説明

電源電圧制御システムおよび電源電圧制御方法

【課題】半導体集積回路のソフトウェア処理の負荷に応じた最適な電源電圧制御を行う。
【解決手段】電源電圧制御システムは、信号処理LSI2に電源電圧を供給するデバイス駆動用電源回路12と、信号処理LSI2の温度に応じた電源電圧の情報を予め記憶する電圧制御情報メモリ22と、信号処理LSI2の温度を検出する温度検出部3と、信号処理LSI2の使用量の情報を出力する使用量出力部25と、温度検出部3で検出された温度に応じた電源電圧の情報を電圧制御情報メモリ22から受け取り、この電源電圧を使用量に応じて重み付けし、重み付け後の電源電圧を示す電圧制御信号を出力する重み付け回路13と、デバイス駆動用電源回路12から信号処理LSI2に供給される電源電圧を電圧制御信号に応じて制御する制御回路14とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路の電源電圧を制御する電源電圧制御システムおよび電源電圧制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話網等で使用される無線基地局装置では、制御や信号処理のためにDSP(Digital Signal Processor)、LSI(Large Scale Integrated Circuit)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの大規模集積回路が数多く使用されている。これらの大規模集積回路においては、半導体プロセスの微細化によりロットごとに漏れ電流のばらつきや同一駆動電圧による消費電力のばらつきが拡大し、電源へのインパクトが大きくなる傾向にある。
【0003】
電源回路の設計時にはデバイスの消費電力を積み上げて電源の能力を決定するが、デバイスのばらつきの拡大によって積み上げ値のバラつきも拡大し、最適な電源構成を設計する際の大きな障害となっていた。したがって、デバイスによる消費電力のばらつきを小さくする必要があった。
【0004】
関連する電源電圧制御システムの構成を図11に示す。この電源電圧制御システムは、電源部110と、信号処理LSI120と、温度閾値変換素子140とから構成されている。
電源部110は、バス電源111と、デバイス駆動用電源回路112と、制御回路114とから構成される。電源部110は、信号処理LSI120への電源供給機能と信号処理LSI120からの制御信号による出力電圧可変機能とを持つ。
【0005】
信号処理LSI120は、DSPやLSI、ASICなどの低電圧動作のデバイスである。この信号処理LSI120は、信号処理部121と、電圧制御情報メモリ122と、温度検出素子123とを有する。
信号処理部121は、LSIやDSPのコア部分であり、主に高速演算や信号処理を行う部位である。
【0006】
電圧制御情報メモリ122には、信号処理LSI120の製造出荷段階において、高温時の電源電圧と低温時の電源電圧の2種類の電圧の情報が予め保存されている。
温度検出素子123は、信号処理LSI20の温度を検出する素子である。温度閾値変換素子140は、温度検出素子123の温度変化特性を信号処理LSI120の温度の情報に変換する機能を持つ。また、温度閾値変換素子140は、信号処理LSI120の温度を所定の温度閾値と比較した結果を温度情報として電圧制御情報メモリ122に出力する機能を持つ。
【0007】
電圧制御情報メモリ122は、温度閾値変換素子140からの信号が高温を示すときには高温時の電源電圧を示す電圧情報を制御回路114に出力し、温度閾値変換素子140からの信号が低温を示すときには低温時の電源電圧を示す電圧情報を制御回路114に出力する。
【0008】
制御回路114は、電圧制御情報メモリ122から出力された電圧情報に応じてデバイス駆動用電源回路112を制御する。これにより、デバイス駆動用電源回路112から電圧情報に応じた電源電圧が信号処理LSI120の信号処理部121に供給される。以上のような電源電圧制御システムに相当するものとして、例えば特許文献1に開示された半導体装置がある。
【0009】
【特許文献1】特開平6−140575号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に開示された装置では、半導体集積回路の温度を検出し、この検出した温度に応じて高温時の電源電圧と低温時の電源電圧のどちらかを半導体集積回路に供給することにより、半導体集積回路の動作パフォーマンスを維持するという手法であった。
【0011】
しかしながら、特許文献1に開示された装置では、半導体集積回路に供給する電源電圧の種類が2種類しかなく、ソフトウェア処理の負荷に応じて電源電圧を動的に制御する手段がないため、電源電圧の最適化が不十分であり、半導体集積回路の消費電力を最適化できないという問題点があった。
【0012】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、半導体集積回路のソフトウェア処理の負荷に応じた最適な電源電圧制御を行うことができる電源電圧制御システムおよび電源電圧制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の電源電圧制御システムは、半導体集積回路に電源電圧を供給する駆動用電源回路と、前記半導体集積回路の温度に応じた電源電圧の情報を予め記憶する電圧制御情報メモリと、前記半導体集積回路の温度を検出する温度検出部と、前記半導体集積回路の使用量の情報を出力する使用量出力部と、前記温度検出部で検出された温度に応じた電源電圧の情報を前記電圧制御情報メモリから受け取り、この電源電圧を前記使用量に応じて重み付けし、重み付け後の電源電圧を示す電圧制御信号を出力する重み付け回路と、前記駆動用電源回路から前記半導体集積回路に供給される電源電圧を前記電圧制御信号に応じて制御する制御回路とを備えるものである。
また、本発明の電源電圧制御システムの1構成例において、前記重み付け回路は、前記電圧制御信号が表す電源電圧が前記使用量の増加と逆の関係になるように重み付けを行うものである。
【0014】
また、本発明の電源電圧制御システムの1構成例において、前記使用量は、前記半導体集積回路を使用するユーザの数である。
また、本発明の電源電圧制御システムの1構成例において、前記温度検出部は、前記半導体集積回路の温度を検出する温度検出素子と、この温度検出素子で検出された温度と所定の温度閾値との比較結果を出力する温度閾値変換素子とから構成され、前記電圧制御情報メモリは、前記半導体集積回路が前記温度閾値以上の高温時の電源電圧の情報と前記半導体集積回路が前記温度閾値未満の低温時の電源電圧の情報とを予め記憶するものである。
また、本発明の電源電圧制御システムの1構成例は、さらに、前記電圧制御情報メモリから前記高温時の電源電圧の情報と前記低温時の電源電圧の情報とを読み出して前記重み付け回路に記憶させる読み出し手段を備え、前記重み付け回路は、前記重み付け後の電源電圧が前記高温時の電源電圧と前記低温時の電源電圧の範囲内に収まるように制限するものである。
【0015】
また、本発明の電源電圧制御方法は、半導体集積回路の温度を検出する検出手順と、前記半導体集積回路の使用量の情報を出力する使用量出力手順と、前記検出手順で検出された温度に応じた電源電圧の情報を電圧制御情報メモリから受け取り、この電源電圧を前記使用量に応じて重み付けし、重み付け後の電源電圧を示す電圧制御信号を出力する重み付け手順と、駆動用電源回路から前記半導体集積回路に供給される電源電圧を前記電圧制御信号に応じて制御する制御手順とを備えるものである。
また、本発明の電源電圧制御方法の1構成例において、前記重み付け手順は、前記電圧制御信号が表す電源電圧が前記使用量の増加と逆の関係になるように重み付けを行うものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、温度検出部で検出された半導体集積回路の温度に応じた電源電圧の情報を電圧制御情報メモリから受け取り、この電源電圧を半導体集積回路の使用量に応じて重み付けするようにしたので、半導体集積回路の負荷に応じて電源電圧を動的に制御することができ、半導体集積回路に供給する電源電圧を最適化して、半導体集積回路の消費電力を最適化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
[第1実施例]
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。図1は本発明の第1実施例に係る電源電圧制御システムの構成を示すブロック図である。
本実施例は、DSPやLSIなどの半導体集積回路の駆動用電源電圧の制御において、温度検出による大まかな電源電圧制御に、ソフトウェアの処理量による電力消費傾向に応じた重み付けを付加することで、消費電力を削減して最適化を可能にしたことを特徴としている。
【0018】
本実施例の電源電圧制御システムは、電源部1と、信号処理LSI2と、温度検出部3とから構成されている。
電源部1は、バス電源11と、デバイス駆動用電源回路12と、重み付け回路13と、制御回路14とから構成される。バス電源11は、絶縁型DC/DCコンバータなどで構成される。
【0019】
デバイス駆動用電源回路12は、非絶縁型DC/DCコンバータなどで構成され、制御回路14からの制御により出力電圧を可変できる機能を持つ。
重み付け回路13は、温度検出部3で検出された温度に応じた電源電圧の情報を信号処理LSI2の電圧制御情報メモリ22から受け取り、この電源電圧を信号処理LSI2の使用量に応じて重み付けする機能を有する。
【0020】
半導体集積回路である信号処理LSI2は、DSPやLSI、ASICなどの低電圧動作のデバイスである。この信号処理LSI2は、信号処理部21と、電圧制御情報メモリ22と、使用量出力部25とを有する。信号処理部21は、LSIやDSPのコア部分である。
【0021】
次に、電源電圧制御システムの動作を図2を用いて説明する。図2は電源電圧制御システムの動作を示すフローチャートである。
温度検出部3は、信号処理LSI2の温度情報を電圧制御情報メモリ22に出力する(図2ステップS1)。
【0022】
電圧情報保存メモリ22は、信号処理LSI2の温度に応じた電源電圧の情報を予め記憶している。電圧情報保存メモリ22は、温度検出部3から信号処理LSI2の温度情報が入力されると、この温度情報に応じた電圧情報を重み付け回路13に出力する(ステップS2)。
【0023】
一方、信号処理LSI2の使用量出力部25は、信号処理LSI2の使用量の情報を出力する(ステップS3)。使用量の情報としては、信号処理LSI2を使用しているユーザの数を示す情報がある。信号処理LSI2を使用しているユーザの数は、ソフトウェア側で把握しているため、容易にユーザ数の情報を出力することが可能である。
【0024】
重み付け回路13は、ステップS2で出力された電圧情報を、ステップS3で出力された使用量の情報に応じて重み付けし、重み付けした電圧制御信号を制御回路14に出力する(ステップS110)。制御回路14は、重み付け回路13から出力された電圧制御信号をデバイス駆動用電源回路12にて電圧制御ができる形式に変換し、デバイス駆動用電源回路12は、電圧制御信号に応じた電源電圧を信号処理LSI2の信号処理部21に出力する。
【0025】
デバイス駆動用電源回路12の出力電圧の制御方法として、デバイス駆動用電源回路12の外付け抵抗(不図示)の抵抗値を可変する方法を用いる場合、制御回路14は、アナログスイッチなどを用いて電圧制御信号を抵抗値に変換する。また、デバイス駆動用電源回路12の出力電圧の制御方法として、基準電圧を可変する方法を用いる場合、制御回路14は、D/A変換回路(不図示)を用いて電圧制御信号を直流電圧に変換する。
【0026】
重み付け回路13は、電圧制御信号が表す電源電圧が使用量の増加と逆の関係になるように重み付けを行い、信号処理LSI2の消費電力を最適化する。すなわち、信号処理LSI2の使用量が増加するほど、重み付け後の電源電圧は低くなる。
こうして、信号処理LSI2の動作が終了するまで(ステップS5においてYES)、ステップS1〜S4の処理が繰り返される。
【0027】
以上のように、本実施例では、温度検出部3で検出された信号処理LSI2の温度に応じた電源電圧の情報を電圧制御情報メモリ22から受け取り、この電源電圧を信号処理LSI2の使用量に応じて重み付けするようにしたので、信号処理LSI2の負荷に応じて電源電圧を動的に制御することができ、信号処理LSI2に供給する電源電圧を最適化して、信号処理LSI2の消費電力を最適化することができる。また、本実施例では、信号処理LSI2に手を加えることなく、消費電力の削減が可能である。
【0028】
[第2実施例]
次に、本発明の第2の実施例について説明する。図3は本発明の第2実施例に係る電源電圧制御システムの構成を示すブロック図である。本実施例は、第1実施例をより具体的に説明するものであり、第1実施例と同様の構成には同一の符号を付してある。
【0029】
本実施例の電源電圧制御システムは、電源部10と、信号処理LSI20と、温度閾値変換素子30とにより構成されている。
電源部10は、バス電源11と、デバイス駆動用電源回路12と、重み付け回路13と、制御回路14とから構成される。電源部10は、信号処理LSI20への電源供給機能と信号処理LSI20からの制御信号による出力電圧可変機能とを持つ。
【0030】
バス電源11は、絶縁型DC/DCコンバータなどで構成される。バス電源11は、−48Vや+12Vなどの外部電源電圧から+5Vなどの扱いやすい電圧に変換する機能を持ち、デバイス駆動用電源回路12へ電力を供給する。
【0031】
デバイス駆動用電源回路12は、非絶縁型DC/DCコンバータなどで構成され、制御回路14からの制御により出力電圧を可変できる機能を持つ。出力電圧の制御方法としては外付け抵抗の抵抗値を可変する方法や、基準電圧を可変して供給する方法がある。
重み付け回路13は、信号処理LSI20からの情報を受け取る機能と、電源電圧情報を保存するメモリを持つ。
【0032】
信号処理LSI20は、DSPやLSI、ASICなどの低電圧動作のデバイスである。この信号処理LSI20は、信号処理部21と、電圧制御情報メモリ22と、温度検出素子23と、汎用I/Oポート24などから構成される。
【0033】
信号処理部21は、LSIやDSPのコア部分であり、主に高速演算や信号処理を行う部位であり、低電圧で動作する。この信号処理部21は、電源部10のデバイス駆動用電源回路12から電力供給を受けて動作する。
【0034】
電圧制御情報メモリ22は、温度閾値変換素子30からの信号により、記録されている電圧情報を出力する機能を持つ。
温度検出素子23は、信号処理LSI20の温度を検出する素子で、例えばダイオード等の、温度により特性が変化する素子で構成される。
【0035】
汎用I/Oポート24は、信号処理部21または外部のアドレスデータバスから制御可能なポートである。汎用I/Oポート24のうち1ポートは電圧制御情報メモリ22に接続され、電圧制御情報メモリ22の内容を読み出すときに使用される。汎用I/Oポート24のうち4ポートは重み付け回路13に接続されている。汎用I/Oポート24は、第1実施例の使用量出力部25に相当するものである。
【0036】
温度閾値変換素子30は、温度検出素子23の温度変化特性を信号処理LSI20の温度の情報に変換する機能を持つ。また、温度閾値変換素子30は、信号処理LSI20の温度を所定の温度閾値と比較した結果を温度情報として電圧制御情報メモリ22に出力する機能を持つ。温度検出素子23と温度閾値変換素子30とは、第1実施例の温度検出部3に相当するものである。
【0037】
次に、電源電圧制御システムの動作について図4と図5を使用して説明する。図4は重み付け回路13の構成例を示すブロック図、図5は電源電圧制御システムの動作を示すフローチャートである。
【0038】
電圧制御情報メモリ22には、信号処理LSI20の製造出荷段階において、高温時の電源電圧V1(ある一定電圧としてV1と記す)と低温時の電源電圧V2(ある一定電圧としてV2と記す)の2種類の電圧の情報が予め保存されている。電源電圧V1,V2は、表1に記されている信号処理LSI20の動作電圧V01〜V16の範囲内で決定される。電圧V01〜V16は、V16側に近づくほど高くなる。電源電圧V1,V2は、信号処理LSI20のパフォーマンス維持を考慮して決められており、動作電圧V01〜V16の範囲外の電圧には設定しない。ここでは、電源電圧V1がV04、電源電圧V2がV13に定められているとする。
【0039】
【表1】

【0040】
電圧制御情報メモリ22は、温度閾値変換素子30からの信号が高温を示すときには電源電圧V1を示す電圧情報を重み付け回路13に出力し、温度閾値変換素子30からの信号が低温を示すときには電源電圧V2を示す電圧情報を重み付け回路13に出力する。重み付け回路13へ出力する電圧情報は、4ビットのデジタル信号である。この4ビットの電圧情報と電圧との関係は表1に示すように関連付けられている。
【0041】
図4に示すように、重み付け回路13は、メモリ130,131と、D/A変換回路132,133,134と、オペアンプ135,136と、可変抵抗137とを備える。メモリ130,131は、フリップフロップやPLD(Programmable Logic Device)で実現可能である。D/A変換回路132,133,134は、ラダー抵抗とアナログスイッチにより容易に構築できる。
【0042】
信号処理LSI20内部では電圧制御情報メモリ22から直接ビット情報を取り出せないため、汎用I/Oポート24を制御して、保存されている電圧情報を電圧制御情報メモリ22から取り出し、重み付け回路13のメモリに格納する。
【0043】
次に、本実施例の電源電圧制御システムの動作を図5を用いて説明する。まず、外部からアドレスデータバスを通じて信号処理LSI20のデバイスリセットを行う(図5ステップS101)。
【0044】
続いて、アドレスデータバスから汎用I/Oポート24を介して重み付け回路13に指令を出力し、重み付け回路13から標準値(Typ値)の電圧制御信号を出力させる(ステップS102)。制御回路14は、重み付け回路13から出力された電圧制御信号をデバイス駆動用電源回路12にて電圧制御ができる形式に変換して出力する。これにより、デバイス駆動用電源回路12は、Typ値の電源電圧を信号処理LSI20の信号処理部21に出力する。ここでは、Typ値がV1<Typ<V2を満たし、表1のV09に設定されているものとする。
【0045】
次に、デバイスリセットされた信号処理LSI20の信号処理部21は、電圧制御情報メモリ22に接続されている汎用I/Oポート24の出力IO4を「H」レベルに設定する(ステップS103)。電圧情報保存メモリ22は、汎用I/Oポート24から「H」レベルの信号が入力されると、電源電圧V1を示す4ビットの電圧情報を重み付け回路13に出力する。この電圧情報は、重み付け回路13のメモリ130に保存される(ステップS104)。
【0046】
次に、信号処理LSI20の信号処理部21は、電圧制御情報メモリ22に接続されている汎用I/Oポート24の出力IO4を「L」レベルに設定する(ステップS105)。電圧情報保存メモリ22は、汎用I/Oポート24から「L」レベルの信号が入力されると、電源電圧V2を示す4ビットの電圧情報を重み付け回路13に出力する。この電圧情報は、重み付け回路13のメモリ131に保存される(ステップS106)。
こうして、電圧情報保存メモリ22の内容を読み出すことができ、重み付け回路13からV1,V2の値が出力可能となる。
【0047】
次に、温度閾値変換素子30は、温度検出素子23の出力を基に信号処理LSI20の温度情報を電圧制御情報メモリ22に出力する(ステップS107)。このとき、温度閾値変換素子30は、信号処理LSI20の温度が所定の温度閾値T1より低い場合は、「L」レベルの温度情報を電圧制御情報メモリ22に出力し、信号処理LSI20の温度が温度閾値T1以上の場合は、「H」レベルの温度情報を電圧制御情報メモリ22に出力する。
【0048】
電圧情報保存メモリ22は、温度閾値変換素子30から「L」レベルの温度情報が入力されると、電源電圧V2を示す4ビットの電圧情報を重み付け回路13に出力し、温度閾値変換素子30から「H」レベルの温度情報が入力されると、電源電圧V1を示す4ビットの電圧情報を重み付け回路13に出力する(ステップS108)。
【0049】
一方、信号処理LSI20の信号処理部21は、信号処理LSI20を使用しているユーザの数を示す情報を、汎用I/Oポート24を通じて重み付け回路13に出力する(ステップS109)。信号処理LSI20を使用しているユーザの数は、ソフトウェア側で把握しているため、容易にユーザ数の情報を出力することが可能である。
【0050】
重み付け回路13は、ステップS108で出力された電圧情報を、ステップS109で出力されたユーザ数の情報に応じて重み付けし、重み付けした電圧制御信号を制御回路14に出力する(ステップS110)。制御回路14は、重み付け回路13から出力された電圧制御信号をデバイス駆動用電源回路12にて電圧制御ができる形式に変換し、デバイス駆動用電源回路12は、電圧制御信号に応じた電源電圧を信号処理LSI20の信号処理部21に出力する。
【0051】
デバイス駆動用電源回路12の出力電圧の制御方法として、デバイス駆動用電源回路12の外付け抵抗(不図示)の抵抗値を可変する方法を用いる場合、制御回路14は、アナログスイッチなどを用いて電圧制御信号を抵抗値に変換する。また、デバイス駆動用電源回路12の出力電圧の制御方法として、基準電圧を可変する方法を用いる場合、制御回路14は、D/A変換回路(不図示)を用いて電圧制御信号を直流電圧に変換して基準電圧として出力する。
【0052】
ここで、携帯電話網等で使用される無線基地局装置では、図6に示すようにユーザ数の増加によって信号処理LSI20等の大規模集積回路の消費電力が増加する傾向にあることが判明している。図6では、ユーザ数がU1,U2,U3,U4に増加するに従って、消費電力がP1,P2,P3,P4へと増加する。
【0053】
そこで、本実施例の重み付け回路13は、電圧制御信号が表す電源電圧がユーザ数の増加と逆の関係になるように重み付けを行い、信号処理LSI20の消費電力を最適化する。すなわち、ユーザ数が増加するほど、重み付け後の電源電圧は低くなる。このような重み付けは、ユーザ数の情報をD/A変換回路134を通じて可変抵抗137に入力し、可変抵抗137の値をユーザ数に応じて制御することで実現できる。
【0054】
ただし、重み付け回路13は、重み付け後の電源電圧がV1とV2の範囲内に収まるように制限をかける。したがって、ステップS108で電圧情報保存メモリ22から出力された電圧情報が電源電圧V2を示している場合には、重み付け後の電源電圧がV1以上V2未満の値になることがあるが、電圧情報保存メモリ22から出力された電圧情報が電源電圧V1を示している場合には、重み付け後の電源電圧がV1より低くなることはない。このような電源電圧の制限は、ステップS104,S106でメモリ130,131に保存された電源電圧V1,V2の電圧情報を基に行われる。
【0055】
こうして、信号処理LSI20の動作が終了するまで(ステップS111においてYES)、ステップS107〜S110の処理が繰り返される。
図7は信号処理LSI20の温度と本実施例の電源電圧制御システムにより信号処理LSI20に供給される電源電圧と信号処理LSI20の消費電力との関係を示す図である。図7において、Vは電源電圧、Pは消費電力である。なお、図7では、信号処理LSI20を使用しているユーザを1人としているが、ユーザが2人以上の場合には、前述の重み付けにより、低温時の電源電圧がV2より低くなることは言うまでもない。
【0056】
以上のように、本実施例では、温度閾値変換素子30で検出された信号処理LSI20の温度に応じた電源電圧の情報を電圧制御情報メモリ22から受け取り、この電源電圧を信号処理LSI20を使用するユーザ数の情報に応じて重み付けするようにしたので、信号処理LSI20の負荷に応じて電源電圧を動的に制御することができ、信号処理LSI20に供給する電源電圧を最適化して、信号処理LSI20の消費電力を最適化することができる。また、本実施例では、信号処理LSI20に手を加えることなく、消費電力の削減が可能である。
【0057】
また、本実施例では、電圧制御情報メモリ22の内容を外部の重み付け回路13に予め読み出すため、ソフトウェアにより電圧V1とV2の範囲内で電圧制御が可能であり、細かい電圧制御を行うことが可能である。電圧制御情報メモリ22に書き込まれている2種類の電圧情報はそのまま使用することができる。
【0058】
[第3実施例]
次に、本発明の第3実施例について説明する。図8は本発明の第3実施例に係る重み付け回路13の構成例を示すブロック図である。本実施例は、重み付け回路13の別の構成例を示すものである。
本実施例の重み付け回路13は、メモリ1300,1301と、重み付け制御部1302とを有する。
【0059】
メモリ1300は、図5のステップS104で電圧情報保存メモリ22から出力される電源電圧V1を示す電圧情報を記憶する。
メモリ1301は、図5のステップS106で電圧情報保存メモリ22から出力される電源電圧V2を示す電圧情報を記憶する。
【0060】
重み付け制御部1302は、図5のステップS108で出力された電圧情報を、ステップS109で出力された使用量(ユーザ数)の情報に応じて重み付けし、重み付けした電圧制御信号を制御回路14に出力する(図5ステップS110)。このステップS110の動作は、第2実施例で説明したとおりである。このとき、重み付け制御部1302は、重み付け後の電源電圧がメモリ1300に記憶された電圧V1とメモリ1301に記憶された電圧V2の範囲内に収まるように制限する。
【0061】
以上により、第1実施例、第2実施例で説明した重み付け回路13を実現することができる。
重み付け制御部1302は、例えばCPU、記憶装置及び外部とのインタフェースを備えたマイクロコンピュータと、これらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。重み付け制御部1302のCPUは、記憶装置に格納されたプログラムに従って第1実施例、第2実施例で説明した処理を実行する。
【0062】
[第4実施例]
次に、本発明の第4実施例について説明する。図9は本発明の第4実施例に係る電源電圧制御システムの構成を示すブロック図であり、図3と同一の構成には同一の符号を付してある。
本実施例の電源電圧制御システムは、電源部10aと、信号処理LSI20aと、温度閾値変換素子30aとにより構成されている。本実施例の電源電圧制御システムの構成は基本的には第2実施例と同様であるが、温度閾値変換素子30aからの出力を重み付け回路13aに直接入力するようにしている。
【0063】
図10は本実施例の電源電圧制御システムの動作を示すフローチャートである。図10のステップS201,S202の処理は、それぞれ図5のステップS101,S102と同様であるので、説明は省略する。
【0064】
信号処理LSI20aの信号処理部21は、電圧制御情報メモリ22aに接続されている汎用I/Oポート24の出力IO4を「H」レベルに設定する(ステップS203)。電圧情報保存メモリ22aは、汎用I/Oポート24から「H」レベルの信号が入力されると、電源電圧V1を示す電圧情報を重み付け回路13aに出力する。この電圧情報は、重み付け回路13aのメモリに保存される(ステップS204)。
【0065】
次に、信号処理LSI20aの信号処理部21は、汎用I/Oポート24の出力IO4を「L」レベルに設定する(ステップS205)。電圧情報保存メモリ22aは、汎用I/Oポート24から「L」レベルの信号が入力されると、電源電圧V2を示す電圧情報を重み付け回路13aに出力する。この電圧情報は、重み付け回路13aのメモリに保存される(ステップS206)。
【0066】
次に、温度閾値変換素子30aは、温度検出素子23の出力を基に信号処理LSI20aの温度情報を重み付け回路13aに出力する(ステップS207)。第2実施例と同様に、温度閾値変換素子30aは、信号処理LSI20aの温度が温度閾値T1より低い場合は、「L」レベルの温度情報を出力し、信号処理LSI20aの温度が温度閾値T1以上の場合は、「H」レベルの温度情報を出力する。重み付け回路13aは、温度閾値変換素子30aから「L」レベルの温度情報が入力されると、電源電圧V2を示す4ビットの電圧情報をステップS206で保存したメモリから取得し、温度閾値変換素子30aから「H」レベルの温度情報が入力されると、電源電圧V1を示す4ビットの電圧情報をステップS204で保存したメモリから取得する。
【0067】
一方、信号処理LSI20aの信号処理部21は、信号処理LSI20aを使用しているユーザの数を示す情報を、汎用I/Oポート24を通じて重み付け回路13aに出力する(ステップS208)。
重み付け回路13aは、ステップS207で取得した電圧情報を、ステップS208で出力されたユーザ数の情報に応じて重み付けし、重み付けした電圧制御信号を制御回路14に出力する(ステップS209)。このときの重み付けの方法は、第2実施例で説明したとおりである。
【0068】
制御回路14とデバイス駆動用電源回路12の動作は、第2実施例と同じである。こうして、信号処理LSI20aの動作が終了するまで(ステップS210においてYES)、ステップS207〜S209の処理が繰り返される。
【0069】
本実施例によれば、第2実施例と同様の効果を得ることができる。また、本実施例では、温度閾値変換素子30aからの出力を重み付け回路13aに直接入力することで、電圧制御についてさらに汎用性を高めることができる。
【0070】
なお、本実施例の重み付け回路13aは、図8に示した重み付け回路13の構成において、温度閾値変換素子30aからの温度情報を重み付け制御部1302で受けるようにすればよい。重み付け制御部1302は、温度閾値変換素子30aから「L」レベルの温度情報が入力されると、電源電圧V2を示す電圧情報をメモリ1301から取得し、温度閾値変換素子30aから「H」レベルの温度情報が入力されると、電源電圧V1を示す電圧情報をメモリ1300から取得する。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、半導体集積回路の電源電圧を制御する技術に適用することができ、例えばLSIやDSPを使用してソフトウェアの処理がパターン化できる装置に広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の第1実施例に係る電源電圧制御システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1実施例に係る電源電圧制御システムの動作を示すフローチャートである。
【図3】本発明の第2実施例に係る電源電圧制御システムの構成を示すブロック図である。
【図4】図3の電源電圧制御システムの電源部における重み付け回路の構成例を示すブロック図である。
【図5】本発明の第2実施例に係る電源電圧制御システムの動作を示すフローチャートである。
【図6】本発明の第2実施例においてユーザ数と大規模集積回路の消費電力との関係を示す図である。
【図7】本発明の第2実施例において信号処理LSIの温度と図3の電源電圧制御システムにより信号処理LSIに供給される電源電圧と信号処理LSIの消費電力との関係を示す図である。
【図8】本発明の第3実施例に係る電源電圧制御システムの重み付け回路の構成例を示すブロック図である。
【図9】本発明の第4実施例に係る電源電圧制御システムの構成を示すブロック図である。
【図10】本発明の第4実施例に係る電源電圧制御システムの動作を示すフローチャートである。
【図11】関連する電源電圧制御システムの構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0073】
1,10,10a…電源部、2,20,20a…信号処理LSI、3…温度検出部、30,30a…温度閾値変換素子、11…バス電源、12…デバイス駆動用電源回路、13,13a…重み付け回路、14…制御回路、21…信号処理部、22,22a…電圧制御情報メモリ、23…温度検出素子、24…汎用I/Oポート、25…使用量出力部、130,131,1300,1301…メモリ、132,133,134…D/A変換回路、135,136…オペアンプ、137…可変抵抗、1302…重み付け制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体集積回路に電源電圧を供給する駆動用電源回路と、
前記半導体集積回路の温度に応じた電源電圧の情報を予め記憶する電圧制御情報メモリと、
前記半導体集積回路の温度を検出する温度検出部と、
前記半導体集積回路の使用量の情報を出力する使用量出力部と、
前記温度検出部で検出された温度に応じた電源電圧の情報を前記電圧制御情報メモリから受け取り、この電源電圧を前記使用量に応じて重み付けし、重み付け後の電源電圧を示す電圧制御信号を出力する重み付け回路と、
前記駆動用電源回路から前記半導体集積回路に供給される電源電圧を前記電圧制御信号に応じて制御する制御回路とを備えることを特徴とする電源電圧制御システム。
【請求項2】
請求項1記載の電源電圧制御システムにおいて、
前記重み付け回路は、前記電圧制御信号が表す電源電圧が前記使用量の増加と逆の関係になるように重み付けを行うことを特徴とする電源電圧制御システム。
【請求項3】
請求項2記載の電源電圧制御システムにおいて、
前記使用量は、前記半導体集積回路を使用するユーザの数であることを特徴とする電源電圧制御システム。
【請求項4】
請求項3記載の電源電圧制御システムにおいて、
前記温度検出部は、前記半導体集積回路の温度を検出する温度検出素子と、この温度検出素子で検出された温度と所定の温度閾値との比較結果を出力する温度閾値変換素子とから構成され、
前記電圧制御情報メモリは、前記半導体集積回路が前記温度閾値以上の高温時の電源電圧の情報と前記半導体集積回路が前記温度閾値未満の低温時の電源電圧の情報とを予め記憶することを特徴とする電源電圧制御システム。
【請求項5】
請求項4記載の電源電圧制御システムにおいて、
さらに、前記電圧制御情報メモリから前記高温時の電源電圧の情報と前記低温時の電源電圧の情報とを読み出して前記重み付け回路に記憶させる読み出し手段を備え、
前記重み付け回路は、前記重み付け後の電源電圧が前記高温時の電源電圧と前記低温時の電源電圧の範囲内に収まるように制限することを特徴とする電源電圧制御システム。
【請求項6】
半導体集積回路の温度を検出する検出手順と、
前記半導体集積回路の使用量の情報を出力する使用量出力手順と、
前記検出手順で検出された温度に応じた電源電圧の情報を電圧制御情報メモリから受け取り、この電源電圧を前記使用量に応じて重み付けし、重み付け後の電源電圧を示す電圧制御信号を出力する重み付け手順と、
駆動用電源回路から前記半導体集積回路に供給される電源電圧を前記電圧制御信号に応じて制御する制御手順とを備えることを特徴とする電源電圧制御方法。
【請求項7】
請求項6記載の電源電圧制御方法において、
前記重み付け手順は、前記電圧制御信号が表す電源電圧が前記使用量の増加と逆の関係になるように重み付けを行うことを特徴とする電源電圧制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−305131(P2008−305131A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−151291(P2007−151291)
【出願日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】