説明

高分子量エポキシ樹脂、該高分子量エポキシ樹脂を用いる樹脂フィルム、樹脂組成物、および硬化物

【課題】
低線膨張性、自己成膜性、ハンドリング性を満足できるエポキシ樹脂の提供。
【解決手段】
下記一般式1で示されるエポキシ樹脂(a)を50重量%以上含有する2官能性エポキシ樹脂類(A)と1分子中に2つのフェノール性水酸基を有する化合物(B)とを溶媒中で反応して得られる、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(以下GPC)による標準ポリスチレン換算の重量平均分子量が30,000以上80,000以下である高分子量エポキシ樹脂(C)。
【化1】


(nは繰り返し単位を表し、nは0以上の整数である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子材料分野に用いられる高分子量エポキシ樹脂及び、該高分子量エポキシ樹脂を用いる樹脂フィルム、エポキシ樹脂組成物、硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂は接着性、耐熱性、成形性に優れていることから電子部品、電気機器、自動車部品、FRP、スポーツ用品などに広範囲に使用されている。特に近年は電子材料分野において非常に注目されている材料のひとつであり、一般的な技術については非特許文献1などにまとめられている。電子機器に用いられる部材の物性要求は非常に高度なものとなっており、特に複数の部材が集積する積層板では特に線膨張率の小さな材料が求められている。
【0003】
電子機器に用いられる部材等においては、高温での実装をおこなった後に冷却すると、基板と素子の線膨張率の差により「そり」が発生することが知られている。また、電子機器の使用時においても発熱と冷却のサイクルを繰り返すうちに銅配線と積層板との線膨張率差が応力となり、いずれ銅配線を断線することが知られている。これまでにも電子材料用途において低線膨張材料について検討され、特許文献1には、多環芳香族を骨格に含有したエポキシ樹脂が開示されている。
【0004】
しかしながら、多環芳香族を含有する化合物は剛直な主鎖を有するため、ガラス転移温度が高いという特徴を有するが、硬く脆いという側面がある。特許文献2ではナフタレン骨格を含有するフェノキシ樹脂を用い、さらに、骨格内の2級水酸基をアシル化することにより、耐折り曲げ性を付与することが可能になり、誘電特性について改善できたとの記載があるが、ガラス転移温度が低下するため更なる耐熱性の向上が求められている。
【0005】
また、特許文献3記載の、2価のエポキシ樹脂をナフタレンジオールと反応せしめて得るナフタレン骨格含有の高分子量エポキシ樹脂は、従来得られなかったフィルム形成能を有する化合物を得ることができるとの記載があるが、フィルム形成能を付与するためにはゲル濾過クロマトグラフィーによる評価において200,000を越える高い分子量を有する化合物を得る必要があり、ゲル化に近い条件となるため安定して製造するのは難しく、また高分子量エポキシ樹脂ワニスの粘度が高くなるためハンドリング性が悪くなり、ハンドリング性改善のために多くの溶剤を使用することは経済的ではなく、環境負荷を軽減する面からも好ましくない。さらには粘度が高い場合、フィラー等を配合することによりさらに溶液粘度あるいは溶融粘度が高くなるため、フィラー等の配合の自由度がそこなわれるという点からも好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平06−234832号公報
【特許文献2】特開2007−277333号公報
【特許文献3】特公平7−59620号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】エレクトロニクス実装学会編 プリント回路技術便覧 第3版(2006年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記に示すとおり、線膨張率の低い樹脂としてナフタレンをはじめとする多環芳香族を骨格内に含有する樹脂が提供されてきた。しかしながら剛直な主鎖を有する化合物は硬く、脆いという側面を有するものであった。近年、電子部品の傾向として、平坦性、加工性の面からフィルム状の原材料を用いて電子部品を得る工法が増えてきている。すなわち、原材料にも自己成膜性を有することが求められるが、これまで低線膨張性、自己成膜性、ハンドリング性を満足できる材料は得られていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明者らは高分子量エポキシ樹脂骨格中に多環芳香族を導入することについて鋭意検討した結果、1分子中に2つのエポキシ基を有しナフタレン骨格をもつエポキシ樹脂を50重量%以上含有する2官能性エポキシ樹脂類と1分子中に2つの芳香族性水酸基を有する化合物を反応して得られる高分子量エポキシ樹脂は、ハンドリング性が良好な30,000〜80,000程度の重量平均分子量であるにもかかわらず、フィルム化した際には極めて高い自己製膜性を有し、引っ張りの力に対して破断せずに伸びる長さが長くなる上、低線膨張性を有するものとなることを見いだしたものである。
【0010】
すなわち、本発明は、
(1) 下記一般式1で示されるエポキシ樹脂(a)を50重量%以上含有する2官能性エポキシ樹脂類(A)と1分子中に2つのフェノール性水酸基を有する化合物(B)とを溶媒中で反応して得られる、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(以下GPC)による標準ポリスチレン換算の重量平均分子量が30000以上80000以下である高分子量エポキシ樹脂(C)。
【0011】
【化1】

(nは繰り返し単位を表し、nは0以上の整数である。)
【0012】
(2) ゲルパーミエーションクロマトグラムによるn=1成分より高分子量側のオリゴマー成分含有量が1面積%以上5面積%以下である一般式1で示されるエポキシ樹脂(a)を用いることを特徴とする前記(1)記載の高分子量エポキシ樹脂(C)。
(3)上記(1)または(2)に記載の高分子量エポキシ樹脂(C)から成形されたフィルム。
(4) 上記(1)または(2)に記載の高分子量エポキシ樹脂(C)を必須成分として含有してなる硬化性樹脂組成物(D)。
(5) 上記(4)記載の硬化性樹脂組成物(D)を支持フィルム上に塗工、必要に応じて乾燥して得られる硬化性接着フィルム(E)。
(6) 上記(4)記載の硬化性樹脂組成物(D)を金属箔に塗工、必要に応じて乾燥して得られる樹脂付き金属箔(F)。
(7) 上記(4)記載の硬化性樹脂組成物(D)をガラスクロスに含浸、必要に応じて乾燥して得られるプリプレグ(G)。
(8) 上記(4)記載の硬化性樹脂組成物(D)、または(4)記載の硬化性接着フィルム(E)、または(5)記載の樹脂付き金属箔(F)、または(6)記載のプリプレグ(G)を硬化してなる硬化物(H)
である。
【発明の効果】
【0013】
本発明で得られる高分子量エポキシ樹脂(C)を用いることにより、ハンドリング性、低線膨張性、フィルム形成性、伸びなどを高い次元で両立した高分子量エポキシ樹脂フィルムおよび該高分子量エポキシ樹脂硬化物を得ることができ、電気絶縁材料としてプリプレグ、電気絶縁フィルム、樹脂付き金属箔、プリント配線板、接着フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】合成例1で用いた1,6−ジヒドロキシナフタレンのジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラムを図1に示す。本発明のオリゴマー成分とは、図1の(S)成分(n=1の成分)より左側(高分子量側)にあるピーク(T)、ピーク(U)、およびピーク(V)を指し、オリゴマー成分含有量はピーク(T)、ピーク(U)およびピーク(V)の面積の和を総ピーク面積で除したものを面積%で表記するものとし、図1の場合オリゴマー成分含有量は3.23面積%である。
【0015】
【表1】

【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の高分子量エポキシ樹脂(C)は、ジヒドロキシナフタレンとエピハロヒドリンをアルカリ金属水酸化物と反応して得られる共縮合物を必須成分として使用する方法がある他は、1分子中に2つのエポキシ基を有する化合物と1分子中に2つの芳香族性水酸基を有する化合物とを重合触媒存在下で重合するなどの公知慣用の製造方法により得ることができる。本発明において特に重要となるものは、一般式1で示されるエポキシ樹脂(a)を用いて得られた高分子量エポキシ樹脂(C)は、驚くべきことに高分子量エポキシ樹脂フィルム、および硬化フィルムにおいて自己成膜性が著しく高く、破断伸度を大きくすることができることである。更には、本発明の高分子量エポキシ樹脂フィルムで特徴的なのは、フィルム化の際に溶剤に溶解しない成分が生成することである。原料となるエポキシ樹脂類(A)中に、一般式1で示されるエポキシ樹脂(a)のオリゴマー成分の特定量を含む場合、得られた高分子エポキシ樹脂(C)は加熱により極めて緩やかな網目構造をとりやすくなり、自己成膜性に優れるものとなることが推測できるが、オリゴマー成分が多くなりすぎると溶剤溶解性が悪化し、ハンドリングできなくなる問題がある。
【0017】
本発明の高分子量エポキシ樹脂(C)は、一般式1で示されるエポキシ樹脂(a)を50重量%以上含有する2官能性エポキシ樹脂類(A)と1分子中に2つのフェノール性水酸基を有するフェノール化合物とを触媒存在下で反応して得ることができる。2官能性エポキシ樹脂類(A)としては、エポキシ樹脂(a)を100重量%で用いることができるが、その他の2官能性エポキシ樹脂を50重量%以下で含有することができる。その他の2官能性エポキシ樹脂が、2官能性エポキシ樹脂類(A)中で50重量%以上を占める場合は、本発明の効果を損ない易くなる。本発明の効果を損なわない範囲で用いることができるエポキシ樹脂類(A)としては、ビスフェノールA(BPA)型エポキシ樹脂(新日鐵化学株式会社製エポトートYD−128、YD−8125,YD−011,YD−825GSなど)、ビスフェノールF(BPF)型エポキシ樹脂(新日鐵化学株式会社製YDF−170,YDF−8170,YDF−2001,YDF−870GSなど)、テトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂(新日鐵化学株式会社製YSLV−80XY)、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂(三菱化学株式会社製YX−4000など)、リン含有エポキシ樹脂(新日鐵化学株式会社製FX−305など)、などの公知慣用の2官能性エポキシ樹脂が挙げられ、これらを単独で用いても良いし、2種以上を混合して用いても良い。
【0018】
本発明において重要となる一般式1で示されるエポキシ樹脂(a)のオリゴマー成分含有量はゲルパーミエーションクロマトグラフィにより決定する。すなわち総ピーク面積に対して、n=1成分であるピーク(S)より高分子量側の成分の合計面積をオリゴマー成分含有量として面積%で表す。
【0019】
本発明で用いるエポキシ樹脂(a)は1,4−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、1,8−ジヒドロキシナフタレンなど、ひとつのナフタレン環にふたつの水酸基を持つ化合物をエピハロヒドリンにてエポキシ樹脂としたものであるが、このエポキシ樹脂に含まれる上記オリゴマー成分含有量が1.0面積%以上5.0面積%以下であり、好ましくは1.5面積%以上4.0面積%以下である。オリゴマー成分含有量が1.0面積%以下の場合フィルム成膜性に劣り、オリゴマー成分含有量が5面積%を超えると架橋密度が高くなりすぎるため脆いフィルムとなり易く、極端な場合は高分子量エポキシ樹脂合成中に溶剤に不溶な成分が生成することがあるため好ましくない。
【0020】
上記エピハロヒドリンについて、技術的には何を使っても特に問題はないが、このうちエピクロルヒドリンがもっとも安価かつ汎用的で、工業的に広く利用されている。また、用いるアルカリについても特に指定はないが、水酸化ナトリウム水溶液が工業的に広く利用されている。
【0021】
本発明で用いるフェノール化合物(B)は、1分子中に2つのフェノール性水酸基を有する化合物であれば特に制限はなく、ビスフェノールA、ビスフェノールF−D、ビスフェノールE、ビスフェノールZ、ビスフェノールフルオレン(ビスフェノールフルオレノン)、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノンなどのビスフェノール類、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、1,6’−ジヒドロキシナフタレンおよびその位置異性体、HCA−HQ(三光株式会社製リン含有化合物)などが挙げられ、目的に応じてこれらを単独で用いても、複数を組み合わせて使用しても良い。
【0022】
本発明の高分子量エポキシ樹脂(C)は、製造時の合成反応の工程において溶媒を用いても良い。その溶媒としてはポリヒドロキシポリエーテル樹脂を溶解し、反応に悪影響のないものであればどのようなものでも良い。例えば、芳香族系炭化水素、ケトン類、アミド系溶媒、グリコールエーテル類等が挙げられる。芳香族系炭化水素の具体例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン、4−ヘプタノン、2−オクタノン、シクロヘキサノン、アセチルアセトン、ジオキサン等が挙げられる。アミド系溶媒の具体例としては、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、2−ピロリドン、N−メチルピロリドン等が挙げられる。グリコールエーテル類の具体例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。これらの溶媒は2種以上併用することができる。使用する溶媒の量は反応条件に応じて適宜選択することができるが、固形分濃度が35%〜95%となるようにすることが好ましい。また、反応中に高粘性生成物が生じる場合は反応途中で溶媒を添加して反応を続けることができる。反応終了後、溶媒は必要に応じて蒸留等により除去することもできるし、更に追加することもできる。
【0023】
本発明の高分子量エポキシ樹脂(C)を製造する際の反応触媒については特に指定するものはないが、アルカリ金属水酸化物、4級アンモニウム塩類、アミン類、ホスフィン類、ホスホニウム塩類、イミダゾール類が好適である。触媒はエポキシ樹脂類(A)100重量部に対して0.01〜5.0重量部が必要に応じ用いられる。また、反応温度については触媒種により好適な水準は異なるが、通常は40℃から200℃の範囲で反応をおこない、特にホスフィン類の場合は140℃から180℃程度で反応をおこなう。なお、メチルエチルケトンなどの低沸点溶媒を使用する場合はオートクレーブを使用して高圧下で反応をおこなうことで必要な反応温度を得ることができる。
【0024】
本発明の高分子量エポキシ樹脂(C)の好ましい重量平均分子量は30,000以上80,000以下であり、より好ましくは30,000以上60,000以下である。重量平均分子量が80,000より高いと通常用いられる溶剤組成で使用する場合は粘度が高くなりハンドリング性が悪化するなどの問題が発生しやすい。また、溶剤を追加してハンドリング性の向上を図ると輸送効率など経済的な面からも問題となる。重量平均分子量が30,000未満では自己造膜性に劣るものとなる。また、高分子量エポキシ樹脂(C)を得る際のエポキシ樹脂類(A)とフェノール化合物(B)との縮合反応におけるエポキシ基:フェノール性水酸基のモル比は通常0.9:1.1〜1.1:0.9であり、好ましくは0.95:1.05〜1.05:0.95である。本発明の高分子量エポキシ樹脂(C)は、エポキシ樹脂類(A)がフェノール化合物(B)に比べ過剰であると一般的に末端はエポキシ基となり、少ないと末端はフェノール性水酸基となる。
【0025】
本発明の硬化性樹脂組成物(D)は、本発明の効果を損なわない範囲で、他のエポキシ樹脂を用いることができる。用いるエポキシ樹脂は1分子中に2つ以上のエポキシ基を有する化合物が好ましい。具体的にはBPA型エポキシ樹脂(新日鐵化学株式会社製エポトートYD−128、YD−8125,YD−011,YD−825GSなど)、BPF型エポキシ樹脂(新日鐵化学株式会社製YDF−170,YDF−8170,YDF−2001,YDF−870GSなど)、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(新日鐵化学株式会社製YDPN−638など)、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(新日鐵化学株式会社製YDCN−701など)、テトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂(新日鐵化学株式会社製YSLV−80XY)、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂(三菱化学株式会社製YX−4000など)、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂(新日鐵化学株式会社製ESN−170,ESN−375,ESN−475Vなど)、リン含有エポキシ樹脂(新日鐵化学株式会社製FX−289B,FX−305など)、多官能特殊骨格エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製EPPN−501など)、ビフェニルアラルキルフェノール型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製NC−3000)など公知慣用の化合物が挙げられ、これらを単独で用いても良いし、2種以上を混合して用いても良い。また、物性をそこなわない範囲でフェニルグリシジルエーテルなどの単官能エポキシ樹脂を用いても良い。1分子中に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂の配合量は、高分子量エポキシ樹脂(C)95重量部〜20重量部に対して5重量部〜80重量部の範囲が好ましく、より好ましくは高分子量エポキシ樹脂(C)80重量部〜45重量部に対して20重量部〜55重量部である。1分子中に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂の配合量が5重量部〜80重量部以外では、高分子量エポキシ樹脂(C)の特性が発現されにくくなる。
【0026】
本発明の硬化性樹脂組成物(D)に用いる硬化剤はアミン系硬化剤(脂肪族ポリアミン類、芳香族アミン類、ジシアンジアミドなど)、フェノール系硬化剤(フェノールノボラック樹脂など)、酸無水物系硬化剤(無水フタル酸、無水トリメリット酸など)、イミダゾール類(四国化成工業株式会社2MZなど)など公知慣用の化合物が挙げられ、これらを単独で用いても良いし、2種以上を混合して用いても良い。上記のアミン系硬化剤、フェノール系硬化剤、酸無水物系硬化剤の配合量については、1エポキシ当量のエポキシ樹脂に対し0.4〜1.3当量の硬化剤官能基を配合することが望ましい。この範囲を外れると得られるエポキシ樹脂組成物の耐熱性が損なわれるという問題が生じる。また、イミダゾール類については用いるエポキシ樹脂の100重量部に対し0.01〜5.0重量部が必要に応じ用いられる。
【0027】
前記硬化性樹脂組成物(D)を硬化する際、必要に応じて硬化触媒を用いることができる。たとえば2−メチルイミダゾールなどのイミダゾール類、トリフェニルホスフィンなどのリン化合物が挙げられる。硬化触媒の配合量は用いるエポキシ樹脂の100重量部に対し0.01〜5.0重量部が必要に応じ用いられる。
【0028】
前記硬化性樹脂組成物(D)には粘度の調整、耐衝撃性、熱伝導性、難燃性の付与のため、フィラーを配合することができる。具体的にはシリカ、アルミナなどのフィラーのほか、ガラス繊維や炭素繊維などのファイバー状不織布、あるいは織布などを使用することができる。
【0029】
本発明の硬化性接着フィルム(E)はポリエチレンテレフタレートなどのフィルム上に薄膜を形成したものであり、ビルドアップフィルム、異方性導電フィルム、アンダーフィル用接着フィルムなどに使用できる。なお、硬化性樹脂組成物を塗工、乾燥後に必要に応じて保護フィルムをラミネートしても良い。
【0030】
本発明の樹脂付き金属箔(F)は銅箔などの金属箔上に薄膜を形成したものであり、硬化性樹脂組成物を塗工、乾燥したものであり、樹脂付き銅箔などにして使用できる。
【0031】
本発明のプリプレグ(G)はガラスクロス、ガラス不織布などに硬化性樹脂組成物を含浸し、乾燥したものであるが、ガラスに限定されるものではなく、アラミド繊維などの有機繊維やアルミナクロスなどの無機繊維を用いてもよい。
【0032】
本発明の硬化物は上記硬化性樹脂組成物(D)、硬化性接着フィルム(E)、樹脂付き金属箔(F)、プリプレグ(G)等を加工、熱硬化してなるものであり、代表的にはプリント配線板(リジッド、フレキシブル)などの電子材料用に用いることができる。いずれも非特許文献1などに記載の公知慣用の手法、工法で作製されるものである。
【実施例】
【0033】
以下に実施例を示すが、本発明は以下の実施例に限られるものではない。
【0034】
(原料樹脂類)
1分子中に2つのエポキシ基を有し、かつナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂として、1,6−ジヒドロキシナフタレンのジグリシジルエーテル型エポキシ化物(エポキシ当量143.8g/eq、n=1成分含有量5.23面積%、オリゴマー成分含有量3.23面積%)、市販品の1,6−ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂(新日鐵化学株式会社製ZX−1711(エポキシ当量147.0g/eq、n=1成分含有量6.63面積%、オリゴマー成分含有量7.32面積%))およびZX−1711の蒸留品(エポキシ当量139.5g/eq、n=1成分含有量0.05面積%、オリゴマー成分含有量0.00面積%)、2,7−ジヒドロキシナフタレンのジグリシジルエーテル型エポキシ化物(エポキシ当量145.0g/eq、n=1成分含有量6.54面積%、オリゴマー成分含有量1.67面積%)を用いた。1分子中に2つのフェノール性水酸基を有する化合物として、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ビスフェノールAを用いた。その他のエポキシ樹脂として、新日鐵化学株式会社製YD−128(BPA型液状エポキシ樹脂、エポキシ当量188g/eq)を用いた。また、アミン系硬化剤として日本カーバイド株式会社製DYHARD−III(ジシアンジアミド、活性水素当量21.1g/eq)を用いた。さらに、特に記載のないものについては一般に入手が可能な試薬を用いた。
【0035】
(原料エポキシ分析方法)
エポキシ樹脂の原料評価にはゲルパーミエーションクロマトグラフィを用いて分析した。具体的には東ソー株式会社製HLC−8220本体に、東ソー株式会社製のカラム、TSKgel G2000HXL、TSKgel G2000HXL、TSKgel G1000HXLを直列に備えたものを使用した。また、溶離液はテトラヒドロフランとし、流速は1ml/minとした。カラム室の温度を40℃にした。検出はRI検出器を用いて測定をおこなった。n=1成分含有量およびオリゴマー成分含有量は以下の式で計算により求めた値で単位は面積%である。
n=1成分含有量 =(図1におけるピーク(S)の面積)/(図1における総ピーク面積)×100%
オリゴマー成分含有量 =(図1におけるピーク(T)、ピーク(U)、およびピーク(V)の面積の和)/(図1における総ピーク面積)×100%
【0036】
(高分子量エポキシ樹脂分析方法)
高分子量エポキシ樹脂の重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィを用いて分析した。具体的には東ソー株式会社製HLC−8320本体に、東ソー株式会社製のカラム、TSK−gel GMHXL、TSK−gel GMHXL、TSK−gel G2000HXLを直列に備えたものを使用した。また、溶離液はテトラヒドロフランとし、流速は1ml/minとした。カラム室の温度を40℃にした。検出はRI検出器を使用し、測定をおこなった。重量平均分子量は標準ポリスチレン検量線を用いて求めた。
〔合成例1〕
【0037】
攪拌機、窒素吹きこみ口、減圧装置と冷却器と油水分離槽を備えた還流口、アルカリ金属水酸化物水溶液滴下口を備えたセパラブルフラスコに1,6−ジヒドロキシナフタレン300重量部、エピクロルヒドリンを1387.5重量部、ハイソルブMDMを208.1重量部仕込み、窒素パージの後60℃まで昇温、溶解したのちに水酸化ナトリウム48.8重量%水溶液を31.1重量部、発熱に注意しながら仕込み、1時間反応した。その後窒素の導入を停止し、160Torr、63℃の条件で、水酸化ナトリウム48.8重量%水溶液を290.0重量部を8時間かけて滴下した。滴下が終了したら150℃まで昇温し、さらに10Torrまで減圧してエピクロルヒドリンとハイソルブMDMを留去した。得られた樹脂にトルエンを加えたのち珪藻土を用いて濾過し、水酸化ナトリウム0.1重量%水溶液重量部にて洗浄後油水分離して水相を取り除いた。さらに水を加えて洗浄後、油水分離して水相を取り除いた。得られた樹脂溶液から水とトルエンを取り除き、1,6−ジヒドロキシナフタレンのジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂a1を得た。得られた樹脂は褐色液状であり、そのエポキシ当量は143.8g/eqであり、n=1成分含有量は5.23面積%、オリゴマー成分含有量は3.23面積%であった。
〔合成例2〕
【0038】
2,7−ジヒドロキシナフタレンを用いた他は合成例1と同様の手順で合成をおこない、2,7−ジヒドロキシナフタレンのジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂を得た。得られた樹脂は褐色液状であるが、結晶性を有しており、白色の固体となった。また、そのエポキシ当量は145.0g/eqであり、n=1成分含有量は6.54面積%、オリゴマー成分含有量は1.67面積%であった。
〔合成例3〕
【0039】
新日鐵化学株式会社製ZX−1711を蒸留し、1,6−ジヒドロキシナフタレンジグリシジルエーテルを得た。得られた樹脂は無色透明の液状であり、そのエポキシ当量は139.5g/eqであり、n=1成分含有量は0.05面積%であり、オリゴマー成分含有量は0.00面積%であった。
〔実施例1〕
【0040】
攪拌機、冷却管、温度計、窒素吹きこみ口を備えたセパラブルフラスコに、合成例1で得られた1,6−ジヒドロキシナフタレンのジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂を61.2重量部、4,4’−ジヒドロキシビフェニルを38.8重量部、シクロヘキサノンを25重量部仕込み、145℃まで昇温、溶解して1時間撹拌した。その後反応触媒としてトリス−(2,6−ジメトキシフェニル)ホスフィンを0.1重量部仕込み、165℃まで昇温した。反応の進行とともに反応溶液の粘度が上昇するが、適宜シクロヘキサノンを加えて一定のトルクとなるよう撹拌を継続した。また反応はゲルパーミエーションクロマトグラフィにて随時経過を確認し、重量平均分子量が40000前後となったところで反応を終了した。反応終了後、高分子量エポキシ樹脂/シクロヘキサノン/メチルエチルケトン=40/30/30(重量比)となるように希釈し、高分子量エポキシ樹脂溶液A1を得た。得られた樹脂溶液をアルミニウム箔上に塗工、熱風循環式オーブンにて空気雰囲気下180℃にて2時間乾燥した。さらに水酸化ナトリウムの5重量%水溶液を用いてアルミニウム箔を溶解、洗浄した上で100℃で10分乾燥し、厚さ70μmのフィルムA2を得た。
〔実施例2〕
【0041】
ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂として合成例2で得られた2,7−ジヒドロキシナフタレンのジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂を56.7重量部、ビスフェノールAを43.3重量部仕込んだ他は実施例1と同様な手順で重量平均分子量が40000前後となったところで反応を終了し高分子量エポキシ樹脂溶液B1およびフィルムB2を得た。
〔比較例1〕
【0042】
ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂として合成例3で得られた1,6−ジヒドロキシナフタレンのジグリシジルエーテルを60.7重量部、4,4’−ジヒドロキシビフェニルを39.3重量部仕込んだ他は実施例1と同様な手順で重量平均分子量が40000前後となったところで反応を終了し高分子量エポキシ樹脂溶液C1およびフィルムC2を得た。
〔比較例2〕
【0043】
ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂として合成例3で得られた1,6−ジヒドロキシナフタレンのジグリシジルエーテルを53.5重量部、4,4’−ジヒドロキシビスフェノールSを46.5重量部仕込んだ他は実施例1と同様な手順で高分子量エポキシ樹脂溶液D1およびフィルムD2を得た。ただし反応は重量平均分子量が18000程度まで上昇したところで反応の進行が著しく遅くなり、また分析用の溶剤にも溶けにくくなっていったので反応を終了した。
〔比較例3〕
【0044】
ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂としてZX−1711を61.9重量部、4,4’−ジヒドロキシビフェニルを38.1重量部仕込んだ他は実施例1と同様な手順で反応をおこなった結果、反応開始より2時間で溶媒に不溶なゲルが生成したため、中断した。
〔比較例4〕
【0045】
新日鐵化学株式会社製高分子量エポキシ樹脂YP−50S(重量平均分子量50000)を100重量部をシクロヘキサノン75重量部、メチルエチルケトン75重量部からなる混合溶液に溶解し、高分子量エポキシ樹脂溶液E1を得た。また、実施例1と同様の手順でフィルムE2を得た。
【0046】
実施例1〜2および比較例1〜4を表2にまとめた。また得られたフィルムの測定は下記に示す方法によって行った。
【0047】
【表2】

【0048】
(破断伸度)
高分子量エポキシ樹脂フィルムを幅10mm×長さ60mmに切り出した。得られたフィルムを180℃で5分間乾燥し、試験片を得た。測定には株式会社島津製作所製オートグラフEZ−Sを用いて、測定長30mmとして試験片の高分子量フェノキシ樹脂の破断伸度と最大点応力を測定した。なお、このときの引っ張り速度は1mm/minとした。
【0049】
(熱機械的測定)
高分子量エポキシ樹脂フィルムの熱機械的測定の測定はエスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製TMA7100を用いておこなった。高分子量エポキシ樹脂フィルムを幅4mm×長さ30mmに切り出した。測定モードは引っ張りとし、引っ張り加重は0.14MPa、測定長は10mmとした。測定温度範囲は室温から240℃とした。昇温速度は5℃/minとした。熱膨張における変曲点の外挿点をTg(TMA)とし、Tg(TMA)よりも低温側の線膨張率(CTE;Coefficient of Thermal Expansion)をα1とした。
【0050】
(示差走査熱量測定)
高分子量エポキシ樹脂の示差走査熱量測定の測定はエスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製DSC6200を用いておこなった。高分子量エポキシ樹脂フィルムをパンチングし、積層、アルミニウム製カプセルにパッキングしたものを測定試料とした。測定温度範囲は室温から240℃とした。昇温速度は10℃/minとした。測定は2サイクルおこない、2サイクル目に得られたDSCチャートより、補外ガラス転移開始温度(Tig)を高分子量エポキシ樹脂のTg(DSC)とした。
【0051】
表2に示すとおり、実施例1,実施例2のナフタレン骨格を含有する高分子量エポキシ樹脂は比較例4と比べてTgが高く、低線膨張性を有することがわかった。また、実施例1,実施例2は比較例1、比較例2と比べて破断伸度が大きい。なお、比較例1と比較例4で、破断伸度に有意差はなく、多環芳香族があれば破断伸度が高い、すなわちフィルム形成性に優れるものではないという結果を得た。
〔実施例3〜実施例4及び比較例5〜比較例6〕
【0052】
硬化性樹脂組成物の配合ついて下記に示す。
まず、ジシアンジアミドは次に示す条件にて調製した硬化剤溶液として配合した。ジシアンジアミドが4重量部を、N,N−ジメチルホルムアミドが15重量部、2−メトキシエタノールが15重量部からなる混合溶媒に溶解し、ジシアンジアミド溶液を得た。また、2−メトキシエタノール50重量部、メチルエチルケトン50重量部を混合し、希釈溶液を得た。固形分換算で表3記載の条件となるように高分子量エポキシ樹脂溶液とYD−128とジシアンジアミド溶液、および2−エチル−4−メチルイミダゾールを配合し、さらに不揮発分が40重量%になるように希釈溶液を加えた。
【0053】
実施例3〜実施例4及び比較例5〜比較例6を表3にまとめた。また得られたフィルムの測定は下記に示す方法によって行った。
【0054】
【表3】

【0055】
(硬化フィルムの作成)
得られた硬化性樹脂組成物溶液をアルミニウム箔に塗布後硬化し、厚さが70μmの硬化フィルムを作成した。これを150℃で1時間乾燥した後、180℃で2時間、0.1kPaの条件で硬化をおこない、アルミニウム箔付き硬化フィルムを得た。
【0056】
(熱機械的測定)
硬化フィルムの熱機械的測定はエスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製TMASS7100を用いておこなった。アルミニウム箔付き硬化フィルムを4mm×30mmの大きさに切りだし、5重量%の水酸化ナトリウム水溶液にてアルミニウム箔を溶解してフィルムを得た。さらにこれを200℃のオーブンで5分間加熱し、試験片を得た。測定温度範囲は室温から240℃とした。昇温速度は5℃/minとした。引っ張り加重は0.14MPaとした。得られたTMA曲線の傾きが変わる外挿点を硬化フィルムのTg(TMA)とした。
【0057】
(示差走査熱量測定)
硬化フィルムの示差走査熱量測定におけるTgは、樹脂厚25μmのアルミニウム箔付き硬化フィルム用いた他は、高分子量エポキシ樹脂における示差操作熱量測定と同じ方法にて測定をおこない、硬化フィルムのTg(DSC)とした。
【0058】
(動的粘弾性測定)
動的粘弾性測定はエスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製DMA120を用いておこなった。樹脂厚75μmのアルミニウム箔付き硬化フィルムを10mm×60mmの大きさに切りだし、5重量%の水酸化ナトリウム水溶液にてアルミニウム箔を溶解してフィルムを得た。さらにこれを200℃のオーブンで5分間加熱し、試験片を得た。測定温度範囲は室温から280℃とした。昇温速度は2℃/minとした。測定モードはずりモードとし、また、測定周波数は10Hzで固定しておこなった。測定により得られた貯蔵弾性率(E′)曲線より、貯蔵弾性率が低下し始める外挿点の温度をDMAE′による硬化フィルムのTgとした。また、貯蔵弾性率( (E′)と損失弾性率(E″)の比(E″/ E′)の最大値の温度をDMAtanδによる硬化フィルムのTgとした。
【0059】
(銅箔引きはがし強さ試験)
銅箔引きはがし強さ試験の試験片作製方法を以下に示す。まずサンドブラストした鉄板をメチルエチルケトンにて脱脂処理をし、乾燥後の樹脂厚が12μmとなるように、得られた硬化性樹脂組成物を塗布した。同様に、三井金属鉱業株式会社製銅箔3EC−III(35μm)もメチルエチルケトンでの脱脂処理をおこなったのち、銅箔マット面に乾燥後の樹脂厚が12μmとなるように硬化性樹脂組成物を塗布した。これを150℃のオーブンで5分間加熱乾燥し、樹脂面同士を張り合わせた。同様の方法で、サンドブラストした鉄板と銅箔シャイニー面のそれぞれをメチルエチルケトンにて脱脂処理した後に乾燥後の樹脂厚が12μmとなるように硬化性樹脂組成物を塗布し、150℃のオーブンで5分間加熱乾燥して樹脂面同士を張り合わせた。これを真空状態で170℃、2MPaの条件で加熱圧着して硬化物を得た。この硬化物の銅箔を、JIS−C−6481に記載されている銅箔引きはがし強さ試験片と同様の形状に切り出し、試験片を得た。これを株式会社島津製作所製オートグラフEZ−Sにて銅箔マット面およびシャイニー面それぞれの引きはがし強さを測定した。
【0060】
(硬化フィルムの破断伸度)
硬化フィルムの引っ張り強さと破断伸度はアルミニウム箔付き硬化フィルムを5重量%の水酸化ナトリウム水溶液にてアルミニウム箔を溶解したのち洗浄して乾燥したものを用いた他は、高分子量エポキシ樹脂フィルムと同様の方法で破断伸度と破断点の応力を測定した。
【0061】
表3は高分子量エポキシ樹脂(C)以外のエポキシ樹脂、硬化剤および硬化促進剤を共通としており、高分子量エポキシ樹脂(C)成分の影響を比較しやすくしたものである。本発明により得られた高分子量エポキシ樹脂(C)を用いて得られる硬化物は低線膨張性に優れ、硬化物に伸び性を付与できる結果となった。詳細については以下に記載する。
【0062】
(表3・硬化フィルムのガラス転移温度について)
ガラス転移温度は骨格に依存するものであり、骨格が同一である実施例3と比較例4は同等な値を得た。実施例4と比較例5を比較した場合、多環芳香族を含有する実施例4は20℃程度高い値を示した。
【0063】
(表3・低線膨張性について)
線膨張率については高分子量エポキシ樹脂(C)の線膨張率の結果を反映した結果となり、多環芳香族を含有するものは小さな値となり、多環芳香族を含有しないものは大きな値であるという結果を得た。
【0064】
(表3・破断伸度と最大点応力について)
実施例3と比較例4は骨格が同一であり、ガラス転移温度や線膨張率において同一の物性を示すことがわかったが、破断伸度においては実施例3で40%、比較例4で13%と大きく異なる値を示した。この原因についても明らかではないが、実施例1で得られた樹脂には原料にオリゴマー成分が含まれるのに対して、比較例1で得られた樹脂にはオリゴマー成分が含まれないことから、この違いにより差異が生まれたのではないかと推測できる。
【符号の説明】
【0065】
図1中の各符号は以下のとおりである。
(O)は、一般式1で示されるエポキシ樹脂(a)のn=0成分であり、総ピーク面積に対する割合は87.746面積%である。
(P)は、一般式1で示されるエポキシ樹脂(a)に含まれる不純物成分であり、総ピーク面積に対する割合は1.583面積%である。
(Q)は、一般式1で示されるエポキシ樹脂(a)に含まれる不純物成分であり、総ピーク面積に対する割合は1.517面積%である。
(R)は、一般式1で示されるエポキシ樹脂(a)に含まれる不純物成分であり、総ピーク面積に対する割合は0.692面積%である。
(S)は、一般式1で示されるエポキシ樹脂(a)のn=1の成分であり、総ピーク面積に対する割合は5.233面積%である。
(T)は、一般式1で示されるエポキシ樹脂(a)のオリゴマー成分であり、総ピーク面積に対する割合は0.894面積%である。
(U)は、一般式1で示されるエポキシ樹脂(a)のオリゴマー成分であり、全ピーク面積に対する割合は1.427面積%である。
(V)は、一般式1で示されるエポキシ樹脂(a)のオリゴマー成分であり、全ピーク面積に対する割合は0.907面積%である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式1で示されるエポキシ樹脂(a)を50重量%以上含有する2官能性エポキシ樹脂類(A)と1分子中に2つのフェノール性水酸基を有する化合物(B)とを溶媒中で反応して得られる、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(以下GPC)による標準ポリスチレン換算の重量平均分子量が30,000以上80,000以下である高分子量エポキシ樹脂(C)。
【化1】

(nは繰り返し単位を表し、nは0以上の整数である。)
【請求項2】
ゲルパーミエーションクロマトグラムによるn=1成分より高分子量側のオリゴマー成分含有量が1面積%以上5面積%以下である一般式1で示されるエポキシ樹脂(a)を用いることを特徴とする請求項1記載の高分子量エポキシ樹脂(C)。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の高分子量エポキシ樹脂(C)から成形されたフィルム。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の高分子量エポキシ樹脂(C)を必須成分として含有してなる硬化性樹脂組成物(D)。
【請求項5】
請求項4記載の硬化性樹脂組成物(D)を支持フィルム上に塗工、必要に応じて乾燥して得られる硬化性接着フィルム(E)。
【請求項6】
請求項4記載の硬化性樹脂組成物(D)を金属箔に塗工、必要に応じて乾燥して得られる樹脂付き金属箔(F)。
【請求項7】
請求項4記載の硬化性樹脂組成物(D)をガラスクロスに含浸、必要に応じて乾燥して得られるプリプレグ(G)。
【請求項8】
請求項4記載の硬化性樹脂組成物(D)、請求項5記載の硬化性接着フィルム(E)、請求項6記載の樹脂付き金属箔(F)、または請求項7記載のプリプレグ(G)を硬化してなる硬化物(H)。

【図1】
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【公開番号】特開2012−92158(P2012−92158A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−237992(P2010−237992)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【出願人】(000006644)新日鐵化学株式会社 (747)
【Fターム(参考)】