説明

非接触形状測定装置

【課題】測定ワーク側に別部品の反射手段を設置する必要がなく且つ微小な測定ワークの内面も測定可能な非接触形状測定装置を提供する。
【解決手段】X軸と平行なレーザー光Lをプローブ8よりクランク状に折り曲げるため、レーザー光Lを折り曲げるための別部品を必要とせず、プローブ8をそのまま測定ワーク1の内面の内部に挿入するだけで、測定ワーク1の内面形状が測定可能となる。プローブ8を小さくすれば微小な測定ワークの内面も測定可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触形状測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レーザオートフォーカスを用いたレーザプローブ式の非接触形状測定装置は精密部品の形状や粗さを広範囲にわたりナノレベルの分解能で計測できることが知られている。すなわち、三次元直交座標軸XYZとして、測定対象である測定ワークの上面に対し、レーザー光によるオートフォーカスをかけながら、測定ワークをXY方向に走査し、オートフォーカス光学系の対物レンズの移動量から測定ワークの表面形状に関する測定データを取得する構造である。また、最近では、レーザー光を水平方向に反射する反射手段を測定ワーク側に設置しておいて、反射手段で反射しながら測定ワークの内面に対してオートフォーカスをかけながら内面形状を測定する技術も知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−268122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来の技術にあっては、測定ワークの内面形状を測定するために別部品としての反射手段を測定ワーク側に設置する構造のため、測定のための構造が複雑になると共に、微小サイズのものは測定できないという課題があった。
【0005】
本発明は、このような従来の技術に着目してなされたものであり、測定ワーク側に別部品の反射手段を設置する必要がなく且つ微小な測定ワークの内面も測定可能な非接触形状測定装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、三次元直交座標軸XYZ(Z軸が鉛直方向)が規定され、X軸と平行な2本の往復レーザー光をクランク状に反射する第1反射手段及び第2反射手段と、第1反射手段と第2反射手段の間に位置する対物レンズ手段とでプローブを形成すると共に、該プローブから取り出されたレーザー光を受光する光位置検出手段と、該光位置検出手段からの位置信号にてレーザー光の焦点を測定ワークの表面に合致せしめるべくプローブ全体をX軸方向で移動させるフォーカス手段とを備えたことを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、プローブの第2反射手段が細いアームの先端に支持され微小形状を有することを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、測定ワークをプローブの第2反射手段で反射されたレーザー光に対して、Z軸から見てY軸方向へ相対的に平行移動させるY軸方向移動手段を設けたことを特徴とする。
【0009】
請求項4記載の発明は、測定ワークをプローブの第2反射手段で反射されたレーザー光に対して、所定の回転中心を中心に水平方向でθ方向へ相対的に回転させるθ方向移動手段を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明によれば、X軸と平行なレーザー光をプローブによりクランク状に折り曲げるため、レーザー光を折り曲げるための別部品を必要とせず、プローブをそのまま測定ワークの内面の内部に挿入するだけで、測定ワークの内面形状が測定可能となる。プローブを小さくすれば微小な測定ワークの内面も測定可能となる。
【0011】
請求項2記載の発明によれば、プローブの第2反射手段が細いアームの先端に支持された微小形状であるため、微小な測定ワークの内面も測定可能となる。
【0012】
請求項3記載の発明によれば、測定ワークをプローブの第2反射手段で反射されたレーザー光に対して、Z軸から見てY軸方向へ相対的に平行移動させるY軸方向移動手段が設けられているため、Y軸方向に走査した二次元形状を測定することができる。
【0013】
請求項4記載の発明によれば、測定ワークをプローブの第2反射手段で反射されたレーザー光に対して、θ方向へ相対的に回転させるθ方向移動手段が設けられているため、θ方向に走査した二次元形状を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る非接触形状測定装置の外観図。
【図2】非接触形状測定装置の構造図。
【図3】プローブの斜視図。
【図4】プローブの平面図。
【図5】プローブの側面図。
【図6】プローブの断面図。
【図7】プローブの第2反射手段を示す拡大図。
【図8】測定ワークをプローブに対してY軸へ相対的に走査している状態を示す図。
【図9】測定ワークをプローブに対してθ方向へ相対的に回転させている状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1〜図9は、本発明の好適な実施形態を示す図である。まず、図1に基づいて全体構造を説明する。図1において、XYは水平面上で直交する二方向を示し、Zは鉛直方向を示している。
【0016】
測定対象である測定ワーク1は、小さなインターナルギアであり、内面には微小な内歯2が形成されている。この測定ワーク1は、非接触形状測定装置に設けられた回転ステージ3の上に載置されている。回転ステージ3はθ方向に回転自在に支持されている。またこの回転ステージ3は、Y軸方向にスライド自在なY軸ステージ4の上に組み付けられている。Y軸ステージ4は、X軸方向へスライド自在なX軸ステージ5の上に組み付けられている。従って、回転ステージ3に取付けられた測定ワーク1は、θ方向に回転自在で、且つY軸及びX軸方向にスライド自在である。
【0017】
また非接触形状測定装置には、X軸に移動自在なプローブ支持部6が設けられている。プローブ支持部6自体は上下に移動することができる。プローブ支持部6にはアリ溝構造7によりプローブ8が取付けられている(図4参照)。
【0018】
プローブ8は内部に第1ミラー(第1反射手段)9が45°の角度で配置され、その下に対物レンズ(対物レンズ手段)10が設けられている。対物レンズ10の横には細いアーム11が取付けられている。このアーム11の下端は対物レンズ10の光軸位置まで回り込んでおり、その先端に45°の反射面を有する三角形状の第2ミラー(第2反射手段)12が固定されている。
【0019】
次に、オートフォーカス光学系の構造を説明する。測定光としての半導体レーザーであるレーザー光Lは、レーザー光照射手段13から照射される。レーザー光照射手段13からのレーザー光Lは拡がりの小さい細いビームで、2枚のハーフミラー14、15を介して反射され、X軸と平行になってプローブ支持部6へ導かれる。
【0020】
そして、プローブ支持部6からプローブ8の内部へ導入され、第1ミラー9で下向きに反射される。第1ミラー9で下向きに反射されたレーザー光Lは対物レンズ10の非中心部を透過する。対物レンズ10を透過したレーザー光Lは第2ミラー12にてX軸方向へ反射される。このようにプローブ8内に導入されたレーザー光Lは第1ミラー9及び第2ミラー12によりクランク状に折り曲げられる。最終的に第2ミラー12で反射されたレーザー光Lが、いわゆるレーザプローブであり、このレーザー光Lが測定ワーク1の内歯2に当たる。レーザプローブは対物レンズ等の光学要素の光軸からオフセットした位置を通るため、光軸に対して所定の角度をもって内歯2に入射する。
【0021】
測定ワーク1の内歯2に当たって乱反射されたレーザー光Lの一部の成分は、再度第2ミラー12で反射されて対物レンズ10に入光し、対物レンズ10を再透過して、第1ミラー9からプローブ8の外に出てX軸と平行になる。
【0022】
プローブ8の外に出たレーザー光Lは、ハーフミラー15を透過した後、別のハーフミラー17にて反射され、更に別の結像レンズ24を経て、光位置検出装置18に至る。
【0023】
レーザー光Lの焦点Fが測定ワーク1の内面の表面に合致した時に、レーザー光Lは光位置検出装置18のセンターSと合致するようになっており、レーザー光LがセンターSからずれた場合には、そのずれを是正するフィードバックが作用するため、サーボ式のフォーカス手段19によりプローブ8をフォーカス方向(X軸方向)に移動させる。従って、プローブ8の移動量から、測定ワーク1の内歯2のX軸方向での高さ寸法(凹凸寸法)を測定することができる。
【0024】
ハーフミラー17には光源20から照明光Pが照射される。照明光Pはレーザー光Lの光路に沿って測定ワーク1に至り、そこで反射された後、第1ミラー9、第2ミラー12、ハーフミラー15で反射され、その後、ハーフミラー14及び結像レンズ21を介してCCDカメラ22により撮影することができる。CCDカメラ22で撮影された画像はモニター23に表示することができる。
【0025】
測定ワーク1は、回転ステージ3及びX軸ステージ5を介してY軸ステージ4上に載置されているため、プローブ8のアーム11の下端の第2ミラー12を測定ワーク1の内部に上から挿入した状態にしておき、そして前述のように測定ワーク1の内歯2にレーザー光Lによるオートフォーカスをかけたまま、測定ワーク1を回転ステージ3及びX軸ステージ5ごとY軸方向へ平行移動させることにより、レーザー光Lを測定ワーク1の内部サイズの範囲内でY軸方向へ走査することができる(図8参照)。従って、測定ワーク1のY軸方向における内歯2の二次元形状を得ることができる。
【0026】
また、回転ステージ3により測定ワーク1をθ方向に回転させれば、測定ワーク1のθ方向における内歯2の二次元形状を測定することもできる。このθ方向での測定を上下位置を変えて繰り返し行うことにより、内歯2の内面の三次元形状も測定することができる。
【0027】
この実施形態によれば、以上説明したように、X軸と平行なレーザー光Lをプローブ8においてクランク状に折り曲げるため、折り曲げられたレーザー光Lの光路を一体として3次元方向に平行移動することができる。また、プローブ外部にレーザー光Lを折り曲げるための別部品を必要とせず、プローブ8をそのまま測定ワーク1の内部に挿入するだけで、測定ワーク1の内面形状が測定可能となる。さらに、第2ミラー12が対物レンズ10に位置固定されているので、レーザー光Lの反射位置もシフトしないため、第2ミラー12を小型化してアーム11の下端に配置することが可能となる。
【0028】
以上の説明では、Y軸方向の走査と、θ方向の回転による測定を例にしたが、両方を組み合わせて複雑な内面形状を測定しても良い。尚、本発明は内面(内径)形状の測定を測定を可能にするものであるが、外面の測定にももちろん使用可能である。
【符号の説明】
【0029】
1 測定ワーク
8 プローブ
9 第1ミラー(第1反射手段)
10 対物レンズ(対物レンズ手段)
12 第2ミラー(第2反射手段)
L レーザー光
F 焦点
P 照明光
S センター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元直交座標軸XYZ(Z軸が鉛直方向)が規定され、X軸と平行な2本の往復レーザー光をクランク状に反射する第1反射手段及び第2反射手段と、第1反射手段と第2反射手段の間に位置する対物レンズ手段とでプローブを形成すると共に、
該プローブから取り出されたレーザー光を受光する光位置検出手段と、
該光位置検出手段からの位置信号にてレーザー光の焦点を測定ワークの表面に合致せしめるべくプローブ全体をX軸方向で移動させるフォーカス手段とを備えたことを特徴とする非接触形状測定装置。
【請求項2】
プローブの第2反射手段が細いアームの先端に支持され微小形状を有することを特徴とする請求項1記載の非接触形状測定装置。
【請求項3】
測定ワークをプローブの第2反射手段で反射されたレーザー光に対して、Z軸から見てY軸方向へ相対的に平行移動させるY軸方向移動手段を設けたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の非接触形状測定装置。
【請求項4】
測定ワークをプローブの第2反射手段で反射されたレーザー光に対して、所定の回転中心を中心に水平方向でθ方向へ相対的に回転させるθ方向移動手段を設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の非接触形状測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−2573(P2012−2573A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−135985(P2010−135985)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【出願人】(390013033)三鷹光器株式会社 (114)
【Fターム(参考)】