説明

電車用の誘導無線アンテナ

【課題】車体傾斜時における電車線への誘導結合を抑えることができる電車用の誘導無線アンテナを提供する。
【解決手段】電車の屋根上に、電車の車体幅方向に間隔を空けて並べて配置された第1及び第2送信アンテナを含み、第1及び第2送信アンテナのそれぞれは、平面矩形の枠状の導体を有し、各導体は、電車の水平配置状態において、電車の上方に架設された電車線の中心軸線を含む仮想鉛直面に対して導体を構成する二辺が平行となる状態で面対称となるように配置され、仮想鉛直面と対向する側の一辺をなす内側縁部と、この内側縁部と平行な一辺をなす外側縁部とを含み、電車の水平配置状態における各導体の地上高が、内側縁部において最も低く、内側縁部から外側縁部に向かうに従って徐々に高くされているとともに、各導体とその下方に位置する磁性体の屋根部材との距離が内側縁部において最も近接する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電車に搭載された車上設備と地上設備との間で誘導無線方式により信号を送受信するために使用される電車用の誘導無線アンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
電車が基地局指令所装置のような地上設備との間で通信を行うために、誘導無線を用いる誘導無線通信システムがある。通常、誘導無線通信システムでは、電車が走行する線路に沿って誘導線が配設され、この誘導線に基地局装置が接続される。基地局装置は、通信線を介して運転指令所装置に接続される。一方、電車には、移動局車上装置が搭載され、移動局車上装置は、電車に設けられた送受信アンテナと接続される。このような誘導無線通信システムを用いて、運転指令所装置と移動局車上装置との間で音声やデータの様な情報の通信が行われる。
【0003】
例えば、電車内の音声を運転指令所に伝達する場合には、移動局車上装置が備える送受話器から音声が入力されると、移動局車上装置内で音声信号が誘導無線周波数の信号に変調され、送信アンテナから電磁放射される。電磁放射された誘導無線電波は、誘導結合(
電磁誘導)により誘導線に結合し、誘導線を流れる信号が基地局装置で復調処理されて運
転指令所装置に伝達される。そして、運転指令所装置で、信号や音声が増幅されて出力される。
【0004】
一方、運転指令所の音声を電車内に伝達する場合には、運転指令所装置に入力された音声信号が基地局装置に伝達され、基地局装置で変調された誘導無線信号が誘導線上に出力される。すると、誘導線上を流れる信号を電車の受信アンテナが電磁誘導により受信し、移動局車上装置に入力する。移動局車上装置は受信信号の復調処理を行い、運転指令所からの音声が電車内に出力される。
【0005】
上記したような誘導無線通信システムにおいて、誘導線に対して誘導無線電波を送信する送信アンテナは、例えば電車の屋根上に設置される。
【0006】
図7A及び図7Bは、従来における送信アンテナの構成例を示す図である。図8Aは、電車の一部を平面視した模式図である。図8Bは、図8Aに示した送信アンテナが設置された車両の上部を正面視した模式図である。
【0007】
図8A及び図8Bに示すように、電車50の屋根51上には、一組の送信アンテナA及びBが設置される。送信アンテナA及びBは、同一形状及び同一構成を持つ平面枠状の導体(エレメント)を有し、電車50の車体の短手方向(幅方向:図8の左右方向)に、間隔を空けて並べた状態で、支持部材を介して屋根上に固定配置される。このとき、各送信アンテナA及びBは、図8Bに示すように、水平配置された電車の屋根上で略水平となる状態で設置される。
【0008】
電車50は、線路上に架設された電車線(架線)Pから、図示せぬパンタグラフを介して駆動用電力を受電する。電車線Pは、線路上を走行する電車の上方に架設される。このとき、電車線Pは、図8Bに示すように、水平配置状態の電車50に対して、その車体の長手方向を縦方向に二等分する仮想平面F上に位置するように架設される。この水平配置状態では、送信アンテナAと送信アンテナBとは、仮想平面Fに対して面対称となり、各送信アンテナA及びBと電車線Pとの距離は、どの位置においても等距離となる状態(均衡
状態)にされる。例えば、図8A及び図8Bにおいて矢印線で示す送信アンテナAと電車
線Pとの距離D1と、送信アンテナAと電車線Pとの距離D2とは等しい。
【0009】
電車50の少なくとも一方の側方には、送信アンテナからの誘導無線電波を誘導結合により受信する誘導線52が架設される。移動局車上装置からの送信時には、誘導無線電波が送信アンテナA及びBの双方から放射される。このとき、主に、誘導線52との距離が近い側の送信アンテナ(図8Aでは送信アンテナA)からの誘導無線電波が誘導線52に誘導結合する。
【0010】
送信時において、送信アンテナA及びBの夫々には、逆方向に電流が流れるように構成される。このため、各送信アンテナA及びBと電車線Pとの距離が均衡状態にある場合には、送信アンテナA及びBの、電車50の幅方向において相互に対向する内側部分から放射される誘導無線電波が相互にうち消し合うことで、誘導無線電波が可能な限り電車線Pに誘導結合されないようになっている。一方、送信アンテナA及びBの、電車50の幅方向において外側に配置された外側部分から放射される誘導無線電波は、電車の側方に架設された誘導線52に誘導結合する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、電車は、常に水平面上を走行する(直進する)訳ではなく、カーブや、線路の切替ポイントを走行する際には車体が傾く。すると、図9に示すように、送信アンテナA及びBの、電車線Pに対する距離が不均衡となる。例えば、図9に示すように、車体が送信アンテナA側へ傾いた場合には、送信アンテナBと電車線Pとの距離D4が送信アンテナAと電車線Pとの距離D3よりも短くなる。この場合、送信アンテナBから放射される誘導無線電波を送信アンテナAからの誘導無線電波でうち消しきれず、誘導無線電波が電車線Pに誘導結合してしまう虞があった。
【0012】
通常、誘導無線通信システムでは、誘導線は所定の区間毎に設けられ、各区間の誘導線を流れる信号は、その区間内で終端される。一方、電車線Pは、複数の区間に亘って架設されている。このため、上記したような電車線Pへの誘導結合が生じると、信号が所定の区間を超えた他の区間に到達し(オーバーリーチ)、その他の区間での通信に影響を与える虞があった。
【0013】
本発明は、上述したような、車体の傾斜時における電車線への誘導結合を抑えることができる電車用の誘導無線アンテナを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上記した目的を達成するために、以下の手段を採用する。
【0015】
即ち、本発明は、電車の近傍に配置された誘導線との誘導結合により信号の送受信を行う電車の誘導無線アンテナであって、
電車の屋根上に、電車の車体幅方向に間隔を空けて並べて配置された第1送信アンテナ及び第2送信アンテナを含み、
前記第1送信アンテナ及び前記第2送信アンテナのそれぞれは、平面矩形の枠状の導体を有し、
各導体は、少なくとも前記電車の水平配置状態において、前記電車の上方に架設された電車線の中心軸線を含む仮想鉛直面に対して該導体を構成する二辺が平行となる状態で面対称となるように固定配置され、この仮想鉛直面と対向する側の一辺をなす内側縁部と、この内側縁部と平行な一辺をなす外側縁部とを含み、
前記電車の水平配置状態における各導体の地上高が、前記内側縁部において最も低く、前記内側縁部から前記外側縁部に向かうに従って徐々に高くされているとともに、前記各
導体とその下方に位置する磁性体の屋根部材との距離が前記内側縁部において最も近接するようにされている
ことを特徴とする。
【0016】
本発明によると、例えば、電車線の位置を変えない状態で、電車の傾きのみを変えた場合には、傾いた側と反対側の導体が電車線に接近する状態となる。しかし、電車の水平配置状態において、各導体の内側縁部の地上高が最も低くなるように構成されているので、内側縁部と電車線の距離が従来技術に比べて長くなる。また、内側縁部から電磁放射される誘導無線電波がその下方に位置する磁性体の屋根部材に吸収される。これらによって、車体の傾斜時に誘導無線電波が電車線に誘導結合するのを抑えることができる。
【0017】
屋根部材は、電車の屋根を構成する部材のみならず、内側縁部の下方において電車の屋根上に配置される磁性体も含む。
【0018】
また、本発明は、前記各導体に対してそれぞれ規定された基準点が前記電車線を中心とする円周上を前記電車の傾斜に応じて移動するように構成するのが好ましい。このようにすれば、電車の傾きに拘わらず、各導体と電車線の距離とを一定に保つことができる。これによって、水平配置時と同様に、双方の送信アンテナから送信される誘導無線電波同士の打ち消し合いにより、誘導無線電波が電車線に誘導結合するのを抑えることが可能となる。
【0019】
また、本発明は、電車の近傍に配置された誘導線との誘導結合により信号の送受信を行う電車の誘導無線アンテナに含まれる、該電車の屋根上に該電車の車体幅方向に間隔を空けて並べて配置された第1送信アンテナ及び第2送信アンテナと、
前記第1送信アンテナ及び前記第2送信アンテナから放射される誘導無線電波の送信レベルの調整手段と、を備え、
前記第1送信アンテナ及び前記第2送信アンテナのそれぞれは、平面矩形の枠状の導体を有し、
各導体は、少なくとも前記電車の水平配置状態において、前記電車の上方に架設された電車線の中心軸線を含む仮想鉛直面に対して該導体を構成する二辺が平行となる状態で面対称となるように固定配置され、この仮想鉛直面と対向する側の一辺をなす内側縁部と、この内側縁部と平行な一辺をなす外側縁部とを含み、
前記電車の水平配置状態における各導体の地上高が、前記内側縁部において最も低く、前記内側縁部から前記外側縁部に向かうに従って徐々に高くされているとともに、前記各導体とその下方に位置する磁性体の屋根部材との距離が前記内側縁部において最も近接するようにされており、
前記調整手段は、前記電車の水平配置状態において、前記第1送信アンテナ及び前記第2送信アンテナからの送信レベルが等しくなるように調整する一方で、前記電車の車体幅方向の傾斜に応じて、その傾斜側と反対側に位置する前記第1送信アンテナ及び前記第2送信アンテナの一方からの送信レベルが前記傾斜側に位置する第1送信アンテナ及び第2送信アンテナの他方の送信レベルよりも小さくなるように調整する
ことを特徴とする移動局車上システムである。
【0020】
本発明による移動局車上システムによれば、上述した誘導無線アンテナに係る作用効果に加えて、電車の車体傾きに応じて、傾き側と反対側の送信レベルが抑えられるので、電車の傾斜によって電車線に接近する側の送信アンテナからの電磁放射量を低減できる。これによって、電車線への誘導結合を抑えることができる。
【0021】
また、本発明による移動局車上システムにおける前記誘導無線アンテナは、前記仮想鉛直面に対して面対称となる状態で配置された第1受信アンテナ及び第2受信アンテナをさ
らに含み、
前記調整手段は、前記電車の水平配置状態において、前記第1送信アンテナ及び前記第2送信アンテナからの送信レベルが等しくなるように調整する一方で、前記電車の車体幅方向の傾斜に応じて、その傾斜側と反対側に位置する前記第1送信アンテナ及び前記第2送信アンテナの一方からの受信レベルが前記傾斜側に位置する前記第1送信アンテナ及び前記第2送信アンテナの他方の受信レベルよりも小さくなるように調整するように構成することができる。
【0022】
このようにすれば、電車線に結合した誘導無線信号が各第1及び第2受信アンテナに再結合し、ノイズ成分として受信された場合において、調整手段により各受信アンテナからのノイズ成分のレベルを揃えることができ、両者間でキャンセル可能となる。
【発明の効果】
【0023】
本発明による電車用の誘導無線アンテナによれば、車体の傾斜時における電車線への誘導結合を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を説明する。実施形態の構成は例示であり、本発明は実施形態の構成に限定されない。
〈第1実施形態〉
図1は、第1実施形態に係る誘導無線アンテナが適用される誘導無線通信システムの概要説明図である。
【0025】
図1において、誘導無線通信システムは、大略して、地上設備と、車上設備とからなる。地上設備は、電車10が走行する線路Rの側方に架設された誘導線111と、誘導線11に結合器12を介して接続される基地局装置13と、各基地局装置13と通信線を介して接続される運転指令所装置14とを備える。
【0026】
地上設備は、運転指令所装置14を中心として、複数の区間毎の設備に区分けすることができる。図1に示す例では、区間N内に位置し、紙面の左側へ向かって進行する電車10が図示されている。電車10の先頭側には、区間Nに隣接する区間N+1があり、電車10の最後尾側には、区間Nに隣接する区間N−1がある。
【0027】
そして、区間N向けの地上設備として、区間Nに亘って架設された誘導線11Aと、誘導線11Aの両端に設置された結合器12A及び12Bと、各結合器12A及び12Bに接続された基地局装置13A及び13Bが設けられている。区間Nに対する他の区間に相当する区間N+1には、区間N+1用の誘導線11Bと、誘導線11Bを終端する結合器12Cと、結合器12Cに接続された基地局装置13Cを含む区間N+1向けの地上設備が設けられている。また、図示しないが、区間N−1にも、区間Nと同様の区間N−1向けの地上設備が設けられる。
【0028】
このようにして、運転指令所装置14は、電車10との通信を区間毎に管理可能となっている。このため、誘導線を流れる信号は、その区間内で終端され、誘導線を通じて他の区間に到達しないように構成されている。
【0029】
一方、車上設備は、電車10の先頭車両の屋根上に固定配置された誘導無線アンテナとしての一組の送受信アンテナ15A及び15Bと、送受信アンテナ15A及び15Bが接続される移動局車上装置16(図2参照)とを備える。移動局車上装置16は、電車10に搭載された車内放送装置,乗務員間連絡装置,非常通報装置(いずれも図示せず)等と接続される。
【0030】
電車10は、線路R上に架設された電車線(架空電車線:架線)Pから駆動用電力を受電するパンタグラフ17を備えており、車載モータがパンタグラフ17より受電された電力を用いて駆動輪を駆動させることで、電車10は線路R上を走行する。電車線Pは、電車10の直進区間では、電車10の長手方向の中心線上を通過するように架設される。
【0031】
図2は、車上設備の回路構成を模式的に示す図である。図2において、移動局車上装置16は、送受話器18と、送受話器18にハイブリッド19を介して接続された送信器20及び受信器21を備える。送信器20は、ハイブリッド22を介して、送受信アンテナ15A及び15Bを構成する送信アンテナエレメント(導体)23A及び23Bに夫々接続されている。受信器21は、ハイブリッド24を介して、送受信アンテナ15A及び15Bを構成する受信アンテナエレメント(導体)25A及び25Bに夫々接続されている。
【0032】
図3Aは、図1に示した電車10の先頭車両の一部を平面視した模式図であり、図3Bは、図1に示した電車10の先頭車両の上部を正面視した模式図である。送受信アンテナ15Aは、図3Aに示すような、誘導無線送信波長に同調した平面矩形の枠状(環状)に形成された送信アンテナエレメント(導体)23Aと、誘導無線受信波長に同調した平面矩形の枠状(環状)に形成された受信アンテナエレメント(導体)25Aとを電車10の長手方向にずらした状態で重ねて接続することによって構成されている。
【0033】
一方、送受信アンテナ15Bは、送受信アンテナ15Aと同様の形状及び構成を有し、送信アンテナエレメント23Bと受信アンテナエレメント25Bとを備える。
【0034】
送受信アンテナ15A及び15Bは、電車10の屋根上に、電車10の車体幅方向に並べて設置される。詳細には、送受信アンテナ15A及び15Bは、送信アンテナエレメント23A及び23Bが電車の先頭側に配置される状態で、枠状の長辺をなす二辺を電車10の長手方向に合わせて配置されている。ここで、各導体としての各送信アンテナエレメント23A及び23Bは、少なくとも電車10の水平配置状態において、電車10の上方に架設された電車線Pの中心軸線を含む仮想鉛直面に対して各送信アンテナエレメント23A及び23Bを構成する二辺が平行となる状態で面対称に固定配置される。
【0035】
ここでは、送受信アンテナ15A及び15B(送信アンテナエレメント23A及び23
B)は、水平配置状態の電車10をその長手方向で二等分する(電車10の長手方向中心軸線を含む)仮想平面(仮想鉛直面)F1に対して面対称となるように固定配置される。
【0036】
この状態において、送信アンテナエレメント23A及び23Bは、仮想平面F1に対して平行な状態で対向する長辺部分(内側縁部)30A及び30Bと、内側縁部30A及び30Bに対して平行な長辺部分(外側縁部)31A及び31Bとを有する。
【0037】
送信アンテナエレメント23A及び23Bは、各内側縁部30A及び30Bが最も低くなり、外側縁部31A及び31Bに向かって徐々に高くなり、外側縁部31A及び31Bにおいて最も高くなるように、取り付け高さ(地上高)が規定されている。言い換えれば、送信アンテナエレメント23A及び23Bは、仮想平面F1に対して面対称な逆ハの字状に配置されている。
【0038】
送信アンテナエレメント23Aは、支持部材(ステー)28A及び28Bにより電車10の屋根29上に固定設置され、送信アンテナエレメント27Bは、支持部材(ステー)28C及び28Dにより電車10の屋根29上に固定設置されている。また、受信アンテナエレメント25A及び25Bも、図示せぬ支持部材を介して屋根29に固定配置されている。
【0039】
このようにして、対向状態となる内側縁部30Aと内側縁部30Bとが、その下方に位置する、金属性(磁性体)の電車10の屋根29に対して最も近接した状態とされる。なお、送受信アンテナ15A及び15Bは、樹脂製の保護カバー32A,32Bで被覆される。
【0040】
図3Bに示すように、電車線Pは、上記した仮想平面Fがその中心軸を通過するように架設される。これにより、電車10の水平配置状態では、送信アンテナエレメント23Aと電車線Pとの距離と、送信アンテナエレメント23Bとの距離とはどの位置においても等しくなる。例えば、内側縁部30Aと電車線Pとの距離d1と、内側縁部30Bと電車線Pとの距離d2とは等しくなる。
【0041】
次に、図1〜図3に示した誘導無線通信システムにおいて、移動局車上装置16から運転指令所装置14との間で通信(例えば音声通話)を実施する際の動作について説明する。
【0042】
送受話器18(図2)は、例えば、電車10内の乗務員室に設置される。送受話器18が備えるマイクロフォンから音声が入力されると、送受話器18に入力された音声信号は、ハイブリッド19を経て送信器20に入力され、送信器20内で、誘導無線送信周波数を有する信号に変調されて出力される。信号は、ハイブリッド22を介して各送信アンテナエレメント23A及び23Bから電磁放射される。このとき、各送信アンテナエレメント23A及び23Bに対して、相互に逆向きとなる電流(信号)が流される。
【0043】
図1に示す例では、送受信アンテナ15A側に誘導線11(11A)が架設されている。このため、送受信アンテナ15A(送信アンテナエレメント23A)から放射された誘導無線電波が誘導線11Aに誘導結合する。
【0044】
誘導線11Aに誘導結合された信号は、結合器12A,12Bを介して基地局13A,13Bによって受信されることができ、信号を受信した基地局13A,13Bは、信号の復調処理をして運転指令所装置14に送信する。運転指令所装置14では、信号の増幅を行い、これによって得られた音声信号に基づく音声をスピーカから運転指令所内に出力することができる。
【0045】
一方、運転指令所装置14にマイクロフォンを介して入力された、区間N内の電車10向けの音声信号は、区間Nに対応する基地局13A,13Bに送信され、例えば、基地局13A,13Bで誘導無線周波数を有する信号に変調され、誘導線11Aに送出される。
【0046】
これにより、誘導線11Aから誘導無線電波が電磁放射される、この誘導無線電波は、電車10の送受信アンテナ15Aが備える受信アンテナエレメント25Aで受信することができる。受信された信号は、ハイブリッド24を介して受信器21に入力され、受信器21で音声信号に復調され、ハイブリッド19を介して送受話器18に入力される。これにより、送受話器18のスピーカから運転指令所の音声が出力される。
【0047】
上記した動作において、移動局車上装置16からの送信時には、送信アンテナエレメント23A及び23Bの双方から、誘導無線電波が送信される。このとき、電車10が直進区間を走行しており、電車10が水平配置状態にあれば、内側縁部30A及び30Bの夫々から電磁放射される誘導無線電波は相互にうち消し合う。また、誘導無線電波は、磁性体の屋根29に吸収される。これによって、誘導無線電波が電車線Pに誘導結合することが抑えられる。
【0048】
図4は、電車10がカーブを走行することにより、電車10の車体が傾いた状態を示す
。図4では、車体が送受信アンテナ15A側に傾いた様子を示す。もし、電車線Pの位置が変更されない状態で、電車10の車体の傾きのみが変更されたとすると、図4に示すように、送受信アンテナ15B(送信アンテナエレメント23B)と電車線Pとの距離d2が送受信アンテナ15A(送信アンテナエレメント23A)と電車線Pとの距離d1よりも短くなり、不均衡な状態となる。
【0049】
しかしながら、内側縁部30Aは、金属製の(磁性体である)屋根29に近接した状態で配置されている。このため、内側縁部30Aからの誘導無線電波の大半は屋根29に吸収される。また、内側縁部30Aは、水平配置時の取り付け高さ(地上高)が最も低くなるように配置されているので、車体の傾斜時における電車線Pとの距離d2が、送信アンテナエレメントを水平配置した場合よりも長くなる。したがって、送信アンテナエレメント23Bから電磁放射された誘導無線電波が電車線Pに誘導結合することが抑えられる。
【0050】
区間Nを走行する電車10から送信される誘導無線電波(信号)は、誘導線11Aのみで受信(誘導結合)され、他の区間に伝搬すべきものではない。しかしながら、電車線Pに誘導無線電波が誘導結合すると、その隣接区間である区間N+1や区間N−1に伝搬してしまい、これらの他の区間での通信に影響を与える(干渉する)おそれがあった。
【0051】
上述した誘導無線アンテナ(送受信アンテナエレメント23A及び23B)の構成によれば、電車10の傾斜時における電車線Pへの誘導結合を完全に、或いは他の区間に影響を与えないレベルまで抑えることが可能となる。よって、区間Nを走行する電車10から送信された誘導無線電波(信号)が電車線Pを介して他の区間N+1や区間N−1に伝搬してしまい(オーバーリーチ)、他の区間での通信に影響(干渉)を与えることが抑止される。
【0052】
オーバーリーチが抑止されることにより、通信区間が明確化される。また、他の区間における、基地局装置13及び移動局車上装置16の受信器21の受信感度(スケルチレベ
ル)の向上を図ることができる。受信器の感度が向上することで、各区間で安定した通信
を行うことが可能となる。
【0053】
なお、電車10の水平配置状態における送信アンテナエレメント23A及び23Bの水平面に対する傾斜角度は、予め規定されたアンテナの地上高を超えない範囲で適宜設定可能である。このとき、内側縁部30A,30Bが可能な限り屋根29に近接するように傾斜角度を規定することが、内側縁部30A,30Bから放射される誘導無線電波を好適に屋根29に吸収させる点で望ましい。
【0054】
また、内側縁部30Aや30Bの下方における屋根上に、誘導無線電波を吸収するための磁性体(金属製の部材(鉄板等))を配置しても良い。
【0055】
〈第2実施形態〉
次に、第2実施形態に係る誘導無線アンテナについて説明する。第2実施形態は第1実施形態と共通の構成を含むので、主として相違点について説明し、共通点については説明を省略する。
【0056】
図5は、第2実施形態に係る誘導無線アンテナを備える電車10Aの水平状態(直進状
態)を正面視した場合の模式図を示し、図6は、図5に示した電車10Aがカーブや線路
の切替ポイントを走行する状態(車体傾斜時)を示す模式図である。
【0057】
第2実施形態に係る誘導無線アンテナの構造自体は、第1実施形態で説明した送受信アンテナ15A及び15Bと同様である。但し、第2実施形態における送受信アンテナ15A及び15Bでは、これらが備える送信アンテナエレメント23A及び23Bについて規
定された基準点(厳密には基準点を含む水平線)が、電車線Pを中心とした仮想円C(厳密
には仮想円柱)の円周上を電車10Aの傾きに応じて移動するように構成されている。
【0058】
図5及び図6に示す例では、内側縁部30A及び30Bの上側のコーナーが基準点P1及びP2として規定されている。基準点P1及びP2は、電車線Pの中心軸線と、電車10Aの長手方向中心軸線とを含む仮想平面F2に対して面対称となっている。基準点P1及びP2は、電車10Aの水平配置時及び車体の傾斜時の双方において、仮想円Cの円周上に位置し、電車10Aの車体の傾斜時には、仮想円Cの円周上を移動する。
【0059】
これによって、電車10Aの傾斜時においても、内側縁部30Aと電車線Pとの距離d1と、内側縁部30Bと電車線Pとの距離d2とが等しくなる。従って、電車10Aの傾斜時においても、各内側縁部30A及び30Bと電車線Pとの距離に不均衡が生じない。よって、送受信アンテナ15A及び15B(送信アンテナエレメント23A及び23B)からの誘導無線電波の送信時において、内側縁部30Aから電磁放射される誘導無線電波と内側縁部30Bから電磁放射される誘導無線電波とが相互に打ち消しあい、電車線Pに誘導無線電波が誘導結合してしまうことを抑止することができる。
【0060】
また、第1実施形態と同様に、内側縁部30A及び30Bが、電車10Aの屋根29に近接して配置されているので、これらから電磁放射される誘導無線電波の大半は屋根29に吸収される。これによっても、電車線Pへの誘導結合が抑止される。
【0061】
なお、図5及び図6に示した基準点P1及びP2の位置は例示であり、基準点P1及びP2は、仮想平面F2に対して面対称となる限り、送受信アンテナ15A及び15B(送
信アンテナエレメント23A及び23B)の任意の位置を規定することができる。例えば
、送受信アンテナ15A及び15B(送信アンテナエレメント23A及び23B)の電車10Aの長手方向の中心を、基準点P3及びP4として規定しても良い。
【0062】
第2実施形態によれば、電車10Aの傾斜時において各送信アンテナエレメント23A及び23Bと電車線Pとの間の各距離が異ならないようにされているので、第1実施形態に比べて適正に誘導無線電波が電車線Pに誘導結合することを抑えることができる。なお、第2実施形態の構成は、電車10Aの車両本体(車体)との傾きが台車の傾きに依存する車両と、電車10Aの車両本体の傾きが台車の傾きから独立して制御される車両(いわゆ
る振り子式車両)との双方に適用可能である。特に、電車線Pを中心として車体を揺動可
能な振り子式の車両に適用するのが好ましい。
【0063】
〈第3実施形態〉
次に、第3実施形態について説明する。第3実施形態は、第1実施形態と同様の構成を有するので、共通点については説明を省略し、相違点について説明する。
【0064】
第1及び第2実施形態では、第1及び第2送信アンテナエレメント23A及び23Bからの誘導無線電波が電車線Pに誘導結合することを可能な限り抑えることができる。但し、電車線に対する電車の位置や、電車の走行時の振動等によって、送信アンテナエレメント23A及び23Bの一方の誘導無線電波が電車線Pに結合してしまう可能性がある。この場合には、電車線Pに誘導結合した信号が、電車線Pから自局基地局誘導線並びに他局基地局誘導線に再結合し、この再結合された誘導信号が生じると、信号が所定の区間を超えた他の区間に到達(オーバーリーチ)したことになり、その区間での通信に影響を与える虞があるとともに、各送受信アンテナの受信アンテナエレメントに再結合する虞がある。
【0065】
例えば、図4に示すように、電車50の車体が送受信アンテナ15A側に傾いた場合に、送信アンテナエレメント23Bから送信される誘導無線電波が電車線Pに誘導結合して
しまい、電車線Pに誘導結合した信号が、電車線Pから自局基地局誘導線11A並びに他局基地局誘導線11Bに再結合し、他局の基地局誘導線11Bに再結合された誘導信号が生じると、信号が所定の区間を超えた他の区間に到達(オーバーリーチ)したことになり、その区間での通信に影響を与える虞があり、さらに、各受信アンテナエレメント25A及び25Bに受信(再結合)されてしまう可能性があった。
【0066】
第3実施形態では、上述した問題を解決するための、車上設備の構成について説明する。図7は、第3実施形態に係る車上設備の回路構成を模式的に示す図である。図7において、各送信アンテナエレメント23A及び23Bとハイブリッド22との間には、図示しない可変抵抗器を含む送信レベル可変回路40A及び40Bが挿入されている。
【0067】
また、各受信アンテナエレメント25A及び25Bとハイブリッド24との間には、図示しない可変抵抗器を含む受信レベル可変回路41A及び41Bが挿入されている。
【0068】
送信レベル可変回路40A及び40Bと、受信レベル可変回路41A及び41Bとは、制御回路42に接続されている。制御回路42は、電車10(図1)に搭載された図示しない車体の傾斜センサからの出力信号を受信する。当該出力信号は、例えば、車体の水平配置時を基準(傾きゼロ)とし、電車10の長手方向の中心軸を中心として、電車10の車体が進行方向右側(送受信アンテナ15A側:例えば正方向)又は進行方向左側(送受信アン
テナ15B側:例えば負方向)に、仮想鉛直面F1に対してどの程度傾いているか(傾斜角度)を示す信号を含む。
【0069】
制御回路42は、出力信号に含まれる傾斜角度を元に、送信レベル可変回路40A及び40B,並びに受信レベル可変回路41A及び41Bの可変抵抗器の抵抗値を制御する。
【0070】
例えば、制御回路42は、出力信号に含まれる傾斜角度が正方向の傾き(ここでは右側)を示す場合には、左側の送受信アンテナに係る送信レベル可変回路及び受信レベル可変回路に制御信号を与え、各可変抵抗器の抵抗量を傾斜角度に応じた値に調整する。これに対し、傾斜角度が負方向の傾き(ここでは左側)を示す場合には、右側の送受信アンテナ係る送信レベル可変回路及び受信レベル可変回路に制御信号を与え、各可変抵抗器の抵抗量を傾斜角度に応じた値に調整する。
【0071】
即ち、各可変回路内の可変抵抗器は、電車10の水平配置時において、所定の抵抗値を有するように設定されている。各送信及び受信レベル可変回路において、可変抵抗器の抵抗量(抵抗値)は、傾斜角度が大きくなる程、大きくなるように制御信号に基づき調整される。
【0072】
また、制御回路42は、電車10の車体がいずれかの方向に傾いている場合において、その傾き方向と逆方向の送信及び受信レベル可変回路の可変抵抗器の抵抗値が水平状態における抵抗値となるための制御信号を供給する。よって、車体が傾いている場合には、傾き方向と反対側の可変抵抗器の抵抗量のみが水平状態時よりも増加するように制御される。
【0073】
例えば、電車10の車体が、水平状態から右側(送受信アンテナ15A側)に傾いた場合(図4)を想定する。この場合、制御回路42は、傾斜センサからの出力信号から得られる傾斜角度に応じた可変抵抗器の制御量を含む制御信号を送信レベル可変回路41B及び受信レベル可変回路41Bに供給する。
【0074】
送信レベル可変回路41Bでは、可変抵抗値の抵抗値が傾斜角度に応じて増加する。これによって、車体の傾斜によって電車線Pに接近する側の送信アンテナエレメント23B
(図4)からの誘導無線電波の送信レベルが低減される。このように、送信アンテナエレメントからの誘導無線電波の放射量が低減されることで、電車線Pへの誘導結合量を抑えることができる。
【0075】
一方、受信レベル可変回路40Bでは、制御信号に基づき可変抵抗器の抵抗値が増加する。これにより、以下の作用が生じる。即ち、送信アンテナエレメント23Bから電磁放射された誘導無線電波が電車線Pに誘導結合すると、さらに、各受信アンテナエレメント25A及び25Bに再結合する場合が起こりえる。この再結合により受信された信号は、受信器21(移動局車上装置16)から見てノイズ成分となる。
【0076】
ここで、電車10が水平状態であれば、電車線Pから各受信アンテナエレメント25A及び25Bのそれぞれへの再結合量は、両者間の距離が等しいためほぼ同量となる(受信
レベルがほぼ同じとなる)。この場合、各受信アンテナエレメント25A及び25Bから
のノイズ成分は、相互に逆の位相を持つため、ハイブリッド24でキャンセル可能である。
【0077】
しかしながら、電車50が傾いている場合には、電車線Pに接近している側の受信アンテナエレメントでの再結合量(受信レベル)が、反対側の受信アンテナエレメントの再結合量よりも大きくなる。この場合には、ハイブリッド24でノイズ成分がキャンセルしきれず、受信器21に達してしまう虞があった。
【0078】
上述した例では、受信レベル可変回路40Bの可変抵抗器の抵抗量が増加することで、受信レベル可変回路40Bを通過するノイズ成分のレベルが、受信アンテナエレメント25Aで受信されたノイズ成分によりキャンセル可能な程度まで低減される。これにより、再結合により生じたノイズ成分を適正にキャンセル(除去)することができる。
【0079】
上述した第3実施形態に係る構成は、第2実施形態の構成と適宜組み合わせることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明による誘導無線アンテナの実施形態を適用可能な誘導無線通信システムの構成例を示す図である。
【図2】図1に示した車上設備、すなわち送受信アンテナ及び移動局車上装置の構成例を示す図である。
【図3A】図1に示した電車の先頭車両の一部を平面視した模式図である。
【図3B】図1に示した電車の先頭車両の上部を正面視した模式図である。
【図4】図1に示した電車の傾斜時における先頭車両の一部を正面視した模式図である。
【図5】第2実施形態に係る誘導無線アンテナを備える電車の水平状態(直進状態)を正面視した場合の模式図である。
【図6】図5に示した電車がカーブを走行する状態(車体傾斜時)を示す模式図である。
【図7】第3実施形態に係る車上設備の構成例を示す図である。
【図8A】従来における送信アンテナの構成を示す図であり、図7Aに示した電車の一部を平面視した模式図である。
【図8B】従来における送信アンテナの構成を示す図であり、送信アンテナが設置された車両の上部を正面視した模式図である。
【図9】従来における送信アンテナの構成を示す図であり、車体傾斜時を示す。
【符号の説明】
【0081】
C・・・仮想円
F1,F2・・・仮想平面
P・・・電車線
R・・・線路
10,10A・・・電車
11・・・誘導線
12・・・結合器
13・・・基地局装置
14・・・運転指令所装置
15A,15B・・・送受信アンテナ(誘導無線アンテナ)
16・・・移動局車上装置
17・・・パンタグラフ
18・・・送受話器
19,22,24・・・ハイブリッド
20・・・送信器
21・・・受信器
23A,23B・・・送信アンテナエレメント
25A,25B・・・受信アンテナエレメント
27A,27B・・・枠状部材
28A,28B,28C,28D・・・支持部材
29・・・屋根
30A,30B・・・内側縁部
31A,31B・・・外側縁部
32A,32B・・・カバー
40A,40B・・・送信レベル可変回路
41A,41B・・・受信レベル可変回路
42・・・制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電車の近傍に配置された誘導線との誘導結合により信号の送受信を行う電車の誘導無線アンテナであって、
電車の屋根上に、電車の車体幅方向に間隔を空けて並べて配置された第1送信アンテナ及び第2送信アンテナを含み、
前記第1送信アンテナ及び前記第2送信アンテナのそれぞれは、平面矩形の枠状の導体を有し、
各導体は、少なくとも前記電車の水平配置状態において、前記電車の上方に架設された電車線の中心軸線を含む仮想鉛直面に対して該導体を構成する二辺が平行となる状態で面対称となるように固定配置され、この仮想鉛直面と対向する側の一辺をなす内側縁部と、この内側縁部と平行な一辺をなす外側縁部とを含み、
前記電車の水平配置状態における各導体の地上高が、前記内側縁部において最も低く、前記内側縁部から前記外側縁部に向かうに従って徐々に高くされているとともに、前記各導体とその下方に位置する磁性体の屋根部材との距離が前記内側縁部において最も近接するようにされている
ことを特徴とする電車用の誘導無線アンテナ。
【請求項2】
前記各導体に対してそれぞれ規定された基準点が前記電車線を中心とする円周上を前記電車の傾斜に応じて移動する
ことを特徴とする請求項1記載の電車用の誘導無線アンテナ。
【請求項3】
電車の近傍に配置された誘導線との誘導結合により信号の送受信を行う電車の誘導無線アンテナに含まれる、該電車の屋根上に該電車の車体幅方向に間隔を空けて並べて配置された第1送信アンテナ及び第2送信アンテナと、
前記第1送信アンテナ及び前記第2送信アンテナから放射される誘導無線電波の送信レベルの調整手段と、を備え、
前記第1送信アンテナ及び前記第2送信アンテナのそれぞれは、平面矩形の枠状の導体を有し、
各導体は、少なくとも前記電車の水平配置状態において、前記電車の上方に架設された電車線の中心軸線を含む仮想鉛直面に対して該導体を構成する二辺が平行となる状態で面対称となるように固定配置され、この仮想鉛直面と対向する側の一辺をなす内側縁部と、この内側縁部と平行な一辺をなす外側縁部とを含み、
前記電車の水平配置状態における各導体の地上高が、前記内側縁部において最も低く、前記内側縁部から前記外側縁部に向かうに従って徐々に高くされているとともに、前記各導体とその下方に位置する磁性体の屋根部材との距離が前記内側縁部において最も近接するようにされており、
前記調整手段は、前記電車の水平配置状態において、前記第1送信アンテナ及び前記第2送信アンテナからの送信レベルが等しくなるように調整する一方で、前記電車の車体幅方向の傾斜に応じて、その傾斜側と反対側に位置する前記第1送信アンテナ及び前記第2送信アンテナの一方からの送信レベルが前記傾斜側に位置する第1送信アンテナ及び第2送信アンテナの他方の送信レベルよりも小さくなるように調整する
ことを特徴とする移動局車上システム。
【請求項4】
前記誘導無線アンテナは、前記仮想鉛直面に対して面対称となる状態で配置された第1受信アンテナ及び第2受信アンテナをさらに含み、
前記調整手段は、前記電車の水平配置状態において、前記第1送信アンテナ及び前記第2送信アンテナからの送信レベルが等しくなるように調整する一方で、前記電車の車体幅方向の傾斜に応じて、その傾斜側と反対側に位置する前記第1送信アンテナ及び前記第2送信アンテナの一方からの受信レベルが前記傾斜側に位置する前記第1送信アンテナ及び
前記第2送信アンテナの他方の受信レベルよりも小さくなるように調整する
ことを特徴とする請求項3記載の移動局車上システム。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−260667(P2009−260667A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−107314(P2008−107314)
【出願日】平成20年4月16日(2008.4.16)
【出願人】(592066860)八幡電気産業株式会社 (15)
【Fターム(参考)】