説明

非球面形状測定装置

【課題】被測定面の非球面形状を高精度に測定する際に、被測定物を保持するサンプルステージと干渉光学系の照射先端部との衝突による干渉光学系の照射先端部の破損を防止した構造を有する測定装置を提供する。
【解決手段】被測定物10を保持する被測定物保持機構Aと、測定光を照射して光干渉測定を行う干渉光学系2を有する干渉光学機構Bとは、それぞれ相対的に移動可能に設置されてなり、被測定物保持機構Aにおける被測定物10を先端に保持するサンプルステージ6に干渉光学系2の照射先端部2aと衝突した際に衝撃を吸収する低強度部64を設けて干渉光学系2の破損を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定物の非球面形状を有する被測定面(被検面)に測定光を照射し、被測定面からの戻り光と参照光との干渉により得られる干渉縞に基づき被測定面の形状を測定する非球面形状測定装置に関し、とくに被測定物を保持するサンプルステージの構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、非球面形状の被測定面に球面波を照射して被測定面からの戻り光と参照光との干渉により形成される干渉縞に基づき、被測定面の局所的な形状を特定する手法が知られているが、このような手法により被測定面全域に対応した干渉縞を得ることは難しい。
【0003】
そこで、干渉計または被測定面を測定光軸方向に順次移動させることにより、被測定面の径方向の部分領域毎に対応した干渉縞が順次生じるようにし、その各干渉縞を解析して被測定面の径方向の各部分領域の形状を求め、それらを繋ぎ合わせることにより被測定面全域の形状を特定する手法が知られている(下記特許文献1参照)。
【0004】
一方、干渉計または被測定面を測定光軸と垂直な面内において順次移動させ、移動毎に被測定面の各部分領域に対応した干渉縞を縞解析可能な程度に拡大して撮像し、その各干渉縞を解析して被測定面の各部分領域の形状を求め、それらを繋ぎ合わせることにより被測定面全域の形状を特定する手法も知られている(下記特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭62−126305号公報
【特許文献2】米国特許第6,956,657号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、非球面レンズの形状が複雑化しており、例えば、1つのレンズ面(被測定面)において、レンズ面の中心軸を中心に、凹形状となっている部分(凹面部)と凸形状となっている部分(凸面部)とを併せ持つような非球面形状のものが利用されるようになっている。このような凹面部と凸面部を有する被測定面の形状を光干渉測定により測定することは困難であるとされ、これまでは、光触針を用いた三次元形状測定により形状測定が行われていた。
【0007】
すなわち、一般的な光干渉測定法では、被測定面に照射された測定光が被測定面から再帰反射される(戻り光が元の光路を逆進する)領域のみで適正な干渉縞が得られるが、被測定面に照射される測定光が、測定光軸に沿って発散しながら進行する球面波か、測定光軸に沿って収束しながら進行する球面波のいずれかに固定されている上記特許文献1、2記載の手法では、被測定面からの戻り光の進行方向が凹面部と凸面部とで全く異なるため、凹面部と凸面部の両方の領域で共に適正な干渉縞を得ることができないのである。
【0008】
上記のような点から、本発明の発明者らは、例えば、上記のような凹面部と凸面部を有する非球面形状の測定においても、被測定物と干渉光学系とを相対的に3軸方向に移動可能であるとともに、被測定物をその中心軸の回りに回転させつつ光干渉測定を行い、さらに順次被測定物の中心軸と干渉光学系の測定光軸とのなす角度を変更しつつ同様に被測定物をその中心軸を中心として回転させつつ光干渉測定を行うことを繰り返し、その各干渉縞を解析して被測定面の各部分領域の形状を求め、それらを繋ぎ合わせることにより被測定面全域の形状を特定する手法が有効であることを研究結果として得ている。
【0009】
その際に、上記のような被測定物を保持して非球面形状の中心軸の回りに回転させる被測定物の保持機構と、干渉光学系を保持してその測定光軸の方向を移動させる機構とを、それぞれ移動させて被測定面と干渉光学系との関係を所定の相対姿勢とする測定装置を設置した場合に、被測定物を保持するサンプルステージの移動軌跡と、干渉光学系の照射先端部の移動軌跡とが交差することから、測定のために被測定物をサンプルステージにセットする際もしくは測定後の被測定物を取り外すためにサンプルステージを移動させているときに、または、両者の相対姿勢を所定の状態に調整しているときなどにおいて、上記サンプルステージと干渉光学系の照射先端部とが衝突して破損が発生する恐れがある。
【0010】
とくに、干渉光学系の照射先端部には対物レンズもしくは干渉のための参照光を得る基準板等の高価な光学素子が配設されており、これらの光学素子に衝突の影響による破損等が生起すると、部品が高価であるとともに、高い測定精度を確保するために高い部品精度および取付精度が要求されるために、その修理に多くの時間と費用がかかり、測定効率の点でも問題が生じる。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、被測定面の非球面形状を高精度に測定する際に、被測定物を保持するサンプルステージと干渉光学系の照射先端部との衝突による干渉光学系の照射先端部の破損を防止するようにした非球面形状測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の非球面形状測定装置は以下のように構成されている。
【0013】
すなわち、本発明に係る非球面形状測定装置は、非球面形状の被測定面を有する被測定物を保持する被測定物保持機構と、前記被測定物の被測定面に測定光を照射し該被測定面からの戻り光と参照光との干渉による干渉縞を取得する光干渉測定を行う干渉光学系を有する干渉光学機構とを備え、前記干渉縞に基づき前記被測定面の形状を測定する非球面形状測定装置であって、
前記被測定物保持機構および前記干渉光学機構は、それぞれ相対的に移動可能に設置されてなり、
前記被測定物保持機構は、前記被測定物を先端に保持するサンプルステージを備え、該サンプルステージに前記干渉光学系の照射先端部と衝突した際に衝撃を吸収する低強度部が設けられたことを特徴とする。
【0014】
また、本発明における前記低強度部は、切欠き構造で構成することが可能である。
【0015】
前記サンプルステージは、前記被測定物とともに該被測定物の被測定面軸の回りに回転可能である回転ステージ部と、該回転ステージ部を回転中心位置が変更可能に保持する調整部とを備え、前記回転ステージ部が被測定物回転機構により回転駆動されるように構成してなり、前記回転ステージ部に前記低強度部を設置するのが好適である。
【0016】
また、本発明における前記被測定物保持機構は、前記被測定物を被測定面軸を中心として回転させる被測定物回転機構と、該被測定物回転機構を搭載し前記被測定面軸と直交方向または平行方向に直線移動させる第1スライド機構とを備え、
前記干渉光学機構は、前記干渉光学系を保持し該干渉光学系をその測定光軸と前記被測定面軸とのなす測定角度を変更可能に旋回させる光学系旋回機構と、該光学系旋回機構を搭載し前記第1スライド機構の移動方向と直交方向に直線移動させる第2スライド機構とを備えることが好ましい。
【0017】
前記第1スライド機構および前記第2スライド機構をエアスライドで構成するのが好適である。
【0018】
前記被測定物回転機構および前記光学系旋回機構をエアスピンドルで構成するのが好適である。
【0019】
なお、上記「被測定面軸」とは被測定物の被測定面における非球面形状の中心軸をいうものとする。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る非球面形状測定装置は、上述の構成を備えていることにより、以下のような作用効果を奏する。
【0021】
すなわち、本発明の非球面形状測定装置においては、非球面形状の被測定面を有する被測定物を保持する被測定物保持機構と、被測定物の被測定面に測定光を照射し該被測定面からの戻り光と参照光との干渉による干渉縞を取得する光干渉測定を行う干渉光学系を有する干渉光学機構とを、それぞれ相対的に移動可能に設置してなり、上記被測定物保持機構における被測定物を先端に保持するサンプルステージに上記干渉光学系の照射先端部と衝突した際に衝撃を吸収する低強度部を設けたことにより、測定のために被測定物をサンプルステージにセットする際もしくは測定後の被測定物を取り外すためにサンプルステージを移動させているときに、または、両者の相対姿勢を所定の状態に調整しているときなどにおいて、上記サンプルステージと干渉光学系の照射先端部とが衝突した際には、上記被測定物を保持したサンプルステージの低強度部が変形または折損することなどにより衝撃を吸収し、干渉光学系の照射先端部が破損するなどのダメージを受けることが防止できる。したがって、干渉光学系の照射先端部に配設された対物レンズおよび基準板等の高価な光学素子に衝突の影響による破損等が生起することなく、修理に多くの時間と費用がかかることを未然に防止することができる。
【0022】
また、上記低強度部を切欠き構造で構成すると、簡単な構造で低強度部が形成でき、衝突により変形したサンプルステージは、部品交換により短期間で修復でき、早期に測定を再開することが可能である。
【0023】
また、本発明におけるサンプルステージを、被測定物とともに被測定面軸の回りに回転可能である回転ステージ部と、該回転ステージ部を回転中心位置が変更可能に保持する調整部とを備え、回転ステージ部が被測定物回転機構により回転駆動されるように構成してなり、前記回転ステージ部に低強度部を設置すると、被測定物を所定の特性で回転作動および移動が行え、測定機能および測定精度を確保しつつ上記低強度部による干渉光学系の照射先端部の破損防止を図ることができる。
【0024】
また、保持した被測定物を被測定面軸を中心として回転させる被測定物回転機構および該被測定物回転機構を搭載し被測定面軸と直交方向または平行方向に直線移動させる第1スライド機構を備える被測定物保持機構と、被測定面に測定光を照射して光干渉測定を行う干渉光学系を保持し該干渉光学系をその測定光軸と被測定面軸とのなす測定角度を変更可能に旋回させる光学系旋回機構および該光学系旋回機構を搭載し第1スライド機構の移動方向と直交方向に直線移動させる第2スライド機構を備える干渉光学機構とを備えるように構成すると、2軸方向に設けた第1スライド機構と第2スライド機構を別途に作動させて、それぞれの移動負荷を軽減することで移動精度を確保して測定精度を高めることができるとともに、両スライド機構を別々に配置したことで一体に構成した場合に比べて構成のコンパクト化が図れ、また、一体化構造において必要とされる周辺部材の高剛性化による精度向上を不要にし、低剛性構造で十分な測定精度を確保でき、しかも、2軸方向の回転動作を被測定物回転機構と光学系旋回機構とに分離して別途に作動させて、それぞれの移動負荷を軽減することで移動精度を確保して測定精度を高めることができ、微小非球面レンズ等の形状測定を高精度に実現できる。
【0025】
また、上記第1スライド機構および第2スライド機構をエアスライドで構成すると、気体を潤滑膜とすることで使用に伴う摩耗が発生せず、被測定物および干渉光学系の移動精度すなわち測定精度を長期間にわたって良好に維持することができる。
【0026】
同様に、上記被測定物回転機構および光学系旋回機構をエアスピンドルで構成すると、使用に伴う摩耗が発生せず、被測定物の回転精度および測定角度の変更精度すなわち測定精度を長期間にわたって良好に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態に係る非球面形状測定装置における被測定物保持機構と干渉光学機構との先端衝突状態を示す要部平面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る非球面形状測定装置の概略構成を示す斜視図である。
【図3】図2のカバーを省略した概略正面図である。
【図4】図3の定盤を省略した平面図である。
【図5】図4の一例の移動状態を示す平面図である。
【図6】図2の実施形態における光学系および制御系の構成を示す機構図である。
【図7】一例の測定動作を示す動作フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図6の機構図では、図1〜図5に対して各部材の大きさや部材間の距離等を適宜変更して示してあり、詳細な形状や構造を示すものではない。
【0029】
図2〜図6に示す本実施形態の非球面形状測定装置1は、被測定物10(非球面レンズ)が有する回転対称な被測定面10a(図6参照)の非球面形状を測定解析するものであり、被測定面10aに測定光を照射し該被測定面10aからの戻り光を参照光と合成して干渉光を得る干渉光学系2と、得られた干渉光により形成される干渉縞を撮像する第1撮像系3および第2撮像系4と、撮像された干渉縞を解析して被測定面10aの形状を求める測定解析系5(図6参照)と、被測定物10を保持姿勢が手動調整可能であるサンプルステージ6と、を備えてなる。
【0030】
そして、上記サンプルステージ6を含み、保持姿勢が調整された被測定物10を被測定面軸Sの回りに回転させる第1エアスピンドル70(被測定物回転機構)、およびX方向(被測定面軸Sと直交する方向)に直線(スライド)移動させる第1のエアスライド7(第1スライド機構)を備えた被測定物保持機構Aが構成される。また、上記干渉光学系2、第1撮像系3および第2撮像系4を含み、これらを鉛直方向であるZ方向を中心として旋回させる第2エアスピンドル80(光学系旋回機構)、およびY方向(被測定面軸Sと平行方向)に直線(スライド)移動させる第2のエアスライド8(第2スライド機構)を備えた干渉光学機構Bが構成される。
【0031】
<被測定物保持機構A>
上記サンプルステージ6は、図3、図4および図6に示すように、移動ベースとなる基台部60と、該基台部60に取り付けられた調整部61と、該調整部61に回転軸Eと被測定面軸S(図6参照)との位置調整可能に設置され、後述の第1エアスピンドル70(被測定物回転機構)を介して回転可能に保持された回転ステージ部62と、該回転ステージ部62の先端に設置された被測定物ホルダー63とを備え、該被測定物ホルダー63に被測定物10が保持される。
【0032】
そして、上記サンプルステージ6における回転ステージ部62は、例えば、アルミニウム系材料により棒状に形成され、該回転ステージ部62の途中には、図1にも示すように、一部の径が細くなるように切欠き構造に構成された低強度部64が設けられている。この低強度部64は、干渉光学系2の照射先端部2aと衝突した際に折損もしくは変形して衝撃を吸収し、照射先端部2aにダメージが発生するのを阻止する。
【0033】
つまり、図1には、後述の移動機構を有する干渉光学機構Bの作動に応じて、干渉光学系2がその測定光軸Lが所定角度に調整され、図5でY方向に移動された状態で、サンプルステージ6が上方に移動した際に、このサンプルステージ6の回転ステージ部62の先端部が、上記干渉光学系2の照射先端部2aに衝突した状態を示している。この衝突に伴い、回転ステージ部62の先端部に矢印で示される力Fが作用すると、上記切欠き構造により径が細く、曲げ強度が低くなるように設けられた低強度部64が図で下向きに変形し、その変形量が大きくなると折損して衝撃を吸収するものであり、干渉光学系2の照射先端部2a側には変形および破損が生じないように、とくに内部に配置されている光学素子に影響が及ばないようにしている。
【0034】
上記調整部61は、回転ステージ部62すなわち被測定物ホルダー63の回転中心位置がその平面内でX方向およびZ方向に手動で調整可能であるとともに、回転中心の傾きがθX方向θZ方向に手動で調整可能であり、後述の干渉光学系2の測定光軸Lとの初期調整を行うように構成されている。その調整により、初期状態において、被測定物10の被測定面軸Sと調整部61の回転軸Eとが一致するように、さらに、干渉光学系2の測定光軸Lとが一致するように設定してから測定が開始される。
【0035】
また、上記サンプルステージ6に保持された被測定物10は、第1エアスピンドル70(被測定物回転機構)によって測定時に回転作動されるとともに、測定角度を変更する際に第1エアスライド7(第1スライド機構)によってX方向位置が移動操作される。つまり、前記基台部60に第1エアスピンドル70が調整部61と同軸に取り付けられ、その回転駆動力が上記回転ステージ部62に伝達され、保持した被測定物10とともに回転ステージ部62を回転作動させるように設けられている。
【0036】
さらに、上記基台部60が第1エアスライド7の摺動台73に搭載され、該摺動台73が定盤9(防振台)にX方向に敷設されたガイド74に摺動可能に載置されている。この第1エアスライド7は、静圧気体軸受けであり摺動台73に加圧エアが導入され、ガイド74との隙間に気体潤滑膜が生成されて摺動台73がガイド74から浮上し、不図示のモータの駆動によって摺動台73をガイド74に沿って移動操作可能に設けられている。ガイド74の位置は不図示のエンコーダにより検出され、解析制御装置50によってX方向位置が制御される。
【0037】
また、上記第1エアスピンドル70は、図示してないが、ケース内に回転軸が気体潤滑膜を介して回転可能に保持され、その回転軸にはサーボモータが設置されて回転駆動される公知の構造であり、回転位置(回転量)はエンコーダにより検出され、解析制御装置50によって回転位置が制御される。
【0038】
<干渉光学機構B>
干渉光学系2は、図6に示すように、フィゾータイプの光学系配置をなすものであり、高可干渉性の光束を出力する光源部20と、該光源部20からの出力光のビーム径を拡大するビーム径拡大レンズ21と、後述の干渉光を図中上方に向けて反射する光束分岐光学素子22と、該光束分岐光学素子22を透過した光束をコリメートするコリメータレンズ23と、該コリメータレンズ23からの平面波の一部を参照基準平面24aにおいて再帰反射して参照光となし、その余を測定光軸Lに沿って進行する測定光として照射する平面基準板24と、これらの光学素子を収納した鏡筒25とを備えてなる。また、上記平面基準板24は、ピエゾ素子29を備えたフリンジスキャンアダプタ28に保持され、フリンジスキャン計測等を実施する際に測定光軸L方向に微動するように構成されている。
【0039】
上記干渉光学系2の照射先端部2aには、上記のように平面基準板24が設置されるほか、必要に応じて対物レンズなどの光学素子が設置される。
【0040】
なお、図6は説明用に大きさを変更して示しており、とくに測定光として被測定面10aに照射される光束の径は被測定面10aの外径に対して非常に小さく、その照射測定範囲は部分的であり、後述のように被測定面10aは同心円状に複数の輪帯状(径の異なるリング状)に分割された測定領域に設定される。
【0041】
上記第2撮像系4は、主に、被測定面10aが初期姿勢(測定光軸Lと回転軸Eとが互いに一致し、かつ被測定面軸Sが測定光軸Lと平行となる状態の姿勢)をとるときに撮像を行うものであり、上記干渉光学系2の光束分岐光学素子22により図中上方に向けて反射され、第1撮像系3に向けて干渉光を反射するための光束分岐光学素子34を透過した干渉光を集光する結像レンズ40と、エリアCCDやCMOS等からなる2次元イメージセンサ42を有してなる撮像カメラ41と、これらの光学素子を収納した鏡筒45とを備えてなり、結像レンズ40により2次元イメージセンサ42上に形成された干渉縞の画像データを取得するように構成されている。
【0042】
また、上記第1撮像系3は、被測定面10aの回転時に撮像を行うものであり、上記光束分岐光学素子34により反射され図中右方に進行する干渉光を集光する結像レンズ30と、ラインCCDやCMOS等からなる1次元イメージセンサ32を有してなる撮像カメラ31と、これらの光学素子を収納した鏡筒35とを備えてなり、結像レンズ30により1次元イメージセンサ32上に形成された干渉縞の画像データを取得するように構成されている。
【0043】
なお、上記干渉光学系2の鏡筒25は水平方向(測定初期状態でY方向)に配置され、該鏡筒25の上部に第2撮像系4の鏡筒45が縦方向(Z方向)に立設されるとともに、鏡筒25と平行に第1撮像系3の鏡筒35が設置され、各鏡筒25,35,45は相互に固定され、一体的に移動するようになっている。
【0044】
上記干渉光学系2(第1撮像系3および第2撮像系4)は、第2エアスピンドル80(光学系旋回機構)によって測定角度の変更時に旋回作動されるとともに、測定角度を変更する際に第2エアスライド8(第2スライド機構)によってY方向位置が移動操作される。つまり、回転軸がZ方向となるように縦向きに設置された第2エアスピンドル80の上端に、前記干渉光学系2の鏡筒25が搭載されている。そして、該第2エアスピンドル80は保持部81に保持され、その回転駆動力が上記鏡筒25に伝達され、干渉光学系2(第1撮像系3および第2撮像系4)をZ軸を中心として旋回作動(θZ)させるように設けられている。
【0045】
さらに、上記保持部81が第2エアスライド8の基台部82の中間位置(図4参照)に搭載されている。該基台部82の図4で上方の一端は第2エアスライド8の摺動台83に搭載され、該摺動台83は定盤9(防振台)に設置されたY方向(第1エアスライド7の移動方向に直交する方向)に敷設されたガイド84に摺動可能に載置されている。上記基台部82の図4で下方の他端はエアブッシュ86によって摺動台83が水平となるように所定の高さに保持されている。該エアブッシュ86は導入された圧縮空気によって底面が定盤9の上面に対して気体潤滑膜を介して浮上するように構成され、定盤9上を低摩擦状態で摺動する。
【0046】
そして、第2エアスライド8は、上記第1エアスライド7と同様に摺動台83に加圧エアが導入され、ガイド84との隙間に気体潤滑膜が生成されて摺動台83がガイド84から浮上し、不図示のモータの駆動によって摺動台83をガイド84に沿って移動操作可能に設けられている。このガイド84の位置は不図示のエンコーダによって検出され、解析制御装置50によってY方向位置が制御される。
【0047】
また、上記第2エアスピンドル80は、図示してないが、第1エアスピンドル70と同様にケース内に回転軸が気体潤滑膜を介して回転可能に保持され、その回転軸にはサーボモータが設置されて回転駆動される公知の構造であり、回転位置(回転量)はエンコーダによって検出され、解析制御装置50により回転位置が制御される。この第2エアスピンドル80は、干渉光学系2の鏡筒25を保持している部分が基台部82および摺動台83に対して昇降移動可能であり、下方に設置された昇降アクチュエータ87の駆動によって昇降移動され、その昇降位置がエンコーダによって検出され、解析制御装置50によりZ方向位置が制御される。
【0048】
上記被測定物保持機構Aおよび干渉光学機構Bの動作により、上記被測定面10aは、干渉光学系2の測定光軸Lに対する相対姿勢(測定光軸Lに対する傾き角度およびX,Y,Z方向位置)を自在に変更し得るようになっている。
【0049】
上記被測定物保持機構Aおよび干渉光学機構Bは、図2に示すように、定盤9上に設置され、この定盤9は支持脚91上に設置された防振台92に載置され、上部空間はカバー95によって覆われ、測定部分の急激な温度変化および湿度変化に伴う測定精度の低下を防止している。該カバー95には、前扉95aおよび上扉95bが設けられ、被測定物10の交換時等に開いて測定者による作業が行えるようにしている。
【0050】
なお、前記干渉光学機構Bにおける昇降アクチュエータ87は、定盤9より下方に延びて設置されているものであり、この場合には定盤9に昇降アクチュエータ87が移動可能な長孔(不図示)が開口形成され、干渉光学系2のY方向移動を許容するように設けられている。
【0051】
<測定解析系5>
上記測定解析系5は、1次元イメージセンサ32および2次元イメージセンサ42により取得された干渉縞の画像データの信号を受け、その画像データに基づき被測定面10aの形状データおよび被測定面10aの面偏芯量を演算解析するとともに、図7に基づき後述するような測定動作を制御するために、被測定物保持機構Aの第1エアスライド7、第1エアスピンドル70および上記干渉光学機構Bの第2エアスライド8、第2エアスピンドル80、昇降アクチュエータ87に駆動信号a〜f(図6参照)を出力し、その駆動を制御するもので、コンピュータ等からなる解析制御装置50と、該解析制御装置50による解析結果や画像を表示する表示装置51と、キーボードやマウス等からなる入力装置52とを備えてなる。
【0052】
そして、上記被測定物10は、被測定面軸Sを中心とした回転対称な被測定面10aを有しており、該被測定面10aは、上記干渉光学系2側に凹となる凹面部と、凸となる凸面部と、凹面部と凸面部との境界部分に位置する軸外停留点部とを有し、その形状に応じて、被測定面10aの設計データに基づき、該被測定面10a上に、該被測定面10aを径方向に輪帯状(径の異なる同心円リング状)に分割してなる複数の測定領域を設定するものである。
【0053】
上記被測定面10aが初期姿勢をとるときに第2撮像系4の2次元イメージセンサ42により撮像された干渉縞画像に基づき、測定光軸Lと被測定面軸Sとが一致するように調整部61を手動調整するものである。
【0054】
また、解析制御装置50は、測定光軸Lの被測定面10aとの交点位置が、設定された複数の測定領域上に順次移動するように、かつ移動毎に測定光軸Lが交点位置における被測定面10aの接平面と垂直に交わるように、被測定面10aに対する測定光軸Lの相対姿勢を、移動部分が相互に干渉することなく第1エアスライド7、第2エアスライド8、第2エアスピンドル80、昇降アクチュエータ87の駆動を制御する。さらに、上記第1エアスピンドル70の作動により、被測定面10aを回転させつつ第1撮像系3の1次元イメージセンサ32により撮像された各測定領域別干渉縞と、該各干渉縞が撮像されたときの被測定面10aの姿勢および回転角度の各データとに基づき、上記複数の測定領域の各々に対応した各形状情報を求めるとともに、各形状情報を繋ぎ合わせることにより分割した複数の測定領域を互いに合成して被測定面全域の形状情報を求めるものである。
【0055】
次に、本実施形態における非球面形状測定装置1の測定手順について図7に基づいて説明する。
【0056】
まず、電源がオンとされてから、被測定物10をセットするために初期移動操作を行う。ステップS1で左側の第1エアスライド7を動作させて、サンプルステージ6を手前側に測定者(オペレータ)の近傍に、被測定物10のセット作業が行いやすいように摺動台73を移動させるのに続いて、第2エアスライド8を動作させて、干渉光学系2を右側にサンプルステージ6から離れる方向に摺動台83を移動させ、被測定物10をセットする作業に干渉しないように作業スペースを広げる(ステップS2)。
【0057】
その後、カバー95の前扉95aおよび上扉95bを開き、測定者が手作業によって被測定物10を、回転ステージ部62の先端部の被測定物ホルダー63にセットする。具体的には、測定者が被測定物10(非球面形状を有するレンズ等)を保管位置より取り出し、サンプルステージ6の先端における被測定物ホルダー63に運び、被測定物10を所定姿勢に保持させる(ステップS3)。そして、上記カバー95の前扉95aおよび上扉95bを閉じ、カバー95の内部の雰囲気(温度および湿度)が安定するまでの所定時間が経過するのを待ってから、測定を開始する。
【0058】
次に測定準備を行うものであり、ステップS4で第1エアスライド7および第2エアスライド8を動作させて、干渉光学系2と被測定物10の被測定面10aとを正対位置、つまり被測定面軸Sと測定光軸Lとが一致する正対位置に移動させる。つまり、第1エアスライド7の摺動台73を後退動作させて測定初期位置に移動させる一方、第2エアスライド8は摺動台83を前進移動させて干渉光学系2の照射先端部を被測定物10に接近させるとともに、被測定面軸S(回転軸E)と干渉光学系2の測定光軸Lとが一直線上に一致する測定初期状態に移動させる。
【0059】
なお、非球面形状測定装置1の初期設定(設置調整)において、回転ステージ部62の中心位置と被測定物ホルダー63の保持中心位置、つまり被測定物10の被測定面軸Sが一致するように、調整部61の手動調整により、第1エアスピンドル70の回転軸Eに対し、回転ステージ部62の中心位置(X位置およびZ位置)、角度(θX,θZ)等を設定しておく。その際、後述の光干渉測定により被測定物ホルダー63に保持した被測定物10の中心部の干渉光を撮像した2次元イメージセンサ42の画像データ(干渉縞)を用いて被測定面軸Sを求め、上記位置調整を行うことが可能である。
【0060】
さらに、ステップS5において第2エアスピンドル80の回転駆動を行い、干渉光学系2の測定角度(被測定面軸Sと測定光軸Lとのなす角度)を設定角度に調整する。その際、測定角度が0度で正対位置(一直線上)の場合には、この動作は不要である。
【0061】
次に、第1エアスピンドル70の駆動を開始して、被測定物10の回転を開始し、測定可能にする(ステップS6)とともに、光干渉測定を行う(ステップS7)。この測定は、光源部20からの測定光を平面基準板24を透過させて被測定面10aに照射し、反射された戻り光と、平面基準板24の参照基準平面24aからの参照光との干渉により形成される干渉光の画像データつまり干渉縞(反射面の形状情報を担持している)を、1次元イメージセンサ32および2次元イメージセンサ42を用いて撮像し、その画像データを画像処理および形状解析により測定データを算出し、表示装置51に表示し、データ保存する。なお、フリンジスキャン計測を行う場合は、フリンジスキャンアダプタ28を用いて、平面基準板24の測定光軸L方向の位置を適宜変更し、変更毎に測定を行う。
【0062】
この所定の測定角度での光干渉測定が完了すると、ステップS8で第1エアスピンドル70による被測定物10の回転を停止する一方、次の測定のために、ステップS9で第1エアスライド7の摺動台73を移動させて、次の測定角度に応じたX方向位置に被測定物10を移動させる。また、同時に第2エアスピンドル80を作動させて、干渉光学系2の測定光軸Lを所定角度に旋回させる(ステップS10)とともに、第2エアスライド8の摺動台83を移動させて干渉光学系2のY方向位置を変更する。
【0063】
たとえば、図4の正対位置から図5の直交位置まで測定角度を変更する場合には、第2エアスピンドル80の旋回動作に応じて、干渉光学系2の照射先端部2aがX方向は手前側(前進側)に、Y方向は右側(後退側)に移動することに伴い、第1エアスライド7は被測定物10をX方向に前進移動させる一方、第2エアスライド8は干渉光学系2を前進移動させることで、被測定物10と干渉光学系2とが所定の距離および角度の相対姿勢となるように調整する。
【0064】
上記のように測定角度を変更した後、ステップS6に戻って第1エアスピンドル70の回転動作を開始して被測定物10を被測定面軸Sの回りに回転させつつ、変更された測定角度における光干渉測定をステップS7で同様に行う。
【0065】
これらの測定動作を1つの被測定物10で測定が必要な角度分の回数だけ順次繰り返した後、つまり、被測定物10の非球面形状に対応して設定された所定角度毎における測定が終了した際には、ステップS12に移行して被測定物10を初期位置に戻すものであり、第1エアスライド7および第2エアスライド8を作動して、上記ステップS3の被測定物10をセットしたときと同じ位置に移動させ、ステップS13で測定後の被測定物10を被測定物ホルダー63から取り外して、次の未測定の被測定物10をセットした後、上記ステップS4に戻り、以下、上記と同様に新たにセットした被測定物10に対応した測定角度の設定を行う。
【0066】
上記測定動作を被測定物10の数だけ繰り返し、すべての測定が終了した際には、ステップS13で最終の被測定物10を被測定物ホルダー63から取り外し、電源をオフにして停止するものである。
【0067】
上記のように順次測定角度を変更して光干渉測定された画像データは、それぞれが担持している輪帯状領域形状情報を解析制御装置50において解析処理し、被測定面10a全域の形状情報を求める。
【0068】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、種々に態様を変更することが可能である。
【0069】
例えば、上述の実施形態では、低強度部64を切欠き構造に形成して断面積を低減することで曲げ強度が低くなるように構成し、干渉光学系2の照射先端部2aとの衝突時の衝撃を吸収するように構成しているが、その強度低下構造としては、断面積低減構造のほか、低強度材料を使用することなどの変形が可能である。ただし、測定精度確保の点からは、被測定物10の保持精度を確保する必要があり、可撓性または柔軟性を有する材料で形成することは不適切である。
【0070】
また、上述の実施形態では、第1エアスライド7をX方向に設置し、第2エアスライド8をY方向に設置しているが、逆に第1エアスライド7をY方向に設置し、第2エアスライド8をX方向に設置するようにしてもよい。
【0071】
また、上述の実施形態では、昇降アクチュエータ87を干渉光学機構Bに設置しているが、被測定物保持機構Aとの少なくとも一方に備えているように構成すればよい。
【0072】
また、上述の実施形態では、被測定面10aが凹面部および凸面部を有する形状のものとされているが、このような形状の被測定面に測定対象が限定されるものではない。本発明の非球面形状測定装置は、回転対称な種々の非球面形状の被測定面の測定に用いることが可能である。
【符号の説明】
【0073】
1 非球面形状測定装置
2 干渉光学系
2a 照射先端部
3 第1撮像系
4 第2撮像系
5 測定解析系
6 サンプルステージ
7 第1エアスライド(第1スライド機構)
8 第2エアスライド(第2スライド機構)
9 定盤
10 被測定物
10a 被測定面
20 光源部
21 ビーム径拡大レンズ
22 光束分岐光学素子
23 コリメータレンズ
24 平面基準板
24a 参照基準平面
25 鏡筒
28 フリンジスキャンアダプタ
29 ピエゾ素子
30 結像レンズ
31 撮像カメラ
32 1次元イメージセンサ
34 光束分岐光学素子
35 鏡筒
40 結像レンズ
41 撮像カメラ
42 2次元イメージセンサ
45 鏡筒
50 解析制御装置
51 表示装置
52 入力装置
60 基台部
61 調整部
62 回転ステージ部
63 被測定物ホルダー
64 低強度部
70 第1エアスピンドル(被測定物回転機構)
73 摺動台
74 ガイド
80 第2エアスピンドル(光学系旋回機構)
81 保持部
82 基台部
83 摺動台
84 ガイド
86 エアブッシュ
87 昇降アクチュエータ(昇降機構)
91 支持脚
92 防振台
95 カバー
95a 前扉
95b 上扉
A 被測定物保持機構
B 干渉光学機構
E 回転軸
L 測定光軸
S 被測定面軸


【特許請求の範囲】
【請求項1】
非球面形状の被測定面を有する被測定物を保持する被測定物保持機構と、前記被測定物の被測定面に測定光を照射し該被測定面からの戻り光と参照光との干渉による干渉縞を取得する光干渉測定を行う干渉光学系を有する干渉光学機構とを備え、前記干渉縞に基づき前記被測定面の形状を測定する非球面形状測定装置であって、
前記被測定物保持機構および前記干渉光学機構は、それぞれ相対的に移動可能に設置されてなり、
前記被測定物保持機構は、前記被測定物を先端に保持するサンプルステージを備え、該サンプルステージに前記干渉光学系の照射先端部と衝突した際に衝撃を吸収する低強度部が設けられたことを特徴とする非球面形状測定装置。
【請求項2】
前記低強度部を、切欠き構造で構成したことを特徴とする請求項1記載の非球面形状測定装置。
【請求項3】
前記サンプルステージは、前記被測定物とともに該被測定物の被測定面軸の回りに回転可能である回転ステージ部と、該回転ステージ部を回転中心位置が変更可能に保持する調整部とを備え、前記回転ステージ部が被測定物回転機構により回転駆動されるように構成してなり、前記回転ステージ部に前記低強度部を設置することを特徴とする請求項1または2記載の非球面形状測定装置。
【請求項4】
前記被測定物保持機構は、前記被測定物を被測定面軸を中心として回転させる被測定物回転機構と、該被測定物回転機構を搭載し前記被測定面軸と直交方向または平行方向に直線移動させる第1スライド機構とを備え、
前記干渉光学機構は、前記干渉光学系を保持し該干渉光学系をその測定光軸と前記被測定面軸とのなす測定角度を変更可能に旋回させる光学系旋回機構と、該光学系旋回機構を搭載し前記第1スライド機構の移動方向と直交方向に直線移動させる第2スライド機構とを備えることを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか1項記載の非球面形状測定装置。
【請求項5】
前記第1スライド機構および前記第2スライド機構をエアスライドで構成してなることを特徴とする請求項4記載の非球面形状測定装置。
【請求項6】
前記被測定物回転機構および前記光学系旋回機構をエアスピンドルで構成してなることを特徴とする請求項4記載の非球面形状測定装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−215017(P2011−215017A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−83870(P2010−83870)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】