説明

駆動力分配伝達装置

【課題】摩擦多板クラッチの容量を確保しながら車軸方向の大型化抑制或いはコンパクト化を促し、左右車軸の長さが短くなるのを抑制し或いは長くすることもでき、左右車軸の取り付け角度の増大抑制或いは減少により、左右車軸のジョイント部の駆動ロス減による発熱抑制やジョイント部の耐久性低下抑制或いは向上を可能とする。
【解決手段】クラッチ入力回転部材135は、ハウジング縦壁部151及びハウジング周壁部150を有するクラッチ・ハウジング部143を備え、クラッチ出力回転部材137は、クラッチ・ハブ157を備え、ハウジング縦壁部151には、ギヤ・キャリヤ61側への突出形状によりクラッチ・ハブ157側へ向いたハウジング凹部152が形成され、クラッチ・ハブ157の端部が、ハウジング凹部152内に臨んでいることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力された駆動力を分配して出力可能な自動車等の駆動力分配伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、入力された駆動力を分配して出力可能な自動車等の駆動力分配伝達装置として、二つの調節クラッチを備えた差動装置が知られている。
【0003】
この差動装置は、入力された駆動力を異なる軸線上に配置された2つのギヤの一例であるハイポイド・ギヤの噛み合いによりギヤ出力部材に伝達し、このギヤ出力部材から二つの調節クラッチの締結調節により駆動力を分配出力する構造となっている。
【0004】
この差動装置が、例えば4輪駆動車の2次駆動ラインに取り付けられ、二つの調節クラッチによる駆動力の出力調整によりエンジンからの駆動力を左右車輪へ分配出力できるようになっている。
【0005】
しかし、かかる差動装置は、二つの調節クラッチを左右両側に併設するため、左右方向の軸長が長くなり、車軸方向のコンパクト化に限界を招いていた。このため、差動装置に連結する左右車軸の長さを短くする必要もあり、左右車軸の取り付け角度が増大し、左右車軸のジョイント部の駆動ロス増による発熱やジョイント部の耐久性低下を招く恐れもあった。
【0006】
一方、左右車軸の長さを短くしないようにするには、差動装置の左右方向の軸長を短くする必要があり、調節クラッチの容量の低下を招くことになる。
【0007】
【特許文献1】特開平9−328021号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
解決しようとする問題点は、摩擦多板クラッチの容量を確保しながら車軸方向の大型化抑制或いはコンパクト化に限界を招き、左右車軸の長さを短くする必要もあり、左右車軸の取り付け角度が増大し、左右車軸のジョイント部の駆動ロス増による発熱やジョイント部の耐久性低下を招く恐れもあった点である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、摩擦多板クラッチの容量を確保しながら車軸方向の大型化抑制或いはコンパクト化を促し、左右車軸の長さが短くなるのを抑制し或いは長くすることもでき、左右車軸の取り付け角度の増大抑制或いは減少により、左右車軸のジョイント部の駆動ロス減による発熱抑制やジョイント部の耐久性低下抑制或いは向上を可能とするため、ギヤ・キャリヤのギヤ室に収容され異なる軸線上に配置された2つのギヤの噛み合いを介して駆動力伝達可能に連動構成され前記ギヤ・キャリヤに回転自在に支持されたギヤ入力回転部材及びギヤ出力回転部材と、前記ギヤ出力回転部材の両端部に結合され前記ギヤ・キャリヤに取り付けられたクラッチ・キャリヤのクラッチ室に収容配置された摩擦多板クラッチの締結により駆動力出力調整を行う左右一対のクラッチ出力調整機構部とを備えた駆動力分配伝達装置において、前記クラッチ出力調整機構部は、前記ギヤ出力回転部材に結合されたクラッチ入力回転部材と前記クラッチ・キャリヤに回転自在に支持され伝達駆動力を出力するためのクラッチ出力回転部材とを備えて該クラッチ入出力回転部材間に前記摩擦多板クラッチを介設し、前記クラッチ入力回転部材は、径方向に沿ったハウジング縦壁部及び軸方向に沿ったハウジング周壁部を有して前記摩擦多板クラッチのアウター・プレートを係合させるクラッチ・ハウジング部を備え、前記クラッチ出力回転部材は、前記クラッチ・ハウジング部の内周側に配置され前記摩擦多板クラッチのインナー・プレートを係合させるクラッチ・ハブを備え、前記ハウジング縦壁部には、前記ギヤ・キャリヤ側への突出形状により前記クラッチ・ハブ側へ向いたハウジング凹部が形成され、前記クラッチ・ハブの端部が、前記ハウジング凹部内に臨んでいることを主要な特徴とする。
【0010】
また、ギヤ・キャリヤのギヤ室に収容され異なる軸線上に配置された2つのギヤの噛み合いを介して駆動力伝達可能に連動構成され前記ギヤ・キャリヤに回転自在に支持されたギヤ入力回転部材及びギヤ出力回転部材と、前記ギヤ出力回転部材の両端部に結合され前記ギヤ・キャリヤに取り付けられたクラッチ・キャリヤのクラッチ室に収容配置された摩擦多板クラッチの締結により駆動力出力調整を行う左右一対のクラッチ出力調整機構部とを備えた駆動力分配伝達装置において、前記クラッチ出力調整機構部は、前記ギヤ出力回転部材に結合されたクラッチ入力回転部材と前記クラッチ・キャリヤに回転自在に支持され伝達駆動力を出力するためのクラッチ出力回転部材とを備えて該クラッチ入出力回転部材間に前記摩擦多板クラッチを介設し、前記クラッチ入力回転部材は、前記摩擦多板クラッチのアウター・プレートを係合させるクラッチ・ハウジング部を備え、前記クラッチ出力回転部材は、前記クラッチ・ハウジング部の内周側に配置され前記摩擦多板クラッチのインナー・プレートを係合させるクラッチ・ハブを備え、前記クラッチ出力部材は、前記クラッチ・ハブの内周側で軸受けを介し前記クラッチ入力回転部材に回転自在に支持されていることを主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、ギヤ・キャリヤのギヤ室に収容され異なる軸線上に配置された2つのギヤの噛み合いを介して駆動力伝達可能に連動構成され前記ギヤ・キャリヤに回転自在に支持されたギヤ入力回転部材及びギヤ出力回転部材と、前記ギヤ出力回転部材の両端部に結合され前記ギヤ・キャリヤに取り付けられたクラッチ・キャリヤのクラッチ室に収容配置された摩擦多板クラッチの締結により駆動力出力調整を行う左右一対のクラッチ出力調整機構部とを備えた駆動力分配伝達装置において、前記クラッチ出力調整機構部は、前記ギヤ出力回転部材に結合されたクラッチ入力回転部材と前記クラッチ・キャリヤに回転自在に支持され伝達駆動力を出力するためのクラッチ出力回転部材とを備えて該クラッチ入出力回転部材間に前記摩擦多板クラッチを介設し、前記クラッチ入力回転部材は、径方向に沿ったハウジング縦壁部及び軸方向に沿ったハウジング周壁部を有して前記摩擦多板クラッチのアウター・プレートを係合させるクラッチ・ハウジング部を備え、前記クラッチ出力回転部材は、前記クラッチ・ハウジング部の内周側に配置され前記摩擦多板クラッチのインナー・プレートを係合させるクラッチ・ハブを備え、前記ハウジング縦壁部には、前記ギヤ・キャリヤ側への突出形状により前記クラッチ・ハブ側へ向いたハウジング凹部が形成され、前記クラッチ・ハブの端部が、前記ハウジング凹部内に臨んでいる。
【0012】
このため、クラッチ・ハブ及びハウジング縦壁部間の軸方向でのオーバーラップにより、摩擦多板クラッチの容量を確保しながらクラッチ入出力回転部材間の軸方向全長の増大抑制或いは短縮が可能となる。
【0013】
また、また、ギヤ・キャリヤのギヤ室に収容され異なる軸線上に配置された2つのギヤの噛み合いを介して駆動力伝達可能に連動構成され前記ギヤ・キャリヤに回転自在に支持されたギヤ入力回転部材及びギヤ出力回転部材と、前記ギヤ出力回転部材の両端部に結合され前記ギヤ・キャリヤに取り付けられたクラッチ・キャリヤのクラッチ室に収容配置された摩擦多板クラッチの締結により駆動力出力調整を行う左右一対のクラッチ出力調整機構部とを備えた駆動力分配伝達装置において、前記クラッチ出力調整機構部は、前記ギヤ出力回転部材に結合されたクラッチ入力回転部材と前記クラッチ・キャリヤに回転自在に支持され伝達駆動力を出力するためのクラッチ出力回転部材とを備えて該クラッチ入出力回転部材間に前記摩擦多板クラッチを介設し、前記クラッチ入力回転部材は、前記摩擦多板クラッチのアウター・プレートを係合させるクラッチ・ハウジング部を備え、前記クラッチ出力回転部材は、前記クラッチ・ハウジング部の内周側に配置され前記摩擦多板クラッチのインナー・プレートを係合させるクラッチ・ハブを備え、前記クラッチ出力回転部材は、前記クラッチ・ハブの内周側で軸受けを介し前記クラッチ入力回転部材に回転自在に支持されている。
【0014】
このため、クラッチ・ハブの内周側の空間を利用してクラッチ出力回転部材をクラッチ入力回転部材に回転自在に支持しクラッチ入出力回転部材間の軸方向全長の増大抑制或いは短縮が可能となる。
【0015】
従って、クラッチ出力調整機構部の車軸方向の大型化抑制或いはコンパクト化を促し、左右車軸の長さが短くなるのを抑制し或いは長くすることもでき、左右車軸の取り付け角度の増大抑制或いは減少により、左右車軸のジョイント部の駆動ロス減による発熱抑制やジョイント部の耐久性低下抑制或いは向上を可能とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
摩擦多板クラッチの容量を確保しながら車軸方向の大型化抑制或いはコンパクト化を促し、左右車軸の長さが短くなるのを抑制し或いは長くすることもでき、左右車軸の取り付け角度の増大抑制或いは減少により、左右車軸のジョイント部の駆動ロス減による発熱抑制やジョイント部の耐久性低下抑制或いは向上を可能とするという目的を、クラッチ・ハブ及びハウジング縦壁部間の軸方向でのオーバーラップにより、又はクラッチ・ハブの内周側の空間を利用してクラッチ出力回転部材をクラッチ入力回転部材に回転自在に支持することで実現した。
【実施例1】
【0017】
[4輪駆動車]
図1は、本発明の実施例1に係り、駆動力分配伝達装置の配置を示し、横置きフロントエンジン、フロントドライブベース(FFベース)の四輪駆動車のスケルトン平面図である。
【0018】
図1のように、駆動力分配伝達装置1は、後輪車軸3,5間に介設されている。駆動力分配伝達装置1の入力側には、ユニバーサル・ジョイント7を介してプロペラ・シャフト9が連動結合され、前記後輪車軸3,5は、駆動力分配伝達装置1の出力側に連動結合されている。
【0019】
後輪車軸3,5には、左右の後輪11,13が連動結合され、プロペラ・シャフト9には、ジョイント部の一構造であるユニバーサル・ジョイント15を介して、トランスファ17の出力軸19が結合されている。
【0020】
出力軸19の直交ギヤ21は、伝動軸23の直交ギヤ25に噛み合っている。伝動軸23のヘリカル・ギヤ27は、ヘリカル・ギヤ29に噛み合っている。ヘリカル・ギヤ29は、中空伝動軸35に設けられ、この中空伝動軸35は、フロント・デファレンシャル装置31のデフ・ケース33に一体回転するように連結して設けられている。
【0021】
フロント・デファレンシャル装置31のリング・ギヤ36には、エンジン37から電動モータ39、トランスミッション41を介して駆動力が入力されるようになっている。フロント・デファレンシャル装置31には、左右の前輪車軸45,47を介して、左右の前輪49,51が連動結合されている。
【0022】
従って、エンジン37から電動モータ39、トランスミッション41を介してフロント・デファレンシャル装置31のリング・ギヤ36に駆動力が入力される。リング・ギヤ36から、一方では、前輪車軸45,47を介して左右の前輪49,51へ駆動力伝達が行われ、他方では、デフ・ケース33、中空伝動軸35、ヘリカル・ギヤ29,27、伝動軸23、直交ギヤ25,21を介して出力軸19へ駆動力伝達が行われる。
【0023】
出力軸19からは、ユニバーサル・ジョイント15、プロペラ・シャフト9、ユニバーサル・ジョイント7を介して駆動力分配伝達装置1へ駆動力が入力される。
【0024】
従って、駆動力分配伝達装置1が駆動力調整伝達状態であるとき、駆動力分配伝達装置1へ入力された駆動力が駆動力出力調整により左右の後輪車軸3,5を介して左右の後輪11,13へ伝達され、前輪49,51、後輪11,13によって、4輪駆動状態で走行することができる。駆動力分配伝達装置1が、駆動力調整伝達状態にないときには、前輪49,51による2輪駆動状態で走行することができる。
【0025】
[駆動力分配伝達装置]
駆動力分配伝達装置1の詳細は図2のようになっている。図2は、駆動力分配伝達装置1の横断面図である。
【0026】
図2のように、駆動力分配伝達装置1は、ギヤ入力回転部材53及びギヤ出力回転部材55と、左右一対のクラッチ出力調整機構部57,59とを備えている。
【0027】
(ギヤ入出力回転部材)
ギヤ入力回転部材53及びギヤ出力回転部材55は、ギヤ・キャリヤ61に回転自在に支持されている。クラッチ出力調整機構部57,59は、クラッチ・キャリヤ63を備え、このクラッチ・キャリヤ63は、ギヤ・キャリヤ61に取り付けられている。
【0028】
ギヤ・キャリヤ61は、ギヤ・キャリヤ本体62と後述するギヤ・キャリヤカバー64とからなっている。このギヤ・キャリヤ61は、ギヤ入力回転部材53及びギヤ出力回転部材55を回転自在に支持すると共にギヤ室56を形成するものであり、入力側支持部65及び出力側支持部67,69を備えている。出力側支持部67,69は、内周が段付き状に形成され、一方の出力側支持部67は、着脱可能に分割構成されて締結フランジ71及び取付嵌合部73を備えている。取付嵌合部73は、ギヤ・キャリヤ61の取付嵌合口75に嵌合して取り付けられ、締結フランジ71が、ボルト77によりギヤ・キャリヤ本体62の締結結合部79に着脱自在に締結固定されている。取付嵌合部73及び取付嵌合口75間には、オー・リングなどのシール部材81が介設されている。
【0029】
出力側支持部67,69の軸方向左右外側には、キャリヤ凹部80,82が設けられている。キャリヤ凹部80,82は、クラッチ入力回転部材135の軸方向でギヤ室56側へ凹むように形成されている。キャリヤ凹部80,82の外周側には、キャリヤ結合部83,84が出力側支持部67,69に対し一体に設けられている。キャリヤ結合部83,84は、キャリヤ取付嵌合口86,88を備えている。キャリヤ結合部83,84の内周面90,92は、テーパー状に傾斜形成されている。
【0030】
入力側支持部65及び出力側支持部67,69間には、前記ギヤ室56が密閉状に区画形成され、ギヤ室56に連通するドレン孔87に、ドレン・プラグ89及び図外のフィラー・プラグ孔にフィラー・プラグが取り付けられている。
【0031】
本実施例では、ギヤ入力回転部材53及びギヤ出力回転部材55は、ドライブ・ピニオン・ギヤ91及びリング・ギヤ93の噛み合いを介して駆動力伝達可能に連動構成されている。ドライブ・ピニオン・ギヤ91及びリング・ギヤ93は、異なる軸線上である直交軸線上に配置された2つのギヤであるベベル・ギヤで構成されている。
【0032】
なお、異なる軸線上に配置された2つのギヤの例としては、ベベル・ギヤ組、平行ギヤ組、ウォーム・ギヤ組なども含まれ、各ギヤのねじれ角の有無又は度合いは、必要により適宜決定されるものである。
【0033】
ギヤ入力回転部材53は、中実のドライブ・ピニオン・シャフトであり、前記ドライブ・ピニオン・ギヤ91を一体に備えてギヤ・キャリヤ61の入力側支持部65に、テーパー・ローラー・ベアリング95,97を介して回転自在に支持されている。ギヤ入力回転部材53には、前記ユニバーサル・ジョイント7への結合フランジ部材99が取り付けられている。結合フランジ部材99の外周面と入力側支持部65の端部内周面との間には、シール部材101が介設されている。結合フランジ部材99には、シール部材101の外側でダスト・カバー103が取り付けられている。
【0034】
ギヤ出力回転部材55は、中空軸であり、外周部の中間部に、ギヤ取付フランジ105が設けられ、同両端部に軸支持用の段付き状のセンタリング部107,109が設けられている。ギヤ出力回転部材55には、前記センタリング部107,109の内周側において出力インナー・スプライン111,113が設けられている。
【0035】
ギヤ出力回転部材55は、ギヤ取付フランジ105に前記リング・ギヤ93がボルト115により締結固定され、センタリング部107,109が、ギヤ・キャリヤ61の出力側支持部67,69にテーパー・ローラー・ベアリング117,119により回転自在に支持されている。
【0036】
テーパー・ローラー・ベアリング117,119は、出力側支持部67,69にシム120,122を介してがたつき無く位置決められている。
【0037】
テーパー・ローラー・ベアリング117,119の軸方向外側において出力側支持部67,69とギヤ出力回転部材55の両端部との間に、シール部材121,123が介設されている。シール部材121,123は、前記キャリヤ凹部80,82の内周側に位置している。
【0038】
ギヤ室56は、シール部材81,101,121,123によりギヤ・キャリヤ61内に密閉状に区画され、内部に潤滑オイルとしてギヤ・オイルが封入されている。ギヤ・オイルは、クラッチ出力調整機構部57,59の潤滑オイルとは種類が異なっており、相対的に粘度の高いものが使用されている。
【0039】
(クラッチ出力調整機構部)
左右一対のクラッチ出力調整機構部57,59は、左右対称構造に形成されている。このクラッチ出力調整機構部57,59は、前記ギヤ出力回転部材55の両端部に結合され摩擦多板クラッチの締結により駆動力出力調整を行う。
【0040】
図3は、クラッチ出力調整機構部59の拡大断面図である。
【0041】
以下、図3によりクラッチ出力調整機構部59について説明し、クラッチ出力調整機構部57については対応する構成部分に同符号を付し、重複説明を省略する。
【0042】
クラッチ出力調整機構部59のクラッチ・キャリヤ63は、ギヤ・キャリヤ61に取り付けられ、左右一対のクラッチ室125を形成するものである。
【0043】
クラッチ・キャリヤ63は、軸方向の内端部(図3左端部)にキャリヤ取付嵌合部127とキャリヤ締結フランジ129とを備え、外端部(図3右端部)に内径側に突出した軸支持部130を備えている。
【0044】
クラッチ・キャリヤ63の内周面132は、軸方向外端側へテーパー状に傾斜形成され、跳ね上げられた潤滑オイルを軸方向外端側方向へ移動ガイドするようになっている。
【0045】
左右一対のクラッチ室125は、相対回転の無い二部材間に介設された後述するシール部材を備えて密閉されている。このクラッチ室125には、前記ギヤ室56のギヤ・オイルよりも粘度が低く、且つ冬場など低温時でも柔らかい異なる種類の潤滑オイルとしてクラッチ・オイルが封入されている。但し、クラッチ室125にもギヤ・オイルと同様な潤滑オイルを封入することもできる。
【0046】
キャリヤ取付嵌合部127は、ギヤ・キャリヤ61のキャリヤ取付嵌合口88(86)に嵌合して取り付けられ、キャリヤ締結フランジ129が、ボルト131によりギヤ・キャリヤ61のキャリヤ結合部84(83)に着脱自在に締結固定されている。キャリヤ取付嵌合部127及びキャリヤ取付嵌合口88(86)間には、オー・リングなどのシール部材133が介設されている。キャリヤ取付嵌合部127及びキャリヤ取付嵌合口88(86)間に相対回転はなく、相対回転の無い二部材間にシール部材133を介設した構成となっている。
【0047】
クラッチ出力調整機構部59は、クラッチ入力回転部材135及びクラッチ出力回転部材137を備え、摩擦多板クラッチで構成されたメイン・クラッチ139がクラッチ入出力回転部材135,137間に介設されている。
【0048】
クラッチ入力回転部材135は、結合シャフト部141の外周側にクラッチ・ハウジング部143を溶接などにより一体的に結合したものである。結合シャフト部141は、ギヤ出力回転部材55に軸方向移動により着脱自在に連動結合させるものであり、この結合シャフト部141には、一端部外周にクラッチ入力スプライン145が設けられ、他端部に段付き状の軸連繋支持部147が設けられている。
【0049】
クラッチ・ハウジング部143は、クラッチ・インナー・スプライン149を形成したハウジング周壁部150を備えると共に一端部にハウジング縦壁部151を備えている。ハウジング縦壁部151には、ハウジング凹部152が形成されている。ハウジング凹部152は、ギヤ・キャリヤ61の出力側支持部67,69側への突出形状に形成されている。この突出形状によりハウジング凹部152は、前記クラッチ・ハブ157側へ向いた構成となっている。
【0050】
ハウジング縦壁部151は、ギヤ・キャリヤ61のキャリヤ凹部82(80)内に左右軸方向に一部入り込むように臨んでいる。ハウジング縦壁部151の突出形状によりクラッチ・ハウジング部143のクラッチ・インナー・スプライン149の長さを限られたスペースで維持することができる。
【0051】
ハウジング周壁部150は、結合シャフト部141の軸連繋支持部147を包囲するように外周側に位置して形成され、このハウジング周壁部150に、クラッチ・インナー・スプライン149の欠歯などにより第2の連通部としてスリット状の貫通窓144が設けられている。貫通窓144は、メイン・クラッチ139の外側を開放してクラッチ・オイルを内側から外側のクラッチ・キャリヤ63の内周面132側へ流通させることができる。
【0052】
クラッチ・ハウジング部143のハウジング縦壁部151には、結合シャフト部141とメイン・クラッチ139との間で第3の連通部としてハウジング油孔146が左右軸方向へ貫通形成されている。
【0053】
このクラッチ入力回転部材135は、結合シャフト部141がギヤ出力回転部材55の端部に嵌合し、クラッチ入力スプライン145がギヤ出力回転部材55の出力インナー・スプライン113(111)にスプライン係合している。この状態でクラッチ入力回転部材135は、ギヤ出力回転部材55の端面に車軸方向へ直接突き当てられている。
【0054】
従って、ギヤ出力回転部材55及びクラッチ入力回転部材135の結合を行う出力インナー・スプライン113(111)及びクラッチ入力スプライン145をテーパー・ローラー・ベアリング119(117)の内周側に配置することができ、径方向のスペースを有効に活用し、軸方向のコンパクト化を図ることができる。
【0055】
ギヤ出力回転部材55及びクラッチ入力回転部材135の結合シャフト部141間には、オー・リングなどのシール部材153が介設されている。ギヤ出力回転部材55及び結合シャフト部141間に相対回転はなく、相対回転の無い二部材間にシール部材153を介設した構成となっている。
【0056】
クラッチ出力回転部材137は、クラッチ出力中空軸155及びクラッチ・ハブ157により形成されている。
【0057】
クラッチ出力中空軸155は、外周面にハブ結合スプライン159を備え、端部に段付き状のセンタリング部161,163を備えている。クラッチ出力中空軸155は、中空に形成され、その内周には、車軸結合インナー・スプライン165が形成され、外端から後輪車軸3,5を挿入して車軸結合インナー・スプライン165に連動結合させるものである。このクラッチ出力中空軸155の内端部内周には、閉止部材である閉止プラグ167が取り付けられ、クラッチ室125の密閉状態を維持させる構成となっている。
【0058】
クラッチ・ハブ157は、外周にクラッチ・スプライン169を備え、内周にハブ・インナー・スプライン171を備えている。ハブ・インナー・スプライン171の端部側には、リング位置決め凹部173が形成されている。クラッチ・ハブ157には、径方向の中間部から外周に抜ける第1の連通部としてスリット状のハブ貫通部170が設けられている。このハブ貫通部170は、クラッチ・ハブ157のクラッチ・スプライン169の部分においては、欠歯等により構成されている。ハブ貫通部170は、メイン・クラッチ139の内側を開放してクラッチ・オイルを内側からメイン・クラッチ139の内周側へ流通させる。
【0059】
このクラッチ・ハブ157は、ハブ・インナー・スプライン171がクラッチ出力中空軸155のハブ結合スプライン159にスプライン結合され、ハブ結合スプライン159に取り付けられた止め部材としてのスナップ・リング175により軸方向内端側への移動が規制されている。スナップ・リング175には、クラッチ・ハブ157のリング位置決め凹部173が外周側に僅かな隙間をもって嵌合し、スナップ・リング175の外周側への広がりが規制されて脱落防止が図られている。
【0060】
この取り付け状態で、クラッチ・スプライン169を備えたクラッチ・ハブ157の外周側は、クラッチ・ハウジング部143のハウジング縦壁部151に近接し、クラッチ・ハブ157の端部が、前記ハウジング凹部152内に臨んでいる。
【0061】
従って、クラッチ・ハブ157及びハウジング縦壁部151間の軸方向でのオーバーラップにより、クラッチ・スプライン169を クラッチ・インナー・スプライン149に合わせて長く形成することができる。
【0062】
従って、クラッチ・ハウジング部143及びクラッチ・ハブ157間に介設するメイン・クラッチ139のプレート枚数を維持し、或いは増設しながら、左右軸方向にコンパクトに形成することができる。このため、左右車軸3,5の取付角度を減少させ、左右車軸のジョイント部の駆動ロス減による発熱抑制やジョイント部の耐久性低下抑制或いは向上を可能とする。
【0063】
クラッチ出力中空軸155の一端側(クラッチ出力回転部材137の一端側)であるセンタリング部161は、軸受けであるボール・ベアリング177を介し、クラッチ入力回転部材135の軸連繋支持部147に回転自在に連繋支持されている。ボール・ベアリング177は、シム178及びスナップ・リング(或いはワッシャ)180により軸連繋支持部147及びセンタリング部161にがたつき無く位置決められている。
【0064】
この取り付け状態で、クラッチ出力中空軸155は、ボール・ベアリング177を介しクラッチ入力回転部材135の軸連繋支持部147に車軸方向に間接的に突き当てられている。
【0065】
このクラッチ入力回転部材135とクラッチ出力回転部材137とのボール・ベアリング177による連繋支持は、クラッチ・ハウジング部143のハウジング周壁部150内周側で行われる。このため、周方向のスペースを有効に活用して軸方向のコンパクト化を図ることができる。これにより、クラッチ出力回転部材137に結合する後輪車軸3,5の取付角度を減少させることができ、左右車軸のジョイント部の駆動ロス減による発熱抑制やジョイント部の耐久性低下抑制或いは向上を可能とする。
【0066】
クラッチ出力中空軸155の他端側(クラッチ出力回転部材137の他端側)のセンタリング部163は、軸受けであるボール・ベアリング179を介し、クラッチ・キャリヤ63の軸支持部130に回転自在に支持されている。ボール・ベアリング179の軸方向外側においてクラッチ・キャリヤ63とクラッチ出力回転部材137のクラッチ出力中空軸155との間にシール部材181が介設されている。
【0067】
メイン・クラッチ139は、アウター・プレート183及びインナー・プレート185のそれぞれ複数枚からなり、アウター・プレート183にペーパー材やカーボン・シートを貼り付けた薄板、カーボン・コーティングの薄板等を用い、インナー・プレート185にペーパー材を有しないスチールの厚板を用いている。
【0068】
メイン・クラッチ139の端部には、受圧プレート187が配置されている。受圧プレート187は、リング位置決め凹部189を備え、且つクラッチ・ハブ157にスプライン係合している。
【0069】
この受圧プレート187は、クラッチ・ハブ157に取り付けられたスナップ・リング191により軸方向への移動が規制されている。スナップ・リング191には、クラッチ・ハブ157のリング位置決め凹部189が外周に僅かの隙間をもって嵌合し、スナップ・リング191の外周側への広がりが規制されて脱落防止が図られている。
【0070】
この受圧プレート187に対し、前記メイン・クラッチ139のペーパー材やカーボン・シートを貼り付けた薄板、カーボン・コーティングの薄板等を用いたアウター・プレート183が隣接配置されている。
【0071】
クラッチ出力調整機構部59は、前記メイン・クラッチ139の他、パイロット・クラッチ193、ボール・カム195、カム・リング197、プレッシャー・プレート199、リターン・スプリング201、アーマチャ203、ロータ205、パイロット・クラッチ193の操作源である電磁石207を備えている。
【0072】
パイロット・クラッチ193は、クラッチ・ハウジング部143とカム・リング197との間に配置されている。パイロット・クラッチ193のアウター・プレートは、クラッチ・ハウジング部143のクラッチ・インナー・スプライン149にスプライン係合し、同インナー・プレートは、カム・リング197のリング・スプライン209にスプライン係合している。パイロット・クラッチ193のアウター・プレート及びインナー・プレートには、非磁性部となる孔210が形成されている。
【0073】
カム・リング197は、クラッチ出力中空軸155の外周に相対回転可能に支持され、カム機構であるボール・カム195は、プレッシャー・プレート199とカム・リング197との間に形成されている。カム・リング197とプレッシャー・プレート199とは、ボール・カム195を介して軸方向に対向配置された構成となっている。
【0074】
プレッシャー・プレート199は、メイン・クラッチ139に隣接して配置されると共に、クラッチ出力中空軸155のハブ結合スプライン159にスプライン係合し、クラッチ出力中空軸155の外周に回転係合しつつ軸方向押圧移動可能に設けられている。このプレッシャー・プレート199は、ボール・カム195のカムスラスト力を受けてメイン・クラッチ139側へ押圧移動する。
【0075】
このプレッシャー・プレート199に対し、メイン・クラッチ139のペーパー材等の無い厚板を用いたインナー・プレート185が隣接配置されている。プレッシャー・プレート199は、インナー・プレート185に対して摺動しないからペーパー材等のない厚板を用いることで、ペーパー材等の省略を図ることができる。
【0076】
リターン・スプリング201は、皿ばねで構成され、クラッチ・ハブ157とプレッシャー・プレート199との間に介設されている。プレッシャー・プレート199は、リターン・スプリング201によりメイン・クラッチ139の締結解除方向に付勢されている。
【0077】
カム・リング197とロータ205との間には、スラスト・ベアリング213が配置されている。スラスト・ベアリング213は、ボール・カム195のカム反力を受けると共に、カム・リング197とロータ205との間の相対回転を吸収する。
【0078】
ロータ205は、非磁性部215を備え、クラッチ出力中空軸155の外周に回転自在に支持されている。また、ロータ205には、電磁石207よりも内径側で左右軸方向に貫通する第4の連通部としてロータ油孔218が設けられている。このロータ205は、クラッチ出力中空軸155に取り付けられた止め部材としてのスナップ・リング219により軸方向への移動が規制されている。
【0079】
アーマチャ203はリング状に形成されており、プレッシャー・プレート199とパイロット・クラッチ193との間に配置されパイロット・クラッチ193を挟んでロータ205に対向している。軸方向移動自在に配置され、クラッチ・ハウジング部143のクラッチ・インナー・スプライン149にスプライン係合している。
【0080】
電磁石207は、クラッチ・キャリヤ63に固定支持され、電磁石207のコア221とロータ205との間には適度なエアギャップが形成されている。このエアギャップ、ロータ205、パイロット・クラッチ193、アーマチャ203によって電磁石207の磁路が構成される。電磁石207を通電制御すると非磁性部215、非磁性部となる孔210の周囲からアーマチャ203に渡る磁束ループが形成される。
【0081】
(3室の潤滑空間)
上記のように、ドライブ・ピニオン・ギヤ91及びリング・ギヤ93を、密閉状に区画されたギヤ室56に収容すると共に、メイン・クラッチ139を含むクラッチ出力調整機構部57,59の主要部を、密閉状に区画された左右一対のクラッチ室125にそれぞれ収容し、前記ギヤ室56及び左右一対のクラッチ室125の独立の3室の潤滑空間にそれぞれ潤滑オイルを封入した。
【0082】
独立の3室には、前記のようにギヤ・キャリヤ61及びクラッチ・キャリヤ63間のシール部材133、ギヤ・キャリヤ61及びギヤ出力回転部材55間のシール部材123、ギヤ出力回転部材55及びクラッチ入力回転部材135間のシール部材153、クラッチ・キャリヤ63及びクラッチ出力回転部材137間のシール部材181のように、複数のシール部材が介設され、このシール部材の介設により独立の3室が密閉状に区画されている。
【0083】
(その他関連構造)
図4は、クラッチ出力調整機構部の側面図、図5は、ブリーザー組み付け部の拡大断面図、図6は、ドレン・プラグ組み付け部の拡大断面図、図7は、油溝部の拡大断面図、図8は、マグネット回り止め部の拡大断面図、図9は、コネクタ組み付け部の拡大断面図である。
【0084】
図4のように、フィラー・プラグ230は、クラッチ・キャリヤ63の外周の一部に設けられ、フィラー・プラグ230の取付孔の鉛直方向下端は、封入されるオイル・レベル(オイル量)を規定している。
図3,図4,図5のように、クラッチ・キャリヤ63は、エア抜きのためのブリーザー孔223を備え、このブリーザー孔223に、ブリーザー・パイプ225が取り付けられている。
【0085】
図3,図4,図6のように、クラッチ・キャリヤ63は、オイル抜きのためのドレン孔227を備え、このドレン孔227に、ドレン・プラグ229が取り付けられている。
【0086】
図3,図7のように、クラッチ・キャリヤ63と電磁石207との間に、クラッチ・キャリヤ63の内周面132側から電磁石207の背後を通り電磁石207の内径側でクラッチ室125に連通する第5の連通部として上下方向の油道231が設けられている。油道231は、複数形成することもできる。クラッチ・キャリヤ63の内周面132により軸方向外側(図3右側)へ移動ガイドされたクラッチ・オイルは、油道231により電磁石207の外周から背後を通って内周側に至り、ボール・ベアリング179の軸方向左右側へ移動可能となる。
【0087】
図3,図4,図8のように、電磁石207は、クラッチ・キャリヤ63に側面周方向3カ所でボルト233により締結固定されている。電磁石207のコア221背面とクラッチ・キャリヤ63の内側面との間には、オー・リング等のシール部材235が介設されている。
【0088】
図3,図4,図9のように、クラッチ・キャリヤ63には、コネクタ貫通孔237が設けられ、電磁石207のコネクタ部239がコネクタ貫通孔237からクラッチ・キャリヤ63外へ突出し、外部接続可能となっている。電磁石207のコア221背面とクラッチ・キャリヤ63の内側面との間には、オー・リング等のシール部材241が介設されている。
【0089】
(コンパクト化)
上記のようにクラッチ・スプライン169を備えたクラッチ・ハブ157の外周側は、クラッチ・ハウジング部143のハウジング縦壁部151に近接し、クラッチ・ハブ157の端部が、前記ハウジング凹部152内に臨んでいる。
【0090】
このため、メイン・クラッチ139の枚数(容量)を確保しながらクラッチ入出力回転部材135,137間の軸方向全長の増大抑制或いは短縮が可能となる。
【0091】
ハウジング縦壁部151は、ギヤ・キャリヤ61のキャリヤ凹部82(80)内に左右軸方向に一部入り込むように臨んでいる。
【0092】
このため、駆動力分配伝達装置1の左右方向全幅の増大抑制或いは短縮が可能となる。
【0093】
(クラッチ出力調整機構部のサブ・アッセンブリ)
ギヤ・キャリヤ61側は、出力側支持部67,69とギヤ出力回転部材55との間のシール部材123の存在により、ギヤ室56にギヤ・オイルを封入して独立させることができる。
【0094】
これに対し、クラッチ出力調整機構部57,59は、上記構成であり、カップリングとして図3のようにサブ・アッセンブリすることができる。
【0095】
アッセンブリの形態について再度説明すると、クラッチ・キャリヤ63は、軸方向の内端部に前記ギヤ・キャリヤ61に取り付けるためのキャリヤ取付嵌合部127及びキャリヤ締結フランジ129を備えると共に、同外端部に内径側に突出した軸支持部130を備えている。
【0096】
クラッチ入力回転部材135は、前記ギヤ出力回転部材55への軸方向移動によりスプライン係合を介して着脱自在に連動結合させる結合シャフト部141を備えている。
【0097】
クラッチ入力回転部材153の連繋支持部147が、クラッチ出力回転部材137のクラッチ出力中空軸155の一端側にボール・ベアリング177を介して回転自在に連繋支持され、クラッチ出力中空軸155の他端側が、軸支持部130にボール・ベアリング179を介して回転自在に支持される。
【0098】
電磁石207は、ロータ205に隣接してクラッチ・キャリヤ63に固定支持される。
【0099】
ロータ205及びクラッチ・ハブ157は、スナップ・リング219,175によりクラッチ出力中空軸155の外周に位置決められる。
【0100】
サブ・アッセンブリされたクラッチ出力調整機構部57,59は、クラッチ入力回転部材135の結合シャフト部141を、ギヤ出力回転部材55の端部から挿入して出力インナー・スプライン111,113にクラッチ入力スプライン145をスプライン係合させる。
【0101】
同時に、クラッチ・キャリヤ63のキャリヤ取付嵌合部127をギヤ・キャリヤ61のキャリヤ取付嵌合口86,88にシール部材133を介在させて嵌合させる。
【0102】
次いで、キャリヤ締結フランジ129を、ボルト131によりギヤ・キャリヤ61のキャリヤ結合部84(83)に締結固定し、サブ・アッセンブリしたクラッチ出力調整機構部57,59の組み付けを完了させることができる。
【0103】
このクラッチ出力調整機構部57,59に対して、後輪車軸3,5をクラッチ出力中空軸155の外端部から挿入し、車軸結合インナー・スプライン165にスプライン係合させることになる。
【0104】
後輪車軸3,5を結合させた車軸結合インナー・スプライン165部は、グリス潤滑が行われる。このグリス潤滑部に外部から水、埃等が侵入しないように車軸結合インナー・スプライン165部の軸方向外端側(図2左右外端側)においてクラッチ出力中空軸155及び後輪車軸3,5間にオー・リング等を介設することが望ましい。
【0105】
(メイン・クラッチの締結制御)
メイン・クラッチ139の締結制御は、電磁石207の通電制御により行われる。
【0106】
各種センサーによって検知した路面状態、車両の発進、加速、旋回のような走行条件及び操舵条件などに応じて、コントローラが電磁石207の通電制御を行う。
【0107】
電磁石207が励磁されると、上記の磁束ループによってアーマチャ203が吸引され、ロータ205との間でパイロット・クラッチ193を締結し、パイロット・トルクを発生させる。パイロット・トルクが発生すると、パイロット・クラッチ193によってクラッチ・ハウジング部143に連結されたカム・リング197が共に回転しようとする。
【0108】
これに対し、プレッシャー・プレート199は、クラッチ出力中空軸155を介し後輪車軸3,5側に係合しているため、カム・リング197及びプレッシャー・プレート199間に相対回転が起こると、ボール・カム195の働きによりカム・リング197及びプレッシャー・プレート199が軸方向へ離間するようにスラスト力を受ける。
【0109】
このスラスト力は、一方においてスラスト・ベアリング213及びロータ205を介してスナップ・リング219に入力され、他方においてプレッシャー・プレート199、メイン・クラッチ139、スナップ・リング191、クラッチ・ハブ157を介してスナップ・リング175に入力される。
【0110】
両スナップ・リング219,175への入力は、共にクラッチ出力中空軸155に入力され、その結果メイン・クラッチ139がプレッシャー・プレート199及び受圧プレート187間で締結調整される。このようにカムスラスト力をクラッチ出力中空軸155で確実に受けることができる。
【0111】
電磁石207の通電制御が無くなるとボール・カム195のカムスラスト力が無くなり、クラッチ・ハブ157及びプレッシャー・プレート199間でのリターン・スプリング201の付勢力によりプレッシャー・プレート199がメイン・クラッチ139から離間するように移動する。このプレッシャー・プレート199の離間移動によりメイン・クラッチ139の締結制御が解除される。
【0112】
[駆動力伝達]
クラッチ出力調整機構部57,59が、電磁石207の通電制御により締結調整されると、プロペラ・シャフト9側からギヤ入力回転部材53に入力された駆動力が、ドライブ・ピニオン・ギヤ91、リング・ギヤ93、ギヤ出力回転部材55を介して左右のクラッチ出力調整機構部57,59のクラッチ入力回転部材135へ入力される。
【0113】
クラッチ入力回転部材135への入力は、クラッチ・ハウジング部143、メイン・クラッチ139、クラッチ・ハブ157へと伝達され、クラッチ出力回転部材137から出力される。
【0114】
クラッチ出力調整機構部57,59のクラッチ出力回転部材137から出力された駆動力は、左右後輪車軸3,5を介して後輪11,13へ伝達される。
【0115】
従って、前後輪49,51,11,13の4輪駆動状態で走行することができる。このとき、走行条件及び操舵条件によりメイン・クラッチ139が締結調整され、左右後輪11,13の適度な差動回転調整から差動ロックまで自由に制御することができる。
【0116】
このような制御により、ヨー・コントロールなどによる操舵性、走行性、悪路走行での走破性等を向上させることができる。
【0117】
クラッチ出力調整機構部57,59が駆動力出力状態に無ければ前輪49,51による2輪駆動状態で走行することができる。
【0118】
(突き上げ力)
駆動力伝達時に、後輪車軸3,5側から軸方向に入力される突き上げ力は、クラッチ出力中空軸155に伝達される。クラッチ出力中空軸155からは、センタリング部161、ボール・ベアリング177、軸連繋支持部147を介してクラッチ入力回転部材135へと伝達され、このクラッチ入力回転部材135からギヤ出力回転部材55に入力される。ギヤ出力回転部材55に入力された突き上げ力は、テーパー・ローラー・ベアリング117,119を介して出力側支持部67,69に入力され、強度のあるギヤ・キャリヤ61により確実に受けることができる。
【0119】
[潤滑]
潤滑オイルは、ギヤ室56及び左右のクラッチ室125に回転軸心のレベルまで充填されている。
【0120】
ギヤ室56では、リング・ギヤ93の回転によりギヤ・オイルが跳ね上げられ、ドライブ・ピニオン・ギヤ91及びリング・ギヤ93間の噛合部及びテーパー・ローラー・ベアリング95,97の潤滑が行われる。
【0121】
クラッチ室125では、クラッチ入出力回転部材135,137等の回転によりクラッチ・オイルが跳ね上げられる。
【0122】
跳ね上げられたクラッチ・オイルは、クラッチ・ハブ157のハブ貫通部170を通って外周側へ移動し、メイン・クラッチ139等を潤滑しながらクラッチ・ハウジング部143の貫通窓144を通り、キャリヤ結合部83,84の内周面90,92及びクラッチ・キャリヤ63の内周面132側へと移動する。
【0123】
内周面90,92,132側へ移動したクラッチ・オイルは、一方の内周面132の傾斜により軸方向外側方向(図3右側方向)へ移動ガイドされ、他方の内周面90,92の傾斜により軸方向内側方向(図3の左側方向)へ移動ガイドされる。
【0124】
内周面132で移動ガイドされたクラッチ・オイルは、電磁石207周囲の油道231(図7)を通り、ボール・ベアリング179の軸方向左右側へ移動する。ロータ205の背後へ移動したクラッチ・オイルは、ロータ205のロータ油孔218からカム・リング197側へさらに移動する。
【0125】
このようなクラッチ・オイルの移動によりボール・ベアリング179、シール部材181周辺,ロータ205及びクラッチ出力中空軸155間、スラスト・ベアリング213、パイロット・クラッチ193、ボール・カム195等を十分に潤滑することができる。
【0126】
内周面90,92で移動がイドされたクラッチ・オイルは、ギヤ・キャリヤ61の出力側支持部67,69とクラッチ・ハウジング部143との間に至り、ハウジング油孔146からクラッチ・ハウジング部143内側へ戻る。
【0127】
クラッチ・オイルの移動ガイドは、内周面90,92,132等にガイド用の樋を設けて行う構成にすることもできる。ガイド用の樋は、クラッチ・オイルに作用する回転力と重力とを考慮し、クラッチ・オイルを集中して受けられる箇所に設けることが望ましい。
【0128】
このようなクラッチ・オイルの流れ移動によりメイン・クラッチ139やパイロット・クラッチ193の摺動による温度上昇を抑制することができる。
【0129】
特に、旋回走行時等において車体が左右に傾斜しても、左右一対の独立したクラッチ室125及び中央のギヤ室56間で潤滑オイルの移動はなく、潤滑オイルが1室に片寄ることなく、独立した3室の潤滑空間に封入した潤滑オイルをそれぞれ保持させることができる。
【0130】
パイロット・クラッチ193の操作源は、電磁石に限られるものではなく、油圧シリンダ・ピストン、電動モータなども含まれる。これらの操作源は、クラッチ・キャリヤ63に一体的に固定することでクラッチの締結操作を確実に行うことができる。
【0131】
[実施例1の効果]
本発明実施例1は、ギヤ・キャリヤ61のギヤ室56に収容配置されたドライブ・ピニオン・ギヤ91及びリング・ギヤ93の噛み合いを介して駆動力伝達可能に連動構成され前記ギヤ・キャリヤ61に回転自在に支持されたギヤ入力回転部材53及びギヤ出力回転部材55と、前記ギヤ出力回転部材55の両端部に結合され前記ギヤ・キャリヤ61に取り付けられたクラッチ・キャリヤ63のクラッチ室125に収容配置されたメイン・クラッチ139の締結により駆動力出力調整を行う左右一対のクラッチ出力調整機構部57,59とを備えた駆動力分配伝達装置1において、前記クラッチ出力調整機構部57,59は、前記ギヤ出力回転部材55に結合されたクラッチ入力回転部材135と前記クラッチ・キャリヤ63に回転自在に支持され伝達駆動力を出力するためのクラッチ出力回転部材137とを備えて該クラッチ入出力回転部材135,137間に前記メイン・クラッチ139を介設し、前記クラッチ入力回転部材135は、径方向に沿ったハウジング縦壁部151及び軸方向に沿ったハウジング周壁部150を有して前記メイン・クラッチ139のアウター・プレート183を係合させるクラッチ・ハウジング部143を備え、前記クラッチ出力回転部材137は、前記クラッチ・ハウジング部143の内周側に配置され前記メイン・クラッチ139のインナー・プレート185を係合させるクラッチ・ハブ157を備え、前記ハウジング縦壁部151には、前記ギヤ・キャリヤ61側への突出形状により前記クラッチ・ハブ157側へ向いたハウジング凹部152が形成され、前記クラッチ・ハブ157の端部が、前記ハウジング凹部152内に臨んでいる。
【0132】
このため、クラッチ・ハブ157及びハウジング縦壁部151間の軸方向でのオーバーラップにより、クラッチ・インナー・スプライン149及びクラッチ・スプライン169の長さを確保し、或いは増大することができる。
【0133】
従って、メイン・クラッチ139の枚数確保或いは増大により、容量を確保しながらクラッチ入出力回転部材135,137間の軸方向全長の増大抑制或いは短縮が可能となる。
【0134】
すなわち、クラッチ出力調整機構部57,59の車軸方向の大型化抑制或いはコンパクト化を促し、左右後輪車軸3,5の長さが短くなるのを抑制し或いは長くすることもでき、左右後輪車軸3,5の取り付け角度の増大抑制或いは減少により、音振性能の低下抑制或いは向上を可能とする。
【0135】
ギヤ・キャリヤ61は、前記クラッチ入力回転部材135の軸方向に凹むキャリヤ凹部80,82を備え、前記ハウジング縦壁部151が、前記キャリヤ凹部80,82内に臨んでいる。
このため、メイン・クラッチ139の容量に影響を与えずに駆動力分配伝達装置1を後輪車軸3,5方向にコンパクト化を図ることができる。
【0136】
従って、メイン・クラッチ139の容量を確保しながら後輪車軸3,5の長さを長くすることもでき、左右後輪車軸3,5の取り付け角度の増大抑制或いは減少により、左右後輪車軸3,5のジョイント部の駆動ロス減による発熱抑制やジョイント部の耐久性低下抑制或いは向上を可能とする。
【0137】
クラッチ出力調整機構部57,59は、前記メイン・クラッチ139に隣接して配置されると共に前記クラッチ出力回転部材137のクラッチ出力中空軸155外周にスプライン係合により回転係合しつつ軸方向押圧移動可能に設けられ前記メイン・クラッチ139を締結するためのプレッシャー・プレート199と、前記プレッシャー・プレート199に、ボール・カム195を介して軸方向に対向配置されると共に、前記クラッチ出力中空軸155の外周に相対回転可能に支持されたカム・リングと、前記クラッチ入力回転部材135のクラッチ・ハウジング部143とカム・リング197との間に設けられたパイロット・クラッチ193と、前記パイロット・クラッチ193を挟んで対向配置されたアーマチャ203及び非磁性部215を備えたロータ205と、前記ロータ205に隣接配置されると共に前記クラッチ・キャリヤ63に固定支持され前記ロータ205の非磁性部215の周囲からアーマチャ203に渡る磁束ループを形成するための電磁石207とを備え、前記クラッチ出力中空軸155に、前記ロータ205及びクラッチ・ハブ157の軸方向移動を規制して前記ボール・カム195のカムスラスト力を受けるスナップ・リング175,219を設けた。
【0138】
このため、このため、両スナップ・リング175,219への入力であるカムスラスト力を、共にクラッチ出力中空軸155に入力させることができ、メイン・クラッチ139をプレッシャー・プレート199及び受圧プレート187間で確実に締結調整させることができる。
【0139】
クラッチ・キャリヤ63は、軸方向の内端部に前記ギヤ・キャリヤ61に取り付けるためのキャリヤ取付嵌合部127を備えると共に、同外端部に内径側に突出した軸支持部130を備え、前記クラッチ入力回転部材135に、前記ギヤ出力回転部材55への軸方向移動により着脱自在に連動結合させる結合シャフト部141を設けた。
【0140】
このため、クラッチ・キャリヤ63側にクラッチ入出力回転部材135,137、メイン・クラッチ139等をサブ・アッセンブリし、このサブ・アッセンブリした所謂クラッチパックとしてのクラッチ出力調整機構部57,59を、クラッチ・キャリヤ63のキャリヤ取付嵌合部127及び結合シャフト部141により、ギヤ・キャリヤ61及びギヤ出力回転部材55へ容易に取り付けることができる。
【0141】
クラッチ出力回転部材137とクラッチ入力回転部材135とギヤ出力回転部材55とを、前記クラッチ出力回転部材137への軸方向からの入力を前記ギヤ出力回転部材55へ伝達するために軸方向に直接又は間接に突き当てた。
【0142】
すなわち、クラッチ入力回転部材135は、ギヤ出力回転部材55の端面に車軸方向へ直接突き当てられている。クラッチ出力中空軸155は、ボール・ベアリング177を介しクラッチ入力回転部材135の軸連繋支持部147に車軸方向に間接的に突き当てられている。
【0143】
このため、駆動力伝達時に、後輪車軸3,5側から軸方向に入力される突き上げ力は、クラッチ出力中空軸155に伝達され、センタリング部161、ボール・ベアリング177、軸連繋支持部147を介してクラッチ入力回転部材135へと伝達され、このクラッチ入力回転部材135からギヤ出力回転部材55に入力される。ギヤ出力回転部材55に入力された突き上げ力は、テーパー・ローラー・ベアリング117,119を介して出力側支持部67,69に入力され、強度のあるギヤ・キャリヤ61により確実に受けることができる。
【0144】
又、ギヤ・キャリヤ61のギヤ室56に収容配置されたドライブ・ピニオン・ギヤ91及びリング・ギヤ93の噛み合いを介して駆動力伝達可能に連動構成され前記ギヤ・キャリヤ61に回転自在に支持されたギヤ入力回転部材53及びギヤ出力回転部材55と、前記ギヤ出力回転部材55の両端部に結合され前記ギヤ・キャリヤ61に取り付けられたクラッチ・キャリヤ63のクラッチ室125に収容配置されたメイン・クラッチ139の締結により駆動力出力調整を行う左右一対のクラッチ出力調整機構部57,59とを備えた駆動力分配伝達装置1において、前記クラッチ出力調整機構部57,59は、前記ギヤ出力回転部材55に結合されたクラッチ入力回転部材135と前記クラッチ・キャリヤ63に回転自在に支持され伝達駆動力を出力するためのクラッチ出力回転部材137とを備えて該クラッチ入出力回転部材135,137間に前記メイン・クラッチ139を介設し、クラッチ入力回転部材135は、前記メイン・クラッチ139のアウター・プレート183を係合させるクラッチ・ハウジング部143を備え、前記クラッチ出力回転部材137は、前記クラッチ・ハウジング部143の内周側に配置され前記メイン・クラッチ139のインナー・プレート185を係合させるクラッチ・ハブ157を備え、前記クラッチ出力回転部材137は、前記クラッチ・ハブ157の内周側でボール・ベアリング177を介し前記クラッチ入力回転部材135に回転自在に支持されている。
【0145】
このため、クラッチ・ハブ157の内周側の空間を利用してクラッチ出力回転部材137をクラッチ入力回転部材135に回転自在に支持しクラッチ入出力回転部材135,137間の軸方向全長の増大抑制或いは短縮が可能となる。
【0146】
従って、クラッチ出力調整機構部57,59の車軸方向の大型化抑制或いはコンパクト化を促し、左右後輪車軸3,5の長さが短くなるのを抑制し或いは長くすることもでき、左右後輪車軸3,5の取り付け角度の増大抑制或いは減少により、左右後輪車軸3,5のジョイント部の駆動ロス減による発熱抑制やジョイント部の耐久性低下抑制或いは向上を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0147】
【図1】横置きフロントエンジン、フロントドライブベース(FFベース)の四輪駆動車のスケルトン平面図である(実施例1)。
【図2】駆動力分配伝達装置の横断面図である(実施例1)。
【図3】クラッチ出力調整機構部の拡大断面図である(実施例1)。
【図4】クラッチ出力調整機構部の側面図である(実施例1)。
【図5】ブリーザー組み付け部の拡大断面図である(実施例1)。
【図6】ドレン・プラグ組み付け部の拡大断面図である(実施例1)。
【図7】油溝部の拡大断面図である(実施例1)。
【図8】マグネット回り止め部の拡大断面図である(実施例1)。
【図9】コネクタ組み付け部の拡大断面図である(実施例1)。
【符号の説明】
【0148】
1 駆動力分配伝達装置
53 ギヤ入力回転部材
55 ギヤ出力回転部材
56 ギヤ室
57,59 クラッチ出力調整機構
61 ギヤ・キャリヤ
63 クラッチ・キャリヤ
80,82 キャリヤ凹部
91 ドライブ・ピニオン・ギヤ(異なる軸線上に配置された2つのギヤ)
93 リング・ギヤ(異なる軸線上に配置された2つのギヤ)
125 クラッチ室
127 キャリヤ取付嵌合部
130 軸支持部
135 クラッチ入力回転部材
137 クラッチ出力回転部材
139 メイン・クラッチ(摩擦多板クラッチ)
141 結合シャフト部
150 ハウジング周壁部
151 ハウジング縦壁部
152 ハウジング凹部
155 クラッチ出力中空軸
157 クラッチ・ハブ
175,219 スナップ・リング(止め部材)
177,179 ボール・ベアリング(軸受け)
193 パイロット・クラッチ
197 カム・リング
199 プレッシャー・プレート
203 アーマチャ
205 ロータ
207 電磁石
215 非磁性部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ギヤ・キャリヤのギヤ室に収容され異なる軸線上に配置された2つのギヤの噛み合いを介して駆動力伝達可能に連動構成され前記ギヤ・キャリヤに回転自在に支持されたギヤ入力回転部材及びギヤ出力回転部材と、
前記ギヤ出力回転部材の両端部に結合され前記ギヤ・キャリヤに取り付けられたクラッチ・キャリヤのクラッチ室に収容配置された摩擦多板クラッチの締結により駆動力出力調整を行う左右一対のクラッチ出力調整機構部と、
を備えた駆動力分配伝達装置において、
前記クラッチ出力調整機構部は、前記ギヤ出力回転部材に結合されたクラッチ入力回転部材と前記クラッチ・キャリヤに回転自在に支持され伝達駆動力を出力するためのクラッチ出力回転部材とを備えて該クラッチ入出力回転部材間に前記摩擦多板クラッチを介設し、
前記クラッチ入力回転部材は、径方向に沿ったハウジング縦壁部及び軸方向に沿ったハウジング周壁部を有して前記摩擦多板クラッチのアウター・プレートを係合させるクラッチ・ハウジング部を備え、
前記クラッチ出力回転部材は、前記クラッチ・ハウジング部の内周側に配置され前記摩擦多板クラッチのインナー・プレートを係合させるクラッチ・ハブを備え、
前記ハウジング縦壁部には、前記ギヤ・キャリヤ側への突出形状により前記クラッチ・ハブ側へ向いたハウジング凹部が形成され、
前記クラッチ・ハブの端部が、前記ハウジング凹部内に臨んでいる、
ことを特徴とする駆動力分配伝達装置。
【請求項2】
請求項1記載の駆動力分配伝達装置であって、
前記ギヤ・キャリヤは、前記クラッチ入力回転部材の軸方向に凹むキャリヤ凹部を備え、
前記ハウジング縦壁部が、前記キャリヤ凹部内に臨んでいる、
ことを特徴とする駆動力分配伝達装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の駆動力分配伝達装置であって、
前記クラッチ出力調整機構部は、
前記摩擦多板クラッチに隣接して配置されると共に前記クラッチ出力回転部材の外周に回転係合しつつ軸方向押圧移動可能に設けられ前記摩擦多板クラッチを締結するためのプレッシャー・プレートと、
前記プレッシャー・プレートに、カム機構を介して軸方向に対向配置されると共に、前記クラッチ出力回転部材の外周に相対回転可能に支持されたカム・リングと、
前記クラッチ入力回転部材とカム・リングとの間に設けられたパイロット・クラッチとを備え、
前記クラッチ出力回転部材に、前記クラッチ・ハブの軸方向移動を規制して前記カム機構のカムスラスト力を受ける止め部材を設けた、
ことを特徴とする駆動力分配伝達装置。
【請求項4】
請求項3記載の駆動力分配伝達装置であって、
前記クラッチ出力回転部材は、中空に形成されて外端から車軸を挿入して連動結合させるクラッチ出力中空軸を備え、
前記クラッチ出力中空軸の内端部に、前記クラッチ入力回転部材を軸受けを介して回転自在に連繋支持し、同外端部を、前記軸支持部に軸受けを介して回転自在に支持し、
前記クラッチ出力中空軸の外周に、前記クラッチ・ハブ及びプレッシャー・プレートをスプライン係合させると共に前記カム・リングを回転自在に支持した、
ことを特徴とする駆動力分配伝達装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載の駆動力分配伝達装置であって、
前記クラッチ・キャリヤは、軸方向の内端部に前記ギヤ・キャリヤに取り付けるためのキャリヤ取付嵌合部を備えると共に、同外端部に内径側に突出した軸支持部を備え、
前記クラッチ入力回転部材に、前記ギヤ出力回転部材への軸方向移動により着脱自在に連動結合させる結合シャフト部を設けた、
ことを特徴とする駆動力分配伝達装置。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかに記載の駆動力分配伝達装置であって、
前記クラッチ出力回転部材とクラッチ入力回転部材とギヤ出力回転部材とを、前記クラッチ出力回転部材への軸方向からの入力を前記ギヤ出力回転部材へ伝達するために軸方向に直接又は間接に突き当てた、
ことを特徴とする駆動力分配伝達装置。
【請求項7】
ギヤ・キャリヤのギヤ室に収容され異なる軸線上に配置された2つのギヤの噛み合いを介して駆動力伝達可能に連動構成され前記ギヤ・キャリヤに回転自在に支持されたギヤ入力回転部材及びギヤ出力回転部材と、
前記ギヤ出力回転部材の両端部に結合され前記ギヤ・キャリヤに取り付けられたクラッチ・キャリヤのクラッチ室に収容配置された摩擦多板クラッチの締結により駆動力出力調整を行う左右一対のクラッチ出力調整機構部と、
を備えた駆動力分配伝達装置において、
前記クラッチ出力調整機構部は、前記ギヤ出力回転部材に結合されたクラッチ入力回転部材と前記クラッチ・キャリヤに回転自在に支持され伝達駆動力を出力するためのクラッチ出力回転部材とを備えて該クラッチ入出力回転部材間に前記摩擦多板クラッチを介設し、
前記クラッチ入力回転部材は、前記摩擦多板クラッチのアウター・プレートを係合させるクラッチ・ハウジング部を備え、
前記クラッチ出力回転部材は、前記クラッチ・ハウジング部の内周側に配置され前記摩擦多板クラッチのインナー・プレートを係合させるクラッチ・ハブを備え、
前記クラッチ出力部材は、前記クラッチ・ハブの内周側で軸受けを介し前記クラッチ入力回転部材に回転自在に支持されている、
ことを特徴とする駆動力分配伝達装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−286317(P2008−286317A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−132401(P2007−132401)
【出願日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【出願人】(000225050)GKN ドライブライン トルクテクノロジー株式会社 (409)
【Fターム(参考)】