説明

電気めっき層の磁気特性制御方法、磁性層の電気めっき方法、磁性層の製造方法、磁気ヘッドの製造方法およびそれに用いるめっき浴

【課題】磁気特性を向上させることが可能な電気めっき層の磁気特性制御方法を提供する。
【解決手段】電解析出層の中に含まれることとなる全ての元素を溶液中に含有するめっき浴を用意し、そのめっき浴に、約0.05g/l以上0.3g/l以下の濃度でアリールスルフィネートを加え、電気めっき処理を行う。これにより、アリールスルフィネートを含まないめっき浴から電解析出された層の磁気特性とは異なる磁気特性を有する電解析出層を得る。この電解析出層は、磁気ヘッドに用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気めっき層の磁気特性制御方法、磁性層の電気めっき方法、磁性層の製造方法、磁気ヘッドの製造方法およびそれに用いるめっき浴に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気ヘッドは、通常、磁気読出ヘッド部と磁気書込ヘッド部とを一体に集積化した単一ユニットとして作製される。この種の磁気ヘッドでは、一般に、読出ヘッド部を最初に形成した後、書込ヘッド部を形成するようになっている。読出ヘッド部は、磁気フリー層を含んでいる。この磁気フリー層の磁化方向は、GMR(giant magnetoresistance )効果に起因して銅スペーサにもたらされるスピン分極、またはTMR(tunneling magnetoresistance )効果に起因して非常に薄い絶縁層にもたらされるスピン分極のいずれかによって、素子の電気抵抗値を変化させるようになっている。
【0003】
この読出ヘッド部は、一連の極めて薄い膜を含んでいるため、真空技術を使用して形成される。一方、書込ヘッド部は、標準的な真空技術を用いた成膜対象としては、比較的厚い層を含んでいる。このため、書込ヘッド部を形成するには、原理的に見て電気めっきが好ましい。ところが、従来の電気めっき法では、磁性薄膜を、電解析出されたそのままの状態で書込ヘッドの最適性能に必要な磁気特性を有するように形成することは困難であった。
【0004】
特に、従来の電気めっきにより電解析出されたCoFe合金またはCoNiFe合金の層は、低い保磁力を有するか、または高い飽和磁化を有するかのいずれかであることが一般的であり、双方の特性を有するように形成することは困難であった。このため、従来は、その電解析出された層を磁気的な熱処理(通常、磁化容易軸に沿ってかけた少なくとも50×103 /π[A/m]の磁場の中で、少なくとも200℃、約60分処理)することにより、双方の特性を付与し、磁性層を形成していた。
【0005】
ところで、めっき層を形成する技術としては、例えば、以下の技術が開示されている。アリールスルフィン酸塩やスルフィン酸を含むめっき浴を用いた電気めっきにより、光沢を有するニッケル、コバルトあるいはそれらの合金の層を形成する技術(例えば、特許文献1、2参照。)や、芳香族スルフィン酸塩とアルデヒドまたはジアルデヒドとを含むめっき浴を用いて鉄・ニッケル・コバルト合金のめっき層を形成する技術(例えば、特許文献3、4参照。)や、界面活性剤として硫酸塩を含むめっき浴を用いて鉄・ニッケル合金のめっき層を形成する技術(例えば、特許文献5参照。)などが開示されている。また、その他に、軟磁性層を形成するために調製されためっき浴の組成に関する技術(例えば、特許文献6参照。)や、界面活性剤としてスルフィン酸塩を用いて磁性粒子をめっきする技術(例えば、特許文献7参照。)や、芳香族スルフィン酸またはその塩を含むめっき浴を用いて、ルテニウム基板の上にコバルト・鉄層を電気めっきにより形成する技術(例えば、特許文献8参照)が開示されている。
【特許文献1】米国特許第2654703号明細書
【特許文献2】米国特許第3969399号明細書
【特許文献3】米国特許第4014759号明細書
【特許文献4】米国特許第4053373号明細書
【特許文献5】米国特許第6801392号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2004/0051999号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2006/0029741号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第2003/0209295号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の電気めっき方法では、所望の磁気特性をもつ磁性層を形成するには十分とは言えず、電解析出された層に磁気的な熱処理をする必要があった。この磁気的な熱処理は電解析出された層の磁気特性を改善する点では有効であるが、その一方で、既に形成されている読出ヘッド部を熱の影響により不安定にする点では不適切でもある。このため、電解析出された層を熱処理することなく、要求される磁気特性を有する磁性層を形成する電気めっき方法が望まれている。
【0007】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、電解析出された状態のままで低い保磁力および高い飽和磁化という2つの磁気特性を兼ね備えた磁性膜を形成することを可能にする電気めっき層の磁気特性制御方法、磁性層の電気めっき方法、磁性層の製造方法、それによる磁気ヘッドの製造方法およびそれに用いるめっき浴を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、上記のような2つの磁気特性に加えて、高い耐蝕性を有する磁性膜を形成することを可能にする電気めっき層の磁気特性制御方法、磁性層の電気めっき方法、磁性層の製造方法、それによる磁気ヘッドの製造方法およびそれに用いるめっき浴を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の電気めっき層の磁気特性制御方法は、電気めっきにより形成される電解析出層の磁気特性を制御する方法であって、電解析出層の中に含まれることとなる全ての元素を溶液中に含有するめっき浴を用意するステップと、めっき浴に、約0.05g/l以上0.3g/l以下の濃度でアリールスルフィネート(aryl sulfinates)を加えるステップと、めっき浴を用いた電気めっき処理を行うことにより、アリールスルフィネートを含まないめっき浴から電解析出された層の磁気特性とは異なる磁気特性を有する前記電解析出層を得るステップとを含むものである。なお、上記したアリールスルフィネート(aryl sulfinates)とは、アリールスルフィン酸とアリールスルフィン酸塩とを含む総称である。
【0010】
本発明の電気めっき層の磁気特性制御方法では、アリールスルフィネートを加えためっき浴を用意して電気めっきするため、形成された電解析出層の磁気特性がアリールスルフィネートを含まないめっき浴から電解析出された層の磁気特性と比較して良好に制御される。
【0011】
また、本発明の電気めっき層の磁気特性制御方法では、電解析出層が、2.4[T;テスラ]以上の飽和磁化という特性と75/π[A/m]よりも小さい保磁力という磁気特性を有するようにすることが好ましい。また、電解析出層をルテニウムからなるシード層の上に析出するのが好ましい。これにより、磁気特性がより良好に制御される。
【0012】
本発明の磁性層の電気めっき方法は、0g/l以上70g/l以下の濃度の硫酸ニッケル六水和物(NiSO4 ・6H2 O)と、25g/l以上120g/l以下の濃度の硫酸鉄七水和物(FeSO4 ・7H2 O)と、10g/l以上60g/l以下の濃度の硫酸コバルト六水和物(CoSO4 ・6H2 O)と、20g/l以上30g以下の濃度のホウ酸(H3 BO3 )と、0.5g/l以上30g/l以下の濃度の塩化ナトリウム(NaCl)と、0g/l以上0.15g/l以下の濃度の界面活性剤と、0.05g/l以上0.3g/l以下の濃度のアリールスルフィネートとを含むめっき浴を用意するステップと、めっき浴のpHを2以上3以下に調整するステップと、ニッケルおよびコバルトよりなる群から陽極を選択するステップと、5mA/cm2 以上30mA/cm2 以下の順方向ピーク電流密度、10mA/cm2 以下の逆方向ピーク電流密度、5ms以上100ms以下の順方向印加時間、30ms以下の逆方向出力時間、および10℃以上25℃以下のめっき浴温度、という条件の下で非対称交流電流を印加することにより、前記めっき浴から基板上に低保磁力と高飽和磁化とを有する磁性層を析出させるステップとを含むものである。
【0013】
本発明の磁性層の電気めっき方法では、上記したステップを含むため、めっき浴から基板上に、磁気特性が良好に制御された磁性層を析出される。
【0014】
また、本発明の磁性層の電気めっき方法では、基板上に析出された磁性層が、2.4[T]以上の飽和磁化と75/π[A/m]よりも小さい保磁力という磁気特性を有するようにすることが好ましい。また、基板は、ルテニウムからなるシード層であることが好ましい。これにより、磁気特性がより良好に制御された磁性層が析出される。磁性層は、0.3μm以上3μm以下の厚さに析出させることが好ましい。
【0015】
また、本発明の磁性層の電気めっき方法では、析出された磁性層が、塩化ナトリウム溶液中における腐食電位が約−0.18Vであり、かつ−0.05V電位における陽極電流密度が約10-5A/cm2 である、という高い耐食性を有することが好ましい。これにより、磁気特性と、耐食性とが良好に制御された磁性層が析出される。また、磁性層が、250MPaよりも小さい内部応力を有することが好ましい。
【0016】
本発明の磁性層の製造方法は、電気めっきにより形成される磁性層の製造方法であって、磁性層の中に含まれることとなる全ての元素を溶液中に含有するめっき浴を用意し、めっき浴に、約0.05g/l以上0.3g/l以下の濃度でアリールスルフィネートを加え、そのめっき浴を用いた電気めっき処理を行うことにより、電解析出したのちに熱処理することなく、低保磁力と高飽和磁化とを有する磁性層を得るものである。
【0017】
本発明の磁性層の製造方法では、約0.05g/l以上0.3g/l以下の濃度でアリールスルフィネートを含有するめっき浴を用いて電気めっきするため、電解析出した状態のままで、熱処理することなく磁気特性が制御された磁性層が形成される。
【0018】
本発明の磁気ヘッドの製造方法は、TMJ(トンネル磁気抵抗効果接合)を有する磁気読出ヘッドと磁気書込ヘッドとが完全一体化した磁気ヘッドの製造方法であって、上部磁気シールド層を含むように磁気読出ヘッドを形成する工程と、上部磁気シールド層の上方に、成膜したままの状態で2.4[T;テスラ]以上の飽和磁化と75/π[A/m]よりも小さい保磁力とを有する第1の磁性層を電気めっきにより形成する工程と、第1の磁性層の上方に磁気コイルを形成する工程と、第1の磁性層の上方に、成膜したままの状態で2.4[T;テスラ]以上の飽和磁化と75/π[A/m]よりも小さい保磁力とを有する第2の磁性層を電気めっきにより形成することにより、第1および第2の磁性層が、磁気コイルを挟み込むと共に、一端側において磁気的に互いに結合する一方、他端側において磁気的に互いに分離されるようにする工程と、第2の磁性層の上方に別の磁気シールド層を形成する工程とを含み、前記TMJを有する磁気読出ヘッドを熱処理にさらすことなく磁気書込ヘッドの形成を完了するものである。
【0019】
本発明の磁気ヘッドの製造方法では、電気めっきにより形成された第1の磁性層および第2の磁性層が、析出された状態のままで、2.4[T]以上の飽和磁化と、75/π[A/m]よりも小さい保磁力とをもつようにすることができることから、電解析出したのちに熱処理する必要がない。これにより、磁気読出ヘッドに対する熱的ダメージを抑えることができる。
【0020】
また、本発明の磁気ヘッドの製造方法では、第1の磁性層および第2の磁性層を形成する工程が、0g/l以上70g/l以下の濃度の硫酸ニッケル六水和物と、25g/l以上120g/l以下の濃度の硫酸鉄七水和物と、10g/l以上60g/l以下の濃度の硫酸コバルト六水和物と、20g/l以上30g以下の濃度のホウ酸と、0.5g/l以上30g/l以下の濃度の塩化ナトリウムと、0g/l以上0.15g/l以下の濃度の界面活性剤と、0.05g/l以上0.3g/l以下の濃度のアリールスルフィネートとを含むめっき浴を用意するステップと、めっき浴のpHを2以上3以下に調整するステップと、ニッケルおよびコバルトよりなる群から選択された陽極を用意するステップと、5mA/cm2 以上30mA/cm2 以下の順方向ピーク電流密度、10mA/cm2以下の逆方向ピーク電流密度、5ms以上100ms以下の順方向印加時間、30ms以下の逆方向出力時間、および10℃以上25℃以下のめっき浴温度、という条件の下で非対称交流電流を印加するステップとを含むのが好ましい。これにより、良好な磁化特性が付与される。
【0021】
また、本発明の磁気ヘッドの製造方法では、第1の磁性層および第2の磁性層が、塩化ナトリウム溶液中における腐食電位が約−0.18Vであり、かつ−0.05V電位における陽極電流密度が約10-5A/cm2 である、という高い耐食性を有するのが好ましい。これにより、電解析出したのちに熱処理することなく良好な磁化特性と、耐食性とが付与される。また、第1の磁性層および第2の磁性層が、250MPaよりも小さい内部応力を有することが好ましい。
【0022】
本発明のめっき浴は、磁性層の電解析出に用いられるめっき浴であって、0g/l以上70g/l以下の濃度の硫酸ニッケル六水和物と、25g/l以上120g/l以下の濃度の硫酸鉄七水和物と、10g/l以上60g/l以下の濃度の硫酸コバルト六水和物と、20g/l以上30g以下の濃度のホウ酸と、0.5g/l以上30g/l以下の濃度の塩化ナトリウムと、0g/l以上0.15g/l以下の濃度の界面活性剤と、0.05g/l以上0.3g/l以下の濃度のアリールスルフィネートとを含有し、pHが2以上3以下である溶液と、ニッケルおよびコバルトよりなる群から選択される陽極とを含むものである。
【0023】
本発明のめっき浴では、0.05g/l以上0.3g/l以下の濃度のアリールスルフィネートを含有することにより、このめっき浴を用いて電気めっきした場合、磁気特性が良好に制御された磁性層が析出される。
【発明の効果】
【0024】
本発明の電気めっき層の磁気特性制御方法によれば、めっき浴に約0.05g/l以上0.3g/l以下の濃度でアリールスルフィネートを加えるステップを含むことにより、電解析出された状態のままで低い保磁力および高い飽和磁化という2つの磁気特性を兼ね備えた磁性膜を形成することができる。また、その2つの磁気特性に加えて高い耐食性を有する磁性膜を形成することも可能になる。特に、電解析出層をルテニウムからなるシード層の上に析出すれば、より容易に低い保磁力および高い飽和磁化という2つの磁気特性を兼ね備えた磁性膜を形成することができる。
【0025】
本発明の磁性層の電気めっき方法によれば、上記した各ステップを含むことにより、電解析出された状態のままで低い保磁力および高い飽和磁化という2つの磁気特性を兼ね備えた磁性層を形成することができる。また、その2つの磁気特性に加えて高い耐食性を有する磁性層を形成することも可能になる。また、基板が、ルテニウムからなるシード層であるようにすれば、より容易に低い保磁力および高い飽和磁化という2つの磁気特性を兼ね備えた磁性層を形成することができる。
【0026】
本発明の磁性層の製造方法によれば、アリールスルフィネートを約0.05g/l以上0.3g/l以下の濃度でアリールスルフィネートを加えためっき浴を用いた電気めっきする処理により、電解析出された状態のままで低い保磁力および高い飽和磁化という2つの磁気特性を兼ね備えた磁性層を形成することができる。また、その2つの磁気特性に加えて高い耐食性を有する磁性層を形成することも可能になる。
【0027】
本発明の磁気ヘッドの製造方法によれば、第1の磁性層および第2の磁性層が電気めっきにより形成され、熱処理することなく低い保磁力および高い飽和磁化という2つの磁気特性を得ることができる。また、その2つの磁気特性に加えて高い耐食性を得ることも可能になる。よって、磁気読み出しヘッドへの熱の影響を抑えて安定性の高い磁気ヘッドを製造することができる。特に、第1の磁性層および第2の磁性層をルテニウムよりなるシード層の上に形成すれば、上記した磁気特性を備えた第1の磁性層および第2の磁性層をより容易に形成することができる。よって、より安定性の高い磁気ヘッドを製造することができる。
【0028】
本発明のめっき浴によれば、0.05g/l以上0.3g/l以下の濃度のアリールスルフィネートを含むことにより、このめっき浴を用いて電気めっきした場合、電解析出された状態のままで低い保磁力および高い飽和磁化という2つの磁気特性を兼ね備えた磁性層を形成することができる。また、その2つの磁気特性に加えて高い耐食性を有する磁性層を形成することも可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0030】
一般に、高い記録密度を得るためには、高い飽和磁化および低い保磁力を有する材料が要求される。しかしながら、高い飽和磁化(2.3[T]以上) を有する材料は、通常、耐食性が低いだけでなく、比較的大きい保磁力を有することから、用途が限定されてしまう。
【0031】
この点に鑑み、本実施の形態は、最適化されためっき浴およびシード層を使用してFex Coy Niz膜(60≦x≦71 、25≦y≦35 、0≦z≦5)を電解析出することにより、上記の問題を克服するための新しい方法を開示するものである。
【0032】
本発明の一実施の形態に係る磁性層は、基板上に電気めっきにより形成される。この磁性層は、低保磁力および高飽和磁化を有している。このように低保磁力および高飽和磁化を有する磁性層であれば、例えば磁気ヘッドに用いた場合に、高い記録密度が得られる。そのような磁性層としては、2.4[T](24kG)以上の飽和磁化と、75/π[A/m](0.3Oe)よりも小さい保磁力とを有するものであることが好ましい。
【0033】
磁性層は、塩化ナトリウム溶液中における腐食電位が約−0.18Vであり、かつ−0.05V電位における陽極電流密度が約10-5A/cm2という高い耐食性を有するのが好ましい。さらに、磁性層は、250MPaよりも小さい内部応力を有するのが好ましい。
【0034】
この磁性層としては、例えば、Fex Coy Niz (60≦x≦71 、25≦y≦35 、0≦z≦5)により構成されているものが挙げられる。中でも、5原子%以下のニッケルを含むのが好ましい。これにより、耐食性を向上させると共に、内部応力を低下させることができる。また、以下に記す電気めっき方法により形成されることで、低保磁力および高飽和磁化を有することができる。
【0035】
磁性層は、基板上に直接形成してもよいし、あるいは、基板上に形成したシード層の上に形成してもよい。シード層は、電気めっきにより磁性層を形成する際に、磁性層の核形成と成長とに寄与するものである。このため、シード層は、その上に形成される磁性層の磁気特性に影響を与えるものであると推察される。シード層としては、例えば、コバルト、鉄、ニッケル、銅、ルテニウムを含むものが挙げられる。これらは、単体で用いられてもよいし、複数種を混合して合金や化合物を形成し用いられてもよい。中でも、シード層は、ルテニウムにより構成されているのが好ましい。これにより、磁性層の軟磁性が改良され、保持力をより低下させることができるからである。
【0036】
この磁性層は、例えば、以下の手順により、めっき浴から基板上に析出させることができる。
【0037】
まず、めっき浴を用意し、そのめっき浴のpHを調整する。続いて、陽極を選択する。続いて、基板と陽極とをめっき浴に浸漬し、電気めっきによりめっき浴から基板上に上記した磁性層を析出させる。
【0038】
本実施の形態では、めっき浴に、0.05g/l以上0.3g/l以下の濃度でアリールスルフィネートを添加する。これにより、形成された電解析出層の磁気特性を制御することができ、析出された電解析出層が低保磁力および高飽和磁化を有する磁性層となることが判明した。
【0039】
めっき浴は、析出される電解析出層の中に含まれることとなる全ての元素、具体的には、例えば、0.05g/l以上0.3g/l以下の濃度のアリールスルフィネートの他に、0g/l以上70g/l以下の濃度の硫酸ニッケル六水和物と、25g/l以上120g/l以下の濃度の硫酸鉄七水和物と、10g/l以上60g/l以下の濃度の硫酸コバルト六水和物と、20g/l以上30g以下の濃度のホウ酸と、0.5g/l以上30g/l以下の濃度の塩化ナトリウムと、0.15g/l以下の濃度の界面活性剤とを含んでいる。このめっき浴のpHは、例えば2以上3以下に調整するのが好ましい。
【0040】
陽極は、例えば、ニッケルおよびコバルトよりなる群から選択して用いるのが好ましい。
【0041】
電気めっき処理の際、例えば、5mA/cm2 以上30mA/cm2 以下の順方向ピーク電流密度、10mA/cm2 以下の逆方向ピーク電流密度、5ms以上100ms以下の順方向印加時間、30ms以下の逆方向出力時間、および10℃以上25℃以下のめっき浴温度、という条件の下で非対称交流電流を印加するのが好ましい。
【0042】
析出された磁性層は、上記した磁気特性を有する。析出される磁性層の厚さは、0.3μm以上3μm以下とするのが好ましい。
【0043】
このように本実施の形態における磁性層では、上記しためっき浴を用い、上記した条件により電気めっきするようにしたので、めっき浴から基板上に、磁気特性が良好に制御された磁性層が析出される。
【0044】
この磁性層の電気めっき方法によれば、上記しためっき浴を用い、上記した条件により電気めっきすることにより、めっき浴から基板上に析出された磁性層が低保磁力および高磁化特性をもつようにすることができ、磁気特性を向上させることができる。よって、例えば、この方法により形成された磁性層を磁気ヘッドに用いた場合に高い記録密度が得られる。
【0045】
また、基板上に析出された磁性層は、2.4[T]以上の飽和磁化と75/π[A/m]よりも小さい保磁力とを有していることが好ましい。特に、基板がルテニウムからなるシード層であれば、75/π[A/m]よりも小さい保磁力をもつようにすることが容易である。
【0046】
さらに、析出された磁性層が、塩化ナトリウム溶液中における腐食電位が約−0.18Vで、−0.05V電位における陽極電流密度が約10-5A/cm2 という高い耐食性をもつようにすることも可能である。また、磁性層が250MPaよりも小さい内部応力を有するようにすることが好ましい。
【0047】
本実施の形態の磁性層の電気めっき方法によれば、形成されたそのままの状態の(熱処理しない状態の)磁性層が、上記した磁気特性をもつようにすることができる。このため、この磁性層を形成する前に既に形成されている既存の層に対する熱ダメージを回避することができる。
【0048】
なお、アリールスルフィネートを含有するめっき浴を用いて、電気めっきにより光沢ニッケルめっき膜、光沢コバルトめっき膜、あるいは光沢ニッケル・コバルトめっき膜を形成する技術が報告されている。そこでは、アリールスルフィネートが含まれることにより、粒径を揃え、緻密にすることができることが開示されている。しかしながら、アリールスルフィネートを含むめっき浴を用いて電解析出層の磁気特性を制御する技術的思想は開示されていない。
【0049】
次に、上記した電気めっき方法により形成された磁性層の適用例について説明する。ここでは、一例として磁気ヘッドを挙げる。
【0050】
図1は、磁気ヘッドの断面構成を表している。磁気ヘッドは、読出ヘッド10と、読出ヘッドの上部磁気シールド層としての磁気シールド層11と、書込ヘッド12と、それらの上方に設けられた磁気シールド層19とを備えている。この磁気ヘッドは、読出ヘッド10と書込ヘッド11とが完全一体化したものである。
【0051】
読出ヘッド10は、例えば、基板上に設けられた絶縁層の中に形成されている。磁気読出ヘッドとしては、例えば、TMJ(tunneling magnetoresistance junction)を有するものなどが挙げられる。
【0052】
磁気シールド層11は、読出ヘッド10の上方に設けられている。
【0053】
書込ヘッド12は、読出ヘッド10の上方に、磁気シールド層11および磁気シールド層19の間に挟まれるように設けられている。書込ヘッド12は、例えば、磁性層13と、磁性層13の上に絶縁層15に埋め込まれて設けられた磁気コイル14と、磁性層13との間に磁気コイル14を挟み込むように設けられた磁性層16とを有している。
【0054】
磁性層13は、磁気シールド層12上を覆うように形成されている。磁性層13は、上記した磁性層と同様の組成および磁気特性(2.4[T](24kG)以上の飽和磁化と、75/π[A/m](0.3Oe)よりも小さい保磁力)を有している。
【0055】
磁気コイル14は、そこを流れる電流によって書込用の磁界を発生させるためのものである。
【0056】
磁性層16は、その後端領域の結合部17において磁性層13と磁気的に結合すると共に、もう一方の端部(エアベアリング面側端部)において絶縁層15を介して磁性層13から磁気的に分離して設けられている。この磁性層13と磁性層16とが磁気的に分離している部分が書込ギャップ18である。磁性層16は、磁性層13と同様の組成および磁気特性を有している。
【0057】
磁性層16は、一体に形成されていてもよいし、あるいは、例えば図1に示したように磁性層16A、16Bおよび16Cのように、いくつかに分割して形成されてもよい。ただし、後者の場合には、磁性層16A、16B、16Cが互いに磁気的に結合するようにする。
【0058】
磁気シールド層19は、書込ヘッド12を介して磁気シールド層11と対向するように設けられている。
【0059】
この磁気ヘッドは、例えば、以下の手順により製造することができる。
【0060】
まず基板上に、読出ヘッド10を、絶縁層の中に埋め込まれるように形成する。そののち、読出ヘッド10の上方に磁気シールド層11を形成する。続いて、上記した磁性層の電気めっき方法により、磁性層13を形成する。その際、磁気シールド層11上に直接形成してもよいし、磁気シールド層11上にシード層を形成し、そのシード層上に形成してもよい。続いて、磁性層13の上方に、磁気コイル14を、磁性層15の中に埋め込まれるように形成する。
【0061】
続いて、上記した磁性層の電気めっき方法により、絶縁層15を介して磁気コイル14を磁性層13と共に挟み込む磁性層16を形成する。その際、磁性層13の後端に磁気的な結合部17を有するように磁性層16Cを形成する。また、磁性層13の前端(エアベアリング面側端)に書込ギャップ18が形成されるように磁性層16Cを形成する。そののち、磁性層16Aおよび16Cと磁気的に結合するように、絶縁層15上に磁性層16Bを形成する。続いて、磁性層16Bの上に磁気シールド層19を形成する。これにより図1に示した磁気ヘッドが完成する。
【0062】
この磁気ヘッドの製造方法では、上記した電気めっき方法により電解析出された磁性層13および磁性層16が、析出された状態のままで、2.4[T]以上の飽和磁化と、75/π[A/m]よりも小さい保磁力とをもつようにすることができることから、電解析出したのちに熱処理する必要がない。このため、磁気読出ヘッドに対する熱的ダメージを抑えることができる。このため、読出ヘッド10への熱の影響を抑えて安定性の高い磁気ヘッドを製造することができる。特に、磁性層13および磁性層16を、ルテニウムからなるシード層の上に形成した場合には、75/π[A/m]よりも小さい保磁力をもつようにすることが容易である。
【0063】
さらに、本実施の形態によれば、磁性層13および磁性層16の塩化ナトリウム溶液中における腐食電位が約−0.18V、−0.05V電位における陽極電流密度が約10-5A/cm2 という高い耐食性が得られる。また、磁性層13および磁性層16が250MPaよりも小さい内部応力をもつようにすることが容易であり、磁区構造が安定する。
【0064】
なお、本実施の形態において磁性層の電気めっき方法を説明したが、電気めっきに用いるめっき浴中に、約0.05g/l以上0.3g/l以下の濃度でアリールスルフィネートが含まれていれば、形成される電解析出層は、アリールスルフィネートを含まないめっき浴から電解析出された層の磁気特性とは異なる磁気特性を有することは言うまでもない。すなわち、めっき浴中に、約0.05g/l以上0.3g/l以下の濃度でアリールスルフィン酸を含有することにより、形成される電解析出層の磁気特性が制御され、向上させることができる。よって、上記した電気めっき方法によれば、電気めっき層の磁気特性を制御することができ、電解析出層を熱処理することなく低保磁力と高飽和磁化とを有する磁性層を製造することができる。
【実施例】
【0065】
次に、本発明の具体的な実施例について詳細に説明する。
(実施例1)
基板をシード層として磁性層を析出させた。その際、めっき浴としては、0.05g/l以上0.3g/l以下の濃度のアリールスルフィネートと、0g/l以上70g/l以下の濃度の硫酸ニッケル六水和物と、25g/l以上120g/l以下の濃度の硫酸鉄七水和物と、10g/l以上60g/l以下の濃度の硫酸コバルト六水和物と、20g/l以上30g以下の濃度のホウ酸と、0.5g/l以上30g/l以下の濃度の塩化ナトリウムと、0g/l以上0.15g/l以下の濃度の界面活性剤とを含み、pHを2以上3以下に調整したものを用いた。そして、5mA/cm2 以上30mA/cm2 以下の順方向ピーク電流密度、10mA/cm2 以下の逆方向ピーク電流密度、5ms以上100ms以下の順方向印加時間、30ms以下の逆方向出力時間、および10℃以上25℃以下のめっき浴温度、という条件の下で非対称交流電流を印加し、磁性層を析出させた。
【0066】
(比較例1)
めっき浴として、アリールスルフィネートを加えなかったことを除き、実施例1と同様の手順を経た。
【0067】
これらの実施例1および比較例1の磁性層について、磁化曲線(B−Hloop)を測定したところ、図2(実施例1)および図3(比較例1)の結果が得られた。この際、磁化曲線は磁性層の磁化容易軸と磁化困難軸とについて測定した。
【0068】
図2および図3に示したように、アリールスルフィネートを含むめっき浴から析出された実施例1の磁性層では、アリールスルフィネートを含有しないめっき浴(すなわち、従来のめっき浴)から析出された比較例1の磁性層よりも、軟磁性特性が著しく改良されていた。このことから、めっき浴が約0.05g/l以上0.3g/l以下の濃度でアリールスルフィネートを含有することにより、形成される電解析出層の磁気特性が制御され、向上させることができることが確認された。すなわち、上記した電気めっき方法によれば、電気めっき層の磁気特性を制御することができ、電解析出層を熱処理することなく低保磁力と高飽和磁化とを有する磁性層を製造可能であることが判った。
【0069】
(実施例2−1〜2−4)
シード層としてCoFeNi(コバルト−鉄−ニッケル;実施例2−1)、Cu(銅;実施例2−2)、NiFe(ニッケル−鉄;実施例2−3)あるいはRu(ルテニウム;実施例2−4)を用いたことを除き、実施例1と同様の手順を経た。
【0070】
これらの実施例2−1〜2−4の磁性層について、磁化曲線(B−H loop)を測定したところ、図4(実施例2−1)、図5(実施例2−2)、図6(実施例2−3)および図7(実施例2−4)の結果が得られた。この際、磁化曲線は磁性層の磁化容易軸と磁化困難軸とについて測定した。
【0071】
図4〜図7に示したように、Ruよりなるシード層に電解析出させた実施例2−4の磁性層では、CoFeNi、Cu、あるいはNiFeよりなるシード層を用いた実施例2−1〜2−3の磁性層よりも、つぶれた困難軸曲線となった。また、実施例2−4では、75/π[A/m]よりも小さい困難軸の保磁力となった。このことから、約0.05g/l以上0.3g/l以下の濃度でアリールスルフィン酸を含有するめっき浴から、コバルト−鉄−ニッケル、銅、ニッケル−鉄あるいはルテニウムよりなるシード層に電解析出させることにより、析出した磁性層は2.4[T]以上の飽和磁化と、75/π[A/m]よりも小さい保磁力とを有し、磁気特性を向上させることができることが確認された。中でも、シード層としてルテニウムを用いることにより、より高い効果が得られることが確認された。すなわち、これらの磁性層を磁気ヘッドの磁性層13および磁性層16として用いることにより、高い安定性と共に、高い記録密度が得られることが判った。
【0072】
(実施例3−1)
磁性層にニッケルを含むように形成したことを除き、実施例1−1と同様の手順を経た。
【0073】
(実施例3−2)
磁性層にニッケルを含まないように形成したことを除き、実施例1−1と同様の手順を経た。
【0074】
これら実施例3−1および3−2の磁性層について、塩化ナトリウム溶液中における陽極分極曲線を調べたところ、図8に示した結果が得られた。
【0075】
図8に示したように、ニッケルを含む実施例3−1では、ニッケルを含まない実施例3−2よりも腐食電位は高くなり、同じ腐食電位における陽極電流密度は著しく低くなった。このことから、磁性層がニッケルを含有していれば、塩化ナトリウム溶液中における腐食電位が約−0.18Vで、−0.05V電位における陽極電流密度が約10-5A/cm2 という高い耐食性が得られることが確認された。
【0076】
以上、実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態および実施において説明した態様に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、磁性層の適用例として磁気ヘッドを例示したが、その他の磁気素子(例えば、磁気センサや薄膜インダクタ等)にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の一実施の形態に係る磁性層の電気めっき方法により析出された磁性層を備えた磁気ヘッドの断面図である。
【図2】実施例1の磁化曲線を表す図である。
【図3】比較例1の磁化曲線を表す図である。
【図4】実施例2−1の磁化曲線を表す図である。
【図5】実施例2−2の磁化曲線を表す図である。
【図6】実施例2−3の磁化曲線を表す図である。
【図7】実施例2−4の磁化曲線を表す図である。
【図8】実施例3−1および3−2の陽極分極曲線を表す図である。
【符号の説明】
【0078】
10…読出ヘッド、11,19…磁気シールド層、12…書込ヘッド、13,16,16A,16B,16C…磁性層、14…磁気コイル、15…絶縁層、17…結合部、18…書込ギャップ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気めっきにより形成される電解析出層の磁気特性を制御する方法であって、
前記電解析出層の中に含まれることとなる全ての元素を溶液中に含有するめっき浴を用意するステップと、
前記めっき浴に、約0.05g/l以上0.3g/l以下の濃度でアリールスルフィネート(aryl sulfinates)を加えるステップと、
前記めっき浴を用いた電気めっき処理を行うことにより、アリールスルフィネートを含まないめっき浴から電解析出された層の磁気特性とは異なる磁気特性を有する前記電解析出層を得るステップと
を含むことを特徴とする電気めっき層の磁気特性制御方法。
【請求項2】
前記電解析出層を、飽和磁化が2.4[T;テスラ]以上であり、かつ保磁力が75/π[A/m]よりも小さいという磁気特性を有するように形成する
ことを特徴とする請求項1記載の電気めっき層の磁気特性制御方法。
【請求項3】
前記電解析出層を、ルテニウムからなるシード層の上に析出する
ことを特徴とする請求項1記載の電気めっき層の磁気特性制御方法。
【請求項4】
0g/l以上70g/l以下の濃度の硫酸ニッケル六水和物(NiSO4 ・6H2 O)と、25g/l以上120g/l以下の濃度の硫酸鉄七水和物(FeSO4 ・7H2 O)と、10g/l以上60g/l以下の濃度の硫酸コバルト六水和物(CoSO4 ・6H2 O)と、20g/l以上30g以下の濃度のホウ酸(H3 BO3 )と、0.5g/l以上30g/l以下の濃度の塩化ナトリウム(NaCl)と、0g/l以上0.15g/l以下の濃度の界面活性剤と、0.05g/l以上0.3g/l以下の濃度のアリールスルフィネートとを含むめっき浴を用意するステップと、
前記めっき浴のpHを2以上3以下に調整するステップと、
ニッケルおよびコバルトよりなる群から陽極を選択するステップと、
5mA/cm2 以上30mA/cm2 以下の順方向ピーク電流密度、10mA/cm2 以下の逆方向ピーク電流密度、5ms以上100ms以下の順方向印加時間、30ms以下の逆方向出力時間、および10℃以上25℃以下のめっき浴温度、という条件の下で非対称交流電流を印加することにより、前記めっき浴から基板上に、低保磁力と高飽和磁化とを有する磁性層を析出させるステップと
を含むことを特徴とする磁性層の電気めっき方法。
【請求項5】
前記磁性層を、2.4[T;テスラ]以上の飽和磁化と75/π[A/m]よりも小さい保磁力とを有するように形成する
ことを特徴とする請求項4記載の磁性層の電気めっき方法。
【請求項6】
前記基板がルテニウムよりなるシード層であるようにする
ことを特徴とする請求項4記載の磁性層の電気めっき方法。
【請求項7】
前記磁性層を、0.3μm以上3μm以下の厚さに析出させる
ことを特徴とする請求項4記載の磁性層の電気めっき方法。
【請求項8】
前記磁性層を、塩化ナトリウム溶液中における腐食電位が−0.18Vであり、−0.05V電位における陽極電流密度が10−5A/cmである、という高い耐食性を有するように形成する
ことを特徴とする請求項4記載の磁性層の電気めっき方法。
【請求項9】
前記磁性層を、250MPaよりも小さい内部応力を有するように形成する
ことを特徴とする請求項4記載の磁性層の電気めっき方法。
【請求項10】
電気めっきにより形成される磁性層の製造方法であって、
前記磁性層の中に含まれることとなる全ての元素を溶液中に含有するめっき浴を用意するステップと、
前記めっき浴に、約0.05g/l以上0.3g/l以下の濃度でアリールスルフィネートを加えるステップと、
前記めっき浴を用いた電気めっき処理を行うことにより、電解析出したのちに熱処理することなく、低保磁力と高飽和磁化とを有する前記磁性層を得るステップと
を含むことを特徴とする磁性層の製造方法。
【請求項11】
TMJ(トンネル磁気抵抗効果接合)を有する磁気読出ヘッドと磁気書込ヘッドとが完全一体化した磁気ヘッドの製造方法であって、
上部磁気シールド層を含むように前記磁気読出ヘッドを形成する工程と、
前記上部磁気シールド層の上方に、成膜したままの状態で2.4[T;テスラ]以上の飽和磁化と75/π[A/m]よりも小さい保磁力とを有する第1の磁性層を電気めっきにより形成する工程と、
前記第1の磁性層の上方に磁気コイルを形成する工程と、
前記第1の磁性層の上方に、成膜したままの状態で2.4[T;テスラ]以上の飽和磁化と75/π[A/m]よりも小さい保磁力とを有する第2の磁性層を電気めっきにより形成することにより、前記第1および第2の磁性層が、前記磁気コイルを挟み込むと共に、一端側において磁気的に互いに結合する一方、他端側において磁気的に互いに分離されるようにする工程と、
前記第2の磁性層の上方に別の磁気シールド層を形成する工程と
を含み、前記TMJを有する磁気読出ヘッドを熱処理にさらすことなく前記磁気書込ヘッドの形成を完了する
ことを特徴とする磁気ヘッドの製造方法。
【請求項12】
前記第1の磁性層および前記第2の磁性層を形成する工程は、
0g/l以上70g/l以下の濃度の硫酸ニッケル六水和物(NiSO4 ・6H2 O)と、25g/l以上120g/l以下の濃度の硫酸鉄七水和物(FeSO4 ・7H2 O)と、10g/l以上60g/l以下の濃度の硫酸コバルト六水和物(CoSO4 ・6H2 O)と、20g/l以上30g以下の濃度のホウ酸(H3 BO3 )と、0.5g/l以上30g/l以下の濃度の塩化ナトリウム(NaCl)と、0g/l以上0.15g/l以下の濃度の界面活性剤と、0.05g/l以上0.3g/l以下の濃度のアリールスルフィネートとを含むめっき浴を用意するステップと、
めっき浴のpHを2以上3以下に調整するステップと、
ニッケルおよびコバルトよりなる群から選択された陽極を用意するステップと、
5mA/cm2 以上30mA/cm2 以下の順方向ピーク電流密度、10mA/cm2以下の逆方向ピーク電流密度、5ms以上100ms以下の順方向印加時間、30ms以下の逆方向出力時間、および10℃以上25℃以下のめっき浴温度、という条件の下で非対称交流電流を印加するステップと
を含むことを特徴とする請求項11記載の磁気ヘッドの製造方法。
【請求項13】
前記第1の磁性層および前記第2の磁性層を、ルテニウムよりなるシード層の上に形成する
ことを特徴とする請求項11記載の磁気ヘッドの製造方法。
【請求項14】
前記第1の磁性層および前記第2の磁性層を、0.3μm以上3μm以下の厚さに形成する
ことを特徴とする請求項11記載の磁気ヘッドの製造方法。
【請求項15】
前記第1の磁性層および前記第2の磁性層を、塩化ナトリウム溶液中における腐食電位が−0.18Vであり、かつ−0.05V電位における陽極電流密度が10-5A/cm2 である、という高い耐食性を有するように形成する
ことを特徴とする請求項11記載の磁気ヘッドの製造方法。
【請求項16】
前記第1の磁性層および前記第2の磁性層を、250MPaよりも小さい内部応力を有するように形成する
ことを特徴とする請求項11記載の磁気ヘッドの製造方法。
【請求項17】
磁性層の電解析出に用いられるめっき浴であって、
0g/l以上70g/l以下の濃度の硫酸ニッケル六水和物(NiSO4 ・6H2 O)と、
25g/l以上120g/l以下の濃度の硫酸鉄七水和物(FeSO4 ・7H2 O)と、
10g/l以上60g/l以下の濃度の硫酸コバルト六水和物(CoSO4 ・6H2 O)と、
20g/l以上30g以下の濃度のホウ酸(H3 BO3 )と、
0.5g/l以上30g/l以下の濃度の塩化ナトリウム(NaCl)と、
0g/l以上0.15g/l以下の濃度の界面活性剤と、
0.05g/l以上0.3g/l以下の濃度のアリールスルフィネートと
を含有し、pHが2以上3以下である溶液と、
ニッケルおよびコバルトよりなる群から選択される陽極と
を含む
ことを特徴とするめっき浴。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−302998(P2007−302998A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−124546(P2007−124546)
【出願日】平成19年5月9日(2007.5.9)
【出願人】(500475649)ヘッドウェイテクノロジーズ インコーポレイテッド (251)
【Fターム(参考)】