され、前記複数の熱伝導部は、前記段部および前記段部以外の部位に形成されているとともに、前記段部における単位面積あたりの熱伝導部の形成数が、前記段部以外の部位における単位面積あたりの熱伝導部の形成数よりも多いことを特徴とする請求項1乃至2に記載の電子部品用ベースであるので、段部に集中的に熱伝導部が近接するように形成されているとともに、積層間または凹部の内底面にも放熱用導体が形成されているため、シーム溶接等のベース内部の厚み差異による偏温化を抑制することができ、ベース全体の温度勾配を効率的に抑制することが可能となる。これによって、ベース側面等におけるクラックの発生を抑制することができるので、より信頼性の高い圧電振動デバイスを得ることができる。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、本発明によれば、気密封止時のベース内の温度勾配を抑制でき、低背化にも対応したベースを用いることによって、信頼性の高い気密封止を行うことができる圧電振動デバイスを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
−第1の実施形態−
以下、本発明による第1の実施形態について図1乃至図4を参照して説明する。なお、以下に示す実施形態は圧電振動デバイスとして、表面実装型の水晶振動子を本発明に適用した場合を示す。
【0024】
図1は本発明の第1の実施形態を示す水晶振動子の断面図を、図2は本発明の第1の実施形態を示すベースの上面図を、図3は図2のA−A線における断面図を、図4は図2のB−B線における断面図を示している。なお、図1乃至図4おいて、ベース底面に形成された外部接続電極および、ベース堤部上面に形成された金属封止部材、前記外部接続電極へ接続されるベース内部配線導体の記載は省略している。
【0025】
本発明で適用される表面実装型の水晶振動子は、図1に示すように水晶振動板13を前記搭載パッド8上に導電性接合材14を介して電気的機械的に接続した後、平面視矩形状で金属からなる蓋体9を、ベース堤部上面の金属封止部材10上に載置して不活性ガス雰囲気中でシーム溶接することによって作製される。ここで前記水晶振動板13は直方体形状のATカット水晶振動板であり、その表裏面には、水晶振動板を駆動させるための励振電極が形成されている。また、蓋体9はコバールを基体とする平面視矩形状で金属性の蓋体であり、当該蓋体9の表裏面にはニッケルメッキ層(図示せず)が形成されている。また蓋体9の前記金属封止部材10との接合面側には、前記ニッケルメッキ層の下(接合面側)に金属から成るロウ材(図示せず)が全面に亘って形成されている。なお、本実施形態では、前記ロウ材として銀ロウが使用されている。また、前記導電性接合材14は例えばペースト状のシリコーン系樹脂導電接合材が使用されるが、これに限定されるものではなく、エポキシ系樹脂導電接合材等を使用してもよい。
【0026】
本発明で適用される表面実装型の水晶振動子のベース1は、図1に示すように内部に圧電振動素子を収容するための凹部3と、当該凹部内に圧電振動素子を搭載するための一対の段部7と、前記凹部3を囲繞する環状の堤部2とを具備するアルミナ等のセラミックを主体とした絶縁性材料からなる容器体である。
【0027】
ベース1は本実施形態において、3枚のセラミックグリーンシートを積層して焼成によって形成され、ベース底面側から順に、1a,1b,1cで構成されている(図3参照)。そしてベース1の内部には、ベース底面(下面)に形成された外部接続電極(図示せず)と接続した配線導体(図示せず)が形成されている。
【0028】
ベース1の段部7(1bの上面)には一対の搭載パッド8が並列して形成されており、これらの搭載パッドはベース1の内部に形成された配線導体(図示せず)を介して、ベース底面(1aの下面)に形成された外部接続電極(図示せず)と電気的に繋がっている。前記一対の搭載パッド8は、例えばタングステンメタライズ層の上面にニッケル、金の順でメッキ等の手法により金属層を積層することによって形成されている。
【0029】
前記堤部2の上面11は平坦な状態となっており、周状の金属封止部材10(図2乃至図4で図示せず)が形成されている。前記金属封止部材は3層から成り、下から順にタングステンメタライズ層、ニッケルメッキ層、金メッキ層の構成となっている。なお、前記タングステンの代わりにモリブデンを用いてもよい。
【0030】
そして、前記ベース1の長辺側の対向する2つの堤部それぞれの内部には、複数の円柱状の熱伝導部5が一定間隔かつ、一定の深さで配設されている。本実施形態では、前記熱伝導部5は1長辺につき3箇所、すなわち長辺全体で6箇所に配設されている。なお、図2において熱伝導部5の形成状態をわかりやすくするために、堤部2の上面に形成される金属封止部材の記載は省略している。また、図2において熱伝導部および放熱用導体の一部は、形成状態をわかりやすくするために点線と塗り潰しを併用して記載している。また、堤部2の内周4角には、堤部上下方向に伸長したビアホール6(導体が充填された円筒状の孔)が形成されており、前記金属封止部材と接続した状態となっている。
【0031】
図3に示すように、前記熱伝導部5は深さ方向については、放熱用導体(詳細は後述)と接続する位置まで形成されている。平面方向については、堤部の幅(以下シールパスと称す)の中央を結ぶライン上に、円柱状の熱伝導部の中心が略一致するようにして、長辺方向に一定間隔で整列して配設されている。なお、前記熱伝導部5の直径は、シールパスが0.2mmの場合、0.1mmφ程度が好ましい。
【0032】
図3において、ベース1の積層間には、放熱用導体41、42が周状に敷設されている。放熱用導体41はベース1の底面側のセラミックグリーンシート(1a)とその上段の層(1b)との境界に、放熱用導体42は前記1bと、その上段の層(1c)との境界にそれぞれ形成されている。なお、前記放熱用導体41、42は、タングステンメタライズ層の上部にニッケルメッキを施すことによって形成されている。また、前記タングステンの代わりにモリブデンを用いることも可能である。
【0033】
前記放熱用導体41、42は、図3に示すように堤部の深さ方向に伸長する前記熱伝導部5と直交して電気的に接続した状態となっている。また、本実施形態において、前記放熱用導体41、42の幅寸法(水平方向の寸法)は、前記熱伝導部5の直径と略同一寸法となっている。なお、放熱用導体の幅寸法は、シールパスよりも狭くなるように設定することが好ましい。これは積層体の境界部分は同一の材料、つまり絶縁材料同士が接合している領域が多く残されている方が、異種材料(絶縁材料と導体)の熱膨張による応力の影響を緩和することができるためである。
【0034】
さらに、ベース1の凹部内底面12には平面視凸状で、金属から成る放熱用導体43が形成されている。前記放熱用導体43は、前記ビアホール6と接続した状態となっており、前記放熱用導体43はタングステンメタライズ層、ニッケルメッキ層、金メッキ層の順で金属膜が積層されている。なお、前記放熱用導体43と前記ビアホール6とを接続する手段について図1乃至図4では図示していない。このように放熱用導体43を凹部内底面12に形成することによって、ベース上部の熱をベースの内部キャビティに放熱させることができる。特に前記内部キャビティの雰囲気を窒素などの不活性ガスとした場合は気体の熱伝導によって、ベース内部の温度勾配を抑制することができる。
【0035】
さらに、前記放熱用導体43は、平面視凸状で、一対の段部7の下面には形成されていない。つまり、一対の搭載パッド8とは平面視で重ならない位置に形成されているので、浮遊容量の発生を無くすことができる。容量変化に伴う周波数調整が不要となる。
【0036】
前記熱伝導部5は導体からなり、本実施形態においては、タングステンあるいはモリブデンなどが使用され、スクリーン印刷によって形成される。具体的にはセラミックグリーンシートに貫通孔(ビアホール)を形成し、スキージすることによって前記貫通孔内部に導体を充填した後、セラミックグリーンシートを複数積層して焼成によって一体的に形成される。なお、前記熱伝導部5の導体材料としてタングステンあるいはモリブデンの他に、これらの導体よりもさらに熱伝導率の高い導体、例えば銅、銀、金、アルミニウムなどを用いることも可能である。
【0037】
そして、前記熱伝導部5の上端側、すなわち前記堤部2の上面には金属封止部材が形成されている。前記金属封止部材はタングステンメタライズ層が形成され、さらにその上面にニッケル層、金層の順に金属膜層がメッキ法によって成膜されることによって形成される。
【0038】
前述のシーム溶接時において、高温状態になった金属性の蓋体9および前記金属封止部材10を通じてベース1に熱が伝わるが、前記熱伝導部5により、前記金属封止部材10の熱を当該ベースの下方へ急速に伝熱させることができる。つまり、複数の熱伝導部5によって、高温になった前記金属封止部材10の熱を迅速にベース下方(本実施形態の場合、第1層目1aの上面周辺)にまで伝えることができる。またベース上下方向に加えて、前記複数の熱伝導部5と接続し、周状に敷設されている放熱用導体にも伝熱することによって、ベースの水平方向にも熱伝導させることができる。さらにベース1の凹部内底面12に形成された放熱用導体によって、内部キャビティにも放熱されるので、結果としてベース内の温度勾配を抑制することができ、ベースの温度を均一化させることができる。すなわち、封止時の蓋体の温度を早く低下させて、ベースの温度を早く上昇させることができるため、蓋体とベースの温度差を減少させることができる。よって、クラックの発生を抑制することが可能となる。
【0039】
本実施形態では、前記熱伝導部5の配設数は、1長辺につき3箇所としているが、これに限定されるものではなく、3箇所以上配設されていてもよい。この場合、より多くの容積でベース上部の熱をベース下部へ伝導することができるため、ベース温度の均一化に、より効果的に機能する。
【0040】
前記熱伝導部5の配設は前記ベース長辺側の堤部だけでなく、短辺側の堤部にも形成されていてもよい。この場合、前記温度勾配を2方向から抑制することができるので、ベース温度の均一化により効果が期待できる。また、本実施形態では熱伝導部5の形状は円柱であるが、本形状に限定されるものではなく、角柱状や楕円柱状、あるいは柱状が連なった形状であってもよい。
【0041】
前記熱伝導部および放熱用導体の形成によって、ベースの温度勾配を抑制することができるので、ベースのシールパスを縮小することが可能となり、ベースの外形寸法に対する凹部空間(キャビティ)の容積をより大きく確保することができる。さらに、ベースのキャビティ容積を大きくすることができるため、同一外形寸法のベースにおいて、従来よりもキャビティ内に搭載される圧電振動素子のサイズを拡大することが可能となり、設計の余裕度が増す。また、更なる小型化要求にも対応した設計が可能となる。
【0042】
本発明のベースであれば前記金属膜層4の上面に金属枠体を形成することなく、シーム溶接後の応力緩和を図ることができるため、圧電振動デバイスの低背化に寄与することができる。なお、本実施形態では金属枠体を用いない構成であるが、金属枠体を用いた構成のベースであっても本発明の適用は可能である。例えば金属枠体を前記金属封止部材の上に金属接合材を介して接合し、熱伝導部は金属枠体と前記金属封止部材とに接続した状態で前記堤部の深さ方向に形成されていればよい。
【0043】
本実施形態では蓋体とベースとの気密封止接合にシーム溶接を用いているが、レーザーや電子ビームなどによるビーム溶接においても適用可能である。また、本発明において蓋体の材料は封止方法がシーム溶接の場合は金属製となるが、ビーム溶接の場合は金属以外にセラミックも使用可能である。
【0044】
−第2の実施形態−
以下、本発明の第2の実施形態について図5乃至図6を基に説明する。図5は第2の実施形態を示すベースの上面図であり、図6は図5のC−C線における断面図である。図5において熱伝導部および放熱用導体の一部は、形成状態をわかりやすくするために点線と塗り潰しを併用して表示している。なお、第1の実施形態と同様の構成については、第1の実施形態と同様の効果を有するとともに、同番号を付して説明の一部を割愛する。以下、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。なお、本実施形態においても表面実装型の水晶振動子を本発明に適用した場合を示す。
【0045】
図5においてベース1は、第1の実施形態と同様に、3枚のセラミックグリーンシートを積層して焼成によって一体的に形成され、ベース底面側から順に、1a,1b,1c,の層構成となっている。長辺側の堤部の内部には複数の熱伝導部5が一定の深さで配設され、当該熱伝導部5とベース1の積層間に敷設された放熱用導体41、42と電気的に接続されている。さらにベース1の凹部内底面12には放熱用導体43が形成され、堤部2の内周の4角部分に上下方向に形成されたビアホールを介して堤部上面の金属封止部材(図示せず)と接続されている。
【0046】
本実施形態と前記第1の実施形態との相違点は、隣接する熱伝導部の間隔である。すなわち、本実施形態では前記複数の熱伝導部は一定間隔で配設されておらず、隣接する熱伝導部間の間隔が広い部位と、狭い部位とが形成されるように配設されている。
つまり、図5に示すように長辺側の堤部の略中央付近から、当該堤部両端付近にかけて漸次前記間隔が広くなるように形成されている。つまり長辺側の堤部の中央付近では間隔が狭い“密”な状態になっており、逆に長辺辺側の堤部両端付近では間隔が拡がった“疎”な状態になっている。前記間隔を図6に記載の記号を用いて不等号で表現すると、5a<5b<5cの関係となっている。
【0047】
上記構成は、長辺側の堤部の中央近辺が、シーム溶接によってベースに加わる各種応力の集中領域と考えられることから、長辺側の堤部の中央付近においてより多くの熱容量をベース下部方向へ熱移動させて熱勾配を抑制することを目的としている。上記構成により、ベース温度の均一化をより効率的に行うことができる。
【0048】
また、シーム溶接では長辺と短辺の各々でシームローラーが転接するため、堤部上面の4角部分は2回シームローラーが接触する部位となり、4角部分の温度が特に高くなる傾向がある。しかし、上記構成とすることで、長辺におけるベース1の下部方向への伝熱量を長辺中央に近づくほど多く確保することができるので、4角付近における局所温度の上昇を抑えることができ、ベース全体の温度分布を均一化することができる。
【0049】
−第3の実施形態−
以下、本発明の第3の実施形態について図7乃至図8に基づいて説明する。図7は第3の実施形態を示すベースの上面図であり、図8は図7のD−D線における断面から見た側面図である。図7において熱伝導部および放熱用導体の一部は、前記第2の実施形態と同様に形成状態をわかりやすくするために点線と塗り潰しを併用して表示している。なお、第1の実施形態と同様の構成については、第1の実施形態と同様の効果を有するとともに、同番号を付して説明の一部を割愛する。
【0050】
図7に示すように本実施形態において熱伝導部5は、長辺側の堤部の内周側面(以下内壁面と称す)に複数形成されている。前記複数の熱伝導部5は一定の間隔で形成されてはおらず、形成深さも場所によって異なっている。さらに熱伝導部の形状は、円柱を高さ方向に2分割した“半円柱”形状(以下ハーフビアと称す)となっている。本実施形態では熱伝導部5は、1つの長辺の内壁面に7箇所、したがって長辺全体で14箇所に配設されている。なお、本実施形態では積層間または凹部内底面に放熱用導体は形成されていない。
【0051】
前記熱伝導部5はハーフビアの形状となっているが、これはセラミックグリーンシート状態において全円状の貫通孔を環状に複数形成しておき、当該貫通孔の中にタングステンあるいはモリブデンの導体を充填した後、それぞれの孔の直径を通って面積を2等分する周状のラインでプレス加工することによって形成される。本実施形態では、複数の熱伝導部5の材料は全て同一の材料で構成されているが、異種材料で構成されていてもよい。
【0052】
次に前記複数の熱伝導部5は、図7に示すように段部7に繋がっている部位と、前記段部7以外の部位、すなわち凹部内底面12に繋がっている部位がある。そして、段部7に繋がって形成される熱伝導部の数は、前記段部以外の部位に形成される熱伝導部の数よりも多くなっている。すなわち、熱伝導部の形成密度は、段部の方が段部以外の部位よりも高くなっている。具体的には、段部7では1長辺につき4個が、当該段部以外の部位では1長辺につき3個が形成されている。そして段部7における熱伝導部の間隔は、当該段部以外の部位における熱伝導部の間隔よりも狭くなっている。すなわち、段部7に熱伝導部が“密集”した状態で形成されている。そして、前記複数の熱伝導部5の形成深さは、図8に示すように、段部7に繋がる部位においては1b層の上面の深さまでであり、段部7以外の部位では1a層の上面のまでの深さとなっている。
【0053】
このような構成にすることによって、段部7により多くの熱量を伝導させて放熱効果を高めることができる。つまり、厚肉部となる段部7に集中的に熱伝導部を配置することによって、ベース上部の熱をより多く段部7へ伝導させる。これに加え、例えばシーム溶接による封止方法の場合、シ−ムローラーの転接を、厚肉部である段部7が形成された一短辺側を起点として、段部が形成されていない他短辺側へ向って行うと、最終的にシーム溶接が完了する時点では、段部7における温度降下量を最大化させることができるので温度勾配の抑制に、より効果的が期待できる。
【0054】
−第4の実施形態−
以下、本発明の第4の実施形態について図9乃至図10に基づいて説明する。図9は第4の実施形態を示すベースの上面図であり、図10は図9のE−E線における断面から見た側面図である。なお、前記実施形態と同様の構成については、前記実施形態と同様の効果を有するとともに、同番号を付して説明の一部を割愛する。
【0055】
図9は、第3の実施形態に示す構成に加え、積層間およびベース1の凹部内底面12に放熱用導体41、42、43が形成された構成となっている。つまり、熱伝導部5(ハーフビア)は長辺側の堤部の内壁面に複数形成されているとともに、積層間およびベースの凹部内底面12の放熱用導体と接続された状態となっている。また、第3の実施形態と同様に、熱伝導部5は形成密度が段部の方が、段部以外の部位よりも高くなるように配設されている。
【0056】
上記構成のように、堤部2の内壁面に複数の熱伝導部を配することにより、内部キャビティに内向して熱伝導部が露出しているため、ベース上部の熱を内部キャビティ側へ放熱するのと同時に、当該熱伝導部と接続した放熱用導体によって堤部2の内部側へも伝熱することになり、バランス良くベースの温度を均一化することができる。さらに、段部7における単位面積あたりの熱伝導部の形成数が、前記段部以外の部位における単位面積あたりの熱伝導部の形成数よりも多くなるように熱伝導部5が配設されているため、ベース内部の厚み差異による偏温化を抑制することができる。
【0057】
−第4の実施形態の変形例−
前述の第4の実施形態の変形例を図11に示す。図11は第4の実施形態に対して、段部7以外の部位に形成される熱伝導部を、堤部の略中央の位置、つまり積層間に形成された放熱用導体の上方の位置に配置した例である。なお、前述の実施形態と同様の構成については同番号を付して説明の一部を割愛するとともに、前述の実施形態と同様の効果を有する。
【0058】
このような構成とすることで、ベース1の厚肉部である段部7付近の部位では、堤部の内壁面に形成された熱伝導部によって、段部7へ迅速にベース上部の熱を伝導させることができる。一方、ベース1の薄肉部となる凹部内底面12(段部以外の部位)へは、熱伝導部が堤部2の内部に形成されているため、内部キャビティへの放熱による熱損失を伴わずにベース上部の熱を伝導させることができる。したがって、効率良くベースの温度を均一化させることができる。
【0059】
本発明の実施形態において複数の熱伝導部を配設する場合、堤部2の外側面、内部、内側面の2つ以上を組み合わせて形成された熱伝導部は、前記第4の実施形態の変形例のような配列に限定されるものではなく、例えば堤部内部の熱伝導部と、堤部内側面の熱伝導部とが堤部幅方向に非整列(互い違い)となった状態であってもよい。このような構成であれば、堤部側面方向から見たときに前記熱伝導部がより分散した状態で形成されるため、より高い熱勾配抑制効果が期待できる。
【0060】
また、本発明の実施形態において、円柱状の熱伝導部5の直径を層ごとに変えることによって、ベース上下方向の伝熱量をコントロールすることも可能である。一例として図6において1bの層に形成される熱伝導部の直径の方が、1cの層に形成される熱伝導部の直径よりも大きくなるようにした場合、ベース底面に近い層である1b側に蓄えられる熱容量を拡大することができる。すなわち、ベース下部方向の温度をより早く上昇させることができるため、ベースの温度がより早く均一化され、結果的にクラックの発生を防止することができる。
【0061】
本発明の実施形態では圧電振動デバイスとしてATカット水晶振動子を挙げているが、その他の例として音叉型水晶振動子や、その他のカットの水晶振動子の製造においても本発明は適用可能である。さらに、ベース内底部上にICを搭載した後、ワイヤボンディングやフェースダウンボンディング等によってIC接続端子とベース内底部に形成されたパッド電極とが電気的に接続され、その上方に圧電振動素子が搭載された構造の発振器、あるいは、前記ICと圧電振動素子の位置関係が上下逆構造の発振器の製造においても本発明は適用可能である。また、前記圧電振動デバイス内に収容される圧電振動素子は単数に限定されるものではなく、複数の圧電振動素子が収容されていてもよい。
【0062】
さらに本発明は、複数個の蓋体またはベースがマトリクス状に整列して一体的に形成された集合基板を用いた製造方法についても適用可能である。
【0063】
本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施の形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0064】
圧電振動デバイスの量産に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す水晶振動子の断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態を示すベースの上面図である。
【図3】図2のA−A線における断面図である。
【図4】図2のB−B線における断面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態を示すベースの上面図である。
【図6】図5のC−C線における断面図である。
【図7】本発明の第3の実施形態を示すベースの上面図である。
【図8】図7のD−D線における断面から見た側面図である。
【図9】本発明の第4の実施形態を示すベースの上面図である。
【図10】図9のE−E線における断面から見た側面図である。
【図11】本発明の第4の実施形態の変形例を示すベースの上面図である。
【図12】従来のベースの上面図である。
【図13】図12のF−F線における断面図である。
【図14】従来のベースの側面図である。
【符号の説明】
【0066】
1 ベース
2 堤部
3 凹部
41、42、43 放熱用導体
5 熱伝導部
6 ビアホール
7 段部
8 搭載パッド
9 蓋体
10 金属封止部材
11 堤部上面
12 凹部内底面
13 水晶振動板
14 導電性接合材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹部と、当該凹部を囲繞し、上面に金属封止部材が周状に形成された環状の堤部とを具備する平面視矩形状のベースであって、
前記ベースは絶縁材料からなる複数の層の積層体であり、前記積層体の積層間または前記凹部の内底面には放熱用導体が敷設されているとともに、
前記堤部の少なくとも一辺の外側面、内部、内側面のいずれか1つ、または2つ以上を組み合わせた位置に、前記堤部上面から前記堤部の深さ方向に伸長し、前記放熱用導体と接続した熱伝導部が形成されていることを特徴とする電子部品用ベース。
【請求項2】
前記熱伝導部は複数形成され、隣接する熱伝導部の間隔が広い部位と狭い部位とが形成されるように配置されていることを特徴とする請求項1に記載のべース。
【請求項3】
凹部と、当該凹部を囲繞し、上面に金属封止部材が周状に形成された環状の堤部とを具備する、平面視矩形状で絶縁材料からなるベースであって、
前記凹部内には段部が形成され、
前記堤部の少なくとも一辺の外側面、内部、内側面のいずれか1つ、または2つ以上を組み合わせた位置には、前記堤部上面から前記堤部の深さ方向に伸長した熱伝導部が複数形成されており、
前記複数の熱伝導部は、前記段部および前記段部以外の部位に形成されているとともに、前記段部における単位面積あたりの熱伝導部の形成数が、前記段部以外の部位における単位面積あたりの熱伝導部の形成数よりも多いことを特徴とする電子部品用ベース。
【請求項4】
前記凹部内には段部が形成され、前記複数の熱伝導部は、前記段部および前記段部以外の部位に形成されているとともに、前記段部における単位面積あたりの熱伝導部の形成数が、前記段部以外の部位における単位面積あたりの熱伝導部の形成数よりも多いことを特徴とする請求項1乃至2に記載の電子部品用ベース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−76589(P2009−76589A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−242659(P2007−242659)
【出願日】平成19年9月19日(2007.9.19)
【出願人】(000149734)株式会社大真空 (312)
【Fターム(参考)】