説明

露光装置及び露光方法

【課題】基板の反り量が大きい場合等であっても適切な露光を行うことができ、好ましくは基板内のチップ等の損傷を回避することもできる露光装置及び露光方法を提供する。
【解決手段】露光装置には、ステージ3上に載置された基板12に光を照射する光源1と、光源1側から基板12をステージ3に押圧する押圧部材2と、基板12の押圧部材2により押圧されている領域の平坦度を測定するセンサ4と、センサ4により測定された平坦度に応じて押圧部材2が基板12を押圧する力を制御する制御部5と、が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光装置及び露光方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板、微細配線を含む実装配線基板、LSI(大規模集積回路)チップが埋め込まれたチップ内蔵基板等における配線の形成の際には、フォトレジスト膜の露光等が行われている。フォトレジスト膜の露光の際には、基板がステージに真空吸着され、基板が平坦に保持されている。なお、実装配線基板、チップ内蔵基板に新たに上層の配線を形成するプロセスは、再配線プロセスとよばれることがある。
【0003】
しかし、基板に反りが生じている場合がある。そして、基板が硬い場合、基板の周縁部の反りの量が大きい場合等には、反りが生じた基板を真空吸着できないことがある。この場合、適切な露光を行うことができない。即ち、マスクのパターンを基板に適切に転写することができない。
【0004】
また、反りが生じた実装配線基板又はチップ内蔵基板を真空吸着により平坦に保持した場合、配線又はチップに大きな応力が作用することがある。この場合、配線又はチップに損傷が生じることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−58191号公報
【特許文献2】特開昭57−177536号公報
【特許文献3】特開2001−313246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、基板の反り量が大きい場合等であっても適切な露光を行うことができ、好ましくは基板内のチップ等の損傷を回避することもできる露光装置及び露光方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
露光装置の一態様には、ステージ上に載置された基板に光を照射する光源と、前記光源側から前記基板を前記ステージに押圧する押圧手段と、前記基板の前記押圧手段により押圧されている領域の平坦度を測定する測定手段と、前記測定手段により測定された平坦度に応じて前記押圧手段が前記基板を押圧する力を制御する制御手段と、が設けられている。
【発明の効果】
【0008】
上記の露光装置等によれば、真空吸着ではなく、光源側からの押圧により基板の平坦度が矯正されるため、適切な露光を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施形態に係る露光装置の構成を示す図である。
【図2】第1の実施形態に係る露光装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】第1の実施形態の変形例を示す図である。
【図4】第2の実施形態に係る露光装置の構成及び動作を示す図である。
【図5】第3の実施形態に係る露光装置の構成及び動作を示す図である。
【図6】第4の実施形態に係る露光装置の構成及び動作を示す図である。
【図7】押圧部材の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態について、添付の図面を参照して具体的に説明する。
【0011】
(第1の実施形態)
先ず、第1の実施形態について説明する。図1は、第1の実施形態に係る露光装置の構成を示す図である。
【0012】
第1の実施形態には、図1に示すように、基板12が載置されるステージ3、フォトマスク11を介してステージ3上の基板12に向けて紫外線等の露光光を照射する光源1、ステージ3上の基板12をステージ3に押し付ける押圧部材2が設けられている。押圧部材2には、例えば、互いに固定された4本の棒材2aが含まれている。本実施形態では、押圧部材2は、露光光の進行方向に移動可能であるが、これに直交する方向に関しては光源1に固定されている。つまり、押圧部材2は、露光光の進行方向に直交する方向には移動できない。また、第1の実施形態には、基板12の、4本の棒材2aが接触した部分により囲まれた領域の平坦度を測定するセンサ4(例えばフォーカスセンサ)が設けられている。更に、センサ4による測定結果等に応じて、光源1、押圧部材2及びステージ3を制御する制御部5も設けられている。
【0013】
このような構成の露光装置は、次のように動作する。図2は、第1の実施形態に係る露光装置の動作を示すフローチャートである。
【0014】
先ず、ステップS1において、制御部5が基準平坦度を取得する。露光の際には、基板12を完全に平坦な状態にしておく必要はなく、焦点深度に応じた平坦度が得られていればよい。ステップS1では、制御部5が、このような焦点深度に応じた平坦度を基準平坦度として取得する。基準平坦度は、当該露光を通じて形成しようとする配線等の最小線幅、露光光の波長、投影時の開口数等に基づいて算出することができる。例えば、光源1が水銀ランプであり、最小線幅が5μmであり、開口数が0.4の場合、焦点深度は20μm程度であるため、基準平坦度は20μmとする。基準平坦度は外部から制御部5に入力されてもよく、制御部5が、入力された最小線幅、露光光の波長、開口数等に基づいて算出してもよい。
【0015】
次いで、ステップS2において、基板12がステージ3上にロードされる。このとき、ステージ3上の枠への突き当て等により、基板12のステージ3の表面に平行な方向の位置決めも行う。但し、基板12を真空吸着して平坦にする必要はなく、ステージ3の表面に平行な方向に基板12が固定されればよい。
【0016】
その後、ステップS3において、制御部5による制御に伴って、押圧部材2が降下し、図1(b)に示すように、基板12を押圧する。このとき、押圧する部分は、例えば矩形の露光対象領域13の4頂点であってもよく、図1(c)に示すように、露光対象領域13の4頂点よりも外側であってもよい。
【0017】
続いて、ステップS4において、これから露光を行う対象である露光対象領域13の平坦度をセンサ4が測定する。
【0018】
次いで、ステップS5において、制御部5が、センサ4により測定された平坦度が、基準平坦度に達しているか判断する。そして、基準平坦度に達していなければステップS6に移行し、達していればステップS7に移行する。
【0019】
ステップS6では、制御部5が押圧部材2を更に降下させ、押圧部材2による基板12の押圧力を増加させる。そして、ステップS4に戻る。
【0020】
ステップS7では、制御部5による制御に伴って、光源1が露光光を発する。この結果、フォトマスク11に形成されているパターンが基板12に転写される。
【0021】
ステップS7の後、ステップS8において、制御部5が、全ての露光対象領域13の露光が完了しているか判断し、完了していなければステップS9に移行する。
【0022】
ステップS9では、制御部5による制御に伴って、ステージ3が移動し、これに伴って基板12も移動し、露光対象領域13が他の領域(例えば隣の領域)に変更される。
【0023】
このようにして、基板12内の全ての露光対象領域13の露光が行われる。そして、本実施形態では、基板12の平坦度が焦点深度に応じた基準平坦度に達した状態で露光が行われるため、適切な露光を行うことができる。更に、真空吸着とは異なり、押圧力により基板12を平坦にするため、基板12が硬い場合であっても、基板12の反りが大きな場合であっても、基板12を基準平坦度まで平坦にすることが可能である。また、真空吸着の場合には、適切な吸着が行われると基板がほぼ完全に平坦な状態となるが、本実施形態では、基準平坦度程度の平坦度で基板12の矯正が完了するため、基板12に配線又はチップ等が含まれる場合であっても、これらに損傷が生じにくい。
【0024】
なお、図3(a)に示すように、押圧部材2が露光光の進行方向に直交する方向にも移動可能となっていてもよい。この場合、例えば、図3(b)に示すように、基板12の、4本の棒材2aが接触した部分により囲まれた領域内に複数の露光対象領域13が含まれていれば、ステージ3を移動させるだけで、押圧部材2による基板12の押圧を維持したまま複数の露光対象領域13の露光を順次行うことが可能である。なお、この場合も、図3(c)に示すように、押圧部材2が押圧する部分が露光対象領域13の境界からずれていてもよい。
【0025】
また、上記の動作は分割露光に関するものであるが、基板12に対して一括露光を行ってもよい。この場合には、ステップS8及びS9を省略すればよい。そして、他の基板についても同一のフォトマスク11を用いて露光するのであれば、次の基板をロードすればよい(ステップS2)。
【0026】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。図4は、第2の実施形態に係る露光装置の構成及び動作を示す図である。
【0027】
第2の実施形態では、図4(a)に示すように、押圧部材2に含まれる4本の棒材2aが、個別に、露光光の進行方向及びこれに直交する方向の双方に移動可能となっている。また、図4(b)に示すように、基板12の矩形の露光対象領域13の4頂点に目印14が付されており、これを検出するカメラ15が露光装置に設けられている。カメラ15の出力は制御部5に入力される。他の構成は第1の実施形態と同様である。カメラ15は、検出手段の一例である。
【0028】
そして、第2の実施形態では、押圧部材2による押圧開始の際(ステップS3)に、カメラ15が目印14の位置を検出し、この検出結果に応じて制御部5が、各棒材2aが目印14に当接するようにその位置を調節する。この結果、図4(c)に示すように、押圧部材2は露光対象領域13の4頂点を押圧することとなる。
【0029】
露光対象領域13内には、配線又はチップが含まれていることがある。このため、押圧部材2が露光対象領域13内に当接すると、配線又はチップに大きな応力が直上から作用することがある。また、基板12の表面に欠陥又は疵が発生することもあり得る。一方、第2の実施形態によれば、押圧部材2は露光対象領域13の4頂点、即ち露光対象領域13の境界を押圧することになるため、露光対象領域13内に配線又はチップが含まれていても、これらに大きな応力が直上から作用することを回避することができる。
【0030】
なお、露光対象領域13の境界は、例えばスクライブライン又は切り出される素子の外周部に相当する。また、目印14が付される位置は、必ずしも露光対象領域13の境界である必要はなく、基板12の構成に応じて露光対象領域13内の配線及びチップ等への影響が許容範囲内になる部分に目印14が付されていてもよい。
【0031】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。図5は、第3の実施形態に係る露光装置の構成及び動作を示す図である。
【0032】
第3の実施形態では、図5(a)及び(b)に示すように、棒材2aの各々の下端に、ベアリング2bが設けられている。他の構成は第1又は第2の実施形態と同様である。
【0033】
第1の実施形態では、露光対象領域13の変更(ステップ9)の際には、一旦、押圧部材2を基板12の上方に退避させる必要がある。これに対し、第3の実施形態では、図5(c)に示すように、任意の露光対象領域13の露光が終了した後、図5(d)に示すように、押圧部材2を基板12の上方に退避させずに、次の露光対象領域13の露光を開始することが可能となる。このため、処理時間を短縮することが可能となる。
【0034】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態について説明する。図6は、第4の実施形態に係る露光装置の構成及び動作を示す図である。
【0035】
第4の実施形態では、図6に示すように、基板12から離間した部分ほど互いの間隔が大きくなるようにして各棒材2aが傾斜している。他の構成は第1、第2又は第3の実施形態と同様である。
【0036】
このような第4の実施形態では、図6に示すように、基板12の表面に垂直な方向からだけでなく、この方向から傾斜した方向からの露光光の照射が容易になる。つまり、露光光の斜め入射を容易に行うことが可能となる。
【0037】
なお、これらの実施形態では、押圧部材2に4本の棒材2aが含まれているが、平面は一直線上にない3点で決定されるため、3本の棒材2aのみが含まれていてもよい。また、図7(a)に示すように、棒材に代えて、少なくとも露光対象領域を取り囲む枠材2cが含まれていてもよい。更に、基板12に直接当接する棒材2aに代えて、図7(b)に示すように、基板12の表面にガス2eを吹き付けて基板12を押圧するノズル2dが設けられていてもよい。この場合、基板12が非接触で押圧されることになる。
【0038】
また、露光光を照射する際の基板の平坦度が基準平坦度と一致している必要はなく、基板が基準平坦度よりも平坦に近ければ、良好な露光が行われる。その一方で、基板の平坦度が高すぎると、基板の構成によっては内部に含まれる配線又はチップ等に過剰な応力が作用することもあり得る。このため、基板の構成に応じて平坦度の上限(平坦に近い側の限界)を設けておき、基板の平坦度が、基準平坦度以上、上限以下の範囲内にある状態で露光を行うことが好ましい。
【符号の説明】
【0039】
1:光源
2:押圧部材
2a:棒材
2b:ベアリング
2c:枠材
2d:ノズル
2e:ガス
3:ステージ
4:センサ
5:制御部
11:フォトマスク
12:基板
13:露光対象領域
14:目印
15:カメラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステージ上に載置された基板に光を照射する光源と、
前記光源側から前記基板を前記ステージに押圧する押圧手段と、
前記基板の前記押圧手段により押圧されている領域の平坦度を測定する測定手段と、
前記測定手段により測定された平坦度に応じて前記押圧手段が前記基板を押圧する力を制御する制御手段と、
を有することを特徴とする露光装置。
【請求項2】
前記制御手段は、予め設定された基準平坦度と前記平坦度とを比較しながら前記力を制御することを特徴とする請求項1に記載の露光装置。
【請求項3】
前記基準平坦度は、前記光の波長、前記基板に転写されるパターンのサイズ、及び開口数から求められることを特徴とする請求項2に記載の露光装置。
【請求項4】
前記押圧手段は、前記基板の表面に平行な方向に可動な棒材を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の露光装置。
【請求項5】
前記棒材は、前記基板から離間するほど、前記基板の前記光が照射される領域から離間するように傾斜していることを特徴とする請求項4に記載の露光装置。
【請求項6】
ステージ上に載置された基板を光源側から前記ステージに押圧する工程と、
前記基板の押圧されている領域の平坦度を測定する工程と、
前記平坦度に応じて前記基板を押圧する力を制御する工程と、
前記平坦度が所定の範囲内にある状態で前記基板に光を照射する工程と、
を有することを特徴とする露光方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−38814(P2012−38814A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−175592(P2010−175592)
【出願日】平成22年8月4日(2010.8.4)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】