説明

露光装置

【課題】計測ステーションにおける非稼働時間の発生を防止して露光精度を高める露光装置を提供する。
【解決手段】露光装置100は、基板Pに対してアライメント計測およびフォーカス計測を行う計測ステーション110と、計測ステーション110で計測された基板Pの各ショット領域を走査露光する露光ステーション120と、計測ステーション110での計測結果に基づいて露光ステーション120での露光動作を制御する主制御部141と、を有する。主制御部141は、計測ステーション110でのフォーカス計測の結果に基づいて、露光ステーション120での露光における基板Pの走査速度を各ショット領域に対して決定し、各ショット領域に対して決定された走査速度に基づいて、露光ステーション120での基板Pの露光に要する時間を求め、求められた時間に応じて、計測ステーション110で計測されるべきショット領域の数を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、走査型露光装置において、露光前に基板の表面位置(高さ及び傾き)を計測し、その計測結果に基づいて走査速度を調節する方法を提案している。
【0003】
また、特許文献2は、計測ステーションと露光ステーションと2つの基板ステージとを含む露光装置(「ツインステージ型露光装置」とも呼ばれる)を提案している。計測ステーションは露光前に基板の表面の位置及びアライメントマークの位置を計測し、その計測結果に基づいて露光ステーションは計測済の基板を走査露光する。露光ステーションが基板を露光している間、計測ステーションは次に露光ステーションで露光される基板を計測する。
【0004】
基板には、通常、それぞれに原板のパターンが露光される複数の露光領域(以下、「ショット」と呼ぶ)が形成されており、基板の外周部に隣接したショットは周辺ショットとも呼ばれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−223157号公報
【特許文献2】特開2008−258381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
走査露光においては、周辺ショットの走査速度をそれよりも内側のショットの走査速度よりも小さくすると共に原板を照明する照度も同程度小さくすることが必要な場合がある。このような場合とは、例えば、製造プロセスにおいて基板の周辺が変形している場合や液浸露光において液膜の千切れ(分離)を防止する場合である。照度の切り替えは、通常、照明光学系で行われるが、これには時間がかかる。このため、これがツインステージ型露光装置の場合、露光ステーションの露光時間が延長される結果、延長時間分だけ計測ステーションにおいて非稼働時間が発生することになる。
【0007】
本発明は、例えば、計測ステーションにおいて発生し得る非稼働時間を低減して計測精度の点で有利な露光装置に関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面としての露光装置は、基板に対してアライメント計測およびフォーカス計測を行う計測ステーションと、前記計測ステーションで計測された前記基板の各ショット領域を走査露光する露光ステーションと、前記計測ステーションでの計測結果に基づいて前記露光ステーションでの露光動作を制御する制御部と、を有し、前記制御部は、前記計測ステーションでのフォーカス計測の結果に基づいて、前記露光ステーションでの露光における前記基板の走査速度を前記各ショット領域に対して決定し、前記各ショット領域に対して決定された前記走査速度に基づいて、前記露光ステーションでの前記基板の露光に要する時間を求め、求められた前記時間に応じて、前記計測ステーションで計測されるべきショット領域の数を決定する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、例えば、計測ステーションにおいて発生し得る非稼働時間を低減して計測精度の点で有利な露光装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施例の露光装置のブロック図である。
【図2】図1に示す基板の初期状態のショット配列を示す平面図である。
【図3】サンプルショットが増加された基板のショット配列を示す平面図である。
【図4】図1に示す露光装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【図5】図4に示すS208の動作を説明するためのグラフである。
【図6】基板に形成されたショット配列の例を示す平面図である。
【図7】図6に示す基板の変形の例を示すグラフである。
【図8】図7に示す変形を微分したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本実施例の露光装置100のブロック図である。露光装置100は、計測ステーション110と、露光ステーション120と、制御系140と、不図示の搬送部と、を有するツインステージ型露光装置である。
【0012】
図1において、計測ステーション110には基板P1が搭載され、露光ステーション120には基板P0が搭載されている。基板P1は、次に露光ステーション120で露光される基板であり、基板P0は直前に計測ステーション110で計測された計測済の基板である。基板P1の次に計測ステーション110に搭載される基板を基板P2とする。なお、参照符号Pは、基板P1とP0を総括する。
【0013】
計測ステーション110が基板P1を計測している間に露光ステーション120が基板P0を露光する。初期状態では、計測ステーション110が基板P1を計測する計測時間と露光ステーション120が基板P0を露光する露光時間はほぼ等しく設定される。このため、何らかの理由で露光ステーション120による露光時間が延長されれば延長された時間だけ計測ステーション110において非稼働時間が発生することになる。
【0014】
計測ステーション110は、基板P1のアライメント情報とフォーカス情報を取得し、アライメント検出系112、フォーカス検出系114、第1基板ステージ116を有する。アライメント情報は、後述する原板パターンと基板Pの各ショットとを位置合わせするのに必要な情報である。フォーカス情報は、基板Pの表面位置(高さ及び傾き)に関する情報であり、基板Pの表面を後述する投影光学系の最良結像面に合わせこむのに必要な情報である。
【0015】
アライメント検出系112は、基板ステージ116に搭載された基板P1の上方に設けられ、基板P1上の複数のアライメントマーク(位置合わせマーク)を検出し、その検出結果を制御系140のアライメント制御部142に供給する。より詳細には、アライメント検出系112は、基板上の複数の露光領域の中の一部の露光領域の、原板とのアライメント(位置合わせ)に使用されるアライメントマークを計測する。図1において、Z軸方向は、アライメント検出系112の光軸方向に平行な方向である。
【0016】
基板Pは、別の実施例では液晶基板であり、被露光体を代表する。基板Pの表面にはフォトレジストが塗布されている。基板上には、原板パターンがそれぞれ露光される複数の露光領域であるショットがマトリックス状に形成されている。
【0017】
図2は、基板Pの平面図であり、基板上のショット配列を示している。基板Pには複数のショットVが形成され、隣接するショット間又は周辺ショットの周りには、原板Mと基板Pの各ショットVとのアライメントに使用される不図示のアライメントマークが形成されている。アライメントマークは、本実施例では、X方向及びY方向に延びる一対のパターンである。
【0018】
また、本実施例の計測ステーション110はグローバルアライメント方式によりアライメントマークを計測する。即ち、図2に示すように、ショットVの中から選択された一部のショット(ハッチングされたサンプルショット)V1に対応するアライメントマークのみを基板ステージ116を駆動しつつアライメント検出系112で検出する。
【0019】
アライメント検出系112は、オフアクシス(OA)スコープを利用して基板P1のサンプルショットV1のアライメントマークを検出する。OAスコープの光軸はZ軸方向に平行である。OAスコープは、内部に、アライメントマークの表面と共役に配置された不図示のインデックスマークを有する位置検出装置である。不図示の干渉計の測定結果及びOAスコープによるアライメントマークの計測結果から、基板P1上に形成されたショット配列情報を算出することができる。
【0020】
フォーカス検出系114は、投光系及び受光系を含み、基板ステージ116に搭載された基板P1の上方に設けられ、基板P1の表面位置(高さ及び傾き)を検出し、その検出結果を制御系140のフォーカス制御部143に供給する。具体的には、フォーカス検出系114は、基板P1の表面にスリットパターンを経た光を斜入射で照射し、基板P1の表面で反射したスリットパターンをCCDなどの撮像素子で撮影する。後述するフォーカス制御部143は、撮像素子で得られたスリット像の位置から基板P1の表面のフォーカス位置を測定する。このように、フォーカス検出系114は、基板Pの露光コマンド前に基板Pの表面位置を検出する点で露光コマンド後に基板Pの表面位置を検出する従来の先読みフォーカス系とは相違する。
【0021】
基板ステージ116は、基板P1を支持して、基板P1をXYZ軸方向及び各軸の回転方向に駆動することができる。
【0022】
露光ステーション120は、マスク又はレチクルなどの原板Mのパターンをウエハや液晶基板などの基板Pにステップアンドスキャン方式で露光する走査型露光装置である。露光ステーション120は、光源121、照明光学系122、原板ステージ126、投影光学系128、基板ステージ130を有する。図1において、Z軸方向は、投影光学系128の光軸方向に平行な方向であり、Y軸方向は走査方向である。X軸方向は光軸方向及び走査方向の双方に直交する方向である。
【0023】
光源121は、原板Mを照明する光束又は露光に使用される光束(露光光)を射出し、レーザーや水銀ランプを使用することができる。
【0024】
照明光学系122は、原板を光源からの光束により均一に照明する機能を有する。本実施例の照明光学系122は、光量を調節する(又は減光する)NDフィルタ123と、NDフィルタ123を搭載してこれを光路上に挿入したり光路から退避させたりする切り替え手段(例えば、ターレット)124を有する。
【0025】
原板Rは、基板Pに転写されるパターン又は像を有し、原板ステージ126に保持される。原板ステージ126は原板Rを露光スリットに対して走査方向(Y軸方向)に駆動することができる。本実施例では、原板ステージ126は、原板RをXYZ軸方向及び各軸の回転方向に駆動することができる。
【0026】
投影光学系128は、原板Rのパターンの像を基板P0に投影し、原板Rと基板Pとを光学的に共役の関係に維持する。投影光学系128の基板に最も近い光学素子(最終面)と基板との間隙に空気よりも屈折率の高い液体を充填していわゆる液浸露光装置を構成してもよい。
【0027】
基板ステージ130は、基板P0を支持して、基板P0をXYZ軸方向及び各軸の回転方向に駆動することができる。
【0028】
制御系140は、主制御部141と、アライメント制御部142と、フォーカス制御部143と、駆動制御部144、146及び147と、記憶部145と、を有する。
【0029】
主制御部141は、計測ステーション110の計測結果に基づいて露光ステーション120による露光動作を制御する。また、主制御部141の動作の詳細については後述する。
【0030】
アライメント制御部142は、アライメント検出系112にサンプルショットV1のアライメント計測をさせ、アライメント検出系112から計測結果(アライメント情報)を取得し、それを記憶部145に格納する。アライメント制御部142は主制御部141によって制御される。
【0031】
フォーカス制御部143は、フォーカス検出系114にフォーカス検出を行わせ、フォーカス検出系114から計測結果(フォーカス情報)を取得し、それを記憶部145に格納する。
【0032】
駆動制御部144は、主制御部141の制御の下で、基板ステージ116を駆動する。
【0033】
記憶部145は、基板Pの処理条件を定義するレシピによって露光装置100の計測動作や露光動作を一元的に制御する。レシピは、初期設定された基板Pの走査露光時の走査速度(以下、「通常の走査速度」という。)を規定している。また、記憶部145は、計測ステーション110による計測結果も格納する。
【0034】
駆動制御部146は、主制御部141の制御の下で、原板ステージ126を駆動する。駆動制御部147は、主制御部141の制御の下で、基板ステージ130を駆動する。駆動制御部146及び147は、通常の走査露光時にはレシピに初期設定された速度で対応するステージを駆動するが、何らかの原因で走査速度を落とす必要があれば、レシピに初期設定された速度よりも小さい速度で対応するステージを駆動する。
【0035】
不図示の搬送部は、計測ステーション110によって計測された基板Pを露光ステーション120に供給し、露光ステーション120で露光された基板Pを露光ステーション120から搬出する。また、計測ステーション110に次の基板を搬入する。
【0036】
以下、露光装置100の動作について説明する。まず、図4を参照して、計測ステーション110における動作について説明する。図4は、主制御部141の動作を説明するためのフローチャートであり、同図において、「S」はステップの略である。
【0037】
まず、主制御部141は、不図示の搬送部を制御して基板P1を、基板P0、P1のロットを収納する不図示のストッカーから、計測ステーション110の基板ステージ116にロードする(S202)。また、これに同期して、主制御部141は、不図示の搬送部を制御して基板P0を計測ステーション110から露光ステーション120の基板ステージ130にロードする。
【0038】
次に、主制御部141は、アライメント制御部142を介して、アライメント検出系112で基板P1上のサンプルショットV1の不図示のアライメントマークを計測する(S204)。アライメント制御部142は、アライメント検出系112から計測結果(アライメント情報)を取得し、それを記憶部145に格納する。
【0039】
次に、主制御部141は、フォーカス制御部143を介して、フォーカス検出系114で基板P1の表面位置の計測(フォーカス計測)を行う(S206)。フォーカス制御部143は、フォーカス検出系114から計測結果を取得し、記憶部145に格納する。
【0040】
次に、主制御部141は、フォーカス検出系114の検出結果に基づいて露光ステーション120における走査速度をショット毎に調節する(S208)。露光ステーション120の走査露光において、基板Pの周辺部において基板Pの変形が大きく基板ステージ130が完全に追従しきれない場合がある。すると、デフォーカスが発生し、フォーカス精度が低下する。このため、主制御部141は、レシピに初期設定された通常の走査速度(第1走査速度)よりも走査速度を落とす(即ち、第1走査速度をそれよりも小さい第2走査速度に変更する)。これにより、露光ステーション120におけるデフォーカスを軽減し、制御偏差の発生を抑えた状態で走査露光を行うことができる。
【0041】
しかし、全ての基板Pの周辺ショットが変形しているわけではなく、基板Pがその製造プロセスによって変形したかどうかは計測ステーション110が実際に計測するまでわからない。このため、S208では、基板Pが基板ステージ130が追従できないほど大きく変形していれば走査速度を遅くするが変形していなければ走査速度を変更しない。基板ステージ130が追従できないほど基板Pが大きく変形している場合において走査速度を遅くする割合は通常の走査速度(第1走査速度)の数%オーダーではなく通常の走査速度の1/2〜1/3程度の大幅な変更となる。そして、この場合には、露光量制御の観点から原板Mを照明する照度(光強度)を照明光学系122内で変更しなければならない。
【0042】
図5は、周辺ショットの高さが低くなっているように変形している場合の基板Pの部分拡大断面図である。図5は、原点は基板Pの中心であり、横軸は基板Pの中心からのY軸方向の距離を表し、縦軸は基板Pの表面位置(高さ)を表している。
【0043】
S208において、主制御部141は基板ステージ130が追従できないほど基板Pが大きく変形しているかどうかを判断する。より具体的には、主制御部141は、図5においては、基板P1の表面位置(高さ)と、基板P1に変形がない場合の理想的な表面位置(高さ)(基準高さH)との差Lの絶対値が許容値よりも大きいかどうかを判断する。許容値は基板ステージ130が追従可能な量に設定されており、許容値よりも大きければ走査速度の調節が必要であり、許容値よりも小さければ差Lは走査速度の調節は不要となる。
【0044】
記憶部145は、差Lが許容値を超えた場合にどの程度の走査速度の調節が必要なのかを示す、差Lと走査速度との関係を示すテーブル、変換式(又は関係式)若しくはグラフを保持している。かかるテーブル、変換式若しくはグラフは実験又はシミュレーションによって事前に取得されている。走査速度を落とす場合には記憶部145のレシピに変更された走査速度を書き込む。主制御部141は、走査速度の制御を駆動制御部146及び147を通じて行う。
【0045】
次に、主制御部141は、フォーカス検出系114の検出結果に基づいて露光ステーション120における全露光時間を取得する(S210)。なお、S210とS212は差Lが許容値よりも小さければ(即ち、S208において走査速度を調節しない場合には)省略してもよい。
【0046】
差Lが許容値を超えている場合に、走査速度を落とすことになるが(S208)、走査速度を落とすと、同じ割合の光量調整(減光)が必要になり、切り替え手段124を切り替えるなど時間のかかる処理が必要になる。このため、S210における露光時間は、通常の走査速度を使用した露光時間よりも延長されることになる。通常の走査速度を使用した露光時間に対しては、ほぼ同じ時間の計測時間で処理可能な最大のサンプルショット数が設定(決定)されている。もし、S210で露光時間が延長され、次の基板の計測時間がそのままであれば計測ステーション110で先に計測が終了して非稼働時間が発生することになる。
【0047】
そこで、主制御部141は、この非稼働時間を低減して計測ステーション110の動作の効率化を図るために、フォーカス検出系114の検出結果に基づいて追加可能な(好ましくは最大の)サンプルショット数を計算する(S212)。追加可能なサンプルショット数は、通常の走査速度を使用した露光時間が延長された時間を、一つのサンプルショットV1を追加した場合に余分にかかる計測時間で除した数に対応する。
【0048】
図3は、予め設定されたサンプルショットV1に対して6つのサンプルショットV2が動的に追加された基板Pの平面図である。なお、図2及び図3に示すサンプルショットの配置は単なる例示である。
【0049】
そして、主制御部141は、基板P1の次に計測ステーション110で計測される基板P2のために、通常のサンプルショットにS212で追加されたサンプルショットを加える(S214)。
【0050】
次に、主制御部141は、不図示の搬送部を制御して基板P0を露光ステーション120からアンロードし、基板P1を計測ステーション110からアンロードする(S216)。
【0051】
続いて、主制御部141は、不図示の搬送部を制御して基板P1を露光ステーション120にロードし、基板P2を不図示のストッカーから計測ステーション110にロードする(S218)。
【0052】
次に、主制御部141は、露光ステーション120にて基板P1の各ショット領域を走査露光し、計測ステーション110にて基板P2を計測する(S220)。ここでは、周辺ショットについては、走査速度を小さくすると共に光量を小さくしている。また、それに対応して、主制御部141は、延長される露光時間の分だけサンプルショット数を増加する。即ち、主制御部141は、通常の走査速度(第1走査速度)に対応するサンプルショット数よりも多いサンプルショットを基板P2に対して計測するように計測ステーション110を制御する。これにより、露光ステーション120が基板P1を露光する露光時間と計測ステーション110が基板P2を計測する時間がほぼ等しくなり、計測ステーション110において無駄な時間が発生することを防止することができる。また、一般に、サンプルショット数が増加するとアライメント精度(又は重ね合わせ精度)が向上する。S204〜S214の間に露光ステーション120は基板P0を露光している。
【0053】
なお、本実施例では、基板P0が基板P1の前に計測されている基板であるとしているが、基板P1が最初の基板であって基板P0が存在しなくてもよい。また、本実施例では、ロット単位で記憶部145に情報を記録すると説明したが、それ以外の単位でも情報を記録してもよい。
【0054】
図6に示すショット番号の表面形状が図7に示すようになっている基板Pを露光する場合を考える。この場合、走査速度の切替(低下)が必要になるのは、傾き(走査方向の座標(y座標)に応じて変化させるべきy軸周りの基板の回転角またはロール角ωy)の大きい部分領域を含んだショットではない。むしろ、当該傾きの変化率(dωy/dy)の大きな箇所を含んだショットである。図7に示すデータをyで微分すると図8に示すようになる。ここに閾値を設け、その閾値を越えたショットを低速での露光が必要と判断する。この図8の例で、走査速度を切り替えて露光が必要になるのはショット0及びショット4である。
【0055】
この場合、ショット0、ショット1、ショット2、ショット3及びショット4の順番で露光を行うとする。すると、ショット0の前で通常の走査速度を低速の走査速度へ切り替え、ショット0とショット1の間で通常の走査速度へ切り替え、ショット3とショット4の間で通常の走査速度を低速の走査速度へ切り替える。この結果、速度切替が三度行われてスループットの低下を招く。スループットの低下を軽減するために、例えば、ショット1、ショット2、ショット3の露光をまず通常の走査速度で露光を行い、その後に走査速度を切り替える。そして、ショット0とショット4を低速の走査速度で露光する。このように走査速度の同一のショットをまとめて露光することにより、走査速度の切替回数を減らしてスループットの低減を軽減することができる。
【0056】
なお、低速の走査速度でも追従しきれないショットは更に走査速度を落として露光を行う。このように幾つかの走査速度を準備しておくことにより、必要に応じて、かつ、できるだけ少ない数の切替回数で全ショットの露光を完了させる。
【0057】
上述の実施例は、計測ステーション110の計測結果から低速の走査速度を行うショットを判別しているが、別の理由で走査速度を切り替えてもよい。例えば、液浸露光装置の場合、基板Pと基板ステージ130では撥水性が異なり、また、基板Pと基板ステージ130の間には溝ができる。そのため、液浸液の液膜が基板Pと基板ステージ130の境界に差し掛かる周辺ショットでは液膜切れが発生するおそれがある。そこで、液膜切れを防止するために周辺ショットで走査速度を落とすことが有効である。
[デバイス製造方法の実施形態]
つぎに、本発明の一実施形態のデバイス(半導体デバイス、液晶表示デバイス等)の製造方法について説明する。
【0058】
半導体デバイスは、ウエハ(半導体基板)に集積回路を作る前工程と、前工程で作られたウエハ上の集積回路チップを製品として完成させる後工程とを経ることにより製造される。前工程は、前述の露光装置を用いて、感光剤が塗布されたウエハを露光する工程と、その工程で露光されたウエハを現像する工程とを含みうる。後工程は、アッセンブリ工程(ダイシング、ボンディング)と、パッケージング工程(封入)とを含みうる。また、液晶表示デバイスは、透明電極を形成する工程を経ることにより製造される。透明電極を形成する工程は、透明導電膜が蒸着されたガラス基板に感光剤を塗布する工程と、前述の露光装置を用いて、感光剤が塗布されたガラス基板を露光する工程と、その工程で露光されたガラス基板を現像する工程とを含みうる。
【0059】
本実施形態のデバイス製造方法は、デバイスの生産性、品質および生産コストの少なくとも一つにおいて従来よりも有利である。
【0060】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形および変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0061】
露光装置は、デバイスを製造する用途に適用することができる。
【符号の説明】
【0062】
100 露光装置
110 計測ステーション
112 アライメント計測系
114 フォーカス検出系
120 露光ステーション
141 主制御部
R 原板
P 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に対してアライメント計測およびフォーカス計測を行う計測ステーションと、
前記計測ステーションで計測された前記基板の各ショット領域を走査露光する露光ステーションと、
前記計測ステーションでの計測結果に基づいて前記露光ステーションでの露光動作を制御する制御部と、
を有し、
前記制御部は、前記計測ステーションでのフォーカス計測の結果に基づいて、前記露光ステーションでの露光における前記基板の走査速度を前記各ショット領域に対して決定し、前記各ショット領域に対して決定された前記走査速度に基づいて、前記露光ステーションでの前記基板の露光に要する時間を求め、求められた前記時間に応じて、前記計測ステーションで計測されるべきショット領域の数を決定する、ことを特徴とする露光装置。
【請求項2】
前記制御部は、決定された前記走査速度の等しい複数のショット領域を続けて露光するように前記露光動作を制御する、ことを特徴とする請求項1に記載の露光装置。
【請求項3】
前記制御部は、走査方向における座標に応じて変化させるべき前記基板のロール角の変化率に基づいて、前記各ショット領域に対する前記走査速度を決定する、ことを特徴とする請求項1に記載の露光装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の露光装置を用いて基板を露光するステップと、
前記ステップで露光された基板を現像するステップと、
を有することを特徴とするデバイス製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−9316(P2011−9316A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−149255(P2009−149255)
【出願日】平成21年6月24日(2009.6.24)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】