風力タービンにおける振動を減衰させるためのシステムおよび方法
本発明は、実質的に管状の塔構造物と、1つまたは複数の振動減衰システムとを備える風力タービンに関する。この風力タービンでは、前記1つまたは複数の振動減衰システムのうちの少なくとも1つが、複数の筋交い要素と減衰要素とを備えており、前記筋交い要素のうちの1つが前記塔構造物に結合されており、塔構造物が局所的に変位すると、ダンパの長手軸に沿ったダンパの変位が増大するように、前記筋交い要素と減衰要素とが連結されている。本発明は、さらに、1つまたは複数のトグル筋交い振動減衰システムを使用して風力タービン塔の振動を減衰させる方法、および風力タービンの振動を減衰させるための、トグル筋交い振動減衰システムの使用法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力タービン塔の振動を減衰させるための方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
現代の風力タービンは、配電網に電気を供給するために一般に使用されている。この種の風力タービンは、一般に、ロータハブと複数の羽根とを有するロータを備えている。ロータは羽根への風の影響により回転する。ロータシャフトの回転が、発電機の回転子を直接駆動し、あるいはギアボックスの使用を介して駆動する。ハブ、ギアボックス(存在する場合)、発電機、および他のシステムは、通常、風力タービン塔の上部のナセルに搭載される。
【0003】
風力タービン塔について、さまざまな構成が知られている。多くの最新の風力タービンは、管状の塔構造物を備えている。この管状構造物を、鋼および/またはコンクリートから製作することができ、単一のセグメントから製作することができ、あるいは種々のセグメントを備えてもよい。他の風力タービン塔は、トラス構造から製作される。さらには、上述の塔の概念の組合せを備える混成風力タービン塔も知られている。
【0004】
風力タービンの動作の最中に、風力タービン塔の構造に望ましくない振動が生じる可能性がある。この意味での振動は、任意の振幅(大または小)および任意の周波数(高または低、一定または変動)の任意の方向(横、縦、またはねじり)の任意の種類の振動性および反復性の変位を指す。これらの振動は、例えば、塔に作用する風、塔を通過して風の流れを局所的に乱す羽根、ギアボックスから塔に伝達される振動、ロータの運動、ナセルの不釣り合い、塔に伝達されるハブからの振動など、種々の要因によって生じうる。この種の振動が長い時間期間にわたって塔に加えられると、疲労損傷につながる可能性がある。疲労損傷は、風力タービン塔、および/またはその構成要素の寿命の短縮につながる可能性がある。さらには、振動が風力タービン塔において共振を引き起こす場合に、これが危険な振動の増大につながりかねないという危険が存在する。
【0005】
さらに厄介な因子は、風力タービン(ロータ、ナセル、塔など)のサイズが大きくなり続けていることにある。塔がより大きくなり、また、より細長くなるにつれ、誘起される振動の影響をより受けやすくなる。
【0006】
また、将来において、風力タービンが沖合または沿岸に配置されることが多くなると考えられる。風力タービン塔が浮遊に配置される(沖合)か海底の基礎に配置される(沿岸)かにかかわらず、海の波が風力タービン塔の振動のさらなる原因を形成する可能性がある。さらには、沖合または沿岸に配置される風力タービンの設計上の周速比は、通常は陸上に配置される風力タービンよりも大きい。したがって、ハブがより高い速度で回転する。したがって、羽根が塔を通過する頻度も高くなる。これにより、振動が風力タービン塔の共振周波数に達する危険も増加する。
【0007】
このように、風力タービン塔の振動を減衰させるための方法およびシステムを提供する必要が存在することが明らかである。従来技術において、いくつかのシステムが提案されている。例えば、風力タービン塔の振動を抑えるために、ロータの羽根のピッチ角または風力タービンの回転速度を能動的に制御することが知られている。しかしながら、これは、風力タービンが最適ではない状態で運転され、塔の振動を抑えるために、風力タービンによって生成される電気が風力タービンの潜在能力を下回ることがままあることを意味する。さらには、例えば振動を抑えるためにピッチの制御が使用される場合に、ピッチモータが酷使され、ピッチモータの寿命が短くなる可能性もある。
【0008】
さらに、単純に風力タービン塔の太さを増すことも提案されている。しかしながら、この塔の材料の増加は、確実に風力タービンのコストを増加させると考えられ、現場への塔(セグメント)の輸送を難しくする可能性もある。
【0009】
塔の1次の前後モードおよび1次の左右モードを打ち消すために、ナセルからつり下げられたマスの形態のチューンド・マス・ダンパを設けることも知られている。マスを塔の上部に取り付けることにより、塔の上部(もとより利用できる空間がきわめて限られている)において利用可能な空間が少なくなる可能性がある。さらに、このチューンド・マス・ダンパは、単一の周波数の振動の減衰にしか使用することができない。他の一部の従来技術の実施形態においては、マスが、2次の前後モードおよび2次の左右モードを減衰させるために、塔の少し下方に取り付けられている。この場合にも、塔において他のシステムのために利用することができる空間が大幅に少なくなる。
【0010】
欧州特許出願公開第1677033号明細書には、振動荷重軽減システムを塔またはナセルのいずれかに配置して備える風力タービンが開示されている。振動荷重軽減システムは、ベースと、ベースから延びる少なくとも2つの柱と、ベースおよび少なくとも2つの柱に位置する流動可能なマスとを備えている。したがって、この従来技術の解決策は、塔の上部にマスを加えており、塔の上部にマスを加えること自体がすでに望ましくない。
【0011】
国際公開第2008/000265号パンフレットには、風力タービン塔と、風力タービンにおいて振動制御値を確立するための制御手段と、制御手段からの値に応答して塔の固有振動数を最適化するための荷重変更手段とが開示されている。この荷重変更手段は、例えば風力タービン塔の内部に配置された鋼線または鋼棒を含むことができる。
【0012】
欧州特許出願公開第1811171号明細書には、風力タービン塔の変位を減衰させるためのシステムであって、複数のショックアブソーバと、風力タービン塔内に斜めに配置された複数の梁とを備えるシステムが開示されている。この構成は、本質的に、振動を減衰させる能力が限られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、風力タービン塔の振動を減衰させるためのシステムおよび方法であって、上述の従来技術の解決策の欠点を少なくとも部分的に軽減するシステムおよび方法を提供することである。この目的は、請求項1に記載の風力タービン塔、請求項16に記載の方法、および請求項19に記載の使用によって達成される。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1の態様において、本発明は、実質的に管状の塔構造物と、1つまたは複数の振動減衰システムとを備える風力タービンであって、前記1つまたは複数の振動減衰システムのうちの少なくとも1つが、複数の筋交い要素と、ダンパとを備え、前記筋交い要素のうちの1つが、前記塔構造物に結合され、塔構造物の局所的な変位が、ダンパの長手軸に沿ったダンパの変位を増大するように、前記筋交い要素とダンパとが連結されている風力タービンを提供する。
【0015】
振動の良好な減衰のために、たとえ小さな変位でも大きな減衰力がもたらされることが望ましい。減衰システムにおいて生成される減衰力は、構造物の局所的な変位(すなわち、「ドリフト」)に直接依存するのではなく、このドリフトによって引き起こされるダンパの軸に沿ったダンパの相対変位に依存する。一般に、
uD=f・u (式1)
である。
【0016】
この式において、uDは、ダンパの軸に沿ったダンパの相対変位であり、fは、倍率係数であり、uは、風力タービン塔における局所的な変位である。同様に、ダンパによって構造物にもたらされる力(F)は、ダンパの軸に沿った力(FD)に同じ倍率係数fを掛けたものに比例する。
F=f・FD (式2)
【0017】
本発明の第1の態様によれば、複数の筋交い要素と、ダンパとが設けられる。この意味において、筋交い要素は、周囲の構造を安定させ、補強し、あるいは強固にする任意の構造要素と解釈されるべきである。筋交い要素を、例えば(任意の断面の)梁、剛棒、管、などで形成することができる。
【0018】
本発明の前記第1の態様においては、実質的に管状の構造物の局所的な変位が、ダンパ長手軸に沿ったダンパの変位を増大させる(倍率係数f>1)ように、筋交い要素とダンパとが連結される。したがって、風力タービン塔構造物の小さな局所的変位が、ダンパのより大きな変位につながり、結果としてより大きな減衰力がもたらされる。これを、図1a〜図1cを参照してさらに説明する。
【0019】
図1に、第1の塔状構造1が示されている。構造物1は、(振動)荷重のもとで破線で示されているように変形することができる。図1aを参照すると、真っ直ぐな筋交いについての倍率係数(式1で使用されるとおり)は、1に等しい。図1bを参照すると、斜め配置の筋交いにおいては、倍率係数がcosθに等しい。(図1cにきわめて概略的に示されているような)トグル筋交い減衰システムについては、前記倍率係数が、2までの値に達することができ、3.6という大きな値にさえ到達できる(選択されるθ1およびθ2に依存する)。また、図1dに示されているような湾曲した、(例えばグラスファイバ製の)梁を有する構成や、図1eに示されているような何らかの混成の構成においても、倍率係数が1よりも大きくなりうる。図1fに示されているようなロッカーを備える別の構成においても、倍率係数が1よりも大きくなりうる。
【0020】
これらの振動減衰システムは、(マスをナセルから塔へと下方につり下げる一部の従来技術の解決策と対照的に)大きな空間を必要とせず、風力タービン塔のさまざまな位置に配置することが可能である。したがって、風力タービン塔は、塔内に例えば電気ケーブル、階段、またはエレベータのために利用可能な空間を依然として充分に有すると考えられる。さらに、複数の振動減衰システムを塔に配置することも可能である(それでもなお、大きな空間を占めることがない)。複数の振動減衰システムを、種々の振動モードを減衰させるために使用することができる。
【0021】
本発明のいくつかの実施形態においては、前記1つまたは複数の振動減衰システムのうちの少なくとも1つがトグル筋交い振動減衰システムである。トグル筋交い振動減衰システムは、少なくとも1つのトグル(端部同士で、しかし一直線上にはないように互いに結合された2つの筋交い要素を備える)と、前記少なくとも1つのトグルに結合された減衰要素とで形成される。
【0022】
いくつかの実施形態においては、前記トグル筋交い振動減衰システムが、減衰要素と、2つの筋交い要素を有するトグルとを備えており、前記筋交い要素がのそれぞれの第1の端部が風力タービン塔の内部に取り付けられ、それぞれの第2の端部が互いに結合されており、前記減衰要素の第1の端部が風力タービンの内部に取り付けられ、その第2の端部が前記筋交い要素のそれぞれの第2の端部に結合されている。これらのトグル筋交い振動減衰システムは、一般に、下側トグル筋交い振動減衰システム(減衰要素が、2つの筋交い要素の結合場所に結合され、トグルの下方に配置されている)、または上側トグル筋交い振動減衰システム(減衰要素が、2つの筋交い要素の結合場所に結合され、トグルの上方に配置されている)と称される。
【0023】
他の実施形態においては、前記トグル筋交い振動減衰システムが、減衰要素と、2つの筋交い要素を有するトグルとを備えており、前記筋交い要素のそれぞれの第1の端部が風力タービン塔の内部に取り付けられ、それぞれの第2の端部が互いに結合されており、前記減衰要素の第1の端部が風力タービンの内部に取り付けられ、その第2の端部が前記筋交い要素のうちの一方に垂直に結合されている。これらのトグル筋交い振動減衰システムは、一般に、逆トグル振動減衰システム(減衰要素が、2つの筋交い要素の結合場所には結合されず、結果としてトグルから実質的にずらして配置されている)と称される。
【0024】
さらに他の実施形態においては、前記トグル筋交い振動減衰システムが、減衰要素と、第1および第2のトグルとを備えており、各々のトグルが2つの筋交い要素を有しており、第1のトグルの前記2つの筋交い要素のそれぞれの第1の端部が風力タービン塔の内部に取り付けられ、それぞれの第2の端部が互いに結合されており、第2のトグルの前記2つの筋交い要素のそれぞれの第1の端部が風力タービン塔の内部に取り付けられ、それぞれの第2の端部が互いに結合されており、前記減衰要素の第1の端部が前記第1のトグルの筋交い要素のそれぞれの第2の端部に結合され、その第2の端部が前記第2のトグルの筋交い要素のそれぞれの第2の端部に結合されている。この構成は、一般に、シザージャッキ振動減衰システムと称される。
【0025】
上述のいずれの種類のトグル筋交い振動減衰システムも、良好な減衰を行うことができる。これらの選択肢の間の選択は、例えば利用可能な空間、必要とされる減衰の量などに依存することができる。
【0026】
本発明の一態様においては、振動減衰システムのうちの少なくとも1つの前記筋交い要素のそれぞれの第1の端部がちょうつがい式に取り付けられる。他の実施形態においては、筋交い要素のそれぞれの第1の端部を溶接することができるか、または、他の方法で「堅固に取り付ける」ことができる。筋交いをちょうつがい式に取り付ける利点は、筋交いの風力タービン塔への結合場所において、疲労損傷を軽減できる点にある。いくつかの実施形態においては、前記筋交い要素のそれぞれの第1の端部が球面支承要素によりちょうつがい式に取り付けられる。随意による粘弾性ジョイントにより、構造物への荷重の伝達をさらに助けることができる。
【0027】
本発明の他の態様においては、少なくとも1つの振動減衰システムの前記筋交い要素のそれぞれの第2の端部がちょうつがい式に取り付けられる。それぞれの第2の端部にちょうつがい式の結合を設けることで、疲労損傷をさらに軽減することができる。しかしながら、本発明の技術的範囲において、別の構成も可能であり、例えば筋交い要素を例えば、共に溶接でき、またはボルトで取り付けることができる。
【0028】
本発明のさらなる態様においては、複数の振動減衰システムが、実質的に管状の構造物の中心軸に実質的に位置する領域において互いに連結される。好ましくは、前記複数の振動減衰システムが、摩擦振り子支承システムによって連結される。摩擦振り子支承システムは、減衰システムにおいて生じる振動を実質的に遮断するので、この振動を周囲の構造にあまり伝えない。
【0029】
この態様による実施形態の一部においては、少なくとも3つの振動減衰システムが互いに連結される。少なくとも3つの振動減衰システムを放射状に設けることによって、非対称な荷重(例えば、ロータの不釣り合い)に起因する振動を適切に減衰させることができる。
【0030】
本発明のいくつかの実施形態においては、少なくとも1つの振動ダンパシステムのダンパが粘性流体ダンパである。任意の他のダンパも、本発明の技術的範囲において使用可能である。いくつかの実施形態においては、粘性流体ダンパが制御式の磁性流体ダンパである。この特徴により、粘性流体の減衰係数を変更して、変化する条件に合わせて減衰特性を調節することができる。使用可能な他のダンパは、例えば電気粘性流体ダンパ、回転慣性ダンパ、または固体摩擦ダンパである。
【0031】
本発明のまた別の態様においては、風力タービン塔の実質的に管状の構造物が実質的に管状の複数のセグメントを備え、塔が2つのセグメントを接合する中間構造物をさらに備え、少なくとも前記減衰システムの少なくとも1つの筋交い要素が前記中間構造物に支持される。風力タービン塔は、比較的高くなる可能性がある。さまざまな理由(例えば、輸送、製造)で、今日では多くの風力タービン塔が端部同士で接合される種々のセグメントを備えている。或るセグメントから他のセグメントへの適切な荷重の伝達のために、一般に、何らかの形態の補強構造が2つのセグメントを接合するために設けられる。減衰システムの筋交い要素のうちの1つを前記補強構造に取り付けることが好都合となりうる。このようにして、塔においてさらなる補強構造を回避することができる。
【0032】
塔が種々のセグメントを備える本発明の一態様においては、前記実質的に管状のセグメントのうちの少なくとも2つが少なくとも1つの振動減衰システムを備える。塔の高さに沿って、減衰の要件が変化しうる。個々の塔のニーズに合うように異なる数および異なる種類の振動減衰システムを使用することができる。
【0033】
他の態様において、本発明は、1つまたは複数のトグル筋交い振動減衰システムを使用して風力タービン塔の振動を減衰させる方法を提供する。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態においては、トグル筋交い減衰システムを、異なる振動モードを減衰させるように能動的または半能動的に制御することができる。本発明の他の実施形態においては、トグル筋交い減衰システムが受動式である。好ましくは、減衰システムが受動式である場合、トグル筋交い減衰システムは、特に風力タービンの第1の減衰モード(1次の前後モードおよび1次の左右モード)が効果的に減衰させられるように配置される。本発明の別の態様においては、減衰システムの混成制御が用意され、複数の減衰システムが純粋に受動式のダンパを備えることができ、少なくとも1つの減衰システムを能動的に制御することができ、通常の動作においては減衰システムが純粋に受動式であるが、突然の(特定のしきい値を超える)荷重においては、望ましくない荷重をただちに抑えるために能動式ダンパが作動させられる。
【0035】
他の態様においては、本発明は、風力タービンの振動を減衰させるためにトグル筋交い振動減衰システムを使用することを提供する。いくつかの実施形態においては、複数のトグル筋交い振動減衰システムを使用することができる。これらの実施形態の一部においては、少なくとも1つのトグル筋交い振動減衰システムを、第1の振動モードを減衰させるために使用できる一方で、少なくとも1つの別の振動減衰システムを、別の振動モードを減衰させるために使用することができる。少なくとも1つのトグル筋交い振動減衰システムを、塔の第1のセグメントの振動を減衰させるために使用し、少なくとも1つの別の振動減衰システムを、塔の別のセグメントの振動を減衰させるために使用することも考えられる。
【0036】
本発明の特定の実施形態を、あくまでも本発明を限定するものではない実施例として、添付の図面を参照しつつ以下で説明する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】図1は、風力タービン塔構造物の局所的な変位と、そのような変位によって生じるダンパ長手軸に沿ったダンパの変位との間の関係を示している。c〜fは、本発明について考えられる実施形態を示している。
【図2】図2a〜dは、本発明のいくつかの実施形態について、風力タービン塔の局所的な変位と、そのような変位によって生じるダンパ長手軸に沿ったダンパの変位との間の数学的関係を説明するために使用される図である。
【図3】図3a〜fは、本発明による風力タービン塔の一実施形態を示している。
【図4】図4a〜dは、本発明による風力タービン塔の別の実施形態を示している。
【図5】本発明による風力タービン塔のまた別の実施形態を示している。
【図6】図6aおよびbは、本発明による風力タービン塔のさらなる実施形態を示している。
【図7】本発明を有利に使用することができる風力タービン塔を示している。
【図8】図8a〜cは、本発明による風力タービン塔の振動のいくつかの減衰方法を示している。
【図9】本発明の実施形態の等角投影図および断面図である。
【図10】本発明の実施形態の等角投影図および断面図である。
【図11】本発明の実施形態の等角投影図および断面図である。
【図12】本発明の実施形態の等角投影図および断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図2aは、本発明の第1の実施形態を示しており、2つの下側トグル筋交いダンパシステムが風力タービン塔の管状構造物の内部に配置されている。下側トグル筋交いダンパシステムは、互いに結合されたトグル(2つの筋交い要素を有している)、および減衰要素を備えており、減衰要素がトグルの実質的に下方に配置されている。
【0039】
すでに述べたように、減衰システムにおいて生成される減衰力は、構造物の局所的な変位に直接依存するのではなく、このドリフトによって引き起こされるダンパの軸に沿ったダンパの相対変位に依存する。一般に、
uD=f・u (式1)
である。
【0040】
この式において、uDは、ダンパの軸に沿ったダンパの相対変位であり、fは、倍率係数であり、uは、風力タービン塔における局所的な変位である。同様に、ダンパによって構造にもたらされる力(F)は、ダンパの軸に沿った力(FD)に同じ倍率係数fを掛けたものに比例する。
F=f・FD (式2)
【0041】
図2aに示したトグル筋交いダンパの構成の倍率係数は、
(式3)
と決定することができる。
【0042】
倍率係数の導出は、変形が小さいと仮定しており、筋交いの軸方向の弾性を考慮に入れていないことに留意すべきである。倍率係数のより詳細な導出については、例えば「Constantinou,M.C.、Tsopelas,P.、Hammel,W.、およびSigaher,A.著、(2001)、Toggle−brace−damper seismic energy dissipation systems、“Journal of Structural Engineering”、127(2):105〜112」(以下では、「Constantinou 2001」と称する)を参照されたい。詳細な導出は、本特許出願の範囲外である。
【0043】
さらに、ダンパによってもたらされる横方向の減衰力FTを、
(式4)
と決定することができ、ここでFDは、ダンパの力である。
【0044】
適切な角度θ1、θ2、θ3を決定するための現実的な手法(ただし、これに限られるわけではない)を、「Hwang,J−S、Huang,Y−N、およびHung,Y−H著、(2005)、Analytical and Experimental Study of Toggle− Brace− Damper Systems、“Journal of Structural Engineering”、127(2):1035〜1043」(以下では、「Hwang 2005」と称する)から導出することができる。3つの無次元の幾何学的パラメータθ1、L1/D、およびH/Dを、角度θ2、θ3を定めるために使用することができる。
(式5)
(式6)
【0045】
3つの無次元パラメータが決定されたとき、倍率係数を、式3を使用して計算することができる。この手法によれば、トグル筋交いダンパシステムの幾何学的構成に起因する以下の制約を考慮に入れる必要がある。
(式7)
【0046】
θ1が選択された場合、L1は、式8に示されるようにD/cos(θ1)よりも小さくなければならない。
(式8)
【0047】
極端な事象のもとでトグル筋交いダンパの構造を維持するために、ダンパを結合する筋交いの全長は両方の筋交いの横揺れ運動によって生じる斜めの全長よりも大きくなければならない。この制約に基づき、以下の不等式を導出することができる。
(式9)
【0048】
式9の左辺u/Hが、まさに「ドリフト比」であることに注目すべきである。したがって、トグル筋交い機構を維持するために、トグル筋交いダンパシステムの2つの筋交いが真っ直ぐになったり、あるいは反転したり(snap through)することがないように、生じうる最大のドリフト比が式9を満足しなければならない。
【0049】
上述の制約に基づき、トグル筋交いダンパシステムの幾何学的配置と倍率係数fとの間の関係を、振動減衰システムの設計パラメータH/Dにおいて、以下の工程を使用して確立することができる。
1.式7の制約を満たすθ1の範囲を決定する。
2.式8の制約を順守するL1/Dの範囲を決定する。
3.指定のu/Hに対応する式9を満足するθ1およびL1/Dの組合せの適切な範囲を決定する。
4.倍率係数fと種々のL1/Dの値に対応する傾斜角θ1との間の関係を導出する。
5.ひとたび無次元パラメータが決定された場合、設計のすべてのパラメータを、式5および式6を使用して決定することができる。
【0050】
ここで説明した方法は、「Hwang 2005」に基づいており、本発明による風力タービンにおいて使用される振動減衰システムを設計する適切かつ実用的な1つのやり方を提示するものとして説明されているにすぎない。しかしながら、他の設計方法も使用可能である。
【0051】
図2bは、本発明の第2の実施形態を示しており、2つの上側トグル筋交いダンパシステムが風力タービン塔の管状構造物の内部に配置されている。上側トグル筋交いダンパシステムは、互いに連結されたトグル(2つの筋交い要素を有している)、および減衰要素を備えており、減衰要素がトグルの実質的に上方に配置されている。上側トグル筋交いシステムは、先の下側トグル機構において説明した運動学的設計と同様の運動学的設計に従う。上側トグル筋交いダンパシステムの倍率係数を、以下と決定することができる(「Constantinou,2001」を参照)。
(式10)
例として、θ1=31.9°およびθ2=43.2°の場合、倍率係数f=3.191である。
【0052】
ダンパによってもたらされる横方向の減衰力を、
(式11)
と決定することができ、ここでFDはダンパの力である。設計のプロセスを容易にするために、すでに説明した下側トグル筋交い減衰システムにおいて「Huang 2005」から導出されたものと同様の合理化された設計プロセスの手順を使用することができる。同じ無次元の幾何学的パラメータθ1、L1/D、およびH/Dを、角度θ2、θ3を表わすために使用することができる。
【0053】
図2cは、本発明の第3の実施形態を示しており、2つのシザージャッキ筋交いダンパシステムが風力タービン塔の管状構造物の内部に配置されている。
【0054】
「Lee,S−H.、Min,K−W、Chung,L.、Lee,S−K、Lee,M−K、Hwang,J−S、Choi,S−B、Lee,H−G著、Bracing Systems for Installation of MR Dampers in a Building Structure、“Journal of Intelligent Material Systems and Structures”、第18巻、2007年11月、p.1111〜1120」に従い、
(式12)
という倍率係数fの式に達する。
【0055】
例として、θ=45°およびΨ=20°において、倍率係数fは、1.94である。
【0056】
図2dは、逆トグル筋交い減衰システムを示している。逆トグル筋交いシステムは、トグル(2つの筋交い要素を有する)および減衰要素を備えている。減衰要素は、一方の筋交い要素に(2つの筋交い要素を連結している場所ではない場所において)結合されている。したがって、減衰要素は、図2dに見て取ることができるとおり、トグルから多少ずらされて配置されている。
【0057】
「Constantinou,2001」を参照し、倍率係数fを、
(式13)
と決定することができる。
【0058】
ここで、θ1=30°、θ2=49°、およびα=0.7において、倍率係数f=2.521である。これまでに示したとおり、種々のトグル筋交いの構成を使用することによって、風力タービン塔の構造の局所的な変位によって引き起こされるダンパ長手軸に沿ったダンパの変位を、大きくすることができる。したがって、これまでに示した構成は、原理的に振動の効果的な減衰にきわめて適しており、たとえわずかな変位でも大きな減衰力をもたらすことができる。
【0059】
図3a〜図3fは、本発明による風力タービン塔の実施形態を示している。図3aには、単一の振動減衰システムの断面図が示されている。
【0060】
この実施形態の風力タービン塔10は、少なくとも2つの管状の塔セグメント11および12を備えている。塔セグメント11および12のフランジは、複数のボルト17によって互いに結合されている。さらに、この実施形態における中間構造物15は、塔の片側から反対側へと延びている少なくとも1つの梁16を備えている。
【0061】
振動減衰システム100は、3つの構成要素110、120、および130を備えている。減衰要素110はダンパ111を備えている。筋交い112は、支持部14上に取り付けられた摩擦振り子支承システム115に支持されている。筋交い要素120は塔の取り付け部125にちょうつがい式に結合されている。中間構造物116上に取り付けられた取り付け部135は、筋交い要素130をちょうつがい式に支持している。筋交い要素120および130は、いわゆる「筋交いトグル」、すなわち端部同士にてつなぎ合わせられているが一直線上にはない2つの筋交いで構成された装置を形成している。そのようなトグルの特徴は、そのようなトグルを真っ直ぐにするような力が加えられた場合に、筋交いの外側端に隣接しており、あるいは筋交いの外側端に取り付けられている部位(すなわち、この場合には取り付け部125および135であり、結果として風力タービン塔のセグメント11である)に、圧力が作用することにある。トグル筋交いは、ここでは一直線上にない2つの筋交いとして説明されるが、使用時に極端な荷重のもとで、筋交い120、130がおそらくは一時的に一直線になる可能性があることに留意すべきである。
【0062】
筋交い要素110および120ならびに減衰要素130は、ピンによって互いにちょうつがい式に結合されている。構成要素110、120、130は、それぞれの第1の端部110A、120A、130Aにおいて風力タービン塔の内部に(取り付け部115、125、および135を介して)取り付けられ、それぞれの第2の端部110B、120B、130Bにおいて互いに結合されている。
【0063】
図3bにおいては、2つの振動減衰システムが同じ風力タービン塔の内部に示されている。第1の振動減衰システム100は、減衰要素110およびトグル120−130を備えており、第2の振動減衰システム200は、減衰要素210およびトグル220−230を備えている。両方の振動減衰システムは、梁16および塔セグメント11の管状構造物へと取り付け部を介して同様に配置されている。2つの減衰システム100および200は、塔構造物の中心軸に沿って位置する摩擦振り子支承システム115において互いに連結されている。2つの減衰システムを互いに連結することによって、一方の減衰システムの力が他方の減衰システムへと伝えられる。また、このやり方で、複数の減衰システムを単一の点に取り付けることができ、図3bにおいては、梁16にただ1つの取り付け点しか存在しない。
【0064】
本発明の技術的範囲において、このようなやり方で互いに結合される減衰システムの数は、変更してもよい。図3fは、3つの減衰システム100、200、および300が摩擦振り子支承システム115において連結されている本発明の実施形態を示している。(図3fが、図3bの実施形態の上面図を示しているのではなく、別の実施形態を示していることに留意すべきである)。図3fの3つの減衰システムは、それらの間に120°の角度を可能にするように放射状に配置されている。
【0065】
さらに、図3fには、例えばエレベータまたは階段のための空間90と、例えば電気ケーブルのための空間80とが示されている。このように、図3fは、複数の減衰システムを塔において同じ高さに配置することができ、依然として塔において補助システムのために充分な空間を利用できることを示している。本発明の技術的範囲において、3つではなくて1つ、2つ、4つ、または5つなど、任意の他の数の減衰システムを使用してもよい。本発明の技術的範囲において、さまざまな数の減衰システムを、塔の高さの途中にさらに配置してもよい。例えば、或る高さにおいて、3つの減衰システムを互いに結合できる一方で、第2の高さに、4つの減衰システムを設けることができる。同じ高さに3つ以上の減衰システムを設けることで、任意の所望の方向の減衰が可能になり、例えばナセルの不釣り合いまたはロータの運動によって引き起こされる非対称な振動を減衰させることができる。
【0066】
図3c、3d、および3eは、図3aに示した振動減衰システム100のいくつかの細部を示している。図3cは、構成要素110、120、および130それぞれの第2の端部を結合するピン105を示している。本発明の一態様において、このピンを、例えばステンレス鋼または強化鋼で製作することができる。このようにして、構成要素がお互いに対してちょうつがい式に配置される。
【0067】
図3dは、筋交い要素120の第1の端部の取り付け部125を示している。球面支承126が、粘弾性ジョイント127によって取り付け部125に配置されている。
【0068】
図3eは、減衰要素110および210(減衰要素110および210のそれぞれのダンパが、参照番号111および211で示されている)を連結する摩擦振り子支承115を示している。要素210の筋交い212に、球面支承216が配置されている。粘弾性ジョイント217が、球面支承216と連結部材113との間に配置されている。連結部材113は、減衰システム100と200の間のリンクであり、要素111および211をスライダ118へと連結している。粘弾性ジョイントは、荷重を支承に伝達するために特に適している。しかしながら、本発明の技術的範囲において、そのような粘弾性ジョイントを省略しても、あるいは任意の他の適切なジョイントで置き換えてもよい。
【0069】
図3eに示されている摩擦振り子支承115は、以下のように機能する。塔が振動しているとき、減衰システムの構成要素が運動し、連結部材をスライダ118とともに三次元の凹面119においてスライドさせる。摩擦振り子支承システムは、構造において振動を遮断するために使用される。スライダ118が凹面119において移動できるということゆえに、支承が動くが、支承を支持している構造の動きははるかに少ない。スライダ118に適した材料は、テフロン(商標)であってもよく、凹面119に適した材料は、ステンレス鋼であってもよい。他の材料も使用可能である。材料を変えることによって、振り子支承システムの摩擦係数を操作することができる。さらに図3eには、塵埃、不純物、湿気、などに起因する摩耗を軽減できるよう、スライダ118および凹面119を外部に対して封じるシール117が示されている。図3eに見て取ることができるとおり、スライダ118は、その一方の面上に、連結部材113を支持するための実質的に球状の表面を有している。他方の面は、前記表面119において滑らかにスライドするよう、凹面119と対をなす形状を有している。
【0070】
この実施形態においては、摩擦振り子支承システムは、(単一の「スライダ」を備える)単一摩擦振り子支承システムとして示されている。しかしながら、本発明の技術的範囲において、二重凹面振り子支承システム(2つの「スライダ」を備える)または三重振り子支承システム(3つの「スライダ」を備える)など、他の摩擦振り子支承システムを使用してもよい。
【0071】
図4a〜図4dは、本発明による風力タービン塔の別の実施形態を示している。図4aに、1つの振動減衰システムの断面図が示されている。振動減衰システム100は、第1のトグル(筋交い要素120および130を有している)と、第2のトグル(筋交い要素140および150を有している)と、減衰要素110とを備えている。減衰要素110は、ダンパ111と筋交い112とを備えている。構成要素120、130、140、および150は、それぞれの第1の端部120A、130A、140A、および150Aにおいて塔の内部にちょうつがい式に取り付けられ、それぞれの第2の端部120B、130B、140B、および150Bにおいて相互かつ減衰要素110にちょうつがい式に連結されている。図4aに示されている実施形態は、一般に、シザージャッキ型トグル筋交い減衰システムと称される。
【0072】
図4bは、摩擦振り子支承システム115において互いに連結された2つの減衰システム100、200を示している。摩擦振り子支承システム115は、塔のセグメント11および12の境目に配置された梁16に取り付けられている。しかしながら、本発明の技術的範囲において、減衰システムを、風力タービン塔の任意の高さに配置することが可能である。
【0073】
図4cは、どのように構成要素110、120、および130がそれぞれの第2の端部110B、120B、および130Bにおいてピン136によって結合されるのかを示している。筋交い要素140および150の第2の端部140Bおよび150Bは、ピン146において減衰要素110の第1の端部110Aに結合されている。
【0074】
図4dは、摩擦振り子支承システム115を示している。球面支承114において、第1の支承システムの筋交い要素130および140がちょうつがい式に結合されている。同じ球面支承において、構成要素230および240がちょうつがい式に結合されている。このようにして、2つの減衰システム100および200は、連結部材113において連結されている。連結部材113に、図3eに示した支承システムと同様のやり方で、スライダ118が配置されている。
【0075】
図5は、本発明による風力タービン塔のさらに別の実施形態の断面図を示している。2つのいわゆる「上側トグル」筋交い減衰システム100および200が示されている。減衰システム100は、減衰要素110ならびに筋交い要素120および130を備えている。減衰要素110は、実質的にトグル120−130の上方に配置されている。筋交い要素120は、取り付け部125に配置された球面支承126によって風力タービン塔にちょうつがい式に結合されている。筋交い要素130も、その第1の端部に、取り付け部135に配置される玉支承136を備えている。取り付け部135は、この実施形態において、有利には梁16に結合されている。減衰システム100および200は、塔の中心に配置された摩擦振り子支承システム115において互いに連結されている。摩擦振り子支承システム115は、この実施形態においては、やはり有利には塔の2つのセグメントの間に配置された中間構造物16に取り付けられる。
【0076】
図6aおよび6bは、本発明による風力タービンの2つのさらなる実施形態を示している。図6aに示されている振動減衰システム100は、トグル筋交い振動減衰システムの別の一形態であり、いわゆる「二連」トグル筋交いである。二連トグル筋交い100は、2つの減衰要素110および110’と、3つの筋交い要素とを備えている。第1の筋交い要素120および第2の筋交い要素130は第1のトグルを形成している。第2の筋交い要素130および第3の筋交い要素140は第2のトグルを形成している。2つのトグルが一直線に配置されている。二連トグル筋交い減衰システムの態様は、たとえ極端な荷重のもとで二連トグルの第1の部分が反転しても、第2の部分が依然としてトグル筋交いとして機能すると考えられる点にある。
【0077】
図6aの実施形態において、二連トグル筋交い振動減衰システムは、風力タービン塔の直径に及んでいる。図6bの実施形態においては、2つの二連トグル筋交い振動減衰システム100、200が実質的に塔構造物の中心軸に位置する領域において連結されている。
【0078】
図3〜図6においては、すべての減衰要素110、210は、減衰要素の全長の約50〜60%の長さを有するダンパを備えるものとして示されていた。本発明の他の実施形態においては、この比が、例えば10%あるいは100%に近いなど、別の比であってもよい。前記比(または、前記ダンパの長さ)は、例えば、減衰させるべき振動の大きさ、ダンパの種類、ダンパの減衰係数、減衰システムの物理的な寸法などに依存することができる。
【0079】
図7は、本発明による方法およびシステムを有利に使用することができる風力タービン塔を概略的に示していた。今日の風力タービン塔は、サイズの増大ゆえに、種々のセグメントで構成される。塔を種々のセグメントに分割することで、例えば現場への輸送および製造が容易になる。風力タービン塔10は、例えば塔の下部セグメント13、中間セグメント11、および上部セグメント12を備えている。塔の各セグメントは、中間構造物15によって互いに結合される。塔の上部にナセル5(概略的に示されている)が配置される。
【0080】
図3、図4、および図5においては、減衰システムが塔のセグメント11に配置されるものとして示されているが、本発明は、この意味に限定されない。使用時に、種々のセグメントにおいて生じる振動は、わずかに異なる可能性がある。塔の上部セグメント12は、塔の下部セグメント13と比べて減少した厚さを有する可能性がある。これは、振動の発生および強さに影響を及ぼすと考えられる。塔を通り過ぎる風力タービンの羽根の影響も、塔の各々のセグメントにとって同じでない可能性がある。塔の種々のセグメントにおいて生じるさまざまな振動モードを減衰させることができるように、減衰システムを、例えば塔の上部セグメント、または下部セグメント、すべてのセグメント、あるいはいくつかの利用可能なセグメントに配置することができる。
【0081】
本発明の一態様においては、1つまたは複数の減衰システム(例えば、下側トグル式)を、塔の上部セグメント12に配置することができる一方で、別の形式(例えば、上側トグル式)の1つまたは複数の減衰システムを塔の中間セグメント11に配置することができる。本発明の一態様は、減衰システムの数および形式が、塔の各所において変更されてもよく、したがって振動の減衰を、各々の風力タービン塔に合わせて細かく調節できる点にある。或る高さにおいて、減衰システムを振動の1次モードを減衰させるように構成できる一方で、塔の別の高さにおいて、振動の別のモードが減衰される。
【0082】
図8a〜図8cは、本発明に従って風力タービン塔の振動を減衰させるいくつかの方法を示している。減衰システムにおいて使用されるダンパ110、210は、本発明の技術的範囲において変更されてもよい。一態様においては、粘性流体ダンパであってもよい。本発明の技術的範囲において、任意の種類のダンパ(例えば、液圧式、空気式、固体摩擦式、回転慣性−粘性ダンパ、回転摩擦ダンパなど)を使用することが可能である。ダンパは、受動式、半能動式、または能動式であってよい。
【0083】
受動式ダンパシステムは、可変ではない減衰係数を有する。半能動式ダンパシステムにおいては、減衰係数を制御システムによって変化させることができる。能動式のダンパシステムにおいては、ダンパは、例えば流体チャンバのうちの1つの圧力を増加または減少させることによって能動的に操作される。半能動式ダンパシステムを、例えば可変オリフィス粘性ダンパ、可変剛性ダンパ、可変摩擦ダンパ、または制御式流体ダンパによって形成することができる。好ましい制御式流体ダンパは、磁性流体ダンパである。磁性流体ダンパにおいては、ダンパの流体が金属粒子を含んでいる。ダンパの減衰係数を、電磁石によって制御することができる。したがって、制御システムは、減衰係数を増加または減少させることができる制御信号を電磁石に送信することができる。
【0084】
有利に使用することができる他の制御式流体ダンパは、例えば電気粘性流体ダンパである。電気粘性流体は、電気絶縁性の流体における微細な非導電性粒子の懸濁液である。これらの流体の粘性は、電界に応答して可逆、かつきわめて迅速に変化することができる。したがって、そのようなダンパにおいて、電界を加えることによって摩擦係数を変化させることが可能である。
【0085】
減衰システムは、受動式、半能動式、または能動式のいずれであってもよい。本発明の一態様においては、同じ風力タービン塔において、受動式および半能動式、または能動式の減衰システムの組合せを備える混成システムを設けることができる。
【0086】
図8aにおいては、2つの下側トグル筋交い減衰システムが風力タービン塔10の内部に配置されている。第1のセンサ510は、塔の2つのセグメント間の中間構造物に配置されている。第2のセンサ520は、ダンパ211を備える減衰要素210に配置されている。第3のセンサ530は、ダンパ111を備える減衰要素110に配置されている。3つのセンサ510、520、530は、例えば変位、応力、またはひずみを測定することができる。センサからの信号は入力/出力ユニット540へと送信され、この入力/出力ユニット540は、信号を制御システム550(図7aにおいてはコンピュータとして概念的に示されている)へと送信する。制御システムは、これらのセンサ信号に基づいて、2つのダンパ111および211へと制御信号を送信し、磁性流体または電気粘性流体ダンパの減衰係数を変化させ、あるいは例えばダンパ111を能動的に制御するために、例えば電磁石を作動させることができる。
【0087】
この実施形態においては、3つのセンサが制御システムにおいて配置された。本発明の他の実施形態においては、より多数またはより少数のセンサを使用してもよい。例えば、複数のセンサを、風力タービン塔の壁に沿って配置してもよい。さらに、センサは、例えば変位センサ、過速度センサ、応力センサ、ひずみセンサなど、異なる種類のセンサであってもよく、例えば磁気、光、慣性、誘導など、さまざまな技術に基づいてもよい。
【0088】
図8bは、類似の制御システムであるが、シザージャッキ型トグル筋交い減衰システムを備えている制御システムを示している。センサ520および530が、トグル筋交い減衰システムの他の構成要素との接点に位置する減衰要素210および110の端部にそれぞれ配置されている。ダンパの変位が、達成される振動の減衰の大きさを直接的に決定する。センサを上述の位置に配置することで、ダンパの変位を容易に記録することができる。しかしながら、本発明の技術的範囲において、センサを他の位置に配置することも可能である。
【0089】
図8cを使用し、制御システムの信号を説明する。センサ510からの第1の信号710が、入力/出力ユニット540へと送信される。それぞれのセンサ520および530からの第2および第3の信号720、730も、入力/出力ユニット540へと送信される。集められた信号は、信号740によって制御システム550へと送信される。制御システム550が情報を処理して適切な制御信号を計算し、信号750を入力/出力ユニット540へと送信することによって応答する。入力/出力ユニット540は、指令信号610および620をそれぞれのダンパへと送信する。いくつかの実施形態においては、これらの制御信号は、例えば磁性流体ダンパ内の電磁石に加えられる電流または能動式液圧ダンパのための圧力であってもよい。
【0090】
図8a〜図8cにおいては、入力/出力ユニット540が制御システム550とは別に示された。しかしながら、制御システム550および入力/出力ユニット540が1つの一体の構成要素を形成してもよいことが明らかである。さらに、制御システム550を、風力タービンのナセル、または風力タービンの他のどこかに配置することができ、風力タービンの外部の遠方に配置することさえ可能である。さらに、いくつかの実施形態においては、別々の制御システム550を、単一の減衰システムについて設けても、あるいは連結された一群の減衰システムについて設けてもよい。他の実施形態においては、単一の制御システムを、風力タービンに配置されたすべての制御式ダンパ(本発明のいくつかの実施形態においては、複数の半能動式または能動式減衰システムが、いくつかの受動式減衰システムと組み合わせられる)を操るように設けることができる。
【0091】
図9aは、本発明による風力タービンの等角投影図を示している。風力タービンは、内部へのアクセスを提供する扉20を有している塔10を備えている。図9bは、図9aに示されている細部Aのより良好な図を示している。図9bにおいて、4つの減衰システム100、200、300、および400を明確に見て取ることができる。減衰システムはすべて、下側トグル筋交い振動減衰システムである。減衰システムが、塔の2つのセグメント間の中間構造物15に配置された梁16に取り付けられている。4つの減衰システムは、摩擦振り子支承115において互いに連結されている。
【0092】
図9cおよび図9dは、同じ実施形態の上面図および側面図を示している。図9aおよび9dにおいて、塔のセグメントを複数の溶接された塔リングで構成できることをさらに理解することができる。同じことが図10および11にも示されている。
【0093】
図10aは、別の実施形態の等角投影図である。この実施形態は、3つの上側トグル筋交い振動減衰システム100、200、および300を備えている。減衰システムは、図9に示したものと同じ梁に取り付けられるものとして示されている。図10bは、同じ実施形態の断面図を示している。
【0094】
図11aおよび図11bは、4つのシザージャッキ振動減衰システムを備える実施形態の等角投影図および断面図を示している。図9、図10、および図11において、すべての振動減衰システムは、中間構造物に位置する梁16の下方に配置されている。したがって、これらの実施形態の減衰システムは、梁の下方に配置された塔のセグメントの振動を減衰させるために使用される。しかしながら、減衰システムが梁の上方に取り付けられるように構成された図12に示されているような実施形態も可能であることが明らかである。したがって、この実施形態の減衰システムは、前記梁の上方に配置された塔のセグメントの振動を減衰させるように構成される。本発明のいくつかの実施形態においては、同じ中間構造物において、第1のいくつかの振動減衰システムを梁の上方に配置することができ、第2のいくつかの振動減衰を同じ梁の下方に配置することができる。
【0095】
本出願の全体を通して、実質的に管状の塔構造物に言及してきた。すべての図において、この管状構造物は、円筒形の断面を有するものとして示された。しかしながら、本発明の技術的範囲において、実質的に管状の構造物が、風力タービン塔の高さの少なくとも一部において楕円形または実質的に楕円形の断面を有してもよいことを理解すべきである。
【0096】
本出願の全体を通して、種々の構成部品を、他の構成部品に対してちょうつがい式に配置されると説明してきた。これを、2つの部品を一体に保持するが、一方の部品が枢支部を中心にして他方に対して回転することを許容する任意のジョイントと解釈すべきである。したがって、この意味で枢支部は、例えば球面支承装置または単純な枢動ヒンジを指すことができる。
【0097】
本発明を、特定の好ましい実施形態および実施例の文脈において開示したが、本発明が、具体的に開示された実施形態を超えて本発明の他の代案の実施形態および/または使用、ならびにそれらの自明な変更および均等物にまで広がることを当業者であれば理解できるであろう。したがって、本明細書に開示された本発明の技術的範囲は、上述した特定の開示済みの実施形態によって限定されるべきではなく、あくまでも以下の特許請求の範囲を公正に検討することによって決定されなければならない。
【図1a】
【図1b】
【図1c】
【図1d】
【図1e】
【図1f】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図2d】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図3d】
【図3e】
【図3f】
【図4a】
【図4b】
【図4c】
【図4d】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力タービン塔の振動を減衰させるための方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
現代の風力タービンは、配電網に電気を供給するために一般に使用されている。この種の風力タービンは、一般に、ロータハブと複数の羽根とを有するロータを備えている。ロータは羽根への風の影響により回転する。ロータシャフトの回転が、発電機の回転子を直接駆動し、あるいはギアボックスの使用を介して駆動する。ハブ、ギアボックス(存在する場合)、発電機、および他のシステムは、通常、風力タービン塔の上部のナセルに搭載される。
【0003】
風力タービン塔について、さまざまな構成が知られている。多くの最新の風力タービンは、管状の塔構造物を備えている。この管状構造物を、鋼および/またはコンクリートから製作することができ、単一のセグメントから製作することができ、あるいは種々のセグメントを備えてもよい。他の風力タービン塔は、トラス構造から製作される。さらには、上述の塔の概念の組合せを備える混成風力タービン塔も知られている。
【0004】
風力タービンの動作の最中に、風力タービン塔の構造に望ましくない振動が生じる可能性がある。この意味での振動は、任意の振幅(大または小)および任意の周波数(高または低、一定または変動)の任意の方向(横、縦、またはねじり)の任意の種類の振動性および反復性の変位を指す。これらの振動は、例えば、塔に作用する風、塔を通過して風の流れを局所的に乱す羽根、ギアボックスから塔に伝達される振動、ロータの運動、ナセルの不釣り合い、塔に伝達されるハブからの振動など、種々の要因によって生じうる。この種の振動が長い時間期間にわたって塔に加えられると、疲労損傷につながる可能性がある。疲労損傷は、風力タービン塔、および/またはその構成要素の寿命の短縮につながる可能性がある。さらには、振動が風力タービン塔において共振を引き起こす場合に、これが危険な振動の増大につながりかねないという危険が存在する。
【0005】
さらに厄介な因子は、風力タービン(ロータ、ナセル、塔など)のサイズが大きくなり続けていることにある。塔がより大きくなり、また、より細長くなるにつれ、誘起される振動の影響をより受けやすくなる。
【0006】
また、将来において、風力タービンが沖合または沿岸に配置されることが多くなると考えられる。風力タービン塔が浮遊に配置される(沖合)か海底の基礎に配置される(沿岸)かにかかわらず、海の波が風力タービン塔の振動のさらなる原因を形成する可能性がある。さらには、沖合または沿岸に配置される風力タービンの設計上の周速比は、通常は陸上に配置される風力タービンよりも大きい。したがって、ハブがより高い速度で回転する。したがって、羽根が塔を通過する頻度も高くなる。これにより、振動が風力タービン塔の共振周波数に達する危険も増加する。
【0007】
このように、風力タービン塔の振動を減衰させるための方法およびシステムを提供する必要が存在することが明らかである。従来技術において、いくつかのシステムが提案されている。例えば、風力タービン塔の振動を抑えるために、ロータの羽根のピッチ角または風力タービンの回転速度を能動的に制御することが知られている。しかしながら、これは、風力タービンが最適ではない状態で運転され、塔の振動を抑えるために、風力タービンによって生成される電気が風力タービンの潜在能力を下回ることがままあることを意味する。さらには、例えば振動を抑えるためにピッチの制御が使用される場合に、ピッチモータが酷使され、ピッチモータの寿命が短くなる可能性もある。
【0008】
さらに、単純に風力タービン塔の太さを増すことも提案されている。しかしながら、この塔の材料の増加は、確実に風力タービンのコストを増加させると考えられ、現場への塔(セグメント)の輸送を難しくする可能性もある。
【0009】
塔の1次の前後モードおよび1次の左右モードを打ち消すために、ナセルからつり下げられたマスの形態のチューンド・マス・ダンパを設けることも知られている。マスを塔の上部に取り付けることにより、塔の上部(もとより利用できる空間がきわめて限られている)において利用可能な空間が少なくなる可能性がある。さらに、このチューンド・マス・ダンパは、単一の周波数の振動の減衰にしか使用することができない。他の一部の従来技術の実施形態においては、マスが、2次の前後モードおよび2次の左右モードを減衰させるために、塔の少し下方に取り付けられている。この場合にも、塔において他のシステムのために利用することができる空間が大幅に少なくなる。
【0010】
欧州特許出願公開第1677033号明細書には、振動荷重軽減システムを塔またはナセルのいずれかに配置して備える風力タービンが開示されている。振動荷重軽減システムは、ベースと、ベースから延びる少なくとも2つの柱と、ベースおよび少なくとも2つの柱に位置する流動可能なマスとを備えている。したがって、この従来技術の解決策は、塔の上部にマスを加えており、塔の上部にマスを加えること自体がすでに望ましくない。
【0011】
国際公開第2008/000265号パンフレットには、風力タービン塔と、風力タービンにおいて振動制御値を確立するための制御手段と、制御手段からの値に応答して塔の固有振動数を最適化するための荷重変更手段とが開示されている。この荷重変更手段は、例えば風力タービン塔の内部に配置された鋼線または鋼棒を含むことができる。
【0012】
欧州特許出願公開第1811171号明細書には、風力タービン塔の変位を減衰させるためのシステムであって、複数のショックアブソーバと、風力タービン塔内に斜めに配置された複数の梁とを備えるシステムが開示されている。この構成は、本質的に、振動を減衰させる能力が限られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、風力タービン塔の振動を減衰させるためのシステムおよび方法であって、上述の従来技術の解決策の欠点を少なくとも部分的に軽減するシステムおよび方法を提供することである。この目的は、請求項1に記載の風力タービン塔、請求項16に記載の方法、および請求項19に記載の使用によって達成される。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1の態様において、本発明は、実質的に管状の塔構造物と、1つまたは複数の振動減衰システムとを備える風力タービンであって、前記1つまたは複数の振動減衰システムのうちの少なくとも1つが、複数の筋交い要素と、ダンパとを備え、前記筋交い要素のうちの1つが、前記塔構造物に結合され、塔構造物の局所的な変位が、ダンパの長手軸に沿ったダンパの変位を増大するように、前記筋交い要素とダンパとが連結されている風力タービンを提供する。
【0015】
振動の良好な減衰のために、たとえ小さな変位でも大きな減衰力がもたらされることが望ましい。減衰システムにおいて生成される減衰力は、構造物の局所的な変位(すなわち、「ドリフト」)に直接依存するのではなく、このドリフトによって引き起こされるダンパの軸に沿ったダンパの相対変位に依存する。一般に、
uD=f・u (式1)
である。
【0016】
この式において、uDは、ダンパの軸に沿ったダンパの相対変位であり、fは、倍率係数であり、uは、風力タービン塔における局所的な変位である。同様に、ダンパによって構造物にもたらされる力(F)は、ダンパの軸に沿った力(FD)に同じ倍率係数fを掛けたものに比例する。
F=f・FD (式2)
【0017】
本発明の第1の態様によれば、複数の筋交い要素と、ダンパとが設けられる。この意味において、筋交い要素は、周囲の構造を安定させ、補強し、あるいは強固にする任意の構造要素と解釈されるべきである。筋交い要素を、例えば(任意の断面の)梁、剛棒、管、などで形成することができる。
【0018】
本発明の前記第1の態様においては、実質的に管状の構造物の局所的な変位が、ダンパ長手軸に沿ったダンパの変位を増大させる(倍率係数f>1)ように、筋交い要素とダンパとが連結される。したがって、風力タービン塔構造物の小さな局所的変位が、ダンパのより大きな変位につながり、結果としてより大きな減衰力がもたらされる。これを、図1a〜図1cを参照してさらに説明する。
【0019】
図1に、第1の塔状構造1が示されている。構造物1は、(振動)荷重のもとで破線で示されているように変形することができる。図1aを参照すると、真っ直ぐな筋交いについての倍率係数(式1で使用されるとおり)は、1に等しい。図1bを参照すると、斜め配置の筋交いにおいては、倍率係数がcosθに等しい。(図1cにきわめて概略的に示されているような)トグル筋交い減衰システムについては、前記倍率係数が、2までの値に達することができ、3.6という大きな値にさえ到達できる(選択されるθ1およびθ2に依存する)。また、図1dに示されているような湾曲した、(例えばグラスファイバ製の)梁を有する構成や、図1eに示されているような何らかの混成の構成においても、倍率係数が1よりも大きくなりうる。図1fに示されているようなロッカーを備える別の構成においても、倍率係数が1よりも大きくなりうる。
【0020】
これらの振動減衰システムは、(マスをナセルから塔へと下方につり下げる一部の従来技術の解決策と対照的に)大きな空間を必要とせず、風力タービン塔のさまざまな位置に配置することが可能である。したがって、風力タービン塔は、塔内に例えば電気ケーブル、階段、またはエレベータのために利用可能な空間を依然として充分に有すると考えられる。さらに、複数の振動減衰システムを塔に配置することも可能である(それでもなお、大きな空間を占めることがない)。複数の振動減衰システムを、種々の振動モードを減衰させるために使用することができる。
【0021】
本発明のいくつかの実施形態においては、前記1つまたは複数の振動減衰システムのうちの少なくとも1つがトグル筋交い振動減衰システムである。トグル筋交い振動減衰システムは、少なくとも1つのトグル(端部同士で、しかし一直線上にはないように互いに結合された2つの筋交い要素を備える)と、前記少なくとも1つのトグルに結合された減衰要素とで形成される。
【0022】
いくつかの実施形態においては、前記トグル筋交い振動減衰システムが、減衰要素と、2つの筋交い要素を有するトグルとを備えており、前記筋交い要素がのそれぞれの第1の端部が風力タービン塔の内部に取り付けられ、それぞれの第2の端部が互いに結合されており、前記減衰要素の第1の端部が風力タービンの内部に取り付けられ、その第2の端部が前記筋交い要素のそれぞれの第2の端部に結合されている。これらのトグル筋交い振動減衰システムは、一般に、下側トグル筋交い振動減衰システム(減衰要素が、2つの筋交い要素の結合場所に結合され、トグルの下方に配置されている)、または上側トグル筋交い振動減衰システム(減衰要素が、2つの筋交い要素の結合場所に結合され、トグルの上方に配置されている)と称される。
【0023】
他の実施形態においては、前記トグル筋交い振動減衰システムが、減衰要素と、2つの筋交い要素を有するトグルとを備えており、前記筋交い要素のそれぞれの第1の端部が風力タービン塔の内部に取り付けられ、それぞれの第2の端部が互いに結合されており、前記減衰要素の第1の端部が風力タービンの内部に取り付けられ、その第2の端部が前記筋交い要素のうちの一方に垂直に結合されている。これらのトグル筋交い振動減衰システムは、一般に、逆トグル振動減衰システム(減衰要素が、2つの筋交い要素の結合場所には結合されず、結果としてトグルから実質的にずらして配置されている)と称される。
【0024】
さらに他の実施形態においては、前記トグル筋交い振動減衰システムが、減衰要素と、第1および第2のトグルとを備えており、各々のトグルが2つの筋交い要素を有しており、第1のトグルの前記2つの筋交い要素のそれぞれの第1の端部が風力タービン塔の内部に取り付けられ、それぞれの第2の端部が互いに結合されており、第2のトグルの前記2つの筋交い要素のそれぞれの第1の端部が風力タービン塔の内部に取り付けられ、それぞれの第2の端部が互いに結合されており、前記減衰要素の第1の端部が前記第1のトグルの筋交い要素のそれぞれの第2の端部に結合され、その第2の端部が前記第2のトグルの筋交い要素のそれぞれの第2の端部に結合されている。この構成は、一般に、シザージャッキ振動減衰システムと称される。
【0025】
上述のいずれの種類のトグル筋交い振動減衰システムも、良好な減衰を行うことができる。これらの選択肢の間の選択は、例えば利用可能な空間、必要とされる減衰の量などに依存することができる。
【0026】
本発明の一態様においては、振動減衰システムのうちの少なくとも1つの前記筋交い要素のそれぞれの第1の端部がちょうつがい式に取り付けられる。他の実施形態においては、筋交い要素のそれぞれの第1の端部を溶接することができるか、または、他の方法で「堅固に取り付ける」ことができる。筋交いをちょうつがい式に取り付ける利点は、筋交いの風力タービン塔への結合場所において、疲労損傷を軽減できる点にある。いくつかの実施形態においては、前記筋交い要素のそれぞれの第1の端部が球面支承要素によりちょうつがい式に取り付けられる。随意による粘弾性ジョイントにより、構造物への荷重の伝達をさらに助けることができる。
【0027】
本発明の他の態様においては、少なくとも1つの振動減衰システムの前記筋交い要素のそれぞれの第2の端部がちょうつがい式に取り付けられる。それぞれの第2の端部にちょうつがい式の結合を設けることで、疲労損傷をさらに軽減することができる。しかしながら、本発明の技術的範囲において、別の構成も可能であり、例えば筋交い要素を例えば、共に溶接でき、またはボルトで取り付けることができる。
【0028】
本発明のさらなる態様においては、複数の振動減衰システムが、実質的に管状の構造物の中心軸に実質的に位置する領域において互いに連結される。好ましくは、前記複数の振動減衰システムが、摩擦振り子支承システムによって連結される。摩擦振り子支承システムは、減衰システムにおいて生じる振動を実質的に遮断するので、この振動を周囲の構造にあまり伝えない。
【0029】
この態様による実施形態の一部においては、少なくとも3つの振動減衰システムが互いに連結される。少なくとも3つの振動減衰システムを放射状に設けることによって、非対称な荷重(例えば、ロータの不釣り合い)に起因する振動を適切に減衰させることができる。
【0030】
本発明のいくつかの実施形態においては、少なくとも1つの振動ダンパシステムのダンパが粘性流体ダンパである。任意の他のダンパも、本発明の技術的範囲において使用可能である。いくつかの実施形態においては、粘性流体ダンパが制御式の磁性流体ダンパである。この特徴により、粘性流体の減衰係数を変更して、変化する条件に合わせて減衰特性を調節することができる。使用可能な他のダンパは、例えば電気粘性流体ダンパ、回転慣性ダンパ、または固体摩擦ダンパである。
【0031】
本発明のまた別の態様においては、風力タービン塔の実質的に管状の構造物が実質的に管状の複数のセグメントを備え、塔が2つのセグメントを接合する中間構造物をさらに備え、少なくとも前記減衰システムの少なくとも1つの筋交い要素が前記中間構造物に支持される。風力タービン塔は、比較的高くなる可能性がある。さまざまな理由(例えば、輸送、製造)で、今日では多くの風力タービン塔が端部同士で接合される種々のセグメントを備えている。或るセグメントから他のセグメントへの適切な荷重の伝達のために、一般に、何らかの形態の補強構造が2つのセグメントを接合するために設けられる。減衰システムの筋交い要素のうちの1つを前記補強構造に取り付けることが好都合となりうる。このようにして、塔においてさらなる補強構造を回避することができる。
【0032】
塔が種々のセグメントを備える本発明の一態様においては、前記実質的に管状のセグメントのうちの少なくとも2つが少なくとも1つの振動減衰システムを備える。塔の高さに沿って、減衰の要件が変化しうる。個々の塔のニーズに合うように異なる数および異なる種類の振動減衰システムを使用することができる。
【0033】
他の態様において、本発明は、1つまたは複数のトグル筋交い振動減衰システムを使用して風力タービン塔の振動を減衰させる方法を提供する。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態においては、トグル筋交い減衰システムを、異なる振動モードを減衰させるように能動的または半能動的に制御することができる。本発明の他の実施形態においては、トグル筋交い減衰システムが受動式である。好ましくは、減衰システムが受動式である場合、トグル筋交い減衰システムは、特に風力タービンの第1の減衰モード(1次の前後モードおよび1次の左右モード)が効果的に減衰させられるように配置される。本発明の別の態様においては、減衰システムの混成制御が用意され、複数の減衰システムが純粋に受動式のダンパを備えることができ、少なくとも1つの減衰システムを能動的に制御することができ、通常の動作においては減衰システムが純粋に受動式であるが、突然の(特定のしきい値を超える)荷重においては、望ましくない荷重をただちに抑えるために能動式ダンパが作動させられる。
【0035】
他の態様においては、本発明は、風力タービンの振動を減衰させるためにトグル筋交い振動減衰システムを使用することを提供する。いくつかの実施形態においては、複数のトグル筋交い振動減衰システムを使用することができる。これらの実施形態の一部においては、少なくとも1つのトグル筋交い振動減衰システムを、第1の振動モードを減衰させるために使用できる一方で、少なくとも1つの別の振動減衰システムを、別の振動モードを減衰させるために使用することができる。少なくとも1つのトグル筋交い振動減衰システムを、塔の第1のセグメントの振動を減衰させるために使用し、少なくとも1つの別の振動減衰システムを、塔の別のセグメントの振動を減衰させるために使用することも考えられる。
【0036】
本発明の特定の実施形態を、あくまでも本発明を限定するものではない実施例として、添付の図面を参照しつつ以下で説明する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】図1は、風力タービン塔構造物の局所的な変位と、そのような変位によって生じるダンパ長手軸に沿ったダンパの変位との間の関係を示している。c〜fは、本発明について考えられる実施形態を示している。
【図2】図2a〜dは、本発明のいくつかの実施形態について、風力タービン塔の局所的な変位と、そのような変位によって生じるダンパ長手軸に沿ったダンパの変位との間の数学的関係を説明するために使用される図である。
【図3】図3a〜fは、本発明による風力タービン塔の一実施形態を示している。
【図4】図4a〜dは、本発明による風力タービン塔の別の実施形態を示している。
【図5】本発明による風力タービン塔のまた別の実施形態を示している。
【図6】図6aおよびbは、本発明による風力タービン塔のさらなる実施形態を示している。
【図7】本発明を有利に使用することができる風力タービン塔を示している。
【図8】図8a〜cは、本発明による風力タービン塔の振動のいくつかの減衰方法を示している。
【図9】本発明の実施形態の等角投影図および断面図である。
【図10】本発明の実施形態の等角投影図および断面図である。
【図11】本発明の実施形態の等角投影図および断面図である。
【図12】本発明の実施形態の等角投影図および断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図2aは、本発明の第1の実施形態を示しており、2つの下側トグル筋交いダンパシステムが風力タービン塔の管状構造物の内部に配置されている。下側トグル筋交いダンパシステムは、互いに結合されたトグル(2つの筋交い要素を有している)、および減衰要素を備えており、減衰要素がトグルの実質的に下方に配置されている。
【0039】
すでに述べたように、減衰システムにおいて生成される減衰力は、構造物の局所的な変位に直接依存するのではなく、このドリフトによって引き起こされるダンパの軸に沿ったダンパの相対変位に依存する。一般に、
uD=f・u (式1)
である。
【0040】
この式において、uDは、ダンパの軸に沿ったダンパの相対変位であり、fは、倍率係数であり、uは、風力タービン塔における局所的な変位である。同様に、ダンパによって構造にもたらされる力(F)は、ダンパの軸に沿った力(FD)に同じ倍率係数fを掛けたものに比例する。
F=f・FD (式2)
【0041】
図2aに示したトグル筋交いダンパの構成の倍率係数は、
(式3)
と決定することができる。
【0042】
倍率係数の導出は、変形が小さいと仮定しており、筋交いの軸方向の弾性を考慮に入れていないことに留意すべきである。倍率係数のより詳細な導出については、例えば「Constantinou,M.C.、Tsopelas,P.、Hammel,W.、およびSigaher,A.著、(2001)、Toggle−brace−damper seismic energy dissipation systems、“Journal of Structural Engineering”、127(2):105〜112」(以下では、「Constantinou 2001」と称する)を参照されたい。詳細な導出は、本特許出願の範囲外である。
【0043】
さらに、ダンパによってもたらされる横方向の減衰力FTを、
(式4)
と決定することができ、ここでFDは、ダンパの力である。
【0044】
適切な角度θ1、θ2、θ3を決定するための現実的な手法(ただし、これに限られるわけではない)を、「Hwang,J−S、Huang,Y−N、およびHung,Y−H著、(2005)、Analytical and Experimental Study of Toggle− Brace− Damper Systems、“Journal of Structural Engineering”、127(2):1035〜1043」(以下では、「Hwang 2005」と称する)から導出することができる。3つの無次元の幾何学的パラメータθ1、L1/D、およびH/Dを、角度θ2、θ3を定めるために使用することができる。
(式5)
(式6)
【0045】
3つの無次元パラメータが決定されたとき、倍率係数を、式3を使用して計算することができる。この手法によれば、トグル筋交いダンパシステムの幾何学的構成に起因する以下の制約を考慮に入れる必要がある。
(式7)
【0046】
θ1が選択された場合、L1は、式8に示されるようにD/cos(θ1)よりも小さくなければならない。
(式8)
【0047】
極端な事象のもとでトグル筋交いダンパの構造を維持するために、ダンパを結合する筋交いの全長は両方の筋交いの横揺れ運動によって生じる斜めの全長よりも大きくなければならない。この制約に基づき、以下の不等式を導出することができる。
(式9)
【0048】
式9の左辺u/Hが、まさに「ドリフト比」であることに注目すべきである。したがって、トグル筋交い機構を維持するために、トグル筋交いダンパシステムの2つの筋交いが真っ直ぐになったり、あるいは反転したり(snap through)することがないように、生じうる最大のドリフト比が式9を満足しなければならない。
【0049】
上述の制約に基づき、トグル筋交いダンパシステムの幾何学的配置と倍率係数fとの間の関係を、振動減衰システムの設計パラメータH/Dにおいて、以下の工程を使用して確立することができる。
1.式7の制約を満たすθ1の範囲を決定する。
2.式8の制約を順守するL1/Dの範囲を決定する。
3.指定のu/Hに対応する式9を満足するθ1およびL1/Dの組合せの適切な範囲を決定する。
4.倍率係数fと種々のL1/Dの値に対応する傾斜角θ1との間の関係を導出する。
5.ひとたび無次元パラメータが決定された場合、設計のすべてのパラメータを、式5および式6を使用して決定することができる。
【0050】
ここで説明した方法は、「Hwang 2005」に基づいており、本発明による風力タービンにおいて使用される振動減衰システムを設計する適切かつ実用的な1つのやり方を提示するものとして説明されているにすぎない。しかしながら、他の設計方法も使用可能である。
【0051】
図2bは、本発明の第2の実施形態を示しており、2つの上側トグル筋交いダンパシステムが風力タービン塔の管状構造物の内部に配置されている。上側トグル筋交いダンパシステムは、互いに連結されたトグル(2つの筋交い要素を有している)、および減衰要素を備えており、減衰要素がトグルの実質的に上方に配置されている。上側トグル筋交いシステムは、先の下側トグル機構において説明した運動学的設計と同様の運動学的設計に従う。上側トグル筋交いダンパシステムの倍率係数を、以下と決定することができる(「Constantinou,2001」を参照)。
(式10)
例として、θ1=31.9°およびθ2=43.2°の場合、倍率係数f=3.191である。
【0052】
ダンパによってもたらされる横方向の減衰力を、
(式11)
と決定することができ、ここでFDはダンパの力である。設計のプロセスを容易にするために、すでに説明した下側トグル筋交い減衰システムにおいて「Huang 2005」から導出されたものと同様の合理化された設計プロセスの手順を使用することができる。同じ無次元の幾何学的パラメータθ1、L1/D、およびH/Dを、角度θ2、θ3を表わすために使用することができる。
【0053】
図2cは、本発明の第3の実施形態を示しており、2つのシザージャッキ筋交いダンパシステムが風力タービン塔の管状構造物の内部に配置されている。
【0054】
「Lee,S−H.、Min,K−W、Chung,L.、Lee,S−K、Lee,M−K、Hwang,J−S、Choi,S−B、Lee,H−G著、Bracing Systems for Installation of MR Dampers in a Building Structure、“Journal of Intelligent Material Systems and Structures”、第18巻、2007年11月、p.1111〜1120」に従い、
(式12)
という倍率係数fの式に達する。
【0055】
例として、θ=45°およびΨ=20°において、倍率係数fは、1.94である。
【0056】
図2dは、逆トグル筋交い減衰システムを示している。逆トグル筋交いシステムは、トグル(2つの筋交い要素を有する)および減衰要素を備えている。減衰要素は、一方の筋交い要素に(2つの筋交い要素を連結している場所ではない場所において)結合されている。したがって、減衰要素は、図2dに見て取ることができるとおり、トグルから多少ずらされて配置されている。
【0057】
「Constantinou,2001」を参照し、倍率係数fを、
(式13)
と決定することができる。
【0058】
ここで、θ1=30°、θ2=49°、およびα=0.7において、倍率係数f=2.521である。これまでに示したとおり、種々のトグル筋交いの構成を使用することによって、風力タービン塔の構造の局所的な変位によって引き起こされるダンパ長手軸に沿ったダンパの変位を、大きくすることができる。したがって、これまでに示した構成は、原理的に振動の効果的な減衰にきわめて適しており、たとえわずかな変位でも大きな減衰力をもたらすことができる。
【0059】
図3a〜図3fは、本発明による風力タービン塔の実施形態を示している。図3aには、単一の振動減衰システムの断面図が示されている。
【0060】
この実施形態の風力タービン塔10は、少なくとも2つの管状の塔セグメント11および12を備えている。塔セグメント11および12のフランジは、複数のボルト17によって互いに結合されている。さらに、この実施形態における中間構造物15は、塔の片側から反対側へと延びている少なくとも1つの梁16を備えている。
【0061】
振動減衰システム100は、3つの構成要素110、120、および130を備えている。減衰要素110はダンパ111を備えている。筋交い112は、支持部14上に取り付けられた摩擦振り子支承システム115に支持されている。筋交い要素120は塔の取り付け部125にちょうつがい式に結合されている。中間構造物116上に取り付けられた取り付け部135は、筋交い要素130をちょうつがい式に支持している。筋交い要素120および130は、いわゆる「筋交いトグル」、すなわち端部同士にてつなぎ合わせられているが一直線上にはない2つの筋交いで構成された装置を形成している。そのようなトグルの特徴は、そのようなトグルを真っ直ぐにするような力が加えられた場合に、筋交いの外側端に隣接しており、あるいは筋交いの外側端に取り付けられている部位(すなわち、この場合には取り付け部125および135であり、結果として風力タービン塔のセグメント11である)に、圧力が作用することにある。トグル筋交いは、ここでは一直線上にない2つの筋交いとして説明されるが、使用時に極端な荷重のもとで、筋交い120、130がおそらくは一時的に一直線になる可能性があることに留意すべきである。
【0062】
筋交い要素110および120ならびに減衰要素130は、ピンによって互いにちょうつがい式に結合されている。構成要素110、120、130は、それぞれの第1の端部110A、120A、130Aにおいて風力タービン塔の内部に(取り付け部115、125、および135を介して)取り付けられ、それぞれの第2の端部110B、120B、130Bにおいて互いに結合されている。
【0063】
図3bにおいては、2つの振動減衰システムが同じ風力タービン塔の内部に示されている。第1の振動減衰システム100は、減衰要素110およびトグル120−130を備えており、第2の振動減衰システム200は、減衰要素210およびトグル220−230を備えている。両方の振動減衰システムは、梁16および塔セグメント11の管状構造物へと取り付け部を介して同様に配置されている。2つの減衰システム100および200は、塔構造物の中心軸に沿って位置する摩擦振り子支承システム115において互いに連結されている。2つの減衰システムを互いに連結することによって、一方の減衰システムの力が他方の減衰システムへと伝えられる。また、このやり方で、複数の減衰システムを単一の点に取り付けることができ、図3bにおいては、梁16にただ1つの取り付け点しか存在しない。
【0064】
本発明の技術的範囲において、このようなやり方で互いに結合される減衰システムの数は、変更してもよい。図3fは、3つの減衰システム100、200、および300が摩擦振り子支承システム115において連結されている本発明の実施形態を示している。(図3fが、図3bの実施形態の上面図を示しているのではなく、別の実施形態を示していることに留意すべきである)。図3fの3つの減衰システムは、それらの間に120°の角度を可能にするように放射状に配置されている。
【0065】
さらに、図3fには、例えばエレベータまたは階段のための空間90と、例えば電気ケーブルのための空間80とが示されている。このように、図3fは、複数の減衰システムを塔において同じ高さに配置することができ、依然として塔において補助システムのために充分な空間を利用できることを示している。本発明の技術的範囲において、3つではなくて1つ、2つ、4つ、または5つなど、任意の他の数の減衰システムを使用してもよい。本発明の技術的範囲において、さまざまな数の減衰システムを、塔の高さの途中にさらに配置してもよい。例えば、或る高さにおいて、3つの減衰システムを互いに結合できる一方で、第2の高さに、4つの減衰システムを設けることができる。同じ高さに3つ以上の減衰システムを設けることで、任意の所望の方向の減衰が可能になり、例えばナセルの不釣り合いまたはロータの運動によって引き起こされる非対称な振動を減衰させることができる。
【0066】
図3c、3d、および3eは、図3aに示した振動減衰システム100のいくつかの細部を示している。図3cは、構成要素110、120、および130それぞれの第2の端部を結合するピン105を示している。本発明の一態様において、このピンを、例えばステンレス鋼または強化鋼で製作することができる。このようにして、構成要素がお互いに対してちょうつがい式に配置される。
【0067】
図3dは、筋交い要素120の第1の端部の取り付け部125を示している。球面支承126が、粘弾性ジョイント127によって取り付け部125に配置されている。
【0068】
図3eは、減衰要素110および210(減衰要素110および210のそれぞれのダンパが、参照番号111および211で示されている)を連結する摩擦振り子支承115を示している。要素210の筋交い212に、球面支承216が配置されている。粘弾性ジョイント217が、球面支承216と連結部材113との間に配置されている。連結部材113は、減衰システム100と200の間のリンクであり、要素111および211をスライダ118へと連結している。粘弾性ジョイントは、荷重を支承に伝達するために特に適している。しかしながら、本発明の技術的範囲において、そのような粘弾性ジョイントを省略しても、あるいは任意の他の適切なジョイントで置き換えてもよい。
【0069】
図3eに示されている摩擦振り子支承115は、以下のように機能する。塔が振動しているとき、減衰システムの構成要素が運動し、連結部材をスライダ118とともに三次元の凹面119においてスライドさせる。摩擦振り子支承システムは、構造において振動を遮断するために使用される。スライダ118が凹面119において移動できるということゆえに、支承が動くが、支承を支持している構造の動きははるかに少ない。スライダ118に適した材料は、テフロン(商標)であってもよく、凹面119に適した材料は、ステンレス鋼であってもよい。他の材料も使用可能である。材料を変えることによって、振り子支承システムの摩擦係数を操作することができる。さらに図3eには、塵埃、不純物、湿気、などに起因する摩耗を軽減できるよう、スライダ118および凹面119を外部に対して封じるシール117が示されている。図3eに見て取ることができるとおり、スライダ118は、その一方の面上に、連結部材113を支持するための実質的に球状の表面を有している。他方の面は、前記表面119において滑らかにスライドするよう、凹面119と対をなす形状を有している。
【0070】
この実施形態においては、摩擦振り子支承システムは、(単一の「スライダ」を備える)単一摩擦振り子支承システムとして示されている。しかしながら、本発明の技術的範囲において、二重凹面振り子支承システム(2つの「スライダ」を備える)または三重振り子支承システム(3つの「スライダ」を備える)など、他の摩擦振り子支承システムを使用してもよい。
【0071】
図4a〜図4dは、本発明による風力タービン塔の別の実施形態を示している。図4aに、1つの振動減衰システムの断面図が示されている。振動減衰システム100は、第1のトグル(筋交い要素120および130を有している)と、第2のトグル(筋交い要素140および150を有している)と、減衰要素110とを備えている。減衰要素110は、ダンパ111と筋交い112とを備えている。構成要素120、130、140、および150は、それぞれの第1の端部120A、130A、140A、および150Aにおいて塔の内部にちょうつがい式に取り付けられ、それぞれの第2の端部120B、130B、140B、および150Bにおいて相互かつ減衰要素110にちょうつがい式に連結されている。図4aに示されている実施形態は、一般に、シザージャッキ型トグル筋交い減衰システムと称される。
【0072】
図4bは、摩擦振り子支承システム115において互いに連結された2つの減衰システム100、200を示している。摩擦振り子支承システム115は、塔のセグメント11および12の境目に配置された梁16に取り付けられている。しかしながら、本発明の技術的範囲において、減衰システムを、風力タービン塔の任意の高さに配置することが可能である。
【0073】
図4cは、どのように構成要素110、120、および130がそれぞれの第2の端部110B、120B、および130Bにおいてピン136によって結合されるのかを示している。筋交い要素140および150の第2の端部140Bおよび150Bは、ピン146において減衰要素110の第1の端部110Aに結合されている。
【0074】
図4dは、摩擦振り子支承システム115を示している。球面支承114において、第1の支承システムの筋交い要素130および140がちょうつがい式に結合されている。同じ球面支承において、構成要素230および240がちょうつがい式に結合されている。このようにして、2つの減衰システム100および200は、連結部材113において連結されている。連結部材113に、図3eに示した支承システムと同様のやり方で、スライダ118が配置されている。
【0075】
図5は、本発明による風力タービン塔のさらに別の実施形態の断面図を示している。2つのいわゆる「上側トグル」筋交い減衰システム100および200が示されている。減衰システム100は、減衰要素110ならびに筋交い要素120および130を備えている。減衰要素110は、実質的にトグル120−130の上方に配置されている。筋交い要素120は、取り付け部125に配置された球面支承126によって風力タービン塔にちょうつがい式に結合されている。筋交い要素130も、その第1の端部に、取り付け部135に配置される玉支承136を備えている。取り付け部135は、この実施形態において、有利には梁16に結合されている。減衰システム100および200は、塔の中心に配置された摩擦振り子支承システム115において互いに連結されている。摩擦振り子支承システム115は、この実施形態においては、やはり有利には塔の2つのセグメントの間に配置された中間構造物16に取り付けられる。
【0076】
図6aおよび6bは、本発明による風力タービンの2つのさらなる実施形態を示している。図6aに示されている振動減衰システム100は、トグル筋交い振動減衰システムの別の一形態であり、いわゆる「二連」トグル筋交いである。二連トグル筋交い100は、2つの減衰要素110および110’と、3つの筋交い要素とを備えている。第1の筋交い要素120および第2の筋交い要素130は第1のトグルを形成している。第2の筋交い要素130および第3の筋交い要素140は第2のトグルを形成している。2つのトグルが一直線に配置されている。二連トグル筋交い減衰システムの態様は、たとえ極端な荷重のもとで二連トグルの第1の部分が反転しても、第2の部分が依然としてトグル筋交いとして機能すると考えられる点にある。
【0077】
図6aの実施形態において、二連トグル筋交い振動減衰システムは、風力タービン塔の直径に及んでいる。図6bの実施形態においては、2つの二連トグル筋交い振動減衰システム100、200が実質的に塔構造物の中心軸に位置する領域において連結されている。
【0078】
図3〜図6においては、すべての減衰要素110、210は、減衰要素の全長の約50〜60%の長さを有するダンパを備えるものとして示されていた。本発明の他の実施形態においては、この比が、例えば10%あるいは100%に近いなど、別の比であってもよい。前記比(または、前記ダンパの長さ)は、例えば、減衰させるべき振動の大きさ、ダンパの種類、ダンパの減衰係数、減衰システムの物理的な寸法などに依存することができる。
【0079】
図7は、本発明による方法およびシステムを有利に使用することができる風力タービン塔を概略的に示していた。今日の風力タービン塔は、サイズの増大ゆえに、種々のセグメントで構成される。塔を種々のセグメントに分割することで、例えば現場への輸送および製造が容易になる。風力タービン塔10は、例えば塔の下部セグメント13、中間セグメント11、および上部セグメント12を備えている。塔の各セグメントは、中間構造物15によって互いに結合される。塔の上部にナセル5(概略的に示されている)が配置される。
【0080】
図3、図4、および図5においては、減衰システムが塔のセグメント11に配置されるものとして示されているが、本発明は、この意味に限定されない。使用時に、種々のセグメントにおいて生じる振動は、わずかに異なる可能性がある。塔の上部セグメント12は、塔の下部セグメント13と比べて減少した厚さを有する可能性がある。これは、振動の発生および強さに影響を及ぼすと考えられる。塔を通り過ぎる風力タービンの羽根の影響も、塔の各々のセグメントにとって同じでない可能性がある。塔の種々のセグメントにおいて生じるさまざまな振動モードを減衰させることができるように、減衰システムを、例えば塔の上部セグメント、または下部セグメント、すべてのセグメント、あるいはいくつかの利用可能なセグメントに配置することができる。
【0081】
本発明の一態様においては、1つまたは複数の減衰システム(例えば、下側トグル式)を、塔の上部セグメント12に配置することができる一方で、別の形式(例えば、上側トグル式)の1つまたは複数の減衰システムを塔の中間セグメント11に配置することができる。本発明の一態様は、減衰システムの数および形式が、塔の各所において変更されてもよく、したがって振動の減衰を、各々の風力タービン塔に合わせて細かく調節できる点にある。或る高さにおいて、減衰システムを振動の1次モードを減衰させるように構成できる一方で、塔の別の高さにおいて、振動の別のモードが減衰される。
【0082】
図8a〜図8cは、本発明に従って風力タービン塔の振動を減衰させるいくつかの方法を示している。減衰システムにおいて使用されるダンパ110、210は、本発明の技術的範囲において変更されてもよい。一態様においては、粘性流体ダンパであってもよい。本発明の技術的範囲において、任意の種類のダンパ(例えば、液圧式、空気式、固体摩擦式、回転慣性−粘性ダンパ、回転摩擦ダンパなど)を使用することが可能である。ダンパは、受動式、半能動式、または能動式であってよい。
【0083】
受動式ダンパシステムは、可変ではない減衰係数を有する。半能動式ダンパシステムにおいては、減衰係数を制御システムによって変化させることができる。能動式のダンパシステムにおいては、ダンパは、例えば流体チャンバのうちの1つの圧力を増加または減少させることによって能動的に操作される。半能動式ダンパシステムを、例えば可変オリフィス粘性ダンパ、可変剛性ダンパ、可変摩擦ダンパ、または制御式流体ダンパによって形成することができる。好ましい制御式流体ダンパは、磁性流体ダンパである。磁性流体ダンパにおいては、ダンパの流体が金属粒子を含んでいる。ダンパの減衰係数を、電磁石によって制御することができる。したがって、制御システムは、減衰係数を増加または減少させることができる制御信号を電磁石に送信することができる。
【0084】
有利に使用することができる他の制御式流体ダンパは、例えば電気粘性流体ダンパである。電気粘性流体は、電気絶縁性の流体における微細な非導電性粒子の懸濁液である。これらの流体の粘性は、電界に応答して可逆、かつきわめて迅速に変化することができる。したがって、そのようなダンパにおいて、電界を加えることによって摩擦係数を変化させることが可能である。
【0085】
減衰システムは、受動式、半能動式、または能動式のいずれであってもよい。本発明の一態様においては、同じ風力タービン塔において、受動式および半能動式、または能動式の減衰システムの組合せを備える混成システムを設けることができる。
【0086】
図8aにおいては、2つの下側トグル筋交い減衰システムが風力タービン塔10の内部に配置されている。第1のセンサ510は、塔の2つのセグメント間の中間構造物に配置されている。第2のセンサ520は、ダンパ211を備える減衰要素210に配置されている。第3のセンサ530は、ダンパ111を備える減衰要素110に配置されている。3つのセンサ510、520、530は、例えば変位、応力、またはひずみを測定することができる。センサからの信号は入力/出力ユニット540へと送信され、この入力/出力ユニット540は、信号を制御システム550(図7aにおいてはコンピュータとして概念的に示されている)へと送信する。制御システムは、これらのセンサ信号に基づいて、2つのダンパ111および211へと制御信号を送信し、磁性流体または電気粘性流体ダンパの減衰係数を変化させ、あるいは例えばダンパ111を能動的に制御するために、例えば電磁石を作動させることができる。
【0087】
この実施形態においては、3つのセンサが制御システムにおいて配置された。本発明の他の実施形態においては、より多数またはより少数のセンサを使用してもよい。例えば、複数のセンサを、風力タービン塔の壁に沿って配置してもよい。さらに、センサは、例えば変位センサ、過速度センサ、応力センサ、ひずみセンサなど、異なる種類のセンサであってもよく、例えば磁気、光、慣性、誘導など、さまざまな技術に基づいてもよい。
【0088】
図8bは、類似の制御システムであるが、シザージャッキ型トグル筋交い減衰システムを備えている制御システムを示している。センサ520および530が、トグル筋交い減衰システムの他の構成要素との接点に位置する減衰要素210および110の端部にそれぞれ配置されている。ダンパの変位が、達成される振動の減衰の大きさを直接的に決定する。センサを上述の位置に配置することで、ダンパの変位を容易に記録することができる。しかしながら、本発明の技術的範囲において、センサを他の位置に配置することも可能である。
【0089】
図8cを使用し、制御システムの信号を説明する。センサ510からの第1の信号710が、入力/出力ユニット540へと送信される。それぞれのセンサ520および530からの第2および第3の信号720、730も、入力/出力ユニット540へと送信される。集められた信号は、信号740によって制御システム550へと送信される。制御システム550が情報を処理して適切な制御信号を計算し、信号750を入力/出力ユニット540へと送信することによって応答する。入力/出力ユニット540は、指令信号610および620をそれぞれのダンパへと送信する。いくつかの実施形態においては、これらの制御信号は、例えば磁性流体ダンパ内の電磁石に加えられる電流または能動式液圧ダンパのための圧力であってもよい。
【0090】
図8a〜図8cにおいては、入力/出力ユニット540が制御システム550とは別に示された。しかしながら、制御システム550および入力/出力ユニット540が1つの一体の構成要素を形成してもよいことが明らかである。さらに、制御システム550を、風力タービンのナセル、または風力タービンの他のどこかに配置することができ、風力タービンの外部の遠方に配置することさえ可能である。さらに、いくつかの実施形態においては、別々の制御システム550を、単一の減衰システムについて設けても、あるいは連結された一群の減衰システムについて設けてもよい。他の実施形態においては、単一の制御システムを、風力タービンに配置されたすべての制御式ダンパ(本発明のいくつかの実施形態においては、複数の半能動式または能動式減衰システムが、いくつかの受動式減衰システムと組み合わせられる)を操るように設けることができる。
【0091】
図9aは、本発明による風力タービンの等角投影図を示している。風力タービンは、内部へのアクセスを提供する扉20を有している塔10を備えている。図9bは、図9aに示されている細部Aのより良好な図を示している。図9bにおいて、4つの減衰システム100、200、300、および400を明確に見て取ることができる。減衰システムはすべて、下側トグル筋交い振動減衰システムである。減衰システムが、塔の2つのセグメント間の中間構造物15に配置された梁16に取り付けられている。4つの減衰システムは、摩擦振り子支承115において互いに連結されている。
【0092】
図9cおよび図9dは、同じ実施形態の上面図および側面図を示している。図9aおよび9dにおいて、塔のセグメントを複数の溶接された塔リングで構成できることをさらに理解することができる。同じことが図10および11にも示されている。
【0093】
図10aは、別の実施形態の等角投影図である。この実施形態は、3つの上側トグル筋交い振動減衰システム100、200、および300を備えている。減衰システムは、図9に示したものと同じ梁に取り付けられるものとして示されている。図10bは、同じ実施形態の断面図を示している。
【0094】
図11aおよび図11bは、4つのシザージャッキ振動減衰システムを備える実施形態の等角投影図および断面図を示している。図9、図10、および図11において、すべての振動減衰システムは、中間構造物に位置する梁16の下方に配置されている。したがって、これらの実施形態の減衰システムは、梁の下方に配置された塔のセグメントの振動を減衰させるために使用される。しかしながら、減衰システムが梁の上方に取り付けられるように構成された図12に示されているような実施形態も可能であることが明らかである。したがって、この実施形態の減衰システムは、前記梁の上方に配置された塔のセグメントの振動を減衰させるように構成される。本発明のいくつかの実施形態においては、同じ中間構造物において、第1のいくつかの振動減衰システムを梁の上方に配置することができ、第2のいくつかの振動減衰を同じ梁の下方に配置することができる。
【0095】
本出願の全体を通して、実質的に管状の塔構造物に言及してきた。すべての図において、この管状構造物は、円筒形の断面を有するものとして示された。しかしながら、本発明の技術的範囲において、実質的に管状の構造物が、風力タービン塔の高さの少なくとも一部において楕円形または実質的に楕円形の断面を有してもよいことを理解すべきである。
【0096】
本出願の全体を通して、種々の構成部品を、他の構成部品に対してちょうつがい式に配置されると説明してきた。これを、2つの部品を一体に保持するが、一方の部品が枢支部を中心にして他方に対して回転することを許容する任意のジョイントと解釈すべきである。したがって、この意味で枢支部は、例えば球面支承装置または単純な枢動ヒンジを指すことができる。
【0097】
本発明を、特定の好ましい実施形態および実施例の文脈において開示したが、本発明が、具体的に開示された実施形態を超えて本発明の他の代案の実施形態および/または使用、ならびにそれらの自明な変更および均等物にまで広がることを当業者であれば理解できるであろう。したがって、本明細書に開示された本発明の技術的範囲は、上述した特定の開示済みの実施形態によって限定されるべきではなく、あくまでも以下の特許請求の範囲を公正に検討することによって決定されなければならない。
【図1a】
【図1b】
【図1c】
【図1d】
【図1e】
【図1f】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図2d】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図3d】
【図3e】
【図3f】
【図4a】
【図4b】
【図4c】
【図4d】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に管状の塔構造物と、1つまたは複数の振動減衰システムとを備えた風力タービンであって、
前記1つまたは複数の振動減衰システムのうちの少なくとも1つが複数の筋交い要素と減衰要素とを備えており、
前記筋交い要素のうちの1つが前記塔構造物に結合されており、
前記塔構造物の局所的な変位が、ダンパ長手軸に沿った前記ダンパの変位を増大するように、前記筋交い要素と前記減衰要素とが連結されている
風力タービン。
【請求項2】
前記1つまたは複数の振動減衰システムのうちの少なくとも1つがトグル筋交い振動減衰システムである、請求項1に記載の風力タービン。
【請求項3】
前記トグル筋交い振動減衰システムが、減衰要素と、2つの筋交い要素を有するトグルとを備えており、
前記筋交い要素のそれぞれの第1の端部が前記風力タービン塔の内部に取り付けられるとともに、それぞれの第2の端部が互いに結合されており、
前記減衰要素の第1の端部が前記風力タービンの内部に取り付けられるとともに、その第2の端部が前記筋交い要素の前記それぞれの第2の端部に結合されている
請求項2に記載の風力タービン。
【請求項4】
前記トグル筋交い振動減衰システムが、減衰要素と、2つの筋交い要素を有するトグルとを備えており、
前記筋交い要素のそれぞれの第1の端部が前記風力タービン塔の内部に取り付けられるとともに、それぞれの第2の端部が互いに結合されており、
前記減衰要素の第1の端部が前記風力タービンの内部に取り付けられるとともに、その第2の端部が前記筋交い要素のうちの一方に垂直に結合されている
請求項2に記載の風力タービン。
【請求項5】
前記トグル筋交い振動減衰システムが、減衰要素と、各々が2つの筋交い要素を有する第1および第2のトグルとを備えており、
前記第1のトグルの前記2つの筋交い要素のそれぞれの第1の端部が前記風力タービン塔の内部に取り付けられるとともに、それぞれの第2の端部が互いに結合されており、
前記第2のトグルの前記2つの筋交い要素のそれぞれの第1の端部が前記風力タービン塔の内部に取り付けられるとともに、それぞれの第2の端部が互いに結合されており、
前記減衰要素の第1の端部が前記第1のトグルの前記筋交い要素の前記それぞれの第2の端部に結合されるとともに、その第2の端部が前記第2のトグルの前記筋交い要素の前記それぞれの第2の端部に結合されている
請求項2に記載の風力タービン。
【請求項6】
前記振動減衰システムのうちの少なくとも1つの前記筋交い要素が、それぞれの第1の端部にちょうつがい式に取り付けられている、請求項1〜5のいずれか一項に記載の風力タービン。
【請求項7】
前記筋交い要素の第1の端部が球面支承要素を使用してちょうつがい式に取り付けられている請求項6に記載の風力タービン。
【請求項8】
前記少なくとも1つの振動減衰システムの前記筋交い要素の第2の端部がちょうつがい式に取り付けられている請求項1〜7のいずれか一項に記載の風力タービン。
【請求項9】
複数の振動減衰システムが、前記実質的に管状の構造物の中心軸に実質的に位置する領域において互いに連結されている、請求項1〜8のいずれか一項に記載の風力タービン。
【請求項10】
前記複数の振動減衰システムが摩擦振り子支承システムによって連結されている、請求項9に記載の風力タービン。
【請求項11】
少なくとも3つの振動減衰システムが互いに結合されている請求項8または請求項9に記載の風力タービン。
【請求項12】
少なくとも1つの振動ダンパシステムの前記ダンパが粘性流体ダンパである請求項1〜11のいずれか一項に記載の風力タービン。
【請求項13】
前記粘性流体ダンパが制御式の磁性流体ダンパである請求項11に記載の風力タービン。
【請求項14】
前記実質的に管状の塔構造物が、複数の実質的に管状のセグメントを備えており、前記塔が、2つのセグメントを接合する中間構造物をさらに備えており、少なくとも前記減衰システムの少なくとも1つの構成要素が前記中間構造物に支持されている、請求項1〜13のいずれか一項に記載の風力タービン。
【請求項15】
前記実質的に管状のセグメントのうちの少なくとも2つが、少なくとも1つの振動減衰システムを備えている、請求項14に記載の風力タービン。
【請求項16】
1つまたは複数のトグル筋交い振動減衰システムを使用する風力タービン塔の振動減衰方法。
【請求項17】
風力タービンの振動を測定することと、少なくとも1つのトグル筋交い減衰システムの前記ダンパの粘性減衰係数を変更することとを含む、請求項16に記載の振動減衰方法。
【請求項18】
風力タービンの振動を測定することと、少なくとも1つのトグル筋交い減衰システムの前記ダンパを能動的に制御することとを含む、請求項16に記載の振動減衰方法。
【請求項19】
風力タービンの振動を減衰させるためのトグル筋交い振動減衰システムの使用。
【請求項20】
複数のトグル筋交い振動減衰システムを使用することを含む請求項19に記載の使用。
【請求項21】
少なくとも1つのトグル筋交い振動減衰システムを、第1の振動モードを減衰させるために使用し、少なくとも1つの別のトグル筋交い振動減衰システムを、別の振動モードを減衰させるために使用する、請求項19に記載の使用。
【請求項22】
少なくとも1つのトグル筋交い振動減衰システムを、塔の第1のセグメントの振動を減衰させるために使用し、少なくとも1つの別のトグル筋交い振動減衰システムを、塔の別のセグメントの振動を減衰させるために使用する、請求項19または請求項20に記載の使用。
【請求項1】
実質的に管状の塔構造物と、1つまたは複数の振動減衰システムとを備えた風力タービンであって、
前記1つまたは複数の振動減衰システムのうちの少なくとも1つが複数の筋交い要素と減衰要素とを備えており、
前記筋交い要素のうちの1つが前記塔構造物に結合されており、
前記塔構造物の局所的な変位が、ダンパ長手軸に沿った前記ダンパの変位を増大するように、前記筋交い要素と前記減衰要素とが連結されている
風力タービン。
【請求項2】
前記1つまたは複数の振動減衰システムのうちの少なくとも1つがトグル筋交い振動減衰システムである、請求項1に記載の風力タービン。
【請求項3】
前記トグル筋交い振動減衰システムが、減衰要素と、2つの筋交い要素を有するトグルとを備えており、
前記筋交い要素のそれぞれの第1の端部が前記風力タービン塔の内部に取り付けられるとともに、それぞれの第2の端部が互いに結合されており、
前記減衰要素の第1の端部が前記風力タービンの内部に取り付けられるとともに、その第2の端部が前記筋交い要素の前記それぞれの第2の端部に結合されている
請求項2に記載の風力タービン。
【請求項4】
前記トグル筋交い振動減衰システムが、減衰要素と、2つの筋交い要素を有するトグルとを備えており、
前記筋交い要素のそれぞれの第1の端部が前記風力タービン塔の内部に取り付けられるとともに、それぞれの第2の端部が互いに結合されており、
前記減衰要素の第1の端部が前記風力タービンの内部に取り付けられるとともに、その第2の端部が前記筋交い要素のうちの一方に垂直に結合されている
請求項2に記載の風力タービン。
【請求項5】
前記トグル筋交い振動減衰システムが、減衰要素と、各々が2つの筋交い要素を有する第1および第2のトグルとを備えており、
前記第1のトグルの前記2つの筋交い要素のそれぞれの第1の端部が前記風力タービン塔の内部に取り付けられるとともに、それぞれの第2の端部が互いに結合されており、
前記第2のトグルの前記2つの筋交い要素のそれぞれの第1の端部が前記風力タービン塔の内部に取り付けられるとともに、それぞれの第2の端部が互いに結合されており、
前記減衰要素の第1の端部が前記第1のトグルの前記筋交い要素の前記それぞれの第2の端部に結合されるとともに、その第2の端部が前記第2のトグルの前記筋交い要素の前記それぞれの第2の端部に結合されている
請求項2に記載の風力タービン。
【請求項6】
前記振動減衰システムのうちの少なくとも1つの前記筋交い要素が、それぞれの第1の端部にちょうつがい式に取り付けられている、請求項1〜5のいずれか一項に記載の風力タービン。
【請求項7】
前記筋交い要素の第1の端部が球面支承要素を使用してちょうつがい式に取り付けられている請求項6に記載の風力タービン。
【請求項8】
前記少なくとも1つの振動減衰システムの前記筋交い要素の第2の端部がちょうつがい式に取り付けられている請求項1〜7のいずれか一項に記載の風力タービン。
【請求項9】
複数の振動減衰システムが、前記実質的に管状の構造物の中心軸に実質的に位置する領域において互いに連結されている、請求項1〜8のいずれか一項に記載の風力タービン。
【請求項10】
前記複数の振動減衰システムが摩擦振り子支承システムによって連結されている、請求項9に記載の風力タービン。
【請求項11】
少なくとも3つの振動減衰システムが互いに結合されている請求項8または請求項9に記載の風力タービン。
【請求項12】
少なくとも1つの振動ダンパシステムの前記ダンパが粘性流体ダンパである請求項1〜11のいずれか一項に記載の風力タービン。
【請求項13】
前記粘性流体ダンパが制御式の磁性流体ダンパである請求項11に記載の風力タービン。
【請求項14】
前記実質的に管状の塔構造物が、複数の実質的に管状のセグメントを備えており、前記塔が、2つのセグメントを接合する中間構造物をさらに備えており、少なくとも前記減衰システムの少なくとも1つの構成要素が前記中間構造物に支持されている、請求項1〜13のいずれか一項に記載の風力タービン。
【請求項15】
前記実質的に管状のセグメントのうちの少なくとも2つが、少なくとも1つの振動減衰システムを備えている、請求項14に記載の風力タービン。
【請求項16】
1つまたは複数のトグル筋交い振動減衰システムを使用する風力タービン塔の振動減衰方法。
【請求項17】
風力タービンの振動を測定することと、少なくとも1つのトグル筋交い減衰システムの前記ダンパの粘性減衰係数を変更することとを含む、請求項16に記載の振動減衰方法。
【請求項18】
風力タービンの振動を測定することと、少なくとも1つのトグル筋交い減衰システムの前記ダンパを能動的に制御することとを含む、請求項16に記載の振動減衰方法。
【請求項19】
風力タービンの振動を減衰させるためのトグル筋交い振動減衰システムの使用。
【請求項20】
複数のトグル筋交い振動減衰システムを使用することを含む請求項19に記載の使用。
【請求項21】
少なくとも1つのトグル筋交い振動減衰システムを、第1の振動モードを減衰させるために使用し、少なくとも1つの別のトグル筋交い振動減衰システムを、別の振動モードを減衰させるために使用する、請求項19に記載の使用。
【請求項22】
少なくとも1つのトグル筋交い振動減衰システムを、塔の第1のセグメントの振動を減衰させるために使用し、少なくとも1つの別のトグル筋交い振動減衰システムを、塔の別のセグメントの振動を減衰させるために使用する、請求項19または請求項20に記載の使用。
【図5】
【図6a】
【図6b】
【図7】
【図8a】
【図8b】
【図8c】
【図9a】
【図9b】
【図9c】
【図9d】
【図10a】
【図10b】
【図11a】
【図11b】
【図12】
【図6a】
【図6b】
【図7】
【図8a】
【図8b】
【図8c】
【図9a】
【図9b】
【図9c】
【図9d】
【図10a】
【図10b】
【図11a】
【図11b】
【図12】
【公表番号】特表2013−501172(P2013−501172A)
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−523312(P2012−523312)
【出願日】平成22年8月2日(2010.8.2)
【国際出願番号】PCT/EP2010/061235
【国際公開番号】WO2011/015563
【国際公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(512028987)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月2日(2010.8.2)
【国際出願番号】PCT/EP2010/061235
【国際公開番号】WO2011/015563
【国際公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(512028987)
【Fターム(参考)】
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