高周波電力増幅器およびそれを用いた送信器および移動体通信端末
【課題】 負荷インピーダンスの変動にかかわらず良好な線形性を保ち、さらに小型である様な高周波電力増幅器を提供する。
【解決手段】 最終増幅段トランジスタの出力端子における交流電圧振幅を検出し、その電圧振幅があらかじめ定めた閾値を超えたときに、電力増幅器の入力信号振幅を抑制する信号を出力する。
【効果】アンテナの周囲状況に依存して、アンテナから電力増幅器に向けて反射が起こる。この反射は電力増幅器の負荷インピーダンス変動として現れる。この負荷インピーダンス変動によって生じる不整合を防止することができる。
【解決手段】 最終増幅段トランジスタの出力端子における交流電圧振幅を検出し、その電圧振幅があらかじめ定めた閾値を超えたときに、電力増幅器の入力信号振幅を抑制する信号を出力する。
【効果】アンテナの周囲状況に依存して、アンテナから電力増幅器に向けて反射が起こる。この反射は電力増幅器の負荷インピーダンス変動として現れる。この負荷インピーダンス変動によって生じる不整合を防止することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波移動体通信用端末に用いられる高周波電力増幅器およびそれを用いた送信器に関し、特に増幅器特性の負荷インピーダンス依存性を低減した高周波電力増幅器およびそれを用いた送信器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の負荷インピーダンスへの特性の依存性を低減した増幅器の構造として、特許文献1にその一例が開示されている。特許文献1の増幅器は、パワーアンプとアンテナ間の伝送線路上の複数の点で検波し、そのレベル差から定在波の発生、すなわち負荷の不整合を検出してパワーアンプの入力を制限している。
【0003】
また、特許文献2には、最終段トランジスタの出力を電圧検波し、最終段トランジスタのバイアス電圧に帰還する構成が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2000-341143号公報
【特許文献2】米国特許6,720,831号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
高周波移動体通信端末に用いられる電力増幅器においては、アンテナの周囲の状況に依存して、アンテナから電力増幅器に向けて電力の反射が生じ得る。そのような反射が生じた場合、電力増幅器からアンテナを見込んだ負荷インピーダンスが変動したかのように見える。増幅器から見た負荷インピーダンスが変動すれば、増幅器を構成する出力段のトランジスタの負荷インピーダンスも変動し、その結果、増幅器は本来設計された特性と異なる特性を示す。
【0006】
一例として、増幅器の利得、すなわち入出力特性について、負荷インピーダンス変動の影響を模式的に示したのが図1である。図1において、横軸は増幅器への入力FRin、縦軸は電力増幅器の出力FRoutを示している。特性(2)は本来の入出力特性であり、アンテナの周囲の状況により、それよりも高利得であるが飽和出力の低い特性(1)、あるいは利得は低いものの飽和出力の高い特性(3)の場合が生じる。
【0007】
いま、電力増幅器が線形増幅器として動作することを要求されるCDMA方式の場合においては、図1の特性(1)のような特性は本来の線形最大出力よりも低出力で出力が飽和し、そのために、システムの許容値を超えた歪が生じる場合があるという問題があった。
【0008】
この問題に対しては、特許文献1の図5に示されるように、アンテナと電力増幅器の間にアイソレータを挿入してアンテナからの反射電力を増幅器に戻さないことが有効な対策であるが、アイソレータはコストが高く、しかも電力増幅器が小型にならないという問題点がある。
【0009】
また、特許文献1の図1に記載された従来例では、出力整合回路上の異なる3点での電圧振幅を測定し、伝送線路上に生じる定在波の振幅の差を読み取ることで反射波が生じたことを検出し、制御電圧レベルを制限している。しかし、この構成では、波長の1/6程度の長さの伝送線路長と、電圧検出回路が3個必要となり、電力増幅器が小型にならないという問題点がある。
【0010】
一方、特許文献2の図2Aに記載の例においては、センシング用トランジスタの出力端で電圧検出を行うために電圧検出器は1個で済むが、その目的が検出器で過電圧を検出してパワートランジスタの破壊を防ぐことにあり、過電圧を検出した場合に前記パワートランジスタのバイアス電流を減少させるものである。この例は、パワーアンプの線形性に対する考慮がないために、パワーアンプの線形性が劣化して歪が生じる可能性があるという問題点があった。
【0011】
本発明の目的は、上記の問題を解決し、負荷インピーダンスの変動にかかわらず良好な線形性を保ち、しかも小型化の容易な高周波電力増幅器およびそれを用いた送信器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の代表的手段の一例を示せば次の通りである。
すなわち、本発明の高周波電力増幅器は、高周波移動体通信用端末に用いられる高周波電力増幅器であって、利得可変増幅器からの入力信号を増幅する少なくとも1段以上の増幅段と、前記増幅段の出力側に接続された出力整合回路と、前記増幅段を構成するトランジスタと前記出力整合回路の接続点における電圧振幅を検出し前記利得可変増幅器の利得制御情報として出力する第1の検出部とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、負荷インピーダンスの変動にかかわらず良好な線形性を保つ高周波電力増幅器およびそれを用いた送信器を提供することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明に係る実施の形態について、添付図面を参照しながら以下詳細に説明する。
<実施例1>
まず、図2を用いて本発明の高周波電力増幅器の実施例1の構成を説明する。図2は本発明の実施例1になる高周波電力増幅器10の回路図である。
本発明の実施例1によれば、高周波電力増幅器10は、最終増幅段トランジスタの出力端子における交流電圧振幅を検出し、その電圧振幅があらかじめ定めた規定値を超えたときに、電力増幅器の入力信号振幅を抑制する信号を出力するように構成されている。
【0015】
すなわち、図2に示す高周波電力増幅器10において、1及び3は増幅器の入力整合容量であり、2は入力整合用インダクタである。100は初段増幅トランジスタ、200は最終段増幅トランジスタ、30はコレクタ交流電圧検出部(第1の検出部)である。202はMMIC(Microwave Monolithic IC)であり、入力整合容量3、初段増幅用トランジスタ100、最終段増幅用トランジスタ200、段間整合容量251、及びコレクタ交流電圧検出部30を1チップに集積化したものである。
【0016】
電力増幅器10は、RF入力信号Rfinが入力される入力端子4、RF出力信号RFoutが出力される出力端子5、及びコレクタ交流電圧検出部(第1の検出部)30の検波出力Vdetoutが出力される出力端子6を備えている。第1の検出部の検波出力Vdetoutは、入力端子4にRF入力信号を供給する利得可変増幅器の制御用の情報として利用される。
【0017】
端子221及び端子222は、各々、初段増幅用トランジスタ100及び最終段増幅用トランジスタ200のベースバイアスVbb1、Vbb2を与える。231は初段増幅用トランジスタ100のベースバイアス電圧供給用RF信号アイソレーションインダクタであり、232は最終段の増幅用トランジスタ200のベースバイアス電圧供給用RF信号アイソレーションインダクタである。260は電源電圧Vccを与える電源端子であり、241及び261は、各々初段及び終段の増幅用トランジスタの電源用チョークインダクタである。242及び262は、電源電圧安定化用バイパスコンデンサである。
【0018】
コレクタ交流電圧検出部30は、電圧検出用ダイオード300、電圧検出用抵抗301、電圧検出用容量素子302を有している。出力整合用キャパシタ281、282、283と出力整合用伝送線路285、286とによって、増幅器の出力整合回路280が構成されている。
【0019】
本実施例によれば、第1の検出部30により、増幅段の最終段の増幅用トランジスタと出力整合回路の接続点で電圧振幅Vdetoutを検出し、検出されたこの電圧振幅を、入力端子4にRF入力信号を供給する利得可変増幅器の制御情報として出力する。この検波出力Vdetoutを用いることにより、負荷インピーダンスの変動に対応した増幅トランジスタの出力電圧振幅Vdetoutに応じて、利得可変増幅器の利得の制御を行うことができる。これによって、電力増幅器の入力信号振幅すなわち利得可変増幅器の出力を、常時、高周波電力増幅器が出力に歪が生じないリニア動作領域になるように制御可能となり、負荷インピーダンス変動時の歪発生を抑制できる。アンテナと電力増幅器の間にアイソレータを挿入する必要もないので、コストアップにもならない。
【0020】
また、本実施例の高周波電力増幅器を構成する各段のトランジスタは、RF入力信号Rfinが入力されるとそれに伴いバイアス電流も増加する自己バイアス方式となっている。これにより、負荷インピーダンス変動時の歪発時においても、各段のトランジスタ電力増幅器のバイアス電流を絞り込まずに、RF入力信号の振幅を絞る構成としている。換言すると、RF入力信号Rfinの振幅は、RF入力電圧に対応する自己バイアス方式の動作範囲内となっている。そのため、RF入力信号の振幅が絞られると、それに対応してバイアス電流も絞られる。この点からも、負荷インピーダンス変動時の歪発時でも、各段のトランジスタは正規の動作範囲内で動作する。これによって、リニア領域での動作が確保される。
【0021】
また、コレクタ交流電圧検出部30の出力端子6が、最終段の増幅用トランジスタ200のコレクタに接続されているので、コレクタ交流電圧検出部30の出力は電源電圧の情報も加味されており、歪発生の抑制に有効である。
<実施例2>
本発明の実施例2として、第1の実施例になる電力増幅器を用いた送信機の例を、図3〜図5Cを用いて説明する。
【0022】
まず、図3は、図2に示す電力増幅器を適用した送信機のブロック構成例を示す図である。電力増幅器10は、RF入力信号Rfin用の端子4が外部の利得可変増幅器12に接続されており、RF出力信号RFout用の端子5がアンテナ14と接続されている。また、電力増幅器10のコレクタ交流電圧検出部30の交流電圧振幅出力Vdetoutを出力する端子6が、A/D変換器16を介して制御回路18に接続されている。この制御回路18は、送信機内に、より好ましくはそのベースバンド制御回路(ベースバンドIC)内に設けられる。
【0023】
送信したい情報に基づいて搬送波が位相変調された高周波の送信信号Fr0が利得可変増幅器12に入力されここで増幅され、高周波信号RFinとして電力増幅器10に入力される。この信号は電力増幅器10でさらに増幅され、高周波信号RFoutとして出力され、アンテナ14を駆動して送信を行なう。検波出力Vdetoutは、利得可変増幅器12の利得制御用の情報として利用される。すなわち、制御回路18は、コレクタ交流電圧検出部30で検出される交流電圧振幅の出力Vdetoutに応じて、利得可変増幅器12の利得を制御する。
【0024】
本実施例によれば、制御回路18で利得制御用の情報としてのVdetoutを監視し、電力増幅器10の出力に歪が生じる条件となったとき、換言すると、増幅トランジスタの出力電圧振幅があらかじめ定めた閾値を超えたときには、利得可変増幅器12の利得か制限されるような制御信号を生成する。すなわち、増幅トランジスタ200の出力電圧振幅に応じて利得可変増幅器12の利得が制御される。負荷インピーダンスが通常の範囲以下の大きさの時、利得可変増幅器12の利得は所定のパラメーターに基づき設定される。電力増幅器10の出力に歪が生じる条件となったとき、換言すると負荷インピーダンスの増大に伴い増幅トランジスタ200の出力電圧振幅Vdetoutがあらかじめ定めた閾値を超えたときには、通常時の利得可変増幅器12の利得よりも低い利得になるように制限する。これによって、高周波電力増幅器10はその出力に歪が生じない領域で動作する。
【0025】
このようにして、高周波電力増幅器10は、負荷インピーダンスの変動にかかわらず良好な線形性を保つ。これによって、利得可変増幅器12の出力すなわち電力増幅器の入力信号振幅が、高周波電力増幅器が出力に歪が生じない領域になるように制御され、負荷インピーダンス変動時の歪発生を抑制できる。
【0026】
第1の実施例になる電力増幅器あるいは本実施例の送信機の構成によれば、負荷インピーダンス変動時の歪発生を抑制できる。以下この点を詳細に説明する。
【0027】
図4Aは、電力増幅器10の出力段トランジスタのコレクタ電流・コレクタ電圧特性と、RF大信号増幅動作時のコレクタ端子の電圧Vcとコレクタ電流Icの関係、すなわち動的負荷曲線を模式的に示した図である。負荷インピーダンスの実部が、図4Aに示した動的負荷曲線の傾きに相当するので、図1の(1)〜(3)は、図4Aの(1)〜(3)におおよそ相当する。
【0028】
また、図4Bは、コレクタ電流・コレクタ電圧特性(1)〜(3)とこれに対応してコレクタ交流電圧検出部30により検出されるVdetout(1)〜(3)の関係を示している。
【0029】
図4Aの(2)、(3)では歪は生じにくいが、(1)においては、低電圧側で動的負荷曲線が楕円形を描かずにつぶれている。このように動的負荷曲線がつぶれるので、図1に(1)として示したように、本来の入出力特性(2)よりも低出力で出力飽和が生じるのである。
【0030】
今、図4Aの(1)の動的負荷曲線においては、低電圧側で動的負荷曲線がつぶれるとともに負荷曲線がより高電圧側まで延びている。一方、図4Aの(3)の場合には電圧が低電圧にとどまっている。そこで、歪の発生とコレクタ端でのRF電圧に相関があると考えられる。
【0031】
電力増幅器10の出力整合回路280は、通常50オームのインピーダンスに整合を取る。この電力増幅器10に、50オームと異なる負荷が接続されたときに負荷からの反射が生じるために、入出力特性が図1の(1)や(3)に示すようになり、出力に歪が生じる場合があるのは先に述べたとおりである。
【0032】
今、W−CDMA方式の携帯端末では、アンテナからの反射は電力増幅器10とアンテナ14の間に挿入されている部品の損失により減衰し、電力増幅器の出力端子5で出力Rfoutの不整合は電圧定在波比(VSWR)で4:1程度以下になる。
【0033】
そこで、図2に示した増幅器10のトランジスタ200のコレクタ端での交流電圧振幅VdetoutとW−CDMA信号の歪を表す指標である隣接チャネル漏洩電力(ACLR)を、VSWR=4:1の場合について回路シミュレーションによって求めたのが図5Aである。このシミュレーションにおいて、VSWRを4:1とするために、負荷インピーダンスは200オームとし、負荷と電力増幅器10の間に伝送線路を挿入してアンテナ14からの反射の位相を表した。伝送線路の位相回転を0°〜180°まで変化させることで、往復0〜360°の位相回転となり、すべての場合が尽くされる。シミュレーションした電力増幅器が50オーム負荷のときの特性は、電源電圧Vcc=3.5V、入力電力1dBmで出力電力27.5dBm、そのときのACLRは−42dBcであった。
【0034】
図5Aにおいて、上のトレースは交流電圧振幅Vdetoutであり、下のトレースが隣接チャネル漏洩電力ACLRである。図5Aから、交流電圧振幅の出力Vdetoutと隣接チャネル漏洩電力ACLRの間に良い相関があることが明らかである。図5A中に矢印で示した、Vdetout<3Vの領域では、ACLRは最悪でも−34dBcで、W−CDMA方式の規格である3GPP規格のACLR最悪値−33dBcを下回っており、Vdetout=3Vを閾値電圧として図3の制御部18がVdetout<3Vとなるように利得可変増幅器12の制御を行うことによって、ACLR規格を満たす動作が実現されることがわかる。
【0035】
本実施例では、第1の検出部30で得た情報により、増幅トランジスタの出力電圧振幅に応じて利得可変増幅器12の利得の制御を行うので、負荷インピーダンスが大きいときは、図5Bに示すように、利得可変増幅器12の出力すなわち電力増幅器の入力信号振幅はP1よりも小さい値P2に抑制される。そのため、電力増幅器は、P2より左側の出力歪の生じない領域で動作する。
【0036】
実際には、50オーム整合の通常動作時の規定出力下で利得制御増幅器12への出力抑制信号が発生しない範囲で、閾値電圧を設定することで、負荷インピーダンス変動時に、より低歪な状態での動作が可能となる。このことは、後で述べる他の実施例についても、同様である。
【0037】
また、利得可変増幅器12が多段に構成されている場合には、負荷インピーダンスの大きいときに、各段の利得をそれぞれ制限することにより、全体としての利得が所定の値になるようにすればよい。
【0038】
図2に示す電力増幅器10を実際に作成し、図3に示した送信系を構成して実験を行い、上記閾値の最適化を行ったところ、VSWR=4:1までの負荷変動条件下においてACLR<−36dBcを得た。
【0039】
また、本実施例によれば、線形性を確保するための回路構成が簡単であり、この回路構成の追加が高周波電力増幅器、あるいはこれを用いた送信機のサイズやコストへ与える影響は小さい。すなわち、本実施例の構成で、通常の電力増幅器10に追加する回路は、図2に符合30で示した電圧検出部のみである。このうち、電圧検出用ダイオード300はトランジスタのダイオード接続で実現可能である。また、電圧検出用抵抗301、容量302は、いずれも通常のMMIC工程で作成可能である。W−CDMA向けの電力増幅器に上記電圧検出回路30を組み込んだところ、MMICチップ面積の増加は5%以下に収まった。
【0040】
以上述べたように、本実施例によれば、図4Bに示すような最終増幅段トランジスタ200の出力端子における交流電圧振幅Vdetoutを検出し、歪が生じる条件となったとき、すなわち、増幅トランジスタの出力電圧振幅があらかじめ定めた閾値を超えたときに、電力増幅器の入力信号振幅を抑制する信号を出力するので、電力増幅器の動作領域が制限される。これにより、負荷インピーダンスの変動にかかわらず良好な線形性を保つことができる。しかも、通常の電力増幅器10と比較してMMICチップ面積の増加部分はごく僅かであり、小型、低コストの高周波電力増幅器さらにはそれを用いた移動体通信端末を提供することが可能である。
<実施例3>
本発明の実施例3を図6A、図6Bで説明する。この実施例は、図2あるいは図3に示す高周波電力増幅器を、W−CDMA方式の移動体通信端末に適用した例である。
【0041】
図6Aの移動体通信端末は、W−CDMA信号の変調や復調を行なうことができる変復調回路を含み半導体集積回路化された高周波信号処理回路を有する。すなわち、電子デバイス600と、高周波電力増幅器(パワーモジュール)700と、フロントエンド・モジュール800で構成されている。
【0042】
図3のベースバンド制御回路(ベースバンドIC)に相当する電子デバイス600は、W−CDMA信号の変調や復調を行なうことができる変復調回路や送信データ(ベースバンド信号)に基づいてI,Q信号を生成したり受信信号から抽出されたI,Q信号を処理するベースバンド回路610と、送信信号から高調波成分を除去するバンドパスフィルタ(BPF1)650、受信信号から不要波を除去するバンドパスフィルタ(BPF2)651などが1つのパッケージに実装されている。
【0043】
この実施例の電子デバイス600は、高周波信号を処理する端末制御部620を含むベースバンド回路610、受信部630及び送信部640、変調後の送信信号を増幅する送信可変利得増幅器(GCA)611および661、増幅された送信信号をアップンコンバートするミキサ(Tx−MIX)652、受信信号を増幅するロウノイズアンプ(LNA)612、増幅された受信信号をダウンコンバートするミキサ(Rx−MIX)653などが1つの半導体チップ上に形成されてなる。
【0044】
さらに、電子デバイス600には、制御電流を出力する際に参照されるテーブルデータを格納する不揮発性メモリ613およびこのメモリから読み出されベースバンド回路610の端末制御部620で処理されたデータをDA変換してアナログ電流として出力するDA変換回路614,615が設けられている。
【0045】
高周波電力増幅器(パワーモジュール)700は、高周波信号を増幅する高周波電力増幅回路710、整合回路714、A/D変換器680、バイアス制御回路720、コレクタ交流電圧検出部(第1の検出部)730などが1つのセラミック基板上に実装されたものである。
【0046】
無線通信システムはまた、フロントエンド・モジュール800に設けられた送受信の切替えスイッチ(DUPLEXER)810や、パワーモジュール700から出力される送信信号の出力レベルを検出するカプラなどからなる出力検出回路(PDT)740、送信信号に含まれる高調波などのノイズを除去するフィルタ(LPF)830、検出回路740の出力検出信号とベースバンド回路610からのパワー制御信号PCSとに基づいて電子デバイス600内の送信可変利得増幅器(GCA)611ならびに661に対する出力制御信号Vapcを生成する自動パワー制御回路(APC回路)670などを備えている。
【0047】
この実施例の無線通信システムでは、パワーモジュール700内のバイアス回路720に対する制御電流およびモード制御信号は、電子デバイス600のベースバンド回路610から供給される。また、バイアス回路720内の電圧−電流変換回路およびオフセット電流付加回路に入力される基準電圧も、ベースバンド回路610から供給される。
【0048】
この実施例では、ベースバンド回路610から供給される制御電流Ic1、Ic2等によってパワーアンプ710の初段増幅用トランジスタ及び最終段増幅用トランジスタの利得が一定に保持された状態で、出力レベルを制御する自動パワー制御回路670から出力される出力制御信号が電子デバイス600内の送信可変利得増幅器611ならびに661に供給され、送信可変利得増幅器611および661のゲインが出力制御信号Vapcによって制御される。これにより、パワーアンプ710の出力電力が変化するように制御される。なお、パワーアンプ710にバイアスを与えるバイアス回路720に電源補償機能を持たせることで、電池の充電や消耗で電源電圧が変化してもパワーアンプ710の利得をほぼ一定に保つことができ、受信帯ノイズ特性が規格を満たすことができる。また、基地局から供給される出力要求レベルに応じて自動パワー制御回路670に対して供給されるパワー制御信号PCSを生成する基になるテーブルデータも、不揮発性メモリ613に格納される。
【0049】
この実施例において、基地局からの下り受信信号は移動体通信端末のアンテナ14で受信され、送受信分離フィルタ(DUPLEXER)810を通ってロウノイズアンプ(LNA)612に入力されたのち、バンドパスフィルタ651を経てミキサー653でダウンコンバートされ、受信可変利得増幅器で所望のレベルに調整されてから、受信ベースバンド信号に変換される。この受信ベースバンド信号は受信部630で抽出される。また、受信ベースバンド信号は、分岐して利得制御部621に送られ、ここで受信ベースバンド信号が所望の一定レベルになるような受信利得制御信号を生成して、受信可変利得増幅器を制御する。
【0050】
送信部640で生成された送信ベースバンド信号は、直交変調器等を通って送信中間周波数に変換され、可変利得増幅器611で送信レベルを調整された後、ミキサー652、ベースバンドフィルタ650等を通って、電力増幅器710で所望の送信出力に増幅された後、方向性結合器、送受信分離フィルタ(DUPLEXER)810を通って、アンテナ14から上り送信信号として放射される。また、可変利得増幅器611ならびに661の利得を制御する送信利得制御信号Va1ならびにVa2は、リミッタ622を介して送信可変利得増幅器611および661へ供給され、送信可変利得増幅器611および661の利得が過大とならないように制御される。リミット値は、端末制御部620により設定される。
【0051】
送信可変利得増幅器611および661における送信レベルの調整として、基地局の上り信号回線の品質を保つために、移動体通信端末が基地局から離れた位置にあるとき移動体通信端末が大きい電力で送信し、基地局から近い場合は送信電力を小さくする。基地局は、上り回線の信号の品質を監視し、劣化するようであれば、下り回線信号に移動体通信端末の送信電力を上げさせるよう指示し、上り回線の信号の品質が所定の品質以上であれば、移動体通信端末の送信電力を下げさせるように指示する。移動体通信端末は、受信部630ではこれらの情報を抽出し、端末制御部620の利得制御部621に送る。また、コレクタ交流電圧検出部730で検出された利得可変増幅器611および661の利得制御情報も利得制御部621に送られる。利得制御部621は、これらの情報を用いて、送信利得制御信号Vaを生成する。
【0052】
送信利得制御信号Va1ならびにVa2は、送信可変利得増幅器611および661の利得を制御する。送信利得制御信号Va1ならびにVa2は、リミッタ622を介して送信可変利得増幅器611および661へ供給され、送信可変利得増幅器611および661の利得が過大とならないように制御される。これは、基地局から要求される上り送信電力が大きすぎる場合、電力増幅器710などで送信信号が歪み、それにより近隣の周波数へのスペクトラムの広がりが生じ、その周波数への干渉妨害となるのを避けるためである。
【0053】
そのため、リミッタ622は、図6Bに示すような入出力特性を有する。例えば、チャネル周波数情報等の基本情報に基いて予め定めた値以上のリミッタ入力に対しては、リミット値(=limit−1)に制限するリミッタ動作をする。このリミット値が移動体通信端末の最大送信電力を決定している。
【0054】
本実施例では、上記基本情報に加え、利得可変増幅器611および661の利得制御情報も端末制御部620の利得制御部621に送られる。これにより、上記リミット値(=limit−1)以内であっても、コレクタ交流電圧検出部730により検出されるVdetoutが所定値を超えた場合は、リミット値をより小さい値に変更し(=limit−2)、最大送信電力を抑制している。
【0055】
本実施例によれば、負荷インピーダンスの変動にかかわらず良好な線形性を保ち、しかも小型化の容易なW−CDMA方式の移動体通信端末を提供することが可能である。
<実施例4>
次に、図7〜図10を用いて本発明の実施例4の構成を説明する。図7の電力増幅器10は、図2の電力増幅器10において、コレクタ交流電圧振幅検出回路(第1の検出部)30の出力と、電源電圧Vccとを信号処理回路(Signal Processor)305に入力し、この信号処理回路305による信号処理結果を交流電圧振幅の出力Vdetoutとして出力するように変更したものである。
【0056】
図8は、図7の電力増幅器10を適用したW−CDMA方式の携帯端末における送信機のブロック構成例を示す図である。電力増幅器10は、高周波信号Rfinの入力端子4が外部の利得可変増幅器12接続されており、高周波信号Rfoutの出力端子5がアンテナ14と接続されている。また、電源電圧Vccが接続される電源端子260が、A/D変換器161を介して制御回路(ベースバンドIC)18と接続されている。さらに、電力増幅器10のコレクタ交流電圧検出部30の力端子6から出力される交流電圧振幅出力Vdetoutが、A/D変換器162を介して制御回路(ベースバンドIC)18に入力されている。
【0057】
電力増幅器10には、搬送波が位相変調された高周波信号Rfinが入力され、増幅された高周波信号RFoutがアンテナ14を駆動して送信を行なう。制御回路18は、電源電圧Vcc及び交流電圧振幅の出力Vdetoutに応じて、利得可変増幅器12の利得を制御する。
【0058】
図9に示すように、電力増幅器10の通常動作時の電源電圧において歪が発生しない条件下においても、電源電圧Vccが低下すると歪が発生する場合がある。その様子を電力増幅器10の入・出力特性で示したのが図10である。電源電圧の低下とともに飽和出力が低下し、より低出力で線形性が失われ歪が発生し得る。
【0059】
本実施例では、この電源電圧低下による歪発生を抑制するために、電源電圧とコレクタ交流電圧振幅を信号処理することで、電源電圧の低下に応じて利得可変増幅器の利得抑制閾値を変化させ、電力増幅器10の入力信号振幅が所定の値以下になるように、利得可変増幅器12の制御を行う。これにより、電源電圧低下時におけるひずみの発生を抑圧する。また、電力増幅器のRF入力信号Rfinの振幅によってバイアス電流が変化するする自己バイアス方式となっているので、RF入力信号の振幅が絞られるとバイアス電流も絞られる。これによって、リニア動作領域の確保が一層促進される。
【0060】
比較例として、図5Aの特性を取得した増幅器10を、上記閾値電圧を3V一定で動作させ、電源電圧を標準の3.5Vから下げた場合、電源電圧を3.2Vまで下げたところでACLRの最悪値が-33dBcを超え、3GPP規格を満たさなくなった。
【0061】
一方、本実施例の信号処理回路を最適化した場合、電源電圧を2.8Vまで低下させても、ACLRの最悪値は-36dBcにとどまり、3GPP規格に対してマージンをとることができた。
<実施例5>
図11〜図12で、本発明の第5実施例になる高周波電力増幅器を説明する。図11に示すように、第5実施例では、図2に示したコレクタ交流電圧検出部(第1の検出部)30に加えて、第2の検出部40を備えている。すなわち、第2の検出部40として、出力整合回路に方向性結合器306を設け、その出力信号を検出回路40で検出して端子403からCploutとして出力するように構成している。第2の検出部40は、電圧検出用ダイオード400、電圧検出用抵抗401、電圧検出用容量素子402からなる。
【0062】
図12は、図11の電力増幅器10を適用したW−CDMA方式の携帯端末における送信機のブロック構成例を示す図である。電力増幅器10は、信号入力端子Rfin4が外部の利得可変増幅器12接続されており、出力端子Rfout5がアンテナ14と接続されている。また、電力増幅器10のコレクタ交流電圧検出部30の力端子6から出力される交流電圧振幅出力Vdetoutが、A/D変換器162を介して制御回路(ベースバンドIC)18と接続されている。さらに、出力整合回路の方向性結合器306の出力信号Cploutの端子403が、第2の検出部40としてA/D変換器163を介して制御回路(ベースバンドIC)18と接続されている。
【0063】
電力増幅器10には、送信したい情報に従って搬送波が位相変調された高周波信号RFinが入力され、増幅された高周波信号RFoutがアンテナ14を駆動して送信を行なう。制御回路18は、電源電圧Vcc及び交流電圧振幅の出力Vdetoutに応じて、利得可変増幅器12の利得を制御する。
【0064】
信号負荷インピーダンス変動に伴う増幅器の特性変動は、図5Aに示すように負荷インピーダンスの位相に対してほぼ対称形になる。図5Aではその対称軸は、1/2位相角の値で30°及び120°である。従って、第2の検出部によって電力増幅器10からアンテナ14に向かう進行波の電力を検出するための方向性結合器306からの出力Cploutを得ると共に、上記進行波とアンテナ14からの反射波との重ねあわせで得られるコレクタ端子における交流電圧を検波した第1の検出部の出力Vdetoutの情報をも得ることによって、進行波振幅と、反射波の振幅ならびに位相について知ることができる。従って、これらの信号を処理することによって、本発明の本来の目的である増幅器の歪を低減することのみでなく、より高度な機能を実現できる。
【0065】
たとえば、図4Aの(3)の状態においては、負荷インピーダンスの変動により最終段トランジスタ200のコレクタ電流が過大になるが、本実施例の回路を用いれば、進行波出力と反射波の反射量とその位相の情報から、コレクタ電流が過大になる状況を特定することが可能であり、その場合に利得可変増幅器12の利得を下げて過大電流が流れることを抑制できる。また、これらの情報によりアンテナ14からの反射量を検出できるので、アンテナからの輻射も知ることが可能である。これによって、歪が発生しない出力範囲ではアンテナ周囲の状況が変化してもアンテナからの輻射量を一定に保つことで、アンテナ周囲の状況変化による輻射出力変動に起因する回線の切断の可能性を低減した制御が可能である。
<実施例6>
図13〜図14に、本発明の第6施例になる高周波増幅器を示す。
図13に回路図を示した高周波増幅器は、第4の実施例に示した電源電圧出力と第5の実施例に示した方向性結合器を用いた進行波出力の検出の双方を行うことのできる高周波増幅器であり、第4の実施例と第5の実施例の特徴を併せ持つ。
【0066】
また、図14は、本実施例の電力増幅器を用いた送信機のブロック構成図である。すなわち、電源電圧の変動に対応して、歪を抑制できる最適な閾値を用いて利得可変増幅器の利得制御を行うことで、端末の出力を信号品質を保ちつつ最大にするとともに、第2の検出部の情報を利用することで、歪が問題にならない低出力時には、アンテナにおいて反射が生じた場合でもアンテナからの輻射出力を一定に保ち、端末の回線接続の安定性を向上することが可能である。
【0067】
以上の各実施例によれば、負荷インピーダンスの変動にかかわらず良好な線形性を保ち、しかも小型化の容易な高周波電力増幅器およびそれを用いた送信器を提供することが可能である。
【0068】
なお、実施例4ないし実施例6に示した高周波増幅器や送信器も、図6に示したW−CDMA方式等の移動体通信端末に適用して同様な効果を得ることができるのはいうまでもない。
【0069】
また、本発明は、GSM方式、TDMA方式の携帯電話網を使ったデータ伝送技術の一つであるEDGE(Enhanced Data GSM Environment )方式にも同様に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】負荷インピーダンスの変動に伴う電力増幅器の入・出力特性を示す模式図である。
【図2】本発明の実施例1の電力増幅器の回路図である。
【図3】本発明の実施例2になる送信機のブロック図である。
【図4A】本発明の実施例1あるいは2における、負荷インピーダンスの変動によるトランジスタの動的負荷曲線を示す模式図である。
【図4B】コレクタ電流・コレクタ電圧特性と、実施例1あるいは2のコレクタ交流電圧検出部により検出されるVdetoutとの関係を示している。
【図5A】本発明の実施例1あるいは2における、負荷インピーダンスの位相変動に伴う電力増幅器の歪とコレクタ端の交流電圧振幅を示す図である。
【図5B】本発明の実施例2の動作特性の説明図である。
【図6A】本発明の実施例3になるW−CDMA方式の移動体通信端末の構成例を示す図である。
【図6B】本発明の実施例3の動作特性の説明図である。
【図7】本発明の実施例4になる電力増幅器の回路図である。
【図8】本発明の実施例4の電力増幅器を用いた送信機のブロック図である。
【図9】本発明の実施例4に関して、電源電圧変動に伴う歪の発生の原理を示す模式図である。
【図10】本発明の実施例4の動作特性の説明図である。
【図11】本発明の実施例5になる電力増幅器の回路図である。
【図12】本発明の実施例5の電力増幅器を用いた送信機のブロック図である。
【図13】本発明の実施例6になる電力増幅器の回路図である。
【図14】本発明の実施例6になる電力増幅器を用いた送信機のブロック図である。
【符号の説明】
【0071】
1…入力整合容量、2…入力整合用インダクタ、3…入力整合容量、10…電力増幅器、30…コレクタ交流電圧検出部、40…出力信号を検出回路、100…初段増幅トランジスタ、200…最終段増幅トランジスタ、202…MMIC、231…初段ベースバイアス電圧供給用RF信号アイソレーションインダクタ、232…終段ベースバイアス電圧供給用RF信号アイソレーションインダクタ、241…初段電源用チョークインダクタ、261…終段電源用チョークインダクタ、242…電源電圧安定化用バイパスコンデンサ、262…電源電圧安定化用バイパスコンデンサ、281…出力整合用キャパシタ、282…出力整合用キャパシタ、283…出力整合用キャパシタ、285…出力整合用伝送線路、286…出力整合用伝送線路、300…電圧検出用ダイオード、301…電圧検出用抵抗、302…電圧検出用容量素子、305…信号処理回路、306…方向性結合器、400…電圧検出用ダイオード、401…電圧検出用抵抗、402…電圧検出用容量素子、RFin…RF信号入力端子、RFout…RF出力端子、Vdetout…検波出力端子、Vbb1…初段ベースバイアス端子、Vbb2…終段ベースバイアス端子、Vcc…電源端子、Cplout…カプラ出力。
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波移動体通信用端末に用いられる高周波電力増幅器およびそれを用いた送信器に関し、特に増幅器特性の負荷インピーダンス依存性を低減した高周波電力増幅器およびそれを用いた送信器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の負荷インピーダンスへの特性の依存性を低減した増幅器の構造として、特許文献1にその一例が開示されている。特許文献1の増幅器は、パワーアンプとアンテナ間の伝送線路上の複数の点で検波し、そのレベル差から定在波の発生、すなわち負荷の不整合を検出してパワーアンプの入力を制限している。
【0003】
また、特許文献2には、最終段トランジスタの出力を電圧検波し、最終段トランジスタのバイアス電圧に帰還する構成が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2000-341143号公報
【特許文献2】米国特許6,720,831号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
高周波移動体通信端末に用いられる電力増幅器においては、アンテナの周囲の状況に依存して、アンテナから電力増幅器に向けて電力の反射が生じ得る。そのような反射が生じた場合、電力増幅器からアンテナを見込んだ負荷インピーダンスが変動したかのように見える。増幅器から見た負荷インピーダンスが変動すれば、増幅器を構成する出力段のトランジスタの負荷インピーダンスも変動し、その結果、増幅器は本来設計された特性と異なる特性を示す。
【0006】
一例として、増幅器の利得、すなわち入出力特性について、負荷インピーダンス変動の影響を模式的に示したのが図1である。図1において、横軸は増幅器への入力FRin、縦軸は電力増幅器の出力FRoutを示している。特性(2)は本来の入出力特性であり、アンテナの周囲の状況により、それよりも高利得であるが飽和出力の低い特性(1)、あるいは利得は低いものの飽和出力の高い特性(3)の場合が生じる。
【0007】
いま、電力増幅器が線形増幅器として動作することを要求されるCDMA方式の場合においては、図1の特性(1)のような特性は本来の線形最大出力よりも低出力で出力が飽和し、そのために、システムの許容値を超えた歪が生じる場合があるという問題があった。
【0008】
この問題に対しては、特許文献1の図5に示されるように、アンテナと電力増幅器の間にアイソレータを挿入してアンテナからの反射電力を増幅器に戻さないことが有効な対策であるが、アイソレータはコストが高く、しかも電力増幅器が小型にならないという問題点がある。
【0009】
また、特許文献1の図1に記載された従来例では、出力整合回路上の異なる3点での電圧振幅を測定し、伝送線路上に生じる定在波の振幅の差を読み取ることで反射波が生じたことを検出し、制御電圧レベルを制限している。しかし、この構成では、波長の1/6程度の長さの伝送線路長と、電圧検出回路が3個必要となり、電力増幅器が小型にならないという問題点がある。
【0010】
一方、特許文献2の図2Aに記載の例においては、センシング用トランジスタの出力端で電圧検出を行うために電圧検出器は1個で済むが、その目的が検出器で過電圧を検出してパワートランジスタの破壊を防ぐことにあり、過電圧を検出した場合に前記パワートランジスタのバイアス電流を減少させるものである。この例は、パワーアンプの線形性に対する考慮がないために、パワーアンプの線形性が劣化して歪が生じる可能性があるという問題点があった。
【0011】
本発明の目的は、上記の問題を解決し、負荷インピーダンスの変動にかかわらず良好な線形性を保ち、しかも小型化の容易な高周波電力増幅器およびそれを用いた送信器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の代表的手段の一例を示せば次の通りである。
すなわち、本発明の高周波電力増幅器は、高周波移動体通信用端末に用いられる高周波電力増幅器であって、利得可変増幅器からの入力信号を増幅する少なくとも1段以上の増幅段と、前記増幅段の出力側に接続された出力整合回路と、前記増幅段を構成するトランジスタと前記出力整合回路の接続点における電圧振幅を検出し前記利得可変増幅器の利得制御情報として出力する第1の検出部とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、負荷インピーダンスの変動にかかわらず良好な線形性を保つ高周波電力増幅器およびそれを用いた送信器を提供することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明に係る実施の形態について、添付図面を参照しながら以下詳細に説明する。
<実施例1>
まず、図2を用いて本発明の高周波電力増幅器の実施例1の構成を説明する。図2は本発明の実施例1になる高周波電力増幅器10の回路図である。
本発明の実施例1によれば、高周波電力増幅器10は、最終増幅段トランジスタの出力端子における交流電圧振幅を検出し、その電圧振幅があらかじめ定めた規定値を超えたときに、電力増幅器の入力信号振幅を抑制する信号を出力するように構成されている。
【0015】
すなわち、図2に示す高周波電力増幅器10において、1及び3は増幅器の入力整合容量であり、2は入力整合用インダクタである。100は初段増幅トランジスタ、200は最終段増幅トランジスタ、30はコレクタ交流電圧検出部(第1の検出部)である。202はMMIC(Microwave Monolithic IC)であり、入力整合容量3、初段増幅用トランジスタ100、最終段増幅用トランジスタ200、段間整合容量251、及びコレクタ交流電圧検出部30を1チップに集積化したものである。
【0016】
電力増幅器10は、RF入力信号Rfinが入力される入力端子4、RF出力信号RFoutが出力される出力端子5、及びコレクタ交流電圧検出部(第1の検出部)30の検波出力Vdetoutが出力される出力端子6を備えている。第1の検出部の検波出力Vdetoutは、入力端子4にRF入力信号を供給する利得可変増幅器の制御用の情報として利用される。
【0017】
端子221及び端子222は、各々、初段増幅用トランジスタ100及び最終段増幅用トランジスタ200のベースバイアスVbb1、Vbb2を与える。231は初段増幅用トランジスタ100のベースバイアス電圧供給用RF信号アイソレーションインダクタであり、232は最終段の増幅用トランジスタ200のベースバイアス電圧供給用RF信号アイソレーションインダクタである。260は電源電圧Vccを与える電源端子であり、241及び261は、各々初段及び終段の増幅用トランジスタの電源用チョークインダクタである。242及び262は、電源電圧安定化用バイパスコンデンサである。
【0018】
コレクタ交流電圧検出部30は、電圧検出用ダイオード300、電圧検出用抵抗301、電圧検出用容量素子302を有している。出力整合用キャパシタ281、282、283と出力整合用伝送線路285、286とによって、増幅器の出力整合回路280が構成されている。
【0019】
本実施例によれば、第1の検出部30により、増幅段の最終段の増幅用トランジスタと出力整合回路の接続点で電圧振幅Vdetoutを検出し、検出されたこの電圧振幅を、入力端子4にRF入力信号を供給する利得可変増幅器の制御情報として出力する。この検波出力Vdetoutを用いることにより、負荷インピーダンスの変動に対応した増幅トランジスタの出力電圧振幅Vdetoutに応じて、利得可変増幅器の利得の制御を行うことができる。これによって、電力増幅器の入力信号振幅すなわち利得可変増幅器の出力を、常時、高周波電力増幅器が出力に歪が生じないリニア動作領域になるように制御可能となり、負荷インピーダンス変動時の歪発生を抑制できる。アンテナと電力増幅器の間にアイソレータを挿入する必要もないので、コストアップにもならない。
【0020】
また、本実施例の高周波電力増幅器を構成する各段のトランジスタは、RF入力信号Rfinが入力されるとそれに伴いバイアス電流も増加する自己バイアス方式となっている。これにより、負荷インピーダンス変動時の歪発時においても、各段のトランジスタ電力増幅器のバイアス電流を絞り込まずに、RF入力信号の振幅を絞る構成としている。換言すると、RF入力信号Rfinの振幅は、RF入力電圧に対応する自己バイアス方式の動作範囲内となっている。そのため、RF入力信号の振幅が絞られると、それに対応してバイアス電流も絞られる。この点からも、負荷インピーダンス変動時の歪発時でも、各段のトランジスタは正規の動作範囲内で動作する。これによって、リニア領域での動作が確保される。
【0021】
また、コレクタ交流電圧検出部30の出力端子6が、最終段の増幅用トランジスタ200のコレクタに接続されているので、コレクタ交流電圧検出部30の出力は電源電圧の情報も加味されており、歪発生の抑制に有効である。
<実施例2>
本発明の実施例2として、第1の実施例になる電力増幅器を用いた送信機の例を、図3〜図5Cを用いて説明する。
【0022】
まず、図3は、図2に示す電力増幅器を適用した送信機のブロック構成例を示す図である。電力増幅器10は、RF入力信号Rfin用の端子4が外部の利得可変増幅器12に接続されており、RF出力信号RFout用の端子5がアンテナ14と接続されている。また、電力増幅器10のコレクタ交流電圧検出部30の交流電圧振幅出力Vdetoutを出力する端子6が、A/D変換器16を介して制御回路18に接続されている。この制御回路18は、送信機内に、より好ましくはそのベースバンド制御回路(ベースバンドIC)内に設けられる。
【0023】
送信したい情報に基づいて搬送波が位相変調された高周波の送信信号Fr0が利得可変増幅器12に入力されここで増幅され、高周波信号RFinとして電力増幅器10に入力される。この信号は電力増幅器10でさらに増幅され、高周波信号RFoutとして出力され、アンテナ14を駆動して送信を行なう。検波出力Vdetoutは、利得可変増幅器12の利得制御用の情報として利用される。すなわち、制御回路18は、コレクタ交流電圧検出部30で検出される交流電圧振幅の出力Vdetoutに応じて、利得可変増幅器12の利得を制御する。
【0024】
本実施例によれば、制御回路18で利得制御用の情報としてのVdetoutを監視し、電力増幅器10の出力に歪が生じる条件となったとき、換言すると、増幅トランジスタの出力電圧振幅があらかじめ定めた閾値を超えたときには、利得可変増幅器12の利得か制限されるような制御信号を生成する。すなわち、増幅トランジスタ200の出力電圧振幅に応じて利得可変増幅器12の利得が制御される。負荷インピーダンスが通常の範囲以下の大きさの時、利得可変増幅器12の利得は所定のパラメーターに基づき設定される。電力増幅器10の出力に歪が生じる条件となったとき、換言すると負荷インピーダンスの増大に伴い増幅トランジスタ200の出力電圧振幅Vdetoutがあらかじめ定めた閾値を超えたときには、通常時の利得可変増幅器12の利得よりも低い利得になるように制限する。これによって、高周波電力増幅器10はその出力に歪が生じない領域で動作する。
【0025】
このようにして、高周波電力増幅器10は、負荷インピーダンスの変動にかかわらず良好な線形性を保つ。これによって、利得可変増幅器12の出力すなわち電力増幅器の入力信号振幅が、高周波電力増幅器が出力に歪が生じない領域になるように制御され、負荷インピーダンス変動時の歪発生を抑制できる。
【0026】
第1の実施例になる電力増幅器あるいは本実施例の送信機の構成によれば、負荷インピーダンス変動時の歪発生を抑制できる。以下この点を詳細に説明する。
【0027】
図4Aは、電力増幅器10の出力段トランジスタのコレクタ電流・コレクタ電圧特性と、RF大信号増幅動作時のコレクタ端子の電圧Vcとコレクタ電流Icの関係、すなわち動的負荷曲線を模式的に示した図である。負荷インピーダンスの実部が、図4Aに示した動的負荷曲線の傾きに相当するので、図1の(1)〜(3)は、図4Aの(1)〜(3)におおよそ相当する。
【0028】
また、図4Bは、コレクタ電流・コレクタ電圧特性(1)〜(3)とこれに対応してコレクタ交流電圧検出部30により検出されるVdetout(1)〜(3)の関係を示している。
【0029】
図4Aの(2)、(3)では歪は生じにくいが、(1)においては、低電圧側で動的負荷曲線が楕円形を描かずにつぶれている。このように動的負荷曲線がつぶれるので、図1に(1)として示したように、本来の入出力特性(2)よりも低出力で出力飽和が生じるのである。
【0030】
今、図4Aの(1)の動的負荷曲線においては、低電圧側で動的負荷曲線がつぶれるとともに負荷曲線がより高電圧側まで延びている。一方、図4Aの(3)の場合には電圧が低電圧にとどまっている。そこで、歪の発生とコレクタ端でのRF電圧に相関があると考えられる。
【0031】
電力増幅器10の出力整合回路280は、通常50オームのインピーダンスに整合を取る。この電力増幅器10に、50オームと異なる負荷が接続されたときに負荷からの反射が生じるために、入出力特性が図1の(1)や(3)に示すようになり、出力に歪が生じる場合があるのは先に述べたとおりである。
【0032】
今、W−CDMA方式の携帯端末では、アンテナからの反射は電力増幅器10とアンテナ14の間に挿入されている部品の損失により減衰し、電力増幅器の出力端子5で出力Rfoutの不整合は電圧定在波比(VSWR)で4:1程度以下になる。
【0033】
そこで、図2に示した増幅器10のトランジスタ200のコレクタ端での交流電圧振幅VdetoutとW−CDMA信号の歪を表す指標である隣接チャネル漏洩電力(ACLR)を、VSWR=4:1の場合について回路シミュレーションによって求めたのが図5Aである。このシミュレーションにおいて、VSWRを4:1とするために、負荷インピーダンスは200オームとし、負荷と電力増幅器10の間に伝送線路を挿入してアンテナ14からの反射の位相を表した。伝送線路の位相回転を0°〜180°まで変化させることで、往復0〜360°の位相回転となり、すべての場合が尽くされる。シミュレーションした電力増幅器が50オーム負荷のときの特性は、電源電圧Vcc=3.5V、入力電力1dBmで出力電力27.5dBm、そのときのACLRは−42dBcであった。
【0034】
図5Aにおいて、上のトレースは交流電圧振幅Vdetoutであり、下のトレースが隣接チャネル漏洩電力ACLRである。図5Aから、交流電圧振幅の出力Vdetoutと隣接チャネル漏洩電力ACLRの間に良い相関があることが明らかである。図5A中に矢印で示した、Vdetout<3Vの領域では、ACLRは最悪でも−34dBcで、W−CDMA方式の規格である3GPP規格のACLR最悪値−33dBcを下回っており、Vdetout=3Vを閾値電圧として図3の制御部18がVdetout<3Vとなるように利得可変増幅器12の制御を行うことによって、ACLR規格を満たす動作が実現されることがわかる。
【0035】
本実施例では、第1の検出部30で得た情報により、増幅トランジスタの出力電圧振幅に応じて利得可変増幅器12の利得の制御を行うので、負荷インピーダンスが大きいときは、図5Bに示すように、利得可変増幅器12の出力すなわち電力増幅器の入力信号振幅はP1よりも小さい値P2に抑制される。そのため、電力増幅器は、P2より左側の出力歪の生じない領域で動作する。
【0036】
実際には、50オーム整合の通常動作時の規定出力下で利得制御増幅器12への出力抑制信号が発生しない範囲で、閾値電圧を設定することで、負荷インピーダンス変動時に、より低歪な状態での動作が可能となる。このことは、後で述べる他の実施例についても、同様である。
【0037】
また、利得可変増幅器12が多段に構成されている場合には、負荷インピーダンスの大きいときに、各段の利得をそれぞれ制限することにより、全体としての利得が所定の値になるようにすればよい。
【0038】
図2に示す電力増幅器10を実際に作成し、図3に示した送信系を構成して実験を行い、上記閾値の最適化を行ったところ、VSWR=4:1までの負荷変動条件下においてACLR<−36dBcを得た。
【0039】
また、本実施例によれば、線形性を確保するための回路構成が簡単であり、この回路構成の追加が高周波電力増幅器、あるいはこれを用いた送信機のサイズやコストへ与える影響は小さい。すなわち、本実施例の構成で、通常の電力増幅器10に追加する回路は、図2に符合30で示した電圧検出部のみである。このうち、電圧検出用ダイオード300はトランジスタのダイオード接続で実現可能である。また、電圧検出用抵抗301、容量302は、いずれも通常のMMIC工程で作成可能である。W−CDMA向けの電力増幅器に上記電圧検出回路30を組み込んだところ、MMICチップ面積の増加は5%以下に収まった。
【0040】
以上述べたように、本実施例によれば、図4Bに示すような最終増幅段トランジスタ200の出力端子における交流電圧振幅Vdetoutを検出し、歪が生じる条件となったとき、すなわち、増幅トランジスタの出力電圧振幅があらかじめ定めた閾値を超えたときに、電力増幅器の入力信号振幅を抑制する信号を出力するので、電力増幅器の動作領域が制限される。これにより、負荷インピーダンスの変動にかかわらず良好な線形性を保つことができる。しかも、通常の電力増幅器10と比較してMMICチップ面積の増加部分はごく僅かであり、小型、低コストの高周波電力増幅器さらにはそれを用いた移動体通信端末を提供することが可能である。
<実施例3>
本発明の実施例3を図6A、図6Bで説明する。この実施例は、図2あるいは図3に示す高周波電力増幅器を、W−CDMA方式の移動体通信端末に適用した例である。
【0041】
図6Aの移動体通信端末は、W−CDMA信号の変調や復調を行なうことができる変復調回路を含み半導体集積回路化された高周波信号処理回路を有する。すなわち、電子デバイス600と、高周波電力増幅器(パワーモジュール)700と、フロントエンド・モジュール800で構成されている。
【0042】
図3のベースバンド制御回路(ベースバンドIC)に相当する電子デバイス600は、W−CDMA信号の変調や復調を行なうことができる変復調回路や送信データ(ベースバンド信号)に基づいてI,Q信号を生成したり受信信号から抽出されたI,Q信号を処理するベースバンド回路610と、送信信号から高調波成分を除去するバンドパスフィルタ(BPF1)650、受信信号から不要波を除去するバンドパスフィルタ(BPF2)651などが1つのパッケージに実装されている。
【0043】
この実施例の電子デバイス600は、高周波信号を処理する端末制御部620を含むベースバンド回路610、受信部630及び送信部640、変調後の送信信号を増幅する送信可変利得増幅器(GCA)611および661、増幅された送信信号をアップンコンバートするミキサ(Tx−MIX)652、受信信号を増幅するロウノイズアンプ(LNA)612、増幅された受信信号をダウンコンバートするミキサ(Rx−MIX)653などが1つの半導体チップ上に形成されてなる。
【0044】
さらに、電子デバイス600には、制御電流を出力する際に参照されるテーブルデータを格納する不揮発性メモリ613およびこのメモリから読み出されベースバンド回路610の端末制御部620で処理されたデータをDA変換してアナログ電流として出力するDA変換回路614,615が設けられている。
【0045】
高周波電力増幅器(パワーモジュール)700は、高周波信号を増幅する高周波電力増幅回路710、整合回路714、A/D変換器680、バイアス制御回路720、コレクタ交流電圧検出部(第1の検出部)730などが1つのセラミック基板上に実装されたものである。
【0046】
無線通信システムはまた、フロントエンド・モジュール800に設けられた送受信の切替えスイッチ(DUPLEXER)810や、パワーモジュール700から出力される送信信号の出力レベルを検出するカプラなどからなる出力検出回路(PDT)740、送信信号に含まれる高調波などのノイズを除去するフィルタ(LPF)830、検出回路740の出力検出信号とベースバンド回路610からのパワー制御信号PCSとに基づいて電子デバイス600内の送信可変利得増幅器(GCA)611ならびに661に対する出力制御信号Vapcを生成する自動パワー制御回路(APC回路)670などを備えている。
【0047】
この実施例の無線通信システムでは、パワーモジュール700内のバイアス回路720に対する制御電流およびモード制御信号は、電子デバイス600のベースバンド回路610から供給される。また、バイアス回路720内の電圧−電流変換回路およびオフセット電流付加回路に入力される基準電圧も、ベースバンド回路610から供給される。
【0048】
この実施例では、ベースバンド回路610から供給される制御電流Ic1、Ic2等によってパワーアンプ710の初段増幅用トランジスタ及び最終段増幅用トランジスタの利得が一定に保持された状態で、出力レベルを制御する自動パワー制御回路670から出力される出力制御信号が電子デバイス600内の送信可変利得増幅器611ならびに661に供給され、送信可変利得増幅器611および661のゲインが出力制御信号Vapcによって制御される。これにより、パワーアンプ710の出力電力が変化するように制御される。なお、パワーアンプ710にバイアスを与えるバイアス回路720に電源補償機能を持たせることで、電池の充電や消耗で電源電圧が変化してもパワーアンプ710の利得をほぼ一定に保つことができ、受信帯ノイズ特性が規格を満たすことができる。また、基地局から供給される出力要求レベルに応じて自動パワー制御回路670に対して供給されるパワー制御信号PCSを生成する基になるテーブルデータも、不揮発性メモリ613に格納される。
【0049】
この実施例において、基地局からの下り受信信号は移動体通信端末のアンテナ14で受信され、送受信分離フィルタ(DUPLEXER)810を通ってロウノイズアンプ(LNA)612に入力されたのち、バンドパスフィルタ651を経てミキサー653でダウンコンバートされ、受信可変利得増幅器で所望のレベルに調整されてから、受信ベースバンド信号に変換される。この受信ベースバンド信号は受信部630で抽出される。また、受信ベースバンド信号は、分岐して利得制御部621に送られ、ここで受信ベースバンド信号が所望の一定レベルになるような受信利得制御信号を生成して、受信可変利得増幅器を制御する。
【0050】
送信部640で生成された送信ベースバンド信号は、直交変調器等を通って送信中間周波数に変換され、可変利得増幅器611で送信レベルを調整された後、ミキサー652、ベースバンドフィルタ650等を通って、電力増幅器710で所望の送信出力に増幅された後、方向性結合器、送受信分離フィルタ(DUPLEXER)810を通って、アンテナ14から上り送信信号として放射される。また、可変利得増幅器611ならびに661の利得を制御する送信利得制御信号Va1ならびにVa2は、リミッタ622を介して送信可変利得増幅器611および661へ供給され、送信可変利得増幅器611および661の利得が過大とならないように制御される。リミット値は、端末制御部620により設定される。
【0051】
送信可変利得増幅器611および661における送信レベルの調整として、基地局の上り信号回線の品質を保つために、移動体通信端末が基地局から離れた位置にあるとき移動体通信端末が大きい電力で送信し、基地局から近い場合は送信電力を小さくする。基地局は、上り回線の信号の品質を監視し、劣化するようであれば、下り回線信号に移動体通信端末の送信電力を上げさせるよう指示し、上り回線の信号の品質が所定の品質以上であれば、移動体通信端末の送信電力を下げさせるように指示する。移動体通信端末は、受信部630ではこれらの情報を抽出し、端末制御部620の利得制御部621に送る。また、コレクタ交流電圧検出部730で検出された利得可変増幅器611および661の利得制御情報も利得制御部621に送られる。利得制御部621は、これらの情報を用いて、送信利得制御信号Vaを生成する。
【0052】
送信利得制御信号Va1ならびにVa2は、送信可変利得増幅器611および661の利得を制御する。送信利得制御信号Va1ならびにVa2は、リミッタ622を介して送信可変利得増幅器611および661へ供給され、送信可変利得増幅器611および661の利得が過大とならないように制御される。これは、基地局から要求される上り送信電力が大きすぎる場合、電力増幅器710などで送信信号が歪み、それにより近隣の周波数へのスペクトラムの広がりが生じ、その周波数への干渉妨害となるのを避けるためである。
【0053】
そのため、リミッタ622は、図6Bに示すような入出力特性を有する。例えば、チャネル周波数情報等の基本情報に基いて予め定めた値以上のリミッタ入力に対しては、リミット値(=limit−1)に制限するリミッタ動作をする。このリミット値が移動体通信端末の最大送信電力を決定している。
【0054】
本実施例では、上記基本情報に加え、利得可変増幅器611および661の利得制御情報も端末制御部620の利得制御部621に送られる。これにより、上記リミット値(=limit−1)以内であっても、コレクタ交流電圧検出部730により検出されるVdetoutが所定値を超えた場合は、リミット値をより小さい値に変更し(=limit−2)、最大送信電力を抑制している。
【0055】
本実施例によれば、負荷インピーダンスの変動にかかわらず良好な線形性を保ち、しかも小型化の容易なW−CDMA方式の移動体通信端末を提供することが可能である。
<実施例4>
次に、図7〜図10を用いて本発明の実施例4の構成を説明する。図7の電力増幅器10は、図2の電力増幅器10において、コレクタ交流電圧振幅検出回路(第1の検出部)30の出力と、電源電圧Vccとを信号処理回路(Signal Processor)305に入力し、この信号処理回路305による信号処理結果を交流電圧振幅の出力Vdetoutとして出力するように変更したものである。
【0056】
図8は、図7の電力増幅器10を適用したW−CDMA方式の携帯端末における送信機のブロック構成例を示す図である。電力増幅器10は、高周波信号Rfinの入力端子4が外部の利得可変増幅器12接続されており、高周波信号Rfoutの出力端子5がアンテナ14と接続されている。また、電源電圧Vccが接続される電源端子260が、A/D変換器161を介して制御回路(ベースバンドIC)18と接続されている。さらに、電力増幅器10のコレクタ交流電圧検出部30の力端子6から出力される交流電圧振幅出力Vdetoutが、A/D変換器162を介して制御回路(ベースバンドIC)18に入力されている。
【0057】
電力増幅器10には、搬送波が位相変調された高周波信号Rfinが入力され、増幅された高周波信号RFoutがアンテナ14を駆動して送信を行なう。制御回路18は、電源電圧Vcc及び交流電圧振幅の出力Vdetoutに応じて、利得可変増幅器12の利得を制御する。
【0058】
図9に示すように、電力増幅器10の通常動作時の電源電圧において歪が発生しない条件下においても、電源電圧Vccが低下すると歪が発生する場合がある。その様子を電力増幅器10の入・出力特性で示したのが図10である。電源電圧の低下とともに飽和出力が低下し、より低出力で線形性が失われ歪が発生し得る。
【0059】
本実施例では、この電源電圧低下による歪発生を抑制するために、電源電圧とコレクタ交流電圧振幅を信号処理することで、電源電圧の低下に応じて利得可変増幅器の利得抑制閾値を変化させ、電力増幅器10の入力信号振幅が所定の値以下になるように、利得可変増幅器12の制御を行う。これにより、電源電圧低下時におけるひずみの発生を抑圧する。また、電力増幅器のRF入力信号Rfinの振幅によってバイアス電流が変化するする自己バイアス方式となっているので、RF入力信号の振幅が絞られるとバイアス電流も絞られる。これによって、リニア動作領域の確保が一層促進される。
【0060】
比較例として、図5Aの特性を取得した増幅器10を、上記閾値電圧を3V一定で動作させ、電源電圧を標準の3.5Vから下げた場合、電源電圧を3.2Vまで下げたところでACLRの最悪値が-33dBcを超え、3GPP規格を満たさなくなった。
【0061】
一方、本実施例の信号処理回路を最適化した場合、電源電圧を2.8Vまで低下させても、ACLRの最悪値は-36dBcにとどまり、3GPP規格に対してマージンをとることができた。
<実施例5>
図11〜図12で、本発明の第5実施例になる高周波電力増幅器を説明する。図11に示すように、第5実施例では、図2に示したコレクタ交流電圧検出部(第1の検出部)30に加えて、第2の検出部40を備えている。すなわち、第2の検出部40として、出力整合回路に方向性結合器306を設け、その出力信号を検出回路40で検出して端子403からCploutとして出力するように構成している。第2の検出部40は、電圧検出用ダイオード400、電圧検出用抵抗401、電圧検出用容量素子402からなる。
【0062】
図12は、図11の電力増幅器10を適用したW−CDMA方式の携帯端末における送信機のブロック構成例を示す図である。電力増幅器10は、信号入力端子Rfin4が外部の利得可変増幅器12接続されており、出力端子Rfout5がアンテナ14と接続されている。また、電力増幅器10のコレクタ交流電圧検出部30の力端子6から出力される交流電圧振幅出力Vdetoutが、A/D変換器162を介して制御回路(ベースバンドIC)18と接続されている。さらに、出力整合回路の方向性結合器306の出力信号Cploutの端子403が、第2の検出部40としてA/D変換器163を介して制御回路(ベースバンドIC)18と接続されている。
【0063】
電力増幅器10には、送信したい情報に従って搬送波が位相変調された高周波信号RFinが入力され、増幅された高周波信号RFoutがアンテナ14を駆動して送信を行なう。制御回路18は、電源電圧Vcc及び交流電圧振幅の出力Vdetoutに応じて、利得可変増幅器12の利得を制御する。
【0064】
信号負荷インピーダンス変動に伴う増幅器の特性変動は、図5Aに示すように負荷インピーダンスの位相に対してほぼ対称形になる。図5Aではその対称軸は、1/2位相角の値で30°及び120°である。従って、第2の検出部によって電力増幅器10からアンテナ14に向かう進行波の電力を検出するための方向性結合器306からの出力Cploutを得ると共に、上記進行波とアンテナ14からの反射波との重ねあわせで得られるコレクタ端子における交流電圧を検波した第1の検出部の出力Vdetoutの情報をも得ることによって、進行波振幅と、反射波の振幅ならびに位相について知ることができる。従って、これらの信号を処理することによって、本発明の本来の目的である増幅器の歪を低減することのみでなく、より高度な機能を実現できる。
【0065】
たとえば、図4Aの(3)の状態においては、負荷インピーダンスの変動により最終段トランジスタ200のコレクタ電流が過大になるが、本実施例の回路を用いれば、進行波出力と反射波の反射量とその位相の情報から、コレクタ電流が過大になる状況を特定することが可能であり、その場合に利得可変増幅器12の利得を下げて過大電流が流れることを抑制できる。また、これらの情報によりアンテナ14からの反射量を検出できるので、アンテナからの輻射も知ることが可能である。これによって、歪が発生しない出力範囲ではアンテナ周囲の状況が変化してもアンテナからの輻射量を一定に保つことで、アンテナ周囲の状況変化による輻射出力変動に起因する回線の切断の可能性を低減した制御が可能である。
<実施例6>
図13〜図14に、本発明の第6施例になる高周波増幅器を示す。
図13に回路図を示した高周波増幅器は、第4の実施例に示した電源電圧出力と第5の実施例に示した方向性結合器を用いた進行波出力の検出の双方を行うことのできる高周波増幅器であり、第4の実施例と第5の実施例の特徴を併せ持つ。
【0066】
また、図14は、本実施例の電力増幅器を用いた送信機のブロック構成図である。すなわち、電源電圧の変動に対応して、歪を抑制できる最適な閾値を用いて利得可変増幅器の利得制御を行うことで、端末の出力を信号品質を保ちつつ最大にするとともに、第2の検出部の情報を利用することで、歪が問題にならない低出力時には、アンテナにおいて反射が生じた場合でもアンテナからの輻射出力を一定に保ち、端末の回線接続の安定性を向上することが可能である。
【0067】
以上の各実施例によれば、負荷インピーダンスの変動にかかわらず良好な線形性を保ち、しかも小型化の容易な高周波電力増幅器およびそれを用いた送信器を提供することが可能である。
【0068】
なお、実施例4ないし実施例6に示した高周波増幅器や送信器も、図6に示したW−CDMA方式等の移動体通信端末に適用して同様な効果を得ることができるのはいうまでもない。
【0069】
また、本発明は、GSM方式、TDMA方式の携帯電話網を使ったデータ伝送技術の一つであるEDGE(Enhanced Data GSM Environment )方式にも同様に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】負荷インピーダンスの変動に伴う電力増幅器の入・出力特性を示す模式図である。
【図2】本発明の実施例1の電力増幅器の回路図である。
【図3】本発明の実施例2になる送信機のブロック図である。
【図4A】本発明の実施例1あるいは2における、負荷インピーダンスの変動によるトランジスタの動的負荷曲線を示す模式図である。
【図4B】コレクタ電流・コレクタ電圧特性と、実施例1あるいは2のコレクタ交流電圧検出部により検出されるVdetoutとの関係を示している。
【図5A】本発明の実施例1あるいは2における、負荷インピーダンスの位相変動に伴う電力増幅器の歪とコレクタ端の交流電圧振幅を示す図である。
【図5B】本発明の実施例2の動作特性の説明図である。
【図6A】本発明の実施例3になるW−CDMA方式の移動体通信端末の構成例を示す図である。
【図6B】本発明の実施例3の動作特性の説明図である。
【図7】本発明の実施例4になる電力増幅器の回路図である。
【図8】本発明の実施例4の電力増幅器を用いた送信機のブロック図である。
【図9】本発明の実施例4に関して、電源電圧変動に伴う歪の発生の原理を示す模式図である。
【図10】本発明の実施例4の動作特性の説明図である。
【図11】本発明の実施例5になる電力増幅器の回路図である。
【図12】本発明の実施例5の電力増幅器を用いた送信機のブロック図である。
【図13】本発明の実施例6になる電力増幅器の回路図である。
【図14】本発明の実施例6になる電力増幅器を用いた送信機のブロック図である。
【符号の説明】
【0071】
1…入力整合容量、2…入力整合用インダクタ、3…入力整合容量、10…電力増幅器、30…コレクタ交流電圧検出部、40…出力信号を検出回路、100…初段増幅トランジスタ、200…最終段増幅トランジスタ、202…MMIC、231…初段ベースバイアス電圧供給用RF信号アイソレーションインダクタ、232…終段ベースバイアス電圧供給用RF信号アイソレーションインダクタ、241…初段電源用チョークインダクタ、261…終段電源用チョークインダクタ、242…電源電圧安定化用バイパスコンデンサ、262…電源電圧安定化用バイパスコンデンサ、281…出力整合用キャパシタ、282…出力整合用キャパシタ、283…出力整合用キャパシタ、285…出力整合用伝送線路、286…出力整合用伝送線路、300…電圧検出用ダイオード、301…電圧検出用抵抗、302…電圧検出用容量素子、305…信号処理回路、306…方向性結合器、400…電圧検出用ダイオード、401…電圧検出用抵抗、402…電圧検出用容量素子、RFin…RF信号入力端子、RFout…RF出力端子、Vdetout…検波出力端子、Vbb1…初段ベースバイアス端子、Vbb2…終段ベースバイアス端子、Vcc…電源端子、Cplout…カプラ出力。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波移動体通信用端末に用いられる高周波電力増幅器であって、
利得可変増幅器からの入力信号を増幅する少なくとも1段以上の増幅段と、
前記増幅段の出力側に接続された出力整合回路と、
前記増幅段を構成するトランジスタと前記出力整合回路の接続点における電圧振幅を検出し前記利得可変増幅器の利得制御情報として出力する第1の検出部とを具備することを特徴とする高周波電力増幅器。
【請求項2】
請求項1において、前記電力増幅器の最終段の電源電圧を検出し前記利得可変増幅器の利得制御情報として出力する電源電圧検出部を有することを特徴とする高周波電力増幅器。
【請求項3】
請求項1において、前記出力整合回路内、もしくは前記出力整合回路と出力端子の間に方向性結合器を有し、該方向性結合器の出力信号を前記利得可変増幅器の利得制御情報として出力する第2の検出部を有することを特徴とする高周波電力増幅器。
【請求項4】
請求項2において、前記出力整合回路内、もしくは前記出力整合回路と出力端子の間に方向性結合器を有し、該方向性結合器の出力信号を前記利得可変増幅器の利得制御情報として出力する第2の検出部を有することを特徴とする高周波電力増幅器。
【請求項5】
請求項1において、前記第1の検出部は、前記増幅段を構成するトランジスタのコレクタに接続された電圧検出用ダイオードと、該電圧検出用ダイオードに接続された電圧検出用抵抗及び容量を含むことを特徴とする高周波電力増幅器。
【請求項6】
請求項5において、前記増幅段を構成するトランジスタと、前記増幅段を構成するトランジスタに接続された入力整合容量及び段間整合容量と、前記第1の検出部が1チップのMMIC(Microwave Monolithic IC)として構成されていることを特徴とする高周波電力増幅器。
【請求項7】
請求項1において、前記増幅段を構成するトランジスタは、前記電力増幅器に対するバイアス電流がRF入力電圧に応じて変化するする自己バイアス方式となっていることを特徴とする高周波電力増幅器。
【請求項8】
高周波移動体通信用端末に用いられる送信器であって、
高周波電力増幅器と制御部とを具備してなり、
前記高周波電力増幅器は、利得可変増幅器からの入力信号を増幅する少なくとも1段以上の増幅段と、前記増幅段の出力側に接続された出力整合回路と、前記増幅段の最終段の増幅用トランジスタと前記出力整合回路の接続点で電圧振幅を検出して出力する第1の検出部とを具備してなり、
前記制御部は、前記電圧振幅の信号を用いて前記利得可変増幅器の利得を制御する機能を有することを特徴とする送信器。
【請求項9】
請求項8において、前記電力増幅器の最終段の電源電圧を検出する電源電圧検出部を備えてなり、
前記制御部は、前記第1の検出部の信号ならびに前記電源電圧信号を用いて前記利得可変増幅器の利得を制御する機能を有することを特徴とする送信器。
【請求項10】
請求項9において、前記出力整合回路内、もしくは前記出力整合回路と出力端子の間に方向性結合器を有し、該方向性結合器の出力信号を前記利得可変増幅器の利得制御情報として出力する第2の検出部を有してなり、
前記制御部は、前記第1の検出部の信号ならびに前記第2の検出部から得た信号を用いて前記利得可変増幅器の利得を制御する機能を有することを特徴とする送信器。
【請求項11】
請求項9において、前記出力整合回路内、もしくは前記出力整合回路と出力端子の間に方向性結合器を有し、該方向性結合器の出力信号を前記利得可変増幅器の利得制御情報として出力する第2の検出部を有してなり、
前記制御部は、前記第1の検出部の信号、前記電源電圧信号ならびに前記第2の検出部から得た信号を用いて前記利得可変増幅器の利得を制御する機能を有することを特徴とする送信器。
【請求項12】
請求項8において、前記電力増幅器の出力電圧振幅があらかじめ定めた閾値を超えたときには、前記電力増幅器の入力信号振幅を抑制する信号を前記利得可変増幅器に入力することを特徴とする送信器。
【請求項13】
請求項8において、前記制御部がベースバンド制御回路内に設けられていることを特徴とする送信器。
【請求項14】
移動体通信端末の最大送信電力を決定するリミッタを有するベースバンド回路と、送信可変利得増幅器と、送信信号を増幅する高周波電力増幅器と、フロントエンド・モジュールと、アンテナとを備えた移動体通信端末であって、
前記ベースバンド回路は、端末制御部で生成された送信利得制御信号を前記リミッタを介して前記送信可変利得増幅器へ供給する機能を備えてなり、
前記高周波電力増幅器は、高周波信号を増幅する高周波電力増幅回路と、整合回路と、バイアス制御回路と、高周波電力増幅回路を構成するトランジスタのコレクタ電圧を検出し利得可変増幅器の利得制御情報として出力する第1の検出部を備えてなり、
前記フロントエンド・モジュールは、送受信の切替えスイッチ、前記高周波電力増幅器から出力される送信信号の出力レベルを検出する出力検出回路及び前記利得可変増幅器に対する出力制御信号を生成する自動パワー制御回路を備えてなり、
前記ベースバンド回路で前記バイアス制御回路に対する制御電流を生成するとともに、当該移動体通信端末と基地局との位置関係に起因する信号の品質を監視し前記送信可変利得増幅器における送信レベルの調整を行うための送信レベル調整情報を生成する機能を備えてなり、
前記送信レベル調整情報及び前記利得制御情報に基き、前記リミッタのリミット値を変更する機能を備えてなる、ことを特徴とする移動体通信端末。
【請求項15】
請求項14において、W−CDMA信号の変調や復調を行なう変復調回路を含むことを特徴とする移動体通信端末。
【請求項16】
請求項14において、EDGE方式による変調や復調を行なう変復調回路を含むことを特徴とする移動体通信端末。
【請求項17】
請求項14において、前記送信レベル調整情報及び前記利得制御情報、前記高周波電力増幅器の電源電圧情報に基き、前記リミッタのリミット値を変更する機能を備えてなる、ことを特徴とする移動体通信端末。
【請求項18】
請求項14において、前記高周波電力増幅器は、
利得可変増幅器からの入力信号を増幅する少なくとも1段以上の増幅段と、
前記増幅段の出力側に接続された出力整合回路と、
前記増幅段を構成するトランジスタと前記出力整合回路の接続点における電圧振幅を検出し前記利得可変増幅器の利得制御情報として出力する第1の検出部とを具備することを特徴とする移動体通信端末。
【請求項19】
請求項14において、
前記増幅段の出力側に接続された出力整合回路内、もしくは前記出力整合回路と出力端子の間に方向性結合器と、該方向性結合器の出力信号を前記利得可変増幅器の利得制御情報として出力する第2の検出部とを有してなり、
前記送信レベル調整情報及び前記第1の検出部から得た前記利得制御情報、前記高周波電力増幅器の電源電圧情報及び前記第1の検出部から得た利得制御情報を用いて、前記リミッタのリミット値を変更する機能を備えてなる、ことを特徴とする移動体通信端末。
【請求項20】
請求項19において、前記方向性結合と前記アンテナとが間にアイソレータを介さずに接続されている、ことを特徴とする移動体通信端末。
【請求項1】
高周波移動体通信用端末に用いられる高周波電力増幅器であって、
利得可変増幅器からの入力信号を増幅する少なくとも1段以上の増幅段と、
前記増幅段の出力側に接続された出力整合回路と、
前記増幅段を構成するトランジスタと前記出力整合回路の接続点における電圧振幅を検出し前記利得可変増幅器の利得制御情報として出力する第1の検出部とを具備することを特徴とする高周波電力増幅器。
【請求項2】
請求項1において、前記電力増幅器の最終段の電源電圧を検出し前記利得可変増幅器の利得制御情報として出力する電源電圧検出部を有することを特徴とする高周波電力増幅器。
【請求項3】
請求項1において、前記出力整合回路内、もしくは前記出力整合回路と出力端子の間に方向性結合器を有し、該方向性結合器の出力信号を前記利得可変増幅器の利得制御情報として出力する第2の検出部を有することを特徴とする高周波電力増幅器。
【請求項4】
請求項2において、前記出力整合回路内、もしくは前記出力整合回路と出力端子の間に方向性結合器を有し、該方向性結合器の出力信号を前記利得可変増幅器の利得制御情報として出力する第2の検出部を有することを特徴とする高周波電力増幅器。
【請求項5】
請求項1において、前記第1の検出部は、前記増幅段を構成するトランジスタのコレクタに接続された電圧検出用ダイオードと、該電圧検出用ダイオードに接続された電圧検出用抵抗及び容量を含むことを特徴とする高周波電力増幅器。
【請求項6】
請求項5において、前記増幅段を構成するトランジスタと、前記増幅段を構成するトランジスタに接続された入力整合容量及び段間整合容量と、前記第1の検出部が1チップのMMIC(Microwave Monolithic IC)として構成されていることを特徴とする高周波電力増幅器。
【請求項7】
請求項1において、前記増幅段を構成するトランジスタは、前記電力増幅器に対するバイアス電流がRF入力電圧に応じて変化するする自己バイアス方式となっていることを特徴とする高周波電力増幅器。
【請求項8】
高周波移動体通信用端末に用いられる送信器であって、
高周波電力増幅器と制御部とを具備してなり、
前記高周波電力増幅器は、利得可変増幅器からの入力信号を増幅する少なくとも1段以上の増幅段と、前記増幅段の出力側に接続された出力整合回路と、前記増幅段の最終段の増幅用トランジスタと前記出力整合回路の接続点で電圧振幅を検出して出力する第1の検出部とを具備してなり、
前記制御部は、前記電圧振幅の信号を用いて前記利得可変増幅器の利得を制御する機能を有することを特徴とする送信器。
【請求項9】
請求項8において、前記電力増幅器の最終段の電源電圧を検出する電源電圧検出部を備えてなり、
前記制御部は、前記第1の検出部の信号ならびに前記電源電圧信号を用いて前記利得可変増幅器の利得を制御する機能を有することを特徴とする送信器。
【請求項10】
請求項9において、前記出力整合回路内、もしくは前記出力整合回路と出力端子の間に方向性結合器を有し、該方向性結合器の出力信号を前記利得可変増幅器の利得制御情報として出力する第2の検出部を有してなり、
前記制御部は、前記第1の検出部の信号ならびに前記第2の検出部から得た信号を用いて前記利得可変増幅器の利得を制御する機能を有することを特徴とする送信器。
【請求項11】
請求項9において、前記出力整合回路内、もしくは前記出力整合回路と出力端子の間に方向性結合器を有し、該方向性結合器の出力信号を前記利得可変増幅器の利得制御情報として出力する第2の検出部を有してなり、
前記制御部は、前記第1の検出部の信号、前記電源電圧信号ならびに前記第2の検出部から得た信号を用いて前記利得可変増幅器の利得を制御する機能を有することを特徴とする送信器。
【請求項12】
請求項8において、前記電力増幅器の出力電圧振幅があらかじめ定めた閾値を超えたときには、前記電力増幅器の入力信号振幅を抑制する信号を前記利得可変増幅器に入力することを特徴とする送信器。
【請求項13】
請求項8において、前記制御部がベースバンド制御回路内に設けられていることを特徴とする送信器。
【請求項14】
移動体通信端末の最大送信電力を決定するリミッタを有するベースバンド回路と、送信可変利得増幅器と、送信信号を増幅する高周波電力増幅器と、フロントエンド・モジュールと、アンテナとを備えた移動体通信端末であって、
前記ベースバンド回路は、端末制御部で生成された送信利得制御信号を前記リミッタを介して前記送信可変利得増幅器へ供給する機能を備えてなり、
前記高周波電力増幅器は、高周波信号を増幅する高周波電力増幅回路と、整合回路と、バイアス制御回路と、高周波電力増幅回路を構成するトランジスタのコレクタ電圧を検出し利得可変増幅器の利得制御情報として出力する第1の検出部を備えてなり、
前記フロントエンド・モジュールは、送受信の切替えスイッチ、前記高周波電力増幅器から出力される送信信号の出力レベルを検出する出力検出回路及び前記利得可変増幅器に対する出力制御信号を生成する自動パワー制御回路を備えてなり、
前記ベースバンド回路で前記バイアス制御回路に対する制御電流を生成するとともに、当該移動体通信端末と基地局との位置関係に起因する信号の品質を監視し前記送信可変利得増幅器における送信レベルの調整を行うための送信レベル調整情報を生成する機能を備えてなり、
前記送信レベル調整情報及び前記利得制御情報に基き、前記リミッタのリミット値を変更する機能を備えてなる、ことを特徴とする移動体通信端末。
【請求項15】
請求項14において、W−CDMA信号の変調や復調を行なう変復調回路を含むことを特徴とする移動体通信端末。
【請求項16】
請求項14において、EDGE方式による変調や復調を行なう変復調回路を含むことを特徴とする移動体通信端末。
【請求項17】
請求項14において、前記送信レベル調整情報及び前記利得制御情報、前記高周波電力増幅器の電源電圧情報に基き、前記リミッタのリミット値を変更する機能を備えてなる、ことを特徴とする移動体通信端末。
【請求項18】
請求項14において、前記高周波電力増幅器は、
利得可変増幅器からの入力信号を増幅する少なくとも1段以上の増幅段と、
前記増幅段の出力側に接続された出力整合回路と、
前記増幅段を構成するトランジスタと前記出力整合回路の接続点における電圧振幅を検出し前記利得可変増幅器の利得制御情報として出力する第1の検出部とを具備することを特徴とする移動体通信端末。
【請求項19】
請求項14において、
前記増幅段の出力側に接続された出力整合回路内、もしくは前記出力整合回路と出力端子の間に方向性結合器と、該方向性結合器の出力信号を前記利得可変増幅器の利得制御情報として出力する第2の検出部とを有してなり、
前記送信レベル調整情報及び前記第1の検出部から得た前記利得制御情報、前記高周波電力増幅器の電源電圧情報及び前記第1の検出部から得た利得制御情報を用いて、前記リミッタのリミット値を変更する機能を備えてなる、ことを特徴とする移動体通信端末。
【請求項20】
請求項19において、前記方向性結合と前記アンテナとが間にアイソレータを介さずに接続されている、ことを特徴とする移動体通信端末。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2006−319508(P2006−319508A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−138142(P2005−138142)
【出願日】平成17年5月11日(2005.5.11)
【出願人】(503121103)株式会社ルネサステクノロジ (4,790)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年5月11日(2005.5.11)
【出願人】(503121103)株式会社ルネサステクノロジ (4,790)
【Fターム(参考)】
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